説明

消火システムおよび消火システムの作動方法

【課題】比較的小型かつ軽量の消火システムを提供する。
【解決手段】消火システム10は、消火剤供給源14、切替弁16、分配システム18および制御システム20を含む。消火剤供給源14の下流に位置する切替弁16は、消火剤を第1の分配ネットワーク18Aに連通させる初期の第1の位置と、消火剤を第2の分配ネットワーク18Bに連通させる第2の位置と、の間で選択的に移動可能となっている。センサシステム24が火災を検知すると、切替弁16を適切な位置に方向つける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火システムに関し、特に、消火システム用の切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
軍用車両の役割が変化する中で、戦闘車両と戦務車両との区別がはっきりしなくなっているか、あるいは存在しなくなっている。戦務車両は、近年では装甲されており、防火システムを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
戦務車両は、比較的小型かつ軽量なので、比較的小型かつ軽量の防火システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な形態による消火システムは、消火剤供給源の下流に設けられた切替弁を含む。この切替弁は、第1の位置と第2の位置との間で選択的に移動可能となっており、初期状態では第1の位置に配置されている。第1の分配ネットワークが切替弁と連通しており、第1の位置では、消火剤供給源が第1の分配ネットワークと連通するように切替弁が方向づけられる。さらに、第2の分配ネットワークが切替弁と連通しており、第2の位置では、消火剤供給源が第2の分配ネットワークと連通するように切替弁が方向づけられる。
【0005】
本発明の例示的な形態による消火システムの作動方法は、切替弁を第1の位置または第2の位置のいずれかに方向づけ、第1の位置に関連する第1の車両区域または第2の位置に関連する第2の車両区域に消火剤を連通させるように、供給源から切替弁に消火剤を放出することを含む。
【0006】
種々の特徴は、開示された限定的でない実施例に関する以下の詳細な説明により当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の限定的でない一実施例による、消火システムを有する車両の概略説明図である。
【図2】例示的な消火システムのブロック図である。
【図3】第1の位置における消火システムのブロック図である。
【図4】第2の位置における消火システムのブロック図である。
【図5】消火システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、火災を消火するために使用可能な例示的な消火システム10の選択された部分を概略的に示している。消火システム10は、戦務車両などの地上車両12内で使用可能であるが、例示的な消火システム10は他の地上車両、船舶、航空機で使用することもできる。
【0009】
消火システム10は、車両区域12A,12Bで発生するおそれがある火災を消火するために車両12内に装備されている。例えば、区域12Aは乗務員室などの危険度が高い区域であり、区域12Bはエンジン室などの危険度が比較的低い区域である。危険度が高い区域は、乗務員を守るために迅速な消火を要し、危険度が比較的低い区域は、比較的ゆっくりとした消火を要する。貨物室、車輪収納室、電子機器室、火薬室など、消火が望まれ、かつ異なる危険度を有する他の区域もさらに区分けすることができる。
【0010】
図2を参照すると、消火システム10は、一般に、消火剤供給源14、切替弁16、分配システム18および制御システム20を含む。消火剤供給源14は、開示された限定的でない実施例では、一例としてエンジン室と乗務員室の両方での使用に適した消火剤を含む与圧された圧力容器14Bである。
【0011】
比較的小型の車両では、単一圧力容器の消火剤供給源14によって、どちらの車両区域12A,12Bも防火することができ、空間および重量が節減されるとともにロジスティックスが単純化される。限定的でない一実施例では、消火剤供給源14は、乗務員室12Aにあり、消火剤は分配システム18を通してエンジン室12Bに選択的に分配される。消火剤の濃度は、一次車両区域12Aのために計算され、乗務員の生存可能性に悪影響を及ぼすおそれがあるため限度を超えることができない。通常は、エンジン室などの二次車両区域12Bは、比較的小さいが、人が存在しないので、比較的高くかつそれでも安全な消火剤濃度が用いられる。しかし、より多くの消火剤が必要な場合には、第2の別の圧力容器消火剤供給源14が必要となることもある。
【0012】
切替弁16は、制御システム20に応答して、車両区域12A,12Bにそれぞれ関連する分配システム18の(概略的に図示した)分配ネットワーク18A,18Bに消火剤供給源14の消火剤を選択的に連通させる。制御システム20は、一般に、モジュール22とセンサシステム24を含む。モジュール22は、一般に、プロセッサ28、メモリ30およびインターフェイス32を含む。プロセッサ28は、所望の性能特性を有するあらゆる種類のマイクロプロセッサとすることができる。メモリ30は、データおよびここで説明する制御アルゴリズムを格納するあらゆる種類のコンピュータ可読媒体を含みうる。インターフェイス32は、センサシステム24や他のシステムとの通信を容易にするあらゆるシステムを含むことができる。センサシステム24は、例えば、赤外線光学センサを含み、このようなセンサは、車両全体にわたって効果的に配置されて直火や戦闘によらない炭化水素のシグネチャーを検知して特定する。
