説明

消臭性トップコート用塗料組成物

【課題】 消臭性成分を表面に露出させつつ、本来の床材表面としての耐久性、意匠性、耐薬品等の基本的な要求特性を同時に満足させることのできる消臭性トップコート用塗料組成物を提供する。
【解決手段】 (a)数平均分子量500〜10000の紫外線硬化性アクリレート系オリゴマー成分、(b)紫外線硬化性モノマー、(c)光ラジカル重合開始剤、(d)光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を含有することを特徴とする消臭性トップコート用塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性によって抗菌性や消臭効果を有する酸化チタン微粒子を含有する紫外線硬化型の消臭性トップコート用塗料組成物、特に、床材用の消臭性トップコート用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内用各種建材に、耐久性、意匠性、耐薬品等の基本的な要求特性とともに、居住者の健康への更なる配慮として、抗菌性、消臭性等の機能が要求されている。病院、学校、住宅などの脱臭方法に関して、珪藻土、活性炭等の臭気を吸着する吸着材料と酸化チタン等の光触媒とを含有する脱臭材料を使用することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。又、抗菌作用を有する半導体光触媒を非晶質燐酸カルシウム粒子の表面に固着し、一体化した抗菌性消臭性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらの抗菌、脱臭成分を建材、特に床材に適用しようとする場合、抗菌消臭成分自体の抗菌効果ばかりでなく、それを含有した塗料の硬化塗膜が抗菌、消臭効果を奏する必要がある。しかしながら、抗菌消臭成分を表面に露出させつつ、本来の床材表面としての耐久性、意匠性、耐薬品等の基本的な要求特性を同時に満足させる塗料が見出されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−88572号公報
【特許文献2】特開平11−76832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、消臭性成分を表面に露出させつつ、本来の床材表面としての耐久性、意匠性、耐薬品等の基本的な要求特性を同時に満足させることのできる消臭性トップコート用塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の紫外線硬化性化合物をバインダー成分とする紫外線硬化型塗料組成物中に光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を特定の比率で含有させることで課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(a)数平均分子量500〜10000の紫外線硬化性アクリレート系オリゴマー成分、(b)紫外線硬化性モノマー、(c)光ラジカル重合開始剤、(d)光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を含有することを特徴とする消臭性トップコート用塗料組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消臭性トップコート用塗料組成物は、床材として適用した場合、通常の建材から発生し得る各種残留溶剤に対する消臭性能を示しつつ、本来の床材表面としての耐久性、意匠性、耐薬品等の基本的な要求特性を同時に満足させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
合板、または無垢の木質基材を基材とする内装用建材等に消臭性を付与しようとする場合、消臭性の成分を有する塗工材は、合板、または無垢の木質基材の塗装における最終工程である、トップコート層に塗工することで特に効果を奏する。本発明の、こうした目的のための塗料組成物は、(a)数平均分子量500〜10000の紫外線硬化性アクリレート系オリゴマー成分、(b)紫外線硬化性モノマー、(c)光ラジカル重合開始剤、(d)光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を含有することを特徴とする消臭性トップコート用塗料組成物である。光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を含有する本発明の塗料組成物の塗膜層のさらに上層に塗装を行うと、消臭性成分が臭気の原因物質を有する外気に接触しにくく効果が十分発揮されない。同時に、トップコート層は製品の最終の仕上がりを決定する層であり、床材、壁材、天井材、部材など製品により要求性能は異なるが、主に表面グロスの調整、硬度、耐汚染性、耐薬品性、耐擦傷性などの物性が要求される。木質基材の塗装は、着色、下塗、中塗、研磨工程などを経て、最終工程としてトップコートを塗工することが一般的であり、環境問題、VOC問題などから内装用木質建材用塗料は無溶剤の紫外線硬化塗料が一般的に好まれる。
【0010】
また、紫外線硬化塗膜は、紫外線が当たることにより急激に造膜するメカニズムを有することから、比較的ポーラスな塗膜となることが知られている。そのため、消臭成分が臭気の原因物質と接触しやすくなり、良好な脱臭効果が得られる。一方、ポリウレタン−イソシアネート系のようなUV硬化でない硬化システムで塗膜形成を行うと、相対的に硬化反応が遅く、非常に表面が密な塗膜となるため、消臭成分が外気に接触しにくく効果が十分発揮されにくい。その点からも紫外線硬化塗料が好ましい。
【0011】
本発明の、消臭性トップコート用塗料組成物に用いる(a)数平均分子量500〜10000の紫外線硬化性オリゴマー成分としては、トップコートに求められる高硬度、光沢、汚染性などの特性を有する従来公知のものが使用できるが、その中でも特に代表的なものとしては、ビスフェノールA型、ノボラック型、多価アルコール型、多塩基酸型、ポリブタジエン型のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル型、ポリエーテル型のウレタン(メタ)アクリレート等であり、何れも1種または2種以上の混合系で用いることが出来る。
