説明

浸水対応建築物とその建造方法

【課題】 津波や台風高潮が発生しても建物が浮上して、浸水しない浸水対応建築物
及びその建造方法を提供する。
【解決手段】 大部分が地中に埋設された基礎上面に、浮体の気中重量を支える強度を備えた台座を設けると共に台座の上へ浮体を乗せ置く。台座と台座の間に台座より低いリフトジャッキを導入可能なメンテ通路を形成する。浮体と上記基礎の間に浮体の浸水による浮力で浮体は鉛直上方にのみ浮上するが、水平方向流動を阻止するアンカー装置を備えている。次に 前記メンテ通路内に3台以上のジャッキリフトを導入し、そのジャッキリフトを同期して浮体を昇降させ、浮体底部の表面処理加工する様に構成した浸水対応建築物の建造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は大地震による大津波や台風高潮又は集中豪雨による洪水等の水害から、人身人命及び貴重な財産を守護し、人が安全に居住する浸水対応建築物とその建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2004年12月26日マレーシア沖に発生した海底大地震により、インド洋沿岸諸国海岸地域に大津波による大水害が発生し、情報の伝達が遅れたこともあり過去未曾有の十数万人の死者が出た。
在来海岸地域に津波被害に対する避難設備は無く、小山や高層建築物の上階部に避難する以外に方法は無かった。
津波被害に対して現在関係諸国政府や自治体は、大地震の発生予報と津波が発生した場合如何に速やかにそれを検知する検知手段の開発と、多くの国民に伝達する伝達方法等ソフト面の構築に傾注している。
如何に早く小山や高層建築物に逃避することが、被害を少なく食い止める方法ではある。
しかし小山や高層建築物が無い平野部の多い田園地帯や、又あっても時間距離が離れて速やかな避難の困難な臨海地帯は極めて多い。
津波発生の情報伝達通信手段の構築と共に、津波に遭遇した場合の避難する手段としての装置や設備等ハード面の開発完備も極めて重要な課題である。
また年間数度も来襲する台風高潮や集中豪雨による河川氾濫被害も、低地に居住する人達は高潮浸水や氾濫冠水により例年莫大な人的物的損害を蒙っている。
【0003】
我が国においても今世紀初頭南海地震や東南海地震が発生する可能性が高いことから、鉄骨構造十数メートルのタワー型避難台の提案がなされている。
【特許文献1】特開2004−339920 しかしながら老若男女多数の人たちが短時間の内に階段を使って、十数メートル高所の避難台に登ることが出来るかどうかの疑問もあり、又津波の高さがタワーの高さ十数メートル以内であるかどうかの保証も無いので未だ普及の段階には至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は避難に際して十数メートもの高所に登ることなく、平地に設備した避難建築物に入るだけで難を逃れることが出来る浸水対応建築物を提供することを課題とする。
また本発明の津波に対する建築物の使用頻度は極めてゼロに近く、津波避難建築物として使用することは極めて稀であるので、避難用以外に多目的に使用出来る浸水対応建築物を提供することを課題とする。
【0005】
また本発明津波対策として使用する建築物は、十数メートル以上たとえば百メートル以上の如何なる高水位の津波にも、人命救助に対応出来る浸水対応建築物を提供することを課題とする。
また更に津波はおろかたびたび襲来する高潮水害や河川氾濫冠水にも、浸水冠水の危険が全くない一般建築物や居住用住宅を提供することを課題とする。
また更に本発明は、上記浸水対応建築物の新たな建造方法の開示提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
津波や台風及び河川氾濫等の高潮水難に対し、人身人命及び動産を守る浮体構造の台船型建築物で浮体上に人が居住するように構成し、以下1ないし3の条件を具備したことを特徴とする浸水対応建築物。
1,大部分が地中に埋設された基礎上面に、浮体の気中重量を支える強度を備えた複数個の台座を設けると共に台座の上へ浮体を乗せ置く。
2, 台座と台座の間に台座より低いリフトジャッキを導入可能なメンテ通路を形成する。
3、浮体と基礎の間に浮体の浸水による浮力で浮体は鉛直上方にのみ浮上するが、水平方向流動を阻止するアンカー装置を備えている。
【0007】
また次に上記3記載のアンカー装置が基礎と一体で鉛直上方に伸びる壁面構造のガイド部材と、浮体四方側面が間隙部材を介して接触するように構成されている。(以下ガイド部材型アンカー装置と称す。)
また次に上記3記載のアンカー装置が、浮体と一体で浮体より鉛直下方に伸びるアンカーポールと、基礎に穿設されたポール穴で、アンカーポール下端部が前記ポール穴に挿入されている構造である。(以下ポール型アンカー装置と称す。)
また次に上記浸水対応浮体建築物において、メンテ通路内に3台以上のジャッキリフトを導入し、そのジャッキリフトを同期して昇降させ、浮体底部の表面処理加工することを特徴とする浸水対応浮体建築物の建造方法である。
【0008】
津波や台風及び河川氾濫等の水難に対し人身人命及び動産を守る避難用浮体の装備であって、水難情報により上記浮体上に避難者が乗船して避難する様に構成する。
また台風高潮や河川氾濫等で冠水する頻度の高い水難に対応し、浸水することがない安全な一般建築物や居住用住宅空間を提供する浸水対応建築物を提供する。
【0009】
本発明は必要な建設場所にコンクリートにより大部分が地中に埋設された強固な基礎を構築し、その基礎上面に台座を形成すると共に、その台座の上へ台船構造の浮体である建築物を単に載せ置いたものである。
次に上記台座間に台座上面より低く、ジャッキリフトを導入可能なメンテ通路を形成する。
