説明

消臭抗菌性組成物およびその製造方法

【課題】 分散性、分散安定性に優れ、高い消臭性能と抗菌性能を併せ持ち、しかも長期に亘って消臭性能と抗菌性能を維持することができる。
【解決手段】 この消臭抗菌性組成物は、銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子の表面をシリカで被覆したものであり、その被覆量は0.1〜30重量%の範囲にある。この消臭抗菌性組成物は、酸化チタンがアナタース型酸化チタンであり、平均粒子径が2〜300nmの微粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭機能と抗菌機能とを併せ持つ、消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子表面をシリカで被覆した消臭抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカゲル、複合酸化物、酸化チタン等の粉末あるいはコロイド粒子に抗菌性を有する銀、銅、亜鉛等の金属成分を担持した消臭抗菌性組成物が知られている。
【0003】
例えば、本願の出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤(特開平6−80527号公報:特許文献1)あるいはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤(特開平3−275627号公報:特許文献2)を開示している。
また、抗菌効果の持続性および抗菌物質の安定性を改善する目的で、抗菌性の金属イオンをゼオライトあるいはアルミノ珪酸塩に担持した抗菌性組成物も知られている(特開平1−283204号公報:特許文献3)。
【0004】
本願の出願人は、金属成分と該金属成分以外の無機酸化物とから構成される無機酸化物微粒子であって、前記無機酸化物が酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアとを含んでなり、該酸化チタンが結晶性酸化チタンである抗菌性消臭剤を開示している(特開2005−318999号公報:特許文献4)。
【0005】
しかしながら、従来の消臭抗菌組成物では、結晶性酸化チタンを主たる担体として含まない消臭抗菌組成物は消臭性能が不充分であり、他方、結晶性酸化チタンを主たる担体として含む消臭抗菌組成物では、消臭性能、抗菌性能ともに優れているものの長期に亘って使用すると変色したり、使用方法によって、例えばインテリア家具、カーテン等の基材に担持、あるいは付着させたり、基材に含有せしめて使用した場合、基材が変色、劣化すると云う耐光性、耐候性に関する問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−80527号公報
【特許文献2】特開平3−275627号公報
【特許文献3】特開平1−283204号公報
【特許文献4】特開2005−318999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は分散性、分散安定性に優れ、高い消臭性能と抗菌性能を併せ持ち、しかも長期に亘って消臭性能と抗菌性能を維持することのできる耐光性、耐候性に優れた消臭抗菌性組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消臭抗菌性組成物は、銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子の表面をシリカで被覆したことを特徴としている。
前記シリカの被覆量は0.1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0009】
本発明に係る消臭抗菌性組成物は、平均粒子径が2〜300nmの微粒子であることが好ましい。
前記酸化チタンがアナタース型酸化チタンであることが好ましい。
前記消臭抗菌成分が消臭抗菌成分安定化剤とともに担持されており、該消臭抗菌成分安定化剤がエチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る消臭抗菌性組成物の製造方法は、銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子分散液のpHを8〜12に調整し、ついで酸性珪酸液を最終的に得られる消臭抗菌性組成物中にSiO2として0.1〜30重量%の範囲となるように添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭抗菌性組成物は、表面がシリカで被覆されているにもかかわらず消臭性能および抗菌性能に優れ、しかも長期に亘って消臭性能および抗菌性能を維持するができる。
また、表面が少量のシリカで被覆されているために分散媒への分散性、分散安定性に優れ、樹脂等への分散性に優れ、且つ、変色し易い消臭抗菌成分の変色を抑制することができる。
さらに、耐光性、耐候性に優れるために消臭抗菌性組成物が担持されたあるいは付着した基材の劣化、変色等を抑制することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[消臭抗菌性組成物]
