説明

消去可能染料を含むハイライト化可能なインク、マーキング器具、及びその使用法

着色顔料と消去可能染料と消去不可能染料とを含有するインクのようなハイライト化可能な混合物;該ハイライト化可能な混合物及び消去剤溶液を備えるキット;ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料よりなる群から選択される無色又は実質的に無色の消去可能染料と着色顔料とを含む着色剤複合物;並びに、ハイライト化可能な混合物で作製したマーキングの少なくとも一部に消去剤を塗布する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に変色性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクのような消去可能混合物システムは一般に二つの成分を含む。一つ目の成分は、亜硫酸塩還元剤、アミン又はその他の塩基性化合物(例えば水酸化物)のような物質と接触させると実質的に無色となる染料(典型的にはトリアリールメタン)を含む水性混合物である。二つ目の成分は、染料を実質的に無色に変化させることのできる相補的物質を含む水性消去剤流体である。例えば、使用者は消去可能インクを用いて書き、修正が必要な場合、染料を脱色するためにインクマーキングに消去剤流体を塗布する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マーキングのハイライト化は、基材(例えば紙)上のインクによって作製された通常のマーキングの上に蛍光インクを塗ることで実施するのが典型的である。典型的な蛍光ハイライトインクはハイライトインクを塗った後も、マーカーによって作製された蛍光インクマーキングの下にある通常のインクマーキングを使用者が見ることができるように半透明である。この方法は通常のインクマーキングをハイライト(強調表示)するのに役立つ一方で、通常のインクマーキングを含まない基材の領域がハイライトされてしまうといった望ましくない効果も有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一側面は顔料及び消去可能着色剤を含む混合物である。
【0005】
本開示の別の一側面は顔料、消去可能着色剤、及び消去不可能着色剤を含む混合物である。
【0006】
本開示の別の一側面は、本開示に係るハイライト化可能な混合物で基材をマーキングする工程と、該ハイライト化可能な混合物を消去剤溶液に接触させる工程とを含むハイライト化方法である。
【0007】
本開示の更に別の一側面は、本開示に係るハイライト化可能な混合物と消去剤を含むキットである。
【0008】
本開示の更に別の一側面は、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも実質的に無色の染料と、着色顔料とを含む着色剤複合物である。
【0009】
本開示の更に別の一側面は、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも実質的に無色の染料と、消去不可能染料と、着色顔料とを含む着色剤複合物である。
【0010】
本発明の更なる側面及び利点は添付の特許請求の範囲と共に以下の詳細な説明を検討することにより当業者に明らかになろう。混合物、該混合物の使用方法、キット、及び複合物は種々の形態で実施可能である。以下の説明は本発明の特定の実施形態を含むが、該開示は例示であって、発明をここで記載する特定の実施形態に限定することを意図するものではないことが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
インクマーキング及び消去の方法は二つの工程で進行することができる。第一の工程は消去可能インクで基材(例えば紙)をマーキングする工程であり、第二の工程は該マーキングに消去剤溶液を塗布することである。消去可能インクのための典型的な処方物は、消去可能な染料(例えばトリアリールメタン染料)を溶かすための溶媒(例えば水)を含有する。この消去剤溶液は、化学的プロセスにより、相補的な着色染料を実質的に無色の化合物又は基材の色に一致する色(例えば白紙に対しては白)へと変化させる消去剤を含有する。そのような化合物には酸化剤、還元剤、酸−塩基反応物質、及び熱の影響下で昇華する化学物質が挙げられる。如何なる特定の消去方法にも限定されることを意図するものではないが、例えば、トリアリールメタンに関しては、活性な着色染料は分子中の芳香環の共役のために可視領域(380nm〜780nm)の色を反射することができると考えられる。しかしながら、ひとたび還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム)がトリアリールメタンに塗布されると、還元剤はsp2の中心炭素(図1のa*)を酸化してsp3の炭素へと変化させることによってこの共役を破壊する。ひとたび混成状態の変化が起きると、染料分子の種々の環同士の共役が失われて該染料分子は無色になる。ここで提案したプロセスをアシッド・バイオレット17について図1に示す。
【0012】
消去剤溶液は、主たる溶媒としての水又は有機溶媒と、感受性染料(例えばトリアリールメタン染料)の色を失わせる又は変化させることのできる亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム)、亜硫酸水素塩又はアミン(例えばグリシン酸ナトリウム又は水酸化物のような塩基性物質)のような消去剤と、膜形成ポリマーとを含有するのが好ましい。本開示に係るインクに好適な消去剤溶液は活性な消去剤として亜硫酸塩とアミンの両方を含有する市販の消去剤溶液である(Sanford Reynolds of Valence社、仏国)。好ましくは、消去剤は亜硫酸塩還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム)、亜硫酸水素塩還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される化合物である。
【0013】
インクのハイライト化可能な性質は、実質的に不溶性の着色顔料には影響を与えることなく、染料(発色団)を着色化合物から少なくとも実質的に無色に変化させる能力に起因する。上で議論したように、これは着色顔料と消去剤(すなわち、酸化剤、還元剤、酸、塩基、熱等)に感受性の染料との組み合わせにより達成することができる。消去剤の塗布で少なくとも実質的に無色になることのできる染料にはジアリールメタン誘導体染料、トリアリールメタン誘導体染料、及びメチン誘導体染料が挙げられる。本開示に係るインクの使用に好適なジアリール染料にはオーラミンO(ケミカルインデックス No.41000)、及びベーシックイエロー2(ケミカルインデックス No.41000)が挙げられる。着色状態では、ジ−及びトリアリールメタン、並びにメチン染料は一つ又は二つ以上のカチオン性イミン基を含有することが多い。
