説明

消火ポンプユニット

【課題】設置スペースを小さくすることができるとともに、製造費用を低く抑えることができる消火ポンプユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一形態にかかる消火ポンプユニット1は、水を貯える水槽20と、前記水槽20の下方に配されるポンプ30と、前記水槽20の下部に設けられ、前記水槽20を支持するとともに、内部に前記ポンプ30を収容する空間14を有し、前記ポンプ30及び接続用の配管類を覆うカバー13を有するベース部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火ポンプユニットに関し、特に、貯水槽とポンプを備える消火ポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特定施設において、水道水を消火用水の水源に利用したスプリンクラー設備(水道連結型スプリンクラー設備)が知られている。水道水用の配管にスプリンクラーを直接連結させると、スプリンクラー配管に滞留した水が水道水に混入しないように逆止機構を設置する必要があり、また、他の箇所で水道を使用していて水圧が低下した場合には十分な圧力で消火水が放出できない。そこで、水道水を消火用水の水源として貯留する貯水槽と、貯水槽の水を圧送させるポンプとを備えて構成された消火ポンプユニットが考えられている。
【0003】
このような消火ポンプユニットは、例えばスプリンクラーヘッドまで所定の圧力の水が充満するようにしておき、火災の発生によりスプリンクラーヘッドが開放すると、水の流出により、スプリンクラー設備の圧力水槽の水圧が低下し、それによりポンプが起動して、貯水槽内に貯めてある水を汲み上げてスプリンクラーヘッドから放射させる。このような消火ポンプユニットでは、一般に、貯水槽とポンプとが個別に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−29499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術には以下のような問題がある。すなわち、貯水槽とポンプとを個別に設置する構成であるため、設置スペースが大きくなるという問題がある。また、双方を屋外に設置するためには、ポンプを屋外仕様とする必要があり、製造費用が高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、設置スペースを小さくすることができるとともに、製造費用を低く抑えることができる消火ポンプユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態にかかる消火ポンプユニットは、水を貯える水槽と、前記水槽の下方に配されるポンプと、前記水槽の下部に設けられ、前記水槽を支持するとともに、内部に前記ポンプを収容する空間を有し、前記ポンプ及び接続用の配管類を覆うカバーを有するベース部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消火ポンプユニットの設置スペースを小さくするとともに、製造費用を低く抑えることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる消火ポンプユニットの正面を一部切欠して示す説明図。
【図2】同消火ポンプユニットの側面を一部切欠して示す説明図。
【図3】同消火ポンプユニットの背面を示す説明図。
【図4】同消火ポンプユニットの断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる消火ポンプユニット1の正面、図2は側面図、図3は背面図、をそれぞれ示す。なお、図1においては、ベース部10の一部を切欠してベース部10の内部の構造を示している。図2においては、ベース部10及び水槽20の一部を切欠して内部の構造を示している。図4は図1及び図2のA−A断面を上方から見た平面図である。なお、中矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。ここでは、Xは右側方、Zは上方、Yは後方をそれぞれ指している。
【0011】
消火ポンプユニット1は、例えば、建物に設置してある自動消火設備としてのスプリンクラー設備等に組み合わさる、特定施設水道直結型のポンプであり、例えば屋外に設置されて使用される。
【0012】
消火ポンプユニット1は、水道水を水源として貯える貯水槽20(水槽)と、貯水槽20の下方に設置され貯水槽20内の水をスプリンクラー設備に圧送するポンプ30と、これら貯水槽20及びポンプ30を上下に配置して支持するベース部10と、備えて構成されている。
【0013】
ベース部10は、例えば複数本のフレーム部材が箱枠状に組まれてなる架台11と、ポンプ30が載置される底板12と、架台11の開口を塞ぐ複数のカバー13とを備え、内部に空間を有するとともに上方が開口する箱形状に構成されている。
【0014】
ベース部10の上に貯水槽20が設置されることにより、地上から所定の高さに貯水槽20が支持される。ベース部10内の空間14にポンプ30が収容される。すなわち、ベース部10によって、貯水槽20とポンプ30が上下に配置されるとともに、ポンプ30が複数のカバー13によって保護される。
