説明

消波護岸及び消波護岸形成用部品

【課題】 裏込め材層を消波効果を得るために十分に利用する。
【解決手段】 消波護岸1は、表面側から内方側に向けて順に、自然石8層、裏込め材層15を備えている。当該消波護岸1の内部には、筒状部材18が埋設され、その一端開口(流入口)19が護岸表面から外部に臨み、その一端よりも他端側に形成される流出口23(22)が裏込め材層15内に臨んでいる。これにより、海水を筒状部材18を介して裏込め材層15の所望個所に導き、裏込め材層15を、波エネルギの減衰のために積極的に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消波護岸及び消波護岸形成用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸には、特許文献1に示すように、傾斜した基礎壁面上に詰め材層(砕石又は栗石層)を寄せ掛けて設け、その詰め材層の表面を複数の表面材(石)により覆ってその表面材により護岸表面を構成したものが提案されている。具体的には、詰め材層は、各詰め材を係合させて一体化されたものとされ、その詰め材層は、その全体の重量を利用して基礎壁面に寄せ掛けることにより該基礎壁面に対して一体化することになっている。一方、各表面材は、詰め材層における表面側の詰め材が崩れ落ちることを確実に防止すべく、アンカーを介して詰め材層にそれぞれ取付けられている。この場合、各アンカーは、その一端部が表面材に取付けられ、そのアンカーの他端部(ストッパ部を形成)は、取付け対象としての詰め材層内に進入されて、その詰め材層内における詰め材と係合することになっている。このため、各表面材は、取付けにおいて、詰め材層を取付け対象として強固に取付けられることになっている。
【0003】
ところで、上記護岸においては、隣り合う表面材間に比較的大きな空隙が形成されている一方、詰め材層は、上記表面材間の空隙よりも小さくされた空隙を形成することになっている。このため、この護岸においては、護岸表面側で、その高い空隙率に基づき、波の砕波に伴って発生する飛沫の発生を効果的に抑制でき、護岸内方側においては、その低い空隙率に基づき高い消波効果を得ることが期待できることになる。
【0004】
【特許文献1】特許第2983207号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、詰め材層の利用は、消波効果に関し、表面材の間を通って詰め材層に入り込む流水に限られ、表面材近傍における詰め材層部分しか利用されず、詰め材層は、消波効果に関し、十分に利用されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、詰め材層が形成されている護岸において、その詰め材層を消波効果を得るために十分に利用することにある。
第2の技術的課題は、上記消波護岸に用いられる消波護岸形成用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
護岸表面よりも内方側の護岸内部に、塊状の詰め材が充填された詰め材層が形成されている護岸において、
前記護岸内部に、少なくとも一端が流入口として開口されていると共に該一端よりも他端側において流出口が形成されている筒状部材が埋設され、
前記筒状部材の流入口が前記護岸表面から外方に臨み、
前記筒状部材の流出口が前記詰め材層に開口されている、
ことを特徴とする消波護岸とした構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜10の記載の通りとなる。
【0008】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項11に係る発明)にあっては、
護岸表面よりも内方側の護岸内部に、塊状の詰め材が充填された詰め材層が形成されている護岸に用いられる消波護岸形成用部品であって、
一端が流入口として開口する筒状形状に形成され、
前記一端よりも他端側において、前記詰め材層に臨むための流出口を有している構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、護岸内部に、少なくとも一端が流入口として開口されていると共に該一端よりも他端側において流出口が形成されている筒状部材が埋設され、その筒状部材の流入口が前記護岸表面から外方に臨み、その筒状部材の流出口が詰め材層に開口されていることから、流水(海水、湖水、河川水等)は、護岸表面に開口する筒状部材の流入口から該筒状部材内に入り、その筒状部材を介してその流出口から詰め材層内部に導かれることになり、その詰め材層において、流水エネルギ(波エネルギ)が減衰されることになる。このため、消波に関し、詰め材層をこれまで以上に積極的に利用でき、消波効果を、一層高めることができることになる。
