説明

浸漬塗装装置

【課題】比重の大きい顔料を含む塗料であっても均一に被塗装部品に塗装することができる浸漬塗装装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る浸漬塗装装置1は、塗料と溶剤とからなる処理液6が収容された浸漬槽2に被塗装部品25を浸漬させて塗装する浸漬塗装装置であって、塗料は主成分の樹脂よりも比重の大きい顔料を含み、浸漬槽2に収容された処理液6を吸入する第一ポンプ14と、第一ポンプ14が吸入した処理液6を浸漬槽2内に吐出する吐出ノズル5と、吐出ノズル5を駆動させるノズル駆動機構24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装部品を塗料及び溶剤からなる処理液に浸漬して塗装する浸漬塗装装置に関し、特に、比重の大きい顔料を含んだ塗料を被塗装部品に塗装する浸漬塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等におけるシートベルトのバックルを構成するベース、ラッチ、ピン等は、トングを挿入するための摺動部分を備える。それらの摺動部分には、円滑な摺動機能を付与するために、潤滑性を有する顔料を含んだ塗料(以下、潤滑塗料)の塗膜を形成する必要がある。一般的な潤滑塗料には、例えば、二硫化モリブデンとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂粉末を配合したエポキシ樹脂塗料が使用される。しかし、二硫化モリブデンは、塗料の他の成分及び溶剤に対する相対重量が大きい(すなわち、比重が大きい)ため、沈降及び沈殿しやすい。そこで、塗装方法としてエアー霧化方式、ディップスピン方式等を使用していた。
【0003】
しかし、エアー霧化方式では、霧化した塗料が凹部等に浸入しづらく、凹部等における塗装が十分でないという問題があった。また、ディップスピン方式では、部品を回転させるために部品同士が絡み合うという問題、回転による遠心力のために塗料が部品に付着しにくく塗着効率が劣るという問題等があった。
【0004】
かかる問題を解決する手段として、例えば、特許文献1に記載されたようなドラム塗布方法が提案されている。特許文献1に記載されたドラム塗布方法では、タンク内の塗布液に、塗布液を攪拌させつつドラム(被塗布物)を浸漬させる。具体的には、ドラム(被塗布物)の浸漬時に攪拌手段を旋回させながら下降させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−97257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塗布液に二硫化モリブデンとPTFE樹脂粉末を配合したエポキシ樹脂塗料のように比重の大きい顔料を含んだ塗料を適用した場合、二硫化モリブデンのように比重の大きい顔料の沈降及び沈殿を防ぐためには、特許文献1に記載されたドラム塗布方法では不十分であり、塗料を均一に被塗装部品に塗装することができなかった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑み創案された発明であり、比重の大きい顔料を含む塗料であっても均一に被塗装部品に塗装することができる浸漬塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、塗料と溶剤とからなる処理液が収容された浸漬槽に被塗装部品を浸漬させて塗装する浸漬塗装装置であって、前記塗料は主成分の樹脂よりも比重の大きい顔料を含み、前記浸漬槽に収容された前記処理液を吸入する第一ポンプと、前記第一ポンプが吸入した前記処理液を前記浸漬槽内に吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを駆動させるノズル駆動機構と、を備えることを特徴とする浸漬塗装装置が提供される。
【0009】
例えば、前記浸漬槽からオーバーフローした前記処理液を回収するオーバーフロー槽と、前記オーバーフロー槽が回収した前記処理液を前記吐出ノズルにより前記浸漬槽に供給する第二ポンプと、を備えていてもよい。
【0010】