次に浮体と基礎の間に浸水時浮体が鉛直上方にのみ浮上するが、浸水の流速により水平方向移動が阻止される様に構成されたアンカー装置を設ける。
【0010】
次に上記アンカー装置が、基礎と一体で鉛直上方に延長された壁面体のガイド部材(65)と浮体の四方側面が間隙部材(66)を介して接触し、浸水により浮体は鉛直上方に浮上するが水平方向流動を阻止する様に構成されているガイド部材型アンカー装置である。(以下ガイド部材型アンカー装置と称す。)
また次に上記アンカー装置が、浮体と一体に装備されたアンカーポール(2)と基礎に穿設されたポール穴(3)で、アンカーポール下端部が上記ポール穴に挿入されているため、浮体浮上時に浮体は鉛直上方にのみ浮上し流水による水平移動を阻止されてアンカー作用するように構成されたポール型アンカー装置である。(以下ポール型アンカー装置と称す。)
【0011】
また次に上記浮体を建造する方法に関し、前記メンテ通路内に3台以上のジャッキリフトを導入し、台座上の浮体をジャッキリフトの同期昇降運転により浮体底面や側面の表面処理加工するように構成した。
津波は第一波が到来して水位が上昇し、次に急激な引き潮となり陸上部の破壊した器物等を海へ引き去り、また次に第二第三の高潮が到来することが多い。
ガイド部材型アンカー装置のアンカー作用は、浸水による水位上昇で浮体が鉛直上方に浮上すると共に流水下流方向に大きな力が作用するが、浮体側面が下流側のガイド部材に押圧されて流されることはない。
【0012】
次に引き潮になれば流水の方向が反転し、浮体は前記と逆方向に流される力が作用するが下流側のガイド部材に押圧されて流されることはない。
浸水の高さが異常に高く浮体側面底部とガイド部材が外れると、アンカー作用がなくなり浮体は水流に翻弄されるが、浮体が構築物等に衝突して破壊されない限り転覆沈没することはなく、水位下降と共に地上に安置され人身人命は救われる可能性が高い。
ポール型アンカー装置の場合は、高潮の高さがアンカーポールの長さ以内であれば、浮体は流されることなく水位と共に上下動するのみで、水位が下がればまた元の位置に浮体は安置される。
【0013】
水位が更に上昇し浮体が浮上しアンカーポール下端部がポール穴から抜け出ると、アンカー作用しなくなり浮体は潮流や氾濫水に流される状態となる。
浮体はアンカーポールを吊り下げた状態でフリーとなり、この場合も流れのままに翻弄されるが転覆沈没することはなく浮体上の人身人命は救われる可能性が高い。
また次にアンカー装置がガイド部材型と、ポール型を併設した場合は通常浮体側面の高さより、アンカーポールの高さが高く製作出来て高水位の浸水に対応出来るので、浮体側面底部がガイド部材から外れてもアンカーポールとポール穴によるアンカー作用で浮体の流水移動を阻止できる。
【0014】
河川氾濫の場合は、最初の第一波の浸水流速が高速で衝撃波として破壊力が大であると言われている。また津波高潮の場合は第一波より第2波ないし第3波が高速で破壊力が大であることがあるが、水深が浅い時点での流速が早く浸水が進行し水深が深くなるほど流速が緩慢になると言われている。
上記二種類のアンカー装置を併設した場合は都合の良いことに、ガイド部材型のアンカー作用は広い面積で流速による押圧を受けるのでアンカー作用が強く、水深が深くなり流水速度が低下してポール型アンカー装置による構造的に弱いが高水位に対応出来るアンカー作用を利用出来る点である。
【0015】
また次に本発明の浸水対応建築物は陸上建築物であり、造船所の様な大型設備を使えない市街地での現地工事で大型の浮体を建造しなければならない宿命がある。
そのため簡単に移動可能な小型設備で、巨大な浮体や建築物を建造する為に特別な施工手段や方法の開発が必要であった。
本発明は移動可能な多数の小型ジャッキリフトを基礎に設けたメンテ通路内に挿入し、三台以上ないし数百台のジャッキリフトを同期して浮体全体をそのまま鉛直方向に昇降させることにより、浮体底部や側面の外側からの溶接や表面処理加工する建造方法を開発し提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
最近提案されている前述公知の津波の避難装置は、高さ十数メートルの鉄骨構造のタワーで頂上部に5メートル四方程度の手摺り付きの避難台と昇降用階段を設けたものである。
津波情報を受けて速やかに100人以上の多数の人たちが、十数メートルもの階段を上ることは、非常に困難を伴うものであり相当な時間を要する。
本発明の浸水対応建築物は浮体が浮上するための条件即ちアルキメデスの定理により、水面上に浮上した船体は船体底部の喫水線以下の容積の水の重さに等しい浮力を受ける。
(陸上に建設する建築物であるが浸水時は水上に浮かぶ船舶となり、説明が理解しやすいように以下甲板等の船舶用語も使用する。)
【0017】
本発明浸水対応建築物に使用する台船型浮体は、構造上の特徴で甲板とほぼ等しい船底部面積があり、必要な浮力を得るために喫水が浅く極めて高さの低い平板状船体構造で充足する。
従って浮体上に避難する場合浮体の高さが極めて低く、浮体の前後側面にも昇降通路が配置可能で、階段昇降する場合に多数の人が並列して同時に乗り込むことが可能である。
更に本発明は基礎を側壁と底面を備える容器構造とし、容器状基礎を地面より下に埋設しその底面の高さを地面より下に下げたので、その底面の上へ浮体を載せ置く構造であり、浮体の甲板の高さが地面GLと同一及び自由に設定出来るので階段などで高所へ登る必要がない。
従って前述のタワー型避難台に比べて短時間の内に多数の人員の避難が可能である。
【0018】
更にこの避難用浮体の使用頻度は数年ないし数百年に一度あるかないかの程度であり、このためには津波や台風高潮の避難のためだけでなく、常時は避難以外の用途に使用出来る多目的設備であることが望ましく土地と設備の有効利用が計られる。