【0012】
塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中での、(a)紫外線硬化性アクリレート系オリゴマーの含有量は5〜50質量%が好ましい。
【0013】
本発明の、消臭性トップコート用塗料組成物に用いる(b)紫外線硬化性モノマー成分としては、従来既知のものが使用できる。塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中で、(b)紫外線硬化性モノマーの含有量は20〜60%であることが好ましい。
【0014】
トップコート用としての単官能モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0015】
2官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(以下POと略記)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、EO変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート等が好ましい。
【0016】
3官能以上の多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0017】
これらのモノマーは、1種または2種以上の混合系で用いることが出来る。
【0018】
その他、本発明に用いることの出来る活性エネルギー線重合性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、特開平11−124403号公報、特開平11−124404号公報記載のマレイミド化合物等が挙げられ、必要に応じて使用することが出来る。
【0019】
また、本発明に用いる、(c)光ラジカル重合開始剤は、紫外線照射によりラジカルを生成する化合物であり、例えば水素引き抜き型重合開始剤としては、従来公知のベンゾフェノン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0020】
塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中での、(c)光ラジカル重合開始剤の含有量は1〜10質量%であることが好ましい。
【0021】
その他本発明で用いる事が出来る、(c)光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルケトン等の光開裂型が挙げられる。これらの水素引き抜き型、光開裂型光ラジカル重合開始剤のうち1種または2種以上のものを組み合わせて使用することが出来る。
【0022】
また、これらの光ラジカル重合開始剤に、公知慣用の光増感剤をも併用することができる。併用する場合は、塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中での、光増感剤の含有量は1〜15質量%であることが好ましい。
【0023】
木質建材においては10〜70グロスが主に好まれる表面グロスであり、各種艶消し剤を任意に配合することが可能である。艶消し剤としては、例えばシリカ、樹脂ビーズ、艶消しワックス、炭酸カルシウム、長石などが主に使用され、その配合量は塗装条件や要求グロスにより異なるが、塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中での、艶消し剤の含有量は5〜30質量%であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の消臭性トップコート用塗料組成物には、さらに必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲内で、各種の機能を付与するため着色剤、体質顔料、滑剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、カップリング剤、有機溶剤及びキレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0025】
本発明の、消臭性トップコート用塗料組成物に用いる(d)粒子状消臭性成分は、光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分であり、該酸化チタン微粒子が、非晶質燐酸カルシウム粒子の表面に固着してなる粒子状消臭性成分であることが好ましい。
【0026】
前記した光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分の含有量は、塗料組成物の消臭性成分を除く不揮発成分100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましい。粒子状消臭性成分の配合割合が5質量部未満では消臭効果が充分でなく、一方25質量%を越えて使用しても消臭効果のさらなる向上は見られず、塗膜の平滑性が劣る傾向がある。
【0027】
本発明の消臭性トップコート用塗料組成物の粘度範囲としては、塗工方式により異なるが、液温40℃における粘度が40〜1500mPa・sであることが好ましい。
【0028】
本発明の消臭性トップコート用塗料組成物の製造は、従来公知の方法で実施出来る。一例として、紫外線硬化性オリゴマー及び又はモノマー、光ラジカル重合開始剤、粒子状消臭性成分、及び、必要に応じて、艶消し材等、塗料添加剤をこの順に仕込み混合、撹拌等の方法で製造可能である。
【0029】
本発明の消臭性トップコート用塗料組成物は、床材、壁材、天井材、部材等の建材用途に有用に用いられるが、特に、木質基材に塗工して床材としての使用が好ましい。木質基材としては、ラワン等の南洋材を貼り合わせただけの普通合板、フェノール樹脂などを含浸させた強化合板等の合板基材や、無垢の木質基材が用いられるが、近年の木材不足の状況から、表面単板にナラ、カバ、ブナなどを用いた合板基材を用いることが好ましい。
【0030】