【0014】
トリアリールメタン染料の一般的な構造は下記の式(II)で示される。
【化1】

(式中、各R基は同一の又は異なるものであり、好ましくはC1〜C10のアルキル基から選択される。本開示に係るインク中で使用されるトリアリールメタン染料の非限定的な例を下記の表Iに列挙する。
【0015】
【表1】



1アール・ディー・リリー(R.D. Lillie)、”コーンズ・バイオロジカル・ステインズ(Conn's Biological Stains)”(第8版、1969年)、ウィリアム・アンド・ウィルキンス・カンパニー(Williams and Wilkins Company)、バルチモア、メリーランド州;スーザン・ブダバリ(Susan Budavari)(編)、”ザ・メルク・インデックス(The Merck Index)”(第12版、1996年)、メルク・アンド・カンパニー(Merck & Co.)、ホワイトハウス・ステーション(Whitehouse Station)、ニュージャージー州を参照;また、ピー・エー・ルイス(P. A. Lewis)(編)、”顔料便覧 Vol.I(Pigment Handbook Vol. I)”、プロパティ・アンド・エコノミクス(Properties and Economics)、セクションI(D)f(1)及びI(D)g、ジョーン・ウィリー・アンド・ソンズ(John Wiley & Sons)、(第2版、1988年);エイチ・ゾリンガー(H. Zollinger)、”色彩の化学(Color Chemistry):有機染料及び顔料の合成、性質及び用途(Syntheses, Properties, and Applications of Organic Dyes And Pigments)”、チャプター4、VCH出版、(1987年);ディー・アール・ワリング(D. R. Waring)及びジー・ハラス(G. Hallas)(編)、”染料の化学及び用途(The Chemistry and Application of Dyes)”、チャプター2、セクションIX、プレナム・プレス(Plenum Press)(1990年);エム・オカワラ(M. Okawara)、ティー・キタオ(T. Kitao)、ティ・ヒラシマ(T. Hirashima)及びエム・マツオカ(M. Matsuoka)、”有機着色剤(Organic Colorants)”:電気光学用途に選別された染料データ便覧(A Handbook of Data of Selected Dyes for Electro-Optical Applications)、セクションVI、エルセビア(Elsevier)(1988年)も参照(これらの開示を本明細書に援用する。)。
【0016】
インク中に使用することのできる別の種類の染料はメチン型の染料である。メチン染料は一般に1つ又は2つ以上のメチン基発色団(−CH=)(メチリジン又はメチン基とも呼ばれる。)を含む。メチン染料が一つのメチン基のみを有するとき該染料はシアニン染料と呼ばれることがあり、三つのメチン基を有するとき該染料はカルボシアニン染料と呼ばれることがあり、3つよりも多くのメチン基を有するとき該染料はポリメチン染料と呼ばれることが多い。メチン染料の一例は下記のチアゾールオレンジである。
【化2】

式中、メチン基を形成する結合は破線で示してある。メチン染料のその他の例にはベーシックレッド15、ベーシックイエロー11及びベーシックイエロー13が挙げられる。メチン染料の包括的なリストに関しては、「エフ・エム・ハマー(F. M. Hamer)、”ヘテロ環化合物の化学(The Chemistry of Heterocyclic Compounds)”、エイ・ワイスバーガー(A. Weissberger)(編)、シアニン染料及び関連化合物(The Cyanine Dyes and Related Compounds)、ウィリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク(1964年)」を参照されたい。
【0017】
1種類の消去可能染料又は消去可能染料の混合物と顔料を加えることによって、特定色のハイライト化可能なインクを処方するときは、消去可能染料を選ぶに当たって染料の消去速度が考慮される。特定の機構に限定されることを意図するものではないが、ジアリールメタン、トリアリールメタン及びメチン染料の消去速度は混合物(例えば、混合物で作製したインク又はマーキング)中の染料の濃度に比例する。本開示に係るハイライト化可能なインクはジアリールメタン染料、トリアリールメタン染料、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される1種又は2種以上の消去可能染料を含む。マーキング組成物中には、染料は組成物の全重量をベースにして好ましくは少なくとも約0.01重量%から約40重量%、より好ましくは約0.1重量%から約10重量%、例えば約1重量%まで又は約1.5重量%までの量で存在する。
【0018】
インクに使用する特定の染料及び着色顔料を選択する際は、選択すべき多くの染料及び顔料が存在し、結果として、様々な色の染料及び顔料を混合してほとんど任意の色のインクを作ることができる。本開示に係るハイライト化可能なインクは、組み合わせることで多様な色のインクを与える、1種又は2種以上の染料及び1種又は2種以上の顔料を有することができる。一実施形態においては、消去されていない状態で黒色のインクを与え、消去された(ハイライトされた)状態で赤色のインクを与えるように染料及び顔料を組み合わせる。少なくとも1種の消去可能染料を含有するインクを処方するときには消去速度及び色の強度という少なくとも二つの競合する事項が存在する。緑色を作るのに使用する消去可能染料の濃度を増加させると色の強度を増加させるが、上で議論したように、染料濃度の増加は該染料を消去するのに要する時間も増加する。本開示に係るインクのためには、組成物の全重量をベースにして少なくとも約0.1重量%から約40重量%までの染料濃度が上記事項をバランスさせるのに好ましい濃度である。
【0019】