即ち本台船浮体を設置して一定面積の土地を占用しても、台船型浮体は地面より下に入り台船浮体の入る容器型基礎の平面積だけ専用することになる。
また甲板上から浮体船体内部船穀内への通路を設け、地下室として甲板下の容積を有効利用することも出来る。
その台船型浮体の上へ殆どの建築物例えば、集会場・ホテル・レストラン・幼稚園・学校・居住用住宅等まで建築装備可能で安全極まりない一般家庭用住居も提供出来る。
【0019】
津波避難に使用する場合、急激な海水水位が上昇すると共に海から陸上方向に早い流速での潮流が発生しても、地球地面と一体の鉄筋コンクリート基礎と浮体との間に設けられたアンカー装置によるアンカー作用で浮体は固定され潮流に流されることはない。
水位が上昇することにより、浮体は浸水からの浮力を受けて浮上するがアンカー装置のアンカー作用により流されること無く鉛直上方に上昇する。
津波等の高潮水害では海から陸上部へ流れ込んだ水は、次に急激な引き潮となって陸上部から海へ流下する。この場合も浮体は上記アンカー装置によって水平方向への移動が阻止されて、水面の降下と共に浮体自体が鉛直下方へ降下して洋上に流されることなく元の位置に元の状態で復帰され甲板上の人身が守られる。
【0020】
津波の水面が極めて高くアンカー装置がアンカー作用しなくなった場合浮体はフリーとなって海水の移動と共に翻弄される。
しかしこの場合も陸上の大型構築物等に衝突破損しない限り浮体は沈没することはなく、その限り乗船している人身人命は守られる。
【0021】
本発明者は本発明と同種の発明及び考案を先願にて以下の通り出願している。
1,特願2005−137「水難避難台船」
2,特願2005−4065「水難避難台船型船舶」
3,特願2005−12248「水難対策浮体型建築物」
4,特願2005−16873「浮体型建築物」
5,特願2005−21277「台船型浮体建築物」
6,実願2005−571「浮体建築物」
7,特願2005−34075「浮体建築物」
8,特願2005−45533「浸水対応浮体建築物とその建造方法」
9,特願2005−72728「浸水しない建築物とその建造方法」
10,特願2005−95126「不浸水建築物とその建造方法」
11,特願2005−122429「不浸水建築物の建造方法」
【0022】
本発明は上記発明及び考案の更なる改良に関するもので、より具体的実用的に利用範囲を拡大すると共にメインテナンスを考慮して創作したものである。
また本発明は上記発明の具体的製作方法を考慮し、製作方法に適した構成に改良して浸水対応建築物とその建造方法を提供するものである。
本発明は特に台船型浮体の建設現場での建造方法に関するものであり、台船はこれまですべて数十トン以上の吊り上げ移動可能な大型クレーンや、レール型船台または浮きドック等の造船所内での建造であった。
本発明は内陸の陸上建築物で造船所の様な設備はなく、工事が完了すれば次々と建設現場が変わる建築工事であるため造船所での台船建造方法技術が通用せず、新たな施工方法を創作しなければならなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための一態様を例示するものであって、本発明は実施例のものだけに特定しない。
【実施例】
【0024】
図1は本発明浸水対応建築物(10)の構成と、浸水時の作動原理を説明するための鳥瞰図である。
鉄筋コンクリートにてなる基礎(4)は大部分が地中に埋設され、底面(18)及び四方に側壁部(15)を備える容器構造プール型で側壁部上面が地面(9)より若干高く形成されている。
底面(18)上に三条の直方体台座(5)が形成され、台座の四隅部に後述のアンカーポール(2)が挿入されるポール穴(3)が穿孔されている。
【0025】
台座(5)と台座の間に底面(18)と同一平面でメンテ通路(6)が形成され、油圧シリンダ式のジャッキリフト(8)が置かれている。ジャッキリフトは後述するが浮体(1)をジャッキアップする為の装置である。
底板と四側面と上面が鋼板等の板材にてなる中空の浮体(1)は、内部に荷重台(11)が内装され四隅部にアンカーポール(2)が一体的に枢着されている。
アンカーポール(2)はテレスコープ型で鉛直下方に伸縮し、図では伸長して下端部が前記ポール穴(3)に挿入されている。
【0026】
基礎(4)の台座(5)は、浮体(1)とその上に構築される建築物のすべての空中重量を支える耐荷重力を備え、平常時浮体(1)は台座上に置かれる。
図1は浸水時の状況を示し、水面線(14)まで水位が上昇し浮体(1)が浮上すると共にアンカーポール(2)は下方に伸長してその先端部のみがポール穴(3)上端部に当接している。
津波や台風高潮及び河川氾濫等の浸水により、浮体(1)が浮上すると共にその流速により浮体(1)は水平方向に押し流される大きな力が作用するが浮体(1)は流されることはない。
【0027】
浮体(1)と一体のアンカーポール(2)は浮体(1)と共に流水方向に流される大きな力を受けるが、アンカーポール(2)とポール穴(3)が当接しポール穴(3)にその力が作用して基礎(4)に作用するが、地球地面と一体の基礎(4)は不動であり浮体(1)は流されることはない。
【0028】
浮体(1)はアンカーポール(2)とポール穴(3)とが当接するアンカー作用により流水に流されることなく、水位の上昇と下降に従って上下動し最後に高潮が引けばアンカーポールは縮小しまた元の位置に浮体(1)は安置される。
浸水水位が異常に高くアンカーポール(2)下端部がポール穴(3)から抜け出ると、浮体(1)はアンカーポール(2)を吊り下げた状態で流れに翻弄される。