本発明に係る消臭抗菌性組成物は、銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の抗菌消臭成分が担持された酸化チタン微粒子の表面をシリカで被覆したことを特徴としている。
【0013】
酸化チタン微粒子
本発明において、酸化チタン微粒子は結晶性であることが好ましい。結晶型はアナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。なかでもアナタース型酸化チタンは、ラジカル酸素イオン(活性酸素)を生成し、酸化促進効果により消臭性能、抗菌性能を向上することから好適に用いることができる。
【0014】
酸化チタン微粒子は、平均粒子径が概ね2〜300nm、さらには5〜200nmの範囲にあることが好ましい。
酸化チタン微粒子の平均粒子径が2nm未満の場合は、粒子表面をシリカで均一に被覆することは困難であり、酸化チタン微粒子が凝集する傾向があり、また結晶性が不充分となることから消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
酸化チタン微粒子の平均粒子径が300nmを越えると、有効な粒子の外部表面積の低下により消臭性能および抗菌性能が不充分となることがある。
なお、酸化チタン微粒子としては、径(D)が2〜100nmの範囲にあり、長さ(L)が10〜2000nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(D)が5〜1000の範囲のある繊維状酸化チタン微粒子を前記粒状の酸化チタン微粒子に混合して用いても良い。
【0015】
本発明の酸化チタン微粒子は銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分を含むことが好ましい。
前記消臭抗菌成分はイオン、酸化物、水酸化物等の化合物またはこれらの混合物のいずれの形態で存在していてもよい。抗菌性の観点からはイオンの形態が好ましく、消臭性の観点からは酸化物の形態が好ましい。
また、消臭抗菌成分は酸化チタン微粒子の表層に存在するか、酸化チタン微粒子の内部まで比較的均一に分布していることが好ましい。
【0016】
当該消臭抗菌成分は、各成分の合計で酸化チタン微粒子中に酸化物として0.1〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。これらの成分の含有量が0.1重量%よりも少ない場合には充分な消臭性能および抗菌性能が得られにくい。これらの成分の含有量が20重量%よりも多い場合には、さらに消臭性能、抗菌性能が向上することもなく、むしろ消臭抗菌成分が凝集するためかこれら性能が低下する場合がある。該消臭抗菌成分の好ましい含有量は酸化物として1〜15重量%の範囲である。
なお、ここで消臭の対象となる臭気成分としては、法定悪臭8物質(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン)、炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール類、エステル類、窒素化合物、硫黄化合物、低級脂肪酸等が挙げられる。また、抗菌の対象となる菌類としては、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌、プロテウス菌、肺炎桿菌、枯草菌等が挙げられる。
【0017】
前記消臭抗菌成分は消臭抗菌成分安定化剤とともに担持されていることが好ましい。
該消臭抗菌成分安定化剤としてはエチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
このような消臭抗菌成分安定化剤を用いると、消臭抗菌成分安定化剤が正の電荷を有する消臭抗菌性成分と安定な錯体を形成し、この錯体が高い負電荷を有する酸化チタン微粒子表面に静電気的相互作用により安定的に付着し、容易に脱離して散逸することがない。
これに加えて、従来変色することのあった消臭抗菌成分が変色することがなく、長期にわたって抗菌性能、消臭性能等を維持することができる。
なお、消臭抗菌成分安定化剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム等の塩を用いると無機酸化物コロイド粒子への付着が不充分なためか抗菌性能、消臭性能等を長期に亘って維持することが困難である。
【0018】
消臭抗菌性組成物中の消臭抗菌成分安定化剤の量は、消臭抗菌成分のモル数を(Mab)とし、消臭抗菌成分安定化剤のモル数を(Mst)としたときのモル比(Mab)/(Mst)が0.1〜300、さらには1〜250の範囲にあることが好ましい。
モル比(Mab)/(Mst)が0.1未満の場合は、消臭抗菌成分の量によっても異なるが、消臭抗菌成分安定化剤の量が多くなり、酸化チタン微粒子表面の電荷が減少し、消臭抗菌成分を担持した酸化チタン微粒子の安定性が低下し凝集することがある。
モル比(Mab)/(Mst)が300を超えると、消臭抗菌成分安定化剤の量が少なく、安定化効果、変色抑制効果が得られないことがある。