本開示に係るインクは多孔質又は非多孔質の基材上に使用することができる。非多孔質基材の非限定的な例にはガラス、セラミックス、磁器、プラスチック、金属、光沢紙、及びその他の非多孔質紙(例えばボール紙又は他のハードボード材料)が挙げられる。実質的に不溶性の顔料と消去可能染料を組み合わせて使用することで消去時にインクのスミア(染み)を防止することを見出した。染みの減少について特定の機構に限定されることを意図するものではないが、実質的に不溶性の顔料が紙のような多孔質基材に塗布されると、顔料は消去剤(例えば水性消去剤)によって再溶解せず、基材の細孔内に配置されることで染みが更に防止され、これによって消去剤溶液による影響が少なくなる。或いは、バインダーを使用することで同様の効果が達成され得る。バインダーは着色剤(例えば顔料)を基材に結合させ、これによって、着色剤が消去剤溶液から受ける影響が少なくなる。好ましいインクは1種又は2種以上の着色顔料と、1種又は2種以上の消去可能染料とを含有する。
【0020】
インクによるハイライト化のプロセスはインク混合物中の消去可能染料を消去材で消去することから開始する。しかしながら、着色顔料は消去材によって実質的に影響を受けず、インクの色に寄与し続ける。本開示に係るハイライト化可能なインクは二種類の異なる着色状態を有する。第一の着色状態は消去されていない状態であり、ここではインクは(又はインクにより作製されたマーキングの少なくとも一部分)は消去剤に接触していない。第二の着色状態は消去された(ハイライトされた)状態であり、ここではインクは(又はインクにより作製されたマーキングの少なくとも一部分)は消去剤に接触し、インクの色は、好ましくは人間の目で知覚できるほど充分に、変化している。いったん染料が消去されると(インクが消去された状態になると)、インクの色はインク混合物中の着色顔料が寄与する色によって主として決定されるのが好ましい。劇的なハイライト効果を得るために、着色顔料が寄与する色は消去されていない状態におけるインクの色とは異なるものであるのが好ましい。好ましくは、消去されていない状態でのインクの色は黒で、消去された状態でのインクの色は赤、緑又は青である。
【0021】
本開示に係るインクに使用する顔料は、有機、無機、天然及び合成顔料を含めて多様な色及び種類にわたる。好ましい顔料は水性媒体に実質的に不溶であり、インク溶液中に分散する粒状物質である。典型的には、顔料は化学的に不活性であり、非毒性であり、熱及び光に対して安定である。本開示に係るインクに使用する顔料の非限定的なリストを以下の表IIに示す。
【0022】
【表2】





【0023】
特定色のインクを調製するために、インクに使用する着色顔料の量をインク中に存在する染料の量とバランスさせ、消去されていない状態において所望のインク色を得ることができる。また、多量の着色顔料を使用すると、基材によっては、いったん溶媒(例えば水)が蒸発すると顔料が基材上で過飽和する場合がある。過飽和が生じると、消去剤流体をマーキングに塗布することによって基材表面上に顔料のスミア(染み)を引き起こし得る。従って、スミア効果が望ましくないときは、インクは消去剤溶液の塗布時にスミアを防止するのに有効な量の顔料を含有するのが好ましい。着色顔料は、組成物の全重量をベースにして好ましくは少なくとも約0.01重量%から約50重量%まで、より好ましくは少なくとも約0.1重量%から約20重量%まで、例えば約3.5重量%、7重量%又は約10重量%までの量で存在する。
【0024】
インクの色は、インクが特定波長の可視光を反射させる原因となる消去可能染料と着色顔料の組み合わせによって主として決定される。異なる色の染料及び顔料の混合によって幅広い色のインク混合物を形成することができる。色の選択は二種以上の補色、又は三原色(赤、黄及び青)をすべて含有する組み合わせを様々な量で使用することで行うことができる。二つの補色を混合するときは、得られる混合物は灰色(黒色は灰色が完全に飽和した形態である。)である。赤色の補色は緑色であり、オレンジ色の補色は青色であり、黄色の補色はバイオレットである。補色を使用すると、補色のペアは三原色のすべてを現に反映する。例えば赤色と緑色の染料を補色として混合するとき、これは赤色に黄色及び青色を混合することと等価である。なぜならば、緑色は黄色及び青色という二つの原色の混合から構成されているからである。別の例では、黄色及びバイオレットという二つの補色の混合は黄色に赤色及び青色を混合することと等価である。なぜならば、バイオレット色は赤色及び青色という二つの原色から構成されているからである。
【0025】
本開示に係るインクは、耐スミア性及び耐水性をインクに与えるためにバインダー樹脂を随意的に含むことができる。インクに使用するバインダー樹脂はポリエチレングリコールのようなグリコール、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー及び塩、ポリ酢酸ビニル及びそのコポリマー及び塩、ポリアクリル酸及びそのコポリマー及び塩、その他の膜形成、水溶性樹脂、並びにこれらの組み合わせを含有するのが好ましい。バインダー樹脂はPVP及びそのコポリマー、PVA及びそのコポリマー、並びにこれらの組み合わせから選択されるのが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂はPVP、そのコポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0026】
また、バインダー樹脂はインクの粘度を制御するために使用することができる。高粘性のインク(例えばcP>10,000)を望むときは、より多量のバインダー樹脂を使用することで高粘性のインクが得られるだろう。使用するバインダー樹脂がポリマー(例えばPVP)であるときは、該樹脂は幅広い範囲の粘度及び分子量から選択することができる。例えば、PVPは種々の粘度及び10,000ドルトンから1,300,000ドルトンの範囲の分子量で市販されている(アルドリッチ・ケミカル社、ミルウォーキー、ウイスコンシン州)。従って、ポリマー樹脂の分子量に応じて、インクに利用される樹脂の量及びインクの全体粘度は多彩に変化し得る。例えば、低分子量PVPを使用するときは、インクは低粘度(例えば約2cP〜約5cP)を維持しながら耐スミア性及び耐水性を達成することができる。本発明に使用されるバインダー樹脂は組成物の全重量に基づいて好ましくは約1重量%〜約80重量%、より好ましくは約5重量%〜約20重量%の範囲の量で存在する。
【0027】
インクは水ベース(水性)であるのが好ましい。水は好ましくは組成物の全重量に基づいて好ましくは約50重量%〜約95重量%、より好ましくは約60重量%〜約80重量%の範囲の量で存在する。水は染料成分を溶解するために働き、そして、着色顔料を浮遊させるための媒体として働く。更には油ベースのインクと比べて、種々の材料(例えば衣服)からのインクの洗浄性を向上する。