【0015】
貯水槽20は、内部に水を貯留する空間を形成するとともに上側に開口を有する槽本体21と、当該開口を塞ぐように設けられた蓋体22と、を備えて構成され、水道水を消火用水の水源として貯留する。
【0016】
槽本体21は、図2に示すように、例えば鋼板製の側壁と底壁25(底部)を有し、上部に開口を有する箱形状に構成されている。貯水槽20は、ベース部10の上方の開口を塞ぐようにベース部10上に設置されている。
【0017】
槽本体21の側壁には、ボールタップを備えた補給管23が組み付けられている。この補給管23は、水の補給を行う水道配管に接続される。そして、このボールタップの所定水位に応じた開閉動作により、槽本体21内に所要水量の水が補給される。
【0018】
槽本体21の底壁25には、同底壁25を通って槽本体21内部において上方に延びるオーバーフロー管26が組み込まれている。このオーバーフロー管26の下端部は、排水管(不図示)に接続されている。またこのオーバーフロー管26の上端部は槽本体21の内部で開放されている。さらに、槽本体21の底壁25には、後述するポンプ30の吸入配管35及び共通排出配管44が接続されている。
【0019】
また槽本体21内には、水位検出用の長尺な電極棒27が設けられている。この電極棒27は、空間14内に組み付く制御盤(不図示)に接続され、貯水槽20内で貯えた水の状態(減水など)が制御盤へ出力される。
【0020】
ベース部10の底板12の上面に、例えば電動駆動式のポンプ30が据え付けられている。ポンプ30は、例えば図1中右側に配置されるポンプ部31と、左側に配置されポンプ部31を直動する電動機32と、を備えている。
【0021】
ポンプ部31は、図1中右側に吸入口33を、上側に吐出口34を、それぞれ有している。
【0022】
吸入口33には、X方向に沿って側方に延び、さらに屈曲してZ軸に沿って上方の貯水槽20に向かって延びる、吸入配管35が連結されている。吸入口33は、この吸入配管35を介して、貯水槽20内に連通している。
【0023】
吐出口34は吐出配管36を介して、スプリンクラー設備の圧力水槽(図示しない)を介して、スプリンクラーヘッド(消火水流出口)に接続されている。吐出配管36には、逆止弁38、及び仕切弁(開閉弁)39が右方に向かって順番に設けられている。吐出配管36の吐出側端部36aは、ベース部10の外側へ導出され、スプリンクラー設備に接続されている。
【0024】
スプリンクラー設備は、圧力水槽によりスプリンクラーヘッドまで所定の圧力の水が充満されている。火災の発生によりスプリンクラーヘッドが開放し、水の流出により圧力水槽の水圧が低下すると、ポンプ30が起動して、貯水槽20内の水が、吸入口33から吸入され、吐出口34を通ってスプリンクラー設備のスプリンクラーヘッド(図示しない)へ送られ、スプリンクラーから放射される。
【0025】
さらに、吐出配管36の途中から分岐して常時逃がし配管41が設けられている。常時逃がし配管41は、分岐部分から、X方向(後方)へ延びた後、さらに屈曲して左方(Y方向)に延びている。図4に示す平面視において、常時逃がし配管41は、同一水平面内でL字形状を成している。
【0026】
さらに、吐出配管36の基端部から、反対側に向かって試験用配管42が設けられている。試験用配管42は、Y方向に沿って左側に延びた後屈曲されてX方向に沿う後方へ向かって延び、さらに屈曲してY方向に沿う右側に向かって延びる。図4に示す平面視において、試験用配管42は、同一水平面内でコ字形状を成している。試験用配管42の途中部分には、試験部としての流量計43が設けられている。
【0027】
試験用配管42の排出側の端部42aと、常時逃がし配管41の排出側の端部41aは、一箇所に集められ、上方の貯水槽20内に延びる1つの共通排出配管44に接続されている。
【0028】
共通排出配管44は、貯水槽20の底面を通って貯水槽20内部において上方に延びている。共通排出配管44は、オーバーフロー管26の上端よりも上方において貯水槽20内で開口している。共通排出配管44の流出側の先端部44aは、湾曲して、下方を向いている。
【0029】
これらの吸入配管35、吐出配管36、逃がし配管41、試験用配管42は、架台11の内部空間と貯水槽20の内部で構成される領域内に収められている。
【0030】
以上のように構成された消火ポンプユニット1の動作について説明する。消火ポンプユニット1は、貯水槽20に溜まる呼水がポンプ30配管内に充満されていて、即、ポンプ30運転が起動できる状態になっている。
【0031】
この状態から、火災の発生により、スプリンクラー設備のスプリンクラーヘッドが開放すると、水が流出し、圧力水槽の水圧が低下する。すると、水圧低下により、消火ポンプユニット1のポンプ30が起動する。これにより、吸入配管35を介して貯水槽20内に貯めてある水を吸入口33から汲み上げ、吐出口34から吐出配管36を通ってスプリンクラーヘッドに圧送し、放射させる。
【0032】
このとき、逃がし配管41によって、ポンプ30室内の圧力が過大にならないように保持され、温度上昇が防止される。逃がし配管41を通る水は、共通排出配管44を通って再び水槽内に吐出される。