浮体(1)は平板状の形状で水面上では極めて安定した構造であるが、アンカーポール(2)を吊り下げると重心が下方に移動し更に安定性が良くなる。
従って構築物に衝突して台船型浮体が破損浸水しない限り沈没することはなく、浮体上の建築物や人身は守られる。
【0029】
また台船型浮体(1)が破損して浸水があっても、浸水沈没は通常相当な時間経過後でありそれまでに高潮水害は終了することが多い。
水位が下がり障害物の無い平らな地形であれば、浮体(1)はそのままの状態でアンカーポール(2)が縮小しその位置に安置される。
【0030】
次に本発明浸水対応建築物(10)の建築現場での建造方法について詳述する。
特に浮体(1)は台船型船舶であり、大型クレーンとレール船台や浮きドック等これまで設備の整った造船所で建造されるものであった。
完成浸水後は洋上曳航など常に水上を移動または係留されるもので、本発明の浸水対応建築物の浮体は建設現場で建造しその場所で永年設置されるものとは基本的に異なる。
【0031】
工事が完了すれば建設現場が次々と変わり、大型設備の無い現場で如何に効率的に建造するかは新たな建造方法とそれに適した構造変更の必要があった。
図2は図1の右下から左上方向に見た基礎(4)の側断面図で、メンテ通路が図1は二条本図は三条となっているがアンカーポール(2)部分の断面図である。
基礎はプール型基礎(7)で両端の基礎側壁部(15)の上面は、雨水が流れ込まないように地面(9)から僅かながら上方に突出している。
図2に示す様にプール型基礎内部上面にポール穴(3)が穿孔され、浮体(1)を置く台座(5)が形成されると共に台座に隣接して台座より一段低いメンテ通路(6)が形成されている。
【0032】
図3は浮体(1)の組み立て作業中の図で、台座(5)上に鋼板等の板材(19)を敷き溶接により連結しながらアンカーポール(2)及び荷重台(11)を設計図書に従って配置する。
荷重台(11)は浮体の上に建設される建築物の荷重分布と、浮体が浸水した場合の水圧とのバランスを考慮して必要強度を推定設計して配置されたものである。
図6は荷重台を例示するものであり、(a)はH型鋼(b)は角パイプ(c)は円筒パイプの両端に平板を溶接したもの(d)はH型鋼4本を組み合わせ両端を平板に溶接したものである。 何れも上下方向に耐荷重強度があるように、板鋼材を縦に圧縮する方向に力が作用する。
【0033】
アンカーポール(2)自体も、上下方向の荷重を受ける荷重台としての機能がある。
図3の浮体(1)組み立て作業は、浮体底板(17)や側面の外側からは溶接や塗装等の表面処理作業は作業スペースが無く施工出来ないので、すべて浮体内側からの作業ですすめる。
図7は図1の左手前から右奥方向に見た側面図で、アンカーポール(2)位置の断面図であり図8はその平面図でプール型基礎底面部AA線の断面図である。
【0034】
図4は浮体の完成図であり、メンテ通路(6)にはジャッキリフト(8)が配置されている。
ジャッキリフト(8)は図1及び図7ないし図8の開口部(12)からプール型基礎(7)内に搬入され、図8に示すように浮体の重量に適合した必要な台数が適正に配置される。
図5はジャッキリフト(8)がすべて同期して運転され浮体全体が持ち上げられ、アンカーポール(2)は重力の為下方に伸長した状況を示す。
この状態で浮体底板(17)や側面の外側からの溶接状態、即ち溶接裏波の点検や塗装等の表面処理作業を施工する。
【0035】
ジャッキリフト(8)が浮体底板(17)に当接している部分は直接作業が出来ないので、隣接場所のジャッキリフト(8)で支えてその部分のみ若干降下させて作業する。
図7ないし図8に示すようにジャッキリフト(8)の縮小時高さと伸長時高さの差即ち揚程が小さく、一度に十分な高さに達しない場合は架台(32)を使用して多段階に上昇させる。図8に示す架台は説明のためデフォルメして大きく記載してある。
即ち隣接するジャッキリフトに荷重を預け、若干降下させて架台(32)を上に置き上昇させる。
次にジャッキリフトをすべて同期して降下させ、浮体を台座(5)上に安置させジャッキリフトを取り出せば浮体工事は完了する。
図9は浮体上に建家を建造した状況を示し、建家(20)等建築物の土台(35)と浮体(1)は図示しないがアンカーボールトにより強固に連結する。
【0036】
図9の右端開口部(12)には開閉扉(21)が設けられており手動または動力による駆動装置(22)により開閉する様に構成されている。
この開閉扉(21)の開口部(12)は図7及び図8に示すように幅方向に大きく開口し、津波等の浸水情報を受けて上方へ回動解放する。
図10はその状況を示し浸水は先ず開閉扉(21)に衝突してプール型基礎(7)の底面(18)に流入し、メンテ通路が導水路(16)となり速やかにプール内全体に浸水して浮体(1)は大きな浮力を受けて浮上する。
【0037】
図では水面線(14)の上昇と共に浮体は浮上しながらアンカーポール(2)は鉛直下方に伸長し、アンカーポール下端部がポール穴(3)に当接して、アンカーポールとポール穴(3)のアンカー作用により、浮体は流されることは無くその位置を保っている。
水位が下降すれば浮体と建家(20)はそのままの位置でアンカーポール(2)が短縮して、元の台座上に安置される。
【0038】
水位上昇が異常に高くアンカーポール(2)下端部がポール穴(3)から抜け出ると、アンカー作用が無くなり建家と浮体は流れに翻弄されるが、大事故にはなり難く前述の図1での説明の通りである。
浮体は浸水しなくても数年ないし数十年に一度は浮体底部とプール型基礎(7)の内側は点検整備する必要があり、その時には図9に示すように開閉扉(21)を開口しジャッキリフト(8)をメンテ通路(6)内に搬入して、浮体とその上の建築物すべてをジャッキアップしてメインテナンス整備する。