【0013】
切替弁16は、一般に、ハウジング34と、第1の通路38と第2の通路40を有する回転弁などの弁36を含む。例えば、リニアスライド/シャトル弁などの回転弁以外の種々の弁も使用可能である。限定的でない一実施例では、第1の通路は回転弁36を貫通し、第2の通路40は第1の通路と交差する。種々の通路配置を代わりにまたは追加で設けることもできる。
【0014】
弁36は、第1の位置(図3)と第2の位置(図4)の間で移動可能となっている。第1の位置は、第1の通路38が消火剤供給源14と連通するように方向づけられる予め設定された初期位置であり、この位置では消火剤が分配ネットワーク18Aそして車両区域12Aに分配される。すなわち、弁36は、通常は、乗務員室区域12Aと連通するように位置付けられており、迅速な検知を行うとともに消火剤供給源14から消火剤を実質的に即時に分配することができる。第2の位置では、第2の通路が消火剤供給源14と連通するように方向づけられており、第2の通路40から第1の通路38へ、そして分配ネットワーク18Bおよび車両区域12Bに消火剤が分配される。
【0015】
第1の通路38および第2の通路40は、車両区域12A,12Bに関連した寸法とすることができる。つまり、第1の通路40が、通常比較的大きい乗務員室であり、かつより即時の対応が必要な車両区域12Aと連通するので、第2の通路よりも大きな質量流量の消火剤を提供するために比較的大きく設けられる。第1の通路38と第2の通路40のそれぞれの寸法は、車両区域12A,12Bに対して所望の時間にわたって所望の質量流量を提供するように設けられる。例えば、乗務員室には、エンジン室に比べて比較的大きな量の消火剤を比較的短い時間にわたって連通させることができ、これに対して、エンジン室は、比較的小さい質量流量の消火剤を比較的長い時間にわたって必要としうる。
【0016】
切替弁16は、消火剤を切替弁16に選択的に放出する消火剤供給源14の作動弁14Vのすぐ下流に取り付けられる。作動弁14Vは、消火剤を放出するように消火剤供給源14に取り付けられるか、あるいはこれと一体に設けられたフラッパ弁、カートリッジ弁または電磁弁などの主弁である。つまり、作動弁14Vは、切替弁16に取り付けられており、切替弁16が消火剤を有効に利用するためにどちらの分配ネットワーク18A,18Bに消火剤を供給するかを制御する一方で、作動弁14Vは、例えば、ワンショットで消火剤供給源14から消火剤を放出するように動作可能である。2つ以上の消火剤供給源14を単一の作動弁14Vに取り付けて、切替弁16を通して、2つ以上のショット(乗務員)、2つ以上のショット(エンジン)または1つのショット(乗務員)と1つのショット(エンジン)を提供することができる。
【0017】
モジュール22は、センサシステム24に応答して、どの車両区域12A,12Bに消火剤供給源14からの消火剤を供給するかを制御するためにアルゴリズム26を実行する。アルゴリズム26の機能は、図5で機能ブロック図として示されており、本開示内容から当業者には理解されるように、これらの機能は専用のハードウェア回路またはマイクロプロセッサベースの電子制御装置で実行されるプログラムされたソフトウェアルーチンとして実現可能である。プログラムされたソフトウェアルーチンとして実現される場合には、プロセッサ28で実行するためにアルゴリズム26の機能をメモリ30に格納することができる。
【0018】
動作時には、センサシステム24が車両区域12A,12B内の火災を検知し、続いて、モジュール22が必要に応じて切替弁16を適切な位置に方向づける。つまり、切替弁16は、通常は乗務員室の車両区域12Aに消火剤を連通させるように配置すなわち予め設定されているので、センサシステム24が車両区域12A内の火災を検知した場合には、モジュールは作動弁14Vを開いて切替弁16および分配ネットワーク18Aを通して関連する車両区域12Aに消火剤を選択的に放出するだけでよく、作動は即時に行われる。区域12Bなどで火災が検知された場合にのみ、モジュール22は、最初に切替弁16の向きを区域12Bの位置に変更する必要があり、その後で、消火剤供給源14の作動弁14Vを開いて切替弁16に消火剤を放出し、分配ネットワーク18Bそして関連する車両区域12Bに消火剤を分配する。
【0019】
選択的に、消火剤をどの車両区域12A,12Bに放出するかをユーザがユーザインターフェイスを通して手動で選択することができ、モジュール22はこれに応答する。つまり、モジュール22は、必要に応じて適切な位置に切替弁の向きを変更し、続いて消火剤供給源14の作動弁14Vを開いて切替弁16に消火剤を放出し、消火剤が切替弁から適切な分配ネットワーク18A,18Bそして選択された車両区域12A,12Bに分配される。
【0020】
消火システム10は、乗務員室またはエンジン室専用の他の消火システムやマルチショット消火剤供給源と組み合わせることができる。このような代替的な装置は、異なる相対的容積を有する車両区域12A,12Bに対する具体的な適用を容易にする。これにより、最小の構成要素によって、比較的優先度が高い区域のために、例えば、250msecより短時間で放出を行う高速の自動装置が提供され、比較的優先度が低い区域には、数秒にわたって放出を行う僅かに遅い応答が提供される。
【0021】
なお、図面において、対応部および相当部には、同一番号を付している。実施例には、特定の構成要素の組合せが開示されているが、他の組合せも可能である。
【0022】
また、特定のステップシーケンスを開示、説明および請求項に記載したが、これらのステップは、記載がない限りは、どんな順番で実行してもよく、分けたり組み合わたりすることもでき、それでもなお本開示内容の利益を受ける。
