説明

浸水検出方法

【課題】屋外装置が浸水しているか否かを精度よく検出することができる屋外装置の浸水検出方法を提供する。
【解決手段】屋外装置内の湿度を取得し、取得した湿度に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算し、前記湿度変動量と予め設定された閾値とを比較し、前記湿度変動量が前記閾値を上回った場合に前記屋外装置が浸水していると判断することで浸水検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋外装置の浸水検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の屋外装置は浸水等の異常が発生した場合に管理者等に知らせるため、種々の手段が講じられている。例えば、屋外装置の筐体内部に湿度センサを設け、筐体内部が乾燥状態から浸水状態になるような急激な湿度の変化を検出する方法が提案されている。
【0003】
関連する技術としては、例えば、下記特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−319640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法は湿度の変化を検出する際に乾燥状態の湿度を基準としており、湿度の大きさにより異常状態を検出するものである。このため、雨天等により筐体内の湿度が上昇している場合には、屋外装置が浸水しても湿度の変動量が少なく、浸水したことを検出することができない場合があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、屋外装置が浸水しているか否かを精度よく検出することができる屋外装置の浸水検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の屋外装置の浸水検出方法は、屋外装置内の湿度を取得し、取得した湿度に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算し、前記湿度変動量と予め設定された閾値とを比較し、前記湿度変動量が前記閾値を上回った場合に前記屋外装置が浸水していると判断することで浸水検出を行う。
【0008】
また、前記屋外装置内の湿度を取得し、前記取得した湿度に基づいて演算された単位時間当たりの湿度変動量と、前記屋外装置の容積、前記透湿手段の透湿性及び所定の温度における飽和水蒸気量に基づいて演算された閾値とを比較し、前記湿度変動量が前記閾値を上回った場合に前記屋外装置が浸水していると判断することで浸水検出を行う。
【0009】
また、浸水検出装置として、屋外装置内の湿度を取得する湿度取得部と、前記湿度取得部により取得された湿度に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算する演算部と、予め設定された閾値を読み出す閾値読出部と、前記湿度変動量が前記閾値を上回った場合に前記屋外装置が浸水していると判断することで浸水検出を行う判断部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
以上に詳述したように本発明によれば、屋外装置が浸水しているか否かを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る第1の屋外装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る第1の屋外装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る第1の屋外装置の湿度検出方法のフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る第2の屋外装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係る第1の屋外装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。第1の屋外装置1は、筐体11、湿度センサ(湿度検出手段)12、透湿手段13、メモリ14、CPU(Central Processing Unit)15及び不揮発性メモリ16を有する。
【0013】
筐体11は第1の屋外装置1の内部に搭載されている種々の機器を保護するものであるが、筐体11内の湿度を保持する観点から、筐体11の一部に透湿手段13を配置するようなものであればよく、密封や密閉する必要はない。湿度センサ(湿度検出手段)12は筐体11内の湿度を検出するセンサであり、所定時間間隔で湿度を検出し、検出した湿度データをメモリ14に送信する。
【0014】