図9に記載の建家は木造建築物を想定したものであり、木造建築物は日本国内のように湿度が高い地域では白蟻被害に悩まされることが多いが、本発明の基礎と浮体上に建築される建家は白蟻が侵入する余地はない。
【0039】
図11ないし図13に記載の浸水対応建築物(10)の実施例は、津波避難に使用する緊急避難用として想定したものである。
この基礎(4)はプール型ではなく地面(9)上に台座(5)が露出している為、浮体(1)甲板(28)には階段等の昇降路(25)を上がらねばならない。
図11は右側から高潮が押し寄せる方向に浮体台船の船首部を向けた配置とし、側面から見た側断面図であり、図12はその平面図で図13は正面から見た側断面図である。
3本の長方形状の台座(5)は図の左側で連結されており一体となっている。
【0040】
アンカーポール(2)は伸縮型ではなく浮体(1)と一体の鞘部材(23)内に鋼管パイプを連通したもので、上端にストッパ(26)を設けある程度浮体が浮上すると鞘部材(23)上端に当接し、アンカーポール(2)を引き抜く作用をする。
浮体四方側面の下方には浮体(1)と一体に雨水カバ(13)が全周に亘って、基礎上面の突条(29)を覆う様に設けられており雨水のメンテ通路(6)内流入を防止している。
メンテ通路(6)右端部上方には開閉扉(21)が設けられており、津波等の高潮情報を受けてスイング解放しておき、浸水をメンテ通路(6)兼用の導水路(16)を介して浮体底部へ海水を導入して浮体浮上を促進する。
【0041】
また開閉扉(21)は浮体のメンテナンス作業時には、図のようにジャッキリフト(8)を導入して前実施例と同様に、三台以上のジャッキリフト(8)を同期して運転し浮体をジャッキアップする。
メンテ通路(6)の大きさは人が入れる寸法が望ましいが、必ずしも作業員が入れなくても治具を使用して手前から奥に押し入れると共に引き出す様に構成しても良い。
【0042】
図14(a)は図11の区画線A内のアンカーポール(2)部分の拡大図で、高潮浸水の流れにより浮体は矢印の如く右から左方向に流される力を受ける状況を示す。
浮体と一体の鞘部材(23)右側内壁はアンカーポール右側側面を押圧し、更にアンカーポール下端の左側側面はポール穴右側内壁を押圧する。
この状況で浮体はポール穴(3)が穿孔された基礎によるアンカー作用で、流水に流されることがなく水位上昇のため大きな浮力を受けて浮上する。
この時通常ではアンカーポールの重力とアンカーポールとポール穴の摩擦力が、鞘部材とアンカーポールの摩擦力より大で、鞘部材がアンカーポールと摺動スライドして鞘部材が上昇する。
【0043】
鋼材の経年変化による腐食を勘案してアンカーポール外径と鞘部材内径の公差は、非常に大きくいわゆる馬鹿穴に設定されている。
しかし製作上の寸法誤差のためアンカーポール(2)と鞘部材(23)の摺動抵抗が大で、アンカーポールと鞘部材が固着して浮体(1)の大きな浮力で、アンカーポール上端のストッパ(26)に達する前に、アンカーポールをポール穴(3)から引き抜く可能性がある。
図14(b)は鞘部材(23)の構造を一部変更して、鞘部材内に上下二カ所アンカーポールを左右から回転自在のローラ車輪(36)で挟み摺動抵抗を減少させるように構成したものである。
【0044】
ローラ車輪(36)はアンカーポールが丸鋼管の場合は鼓型になり、角パイプの場合は円筒ローラとなる。
図15にて本発明で使用するジャッキリフト(8)と架台(32)について詳述する。
図15(a)は多段テレスコ式の油圧水圧等の液圧ジャッキ(38)を容器型の台車(39)内に収容し、左右二個の自由車輪(40)及び左右二個の固定車輪(41)を押しバネ(37)で図のように支えた構造でメンテ通路内を移動する。
(b)は所定の位置で液圧ジャッキを伸長させ架台を介して浮体を持ち上げ荷をかけた状態を示す。上からの荷重がかかると押しバネが撓み縮小し、台車の底部はメンテ通路底面に当たりメンテ通路底面が上部荷重の浮体を支えることになる。
液圧ジャッキを縮小すればまた元の状態となり、台車底部が上昇し台車は車輪移動可能となる。
【0045】
図15(c)はクロス型フレームのリフトと同じ構造で、収縮状態を示し(d)はその伸長状態を示し架台として使用する。
前記ジャッキリフトと同様に台車(39)構造でメンテ通路内を車輪移動する。D図のアクチェータ(43)は油圧または機械式の伸縮パワーシリンダで架台の高さを調整する。
【0046】
図16ないし図17に市街地の隣接するビル街地域内に建設する実施例について詳述する。
図16は道路側から見た正面の側断面図で左側は隣接建造物(33)で、密接して建築されており建家(20)の平面積より狭いプール型基礎(7)しか施工出来ない。
建家は鉄筋コンクリート製ビルでかなりの重量があり、重量に応じた浮体(1)の浮力を得るために浮体の深さを大きくとってある。
建家土台(35)と基礎上面の間には防水性素材によるコーキング材(30)が充填されており雨水がプール型基礎に流入するのを防止している。
【0047】
図17(a)は右側が道路に面する側断面図で、(b)は(a)のAA断面線での平面図であり(c)はBB断面線での平面図である。
また(a)の垂直断面位置は(b)のCC断面線でカットしたものである。
建家内に開閉自在の下方への出入り口(31)が設けられ、それと連通して浮体内を水密に下方へ貫通する連通穴(44)が設けられており、更にその下にプール型基礎のメンテ通路(6)につながっている。
浮体建造時やメンテナンス時にはこの連通穴(53)から、図示しないがジャッキリフトを挿入し浮体と建造物をジャッキアップして施工する。
【0048】
図17(a)右端部の開閉扉(21)はプール型基礎内へ浸水を導入する唯一の開口部であり、高潮浸水危険の情報により速やかに開口しておく。
