説明

浸透送り出しシステム及び浸透送り出しシステムの始動時間を短縮する方法

【課題】
【解決手段】本発明は、所望の薬剤をある時間に亙って制御された率にて送り出すことのできる浸透駆動の薬剤送り出しシステムの始動時間を短縮する装置及び方法を含む。特に、本発明は、水と混和可な非水系で非圧縮性の液体フィラーにて予装填された半透過性材料を有する、予装填した膜を備える浸透ポンプを含む。本発明は、かかる浸透ポンプを製造する方法を更に含む。本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた予装填した膜は、予装填されない半透過性膜を有する浸透ポンプに比して平均始動時間を著しく短縮することが判明している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「浸透送り出しシステム及び浸透送り出しシステムの始動時間を短縮する方法(Osmotic Delivery System and Method for Decreasing Start−Up Times for Osmotic Delivery Systems)」について、2003年3月31日付けで出願された、米国仮特許出願第60/459,473号の出願日の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、薬剤を制御された率にて送り出すための送り出し装置に関する。より具体的には、本発明は、薬剤送り出し装置及び所望の薬剤をある時間に亙って制御された率にて送り出すことのできる浸透駆動型の薬剤送り出しシステムの始動時間を短縮する方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薬剤のような有益な剤を時間に亙って制御された状態にて送り出すことは、多岐に亙る方法により実現されている。ある時間に亙り制御された状態にて薬剤を送り出す1つの方法は、浸透送り出し装置を使用することを含む。これらの装置は、選んだ薬剤を予め選んだ投与期間に亙って制御された仕方にて解放するため植え込むことができる。カリフォルニア州、マウンテンビューのALZAコーポレーションに譲渡された、米国特許明細書3,797,492号、米国特許明細書3,987,790号、米国特許明細書4,008,719号、米国特許明細書4,865,845号、米国特許明細書5,057,318号、米国特許明細書5,059,423号、米国特許明細書5,112,614号、米国特許明細書5,137,727号、米国特許明細書5,151,093号、米国特許明細書5,234,692号、米国特許明細書5,234,693号、米国特許明細書5,279,6ら08号、米国特許明細書5,336,057号、米国特許明細書5,728,396号、米国特許明細書5,985,305号、米国特許明細書5,997,527号、米国特許明細書5,997,902号、米国特許明細書6,113,938号、米国特許明細書6,132,420号、米国特許明細書6,217,906号、米国特許明細書6,261,584号、米国特許明細書6,270,787号、米国特許明細書6,375,978号には、人間又は動物の被験者に植え込むことのできる色々な一例としての浸透送り出し装置が記載されている。
【0004】
浸透送り出し装置は、一般に、「浸透ポンプ」と称されており、典型的に、リザーバと、膨張可能な浸透性材料と、薬剤フォーミレーションと、少なくとも1つの送り出しオリフィスとを有している。膨張可能な浸透性材料及び薬剤フォーミレーションが別個の材料にて形成される場合、膨張可能な浸透性材料及び薬剤フォーミレーションは、リザーバ内にて可動のピストンのような部材によって分離させることができる。浸透ポンプ内に含まれたリザーバの少なくとも一部分は、全体として半透過性であり、膨張可能な浸透性材料又は薬剤フォーミレーションを形成する材料がリザーバから望ましくなく逃げるのを防止し又は最小にする働きをしつつ、水がシステム内に吸引されるのを許容する。浸透ポンプ内に含まれた浸透性材料は、典型的に水を作動環境からリザーバの半透過性部分を通じて浸透ポンプ内に吸引する。装置内に、特に、浸透性材料内に水が吸引されるに伴い、浸透性材料は膨張し、また、薬剤フォーミレーションは、選んだ解放率又は解放率プロフィールにて浸透ポンプの送り出しオリフィスを通じて排出される。
【0005】
既知の浸透ポンプは、薬剤を制御された率にて送り出すのに有用ではあるが、潜在的な短所もある。例えば、既知の設計に従った浸透ポンプは、始動時間が不便な程に長い。本明細書にて使用するように、「始動時間」とは、作動環境に導入された後、浸透ポンプが所期の解放率、又は解放率プロフィールの少なくとも90%を実現するのに必要な時間を意味する。「作動環境」という語は、浸透ポンプを導入することができ、また、所望の時間に亙って浸透ポンプの作動を支えることのできる任意の環境を意味する。場合によっては、既知の浸透ポンプに対して要求される始動時間は、2週間以上に及ぶことがある。
【0006】
浸透ポンプが必要とする始動時間を短縮するため、ALZAコーポレーションは、米国特許明細書6,132,420号(「6,132,420号特許」と称する)に記載された装置及び方法を開発した。6,132,420号特許に記載された技術は、始動時間を短縮するが、6,132,420号特許の教示に従って設計された装置及び方法の平均始動時間は、依然として、特定の適用例において不便な程長く、従って、始動時間を更に短縮する浸透ポンプを提供する装置又は方法は有益であろう。このため、平均始動時間を更に短縮し且つ、装置の作動が開始するときの急激な薬剤フォーミレーションの解放の可能性を減少させる働きをする浸透ポンプを提供するならば、当該技術にて1つの改良となろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の装置及び方法は、短縮した平均始動時間を示す浸透ポンプを提供することにより、既知の浸透送り出し装置の潜在的な短所を取り扱うものである。本発明に従った浸透ポンプは、水と混和可能な非水系の非圧縮性液体フィラーが予装填された半透過性材料を有する予装填した膜を備えている。本明細書にて使用するように、「予装填」及び「予装填した」という語は、予装填した膜が関係した浸透ポンプが作動環境に送り出される前に、予装填した膜内に含まれた半透過性材料内に所望の量の液体フィラーが吸収されることを意味する。液体フィラーは、水と混和可能であり且つ、半透過性膜を形成する材料によって吸収される実質的に非圧縮性の非水系液体を含む。本発明の浸透ポンプ内に含まれた予装填した膜内に吸引された液体フィラーの量は、半透過性材料を形成する材料の性質、使用した液体フィラーの型式、始動時間の所望の短縮程度に従って変更することができる。本発明に従った予装填した膜を有する浸透ポンプを提供することにより、浸透ポンプの平均始動時間が著しく短縮される結果となることが分かった。
【0008】