透湿手段13は、筐体11の内部と外部との間で微量の水蒸気や空気を通過させるものである。このため、透湿手段13は筐体11の内部と外部との気圧調整機能を有する。透湿手段13としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を延伸して多孔質化させたフイルム、ポリウレタン樹脂の湿式成膜フイルムのような微多孔質膜を利用するもの、親水性を有するポリウレタン樹脂の無孔質膜などが挙げられる。また、筐体11の材質が水蒸気を透過させるものであれば筐体11自体が透湿手段13であってもよい。透湿手段13の透湿性は、例えばJIS L1099B−2法で測定される。
【0015】
本実施の形態では、第1の屋外装置1が浸水した場合、浸水した水分が透湿手段13により水蒸気として第1の屋外装置1の周囲に順次排出されるため、第1の屋外装置1の内部損傷を軽微に済ませることができる。また、筐体11の内部湿度は、透湿手段13の透湿性能や第1の屋外装置1の周囲の湿度により水蒸気の排出時間が異なるものの、水蒸気の排出が進めば閾値以下に低下する。
【0016】
メモリ14は、湿度センサ12から送信された湿度データを一時的に保存する。CPU15は、湿度変動量の演算等を行う。CPU15の機能構成については図2を用いて後述する。不揮発性メモリ16は、CPU15で演算された結果等を保存する。
【0017】
次に、第1の屋外装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る第1の屋外装置1の機能ブロック図である。なお、以下の説明では、図1の各部を用いて説明する。
【0018】
図2に示すように、第1の屋外装置1は、湿度取得部111、演算部112、閾値読出部113、判断部114及び保存部115を備える。
【0019】
湿度取得部111はメモリ14に保存された湿度データを取得する。演算部112は湿度取得部111で取得した湿度に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算する。演算部112は、例えば、CPU15の内部クロックに基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算してもよく、湿度取得部111が湿度データを取得した時刻に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算してもよい。
【0020】
閾値読出部113は、不揮発性メモリ16に予め保存されている湿度変動量の閾値を読み出す。閾値については後述する。判断部114は、演算部112での演算結果と閾値読出部113により読み出された閾値とを比較し、どちらが大きいか判断する。保存部115は判断部114での判断結果を不揮発性メモリ16に保存する。
【0021】
本実施の形態における閾値について説明する。本実施の形態では、第1の屋外装置1は、例えば内容量(容積)が1m3の筐体11と、透湿性が450g/m2・hで面積が1cm2の透湿手段13とを有するものとする。
【0022】
1m3当たりの飽和水蒸気量は気温が20℃の場合に約17.3gである。この場合、透湿手段13による湿度の通過量は、1時間当たり、
【0023】
【数1】

【0024】
となる。このため、1時間当たりの湿度変動量は、
【0025】
【数2】

【0026】
となる。同様に、気温が0℃の場合、1m3の飽和水蒸気量は約4.85gである。このため、1時間当たりの湿度変動量は約0.93%となる。気温が50℃の場合、1m3の飽和水蒸気量は約82.8gである。このため、1時間当たりの湿度変動量は約0.054%となる。気温が90℃の場合、1m3の飽和水蒸気量は約418gである。このため、1時間当たりの湿度変動量は約0.01077%となる。
【0027】
つまり、内容量が1m3の筐体11と、透湿性が450g/m2・hを示す透湿手段13とを有する第1の屋外装置1では、水が流動すると想定される最低温度である0℃を基準とし、1時間当たり約0.93%以上の湿度変動(上昇)があった場合、第1の屋外装置1が浸水していると判断する。すなわち、閾値は0.93となる。なお、通常時の筐体11内の湿度上昇は、筐体11の内容量及び透湿手段13の透湿性能によるが、外気と比較して緩やかである。
【0028】
次に、第1の屋外装置1の動作について説明するとともに、第1の屋外装置1の浸水検出方法について説明する。図3は、本実施の形態に係る第1の屋外装置1の湿度検出方法のフローチャートである。なお、以下では、図1及び図2の各部を用いて説明する。
【0029】
まず、湿度センサ12は筐体11内の湿度を検出し、検出した湿度データをメモリ14に送信する。湿度取得部111はメモリ14から湿度データを取得する(S1)。
【0030】
次に、演算部112は湿度取得部111が取得した湿度データに基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算する(S2)。一方、閾値読出部113は、前述のように予め定められた閾値を不揮発性メモリ16から読み出す(S3)。
【0031】