しかも、当該護岸を構築するに当たっては、所定高さ個所(セット位置)を詰め材で充填する前にその所定高さ個所に筒状部材をセットし、その後、その筒状部材を詰め材の充填によって埋設するだけでよく、簡単に当該護岸を構築できることになる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、流出口が筒状部材の他端面に形成されていることから、その筒状部材の軸心方向長さを調整するだけで、流水を、波エネルギ減衰効果の高い詰め材層の所定個所に導くことができることになる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、流出口が複数の流出口をもって構成されていることから、流水を複数の流れをもって詰め材層に流出させることができることになり、複数の流出口が臨む詰め材層に部分的に大きな流動抵抗を生じさせる個所があっても、その他の個所を経由することにより流水を詰め材層に確実に供給できることになる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、筒状部材が真っ直ぐに延びる形状とされ、筒状部材の外周面に、該筒状部材の一端よりも他端側において、該筒状部材よりも径方向外方に拡張された拡張部が形成されていることから、拡張部と詰め材層の詰め材とが係合して、筒状部材を、その軸心方向に変位動不能に詰め材層に保持できることになり、当該護岸において、筒状部材を所定の状態で強固に保持できることになる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、流出口が筒状部材の周面に形成されていることから、詰め材層を波エネルギ(流水エネルギ)の減衰層として、その延び方向(略上下方向)全体に亘って利用できることになり、詰め材層を、限られた層厚の下でも効果的に利用できることになる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、筒状部材の周面が複数の格子目を有するように形成され、流出口が複数の格子目をもって構成されていることから、筒状部材内に流入した流水は、詰め材層に迅速且つ確実に流出されることになり、波エネルギを的確に減衰できることになる。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、流出口が、複数の格子目をもって筒状部材の周面及び他端面に形成されていることから、筒状部材内に流入した流水は、詰め材層に一層迅速且つ確実に流出されることになり、波エネルギを、一層的確に減衰できることになる。
【0016】
請求項8に係る発明によれば、各格子目の内周縁部に詰め材層の詰め材が係合されていることから、互いに噛み合った詰め材層の詰め材と格子目とを利用して筒状部材を詰め材層に強固に保持できることになり、特別に部品を設けなくても、当該護岸に所定状態で筒状部材を強固に保持できることになる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、護岸表面が、詰め材層における詰め材の径よりも大きい塊状表面材を積み上げることにより形成され、各塊状表面材が、詰め材層に隣接した状態で積み上げられていると共に、該詰め材層に取付けアンカーを介して取付けられていることから、護岸表面側の空隙率を護岸内方側の空隙率よりも大きくして、その護岸表面側において、砕波に基づき波エネルギを減衰させると共にその砕波に伴う飛沫の発生を抑制できることになる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、詰め材層と該詰め材層よりも内方側部分との間を跨ぐようにして延びる詰め材層保持具が設けられ、その詰め材層保持具の一端部が該詰め材層よりも内方側部分に保持され、その詰め材層保持具の他端部が、詰め材層の詰め材に係合されて、該詰め材層に該詰め材層よりも内方側部分から離間しようとする力が作用するときその力を受け止めるように設定されていることから、詰め材層よりも内方側部分に対する該詰め材層の一体化に関して、該詰め材層の重量(寄り掛かる力)に加えて、詰め材層保持具の保持力が関与することになり、詰め材層よりも内方側部分に対する該詰め材層の一体化能力を高めることができることになる。このため、詰め材層を波エネルギの減衰のために利用しても、護岸構造の強度に影響を与えないことを、より確実に担保できることになる。
【0019】
請求項11に係る発明によれば、護岸表面よりも内方側の護岸内部に、塊状の詰め材が充填された詰め材層が形成されている護岸に用いられる消波護岸形成用部品であって、一端が流入口として開口する筒状形状に形成され、その一端よりも他端側において、詰め材層に臨むための流出口を有していることから、当該消波護岸形成用部品を用いることにより、前記請求項1に係る消波護岸を構築できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1において、符号1は、海で用いられる第1実施形態に係る消波護岸を示す。この消波護岸1には、その消波護岸1付近の海底面2(消波護岸1を構築した後、高さ調整したもの)よりも低い位置において設置面3が形成され、その設置面3の後方側において背壁面4が形成されている。消波護岸1付近の海底面2は、消波護岸1構築前において、設置面3の高さよりも低くされているが、消波護岸1構築後に、図1に示すように、砕石等を盛ることにより所定の高さとされる。設置面3は、その最前部をコンクリート基礎5の上面により構成しつつ、そのコンクリート基礎5の上面前部から陸地内方側(図1中、右側)に向けて一定距離(例えば2m〜3m)だけ水平に延ばされており、背壁面4は、設置面3の後部に連続して天端まで起立(本実施形態においては1:0.5の勾配をもって傾斜)されている。この背壁面4の前方側であって上記設置面3の上方側が護岸施工空間を形成することになっており、この護岸施工空間は、海に沿う方向(図1において、紙面垂直方向)における施工区間において、同じ状態をもって確保され、その護岸施工空間を区画する設置面3及び背壁面4上には、土砂等の吸い出しを防止するための吸い出し防止シート6が敷設されている。
