説明

消臭剤及びこの消臭剤を用いた繊維製品

【課題】一液で、アルデヒド類、アンモニア等の各種消臭にバランスよく消臭効果を有する消臭剤及びこの消臭剤を用いて消臭加工された繊維製品を提供すること。
【解決手段】(a)重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、〔(b)アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物〕及び/又は〔(c)亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩〕と、(d)水と、を含有してなる消臭剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工に適した消臭剤、及びこの消臭剤を用いて加工してなる繊維製品に関する。特に、広範囲な悪臭に対して消臭効果に優れた消臭剤、及びこの消臭剤を用いて加工してなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維用消臭剤で、かつ光触媒を使用するものが種々提案されている。例えば、特許文献1に開示された消臭剤では、光触媒と吸水性多孔質無機物とをアクリルシリコン系バインダーを用いて繊維に担持している。また、例えば、特許文献2に開示された消臭剤では、カーペットの表面に対して、ヒドラジン誘導体と光触媒とを塗布している。そして、バッキング表面には、活性炭とヒドラジン誘導体を塗布している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−194652号公報
【特許文献2】特開2005−198684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、アルデヒド消臭のためには、アミン化合物や亜硫酸ナトリウムのようなアルカリ性化合物が用いられる。これに対して、アンモニア消臭やトリメチルアミン消臭のためには、酸性化合物が用いられる。そして、アルカリ性化合物と酸性化合物とを一液で混合すると、各々反応してしまう。このため、一液で、かつ広範囲の種類の悪臭にわたってバランスの良い消臭性能を有する消臭剤を得ることは困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、一液で、アルデヒド類、トリメチルアミン、アンモニア等の各種悪臭にバランスよく消臭効果を有する消臭剤及びこの消臭剤を用いて消臭加工された繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、(a)重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、〔(b)アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物〕及び/又は〔(c)亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩〕と、(d)水と、を含有してなる消臭剤を提供できる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様によれば、成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、成分(b)の配合量は0.05〜5重量部であり、かつ成分(b)中のアミン化合物の含有量は1〜50重量%であり、成分(d)の配合量は90〜99.9重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(d)=100重量部)であることが望ましい。
【0008】
また、本発明の好ましい態様によれば、成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、成分(c)の配合量は0.05〜10重量部であり、成分(d)の配合量は85〜99.9重量部(ただし、成分(a)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることが望ましい。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)を含有してなることが望ましい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、成分(b)の配合量は0.05〜5重量部であり、かつ成分(b)中のアミン化合物の含有量は1〜50重量%であり、成分(c)の配合量は0.05〜10重量部であり、成分(d)の配合量は80〜99.85重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、光触媒を含有することが望ましい。
【0012】
また、他の本発明によれば、繊維に、上述の消臭剤を含有させ、乾燥してなる繊維製品を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一液で、アルデヒド類、トリメチルアミン、アンモニア等の各種悪臭に対してバランス良く消臭効果を有する消臭剤及びこの消臭剤を用いて消臭加工された繊維製品を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る消臭剤は、(a)重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、〔(b)アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物〕及び/又は〔(c)亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩〕と、(d)水と、を含有してなる消臭剤である。
【0015】
次に、成分(a)の「酸無水物単量体単位を含む重合体」として、好適には「酸無水物単量体単位」と「他の単量体単位」とを含む共重合体を用いることができる。例えば、共重合体として、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体等を挙げることができる。
【0016】
酸無水物単量体単位を含む重合体の好適な例における、「酸無水物単量体単位」と「他の単量体単位」との量比については、「酸無水物単量体単位」:「他の単量体単位」がモル比で1:3〜1:1、重量比で1:3〜2:1が望ましい。共重合体の例としては、上述したように無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体が挙げられる。酸無水物単量体単位を含む重合体の重量平均分子量は5,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000のものが使用できる。