【0028】
筆記具又はインクジェットカートリッジのような輸送システム中で水性インクを使用するときは、基材に塗布してからインクが乾くまで時間(乾燥時間)を制御するために1種又は2種以上の有機溶媒を使用するのが好ましい。好ましい輸送システムには筆記具、インクジェットカートリッジ、及び市販のインクジェットを用いた画像化装置が挙げられる。水に比べて有機溶媒は典型的に早く蒸発するので、水性インクが有機溶媒を含有すると乾燥時間が減少する。インクの乾燥時間を最適化及び制御するためには、2種以上の有機溶媒を含めることが必要になるかもしれない。有機溶媒は水に実質的に可溶であるのが好ましい。有機溶媒はグリコール、尿素、脂肪アルコール、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、高分子量炭化水素(すなわち、12個以上の炭素原子をもつ炭化水素)、低分子量炭化水素(すなわち、11個以下の炭素原子をもつ炭化水素)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されるのが好ましい。より好ましくは、有機溶媒はポリエチレングリコールである。有機溶媒を使用するときは、典型的な筆記具及びマーキング用途に好適な乾燥時間を達成するために、組成物の全重量をベースにして少なくとも約5重量%から約30重量%まで、より好ましくは少なくとも約10重量%から約20重量%までの量でインク中に存在する。
【0029】
有機溶媒として使用されるグリコールには、限定的ではないが、グリコールの三つの大きなカテゴリーが含まれる。(a)グリコールエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル);(b)グリコールエーテルアセテート(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等);並びに、c)グリコールアセテート(例えば、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、及びジエチレングリコールジアセテート)である。別の実施形態では、インクは上記三つのカテゴリーに入らない他のグリコール(例えばエチレングリコール及びエトキシグリコールのようなグリコール)を含有することができる。グリコールはインク組成物中で混合物の全重量をベースにして約10重量%〜約20重量%の範囲の量で好ましく使用することができる。
【0030】
有機溶媒として使用する脂肪アルコールには、限定的ではないが、8〜20個の炭素原子をもつアルコール、1〜3モル当量のエチレンオキシドでエトキシ化した脂肪アルコールが挙げられる。脂肪アルコール及びエトキシ化脂肪アルコールの例には、限定的ではないが、ベヘニルアルコール、カプリルアルコール、セチルアルコール、セタリルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、イソセチルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、獣脂アルコール、ステアレス−2、セテス−1、セテス−3、及びラウレス−2が挙げられる。その他の好適な脂肪アルコールは「”CTFA化粧品成分便覧(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)”、第1版、ジェイ・ニコタキス(J. Nikotakis)(編)、米国化粧品工業会(The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association)、第28及び45頁、1988年」に列挙されており、これを本明細書に援用する。
【0031】
有機溶媒は、本開示に係るインクの乾燥時間又はキャップを外しておける時間(cap-off time)を短く又は長くするために選択することができる(例えば、該混合物が筆記具又はインクジェット装置内に配置されているとき)。乾燥時間を変化させる特定の機構に限定されることを意図するものではないが、インクに添加される有機溶媒の揮発性はインク混合物の揮発性に寄与するので有機溶媒はインクの揮発性を増加又は減少させるため、(該混合物が基材に塗布されるときは)乾燥時間及び/又は(該混合物が筆記具のような輸送装置内に配置されているときは)キャップを外しておける時間を長く又は短くするのである。従って、該混合物の乾燥時間を短く及び/又はキャップを外しておける時間を長くするためには揮発性の有機溶媒が好ましく選択される。好ましくは、揮発性有機溶媒はアセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0032】
液体が表面(例えば紙)上に効果的に濡れ広がるためには、該液体の表面張力は該表面の表面張力よりも小さくなければならない。また、有機溶媒は混合物の表面張力を変化させて種々の表面を濡らすのに充分な表面張力を有する混合物を得るために選択することもできる。混合物は、該混合物の表面張力を変化させるためにグリコールを含有するのが好ましく、ポリエチレングリコールを含有するのがより好ましい。
【0033】
本開示に係るインクにおいては、二つの補色(例えば緑−赤、又は黄−マゼンタ)、或いは三つのすべての原色(赤、黄及び青)を組み合わせた染料及び顔料の混合によって緑色を達成することができる。深緑色のインクは、緑色染料と赤色顔料、バイオレット顔料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される顔料とを組み合わせることで作るのが好ましい。好ましい組み合わせは緑色染料と赤色顔料であり、好ましい組み合わせはベーシック・グリーン4と、赤色顔料又は組み合わせると赤色顔料分散体を作る顔料との組み合わせである。好ましい赤色顔料分散体はLUCONYL 3855(BASF社、シャルロット、ノースカロライナ州)である。
【0034】
二種類又はそれより多くの色を組み合わせて所望の色のインクを作るときは、所望の色(例えば黒色)は下地の別の色(例えば赤系の色)が知覚できる場合であっても到達することができると理解される。例えば、黒色のインクは赤又は緑の下地を有することができ、それでも黒色インクと見なされることが理解される。
【0035】