前記オーバーフロー槽の液面レベルを計測する液面レベル計測センサと、前記液面レベル計測センサが計測する液面レベルを一定に維持するように前記オーバーフロー槽に前記塗料を供給する塗料供給機構と、を備えていてもよい。また、定期的に所定量の前記溶剤を前記オーバーフロー槽に供給する溶剤供給機構を備えていてもよい。さらに、前記オーバーフロー槽内の前記処理液を攪拌する攪拌機構を備えていてもよい。
【0011】
前記ノズル駆動機構は、例えば、前記吐出ノズルをスライドさせる。
【0012】
前記浸漬槽は、底部を形成する半円筒形状と、当該半円筒形状の両端に配置された部分球面形状とから構成され、前記吐出ノズルは、前記半円筒形状に沿って前記処理液を吐出するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係る浸漬塗装装置によれば、吐出ノズルによって浸漬槽内の処理液を攪拌し、さらに当該吐出ノズルを駆動させているため、満遍なく処理液を攪拌することができ、比重の大きい顔料を含む塗料であっても均一に被塗装部品に塗装できる。
【0014】
また、浸漬槽から処理液をオーバーフローさせることによって、浸漬槽における処理液の液面を一定に保つことができ、被塗装部品の処理液に浸漬する位置を一定に保つことができ、塗装の品質を一定にすることができる。
【0015】
また、オーバーフロー槽に塗料を供給して、オーバーフロー槽の液面レベルを一定に維持することによって、浸漬槽の液面レベルからオーバーフロー槽の液面レベルまでの距離を一定に保つことができ、浸漬槽からオーバーフロー槽に処理液が流入する際に生じる泡立ちを低減することができる。
【0016】
また、定期的に所定量の溶剤をオーバーフロー槽に供給することによって、揮発する溶剤の補填を容易に行うことができる。
【0017】
また、オーバーフロー槽内において処理液を攪拌することによって、オーバーフロー槽内の処理液を均一にすることができ、均一な処理液を吐出ノズルを介して浸漬槽に供給することができる。
【0018】
また、浸漬槽の底部を半円筒形状とし、半円筒形状に沿って処理液を循環させることによって、効率的に処理液を攪拌することができる。また、浸漬槽の両端を球面形状とすることによって、顔料が浸漬槽の両端に沈着しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る浸漬塗装装置における処理液の循環機構を説明するための構成図である。
【図2】図1の浸漬槽内における吐出ノズルの動作及び処理液の流れを説明するための模式図であり、(A)は上面図、(B)は断面図、である。
【図3】浸漬塗装装置を含む塗装ラインにおける被塗装部品の流れを説明するための模式図である。
【図4】塗装ラインにおける被塗装部品の処理動作を説明するための模式図であり、(A)は移載時の処理動作、(B)は浸漬時の処理動作、を示している。
【図5】本発明の第二実施形態に係る浸漬塗装装置を含む塗装ラインにおける被塗装部品の流れを説明するための模式図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る浸漬塗装装置における処理液の循環機構を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態について図1乃至図4を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る浸漬塗装装置における処理液の循環機構を説明するための構成図である。また、図2は、図1の浸漬槽内における吐出ノズルの動作及び処理液の流れを説明するための模式図であり、(A)は上面図、(B)は断面図、である。また、図3は、浸漬塗装装置を含む塗装ラインにおける被塗装部品の流れを説明するための模式図である。図4は、塗装ラインにおける被塗装部品の処理動作を説明するための模式図であり、(A)は移載時の処理動作、(B)は浸漬時の処理動作、を示している。
【0021】
図1乃至図3に示すように、第一実施形態に係る浸漬塗装装置1は、塗料と溶剤とからなる処理液6が収容された浸漬槽2に被塗装部品25を浸漬させて塗装する浸漬塗装装置であって、塗料は主成分の樹脂よりも比重の大きい顔料を含み、浸漬槽2に収容された処理液6を吸入する第一ポンプ14と、第一ポンプ14が吸入した処理液6を浸漬槽2内に吐出する吐出ノズル5と、吐出ノズル5を駆動させるノズル駆動機構24と、を備える。
【0022】