【0021】
前記設置面3上には、図1、図2に示すように、消波護岸1の表面を形成すべく、土木構築物用表面材としての土木構築物用施工石7が積み上げられている。各土木構築物用施工石7としては、表面材たる自然石(石)8と、その自然石8に取付けられる取付けアンカー9とを備えるものが用いられている。この土木構築物用施工石7の自然石8には、本実施形態においては、500mm前後の割石が用いられており、その自然石8の後部(図1中、右部)には、取付けアンカー9を取付るためのナット(自然石8に形成される孔内に打ち込まれるアンカー式ナット:図示略)が埋め込まれている。
【0022】
取付けアンカー9は、図1に示すように、線材10を有し、その線材10の一端部(図1中、左端部)が自然石8に対する取付け端部11とされ、その他端部にはストッパ構造部12が設けられている。線材10は、施工現場の状況、条件により適宜、選択されるが、本実施形態においては、線材10として、亜鉛アルミ合金メッキが施された鉄線(10%程度のアルミ含有)又はステンレス鉄線が用いられ、その径は5〜10mm(好ましくは8.0mm)前後、全長(軸心方向長さ)は500mm〜1500mm前後とされている。線材10の取付け端部11(一端部)は、本実施形態においては、雄ねじ部(図示略)により構成されており、その雄ねじ部は前記自然石8内のナットに螺合されている。ストッパ構造部12は、ストッパパネル13と、そのストッパパネル13を線材10の他端部外方に抜けないように規制するストッパパネル規制部14とにより構成されている。ストッパパネル13は、一辺が100〜500mm(好ましくは300mm)前後とされた正方形状の板材(厚み2〜10mm(好ましくは5.0mm)前後)からなっており、その強度は、ストッパとしての機能を果たすべく、容易には変形しないように設定されている。具体的には、ストッパパネル13として、鉄板、プラスチック板、コンクリート版等が適宜用いられるが、その材質の選定においては、前述の大きさ、強度等の観点が考慮される。このストッパパネル13の中央部には挿通孔(図示略)が形成されており、その挿通孔に線材10を挿通させることによってストッパパネル13が線材10に保持されている。ストッパパネル規制部14は、本実施形態においては、線材10の他端部を巻回することにより形成されるカール部(符号14を用いる)をもって構成されており、このカール部14が、ストッパパネル13が線材10の他端部外方へ抜けることを規制することになっている。
尚、線材10の一端側からカール部14までの径が一定とされ、その間において、ストッパパネル13は移動し得るが、後述する如く、取付けアンカー9は、自然石8が海側に脱落しようとする外力を受け止めることを目的としており、ストッパパネル13が線材10の他端部から一端部側へ移動することを規制する手段が特に設けられていなくても特に問題は生じない。勿論、ストッパパネル13を、線材10の他端部における所定位置において固定し、ストッパパネル13が線材10の軸心方向両側に移動することを規制するように設定してもよい。
【0023】
前記土木構築物用施工石7の積み上げ状態は、図1に示すように、その各土木構築物用施工石7の自然石8を、背壁面4から一定間隔(例えば500〜1500mm(好ましくは1000mm)前後)だけ離間させつつ、一定の勾配(前記背壁面4の勾配に対応)をもって積み上げることにより形成されている。この場合、各土木構築物用施工石7は、その取付けアンカー9が自然石8よりも背壁面4側に位置され、取付けアンカー9は、略水平に背壁面4側に向って延ばされることになっている。
【0024】
前記積み上げられた自然石8群(積み上げ層)と前記背壁面4との間には、図1に示すように、詰め材層として裏込め材層15が形成されている。この裏込め材層15は、塊状の詰め材として、前記自然石8よりも小さくされた砕石等(例えば自然石8に対して1/2〜1/10程度の砕石、割栗石、ブロック等)16を充填することにより形成されており、各砕石等16は、その各砕石等16の周囲の砕石等16に対して互いに噛み合っている。このため、裏込め材層15は、一体化した重量物として背壁面4に寄り掛かることになっている。
【0025】
前記裏込め材層15内には、図1に示すように、前記各取付けアンカー9が埋設され、その各取付けアンカー9のストッパパネル13は、裏込め材層15を形成する砕石等16に係合されている。このため、各取付けアンカー9は、自然石8の移動を規制する手段(取付け手段)として機能することになり、各自然石8は、当該消波護岸1において強固に保持されることになっている。