【0033】
また、消火ポンプユニット1では、所定期間ごとに送水ポンプ30の送水能力などを検査することが要求されているが、性能試験において、ポンプ30を作動させて送水した場合には、送水された水は試験用配管42及び共通排出配管44を通って再び貯水槽20内に吐出される。
【0034】
貯水槽20内において、水が所定の水位を超える場合には、オーバーフロー管26及び排出管を通って吐出される。
【0035】
本実施形態にかかる消火ポンプユニット1によれば、以下のような効果が得られる。すなわち、ベース部10の上とベース部10の内部にそれぞれ貯水槽20とポンプ30を配置してZ方向に並列することで、設置スペースが小さくてすむ。例えば、通常、ポンプを屋内に設置し、屋外に設けられた貯水槽とポンプとを通水管で連結させる構成にする場合には、屋内と屋外のそれぞれに措置を設置する場所を必要とし、広いスペースを要することとなる。また、屋内と屋外の双方で設置工事を行わなければならず、手間と大きなコストがかかる。また、貯水槽とポンプの双方を屋外に個別に設置する場合にも広いスペースを要することとなる。これに対して、本実施形態では貯水槽の底面積があれば設置でき、狭い箇所に設置できるとともに、設置作業が容易となるという効果が得られる。
【0036】
また、ポンプ30及び各種配管35,36,41,42がベース部10の内部の空間14に納められるとともにカバー13によって覆われることにより、雨水等の浸入などを防止し、ポンプ30及び配管類を外部環境から保護することが可能である。したがって、ポンプ30及び配管類を屋外用に設定する必要がないため、製造コストを低減できる。
【0037】
また、試験用配管42と逃がし配管41を、貯水槽20の底部から内部に連結する構造としたことにより、試験運転時に吐出される水や運転中に逃がし配管41から吐出される水を、貯水槽20に戻し、循環させることが可能である。したがって、貯水槽20内の水を有効利用することが出来る。さらに、逃がし配管41と試験用配管42の吐出側を、一箇所に集めて1つの共通排出配管44に接続する構成としたことにより、配管を少なくすることができ、製造コストをヨリ低くすることが可能となる。
【0038】
なお、本発明は上記各実施形態で例示したものに限られるものではなく、適宜変更可能である。この他、本発明は、実施段階においてその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0039】
1…消火ポンプユニット、10…ベース部、11…架台、12…底板、13…カバー部、
14…空間、20…貯水槽、21…槽本体、22…蓋体、23…補給管、25…底壁、
26…オーバーフロー管、27…電極棒、30…ポンプ、31…ポンプ部、32…電動機、33…吸入口、34…吐出口、35…吸入配管、36…吐出配管、36a…吐出側端部、
38…逆止弁、39…仕切弁、41…配管、42…試験用配管、42a…端部、
44…共通排出配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯える水槽と、
前記水槽の下方に配されるポンプと、
前記水槽の下部に設けられ、前記水槽を支持するとともに、内部に前記ポンプを収容する空間を有し、前記ポンプ及び接続用の配管類を覆うカバーを有するベース部と、
を備えたことを特徴とする消火ポンプユニット。
【請求項2】
前記ポンプの吸入口を前記水槽に接続する吸入配管、前記ポンプの吐出口を前記ベース部外の流出口に接続する吐出配管、流入側の端部が前記吐出配管から分岐する逃がし配管、及び流入側の端部が前記吐出配管に連結する試験用配管が、前記水槽の下方の前記ベース部内に設けられたことを特徴とする請求項1記載の消火ポンプユニット。
【請求項3】
前記吐出配管から分岐する逃がし配管と、前記吐出配管に接続される試験用配管とが、前記水槽の底部から前記水槽に接続されたことを特徴とする請求項2記載の消火ポンプユニット。
【請求項4】
前記逃がし配管及び前記試験配管は、一端側が前記逃がし配管及び前記試験配管の双方に連結されるとともに、前記水槽の底部を通り、他端側が前記水槽内に開口される、共通配管を介して、前記水槽に接続されたことを特徴とする請求項3記載の消火ポンプユニット。
【請求項5】
前記吸込配管は、前記吸入口から前記ベース部内において上方に延び、前記水槽の底部から前記水槽内に連通し、
前記吐出配管は、前記吐出口から前記ベース部内において側方に延び、
前記試験配管の及び前記逃がし配管は、その流出側の端部が前記ベース部内における1箇所に集められ、前記共通配管に接続され、
前記共通配管は、前記試験配管及び前記逃がし配管の端部から前記ベース部内において上方に延び、前記水槽の底部に接続され、前記水槽内で開口されることを特徴とする請求項4記載の消火ポンプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−233809(P2010−233809A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84994(P2009−84994)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】