予装填した膜に加えて、本発明に従った浸透ポンプは、リザーバと、浸透性組成物と、薬剤フォーミレーションと、送り出しオリフィスと、また、選択的に、ピストンと、浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーとを更に有している。浸透ポンプは、選んだ作動環境からの水が予装填した膜を通して浸透性組成物内に吸引され、薬剤フォーミレーションが送り出しオリフィスから押し出されるようにする形態とされている。所望であるとき、浸透性組成物と薬剤フォーミレーションとの間にピストンを配置することができる。ピストンを含むことは、薬剤フォーミレーションを浸透性組成物との接触から密封する作用を果たし且つ、薬剤フォーミレーションを浸透ポンプからより効率良く又は完全に送り出すことを容易にする更なる作用を果たすことができる。更に、使用される浸透性組成物の型式に依存して、本発明の浸透ポンプは、第二のフィラー材料が浸透性組成物の周りに分配され、浸透性組成物とリザーバとの間、又は、含まれているならば、ピストンとの間に形成された全ての間隙が第二のフィラーによって占められるように製造することができる。第二のフィラーが浸透性組成物の周りに分配された浸透ポンプを提供することは、浸透性組成物の周りに形成された空気又は気体の空所に起因するであろう望ましくない性能上の特徴を軽減し又は緩和する作用を果たす。
【0009】
1つの実施の形態において、本発明の浸透ポンプは、液体フィラーにて飽和された予装填した膜を有している。本発明に従った飽和した、予装填膜は、半透過性材料と、半透過性材料中に吸収されたある量の液体フィラーとを有しており、半透過性材料内に吸収された液体フィラーの量は、追加的な量の液体フィラーを容易に吸収することができない予装填した膜となるようなものである。
【0010】
別の実施の形態において、本発明の浸透装置は、所望の薬剤送り出し持続時間の3%以下である、平均始動時間を有する浸透ポンプを提供するのに十分な液体フィラーにて予装填された半透過性膜を有している。このように、例えば、本発明に従った浸透ポンプが約100日の期間、所望の薬剤を送り出す設計とされているならば、半透過性膜には、約3日以下の平均始動時間を提供するのに十分な液体フィラーにて予装填されることになる。
【0011】
更に別の実施の形態において、本発明の浸透装置は、浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーを有し、また、本発明に従った予装填した膜を有する浸透ポンプを備えている。本発明の浸透ポンプのこの実施の形態に含まれた予装填した膜は、第二のフィラーのみを有する浸透ポンプにより提供される始動時間よりも少なくとも10%短い平均始動時間を示す浸透ポンプを提供するのに十分な吸収された液体フィラーを有する。
【0012】
別の形態において、本発明は、浸透ポンプの始動時間を短縮する方法を含む。1つの実施の形態において、本発明の方法は、予装填した膜を有する浸透ポンプを提供するステップを含む。予装填した膜を提供することは、色々な技術を使用して行うことができる。例えば、適宜な半透過性膜を所望の量の液体フィラーを吸収することになる状態に曝すだけで予装填した膜を提供することができる。かかる状態は、例えば、所望の量の液体フィラーが所望の時間内にて半透過性材料内に吸着されるのを許容する状態下にて半透過性材料の少なくとも一部分をある量の液体フィラー中に浸漬させることを含むことができる。しかし、本発明の方法は、また、予装填した膜内に含まれた半透過性材料が始動時間を所望通りに短縮する量にて液体フィラーを吸収することを許容する任意の他の技術を含むこともできる。
【0013】
本発明の方法は、相対的により多く又は少ない液体フィラーを有する予装填した膜を提供し得るよう変更することができる。1つの実施の形態において、本発明の方法は、液体フィラーにて飽和された半透過性材料を有する予装填した膜を提供するステップを含む。別の実施の形態において、本発明の方法は、所望の薬剤送り出し持続時間の少なくとも3%以下である、平均始動時間を提供する予装填した膜を提供するのに十分な量の液体フィラーが吸収された半透過性材料を有する予装填した膜を提供するステップを含む。
【0014】
本発明の方法は、浸透ポンプの所望の形態に従って変更することもできる。例えば、本発明の方法が浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーを有する浸透ポンプに対する予装填した膜を提供するステップを含む場合、該方法は、第二のフィラーのみを含む浸透ポンプに比して少なくとも10%だけ浸透ポンプの平均始動時間を短縮させる予装填した膜を形成するのに十分な液体フィラーを吸収することを許容する状態に対し、予装填した膜内に含まれた半透過性材料を曝すステップを含むことが好ましい。また、浸透ポンプの形態に依存して、本発明の方法は、半透過性材料が浸透ポンプのリザーバと関係付けられた後、半透過性材料に所望の量の液体フィラーを装填することを含むことが好ましい。特に、予装填した膜内に含まれた半透過性材料が浸透ポンプのリザーバ内に挿入され、又は、該リザーバ内に保持される場合、本発明の方法は、半透過性材料がリザーバの上に又はリザーバ内に配置された後、半透過性材料を液体フィラーにて予装填するステップを含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に従った浸透ポンプ10は、図1に示されている。図1に示した形態は、本発明に従った浸透ポンプの一例にしか過ぎず、本発明を限定するものとみなすべきではない。本発明は、全体として、浸透ポンプに適用可能であり、本発明に従った浸透ポンプは、広範囲に亙る所望の寸法又は形状に順応する設計とすることができる。更に、本発明に従った浸透ポンプは、色々な環境にて適用し又は経口投与、胃内投与又は植込みによるような、色々な経路によって投与し得る設計とすることができる。
【0016】
本発明に従った浸透ポンプ10は、リザーバ12に固定され、リザーバ12の周りに配置され、リザーバ12内に挿入され又は保持された予装填した膜28を有している。本発明の浸透ポンプ10は、また、浸透性組成物26と、薬剤フォーミレーション19と、送り出しオリフィス18と、選択的に、ピストン22と、又は第二のフィラー30とを有している。これらが含まれる場合、ピストン22は、浸透性組成物26と薬剤フォーミレーション19との間に配置され、第二のフィラー30は浸透性組成物26の周りに分配される。本発明に従った予装填した膜を有する浸透ポンプを提供することにより、始動時間を顕著に短縮することが実現可能であることが分かった。
【0017】