【0017】
成分(b)のうちのアミン化合物として、脂肪族アミン化合物などを使用できる。アミン化合物としては、特に限定されない。例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヒドラジンなどの脂肪族アミン化合物、さらにアニリン、ピリジン、キノリンなどの芳香族アミン化合物等が挙げられる。さらに好ましくは、脂肪族アミン化合物が望ましく、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン化合物が特に望ましい。これらのアミン化合物は、一種類を単独で使用しても良く、二種類以上を併用しても良い。
【0018】
また、成分(b)のうちの無機多孔質体、無機層状物として、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、アルミナ、リン酸ジルコニウム、珪藻土、粘土などが使用できる。
【0019】
また、本発明における好ましい組合せは、成分(a):酸無水物単量体単位を含む重合体と、成分(b):アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物と、成分(d):水とを含有することが望ましい。
【0020】
この組合せのとき、成分(a)の配合量は、成分(a)、成分(b)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部であることが望ましい。酸無水物単量体単位を含む重合体の割合が過大になると粘度が増加してしまう。このため、消臭剤をスプレーにより塗布することが困難になってしまう。
【0021】
また、成分(b)の配合量は、成分(a)、成分(b)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部であることが望ましい。また、成分(b)(100重量%)中のアミン化合物の配合量は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%である。アミン化合物の割合が過小になると、消臭性能は低下してしまう。一方、アミン化合物の割合が過大になると、消臭性能は向上するが、アミン化合物が担体から遊離したり、沈降し易くなってしまう。
【0022】
さらに、成分(d)の配合量は、成分(a)、成分(b)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは90〜99.9重量部、より好ましくは94〜99.8重量部、さらに好ましくは96〜99重量部であることが望ましい。
【0023】
また、本発明における他の好ましい組合せは、成分(a):重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、成分(c):亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩と、成分(d):水とを含有することが望ましい。
【0024】
この組合せのとき、成分(a)の配合量は、成分(a)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部であることが望ましい。酸無水物単量体単位を含む重合体の割合が過大になると粘度が増加してしまう。このため、消臭剤をスプレーにより塗布することが困難になってしまう。
【0025】
また、成分(c)の亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩としては、亜硫酸塩又は重亜硫酸塩を用いるか、両者を併用して用いる。亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウムなどが挙げられる。また、重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0026】
また、成分(c)の配合量は、成分(a)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部であることが望ましい。亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩の割合が過多であると、アルデヒド消臭の性能が劣ってしまう。また、亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩の割合が過少であると、アミンの消臭の性能が劣るおそれがある。
【0027】
さらに、成分(d)の配合量は、成分(a)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは85〜99.9重量部、より好ましくは92〜99.8重量部、さらに好ましくは95〜99重量部であることが望ましい。
【0028】
また、本発明におけるさらに他の好ましい組合せは、成分(a):重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、成分(b):アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物と、成分(c):亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩と、成分(d):水とを含有することが望ましい。
【0029】
この組合せのとき、成分(a)の配合量は、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部であることが望ましい。酸無水物単量体単位を含む重合体の割合が過大になると粘度が増加してしまう。このため、消臭剤をスプレーにより塗布することが困難になってしまう。
【0030】
また、成分(b)の配合量は、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部であることが望ましい。また、成分(b)(100重量%)中のアミン化合物の配合量は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%である。アミン化合物の割合が過小になると、消臭性能は低下してしまう。一方、アミン化合物の割合が過大になると、消臭性能は向上するが、アミン化合物が担体から遊離したり、沈降し易くなってしまう。