【0023】
上述の説明は、例示的なものであり、限定的なものではない。種々の限定的でない実施例が開示されているが、当業者であれば上述の教示に照らして種々の改良や変更が請求の範囲内に含まれることが分かるであろう。よって、添付の請求項の範囲内であれば、具体的に説明した以外の方法で本開示内容を実施することができる。このため、真の範囲と内容を定めるためには、添付の請求項の検討が必要である。
【符号の説明】
【0024】
10…消火システム
12A,12B…車両区域
14…消火剤供給源
14B…圧力容器
14V…作動弁
16…切替弁
18…分配システム
18A,18B…分配ネットワーク
20…制御システム
22…モジュール
24…センサシステム
26…アルゴリズム
28…プロセッサ
30…メモリ
32…インターフェイス
34…ハウジング
36…弁
38…第1の通路
40…第2の通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤供給源と、
前記消火剤供給源の下流に位置するとともに、第1の位置と第2の位置との間で選択的移動可能となっており、初期状態では第1の位置に配置される切替弁と、
前記切替弁と連通する第1のネットワークと、
前記切替弁と連通する第2のネットワークと、を有し、
第1の位置では、前記消火剤供給源が第1の分配ネットワークと連通するように前記分流弁が方向づけられており、第2の位置では、前記消火剤供給源が第2の分配ネットワークと連通するように前記分流弁が方向づけられていることを特徴とする消火システム。
【請求項2】
第1の位置に関連する前記切替弁の第1の通路が、第2の位置に関連する前記切替弁の第2の通路よりも大きい質量流量を提供することを特徴とする請求項1記載の消火システム。
【請求項3】
第1の通路が第2の通路と交差していることを特徴とする請求項1記載の消火システム。
【請求項4】
前記切替弁は、第1の位置と第2の位置との間で回転可能な回転弁であることを特徴とする請求項1記載の消火システム。
【請求項5】
作動弁をさらに含み、前記切替弁は前記作動弁の下流に位置することを特徴とする請求項1記載の消火システム。
【請求項6】
前記作動弁は、前記消火剤供給源からの消火剤を前記切替弁に選択的に放出することを特徴とする請求項5記載の消火システム。
【請求項7】
制御システムをさらに有し、この制御システムは、前記切替弁を位置決めし、かつ前記作動弁を作動させて、前記消火剤供給源から前記切替弁に消火剤を選択的に放出させるように動作可能であることを特徴とする請求項6記載の消火システム。
【請求項8】
前記制御システムは、前記作動弁を作動させる前に前記切替弁を位置決めするように動作可能であることを特徴とする請求項7記載の消火システム。
【請求項9】
第1の分配ネットワークは、危険度の高い区域と連通していることを特徴とする請求項1記載の消火システム。
【請求項10】
第2の分配ネットワークは、危険度の比較的低い区域と連通していることを特徴とする請求項9記載の消火システム。
【請求項11】
初期状態で第1の位置に配置される切替弁を、第1の位置または第2の位置に方向づけ、
消火剤供給源から前記切替弁に消火剤を放出して、第1の位置に関連する第1の車両区域または第2の位置に関連する第2の車両区域に消火剤を連通させることを含むことを特徴とする消火システムの作動方法。
【請求項12】
前記切替弁の方向づけは、該切替弁を回転させることを含むことを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項13】
消火剤の放出は、前記切替弁の上流に位置する作動弁を通して消火剤を放出することを含むことを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項14】
第1の車両区域への消火剤の放出は、前記切替弁の向きの変更を要しないことを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項15】
第1の車両区域は、乗務員室であることを特徴とする請求項14記載の消火システムの作動方法。
【請求項16】
第2の車両区域への消火剤の放出は、消火剤供給源から消火剤を放出する前に前記切替弁の向きを変更することを要することを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項17】
第2の車両区域は、エンジン室であることを特徴とする請求項16記載の消火システムの作動方法。
【請求項18】
第1の位置は、第2の位置に関連する第2の通路よりも大きい第1の通路を含むことを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項19】
センサシステムに応答して、制御モジュールによって、前記切替弁および消火剤の放出を制御することを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。
【請求項20】
ユーザインタフェースによる手動の選択に応答して、前記切替弁および消火剤の放出を制御することを特徴とする請求項11記載の消火システムの作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−120845(P2012−120845A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269496(P2011−269496)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(510079477)キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】