緑色の消去可能染料とバイオレット及び/又は赤色染料の組み合わせを混合することにより、緑色のハイライト化可能インクを作ることができることが見出された。本開示に係るインクの一実施形態は緑色のハイライト化可能インクであり、1種又は2種以上の着色顔料とジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される1種又は2種以上の染料とを含有し、染料と顔料の混合物は緑色を呈する。
【0036】
好ましくは、緑色の消去可能染料は、アシッド・グリーン、アシッド・グリーン5、ベーシック・グリーン4、ダイヤモンド・グリーンB、エチル・グリーン、ファストグリーンFcf、フード・グリーン3、ライト・グリーン、リサミングリーンSf、マラカイト・グリーン、メチル・グリーン、ビクトリア・グリーンB、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。より好ましくは、緑色染料はベーシック・グリーン3、ベーシック・グリーン4、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、赤色染料は、ベーシック・レッド9、ベーシック・レッド14、ベーシック・レッド15、ベーシック・レッド29、ベーシック・レッド46、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、バイオレット染料は、アシッド・バイオレット17、アシッド・バイオレット19、ベーシック・バイオレット2、ベーシック・バイオレット3、ベーシック・バイオレット4、ベーシック・バイオレット14、クロム・バイオレットCg、クリスタル・バイオレット、エチル・バイオレット、ゲンチアナ・バイオレット、ホフマンズ・バイオレット、メチル・バイオレット、メチル・バイオレット2b、メチル・バイオレット10b、モルダント・バイオレット39、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。黄色のインクを作るためには、黄色染料はベーシック・イエロー11、ベーシック・イエロー13、ベーシック・イエロー21、ベーシック・イエロー28、ベーシック・イエロー29、ベーシック・イエロー40、ベーシック・イエロー291、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されるのが好ましい。
【0037】
好ましくは、本開示に係る混合物は黒色である。驚くべきことに、顔料及び消去可能染料を含有する混合物に1種又は2種以上の消去不可能染料を添加すると、黒色ハイライト性インク組成物の黒色の濃さが増し、ハイライト化していない混合物とハイライト化した混合物とのコントラストが増すことが見出された。従って、本開示に係る混合物の一実施形態は水と、着色顔料と、消去不可能染料と、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される消去可能染料とを含有する水性混合物である。
【0038】
青、赤、バイオレット、黄、及び/又はオレンジ色の消去不可能染料を添加すると本開示に係る黒色混合物中の黒色の濃さが増すことが見出された。従って、一実施形態においては消去不可能染料が本開示に係る混合物中に存在し、これは好ましくは青色の消去不可能染料、赤色の消去不可能染料、バイオレットの消去不可能染料、黄色の消去不可能染料、オレンジ色の消去不可能染料、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、青色の消去不可能染料はアシッド・ブルー1、アシッド・ブルー104、アシッド・ブルー182、アシッド・ブルー204、アシッド・ブルー74、アシッド・ブルー9,アシッド・ブルー90、ベーシック・ブルー1、ベーシック・ブルー7、ベーシック・ブルー9、ベーシック・ブルー33、ダイレクト・ブルー199、ダイレクト・ブルー281、ディスパース・ブルー73、リアクティブ・ブルー19、リアクティブ・ブルー21、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、赤色の消去不可能染料はアシッド・レッド18、アシッド・レッド249、アシッド・レッド52、アシッド・レッド87、アシッド・レッド92、ベーシック・レッド22、ベーシック・レッド28、ベーシック・レッド46、ダイレクト・レッド236、ダイレクト・レッド252、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、バイオレットの消去不可能染料はアシッド・バイオレット12、アシッド・バイオレット126、アシッド・バイオレット17、アシッド・バイオレット49、ベーシック・バイオレット1、ベーシック・バイオレット10、ベーシック・バイオレット3、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、黄色の消去不可能染料はアシッド・イエロー17、アシッド・イエロー118、アシッド・イエロー23、アシッド・イエロー3、アシッド・イエロー32、アシッド・イエロー36、ベーシック・イエロー21、ベーシック・イエロー28、ベーシック・イエロー37、ベーシック・イエロー40、ベーシック・イエロー291、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。好ましくは、オレンジ色の消去不可能染料はアシッド・オレンジ10、リアクティブ・オレンジ16、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0039】
また、本開示に係る混合物を基材中又は上に付着させてマークを作製する工程(例えば塗布)と、該マークの少なくとも一部に消去剤流体を塗布する工程とを含むハイライト化方法も企図される。基材は紙であるのが好ましく、消去剤流体は亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されるのが好ましい。
【0040】
また、基材をマーキングして該マーキングを消去するシステム中で使用するための、本開示に係るハイライト化可能な混合物と共に消去剤流体を含むキットが企図される。使用し易いように、該混合物及び該消去剤流体のそれぞれは、筆記具(例えばペン)中に配置することができ、又は塗り刷毛、ボトルに入れたインク溶液、スタンプ台等のような別の形態で供給することもできる。好ましくは、本開示に係る混合物は筆記具中に配置され、該筆記具は、例えば、ボールペン、押出成形プラスチックでできた先端が多孔質のペン、又はマーカーである。
【0041】