高潮浸水は流水路(34)から下方のメンテ通路(6)兼導水路(16)を介し、また(b)矢印の如く左右に分水して浮体とプール型基礎側壁部(15)の間を通じて全体に充満し、浮体(1)に浮力を与え浮体は浮上する。
開閉扉(21)は速やかに浸水をプール型基礎に流入させるため、(b)及び(c)に示すように横幅広く開口するよう構成してある。
【0049】
開閉機構はスイング式弁、仕切弁、及びゴム板を加工した風船に圧縮空気を圧入するエアバッグ式又は液体を圧入する液圧弁が使用出来る。
開閉扉は手動又は動力によるアクチェータ(43)により開閉する様に構成し、平常時は長年月常に閉止して雨水の流入を防止すると共に高潮情報を受けて速やかに開口する。
開閉扉(21)やアクチェータ(43)の保守は、作業員が建家内の出入り口(31)から連通穴を介してメンテ通路(6)に降りて内側から各種点検整備作業が可能である。
【0050】
図18ないし図25に於いて、浮体内に大きな浮力を備える浮力型材(45)を内封した鉄筋コンクリート製浮体の製作方法を詳述する。
図18はプール型基礎(7)で大部分を地下に埋設して建造する。
図19は台座(5)上に浮体の外径寸法にそって製作図面に従って型枠(46)を配置すると共に、アンカーポールや浮力型材(45)を設置する状況を示す。
浮力型材(45)は発泡スチロール又は木製の型枠材を中空直方体に成型した箱体で、浮体(1)の見かけ比重を低下させるための浮力体である。
【0051】
図20は型枠(46)内に鉄筋(47)を形成し前記浮力型材(45)を内装する状況を示し、特に浮力型材(45)は後述の生コンクリート注入時に、水より比重が大で極めて大きな浮力を受けて浮上するので、その浮上を抑えるため鉛直方向及び浮体上面の鉄筋(47)配筋には強度を持たせる様に配置する。
【0052】
図21(a)は型枠(46)及び浮力型材(45)と鉄筋(47)配筋が終了した状態を示し、AA断面を(b)にBB断面を(c)に平面図にて示す。
(b)に示すように浮体中央部の浮力型材(45)は平面L型に変形し、浮体中央上下方向に貫通する連通穴(44)が形成されており、(c)に示すようにジャッキリフト(8)は連通穴(44)を介してメンテ通路上に降ろされ適当な位置に配置される。
図22は生コンリート(48)の注入状態を示し、図示しないが左上方からコンクリートポンプ車によるホース(49)を介しての圧入工事で、空洞や気泡が入らないように浮体底部から流動状態を観察しながら圧入充填する。
【0053】
図23は上記生コンクリート圧入工事が完了した状態を示し、所定のコンクリート硬化時間が経過すれば浮体上部の連通穴(44)からジャッキリフトを降下導入する。
図24はジャッキリフトを同期して上昇させ、型枠(46)離脱作業の状況を示す。
上昇後隣接するジャッキリフト(8)を若干降下してその部分の型枠を取り外し、次にそのジャッキリフトを上昇して荷重を預け他を降下してその型枠を取り外す。
図25はすべての型枠を取り外しジャッキリフト(8)を同期して降下し、浮体(1)を台座上に安置して製作工程を終了し、ジャッキリフトを連通穴(44)から浮体上部へ引き上げる状況を示す。
【0054】
この鉄筋コンクリート製浮体上面に図示しないがアンカーボールトを突出させておき、その上に建家の土台を連結し建築物を建造する。
鋼板による浮体よりもこのコンクリート製浮体が、経年変化による腐食が少なくメンテナンス上有利である。
図26は伸縮型アンカーポールの具体的実施構造で、新規建造時およびメインテナンス時に簡単に組み立て着脱可能に企画創作したものである。
先ず浮体に水密構造で鉛直下方に伸びる鋼管製鞘部材(23)を溶接構造にて取り付け、その中に中鞘(52)を挿入しさらに中鞘の中へ先端ポール(53)を挿入してある。
【0055】
浸水により浮体が浮上すると鞘部材下端の内径が小なる部分と、中鞘上端の外径が大なる部分が当接すれば中鞘は上昇し始め、また中鞘下端部の内径が小なる部分と先端ポール上端の外形が大なる部分が当接すれば、先端ポールが上昇する構造となっている。
また一方台座内に図のように埋め込まれた鋼鉄製のレセプタ(54)はその内側に上記中鞘および先端ポールの底部が当接しストッパとなっている。
【0056】
アンカーポール組み立て時はクレーンのフック(55)に中鞘上端を吊り下げて鞘部材内に挿入し、さらに先端ポールを吊り下げて中鞘の中へ挿入する。最後に浮体甲板と上面が同一平面のカバ(56)を水密に取り付ければ雨水の流入を防止できる。
経年変化による錆び付きを補修する場合は、カバを開き中鞘をクレーンでつり上げれば先端ポールも一緒に引き上げることが出来る。
【0057】
図27ないし図28は図16ないし図17にて説明した市街地内の中高層ビルの実施例で、ビル一階部のフロアと土台(35)上面が前面道路と同一平面に施工した実施例について詳述する。
図27(a)は右側に歩道があり入り口部(63)が前面道路に面した中高層ビルの側断面図であり、(b)は(a)の土台上面線での断面図である。図28は前面道路から見た入り口部(63)の鳥瞰図である。
枠形状の土台は上面が一階フロアで前面道路と同一平面となるよう地中に埋設され、入り口正面の閉止状態の開閉扉(21)上面とも同一平面に構成されている。また開閉扉の両側面に側板(51)が開閉扉を囲むように立設されている。
【0058】
土台上に柱(50)が鉛直上方に立設されその上へ上階部建築物が建造されるとともに、土台と基礎の側壁部(15)との間はコーキング材(30)が充填され雨水の浸入が防止されている。
平常時開閉扉は閉止状態でその上面が入り口部のフロアとなり、高潮浸水の情報を受けて図示しないがアクチェータにより上方へ矢印のごとく回動して開口し浸水をプール型基礎内部に導入する。
【0059】