前記浸漬塗装装置1は、浸漬槽2からオーバーフローした処理液を回収するオーバーフロー槽3と、オーバーフロー槽3が回収した処理液8を吐出ノズル5により浸漬槽2に供給する第二ポンプ15と、オーバーフロー槽3の液面レベルを計測する液面レベル計測センサ10と、液面レベル計測センサ10が計測する液面レベルを一定に維持するようにオーバーフロー槽3に塗料を供給する塗料供給機構31と、定期的に所定量の溶剤をオーバーフロー槽3に供給する溶剤供給機構32と、オーバーフロー槽3内の処理液8を攪拌する攪拌機構9と、を備えている。
【0023】
前記浸漬槽2は、塗料と溶剤とからなる処理液6を収容する。塗料は、例えば、二硫化モリブデンとPTFE樹脂粉末とを配合したエポキシ樹脂塗料である。二硫化モリブデン及びPTFE樹脂粉末は、塗料に潤滑性及び撥水性を付与する顔料である。ここで、顔料とは、塗料に色を着けたり、塗膜に厚みを持たせたり、特別な性質(機能)を付与するために塗料に含有される成分の総称である。したがって、上述した塗膜に潤滑性を付与する顔料は単なる一例であり、防錆性、耐火性等の機能を塗膜に付与する顔料であってもよい。また、溶剤には、タレ防止の為に沸点の低いものを用いる。
【0024】
また、浸漬槽2内の処理液6は、戻り液配管4によってオーバーフローされ、処理液6の液面レベルは、一定に保持される。そして、戻り液配管4によってオーバーフローされた処理液は、オーバーフロー槽3に回収される。
【0025】
また、浸漬槽2は、図1及び図2に示すように、底部を形成する半円筒形状と、両端に配置された部分球面形状とから構成される。また、浸漬槽2の槽内表面は、鏡面で形成されていることが好ましい。このような構成にすることで、吐出ノズル5を用いた処理液6の攪拌が効率よくでき、二硫化モリブデン等の比重の大きい顔料の沈降、沈殿、沈着等を抑制することができる。
【0026】
また、浸漬槽2の外側には、ウォータージャケット7を配置するようにしてもよい。かかるウォータージャケット7は、加熱・冷却用水を保持して、浸漬槽2内の処理液6を所定の温度に保持する。加熱・冷却装置19は、ウォータージャケット7内の加熱・冷却用水の温度が高い場合には、ウォータージャケット7より加熱・冷却用水を吸入してチラーにより冷却してウォータージャケット7に供給し、ウォータージャケット7内の加熱・冷却用水の温度が低い場合には、ウォータージャケット7より加熱・冷却用水を吸入して電気ヒーターにより加熱してウォータージャケット7に供給し、ウォータージャケット7内の加熱・冷却用水を一定の温度に保持する。その際に、ポンプ20は、加熱・冷却用水を循環させるために使用される。バルブ18は、加熱・冷却用水の液流の停止や開放を行う。かかるウォータージャケット7を配置することにより、溶剤の蒸発による冷却、被塗装部品25が持ち込む熱、周囲の気温変化等による処理液6の温度変化を抑制することができ、処理液6の粘度の変化を抑制することができる。
【0027】
前記第一ポンプ14は、浸漬槽2内の処理液6を循環させる。具体的には、第一ポンプ14は、浸漬槽2と吐出ノズル5を繋ぐ配管系列に配置されており、浸漬槽2と第一ポンプ14との間には液流の停止や開放を行うバルブ13が配置されている。なお、第一ポンプ14には、例えば、ダイヤフラムポンプが使用されるが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記吐出ノズル5は、図1及び図2に示すように、第一ポンプ14が浸漬槽2から吸入した処理液6及び第二ポンプ15がオーバーフロー槽3から吸入した処理液8を浸漬槽2内に吐出する。このとき、吐出ノズル5は、少なくとも吐出口が浸漬槽2内に浸漬されており、浸漬槽2の底部の半円形に沿って処理液6,8を吐出するように調整されていることが好ましい。
【0029】
また、吐出ノズル5は、図2(A)に示すように、ノズル駆動機構24によって、Y方向(浸漬槽2の長手方向)にスライドされる。また、吐出ノズル5は、図2(B)に示すように、循環及び攪拌による処理液6の液面の波動が少なくなる様に、ノズル駆動機構24によって角度が調整される。なお、吐出ノズル5は、フレキシブルホース等により配管系列に接続されており、吐出ノズル5の移動に追従できるように構成されている。
【0030】
