説明

消火用ノズル及びそれを備えた消火栓装置

【課題】消火用ノズルの射程距離を伸ばすために、消火用水の放出圧力を高くしても、操作者が保持しやすい消火ノズル及び消火栓装置を提供する。
【解決手段】先端部にデフレクタ80が配置されて内部に消火用水Wの流路67が形成された本体部61と、該本体部61の外周に摺動自在に設けられた外筒65とを備えた消火用ノズル60であって;放水初期に噴霧放水WFを行ってから、棒状放水WSに自動移行する段階放水手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル等に配設される、消火用ノズル及びそれを備えた消火栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトンネル用消火栓装置は、通常、トンネルの長手方向に50mの取り付けピッチで配置されている。この消火栓装置は、先端に消火用ノズルを備えた消火用ホースを筐体内のホース収納部に収納しており、火災発生時には、操作者が筐体の扉を開き、開閉操作レバーを操作して消火栓弁を開いた後、前記消火用ノズルを手に持って前記消火用ホースを引き出しながら火災発生地点に向って走行し、発生した火災の消火を行っている(例えば、特許文献1、参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−095940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消火用ノズルは、自動調圧弁の設定圧力によって、例えば放水圧力3kgf/cm2で130L/min.の放水を行える仕様であり、そのノズル射程は20mとなっている。そのため、消火用ホースは30m必要になっており、そのホースの操作性について、充水時はもとより空のときでも長さ、重量による扱いにくさがあった。
【0005】
そこで、ノズル射程を伸ばし、その分ホースを短くすることによって、操作性の向上、メンテナンス性(ホース目視試験等)の向上、ホース長の低減、及び消火栓装置自体の省スペース化によるコストダウン等、が要望されている。又、ノズル射程距離が伸びることにより火源との距離を遠くに保てるという利点もある。
【0006】
前記ノズル射程を伸ばすには、従来より放出圧力を高くする必要がある。しかし、この様に放出圧力を高くすると、放水反力も増大するため、操作者が保持しにくく、安定して消火作業を行うことができない、という問題が発生する。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑み、消火用ノズルの射程を伸ばしても、操作者が保持しやすい様にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1にかかる発明は、先端部にデフレクタが配置されて内部に消火剤の流路が形成された本体部と、該本体部の外周に摺動自在に設けられた外筒とを備えた消火用ノズルであって; 放水初期に噴霧放水を行ってから、棒状放水に自動移行する段階放水手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2にかかる発明は、前記段階放水手段は、前記本体部と前記外筒との間に設けられ、前記本体部に設けられた通水孔から前記消火剤が導入されて、前記外筒を前進移動させる導入室であることを特徴とする。請求項3にかかる発明は、前記外筒の前進移動距離を規制するストッパ手段を設けたことを特徴とする。請求項4にかかる発明は、前記段階放水手段は、放水初期の放水反力を低減させることを特徴とする。
【0010】
請求項5にかかる発明は、消火栓弁と、該消火栓弁の一次側又は二次側に設けられた自動調圧弁と、前記消火栓弁の二次側に連通する消火用ホースと、該消火用ホースの先端部に設けられた消火用ノズルと、を備えた消火栓装置において;前記消火用ノズルが、前記請求項1、2、3、又は、4記載の消火用ノズルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、前記段階放水手段を備えているので、放水初期に噴霧放水を行ってから、棒状放水に自動移行する。そのため、放水初期に大きな放水反力が発生しないため、消火用ノズルは保持しやすくなるので、操作者は放水用ノズルの操作を容易に、且つ、安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の第1実施の形態を図1〜図4により説明する。
消火栓装置1の筐体3内には、ホースバケット9、三方切換弁11、自動調圧弁13等が配設されている。前記ホースバケット9は、消火用ホース5を内巻きに収容するホース収容部7を形成している。前記自動調圧弁13は、該弁の一次側圧力の変動に応じて作動し、自動的に該二次側圧力を所定圧に維持する機能を備えている。
【0013】
前記ホースバケット9は、中央開口部12aを介して対向する二本の垂直棒状体17、17と、該垂直棒状体17、17に支持されている帯板19、19と、を備えている。
【0014】
前記筐体3は、前面開口部3aを有し、該前面開口部3aは、上側扉21と前傾扉23とにより開閉される。前傾扉23の内側には、消火栓弁15の開閉レバー27等が設けられている。
【0015】
前記消火用ホース5の先端には、消火用ノズル60が設けられ、該消火用ノズル60には流路67が貫通して設けられている。このノズル60は、本体部61と、該本体部61に螺着されている内筒63と、該内筒63に摺動可能に嵌着されている外筒65と、を備えている。
【0016】
前記本体部61は、接合継手62を介して消火用ホース5に接続され、その内部には流路67が設けられ、その外周面中央部には、グリップ69が突設されている。
【0017】
前記内筒63は、前記本体部61の先端部のねじ部70に羅着される環状取付部72と、該取付部72に連続する筒部74を備えている。該筒部74には、段階放水手段の一部をなしている、通水孔76が設けられ、又、その外周面には、係止突部78が設けられている。前記筒部74の先端部は円錐台状になっているので、前記流路67を流れる消火剤Wは、前記先端部で絞られる。
【0018】
筒部74の後端部側(本体部61側)には、止め具82が固定されているが、この止め具82は、デフレクタ80のロッド80aを所定位置に固定する手段であり、該デフレクタ80は、消火用ノズル60の流路67の中心軸60c上に保持され、また、ロッド80aの先端部側が筒部74の先端から突出した位置に保持される。