【0031】
また、成分(c)の配合量は、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部であることが望ましい。亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩の割合が過多であると、アルデヒド消臭の性能が劣ってしまう。また、亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩の割合が過少であると、アミンの消臭の性能が劣るおそれがある。
【0032】
また、成分(d)の配合量は、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)との合計量100重量部に対して、好ましくは80〜99.85重量部、より好ましくは89〜99.7重量部、さらに好ましくは93〜98.5重量部であることが望ましい。
【0033】
本発明によれば、少なくとも、酸無水物単量体単位を含む重合体と、さらにアミン化合物と、の複数の悪臭除去用消臭剤を、バインダーを用いることなく繊維に含有させることができる。また、本発明によれば、少なくとも、酸無水物単量体単位を含む重合体と、さらに亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩と、の複数の悪臭除去用消臭剤を、バインダーを用いることなく繊維に含有させることができる。即ち、通常なら互いに反応してしまうような、アルデヒド類用消臭物質とアンモニア用消臭物質とを、分子量、形状(粒子径等)を調節することで、互いにその機能を阻害しないようにしながら共存させることもできる。
【0034】
例えば、好適には、無水マレイン酸化合物3重量部(重量平均分子量(Mw)が5,000〜1,000,000のものを好適に使用できる)と、アミン化合物を担持した無機多孔質体3重量部と、亜硫酸ナトリウム6重量部と、酸化亜鉛2重量部とを含有するように調製する。なお、(b)成分の、アミン化合物を担持した無機多孔質体及び/又は無機層状物の形状(粒子径)は、固体である前記無機多孔質体や無機層状物を適宜粉砕、分級、選別等することで、任意のものを得ることができる。この結果、アルデヒド類とアンモニアとに対して、バランス良く消臭性能を発揮できる。さらに、光触媒として酸化亜鉛を加えることで、後述するように、メチルメルカプタンや硫化水素等の他の悪臭にも広範囲に性能を発揮する消臭剤を開発できた。
【0035】
また、本発明に係る消臭剤は、水溶性で、かつバインダーを使用しなくても繊維に固着し易い性質を有している。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0037】
まず、実施例に係る消臭剤sa1〜sa11が含有する消臭成分SA〜SEについて説明する。
【0038】
(消臭成分SA)
重量平均分子量6,000のスチレンと無水マレイン酸との共重合体(SMA1000)10重量部を70℃に加温した水90重量部に攪拌しながら投入して、消臭成分SAを調製した。
【0039】
(消臭成分SB)
重量平均分子量500,000のメチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(ダイセル化学工業株式会社製 商品名VEMA A103)10重量部を70℃に加温した水90重量部に攪拌しながら投入して、消臭成分SBを調製した。
【0040】
(消臭成分SC)
無機多孔質体にアミン化合物を担持した消臭剤(テイカ株式会社製 商品名K−FRESH ZA)10重量部と、分散剤(伊那食品工業株式会社製 商品名イナゲル ウルトラキサンタン V−7T)0.1重量部とを89.9重量部の水に攪拌しながら投入して、消臭成分SCを調製した。
【0041】
(消臭成分SD)
亜硫酸ナトリウム(和光純薬社製)10重量部を水90重量部に溶かして、消臭成分SDを調製した。
【0042】
(消臭成分SE)
重亜硫酸ナトリウム(和光純薬社製)10重量部を水90重量部に溶かして、消臭成分SEを調製した。
【0043】
(光触媒LSP)
酸化チタン(多木化学社製 商品名A−100)40重量部を、分散剤(商品名ウルトラキサンタン V−7T)1重量部を加えた水に投入して、全量が100重量部となるようにホモジナイザーで強攪拌しながら、光触媒分散液を調製した。光触媒LSPは酸化チタン分散液である。
【0044】
(光触媒LSQ)
また、超微粒子酸化亜鉛(和光純薬社製)40重量部を、分散剤(商品名ウルトラキサンタン V−7T)1重量部を加えた水に投入して、全量が100重量部となるようにホモジナイザーで強攪拌しながら、光触媒分散液を調製した。光触媒LSQは酸化亜鉛分散液である。
【0045】
上述の消臭成分SA、SB、SC、SD及びSE、光触媒LSP及びLSQ、並びに水を以下の表1〜表4に掲げる配合量(重量部)により混合し、実施例に係る消臭剤sa1〜sa11、及び比較例に係る消臭剤sb1〜sb4を調製した。
【0046】
(悪臭ガスの消臭率評価試料作成)
次に、悪臭ガスの消臭率を評価するために、以下の手順で試料を作成した。まず、10cm×10cmのろ紙に、各表に掲げる配合の消臭剤sa1〜sa11(実施例)、消臭剤sb1〜sb4(比較例)を各々0.5gずつスプレーする。そして、スプレーされた試料を、乾燥機を用いて130℃、10分乾燥する。これにより、試料を調製する。
【0047】
(悪臭ガスの消臭率評価方法)
また、悪臭ガスの消臭率の測定方法について説明する。上述の方法で調製した試料を3リットルのテドラー(登録商標)バッグに入れた後、ヒートシールして、密閉する。次に、テドラー(登録商標)バックを真空ポンプで減圧した後、所定濃度の悪臭ガスを2リットル注入する。悪臭ガスを注入してから4時間後の悪臭濃度を検知管、ガスクロマトグラフィ((株)島津製作所製 FID検出器)、マルチガスモニタ(INNOVA社製)で測定する。ここで、アセトアルデヒドはマルチガスモニタ、トリメチルアミンは検知管(ガステック社製No.180)、メチルメルカプタンはガスクロマトグラフィ(GC)でそれぞれ測定を行なった。
【0048】
そして、次式(1)により消臭率(%)を算出する。
{([G]−[G])/[G]}×100 ・・・(1) ただし、
[G]:注入時の悪臭ガス濃度
[G]:4時間後の悪臭ガス濃度
消臭率は、初期濃度に対する悪臭の減少率を示している。消臭率(単位:%)の数値が大きいほど消臭効果が大きいことを意味している。