前記ノズル駆動機構24は、図2(A)及び(B)に示すように、例えば、レール24aと、スライダ24bと、アクチュエータ24cと、ノズル支持部24dと、を備える。アクチュエータ24cは、レール24aに沿ってスライダ24bをスライドさせる。スライダ24bには、吐出ノズル5を支持するノズル支持部24dが据え付けられ、ノズル支持部24dは、XZ平面上で角度調整可能に構成されている。なお、かかるノズル駆動機構24は、単なる一例であり、ラック・ピニオン、ボールねじ、エアシリンダー等を用いて往復動可能に構成したものであってもよい。
【0031】
前記オーバーフロー槽3は、浸漬槽2からオーバーフローした処理液8を回収する。オーバーフロー槽3の底部は、処理液8を攪拌しやすくするために球面等の曲面に形成されていることが好ましい。また、オーバーフロー槽3は、戻り液配管4により浸漬槽2と接続されている。戻り液配管4の傾斜は、オーバーフローした処理液8がオーバーフロー槽3内に流入する際の泡立ちを抑制するために、できるだけ緩くすることが好ましい。
【0032】
前記第二ポンプ15は、オーバーフロー槽3の処理液8を浸漬槽2に供給すると共に、オーバーフロー槽3の処理液8を吸入して、再びオーバーフロー槽3に戻し、オーバーフロー槽3内の処理液8を循環及び攪拌させる。第二ポンプ15が吸入した処理液8は、バルブ16により、浸漬槽2に供給するものとオーバーフロー槽3に戻されるとに振り分けられる。また、浸漬槽2に供給される処理液8は、バルブ17を介して第一ポンプ14が接続された浸漬槽2内の処理液6を循環させる配管系列に接続されている。なお、第二ポンプ15には、例えば、ダイヤフラムポンプが使用されるが、これに限定されるものではない。
【0033】
また、オーバーフロー槽3内の処理液8の液面レベルは、天井に設置された液面レベル計測センサ10によって計測される。液面レベル計測センサ10は、処理液8に接触することなく、光や超音波等を用いて処理液8の液面レベルを計測可能なものであればよい。液面レベル計測センサ10は、処理液8の液面レベルが下がった場合に、塗料供給機構31にその旨を示す信号を発信する。例えば、被塗装部品25が浸漬槽2内の処理液6に浸漬されて、引上げられ、塗装によるロスがあった場合、浸漬槽2内の処理液6は循環される処理液によってオーバーフローし、液面レベルが一定に保たれるため、オーバーフロー槽3内の処理液8の液量が減ることとなり、オーバーフロー槽3内の処理液8の液面レベルが下がることとなる。したがって、オーバーフロー槽3内の処理液8の液面レベルを計測することによって、処理液の減り具合や濃度を知ることができる。
【0034】
前記塗料供給機構31は、液面レベル計測センサ10と連動してオーバーフロー槽3に塗料を供給する。かかる塗料供給機構31は、例えば、図1に示したように、塗料供給槽11、ポンプ21、三方弁22等により構成される。そして、液面レベル計測センサ10の信号は、三方弁22に発信される。
【0035】
塗料供給槽11は、予め粘度が調整された塗料(例えば、二硫化モリブデンとPTFE樹脂粉末を配合したエポキシ樹脂塗料)を格納する。ポンプ21は、塗料供給槽11内の塗料を攪拌させるためと、塗料供給槽11内の塗料をオーバーフロー槽3に供給するために使用される。
【0036】
三方弁22は、処理液8の液面レベルが下がった旨の信号を受信すると、塗料供給槽11に格納されている塗料をオーバーフロー槽3に供給して、処理液8の液面レベルを維持する。詳述すると、三方弁22は、通常時は、塗料供給槽11内の塗料を攪拌するためにポンプ21が吸入した塗料を塗料供給槽11に戻すように作用しているが、液面レベル計測センサ10より信号を受信した時は、塗料供給槽11からの塗料をオーバーフロー槽3に供給するように作用する。
【0037】
前記溶剤供給機構32は、オーバーフロー槽3に溶剤を供給する。かかる溶剤供給機構32は、例えば、図1に示したように、溶剤供給槽12、ポンプ23等により構成される。
【0038】
溶剤供給槽12は、沸点の低い溶剤を格納し、定期的に溶剤をオーバーフロー槽3に供給して、浸漬槽2及びオーバーフロー槽3から蒸発した分の溶剤を補充する。ポンプ23は、溶剤をオーバーフロー槽3に供給するために使用される。
【0039】