本発明に従った浸透ポンプ10内に含まれた予装填した膜28は、使用環境からの水系流体が浸透ポンプ10及び浸透性組成物26内に進むのを許容する。しかし、予装填した膜28を形成する半透過性材料は、リザーブ内に収容された材料に対し及び作動環境中に存在するその他の成分に対しほぼ不透過性である。図1に示すように、本発明の浸透ポンプ10の予装填した膜28は、リザーバ12内に形成された第一の開口部15内に配置されたプラグとして形成することが可能である。予装填した膜28及びリザーバ12の双方は、薬剤フォーミレーション19を作動環境に送り出す間、予装填した膜28が実質的に所要位置に止まるように形成される。本発明の浸透ポンプ10内に含まれる予充填膜28を使用する半透過性膜を形成するのに適した材料及び方法は、例えば、米国特許明細書3,797,492号、米国特許明細書3,987,790号、米国特許明細書4,008,719号、米国特許明細書4,865,845号、米国特許明細書5,057,318号、米国特許明細書5,059,423号、米国特許明細書5,112,614号、米国特許明細書5,137,727号、米国特許明細書5,151,093号、米国特許明細書5,234,692号、米国特許明細書5,234,693号、米国特許明細書5,279,608号、米国特許明細書5,336,057号、米国特許明細書5,728,396号、米国特許明細書5,985,305号、米国特許明細書5,997,527号、米国特許明細書5,997,902号、米国特許明細書6,113,938号、米国特許明細書6,132,420号、米国特許明細書6,217,906号、米国特許明細書6,261,584号、米国特許明細書6,270,787号、米国特許明細書6,375,978号に詳細に記載されている。
【0018】
本発明に従った浸透ポンプ10の予装填した膜28を形成する液体フィラーとして使用するのに適した材料は、実質的に非圧縮性で且つ、水と混和可能であり、また、予装填した膜28内に含まれる半透過性材料により吸収することができ、所期の環境内に導入するのに適しており且つ、浸透ポンプ10のその他の構成要素と適合可能な任意の非水系液体を含む。本明細書にて使用するように、「適合可能」とは、浸透ポンプ10の所望の性能に実質的に悪影響を与えるような仕方にて浸透ポンプの構成要素(例えば、リザーバ12、予装填した膜28の半透過性材料、浸透性組成物26、薬剤フォーミレーション19、送り出しオリフィス18、又は含まれる場合、ピストン22)と液体が相互作用しないことを意味する。本発明に従った浸透ポンプ10の予装填した膜28を形成するのに適した液体フィラーの特定の例は、ポリエチレングリコール(PEG)400、PEG1000のようなポロエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、有機質液体を含むが、これにのみ限定されるものではない。所望であるならば、2つ又はより多くの異なる液体フィラー材料を使用して本発明の浸透ポンプ10の予装填した膜28を提供することができる。
【0019】
本発明の浸透ポンプにて有用な予装填した膜を提供し得るよう半透過性材料を予装填する結果、全体として、半透過性材料は膨潤する。特定のメカニズムに制限されることなく、液体フィラーの予装填に起因する膨潤は、本発明に従った浸透ポンプが示す、始動時間を短縮する作用を果たすものと考えられる。特に、浸透ポンプが予装填されない膜を有する場合、浸透ポンプがある作動環境内で機能し始めるときに膜内に吸引された水は、簡単に該膜を通過しない。その代わり、ポンプが作動開始するとき膜に入る水の少なくとも一部分は、膜材料を膨潤させる作用を果たし、また、水が膜を膨潤させる作用を果たすとき、水は浸透性材料内に吸引され且つ、ポンプを駆動するよう直ちに利用できない。このように、膜材料が少なくともある程度まで膨潤する迄、浸透ポンプは、始動し始めない。しかし、膜に対し液体フィラーを予装填することは、浸透ポンプがある作動環境内に導入される前に、膜内に含まれた半透過性材料を膨潤させる作用を果たす。その結果、本発明に従った予装填した膜を含む浸透ポンプは、膜を通る水の所望の流れを迅速に実現するものと考えられ、それは、液体フィラーは、半透過性材料を予め膨潤させ、水が半透過性材料を通り且つ、浸透ポンプを駆動するために使用される浸透性組成物内に入るよう自由にするからである。時間の経過に伴い、半透過性材料内に最初に装填された液体フィラーは浸出し、また、大部分、水によって置換される可能性があるが、かかる過程は、相対的に漸進的に生じるものと考えられ、送り出し率に顕著な影響を与えることはない。
【0020】
予装填した膜の半透過性材料及び本発明の浸透ポンプ内に吸収された液体フィラーの量は、使用される液体フィラー、予装填した膜に含まれる半透過性材料及び所望の始動時間の短縮に従って変更することができる。全体として、予装填した膜内に含まれた半透過性材料の飽和は、全体として始動時間を最大程度短縮すると考えられるから、予装填した膜は液体フィラーにて飽和されることが好ましい。本発明に従った飽和した予装填した膜は、半透過性材料と、該半透過性材料中に吸収されたある量の液体フィラーとを有し、半透過性材料中に吸収された液体フィラーの量は、追加的な量の液体フィラーを容易に吸収することのできない予装填した膜となるようなものである。
【0021】
膜を形成する材料を飽和させるのに必要な液体フィラーの量は、その他の因子の内、半透過性材料、液体フィラー、膜の形態、膜が浸透ポンプの残りの構成要素と関係付けられる仕方に依存するであろう。しかし、本発明に従った飽和した予装填膜の製造は、半透過性材料が液体フィラーにより飽和されることになる状態下にて適宜な半透過性材料を液体フィラーに露呈させることにより、容易に実現される。選んだ液体フィラーにより所定の膜を形成する材料を飽和させるのに必要な状態は、当該技術分野の当業者による日常的な実験を通じて容易に確認することが可能である。
【0022】
しかし、所望の始動時間の短縮を実現するために予装填した膜の半透過性材料を飽和させる必要はなく、また、本発明の浸透ポンプ内に含まれた予装填した膜は、液体フィラーにて飽和された半透過性材料に制限されるものではない。本発明の浸透ポンプの別の実施の形態において、予装填した膜は、薬剤の所望の送り出し持続時間の3%以下である平均的始動時間を示す浸透ポンプを提供するのに十分な液体フィラーを内蔵する半透過性材料により形成される。好ましくは、かかる浸透ポンプの予装填した膜は、薬剤の所望の送り出し持続時間の2%以下である始動時間を提供するのに十分な量の液体フィラーを有するものとし、予装填した膜は、薬剤の所望の送り出し持続時間の1%以下の始動時間を提供するのに十分な液体フィラーを含むものとする。
【0023】
予充填膜に加えて、本発明に従った浸透ポンプ10はまた、浸透性組成物26の周りに分配された第二の添加剤又はフィラーを含むこともできる。この第二のフィラー30は、米国特許明細書6,132,420号に記載されたように、実質的に非圧縮性であり、所期の作動環境にて使用するのに適し、また、浸透ポンプのその他の構成要素と適合可能であり、空気又は気体を浸透性組成物26の周りから変位させる作用を果たし、また、浸透性組成物26を膨潤及び固着させない液体又はゲル組成物のような任意の流動可能な組成物とすることができる。本発明に従った浸透ポンプにて使用するのに適した第二のフィラー30を提供するのに適した材料及び方法もまた、米国特許明細書6,132,420号に記載されている。本発明に従った浸透ポンプ10にて使用される第二のフィラー30は、浸透ポンプ10の予装填した膜28を形成するのに使用される実質的に非圧縮性で且つ、非水系液体フィラーと同一とし、又は異なるものとすることができる。
【0024】