【0019】
シリカ被覆層
本発明の消臭抗菌性組成物は、前記消臭抗菌成分を含む酸化チタン微粒子の表面がシリカで被覆されている。
消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量は0.1〜30重量%、さらには5〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量が0.1重量%未満の場合は分散媒への分散性、分散安定性、樹脂等への分散性が不充分となり、変色性消臭抗菌成分の変色を抑制することが困難となり、さらに、耐光性、耐候性が不充分となり、消臭抗菌性組成物が担持されたあるいは付着した基材の劣化、変色等を抑制することが困難となる場合がある。
消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量が30重量%を越えると、消臭抗菌性組成物が凝集体となることがあり、加えて臭気成分、菌類等との接触が抑制されるようになり消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
【0020】
前記シリカ被覆層の厚さは、消臭性能と抗菌性能を低下させずに分散性を向上させるためには、0.1〜10nm、好ましくは0.2〜5nmの範囲であることが好ましい。
従って、シリカで被覆された本発明の消臭抗菌性組成物は、平均粒子径が2〜300nm、さらには5〜200nmの微粒子であることが好ましい。
平均粒子径が2nm未満のものは、粒子表面をシリカで均一に被覆することが困難であるために、分散性、分散安定性に優れた消臭抗菌性組成物を得ることが困難であり、得られたとしても酸化チタン微粒子の結晶性が不充分であることから消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。平均粒子径が300nmを越えると、有効な粒子の外部表面積が低下するため消臭性能および抗菌性能が不充分となることがある。
【0021】
[消臭抗菌性組成物の製造方法]
本発明の消臭抗菌性組成物は、まず、消臭抗菌成分を含む酸化チタン微粒子を調製する。
具体的には、例えば、負の電荷を有する酸化チタン微粒子が分散した分散液に、(1)消臭抗菌性成分の金属塩水溶液を添加する方法が挙げられる。
また、抗菌成分安定化剤を含む場合は、(2)消臭抗菌性成分の金属塩水溶液を添加した後、消臭抗菌成分安定化剤の水溶液を添加する方法、(3)消臭抗菌成分安定化剤の水溶液を添加した後、消臭抗菌成分の金属塩水溶液を添加する方法、(4)消臭抗菌成分の金属塩水溶液と消臭抗菌成分安定化剤の水溶液とを混合して消臭抗菌性成分の錯体を形成させた水溶液を添加する方法、等により製造されるが、必ずしも、これらの方法に限定されるものではない。
【0022】
前記金属塩水溶液はアミン錯塩水溶液が好ましい。アミン錯塩水溶液を用いると酸化チタン微粒子分散液の安定性を低下させたり、ゲル化させることなく長期にわたって安定な消臭抗菌性組成物を製造することができる。安定性が低下した消臭抗菌性組成物、ゲル化した消臭抗菌性組成物は用途が制限されたり、消臭抗菌性能が不充分となることがある。
【0023】
好適なアミン錯塩水溶液は、例えば、酸化亜鉛、酸化銀あるいは酸化銅などをアンモニア水に溶解することによって、亜鉛、銀あるいは銅等のアンミン錯塩水溶液を調製することができる。
なお、前記した各方法での消臭抗菌性組成物の調製に際し、水を分散媒とする酸化チタン微粒子分散液の濃度は酸化物として5重量%以下、好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
【0024】
前述の方法で得られた水を分散媒とする消臭抗菌成分を担持した酸化チタン微粒子分散液は、公知の方法、例えば限外濾過膜を用いて、所望の濃度に調整される。
また、上記消臭抗菌成分を担持した酸化チタン微粒子分散液の分散媒である水は公知の方法により有機溶媒と置換して、有機溶媒を分散媒とする分散液とすることも可能である。
【0025】
さらに、消臭抗菌成分を含む酸化チタン微粒子の調製法として以下の方法も推奨される。
本発明に好適に用いる酸化チタン微粒子にはさらに、(5)酸化チタン微粒子の表層に消臭抗菌成分が存在するものと、(6)酸化チタン微粒子の内部まで比較的均一に消臭抗菌成分が分布しているものとがある。
(5)の酸化チタン微粒子の表層に消臭抗菌成分が存在する酸化チタン微粒子の製造方法について説明する。
【0026】
(5)の製造方法は、含水チタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて得られるペルオキシチタン酸水溶液を100〜350℃で水熱処理して酸化チタン微粒子を調製し、ついで前記元素成分を担持することを特徴としている。具体的には特開2004−250239号公報に開示した方法に準じて調製することができる。
まず、従来公知の方法によってチタン化合物を加水分解してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。
【0027】
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。