【0019】
外筒65の後端部側(本体部61側)には、前記環状取付部72の外周面上を摺動する後部摺動面と、前記通水孔76に連通し、段階放水手段をなす導入室85と、が設けられ、その先端部側(本体部61と反対側)には、前記内筒63の筒部74の外周面上を摺動する前部摺動面が設けられている。
【0020】
前記導入室85は、内筒63の外周面と外筒65の内周面により囲まれた部屋であり、前記外筒65の内周面には、前記係止突部78に係合するストッパ87が突設されている。外筒65の先端部内側には、デフレクタ80が配設されている。
【0021】
次に、この実施の形態の作動について説明する。
トンネル内で火災が発生すると、車両の運転手(操作者)は車から降りて、消火栓装置1の前傾扉23を開け、操作名板31を読み、消火栓装置1の操作の仕方を理解する。
【0022】
前記操作者は、開閉レバー27を操作して消火栓弁15を開いた後、消火用ノズル60を手に持って消火用ホース5を引き出しながら火源に向って走行し、該消火用ノズル60を前記火源に向ける。
【0023】
消火剤、例えば、消火用水Wは、前記消火栓弁15、自動調圧弁13、消火用ホース5を通って消火用ノズル60の流路67内に流入するとともに、前記流路67内を流下する消火用水Wは、筒部74の先端部で絞られてデフレクタ80に衝突して進路方向を変えられる。
【0024】
この時、図1に示すように、デフレクタ80の先端部は、外筒65の先端近傍に位置しているので、デフレクタ80に衝突した前記消火用水Wは、噴霧放水となって消火区域内に放出される。そのため、放水初期には、噴霧放水WFのため、棒状放水WSに比べると、小さい放水反力となるので、操作しやすい。
【0025】
前記流路67内を通る消火用水Wの一部は、通水孔76から導入室85に流れ込み、外筒65を前方側(本体部61と反対側)に押圧する。そうすると、該外筒65は、環状取付部72、筒部74上を消火用水Wの流れ方向に沿って摺動するとともに、所定距離前進すると、ストッパ87が係止突部78に係合する。そのため、前記摺動は停止し、消火用ノズル60は、外筒65の先端部がデフレクタ80の先端部の前方に位置して、図2に示す状態となる。
【0026】
この状態では、内筒63から放出された消火用水Wは、デフレクタ80に衝突して進行方向を変えられた後、外筒65の内壁面65aに衝突し、該内壁面65aにより中心軸60C方向にガイドされながら放出される。そのため、消火用ノズル60から放出される消火用水Wは、棒状放水WS、即ち、消火用水Wが棒状(柱状)となりながら放出される状態、となるので、前記噴霧放水WFに比べ、放水反力が高くなるが、放水距離は大幅に伸びる。
【0027】
この発明の第2実施の形態を図4により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施の形態と第1実施の形態との相違点は、次の通りである。
(1)消火用ノズルの全長を、第1実施の形態の全長より長く、例えば、1.5倍の長さにしたこと。
(2)本体部61の先端部側に、手を添えて持ちやすくするため、波型把持部90を形成したこと。
【0028】
(3)片手で保持しにくいように、グリップ69Aを第1実施の形態のグリップ69より短く、例えば、1/2、の長さにしたこと。
この実施の形態は、消火用ノズル60Aの射程距離を伸ばすと、それに伴い放水反力も増大することに対応するために、該ノズル60Aを保持する際に片手ではなく、自然に両手で保持するような形状とするとともに、放水反力に対抗するために両手保持できる様にしたものである。
【0029】
この発明の実施の形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、本体部61と内筒63とを別体にする代わりに、一体としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す一部断面正面図である。
【図2】図1の変化した状態を示す一部断面正面図である。
【図3】消火栓装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施の形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 消火栓装置
3 筐体
5 消火用ホース
13 自動調圧弁
15 消火栓弁
60 消火用ノズル
63 内筒
65 外筒
76 通水孔
78 係止突部
85 導入室
87 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にデフレクタが配置されて内部に消火剤の流路が形成された本体部と、該本体部の外周に摺動自在に設けられた外筒とを備えた消火用ノズルであって;
放水初期に噴霧放水を行ってから、棒状放水に自動移行する段階放水手段を備えたことを特徴とする消火用ノズル。
【請求項2】
前記段階放水手段は、前記本体部と前記外筒との間に設けられ、前記本体部に設けられた通水孔から前記消火剤が導入されて、前記外筒を前進移動させる導入室であることを特徴とする請求項1記載の消火用ノズル。
【請求項3】
前記外筒の前進移動距離を規制するストッパ手段を設けたことを特徴とする請求項1、又は、2記載の消火用ノズル。
【請求項4】
前記段階放水手段は、放水初期の放水反力を低減させることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の消火用ノズル。
【請求項5】
消火栓弁と、該消火栓弁の一次側又は二次側に設けられた自動調圧弁と、前記消火栓弁の二次側に連通する消火用ホースと、該消火用ホースの先端部に設けられた消火用ノズルと、を備えた消火栓装置において;
前記消火用ノズルが、前記請求項1、2、3、又は、4記載の消火用ノズルであることを特徴とする消火栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−201687(P2009−201687A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46688(P2008−46688)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】