浸透性組成物26が錠剤状組成物として形成される場合、第二のフィラー30を含むことは特に役立つ。機械加工及び錠剤化の許容公差は、浸透性組成物26と取り巻くリザーバ壁との間に空隙が存在することを必要とする。錠剤化した材料の形状又は輪郭外形に僅かな凹凸があっても浸透性組成物26と本発明に従った浸透ポンプ10内に含まれたピストン22との間に空隙を形成する可能性がある。典型的に、約0.0254mmないし2.54mm(0.001ないし0.1インチ)の範囲にあるかかる空隙は、空気又はその他の気体状材料にて充填され、また、かかる空隙の最小のものでさえ、数日ないし数週間の始動遅れを生じさせる可能性がある。更に、空気が充填された空隙は、浸透ポンプが植え込まれた患者がスキューバダイビングし又は高度の地まで旅行したようなてとき、浸透ポンプに異なる外部圧力が加わるとき、薬剤フォーミュレーションの送り出し量に悪影響を与える。第二のフィラー30を含むことは、浸透性組成物26の周りの全ての空隙が空気又は別の気体状材料にて充填される程度を減少し又は解消し、これによりかかる空隙が発生させる可能性のある遅れ及び薬剤の送り出しの不均一さを軽減し又は解消する作用を果たす。
【0025】
本発明に従った浸透ポンプが第二のフィルタを有する場合、該浸透ポンプ内に含まれた予装填した膜は、液体フィラーにて飽和された半透過性材料に限定されず又は始動時間を薬剤送り出しの所望の持続時間の3%以下まで短縮させるのに十分な量の液体フィラーを有する半透過性膜に限定されない。特に、本発明に従った浸透ポンプが浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーを有する場合、予装填した膜は、浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して、始動時間を著しく短縮するのに十分な量の液体フィラーが吸収された半透過性膜を有する。本明細書にて使用するように、「著しく短縮する」という語は、少なくとも10%短縮することを意味する。浸透ポンプが第二のフィラーを有する場合、予装填した膜は、浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して、始動時間を少なくとも25%だけ短縮するのに十分な量の液体フィラーを有することが好ましく、予装填した膜は、第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して始動時間を少なくとも50%短縮するのに十分な量の液体フィラーを有することが特に好ましい。
【0026】
図1を参照することにより理解し得るように、本発明に従った浸透ポンプ内に含まれたリザーバ12は、第一の端部14と、第二の端部16とを有して細長で且つ、円筒状とすることができる。図1に示した実施の形態において、リザーバの第一の端部14は、半透過性の予装填した膜28がその内部に配置される第一の開口部15を有している。リザーバ12を形成するのに適した材料は、投与中、及び浸透ポンプ10が作動している間、リザーバ12が受ける圧力の下、リザーバ12が漏れ、破断し又は顕著に変形しないことを保証するのに十分強力でなければならない。特に、リザーバ12は、リザーバ12の寸法又は形状が実質的に変化することなく、膨張可能な浸透性組成物26の膨張に耐えるのに十分硬い材料にて形成される。リザーバ12を形成するために使用される材料は、また、作動環境からの流体に、及び薬剤フォーミュレーション19及び膨張可能な浸透性組成物26中に含まれる材料の成分に対しほぼ不透過性であるように選ばれる。本明細書にて使用するように、「ほぼ不透過性」という語は、リザーバ12を形成する材料を通じて材料が移動し、浸透ポンプに入ったり、出たりするのが極めて遅く、このため、かかる材料の移動は、装置の機能に実質的に何ら悪影響を与えないことを意味する。
【0027】
インプラントが人間又は動物の被験者に投与する設計とされている場合、リザーバ12は、当該技術にて既知の化学的に不活性で且つ、生体適合性の天然材料又は合成材料にて形成されることが好ましい。人間又は動物への投与用に設計された浸透ポンプのリザーバ材料は、装置の作用寿命後、実質的に完全なままであろう、非生物浸食性材料にて形成することができる。かかる設計は、その内部に収容された薬剤フォーミュレーションが被験者に送り出された後、装置を回収し又は通すことを容易にする。しかし、人間又は動物に適用されるものとして設計された本発明の浸透ポンプ10は、作動環境内にて浸食する生物浸食性材料にて形成されたリザーバ12を有することもでき、このため、リザーバ12の回収は不要であるが、浸透ポンプは、所望の投与量の薬剤フォーミュレーションが送り出しされる迄、その構造的一体性を保つ。
【0028】
本発明に従った浸透ポンプ10のリザーバ12の構造に適した典型的な材料は、非反応性ポリマー、生体適合性金属及び合金を含む。適宜なポリマーの例は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル−アクリルコポリマー、ポリカーボネート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー及び同様のもののようなアクリロニトリルポリマー、ポリテトラフルオロエチレンのようなハロゲン化ポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレンを含む。リザーバを形成するとき使用可能な金属材料は、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金及びそれらの合金、並びに金めっきした鉄系合金、白金めっきした鉄系合金、コバルト−クロム合金、及び窒化チタン被覆したステンレス鋼を含む。
【0029】
本発明の浸透ポンプ10内に含まれた浸透性組成物26は、予充填膜28を通じて水を浸透性組成物26内に吸引するのに十分な浸透圧を発生させる任意の材料にて形成し、浸透性組成物26により薬剤フォーミュレーション19が予め選んだ期間に亙って所望の率にて送り出されるようにすることができる。好ましくは、浸透性組成物26は、当初、固体又は非流動性組成物にて形成された1つ又はより多くの浸透性錠剤として形成されるようにする。しかし、本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた浸透性組成物26は、錠剤に形成され且つ、当初、固体又は非流動性である組成物に限定されるものではない。本発明に従った浸透ポンプ10のリザーバ12内に装填された浸透性組成物26は、任意の適宜な形状、表面模様、密度及び稠度にて形成することができる。例えば、固体の錠剤状組成物に代えて、膨張可能な浸透性材料26を粉末材料としてリザーバ12内に装填することが可能である。
【0030】
浸透性組成物26は浸透性剤を含む。浸透性組成物内に含まれる浸透性剤は、水を予充填膜28を通じて浸透ポンプ10内に吸引し且つ、薬剤フォーミュレーション19の流れを浸透ポンプ10から追い出す働きをする水吸着剤である。浸透性組成物26内に含まれる浸透性剤は、浸透剤、浸透性ポリマー又はその両者の混合体とすることができる。本発明に従った浸透ポンプにて使用するのに適した浸透性組成物を提供する方法及びフォーミュレーションは周知である。例えば、本明細書に引用した特許文献には、本発明に従った浸透ポンプ10にて使用可能である浸透性組成物を形成するのに適した方法及び材料が詳細に記載されている。