本開示に係るハイライト化可能な混合物を基材に塗布した後は、混合物中に存在する溶媒(例えば水)が少なくとも実質的に蒸発する。同様に、消去剤流体中に存在する溶媒(例えば水)も、消去剤が混合物に塗布されると少なくとも実質的に蒸発し、混合物の成分(例えば、消去された染料、消去されなかった染料、着色顔料)と共に消去剤(例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩)を残す。従って、本発明の別の一側面は、溶媒が実質的に又は完全に蒸発した後の本開示に係る混合物と消去剤流体との着色複合物である。ハイライト化された複合物には、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される無色又は実質的に無色の染料と、着色顔料と、消去不可能染料と、本明細書に記載の任意の随意的な添加剤とを含有する。その他の有用な実施形態では、溶媒が蒸発しない条件下にて、本開示に係る薬剤及び/又は混合物を溶媒中で組み合わせることができる。
【0042】
本開示に係る混合物のハイライト化又は変色効果は該混合物中に存在する顔料の色が実質的に消去剤溶液によって影響を受けないときに最も良く発揮される。顔料の色が消去剤溶液によって影響を受けない場合は、消去剤溶液を該混合物に塗布すると生成する、消去された染料、消去されなかった染料、顔料、及び消去剤溶液の複合物の全体の色に寄与する。従って、本開示に係る混合物中に存在する着色顔料の色は還元剤、酸化剤、及びpH変化(例えば混合物又は顔料で作製したマーキング及び消去剤溶液を組み合わせることで得られた混合物のpH)の一つ又は二つ以上によって実質的に影響を受けないのが好ましい。
【0043】
本開示に係る混合物は種々の基材(例えば紙)上にマーキングを作製するためのインクとして使用することができる。インク中には、基材(例えば紙)によるインクの吸収を向上させるために界面活性剤を使用することができ、得られたマークの基材への付着力を向上させるために膜形成剤を使用することができる。従って、本開示に係る混合物は、種々の用途でインク中に慣例的に使用されている量及び比率で、pH緩衝剤、界面活性剤、殺生剤、防食剤、金属イオン封鎖剤、クラスト化防止剤(anti-crusting agents)、レオロジー制御剤、バインダー樹脂、膜形成剤、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される添加剤の1種又は2種以上を含むことができる。
【0044】
本開示に係る混合物はインクジェット装置のような輸送システム内で使用することができる。該混合物は家庭−事務所におけるインクジェットシステム(例えばヒューレット・パッカード社のインクジェットプリンターのカートリッジ)内で、並びに商業用及び工業用のインクジェット装置内で使用することができる。本開示に係る混合物を使用するインクジェットプリンターには、連続インクジェットの液滴流の方向を、予め帯電したインクジェットの液滴に電場をかけることによって、印刷媒体上又は再循環のための溝中に偏向及び制御する連続インクジェットプリンター技術を使用するもの、並びに、媒体上に印字するのに必要なときにだけインクの液滴を排出するドロップオンデマンドのインクジェット技術(例えば、圧電及びサーマルインクジェットの印字ヘッド)を使用するものが挙げられる。好ましい輸送システムには圧電インクジェットの印字ヘッド及びサーマルインクジェットの印字ヘッドが挙げられる。
【0045】
本開示に係る混合物は、混合物の基材上への塗布を伴わない多くの用途に(例えばインクとして)使用することができる。従って、本開示に係る混合物は、ハイライト化又は変色効果の場所として機能する基材の有無に関わらず使用することができる。例えば、本開示に係る混合物は、該混合物と消去剤溶液を液相中で混ぜると、消去剤溶液が該混合物に接触して該混合物の色が変化するという用途に使用することができる。別の一例では、本開示に係る水性混合物は、二相性混合物を生じさせる非水溶性の消去剤溶液と液相中で混ぜ合わせることができ、ここでは、該混合物のハイライト化又は変色効果はこれら二つの溶液の二相界面で生じる。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明を具体的に示すために提供するが、本発明の範囲を限定する意図はない。
実施例1
表IIIに示す成分及び配合量でハイライト化可能なインクを調製した。
【表3】

【0047】
プロピレングリコール(EMサイエンス社、ギブスタウン、ニュージャージー州)を室温で水に加え、微粒子の存在しない均一な溶液が得られるまでかき混ぜた。次いで、ベーシック・グリーン4染料を該溶液に加え、該染料が完全に溶解するまで該溶液をかき混ぜた。次いで、顔料を加え、均一な溶液が得られるまで該溶液を1時間かき混ぜた。
【0048】
次に、得られたインクをSHARPIE(商品名)のマーカーに入れ、基材に塗布されたときのインクの色を決定するために白紙に塗布した。インクは深緑色であることが観察された。
【0049】
上述したように、本開示に係るインクをハイライト化するのに要する時間に寄与する主な要因はインク中に存在する消去可能染料の重量%に比例すると考えられる。従って、インクを白紙に塗布した後、消去されるまでの時間をサンフォード・レイノルズ・オブ・バレンス社(Sanford Reynolds of Valence)(仏国)より市販されている消去剤溶液を用いて測定した。マーキングへ消去剤溶液を塗布すると、該マーキングは色が深緑色から赤色に変化した。この変化には約5秒かかった。
【0050】
実施例2
表IVに示す成分及び配合量でハイライト化可能なインク混合物を2種類調製した。
【表4】

【0051】
プロピレングリコール(EMサイエンス社、ギブスタウン、ニュージャージー州)を室温で水に加え、微粒子の存在しない均一な溶液が得られるまでかき混ぜた。次いで、消去可能染料(SPECTRACID ブラック(スペクトラ・カラーズ社、カーニー、ニュージャージー州)を処方物1に、SPECTRA ソルブルブルー2B EX(スペクトラ・カラーズ社、カーニー、ニュージャージー州)を処方物2に)、及び消去不可能染料(SPECTRAZINE イエロー GRL 200%、カラーインデックスNo.ベーシック・イエロー291(スペクトラ・カラーズ社、カーニー、ニュージャージー州)を処方物1及び2に、SPECTRAZINE ブリリアントブルー、カラーインデックスNo.ベーシック・ブルー1(スペクトラ・カラーズ社、カーニー、ニュージャージー州)を処方物2に)を該溶液に加え、該染料が完全に溶解するまで該溶液をかき混ぜた。次いで、顔料(HOSTAFINE レッド HF3S、カラーインデックスNo.ピグメント・レッド188(クラリアント社、コベントリ、ロードアイランド州)を処方物1に、及びHOSTAFINE グリーン GN、カラーインデックスNo.ピグメント・グリーン7(クラリアント社、コベントリ、ロードアイランド州)を処方物2に)を加え、均一な溶液が得られるまで該溶液を1時間かき混ぜた。