また、オルソチタン酸のゾルは、チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによっても得ることができる。
【0028】
中和あるいは加水分解する際のチタン化合物の溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。チタン化合物溶液のpHが上記範囲にない場合は後述するゲルまたはゾルの比表面積が低すぎることがあり、結晶性酸化チタンの生成が低下する傾向がある。
さらに、中和あるいは加水分解する際の温度は0〜40℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましい範囲は0〜30℃の範囲である。このとき得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン酸粒子は、非晶質であることが好ましい。
【0029】
次に、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物に、過酸化水素を添加してオルソチタン酸を溶解してペルオキソチタン酸水溶液を調製する。ついでさらに50〜350℃、好ましくは100〜300℃で水熱処理して酸化チタン微粒子の水分散ゾルを調製する。
ペルオキソチタン酸水溶液を調製するに際しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物を、必要に応じて約50℃以上に加熱したり、攪拌したりすることが好ましい。また、この際、オルソチタン酸の濃度が高すぎると、その溶解に長時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あるいは得られるペルオキソチタン酸水溶液が粘調になることがある。このため、TiO2濃度としては、約10重量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下であることが望ましい。
【0030】
添加する過酸化水素の量は、H22/TiO2(オルソチタン酸はTiO2に換算)重量比で1以上であれば、オルソチタン酸を完全に溶解することができる。H22/TiO2重量比が1未満であると、オルソチタン酸が完全には溶解せず、未反応のゲルまたはゾルが残存することがある。また、H22/TiO2重量比は大きいほど、オルソチタン酸の溶解速度は大きく反応時間は短時間で終了するが、あまり過剰に過酸化水素を用いても、未反応の過酸化水素が系内に残存するだけであり、経済的でない。このような量で過酸化水素を用いると、オルソチタン酸は0.5〜20時間程度で溶解する。
ついで50〜350℃で水熱処理して粒状の酸化チタン微粒子の水分散ゾルを調製することができる。なお、ここで粒状とはアスペクト比が5未満の繊維状微粒子を含んで意味している。
【0031】
さらに、得られた酸化チタン微粒子の水分散ゾルは、必要に応じて水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の存在下、50〜350℃、好ましくは80〜250℃の温度範囲で水熱処理することができる。有機塩基としては後述する有機塩基と同様のものを用いることができる。
水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の使用量は、分散液のpHが室温基準で8〜14、さらには10〜13.5となるように添加することが好ましい。
上記温度範囲および分散液のpH範囲で水熱処理すると、粒状の結晶性酸化チタン微粒子の結晶性および収率が向上する傾向にある。この場合、得られた粒状の結晶性酸化チタン微粒子分散液は、ついで、洗浄することが好ましい。
【0032】
洗浄方法としては有機塩基等を低減できれば特に制限はなく、従来公知の脱水濾過法、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、電気透析、逆浸透法等を採用することができる。また、塩酸、硝酸などの酸を用いて洗浄することもできる。
洗浄して得られた粒状の酸化チタン微粒子に消臭抗菌成分を担持する方法としては、本願の出願人が特開平9−38483号公報において開示した水性ゾルの製造方法と同様にして、酸化チタン微粒子分散液に消臭抗菌成分の金属塩またはその水溶液と陰イオン交換体を混合して酸化チタン微粒子に担持し、その後、限外濾過膜を用い温水洗浄を行い塩を洗い流し、消臭抗菌成分を担持した酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0033】
また、別の方法としては、消臭抗菌成分を含む水溶液を酸化チタン微粒子の水分散液に水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の存在下、室温〜80℃で、pHが8〜10になるように添加し、消臭抗菌成分を酸化チタン微粒子に沈着させ、その後、洗浄を行い塩を洗い流し、これらを100〜150℃で1〜10時間の水熱処理を行い、消臭抗菌成分を担持した酸化チタン微粒子を得ることができる。