【0026】
消波護岸1の天端部分においては、図1に示すように、コンクリートを用いて天端コンクリート層17が形成されている。この天端コンクリート層17においては、一定の厚みが確保され、その天端コンクリート層17内に、最上段の自然石8を取付けるための取付けアンカー9が埋設されている。
【0027】
前記消波護岸1内には、図1、図2(一定高さ以上省略)に示すように、海に沿う方向に所定間隔毎に筒状部材(消波護岸形成用部品)18が埋設されている。各筒状部材18は、図3〜図5に示すように、真っ直ぐに延びる形状(例えば軸心方向長さが500〜600mm前後、径が300mm前後)とされており、その軸心方向一端壁には流入口19が略全体的に形成されている。その一方、筒状部材18のその他の周壁20及び他端壁(後壁)21は、丸鋼(例えば径13mm前後のもの)と帯材とを用いることにより、格子壁として形成されており、その周壁20及び他端壁21は格子目22を有している。このため、筒状部材18は、その内部が、その流入口19、周壁20の格子目22、他端壁21の格子目22を通じて外部と連通することになり、周壁20の格子目22及び他端壁21の格子目22が流出口を構成することになる。
【0028】
前記各筒状部材18は、図1、図2に示すように、消波護岸1内において、その流入口19が、前記自然石8の間を縫って消波護岸1外方に臨み、その一端部よりも他端側の大部分が前記裏込め材層15内に位置されている。そして、周壁20及び他端壁21の各格子目22には、裏込め材層15の砕石等16の一部が入り込み、それらが、その各格子目22の内周縁部に係合することになっている。このため、筒状部材18は裏込め材層15と一体化することになり、筒状部材18が移動することが規制されることになっている。勿論このとき、筒状部材18は、裏込め材層15の荷重に十分に耐える強度を有するように設定されている。
【0029】
前記各筒状部材18は、本実施形態においては、図1に示すように、前記海底面2よりもやや高く且つ海面の低水位面L1よりも多少低い位置に位置されている。これは、海水を筒状部材18内に常に受け入れること等を考慮して設定されたものであるが、海面の通常水位面L2或いは水位面の上昇等を考慮して、筒状部材18の高さ位置を、適宜、本実施形態の位置よりも高くしてもよいことは言うまでもない。
【0030】
このような消波護岸1においては、護岸表面が、積み上げられた比較的大きな自然石8により形成され、裏込め材層15が、自然石8よりも小さい砕石等16により形成されていることから、護岸表面においては、砕波に基づく消波効果を得ることができると共に、そこでの空隙率が高いことに基づき砕波に伴う海水飛沫が発生することを効果的に抑制することができ、裏込め材層15においては、そこでの空隙率が低いことに基づき、護岸表面の自然石8間から入り込んだ海水の波エネルギを減衰させることができることになる。
【0031】
しかも、この消波護岸1においては、海水は、各筒状部材18の流入口19から入り込んで、その格子目22を介して裏込め材層15に、自然石8間から海水が入り込む表面側部分だけなくその他の部分においてもスムーズに入り込むことになり、その筒状部材18を介して裏込め材層15に入り込んだ海水の波エネルギも、その裏込め材層15内(各砕石等16間の空隙)をその海水が流れることに基づき減衰されることになる(図1において海水の流れを矢印をもって示す)。このため、消波効果に関し、好ましい構造(護岸表面側が、空隙率を高くする自然石群、その内部側が、空隙率を低くする裏込め材層15であること)であることに加えて、筒状部材18が海水を裏込め材層15にスムーズに案内して波エネルギを減衰させることができることになり、消波効果を得るために、裏込め材層15を効果的に利用できることになる。勿論この場合、裏込め材層15内に導かれた海水は、自然石8間から海に戻ることができる。
【0032】
この消波護岸1においては、消波効果を考慮して、筒状部材18の設置数、裏込め材層15の層厚等が適宜、決められることになるが、この消波護岸1が、基本的に、裏込め材層15を形成し、その裏込め材層15に土木構築物用施工石7を取付けるだけであることから、設定条件の変更に関し、簡単に対応できることになる。
尚、消波護岸1内における各筒状部材18は、平常時は魚や甲殻類の巣としても機能することになる。
【0033】
図6〜図8は第2実施形態、図9は第3実施形態、図10は第4実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図6〜図8に示す第2実施形態においては、筒状部材18として、円筒状のものが用いられ、その軸心方向一端には、流入口19が開口され、その軸心方向他端には流出口23が開口されている。しかも、この筒状部材の軸心方向両端部外周には、拡張部としてフランジ部24がそれぞれ形成されている。そして、この筒状部材18も、消波護岸1内部において略水平に配置され、その流入口19が護岸表面(自然石8が形成)から外部に臨み、その流出口23は裏込め材層15内に臨むことになっている。この場合、筒状部材18における両端部のフランジ部24が、裏込め材層15の砕石等16に係合されており、海水に基づく外力が筒状部材18に作用しても、その移動が規制されることになっている(強固に保持されることになっている。)。