図29に示す浸水対応建築物(10)はアンカー装置がガイド部材型とポール型を併用した実施例である。
浮体の浸水による水平方向の流動を防止する手段として、アンカーポールとポール穴以外に浮体四方側面に接してガイド部材(65)と間隙部材(66)を設けてある。
図29(a)は側断面図を示しAA断面線での平面を(b)に示すと共に、(c)は(a)の状態で浸水(64)がプール型基礎に流入し浮体が浮上する状況を示す。
浮体の三方側面はプール型基礎の側壁部(15)内側がガイド部材となり、浮体右側は基礎と一体で別に設けた鉛直方向の壁体ガイド部材(65)を備えている。
ガイド部材と浮体四側面の間に、船舶の防舷材等で使用する弾力性を備えたゴム材質で面形状のクッション材である間隙部材(66)が挟設されている。
【0060】
図29(c)は浸水(64)がプール型基礎内に流入し、浮体が浮上する状況を示し水面線(14)が本図より更に上昇すると矢印方向の水流により、浮体は右から左方向に大きな力を受けるが、浮体は左端の間隙部材(66)を介して基礎と一体のガイド部材(65)に作用し水流に流されることはなく鉛直上方に浮上する。
更に水面線が上昇し浮体底部がガイド部材から外れると、ガイド部材と浮体側面の当接によるアンカー作用は失われる。
【0061】
しかしこの浮体はアンカーポールとポール穴によるアンカー装置を併設しており、浮体底面がガイド部材から外れてもアンカーポールとポール穴によるアンカー機能により浮体は水流に流されることはない。
ガイド部材型アンカー装置によるアンカー作用は、ポール型アンカー装置よるアンカー作用よりも接触面積が広く製作出来て早い流速に対し強いアンカー保持力がある。
またポール型アンカー装置は水深が深くなり、アンカーポールが伸張するほどテコの原理でアンカーポールを曲げてその支点のポール穴に作用する力がかかり機構的にアンカー作用は弱くなる。
【0062】
一般的に津波や河川氾濫による洪水浸水は、最初に押し寄せる水深の浅い水流の流速が最も早く破壊力が強く、浸水が進行し水深が深くなれば次第に流速は緩やかになると言われている。
このため都合の良いことには速度の速い初期流速の時にガイド部材型の浮体側面の当接によるアンカー作用で浮体流動を阻止し、水深が深くなって流速が降下してポール型のアンカーポールとポール穴による弱いアンカー作用で充足できることとなる。
図29では間隙部材はガイド部材と一体に結合され、浮体側面は間隙部材と摺動して浮体のみが浮上するが、間隙部材と浮体が一体に結合され浮体が間隙部材と共にガイド部材と摺動して浮上するように構成しても良く、いずれでも摺動抵抗の少ない方を選択すればよい。
【0063】
また図29の台座は基礎と同質のコンクリートではなく、浮体と同様な中空鋼板によるもので浮体底部と一体に溶接構造としたものである。
従って基礎底面(58)は平らなコンクリート面で良く台座形成のコンクリート用型枠は不要である。
浮体の建造方法は、基礎底面上にあらかじめ製作した中空密閉鋼板による台座をメンテ通路を形成した設計図書に従って配置し、その上へ鋼板を並べて溶接構造により浮体を形成する。
中空密閉構造の台座には浮力があり浮体上に同一重量の建築物を建造しても、その分だけ浮体の深さを浅く容積を小さく製作出来る。
【0064】
図30に示す浸水対応建築物(10)は基礎底面(58)に水の流れる雨水勾配を設けた実施例で、図30(a)は側面からの断面図で(b)はAA断面線での平面図であり、図の左側から右側に向けて基礎底面(58)に下り勾配をつけてある。
プール型基礎(7)は上方から雨水が漏れないように製作してあっても、永年のうちに気温変化による結露から水の溜まることがある。この場合図の右側下方のピット(67)内へ水を集合して溜め置き矢印の勾配で排水ポンプ(60)に導入し配水管(61)を介しプール型基礎(7)外部へ排水する。
またこのプール型基礎底部に水面(59)として示すように、図示しないが外部から給水し給水タンクとして使用すれば、火災発生時に消火用水として利用することも出来る。
【0065】
またこの浮体は浸水の流動による浮体のアンカー装置として、ガイド部材型のみを採用しガイド部材と間隙部材のみ装備されている。
従って周囲に構築物等がなく田園地帯平野部に適し、浸水の水位が高く浮体底部がガイド部材の高さ以上に浮上すると水流に流されるが、転覆する確率が少なく人身人命が守られる可能性が高い。
また図30に示す台座(5)は図6にて説明した荷重台と同様に、浮体とその上の建家の重量を支える強度を備えた鋼材にて製作された台である。
従って浮体の建造方法は基礎底面(58)上に上記台座を設計図書に従ってメンテ通路を確保して配置し、その上に浮体の底面素材を並べて溶接加工して浮体を建造する。
【0066】
図30(c)は(b)のBB垂直断面線での断面図で、浮体底面は一般船舶と同様に中央に向かって下り勾配に形成してある。
台風による浸水が進行し浮体底部がすべてガイド部材から外れて完全に浮上した時に、風や波があり浮体が左右に揺れる場合に浮体(1)船体の左右の復元性が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は津波災害に対する避難設備であり、近い将来南海地震や東南海地震が発生することが予測されており極めて関心の高いテーマである。
また台風による高潮水害は殆ど毎年各地で発生しており、この高潮水害に対応する手段として本発明は極めて有効である。
技術的に完成した装備を提供することにより建設業界及び造船業界にも産業上大きな利用の可能性がある。
2004年12月末のインド洋沿岸地域を襲った大津波は、数時間の内に十数万人の尊い人命を奪い海洋性リゾートを楽しむ人達に大打撃を与えた。
【0068】
大津波に対する何らかの絶対信頼出来る救難施設が完成するまでは、多くの観光客は海岸リゾートに足を向けなくなるであろう。