このときの洗浄方法としては有機塩基等を低減できれば特に制限はなく、従来公知の脱水濾過法、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、電気透析、逆浸透法等を採用することができる。
【0034】
本発明では前記したように、粒状の酸化チタン微粒子の他に繊維状の酸化チタン微粒子を用いることができるので、続いて、繊維状の結晶性酸化チタン微粒子の場合の製造方法について説明する。
先ず、前記の製造方法と同様にして粒状の結晶性酸化チタン微粒子の水分散ゾルを調製する。ついで、アルカリおよび/または塩基性窒素化合物の存在下、50〜350℃、好ましくは80〜300℃の温度範囲で水熱処理して繊維状結晶性酸化チタン微粒子を調製し、ついで前記元素成分を担持する。具体的には特開2004−250239号公報、特開2005−318999号公報に開示した方法に準じて調製することができる。
【0035】
アルカリとしては、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOHおよびこれらの混合物を用いることができ、特にNaOH、KOHおよびこれらの混合物は繊維状酸化チタン微粒子の結晶性および収率が高く好適である。
このときのアルカリ金属水酸化物の添加量は、酸化チタン微粒子のTiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が1〜30、さらには2〜15の範囲にあることが好ましい。
このモル比(AM)/(TM)が1未満の場合は、酸化チタン微粒子の結晶性化自体が起きにくく、モル比(AM)/(TM)が30を越えると繊維状の結晶性酸化チタン微粒子の収率が低下する傾向にある。
【0036】
有機塩基としては、テトラメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩または水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができる。
有機塩基のモル数(OBM)とTiO2のモル数(TM)との比(AM)/(TM)が1〜30となるように添加して用いることができる。
このような範囲で有機塩基を用いると、結晶性の高い繊維状酸化チタン微粒子を得ることができる。本発明ではアルカリ金属水酸化物とともに有機塩基を用いることができる。
水熱処理温度が50℃未満では、繊維状結晶性酸化チタン微粒子の生成に長時間を要し、また繊維状結晶性酸化チタン微粒子の収率が低く、水熱処理温度が350℃を越えても繊維状結晶性酸化チタン微粒子の生成速度が速くなったり収率がさらに高くなることもない。
【0037】
得られた繊維状結晶性酸化チタン微粒子分散液は、ついで、洗浄することが好ましい。
洗浄方法としてはアルカリ金属、有機塩基等を低減できれば特に制限はなく、従来公知の脱水濾過法、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、電気透析、逆浸透法等を採用することができる。また、塩酸、硝酸などの酸をもちいて洗浄することもできる。
洗浄して得られた繊維状結晶性酸化チタン微粒子に消臭抗菌成分を担持する方法としては前記と同様の方法を採用することができる。
【0038】
次に、酸化チタン微粒子の内部まで比較的均一に消臭抗菌成分が分布している(6)の酸化チタン微粒子の製造方法について説明するが、例えば、特開平5−132309号公報に記載された複合酸化物コロイド溶液の製造方法に準じて調製することができる。即ち、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基の珪酸塩と、アルカリ可溶のチタン化合物と、前記消臭抗菌成分の水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、必要に応じて加熱処理して消臭抗菌成分を含有する酸化チタン微粒子を生成させる。
また、特開昭63−270620号公報に記載された製造方法に準じて調製することもできる。即ち、含水チタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて得られるチタン酸水溶液と前記消臭抗菌成分の水溶液とを、ケイ素化合物および/またはジルコニウム化合物の存在下で加熱処理して調製する方法である。
【0039】
ついで、上記のようにして調製した消臭抗菌成分を含む酸化チタン微粒子、または消臭抗菌成分および消臭抗菌成分安定化剤とを含む酸化チタン微粒子にシリカを被覆する。
まず、消臭抗菌成分を含む酸化チタン微粒子または消臭抗菌成分および消臭抗菌成分安定化剤とを含む酸化チタン微粒子の分散液に、アルカリを添加してpHを8〜12、好ましくは9〜10.5に調整する。アルカリとしてはNaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物水溶液、アンモニア水溶液、アミン水溶液等を用いることができる。なかでもアンモニア水溶液は最終的に得られる消臭抗菌組成物中に消臭抗菌性能を阻害する傾向のあるアルカリ金属が残存することが無く、そのための洗浄を必要とせず、且つ安価であるので好適である。
【0040】