そして、判断部114は、演算部112で演算した湿度変動量と、閾値読出部113で取得した閾値(例えば、本実施の形態では0.93)とを比較する(S4)。湿度変動量が閾値より大きい場合(S4、yes)、判断部114は筐体11が浸水したものと判断する。そして、保存部115は判断結果を不揮発性メモリ16に保存する(S5)。一方、湿度変動量が閾値より小さい場合(S4、no)、S1に戻る。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る第1の屋外装置1の浸水検出方法は、判断部114が、演算部112により演算された単位時間当たりの湿度変動量と、閾値読出部113により読み出された湿度変動量の閾値とを比較して第1の屋外装置1が浸水しているか否かを判断する。すなわち、判断部114は湿度変動量に基づいて浸水しているか否かを判断している。このため、筐体11の内部に搭載されている種々の機器が浸水による影響を受ける前に、第1の屋外装置1の浸水による湿度上昇を精度良く検出することができ、第1の屋外装置1が浸水しているか否かの誤検出を防ぐことが可能となる。
【0033】
本実施の形態では、筐体11内に、湿度センサ12、透湿手段13、メモリ14、CPU15及び不揮発性メモリ16を有する第1の屋外装置1について説明したが、図4に示すように、更に、表示装置27及びI/F28を有する第2の屋外装置2であってもよい。
【0034】
表示装置27は、判断部114により判断された結果に基づいて、第2の屋外装置2が浸水していることを表示するための装置である。I/F28は、判断部114により判断された結果を不図示の外部装置に通知する。例えば、I/F28が接点端子の場合には、I/F28と不図示の外部装置のI/Fとの端子間を開放とし、浸水と判断した場合には端子間を短絡にする。この逆の場合であってもよい。
【0035】
このように、第2の屋外装置2を用いた浸水検出方法によれば、視覚的に且つ瞬時に第2の屋外装置2が浸水していることを表示装置27により認識することができる。また、浸水により第2の屋外装置2の機能が停止する前に、不図示の外部装置に浸水状態であることをI/F28を介して通知することができる。このため、第2の屋外装置2が設置されている場所に管理者が居合わせなくとも第2の屋外装置2が浸水している状態を認識することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では筐体11内に湿度センサ12を一つ搭載しているが、筐体11の形状や透湿手段13の位置等を踏まえ、筐体11内に二つ以上の湿度センサ12を、筐体11内の湿度を測定したい箇所に搭載してもよい。湿度センサ12を複数搭載することにより、筐体11内の湿度を漏れなく検出することができ、より正確に浸水しているか否かを判断することができる。なお、複数の湿度センサ12を筐体11内に搭載する場合、各センサには測定誤差があるため、前述の閾値を設定する上で測定誤差を加味する必要がある。
【0037】
また、本実施の形態では、閾値を演算する際、気温が0℃未満では水が凝固するために説明を割愛したものの、設置環境によっては0℃未満の温度を考慮して閾値を演算することもできる。
【0038】
さらに、本実施の形態では、筐体11の内部及び気温の変動を考慮していないが、これらの温度変動を考慮した閾値に基づいて浸水しているか否かを判断してもよい。具体的には、筐体11内に温度センサを設け、この温度センサで検出された温度に基づいて閾値を演算し、浸水しているか否かを判断してもよい。筐体11内の温度は季節、時間などの種々の状況に応じて変化する。このため、種々の状況に応じて最適な閾値を設定することができ、精度よく浸水しているか否かを判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 第1の屋外装置、2 第2の屋外装置、11及び21 筐体、12及び22 湿度センサ(湿度検出手段)、13及び23 透湿手段、14及び24 メモリ、15及び25 CPU、16及び26 不揮発性メモリ、27 表示装置、28 I/F、111 湿度取得部、112 演算部、113 閾値読出部、114 判断部 115 保存部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外装置内の湿度を取得し、
取得した湿度に基づいて単位時間当たりの湿度変動量を演算し、
前記湿度変動量と予め設定された閾値とを比較し、前記湿度変動量が前記閾値を上回った場合に前記屋外装置が浸水していると判断することで浸水検出を行う
ことを特徴とする屋外装置の浸水検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−37347(P2012−37347A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176927(P2010−176927)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】