説明

海藻灰を含む断熱材

【課題】故紙のリサイクルで得られるセルローズファイバーや珪藻土、帆立貝の粉末貝殻の吸湿性や施工性をそのまま生かして、海藻灰の遠赤外線放出による断熱効果を付与し、施工性やコストなどにおいてほとんど負担増となることなく、この両者の特性を生かすことのできる断熱材を提供する。
【解決手段】故紙を解織して得たセルローズ繊維上に海藻灰を付着させてバラ綿状に形成して断熱材とする。あるいは、珪藻土に海藻灰を混合して断熱材とする。あるいは、帆立貝の粉末貝殻に海藻灰を混合し、断熱材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建造物などにおける断熱材、或いは外赤外線放出の機能を有する建材として利用される。
【背景技術】
【0002】
建材などに使われている断熱材は甚だ多岐にわたるが、その中で最近注目されているものの一つにセルローズファイバーがある。これは1970年代より北米で住宅の天井吹込み用断熱材として急速に普及し始め、わが国でも1978年に国産化されて以来、次第に天井、壁、床などの断熱施工に使われるようになってきたものである。
【0003】
このセルローズファイバーは、主に新聞故紙を粗砕機や精砕機により綿状に解織し、ホウ素系防燃剤(ホウ酸、ホウ砂)等を付加して、防燃性、防黴・防菌性、防錆性、撥水性等の断熱材として必要な特性を人為的に付与したものである。
【0004】
このバラ綿状のセルローズファイバーを、いわゆる吹込み工法(ルーズフィル工法)により天井裏に100〜150mm厚程度吹き込んで堆積させたり、或いは接着剤を併用して壁や床などに施工し、或いは吹付け工法(スプレーオン工法)により風送されたセルローズファイバーと噴射された接着剤を同時に吹き付け、20〜30mm厚の断熱層を工場や倉庫などの大型物件の折板やデッキプレート等に形成して、断熱、吸音、結露防止などに利用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなセルローズファイバーは故紙再生利用でエコロジーにも添ったものであり、低コストで施工性がよく、均一な密度で仕上がり、吸音性もあるので、甚だ望ましい断熱材であるといえる。従ってその建築物における適用範囲は甚だ広く、居住者に与える影響も大きなものとなる。その意味では、現在のセルローズファイバーは防燃などの薬品処理以外はほぼ単体で使われているのみであり、それが居住者に及ぼす作用も、それのもつ断熱や吸音の物性に留まるものであって、せっかくの広面積の施工空間が充分にレベルアップされていないきらいがある。
【0006】
一方では、海藻灰は、遠赤外線を放射することが知られているが、他の材料と混合して断熱材として用いることは行われていない。
【0007】
本発明はかかる現状から、施工性やコストなどにおいてほとんど負担増となることなく、この両者の特性を生かすことができるような望ましい断熱材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
故紙を綿状に解織して得られるセルローズ繊維には、ごく僅かの印刷インキのカーボンブラックすなわち炭が若干のバインダーと共に付着しているものの、その量は甚だ少なく、かつバインダーでカバーされている。本発明においてはこのセルローズ繊維上に、海藻灰を付着させるものである。
【0009】
また、本発明においては、海藻灰を珪藻土または帆立貝の粉末貝殻に混合して、断熱材を提供するものでもある。
【0010】
海藻灰は、海藻を燃焼した灰化物を水抽出し、抽出液から分離した残渣を焼成することによって得られる。
この発明に用いる海藻灰の原料として用いる海藻は、特に特定するものではなく、褐藻類、緑藻類、紅藻類のいずれであってもよく、たとえばワカメ、アラメ、コンブ、ホンダワラ、アスコフィルム、ヒジキ、ツノマタ、キリンサイ、レッソニアなどが挙げられる。
【0011】
現在、セルローズファイバーの製造プロセスは概ね乾式工程のみで行われており、防燃用のホウ酸やホウ砂などのホウ素系化合物も一般にこれが微粒子となってセルローズ繊維に付着した形となっている。従って本発明の灰化物はこのホウ素系化合物(3)の粉末と混在する形で同様の製造ラインに組み込めばよい。
【0012】
本発明における海藻灰はセルロース繊維と甚だ親和性が良く、解織してバラ綿状に入り組んだ無数のセルローズ繊維(1)の各表面には、かなり大量な無数の海藻灰粒子がくまなく付着して保持されることになる。この海藻灰は、比較的低温で外赤外線を放射する。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、故紙リサイクルで得られるセルローズファイバーの優れた断熱性や施工性を損なうことなく、海藻灰の持つ赤外線放射効果などの長所を甚だ適した形でこれに加えることができる。
【0014】
さらに、海藻灰を珪藻土または帆立貝の粉末貝殻に混合させて断熱材として利用することができ、夫々の材料の相乗効果が得られる。
建物の広範囲にわたって両者のもつ様々な物性が相乗的に付与されて居住性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
在来のセルローズファイバーの製造工程に従い、新聞故紙を粉砕機にかけて粗砕した後、更に精砕機及び解綿機で綿状に解織すると共に、粉末状のホウ酸、ホウ砂、及び海藻灰をまぶすように混合、付着させた。これを製品貯蔵タンクを経て梱包機及びシール機で密閉状に梱包する。施工は在来品と同様に吹込み、或いは吹付け工法とする。また必要に応じ、マット状のプレカット品に加工し、一般住宅の壁等のはめ込み用とした結果、優れた断熱効果が得られた。
【実施例2】
【0017】
海藻灰1kgと珪藻土9kgに水5lを加え、攪拌混合し、得られたペースト状物を外壁に3mmの厚みに塗り付けた。常温で乾燥させ、本発明の断熱材が得られた。
【実施例3】
【0018】
海藻灰1kgに帆立貝の粉末貝殻9kgに水5lを加え、攪拌混合し、得られたペースト状物を外壁に3mmの厚みに塗り付けた。常温で乾燥させ、本発明の断熱材が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
故紙を解織して得たセルロース繊維上に海藻灰を付着させてバラ綿状に形成したことを特徴とする断熱材
【請求項2】
珪藻土に海藻灰を混合させてなる断熱材
【請求項3】
帆立貝の粉末貝殻に海藻灰を混合させてなる断熱材