【0052】
次に、得られたインクをSHARPIE(商品名)のマーカーに入れ、基材に塗布されたときのインクの色を決定するために白紙に塗布した。処方物1及び2を塗布した結果得られたマーキングは濃い黒色であることが観察された。次に、サンフォード・レイノルズ・オブ・バレンス社(Sanford Reynolds of Valence)(仏国)より市販されている消去剤溶液で白紙上のマーキングを処理した。処方物1で作成したマーキングは黒色から赤色に変化し、処方物2で作製したマーキングは黒色から緑色に変化した。処方物1及び2で作製したマーキングを消去処理しても、マーキングのスミアは生じず、インクで作製したマーキング(例えば紙の上に書いた文字)の色が変化するだけであった(すなわち、ハイライト効果を示した。)。
【0053】
これまでの記載は明確性のためだけに与えられ、本発明の範囲内における改変は当業者にとって明らかであろうから、不必要に限定されるものではないことが理解される。明細書を通じて、組成物が成分又は材料を含有するものとして記載されているときは、特に断りのない限り、その組成物は記載した成分又は材料の任意の組み合わせ「から本質的に成ること」又は「から成ること」もできることが企図されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】アシッド・バイオレット17についてバイオレット色の化合物から実質的に無色の(消去された)化合物へ変化する理論的な機構を示す反応式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、着色顔料と、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される消去可能染料とを含む混合物。
【請求項2】
更に消去不可能染料を含む請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記消去不可能染料が消去不可能ブルー染料、消去不可能レッド染料、消去不可能バイオレット染料、消去不可能イエロー染料、消去不可能オレンジ染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記消去不可能染料は、アシッド・ブルー1、アシッド・ブルー104、アシッド・ブルー182、アシッド・ブルー204、アシッド・ブルー74、アシッド・ブルー9,アシッド・ブルー90、ベーシック・ブルー1、ベーシック・ブルー7、ベーシック・ブルー9、ベーシック・ブルー33、ダイレクト・ブルー199、ダイレクト・ブルー281、ディスパース・ブルー73、リアクティブ・ブルー19、リアクティブ・ブルー21、アシッド・レッド18、アシッド・レッド249、アシッド・レッド52、アシッド・レッド87、アシッド・レッド92、ベーシック・レッド22、ベーシック・レッド28、ベーシック・レッド46、ダイレクト・レッド236、ダイレクト・レッド252、アシッド・バイオレット12、アシッド・バイオレット126、アシッド・バイオレット17、アシッド・バイオレット49、ベーシック・バイオレット1、ベーシック・バイオレット10、ベーシック・バイオレット3、アシッド・イエロー17、アシッド・イエロー118、アシッド・イエロー23、アシッド・イエロー3、アシッド・イエロー32、アシッド・イエロー36、ベーシック・イエロー21、ベーシック・イエロー28、ベーシック・イエロー37、ベーシック・イエロー40、ベーシック・イエロー291、アシッド・オレンジ10、リアクティブ・オレンジ16、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
前記消去不可能染料がベーシック・ブルー1、ベーシック・イエロー291及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項4に記載の混合物。
【請求項6】
前記混合物が黒色である請求項1〜5の何れか一項に記載の混合物。
【請求項7】
前記消去可能染料は、ベーシック・イエロー2、ベーシック・イエロー11、ベーシック・イエロー13、ベーシック・イエロー21、ベーシック・イエロー28、ベーシック・イエロー29、ベーシック・イエロー40、アシッド・ブルー22、アシッド・ブルー93、アシッド・グリーン、アシッド・グリーン5、アシッド・バイオレット17、アシッド・バイオレット19、ベーシック・ブルー8、ベーシック・ブルー15、ベーシック・ブルー20、ベーシック・ブルー26、ベーシック・グリーン4、ベーシック・レッド9、ベーシック・レッド14、ベーシック・レッド15、ベーシック・レッド29、ベーシック・レッド46、ベーシック・バイオレット2、ベーシック・バイオレット3、ベーシック・バイオレット4、ベーシック・バイオレット14、フード・グリーン3、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項1〜6の何れか一項に記載の混合物。
【請求項8】
前記着色顔料の色は還元剤によって実質的に影響を受けない請求項1〜7の何れか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記還元剤は亜硫酸塩還元剤、亜硫酸水素塩還元剤及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
前記着色顔料は、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.01重量%から約50重量%までの量で存在する請求項1〜9の何れか一項に記載の混合物。
【請求項11】
前記着色顔料は、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.1重量%から約20重量%までの量で存在する請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
前記消去可能染料は、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.01重量%から約40重量%までの量で存在する請求項1〜11の何れか一項に記載の混合物。
【請求項13】
前記消去可能染料は、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.1重量%から約10重量%までの量で存在する請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