【0031】
浸透剤の範疇に属する材料は、不揮発性、水溶性であり且つ、流入水を浸透ポンプ10内に駆動するのに適した浸透勾配を形成する材料を含む。本発明の浸透ポンプ10の浸透性組成物26内にて使用可能な浸透剤の例は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、d−マンニトール、ソルビトール、イノシトール、尿素、マグネシウム琥珀酸塩、酒石酸、ラフィノース、及び色々な単糖類、オリゴ糖類、ショ糖、ブトウ糖、乳糖、果糖及びデキストランのような多糖類、及びこれら色々な種の任意のものの混合体を含むが、これらにのみ限定されるものではない。
【0032】
浸透性ポリマーの範疇に属する材料は、水と接触したときに膨潤する親水性ポリマーである。浸透性ポリマーは、天然(例えば、植物又は動物由来)又は合成のものとし、浸透性ポリマーの例は当該技術にて周知である。本発明の浸透ポンプ10の浸透性組成物16にて使用可能な特定の浸透性ポリマーは、分子量30,000ないし5,000,000のポリ(ヒドロキシ−アルキルメタアクリレート)、分子量10,000ないし360,000のポリ(ビニルピロリドン)、アニオン系及びカチオン系ヒドロゲル、ポリ電解質錯体、グリオキサール、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドと選択的に架橋結合された低酢酸塩残留量を有し且つ、200ないし30,000の重合度を有するポリ(ビニルアルコール)、メチルセルロース、架橋結合した寒天及びカルボキシメチルセルロースの混合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びナトリウムカルボメチルセルロースの混合体、N−ビニルラクタムのポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンゲル、ポリオキシブチレン−ポリエチレンブロックコポリマーゲル、カロブガム、ポリアクリルゲル、ポリエステルゲル、ポリウレアゲル、ポリエーテルゲル、ポリアミドゲル、ポリペプチドゲル、ポリアミノ酸ゲル、ポリセルロースゲル、分子量80,000ないし200,000のカルボポル(Carbopol)(商標登録名)酸性カルボキシポリマー、分子量10,000ないし5,000,000のポリオクスポリエチレン(Polyox Polyetylene)酸化物ポリマー、スターチグラフトコポリマー、及びアクア−キープス(Aqua−Keeps)(登録商標名)アクリレートポリマーポリサッカリドを含むが、これらにのみ限定されるものではない。
【0033】
図1を参照することにより理解し得るように、本発明の浸透ポンプ10は細長いリザーバを含み、リザーバ12の第二の端部16に少なくとも1つの送り出しオリフィス18を形成することができる。本発明の浸透ポンプ10に含まれた送り出しオリフィス18はまた、リザーバ12の第二の16に形成されたオリフィスを含む場合、かかる送り出しオリフィス18は、例えば、既知の成形方法又は既知の機械的穿孔法又はレーザ突孔法を使用して提供することができる。所望であるならば、本発明の浸透ポンプのリザーバは、1つ以上の送り出しオリフィス18を含むことができる。1つの代替的な実施の形態において、本発明の浸透ポンプ10の送り出しオリフィス18は、少なくとも部分的にリザーバ12内に配置された出口プラグ(図示せず)により形成することができる。かかる出口プラグは、例えば、薬剤フォーミュレーション19の流れを最適にし又は環境中の流体が浸透ポンプ10内に逆流して拡散するのを調節する送り出しオリフィスを提供するような形態とすることもできる。しかし、本発明の浸透ポンプ10の送り出しオリフィス24が出口プラグにより形成される場合、該出口プラグは、実質的に非圧縮性材料にて作製される。本発明に従った浸透ポンプにて適用するのに適した出口プラグ10は、当該技術にて既知であり且つ、例えば、米国特許明細書5,985,305号、米国特許明細書6,127,906号及び米国特許明細書5,997,527号に記載されている。直径及び長さの双方にて表した送り出しオリフィス24の寸法は、その他の因子の内、送り出された薬剤の型式、薬剤フォーミュレーション14が浸透ポンプ10から押し出されるときの率、薬剤が送り出される環境に依存して相違することになろう。
【0034】
本発明の可動の浸透ポンプ10内に含まれる場合、可動ピストン22は、水が浸透性組成物26内に吸引され、薬剤フォームレーション19が送り出しオリフィス18を通って押し出されるとき、ピストンをリザーバ12内にて変位させることを許容する密封した要領にてリザーバ12内に嵌まる形態とされる。1つの好ましい実施の形態において、薬剤フォーミュレーション19は、リザーバ12内に形成された第一のチャンバ20内に保持され、浸透性組成物26は、リザーバ12内に形成された第二のチャンバ24内に保持されており、第一のチャンバ20及び第二のチャンバ24は、可動のピストン22により分離されている。
【0035】
本発明の浸透ポンプ10内に含まれたピストン22は、隔膜、仕切り又はパッドのような、摺動可能な仕切り又は静止型であるが、延伸可能な部材の形態とすることができる。更に、本発明の浸透ポンプ10内にて使用するのに適したピストン22は、浸透性組成物及び薬剤フォーミュレーションに対し不透過性である材料にて形成されることが好ましく、また、ピストン22とリザーバ12の内面との間にシールを形成する作用を果たす1つ又はより多くの突出物を含むことができる。本発明の浸透ポンプ10内に含まれたピストン18にて使用するのに適した材料は、金属合金のような金属材料、上述した非反応性ポリマーのようなエラストマー的材料、ポリウレタン、ポリアミド、塩化ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムのような、一般的なエラストマーを含む。本発明の浸透ポンプにて使用するのに適したピストンを提供する方法及び材料は、当該技術にて周知である。
【0036】
本発明の浸透ポンプが使用可能である作動環境は、動物又は人間の身体内のような生理学的環境を含む。特に、本発明の浸透ポンプは、所望の薬剤を人間、家畜、競技用動物及び農場用動物に送り出すために利用することができる。有益な薬を動物又は人間に投与するため、本発明の浸透ポンプは、皮下的に植え込み又は、浸透ポンプを作動させるため水系の体液が利用可能である腹腔内環境内に植え込むことができる。更に、本発明の浸透ポンプは、反芻動物の体腔に適用することができ、この実施の形態において、浸透ポンプは、120日以下の長期間又はより長く装置を体腔内に維持する密度要素を更に備えることができる。密度要素は、薬剤送り出し装置の技術にて周知である。
【0037】