本発明はその安全性に対する効果が証明され衆知されることにより、この海洋性リゾート産業と臨海地域に居住する多くの人達に安全な生活を保証する大きな糧となる可能性がある。
また本発明は一般の居住用建築物や大型のホテルに適用し、高潮被害の発生しやすい海岸低地に建築することにより、その効果が証明されれば建設産業及び住宅産業界に膨大な利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明浸水対応建築物(10)の構成と、浸水時の作動原理を説明する鳥瞰図。
【図2】プール型基礎(7)断面図。
【図3】浮体工事中のプール型基礎(7)断面図。
【図4】同上。
【図5】同上。
【図6】(a)(b)(c)(d)は荷重台の例示鳥瞰図。
【図7】浮体建造工事中のプール型基礎(7)側断面図。
【図8】同上AA断面での平面図。
【図9】プール型基礎と浮体の側断面図と完成した建家(20)側面図。
【図10】同上浸水時の作用説明側断面図。
【図11】避難用浸水対応建築物(10)の側断面図。
【図12】同上平面図。
【図13】正面から見た避難用浸水対応建築物の側断面図。
【図14】図11の区画線内拡大図で、(a)はアンカーポール作用説明側断面図。(b)は改良型側側面図。
【図15】(a)ないし(b)ジャッキリフト(8)で(c)ないし(d)架台(32)の作用説明断面図。
【図16】隣接建物のある市街地内浸水対応建築物実施例の正面からの側断面図。
【図17】(a)は同上側面からの側断面図と(b)(c)は同平面図。
【図18】プール型基礎の側断面図。
【図19】同上プール型基礎上面台座(5)上に型枠(46)組み立て中の側断面図。
【図20】同上。
【図21】上図(a)は同上。中央図(b)及び下図(c)はその平面図。
【図22】コンクリート打ち込み中の側断面図。
【図23】コンクリート打ち込み完了時の側断面図。
【図24】浮体をジャッキアップして型枠(46)取り外し中の側断面図。
【図25】浮体(1)建造完了時の側断面図。
【図26】伸縮型アンカーポール(2)とポール穴(3)の側断面図。
【図27】(a)は市街地での浸水対応建築物の側断面図と(b)は同上平面図。
【図28】同上入口部(63)の鳥瞰図。
【図29】ポール型アンカー装置とガイド部材型アンカー装置併用実施例の、(a)は側断面図で(b)は平面図。(c)は(a)が浸水した場合の側断面図。
【図30】プール型基礎(7)底面に勾配を設け浮体(1)四方側面にガイド部材(65)と間隙部材(66)を設けたガイド部材型アンカー装置実施例の、(a)は側断面図(b)はそのAA断面での平面図であり、(c)は(b)のBB断面での側断面図。
【符号の説明】
【0070】
1…浮体
2…アンカーポール
3…ポール穴
4…基礎
5…台座
6…メンテ通路
7…プール型基礎
8…ジャッキリフト
9…地面
10…浸水対応建築物
11…荷重台
12…開口部
13…雨水カバ
14…水面線
15…側壁部
16…導水路
17…浮体底板
18…底面
19…板材
20…建家
21…開閉扉
22…駆動装置
23…鞘部材
24…手摺り
25…昇降路
26…ストッパ
27…開口
28…甲板
29…突条
30…コーキング材
31…出入り口
32…架台
33…隣接建築物
34…流水路
35…土台
36…ローラ車輪
37…押しバネ
38…液圧ジャッキ
39…台車
40…自由車輪
41…固定車輪
42…クロスフレーム
43…アクチェータ
44…連通穴
45…浮力型材
46…型枠
47…鉄筋
48…生コンクリート
49…ホース
50…柱
51…側板
52…中鞘
53…先端ポール
54…レセプタ
55…フック
56…カバ
57…床面
58…基礎底面
59…水面
60…排水ポンプ
61…排水管
62…浮体底面
63…入口部
64…浸水
65…ガイド部材
66…間隙部材
67…ピット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波や台風及び河川氾濫等の高潮水難に対し、人身人命及び動産を守る浮体構造の台船型建築物で浮体上に人が居住するように構成し、以下1ないし3の条件を具備したことを特徴とする浸水対応建築物。
1,大部分が地中に埋設された基礎上面に、浮体の気中重量を支える強度を備えた台座を設けると共に台座の上へ浮体を乗せ置く。
2, 台座と台座の間に台座より低いリフトジャッキを導入可能なメンテ通路を形成する。
3、浮体と基礎の間に浮体の浸水による浮力で浮体は鉛直上方にのみ浮上するが、水平方向流動を阻止するアンカー装置を備えている。
【請求項2】
請求項1記載のアンカー装置が基礎と一体で鉛直上方に伸びる壁面構造のガイド部材と、浮体四方側面が間隙部材を介して接触するように構成されている。
【請求項3】
請求項1記載のアンカー装置が、浮体と一体で浮体より鉛直下方に伸びるアンカーポールと、基礎に穿設されたポール穴で、アンカーポール下端部が前記ポール穴に挿入されている構造である。
【請求項4】
請求項1の浸水対応浮体建築物において、メンテ通路内に3台以上のジャッキリフトを導入し、そのジャッキリフトを同期して昇降させ、浮体底部の表面処理加工することを特徴とする浸水対応建築物の建造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−322301(P2006−322301A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191501(P2005−191501)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000251015)
【Fターム(参考)】