この時の分散液の濃度は固形分として0.1〜10重量%、さらには0.5〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
分散液の濃度が固形分として0.1重量%未満の場合は、後に添加する酸性珪酸液からのシリカの析出、シリカの被覆が不充分となり、生産性が低下することに加えてシリカを被覆した効果が充分得られないことがある。
分散液の濃度が固形分として10重量%を越えると得られる消臭抗菌組成物が凝集することがある。
【0041】
ついで、分散液のpHを前記範囲に維持しながら酸性珪酸液を添加する。
酸化チタン微粒子分散液のpHが8未満の場合は酸化チタン微粒子が凝集することがあり、酸化チタン微粒子分散液のpHが12を越えると消臭抗菌成分が溶出して減少し、消臭抗菌性能が不充分となることがある。
【0042】
ここで、酸性珪酸液とはアルカリ金属珪酸塩水溶液から、イオン交換樹脂により脱アルカリして得られる珪酸水溶液である。酸性珪酸液の濃度は通常SiO2として0.1〜5重量%、pHは概ね0.1〜3.5の範囲にあることが好ましい。
酸性珪酸液の添加量は最終的に得られる消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量がSiO2として0.1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の範囲となるように添加する。
消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量が0.1重量%未満の場合は分散媒への分散性、分散安定性、樹脂等への分散性が不充分となり、変色性消臭抗菌成分の変色を抑制することが困難となり、さらに、耐光性、耐候性が不充分となり、消臭抗菌性組成物が担持されたあるいは付着した基材の劣化、変色等を抑制することが困難となる場合がある。
消臭抗菌性組成物中のシリカの被覆量が30重量%を越えると、消臭抗菌性組成物が凝集体として得られたり、臭気成分、菌類等との接触が抑制されるようになり消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
【0043】
酸性珪酸液の添加は、添加量にもよるが、一時に添加するより、少量を連続的にあるいは断続的に行うことが好ましい。
なお、前記分散液のpH調整時、酸性珪酸液の添加時の分散液の温度は概ね20〜95℃、さらには30〜80℃の範囲にあることが好ましい。
このようにして得られた消臭抗菌性組成物分散液はそのまま使用することもできるし、分散媒を有機溶媒に置換して用いることもでき、更に乾燥して粉体として用いることもできる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
消臭抗菌性組成物(1)の調製
[消臭抗菌成分担持酸化チタン微粒子(T-1)の調製]
(1)酸化チタン微粒子(T-1)分散液の調製
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5重量%であった。
【0045】
ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン微粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2 に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(分子量:149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。ついで、230℃で5時間水熱処理した後、限外濾過膜装置でTiO2 重量に対して100倍の水で洗浄し、濃縮してTiO2として濃度1.0重量%の結晶性の酸化チタン微粒子(T-1)分散液を調製した。
【0046】
(2)消臭抗菌成分の担持
別途、44.4gの硝酸銅Cu(N032・3H2Oに水4396gを加えて、濃度1.0重量%の硝酸銅水溶液を調製した。
TiO2濃度を1.0重量%に調整した結晶性の酸化チタン微粒子(T-1)分散液10.0kgを調合タンクに採取し、これを攪拌しながら50℃に加温した。結晶性酸化チタン微粒子(T-1)分散液のpHが9.0になるようにアンモニアを添加した。この結晶性酸化チタン微粒子(T-1)分散液に前記硝酸銅水溶液をペリスターポンプで10g/minの速度で添加した。硝酸銅水溶液の添加で結晶性酸化チタン微粒子(T-1)分散液のpHが低下し始めたところで、陰イオン交換樹脂(三菱化学製)をpH8.5に維持するように少量ずつ添加し、全硝酸銅水溶液の添加が終了するまで、この操作を継続した。陰イオン交換樹脂の全使用量は310gであり、また、結晶性の酸化チタン微粒子(T-1)分散液の最終pHは8.1であった。
【0047】
この結晶性酸化チタン微粒子(T-1)分散液からイオン交換樹脂を分離した後、限外濾過膜装置でTiO2 重量に対して200倍の水で洗浄した後、限外濾過膜装置で濃縮して、固形分濃度10重量%の銅を担持した結晶性酸化チタン微粒子(T-1)からなる消臭抗菌成分担持酸化チタン微粒子(T-1)分散液を得た。消臭抗菌成分担持結晶性酸化チタン微粒子(T-1)中のCuOの担持量は、10.0重量%であった。