本発明に従った浸透ポンプは、人間又は動物の生理学的環境に合うよう設計され且つ、これらの環境に投与されることが好ましいが、本発明に従った浸透ポンプは、全体として、有益な剤を作動環境に送り出すために適用可能であり、生理学的環境にて利用されることにのみ限定されるものではない。例えば、本発明に従った浸透ポンプは、有益な剤を動物又は人間に送り出す静脈内システム(例えば、IVポンプ、IVバッグ又はIVボトルに取り付けられるもの)、血液酸素付与用システム、腎臓透析又は電気泳動法、例えば、栄養物又は成長調節コンパウンドを細胞組織に送り出すシステム、プール、タンク、リザーバ及び同様のものにて使用することができる。このため、本発明の浸透ポンプは、一般的に有益な剤を投与するのに適用可能であり、本明細書にて使用する「薬剤」という語は、作動環境に送り出し可能である任意の有益な剤を意味し、医薬、ビタミン、栄養物、殺生物剤、滅菌剤、食品サプリメント、不妊剤、避妊剤、及び妊娠促進剤を含むが、これらにのみ限定されるものではない。本発明の浸透ポンプにより送り出し可能な特定の薬剤は、例えば、米国特許明細書6,132,420号に詳細に記載されている。本発明に従った浸透ポンプにより送り出し可能な薬剤の更なる例は、本明細書に引用したその他の特許文献に見ることができる。
【0038】
本発明の浸透ポンプ内に含まれた薬剤フォーミュレーション内に含まれる薬剤は、多岐に亙る化学的及び物理的形態にて存在するものとすることができる。分子レベルにて、薬剤は、非電荷分子、分子錯体、又はヒドロクロリド、水素酸塩、硫酸、ラウリル酸塩(laurylate)、オレイン酸塩、サリチル酸塩のような薬理学的に許容可能な酸添加物又は塩基添加塩として存在するものとすることができる。金属、アミン又は有機質カチオンの塩を酸性の薬剤コンパウンドに対して使用することができる。エステル、エーテル、アミドのような薬剤の誘導体も使用することができる。更に、本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた薬剤フォーミュレーションは、1つ以上の薬剤を含み、その結果、その有効寿命の間、多数の薬剤を送り出すことができる浸透ポンプとなる。
【0039】
本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた薬剤フォーミュレーションは、薬剤を本発明に従った浸透ポンプから送り出すのに適した任意のフォーミュレーションを含むことができる。薬剤フォーミュレーションは、所望の薬剤を選んだ作動環境まで送り出すことのできる、スラリー、懸濁液又は溶液のような任意の流動可能な組成物として調合すること可能である。所望に応じて、本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた薬剤フォーミュレーションは、薬剤を所望の作動環境に送り出すのを許容する作用を果たす1つ又はより多くの各種の成分を含むことができる。特に、本発明に従った浸透ポンプ内に含まれた薬剤フォーミュレーションは、1つ又はより多くの抗酸化剤又はその他の安定化剤、浸透促進剤又は用途に適した担体材料のような保存剤を選択的に含むことができる。例えば、浸透ポンプが人間又は動物の被験者に植え込む設計とされる前に使用される任意の担体、保存剤又は透過促進剤が薬理学的に許容可能な材料であろう。
【0040】
別の形態において、他発明は、浸透ポンプの始動時間を短縮する方法を含む。1つの実施の形態において、反発明の方法は、予装填した膜を有する浸透ボンプを提供するステップを含む。予装填した膜を提供することは、色々な技術を使用して行うことができる。例えば、所望の量の液体フィラーを吸収する結果となる状態に対し予装填した膜内に含まれた半透過性材料を曝すだけで予装填した膜を提供することができる。かかる状態は、例えば、所望の量の液体フィラーが所望の時間内に半透過性材料中に吸収されるのを許容する状態下にてある量の液体フィラー中の半透過性材料の少なくとも一部分を浸漬させることを含むことができる。しかし、所望の量の液体フィラーの吸収を実現するため半透過性材料を浸漬させることは不要にすることができ、本発明の方法は、所望の量の液体フィラーが吸収された予装填した膜内に含まれた半透過性材料となる、当該技術にて既知の任意の他の技術を含むこともできる。
【0041】
1つの好ましい実施の形態において、本発明の方法は、液体フィラーにて飽和された半透過性材料を含む予装填した膜を有する浸透ポンプを提供するステップを含む。現在、液体フィラーにて飽和された半透過性材料に形成された予装填した膜は、始動時間を最大限短縮するものと考えられるため、本発明の方法のこの実施の形態は、好ましい。しかし、上述したように、始動時間の所望の短縮を実現する予装填した膜を具体化するため、半透過性材料を液体フィラーにて飽和させる必要はない。このため、別の実施の形態において、本発明の方法は、薬剤の送り出しにおける所望の持続時間の3%以下である平均的始動時間を提供する予装填した膜を提供するのに十分な量の液体フィラーが吸収された半透過性材料を含む予装填した膜を有する浸透ポンプを提供するステップを含み、薬剤の送り出しにおける所望の持続時間の2%以下又は1%以下の平均始動時間を提供する予装填した膜を提供する方法であることが特に好ましい。
【0042】
予装填した膜内に含まれた半透過性材料中に所望の量の液体フィラーを吸収することは、当該技術にて既知の技術を使用して行うことができる。この場合にも、例えば、液体フィラーにて飽和され又は飽和状態には至らない半透過性材料を含む予装填した膜は、所望の量の液体フィラーが吸収される結果となる状態下にて半透過性材料の少なくとも一部分を所望の液体フィラー中に浸漬させることにより形成することができる。予装填した膜内に含まれた半透過性材料によって液体フィラーを吸収することは、典型的に、熱動的方法により行われ、液体フィラーの吸収は、温度の上昇に伴いより迅速に行われ、また、液体フィラーが吸収される状態は、所望に応じて変更し、半透過性材料が所望の量の液体フィラーを吸収するのに時間を短縮し又は引き延ばすことができる。
【0043】
本発明の方法は、また、浸透ポンプの所望の形態に応じて変更することができる。例えば、本発明の方法が浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーを有する浸透ポンプに対する予装填した膜を提供するステップを含む場合、該方法は、第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して少なくとも10%浸透ポンプの平均始動時間を短縮する予装填した膜を形成するのに十分な液体フィラーを吸収することを許容する状態に対し予装填した膜内に含まれた半透過性材料を露呈を好むステップを含むことが好ましい。かかる実施の形態において、該方法は、第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して少なくとも25%浸透ポンプの平均始動時間を短縮する予装填した膜を形成するのに十分な液体フィラーを吸収することを許容する状態に対し半透過性材料を露呈するステップを含むことが好ましく、該状態は、第二のフィラーのみを有する浸透ポンプに比して少なくとも50%平均始動時間を短縮する予装填した膜となるのに十分な液体フィラーを吸収することを許容するものであることが特に好ましい。更に、浸透ポンプの形態に依存して、本発明の方法は、半透過性材料が浸透ポンプのリザーバと関係付けられた後、透過性材料を所望の量の液体フィラーにて予装填するステップを含むことが好ましい。本明細書にて使用するように、「と関係する」又は「と関係付けられた」という語は、半透過性材料がリザーバに固定され、リザーバの周りに配置され、リザーバ内に挿入され又はリザーバ内に保持されることを意味する。