【0035】
この第2実施形態においては、海水が、各筒状部材18にその流入口19から入り込んで、その流出口23から裏込め材層15に流出することになり、この第2実施形態においても、裏込め材層15の所望の個所(本実施形態では、自然石8間から入り込んだ海水の及びにくい背部)に海水を積極的に導いて、海水の波エネルギを減衰させることができ、前記第1実施形態同様、消波効果を得るために、裏込め材層15を効果的に利用できることになる。
【0036】
図9に示す第3実施形態は前記第1実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、裏込め材層15の背面側に裏込めコンクリート壁25が設けられ、その裏込めコンクリート壁25に対して、複数の詰め材層保持具26が設けられている。この各詰め材層保持具26には、本実施形態においては、前記取付けアンカー9と同じ構成のものが用いられている(以下、便宜上、詰め材層保持具26の構成要素の符号として、前記取付けアンカー9の構成要素の符号と同じものを使用する)。すなわち、詰め材層保持具26は、線材10を有し、その線材10の一端部に雄ねじ部が形成され、その他端部にストッパパネル13が取付けられた構成となっている。そして、各詰め材層保持具26の一端部(雄ねじ部)が裏込めコンクリート壁25の取付け孔(ナット)に取付けられ、その一端部よりも他端側の大部分が裏込め材層15内に埋設され、各詰め材層保持具26のストッパパネル13は、裏込め材層15を形成する砕石等16に係合されている。このため、各詰め材層保持具26は、噛み合って一体化している裏込め材層15を裏込めコンクリート壁面25aに保持することになり、裏込めコンクリート壁面25aに対する裏込め材層15の一体化能力は、その全体重量に加えて、各詰め材層保持具26による保持力によっても高められることになっている。
【0037】
したがって、筒状部材18を用いて海水を裏込め材層15に導いて積極的に消波効果を得る場合においても、裏込めコンクリート壁25に対する裏込め材層15の一体化能力が低下することを防ぎ、消波護岸1を、長期に亘って強固な状態で維持できることになる。
【0038】
図10に示す第4実施形態においては、裏込め材層15の背面側に、砕石等30が互いに噛み合った状態をもって充填されている支持層31が配置され、その表面が背壁面4を構成している。この支持層31は、その上端面が天端付近まで延び、その層厚(図10中、左右方向の長さ)は、上方側から下方に向かうに従って拡がるようになっていて、その支持層31の安定性は高められている。この支持層31の表面全体には、取付けアンカー9等の移動規制手段として金網32が張り巡らされており、この金網32には、各取付けアンカー9の他端部(線材10の他端部)、各筒状部材18の他端壁が連結具(例えばシャックル等を利用)33を介してそれぞれ連結されている。この場合、金網32に換えて、連結線を支持層31の表面に張り巡らしてもよい。
【0039】
これにより、裏込め材層15の寄り掛かりを支持層31が一層確実に受け止めることができることになり、裏込め材層15の層厚を厚くして、消波効果を高めることができることになる。しかも、その支持層31(砕石等30の空隙)は、入り込んでくる海水の波エネルギを減衰させるためにも利用されることになり、この支持層31によっても消波効果を高めることができることになる。
【0040】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)裏込めコンクリート壁25に対する詰め材層保持具26(一端部)の取付け、自然石8に対する取付けアンカー9(線材10の一端部)の取付けにおいて、孔内に、接着剤を充填すると共に線材10の一端部を挿入して、接着剤に基づいて一体化したり、線材10の一端部にアンカー(第1実施形態にけるナット11を含む)を取付け、その状態のアンカーを孔内に打ち込むこと。
(2)護岸表面材として、自然石8に限らず、擬石、人造石、ブロック等、種々のものを適宜用いること。
(3)線材10の他端部をストッパパネル13の挿通孔に挿通させることができる場合において、その線材10の他端部に、ストッパパネル13が、所定位置以上、線材10の一端部側に移動することを規制する規制部を設けて、作業性を向上させること。
(4)裏込めコンクリート壁面25aの起立状態として垂直状態のものを含むこと。
(5)海における護岸、擁壁等を対象とする場合に限らず、湖水、河川における護岸、擁壁等にも本発明を適用すること。
(6)新設する場合に限らず、既設の護岸、擁壁等に本発明に係る構造を付加すること。
(7)取付けアンカー9のストッパパネル13に換えて、取付けアンカー9の線材10を、金網32等の網状体に連結したり、裏込めコンクリート壁25等に一体化したりすること。
(8)取付けアンカー9として、その線材10の軸心方向長さ全長を調整可能としたものを用いること(例えば、線材10を2分割し、その両者を調整連結具を介して連結して長さ調整可能としたもの)。