前記攪拌機構9は、オーバーフロー槽3内の処理液8を攪拌して均一にする。かかる攪拌機構9は、例えば、シャフト、スクリュー、これらを回転させるエアモータ等により構成される。オーバーフロー槽3には、浸漬槽2からオーバーフローした処理液8、塗料供給機構31により供給される塗料、溶剤供給機構32により供給される溶剤、が含まれるため、これらを攪拌して濃度を均一にする必要がある。かかる攪拌には、第二ポンプ15から戻される処理液8の流入と攪拌機構9とが用いられる。第二ポンプ15から戻される処理液8の流入のみで十分に攪拌できる場合には、攪拌機構9は省略してもよい。
【0040】
以上、浸漬塗装装置1の浸漬槽2における処理液の循環に関する機構を説明したが、以下、図3及び図4を参照しながら、浸漬塗装装置1の浸漬槽2に被塗装部品25を浸漬させる機構について説明する。
【0041】
図3に示すように、被塗装部品25は、部品ハンガー26に懸架されて、図示しないハンガー移動装置によって、浸漬塗装装置1の近傍まで搬送される。その後、被塗装部品25を懸架した部品ハンガー26は、移載装置28によって、ハンガー移動装置から昇降装置27に移載される。そして、昇降装置27は、部品ハンガー26を降ろし、部品ハンガー26が懸架する被塗装部品25を浸漬槽2内の処理液6に浸漬させる。一定時間経過後、昇降装置27は、部品ハンガー26を引上げ、部品ハンガー26が懸架する被塗装部品25を浸漬槽2内の処理液6から引上げる。この際、昇降装置27は、被塗装部品25の形状、長さ、塗料の種類等の条件に応じて、被塗装部品25の引上げ速度を調整し、最適な引上げ速度で被塗装部品25を引上げ、均一な塗膜を得るように調整される。特に、被塗装部品25のタレ速度と同じ速度で引上げると液ダレや液溜まりの少ない良好な塗膜を得ることができる。また、被塗装部品25を処理液6から引上げた後の部品ハンガー26は、移載装置28によって、図示しないハンガー移動装置に搭載され、次の工程に搬送される。
【0042】
一つの部品ハンガー26に懸架された複数の被塗装部品25が浸漬塗装装置1によって塗装される一サイクルは、例えば、移載1秒、浸漬2秒、引上げ16秒、払い出し1秒で実施される。なお、この時間設定は単なる一例であり、被塗装部品25の形状、長さ、塗料の種類等の条件に応じて、任意に設定することができる。
【0043】
図4(A)に示すように、部品ハンガー26は、浸漬槽2の長手方向(Y軸方向)に沿って複数の被塗装部品25を懸架できるように構成されており、その長手方向両端部に係止部26aが形成されている。また、移載装置28は、先端部に部品ハンガー26の係止部26aに係止可能なフック28aを有する。そして、部品ハンガー26の移載時には、ハンガー移動装置によって搬送された部品ハンガー26の係止部26aに移載装置28のフック28aを挿入可能な位置に配置しておく。係止部26aにフック28aが挿入された後、移載装置28により部品ハンガー26を持ち上げ、ハンガー移動装置から離脱させる。なお、部品ハンガー26及び移載装置28の構成は、図示したものに限定されるものではない。
【0044】
図4(B)に示すように、昇降装置27は、部品ハンガー26の長手方向両端部を支持可能な支持台27aを有する。そして、この支持台27a上に移載装置28により部品ハンガー26が搬送され載置される。移載装置28は、部品ハンガー26を支持台27a上に載置した後、X方向に移動させられて退避する。その後、昇降装置27は、部品ハンガー26をZ軸方向に降ろし、被塗装部品25を浸漬槽2の処理液6に浸漬させる。なお、昇降装置27の構成は、図示したものに限定されるものではない。
【0045】
図5は、本発明の第二実施形態に係る浸漬塗装装置を含む塗装ラインにおける被塗装部品の流れを説明するための模式図である。第二実施形態の浸漬塗装装置1は、一つの塗装ラインに、異なる塗料を含んだ処理液2A,2Bを収容した複数(ここでは二つ)の浸漬槽6A,6Bを配置したものである。このように異なる塗料を含んだ複数の浸漬槽6A,6Bを配置することにより、一つの塗装ラインで異なる部品の異なる塗装を容易に行うことができる。また、かかる浸漬塗装装置1は、複数の塗膜を重ねて形成する場合にも使用することができるし、同じ塗料を浸漬槽6A,6Bに収容して二度塗りする場合にも使用することができる。
【0046】