消臭抗菌成分担持結晶性酸化チタン微粒子(T-1)の平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA−700)で測定したところ、18.0nmであった。また、X線回折によりアナタース型であった。
【0048】
(3)シリカ被覆
固形分濃度1重量%の銅を担持した結晶性酸化チタン微粒子(T-1)からなる消臭抗菌成分担持酸化チタン微粒子(T-1)分散液10kgを撹拌しながら温度80℃に調整し、これに濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを10とした。ついで、酸性珪酸液(SiO2濃度0.5重量%、pH2.5)2.3kgを3時間で添加した。
ついで、95℃で4時間熟成後、冷却、限外膜洗浄で27.9kgの純水で洗浄し、固形分濃度11.0%まで濃縮して消臭抗菌性組成物(1)の分散液を調製した。被覆シリカの含有量、平均粒子径を表1に示した。
【0049】
[性能評価]
安定性試験
水道水に消臭抗菌性組成物(1)の分散液を10%添加してゲル化を観察し、結果を表1に示した。
○:ゲル化なし
△:僅かに白濁が認められる
×:ゲル化
【0050】
消臭・抗菌試験
消臭抗菌性組成物(1)について、抗菌性能および消臭性能を以下の方法および基準で評価し、結果を表1に示した。
[抗菌性能評価用試料の調製]
消臭抗菌性組成物(1)6gと水系アクリル系樹脂(日本純薬製;ジュリマーFC65、濃度40重量%)20gとを混合して、抗菌性コート剤を調製した。このコート剤1.0gを10cm×10cmのガラス板に厚さ10μmのバーコートを用いて塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成し、抗菌性能評価用試料(1)とした。
【0051】
[抗菌性の評価]
緑膿菌および大腸菌を生理食塩水中に懸濁させ、その30μlを抗菌性能評価用試料(1)のガラス面に滴下し、28℃で24時間放置後、生菌数を測定して次式(1)により死滅率を求めた。
死滅率(%)=100×(初期生菌数−24時間後の生菌数)/初期生菌数・・・(1)
【0052】
[消臭性の評価]
5Lテトラパックに消臭抗菌性組成物(1)1gと、初期濃度100ppmのアンモニア試験臭3Lおよび初期濃度4ppmの硫化水素試験臭3Lを封入して2時間放置した後、検知管にて試験臭濃度を測定し、次式(2)により消臭率を求めた。測定結果を表1に示す。
消臭率(%)=100×(初期消臭濃度−2時間後の消臭濃度)/初期消臭濃度・・・(2)
【0053】
耐光性・耐候性試験
[変色の有無]
ウェザーメーター(ガス試験機器(株)製)を用いて100時間の耐候試験を行い、変色度合いを観察した。
○ ・・・変色が見られないもの
△ ・・・変色が僅かに見られるもの
× ・・・変色が見られるもの
【0054】
[堅牢度]
消臭抗菌性組成物(1)分散液を青色のカーテン(基材:ポリエステル)に10重量%となるように吸収させ、乾燥し、消臭抗菌性組成物(1)を1重量%となるように担持した試験布を作成し、ウェザーメーター(ガス試験機器(株)製)を用いて100時間の耐候試験を行い、青色のカーテン(基材:ポリエステル)の色落ち度合いを観察した。
○ ・・・色落ちが見られないもの
△ ・・・色落ちが僅かに見られるもの
× ・・・色落ちが見られるもの
【0055】
[消臭率]
上記耐光性・耐候性試験後、前記と同様の消臭試験を行い、消臭率を表1に示した。
【実施例2】
【0056】
消臭抗菌性組成物(2)の調製
実施例1において、硝酸銅Cu(N032・3H2Oを22.2g用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(2)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(2)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【実施例3】
【0057】
消臭抗菌性組成物(3)の調製
実施例1において、硝酸銅Cu(N032・3H2Oを66.6g用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(3)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(3)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【実施例4】
【0058】
消臭抗菌性組成物(4)の調製
実施例1において、酸性珪酸液(SiO2濃度0.5重量%、pH2.5)1.15kgを用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(4)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(4)について抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【実施例5】
【0059】
消臭抗菌性組成物(5)の調製