トップコートの塗装は、従来公知の方法で構わず、ナチュラルコーターや、フローコーター、スプレー等を用いることができる。本発明に沿うような塗膜量を得るためにはナチュラルコーターで塗装することがより好ましい。また、無溶剤の塗料を採用した場合、室温では高粘度であるため、塗料温度30〜50℃で塗装することが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下本発明の理解を容易にするため、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中の部及び%は質量基準によるものである。
【0032】
下記の表1に示す組成で配合し、攪拌、混合し、実施例塗料1〜3、比較例塗料1〜5を得た。表中の各成分は以下の通りである。
オリゴマー:アクリレートオリゴマー成分、ユニディックV−5508(大日本インキ化学工業:エポキシアクリレート)、
ポリマー:ポリオール成分、アクリディックA−814(大日本インキ化学工業:アクリルポリオール、不揮発分:50%、OH価:17.5)、
硬化剤:イソシアネート成分、バーノックDN−950(大日本インキ化学工業:ポリイソシアネート、不揮発分:75%、NCO価:10.5)、
溶剤:酢酸ブチル/キシレン/1:1
モノマーA:トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成:アロニックスM−220)、
モノマーB:PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(コグニスジャパン:フォトマー4127)、
光ラジカル重合開始剤:イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ)、
艶消し剤:炭酸カルシウム12部、サイロイドED−50(グレースジャパン)3部、ミクロンホワイト5000A(林化成)15部、
光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分:アパミクロンAPU10SA(積水化成工業:粒子径5〜10μm)、
酸化チタン微粒子を含有しない粒子状消臭性成分:アパミクロンAP−12C(積水化学工業:粒子径5〜10μm)。
【0033】
【表1】

【0034】
上記実施例1〜3塗料及び比較例1〜4塗料を、下地処理し中塗り工程(塗膜厚20μm)まで終了した、表層単板がカバである普通合板に、材温40℃、塗料温度40℃において塗布量が80g/mになるようにそれぞれ塗工した。それぞれの紫外線照射は、室温25℃の条件で、160mJ/cmの紫外線照射量で硬化させた。
【0035】
比較例塗料G(不揮発分49.1%)については、上記基材に、材温、塗料温度を常温で、塗布量が16g/mになるよう塗工した。60℃で30分乾燥させた後、60℃で72時間エージングを行い、塗装板を得た。
【0036】
(耐汚染試験)
黒インク(パイロット社製、INK−350−B)、トルエン、5%エタノールをそれぞれ2cm角の脱脂綿に浸し、塗装板に静置。30分後の色残り、艶変化を評価した。
【0037】
(臭気試験)
トリエチルアミン、5%酢酸水溶液、トルエン、キシレンをそれぞれ2cm角の脱脂綿に浸し、その上部に塗装板(30cm角)を置きデシケータ中に封入。日光に当たる条件で、2日間放置し、デシケータ中の臭いを下記の基準で評価した。なお、試験は夏場PM.8:00から行い、二日後のPM.8:00に終了。天気は両日とも快晴であり、雲がかかる時間は僅かであった。結果を表2に示す。
◎:消臭効果大(臭いが僅かにしか残らない)
○:消臭効果中(臭いが大きく減少)
△:消臭効果小(臭いが減少したと感じる程度)
×:消臭効果無し
【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
以上、実施例等で示した通り、本発明の抗菌性建材塗料組成物は、床材用をはじめとして各種建材用途に有用に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)数平均分子量500〜10000の紫外線硬化性アクリレート系オリゴマー成分、(b)紫外線硬化性モノマー、(c)光ラジカル重合開始剤、(d)光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分を含有することを特徴とする消臭性トップコート用塗料組成物。
【請求項2】
前記したアクリレート系オリゴマー成分が、ウレタンアクリレートオリゴマー及び又はエポキシアクリレートオリゴマーを含有する請求1に記載の消臭性トップコート用塗料組成物。
【請求項3】
塗料組成物の粒子状消臭性成分を除く不揮発成分中で、(a)紫外線硬化性アクリレート系オリゴマーの含有量が5〜50質量%、(b)紫外線硬化性モノマーの含有量が20〜60%、(c)光ラジカル重合開始剤の含有量が1〜10質量%であり、該不揮発成分100質量部に対する、(d)光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子を有する粒子状消臭性成分の含有量が5〜25質量部であり、紫外線照射量80〜250mJ/cmで硬化可能である請求項1又は2に記載の消臭性トップコート用塗料組成物。
【請求項4】
40℃における粘度が40〜1500mPa・sである請求項1〜3の何れかに記載の消臭性トップコート用塗料組成物。
【請求項5】
前記した(d)粒子状消臭性成分が、光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子が非晶質燐酸カルシウム粒子の表面に固着してなる粒子状消臭性成分である請求項1〜4の何れかに記載の消臭性トップコート用塗料組成物。
【請求項6】
前記した、光触媒活性を奏する酸化チタン微粒子が非晶質燐酸カルシウム粒子の表面に固着してなる粒子状消臭性成分の平均粒径が0.5〜30μmである請求項1〜5の何れかに記載の消臭性トップコート用塗料組成物。


【公開番号】特開2006−199780(P2006−199780A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11457(P2005−11457)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】