前記着色顔料の色は酸化剤によって実質的に影響を受けない請求項1〜13の何れか一項に記載の混合物。
【請求項15】
前記着色顔料の色はpHの変化によって実質的に影響を受けない請求項1〜14の何れか一項に記載の混合物。
【請求項16】
更に還元剤を含む請求項1〜15の何れか一項に記載の混合物。
【請求項17】
更に酸化剤を含む請求項1〜16の何れか一項に記載の混合物。
【請求項18】
更にバインダー樹脂を含む請求項1〜17の何れか一項に記載の混合物。
【請求項19】
前記バインダー樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー及び塩、ポリ酢酸ビニル及びそのコポリマー及び塩、ポリアクリル酸及びそのコポリマー及び塩、並びにこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項18に記載の混合物。
【請求項20】
更に有機溶剤を含む請求項1〜19の何れか一項に記載の混合物。
【請求項21】
前記有機溶媒は、グリコール、尿素、脂肪アルコール、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、高分子量炭化水素、低分子量炭化水素、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項20に記載の混合物。
【請求項22】
前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項20に記載の混合物。
【請求項23】
前記有機溶媒は、混合物の全重量をベースにして少なくとも約5重量%から約30重量%までの量で存在する請求項20に記載の混合物。
【請求項24】
更に、pH緩衝剤、界面活性剤、殺生剤、防食剤、金属イオン封鎖剤、クラスト化防止剤、レオロジー制御剤、バインダー樹脂、膜形成剤、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される添加剤を含む請求項1〜23の何れか一項に記載の混合物。
【請求項25】
水と、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.01重量%から約50重量%までの量で存在する着色顔料と、混合物の全重量をベースにして少なくとも約0.01重量%から約40重量%までの量で存在する消去可能染料(前記消去可能染料はジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。)と、バインダー樹脂とを含み、前記着色顔料の色は酸化剤、還元剤及びpHの変化の一つ又は二つ以上によって実質的に影響を受けない混合物。
【請求項26】
更に消去不可能染料を含む請求項25に記載の混合物。
【請求項27】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物を含有する筆記具を備えるマーキング器具。
【請求項28】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物を含有するインクジェットカートリッジを備えるマーキング器具。
【請求項29】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物を含有する連続インクジェットの印字ヘッドを備えるマーキング器具。
【請求項30】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物を含有するドロップオンデマンドインクジェットの印字ヘッドを備えるマーキング器具。
【請求項31】
前記ドロップオンデマンドインクジェットの印字ヘッドは圧電インクジェットの印字ヘッド及びサーマルインクジェットの印字ヘッドよりなる群から選択される印字ヘッドを含む請求項30に記載の器具。
【請求項32】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物を基材に接触させてマークを作製する工程と、前記マークの少なくとも一部に消去剤流体を塗布する工程とを含むハイライト化方法。
【請求項33】
前記基材が紙である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記紙が非多孔質紙を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記消去剤流体は亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される化合物を含む請求項32に記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜26の何れか一項に記載の混合物と消去剤流体とを備えるハイライト化キット。
【請求項37】
前記消去剤流体は還元剤を含む請求項36に記載のハイライト化キット。
【請求項38】
前記還元剤は亜硫酸塩還元剤、亜硫酸水素塩還元剤及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される化合物を含む請求項37に記載のハイライト化キット。
【請求項39】
前記消去剤流体は酸化剤を含む請求項36に記載のハイライト化キット。
【請求項40】
ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、メチン染料及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される無色又は実質的に無色の消去可能染料と、着色顔料との混合物を含むハイライト化された複合物。
【請求項41】
更に消去不可能染料を含む請求項40に記載の複合物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−509197(P2007−509197A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534320(P2006−534320)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/033029
【国際公開番号】WO2005/035673
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(501495318)サンフォード エル.ピー. (32)
【Fターム(参考)】