【0044】
このため、1つの実施の形態において、本発明の方法は、浸透ポンプ内にて使用するのに適したリザーバと関係付けられた予装填した膜を形成すべく使用される半透過性材料を含むサブ組立体を最初に提供するステップを含む。次に、サブ組立体中に含まれた半透過性材料を始動時間の所望の短縮を実現する予装填した膜を形成すべく所望の量の液体フィラーを吸収させる状態に曝す。本発明のこの実施の形態は、本発明の浸透ポンプ内に含まれた予装填した膜がリザーバ内に挿入され又はリザーバ内に保持される場合、特に好ましい。本明細書にて説明したように、半透過性材料を液体フィラーにて予装填することは、典型的に、半透過性材料を膨潤させ、その結果、半透過性材料がリザーバ内に挿入され又はリザーバ内にて保持される前に、半透過性材料を予装填することは、形成される予装填した膜が適正に配置されるのを妨げる可能性がある。
【0045】
本発明の方法がリザーバと関係付けられた予装填した膜の少なくとも半透過性材料を含むサブ組立体を最初に提供するステップを含む場合、該サブ組立体は、色々な完成段階の1つとすることができる。例えば、サブ組立体は、半透過性材料及びリザーバのみを含むことができる。これと代替的に、方法がピストンと、浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラーとを含む浸透ポンプを提供するステップを含む場合、サブ組立体は、リザーバと、半透過性材料とのみならず、ピストンと、浸透性組成物と、第二のフィラーとを有することもできる。更に、本発明に従った方法にて使用されるサブ組立体は、予装填した膜以外、浸透ポンプの全ての形態を含むことができる。かかる場合、予装填した膜は、所望の量の液体フィラーが吸収される結果となる状態に対しサブ組立体と関係付けられた半透過性材料を曝すだけで完成されよう。
【0046】
実験例
本発明により提供される利点を評価するため、16の浸透ポンプから成る3つの群を製造し且つ、解放率の性能について試験した。製造した浸透ポンプの各々には、30%PVP及び70%DMSOにて形成された担体中に2%の青色素を含む模擬した薬剤フォーミュレーションを装填した(例えば、ロイプロイドアセテート/DMSO溶液の典型的な粘度を模擬するため)。更に、浸透ポンプの各々は、少なくとも1年間、0.35μl/日の目標薬剤フォーミュレーションの解放率を提供し得るよう製造した。解放率の性能を測定するため、システムの各々を37℃に維持した制御した温度の水浴中に配置し、シミュレートした薬剤フォーミュレーションがシステムの各々から解放されるときの率をシマズ(Shimadzu)1601 UV/Visスペクトルフォトメータ(Spectrophotometer)を使用して測定した。
【0047】
16の浸透ポンプから成る第一の群は、次の構成要素を使用して製造した。
・リザーバ(チタン、Ti6A14V合金)(4mm外径、3mm内径)
・ピストン(C−Flex(登録商標名))
・潤滑剤(シリコーン医療用流体)
・浸透性組成物(76.4%NaCl、15.5%ナトリウムカルボキシメチルセルロース、6%ポビドン、0.5%Mgステアリン酸塩、及び1.6%水を使用して形成した40mgの浸透性エンジン錠剤)
・半透過性膜(所望のプラグの形状となるように射出成形した、ポリウレタンポリマー)
・後方拡散調節出口(ポリエチレン)
・シミュレートした薬剤フォーミュレーション(30%PVP及び70%DMSOの担体中の2%青色素)
これらの構成要素を使用して、最初に、ピストン及びリザーバの内径をシリコン医療流体を用いて僅かに潤滑することにより、浸透ポンプの第一の群を製造した。次に、ピストンを第一の端部(以下「膜端部」)にてリザーバ内に〜0.5cm挿入した。次に、2つの浸透性エンジン錠剤(各々、40mg)を膜端部からリザーバ内に挿入した。浸透性エンジン錠剤を挿入した後、形成される浸透性組成物はリザーバの膜端部と面一となるようにした。半透過性膜プラグ(以下、「膜プラグ」又は「プラグ」)をプラグをリザーバ膜端部と直線状にし且つ、プラグの保持造作部がリザーバ内に完全に係合する迄、静かに押すことにより、リザーバ内に挿入した。シミュレートした薬剤フォーミュレーションを注射器内に装填し、次に、該フォーミュレーションが端部から〜3mmとなる迄、該注射器を使用してシミュレートした薬剤フォーミュレーションをリザーバ内に射出することにより、第二の端部(以下「出口端部」)からリザーバを充填した。充填されたリザーバを遠心分離し(出口端「上」)、充填する間、シミュレートした薬剤フォーミュレーションに取り込まれた全ての気泡を除去した。後方拡散調節出口を完全に係合する迄、リザーバの出口端にねじ込んだ。出口がねじ込まれると、シミュレートした薬剤フォーミュレーションの余剰の量が送り出しオリフィスから押し出され、均一な充填を保証した。
【0048】
対照として使用した16の浸透ポンプから成る第二の群は、第一の群の浸透ポンプを製造するために使用したものと同一の構成要素及び方法を使用して製造したが、相違点は、浸透ポンプの第二の群は、浸透性組成物を形成する浸透性エンジン錠剤の周りに分配された流体フィラーとしてPFG400を含むように製造した点である。これを実現するため、ピストンを挿入した後、8mgのPEG400をリザーバの膜端部を通じて追加した。PEG400を追加した後、2つの浸透性エンジン錠剤を膜端部を通じてリザーバ内に挿入し、PEG400が錠剤とピストン又はリザーバの内径との間に存在する空隙を実質的に充填するようにした。ピストン、PEG400、浸透性エンジン錠剤は、浸透ポンプの第二の群の各々に追加し、浸透性エンジン錠剤により形成された浸透性組成物の頂部がリザーバの第一の端部と面一となるようにした。上述した方法に従って、膜プラグ、シミュレートした薬剤組成物、第二の群の浸透ポンプの各々の後方拡散調節出口を提供した。
【0049】
本発明に従った一例としての浸透ポンプを表す16の浸透ポンプから成るの第三の群は、第二の群の浸透ポンプを製造するために使用したものと同一の構成要素及び方法を使用して製造したが、相違点は、プラグがリザーバ内に挿入された後に、PEG400を、膜プラグ内に予装填した点である。この場合、プラグをPEG400にて飽和するのを許容する状態下にて第三の群の浸透ポンプの各々に含まれる膜プラグ内にPEG400が吸収されるようにした。具体的には、膜プラグを第三の群の浸透ポンプの各々のリザーバ内に挿入した後、サブ組立体の膜端部を2mlのプラスチックバイアル内に配置し、膜プラグの露出部分がPEG400内に完全に浸漬される迄、PEG400をバイアルに追加した。サブ組立体は14日間、バイアル内に残るようにした。プラスチック製バイアルを除去したとき、サブ組立体の各々の膜端部をきれいに拭き取った。