図6は、本発明の第三実施形態に係る浸漬塗装装置における処理液の循環機構を説明するための構成図である。第三実施形態の浸漬塗装装置1は、複数(ここでは二つ)の吐出ノズル5A,5Bを備えたものである。この場合、吐出ノズル5Aは、第一ポンプ14Aがバルブ29を介して浸漬槽2から吸入した処理液6を浸漬槽2に循環させる。また、吐出ノズル5Bは、第一ポンプ14Bが浸漬槽2から吸入した処理液6を循環させると共に、第二ポンプ15がオーバーフロー槽3から吸入した処理液8を浸漬槽2に供給可能に構成されている。その他の構成については、第一実施形態と同様である。
【0047】
以上、上記実施形態によれば、吐出ノズル5が浸漬槽2内の処理液6を循環及び攪拌させるため、二硫化モリブデン等の比重の大きい顔料の沈降や沈殿を抑制することができ、処理液6中の顔料の濃度を均一化すると共に処理液の粘度を一定に保つことができ、塗膜の均一化が図れ、不良の削減等による品質向上や省資源化を図ることができる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明は、シートベルトのバックル以外に種々の被塗装部品にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1…浸漬塗装装置
2,2A,2B…浸漬槽
3…オーバーフロー槽
4…戻り液配管
5,5A,5B…吐出ノズル
6,6A,6B,8…処理液
7…ウォータージャケット
9…攪拌機構
10…液面レベル計測センサ
11…塗料供給槽
12…溶剤供給槽
13,16,17,18,29…バルブ
14,14A,14B…第一ポンプ
15…第二ポンプ
19…加熱・冷却装置
20,21,23…ポンプ
24,24A,24B…ノズル駆動機構
24a…レール
24b…スライダ
24c…アクチュエータ
24d…ノズル支持部
25…被塗装部品
26…部品ハンガー
26a…係止部
27…昇降装置
27a…支持台
28…移載装置
28a…フック
31…塗料供給機構
32…溶剤供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料と溶剤とからなる処理液が収容された浸漬槽に被塗装部品を浸漬させて塗装する浸漬塗装装置において、
前記塗料は主成分の樹脂よりも比重の大きい顔料を含み、
前記浸漬槽に収容された前記処理液を吸入する第一ポンプと、
前記第一ポンプが吸入した前記処理液を前記浸漬槽内に吐出する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルを駆動させるノズル駆動機構と、
を備えることを特徴とする浸漬塗装装置。
【請求項2】
前記浸漬槽からオーバーフローした前記処理液を回収するオーバーフロー槽と、前記オーバーフロー槽が回収した前記処理液を前記吐出ノズルにより前記浸漬槽に供給する第二ポンプと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の浸漬塗装装置。
【請求項3】
前記オーバーフロー槽の液面レベルを計測する液面レベル計測センサと、前記液面レベル計測センサが計測する液面レベルを一定に維持するように前記オーバーフロー槽に前記塗料を供給する塗料供給機構と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の浸漬塗装装置。
【請求項4】
定期的に所定量の前記溶剤を前記オーバーフロー槽に供給する溶剤供給機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の浸漬塗装装置。
【請求項5】
前記オーバーフロー槽内の前記処理液を攪拌する攪拌機構を備えることを特徴とする請求項4に記載の浸漬塗装装置。
【請求項6】
前記ノズル駆動機構は、前記吐出ノズルをスライドさせることを特徴とする請求項1に記載の浸漬塗装装置。
【請求項7】
前記浸漬槽は、底部を形成する半円筒形状と、当該半円筒形状の両端に配置された部分球面形状とから構成され、前記吐出ノズルは、前記半円筒形状に沿って前記処理液を吐出することを特徴とする請求項6に記載の浸漬塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161326(P2011−161326A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24263(P2010−24263)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】