(9)第1,第2実施形態に係る消波護岸1の裏込め材層15の背面側に、第4実施形態に係る支持層31を設けること。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態に係る護岸を説明する説明図。
【図2】図1に係る護岸を表面側から部分的に見た図。
【図3】第1実施形態に係る筒状部材を示す平面図。
【図4】図3の正面図。
【図5】図3の右側面図。
【図6】第2実施形態に係る護岸を説明する説明図。
【図7】図6に係る護岸を表面側から部分的に見た図。
【図8】第2実施形態に係る筒状部材を示す平面図。
【図9】第3実施形態に係る護岸を説明する説明図。
【図10】第4実施形態に係る護岸を説明する説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 消波護岸
8 土木構築物用施工石
8 自然石(表面材)
9 取付けアンカー
15 裏込め材層(詰め材層)
16 砕石等(詰め材)
18 筒状部材(消波護岸用形成部品)
19 流入口
22 格子目(流出口)
23 流出口
24 フランジ部(拡張部)
25 裏込めコンクリート壁(詰め材層よりも内方側部分)
26 詰め材保持具




【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸表面よりも内方側の護岸内部に、塊状の詰め材が充填された詰め材層が形成されている護岸において、
前記護岸内部に、少なくとも一端が流入口として開口されていると共に該一端よりも他端側において流出口が形成されている筒状部材が埋設され、
前記筒状部材の流入口が前記護岸表面から外方に臨み、
前記筒状部材の流出口が前記詰め材層に開口されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項2】
請求項1において、
前記流出口が、前記筒状部材の他端面に形成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項3】
請求項2において、
前記流出口が、複数の流出口をもって構成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項4】
請求項2において、
前記筒状部材が真っ直ぐに延びる形状とされ、
前記筒状部材の外周面に、該筒状部材の一端よりも他端側において、該筒状部材よりも径方向外方に拡張された拡張部が形成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項5】
請求項1において、
前記流出口が、前記筒状部材の周面に形成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項6】
請求項5において、
前記筒状部材の周面が複数の格子目を有するように形成され、
前記流出口が、前記複数の格子目をもって構成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項7】
請求項1において、
前記流出口が、複数の格子目をもって前記筒状部材の周面及び他端面に形成されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記各格子目の内周縁部に前記詰め材層の詰め材が係合されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項9】
請求項1において、
前記護岸表面が、前記詰め材層における詰め材の径よりも大きい塊状表面材を積み上げることにより形成され、
各塊状表面材が、前記詰め材層に隣接した状態で積み上げられていると共に、該詰め材層に取付けアンカーを介して取付けられている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項10】
請求項1において、
前記詰め材層と該詰め材層よりも内方側部分との間を跨ぐようにして延びる詰め材層保持具が設けられ、
前記詰め材層保持具の一端部が、前記該詰め材層よりも内方側部分に保持され、
前記詰め材層保持具の他端部が、前記詰め材層の詰め材に係合されて、該詰め材層に前記基礎壁面から離間しようとする力が作用するときその力を受け止めるように設定されている、
ことを特徴とする消波護岸。
【請求項11】
護岸表面よりも内方側の護岸内部に、塊状の詰め材が充填された詰め材層が形成されている護岸に用いられる消波護岸形成用部品であって、
一端が流入口として開口する筒状形状に形成され、
前記一端よりも他端側において、前記詰め材層に臨むための流出口を有している、
ことを特徴とする消波護岸形成用部品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−2390(P2006−2390A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178171(P2004−178171)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【出願人】(301015864)株式会社環境工学研究所 (18)
【Fターム(参考)】