【0050】
16の浸透ポンプから成る3つの群の各々が示した平均的な解放率性能は、表1に記載され且つ、図2及び図3に示されている。
【0051】
【表1】

【0052】
表及び図面を参照することにより容易に理解し得るように、本発明に従って製造された浸透ポンプは、著しく短縮した平均始動時間を提供し、浸透ポンプが予装填した膜を有しない浸透ポンプよりも迅速に目標の又は目標近くの薬剤送り出し率に達するのを許容する。更に、図2にて理解し得るように、第三の群の浸透ポンプにより要求される平均始動時間は、所望の薬剤送り出し持続期間の8%に過ぎない一方、第二の群の浸透ポンプの平均始動時間は、所望の薬剤送り出し持続期間の3.0%を示した。重要なことは、第一の群の浸透ポンプでは、シミュレートした薬剤フォーミュレーションを安定した状態にて送り出すため、50日以上必要とし、始動を実現することは決してなかった。
【0053】
【表2】

【0054】
表1は、浸透ポンプの3つの群に対する平均解放率のデータを示す表であり、群3の浸透ポンプは本発明に従って製造され、群1及び群2の浸透ポンプは本発明に従って製造したものではない浸透ポンプを表わす。表2に掲げた情報は図2に示したグラフを作成するために使用した。
【0055】
表2は、本発明に従って製造されたものではない2つの群の浸透ポンプ(群1、群2)の平均始動時間に対する本発明に従って製造された1つの群の浸透ポンプ(群3)の平均始動時間を表わす比較データを示す表である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に従った浸透ポンプの断面図である。
【図2】本発明に従った浸透ポンプの改良された解放率性能を示すグラフである。
【図3】本発明に従った浸透ポンプの改良された解放率性能を示す別のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透送り出し装置において、
少なくとも1つの薬剤送り出しオリフィスを有するリザーバと、
該リザーバ内に収容された浸透性組成物と、
該リザーバ内に収容された薬剤フォーミュレーションと、
半透過性材料と、該半透過性材料内に含まれた液体フィラー材料とを有する予装填した膜であって、流体がリザーバを取り囲む環境から浸透性組成物内に進むのを許容する形態とされた前記予装填した膜とを備える、浸透送り出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浸透送り出し装置において、浸透性組成物と薬剤フォーミュレーションとの間にてリザーバ内に配置された摺動可能な仕切りを更に備える、浸透送り出し装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浸透送り出し装置において、リザーバ内にて浸透性組成物の周りに分配された第二のフィラー材料を更に備える、浸透送り出し装置。
【請求項4】
請求項3に記載の浸透送り出し装置において、第二のフィラー材料は、予装填した膜の液体フィラー材料の組成物と実質的に同一の組成物を備える、浸透送り出し装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、予装填した膜の半透過性材料は、十分な量の液体フィラー材料を含み、浸透送り出し装置が予装填した膜の無い浸透送り出し装置の始動時間の少なくとも10%以下の平均始動時間を示す形態とされる、浸透送り出し装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、予装填した膜の半透過性材料は、十分な量の液体フィラー材料を含み、浸透送り出し装置は、予装填した膜の無い浸透送り出し装置の始動時間よりも少なくとも50%短い平均始動時間を示す形態とされる、浸透送り出し装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、予装填した膜の半透過性材料は、十分な量の液体フィラー材料を含み、浸透送り出し装置は、浸透送り出し装置に対する所望の薬剤送り出し持続期間の少なくとも3%以下の平均始動時間を示す形態とされる、浸透送り出し装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、予装填した膜の半透過性材料は、十分な量の液体フィラー材料を含み、浸透送り出し装置は、浸透送り出し装置に対する所望の薬剤送り出し持続期間の少なくとも1%以下の平均始動時間を示す形態とされる、浸透送り出し装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、液体フィラー材料は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチレルスルフォキサイド及び有機質液体の少なくとも1つを備える、浸透送り出し装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、液体フィラー材料は、少なくとも2つの異なる液体フィラー材料を備える、浸透送り出し装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置において、予装填した膜は、リザーバの開口部内に配置されるプラグを備える、浸透送り出し装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1つの項に記載の浸透送り出し装置を製造する方法において、
少なくとも1つの薬剤送り出しオリフィスを有するリザーバを提供するステップと、
浸透性組成物をリザーバ内に配置するステップと、
薬剤フォーミュレーションをリザーバ内に配置するステップと、
半透過性材料を備える膜に対し液体フィラー材料を予装填するステップと、
流体がリザーバを取り囲む環境から浸透性組成物内に流れるのを許容する膜の形態とされるように膜をリザーバと関係付けるステップとを備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、第二のフィラー材料をリザーバ内にて浸透性組成物の周りに分配するステップを更に備える、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、膜をリザーバと関係付ける前に、膜を液体フィラー材料にて予装填するステップを更に備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521898(P2006−521898A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509604(P2006−509604)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/010107
【国際公開番号】WO2004/089334
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(598158657)アルザ・コーポレーション (23)
【Fターム(参考)】