【0049】
悪臭としては、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素を用いる。表1は、光を未照射な状態における例を掲げている。また、光未照射の状態で、さらに各成分の配合比を変えた例を表2に掲げる。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1、表2から明らかなように、実施例1〜8に係る消臭剤sa1〜sa8は、アルデヒド類とアンモニアとの両方の悪臭に対して、バランス良く消臭性能を発揮することがわかる。これに対して、比較例に係る消臭剤sb1〜sb4では、光未照射では、アルデヒド類とアンモニアとのうちの一方の悪臭ガスに対してのみ効果が現われている。このように、本発明の配合では、光未照射でも各種消臭にバランス良く消臭性能を示している。特に、硫化水素に効果的である。
【0053】
次に、光触媒を加えていない消臭剤sa9と、さらに光触媒LSP、LSQをそれぞれ加えた消臭剤sa10、sa11とについて、光未照射の場合(実施例9、10、11)と、光を照射した場合(実施例12、13、14)との悪臭ガスの消臭率をそれぞれ表3、表4に掲げる。
【0054】
本発明における光触媒とは、例えば、紫外線や可視光などの光によって励起され、強い酸化力によって有機物を酸化分解するものである。この作用によって消臭機能を発揮する。光触媒としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。その中でも、好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛であり、さらに好ましくは酸化亜鉛である。
【0055】
ここで、光触媒を加えたときの性能評価方法について説明する。まず、テドラー(登録商標)バッグ内に試料を挿入後、封入する。そして、予め所定濃度に調整した悪臭ガス2リットルを注入し、4時間蛍光灯下で照射した。蛍光灯の照度は6000Lx(ルクス)である。この条件での、紫外線強度は30μw/cmである。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表3と表4とを比較して明らかなように、消臭剤sa10、sa11において、光触媒を加えて、蛍光灯からの光を照射することで、さらにバランス良く悪臭を除去できることがわかる。なお、光照射により温度が多少上昇する。このため、消臭剤sa9では、光未照射時に比較して光照射時の消臭率が若干小さくなっている。
【0059】
また、光触媒LSQ(酸化亜鉛)は光触媒LSP(二酸化チタン)に比較すると、可視光、例えば蛍光灯下での悪臭除去性能のバランスに特に優れていることがわかる。このように、本実施例では、酸化亜鉛が特異的に本配合系で可視光における光触媒性能が高いことを示している。このため、光触媒としては、上述したように酸化亜鉛が特に望ましい。
【0060】
また、繊維に、上述した消臭剤を含有させ、乾燥してなる繊維製品を得ることができる。これにより、消臭性能を有する繊維製品が得られる。例えば、本発明の消臭剤は、カーペット、じゅうたん、ゴザ、トイレ用マット、風呂用マット、玄関用マット、布団、ベッド、ソファー、車用シート、靴下、ストッキング、タイツ、靴の中敷、靴、手袋、帽子、布オムツ、使い捨てオムツ、その他繊維製品、壁紙、床材、壁材、屋根材等に付着又は含浸させて使用することができる。また、本発明に係る消臭剤は、室内用消臭剤、トイレ用消臭剤、喫煙所用消臭剤、車内用消臭剤、冷蔵庫用消臭剤、等としても使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る消臭剤は、一液で様々な種類の悪臭に対して消臭機能を発揮する場合に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量が5,000〜1,000,000である、酸無水物単量体単位を含む重合体と、
〔(b)アミン化合物を担持した、無機多孔質体及び/又は無機層状物〕
及び/又は
〔(c)亜硫酸塩及び/又は重亜硫酸塩〕
と、
(d)水と、
を含有してなる消臭剤。
【請求項2】
成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、
成分(b)の配合量は0.05〜5重量部であり、かつ成分(b)中のアミン化合物の含有量は1〜50重量%であり、
成分(d)の配合量は90〜99.9重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(d)=100重量部)であることを特徴とする請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、
成分(c)の配合量は0.05〜10重量部であり、
成分(d)の配合量は85〜99.9重量部(ただし、成分(a)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることを特徴とする請求項1に記載の消臭剤。
【請求項4】
成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)を含有してなる、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項5】
成分(a)の配合量は0.05〜5重量部であり、
成分(b)の配合量は0.05〜5重量部であり、かつ成分(b)中のアミン化合物の含有量は1〜50重量%であり、
成分(c)の配合量は0.05〜10重量部であり、
成分(d)の配合量は80〜99.85重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることを特徴とする請求項4に記載の消臭剤。
【請求項6】
さらに、光触媒を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項7】
繊維に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の消臭剤を含有させ、乾燥してなる繊維製品。

【公開番号】特開2007−289633(P2007−289633A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239826(P2006−239826)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】