実施例1において、酸性珪酸液(SiO2濃度0.5重量%、pH2.5)3.45kgを用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(5)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(5)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【実施例6】
【0060】
消臭抗菌性組成物(6)の調製
実施例1において、硝酸銅Cu(N032・3H2O、44.4gの代わりに硝酸亜鉛、Zn(NO32・6H2Oを40.5g用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(6)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(6)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【実施例7】
【0061】
消臭抗菌性組成物(7)の調製
実施例1の酸化チタン微粒子(T-1)分散液の調製において、得られたTiO2として濃度は0.5重量%のペルオキソチタン酸水溶液の濃度を0.3重量%に調整し、ついで95℃で24時間加熱して酸化チタン微粒子分散液とした以外は同様にして消臭抗菌性組成物(7)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(7)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【比較例1】
【0062】
消臭抗菌性組成物(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した消臭抗菌成分担持酸化チタン微粒子(T-1)をそのまま用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(R1)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(R1)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【比較例2】
【0063】
消臭抗菌性組成物(R1)の調製
実施例1において、シリカ被覆をpH5で行った以外は同様にして消臭抗菌性組成物(R2)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(R2)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【比較例3】
【0064】
消臭抗菌性組成物(R1)の調製
実施例1において、シリカ被覆をpH13で行った以外は同様にして消臭抗菌性組成物(R3)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(R3)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【比較例4】
【0065】
消臭抗菌性組成物(R4)の調製
実施例1において、酸性珪酸液(SiO2濃度0.5重量%、pH2.5)9.2kgを用いた以外は同様にして消臭抗菌性組成物(R4)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(R4)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【比較例5】
【0066】
消臭抗菌性組成物(R5)の調製
硫酸チタニル2水塩結晶(テイカ(株)製:TM結晶)6.25kgを水33.75kgに溶解した。ついで、濃度15重量%のアンモニア水をpHが約7になるまで加え、オルトチタン酸のゲルを調製し、濾過し、100kgの純粋を掛けて洗浄した。洗浄したオルトチタン酸のゲルを水に分散させ全量160kgのスラリーとした。ついで、スラリーを50℃に昇温し、濃度35重量%の過酸化水素水12.32kgを加え、10分間撹拌した後、90℃に昇温し、2時間加熱処理してTiO2として濃度1.2重量%のペルオキソチタン酸水溶液を調製した。
【0067】
別途、18.24gの硝酸銅Cu(NO32・3H2Oに水3648gを加えて、濃度0.5重量%の硝酸銅水溶液を調製した。次に、TiO2濃度が1重量%のペルオキソチタン酸水溶液4.0kgをビーカーに採取し、これを攪拌しながら温度を50℃に調製した。この時、pHは7.9であった。このペルオキソチタン酸水溶液に前記硝酸銅水溶液を10g/minの速度で添加した。硝酸銅水溶液の添加によりペルオキソチタン水溶液のpHが低下し始めたところで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)をpH7.9を維持するように少量ずつ添加し、全硝酸銅水溶液の添加が終了するまで、この操作を継続した。陰イオン交換樹脂の全使用量は310gであり、また、ペルオキソチタン水溶液の最終pHは8.1であった。ついで、95℃で1時間加熱して無機酸化物微粒子前駆体分散液を調製した。
【0068】
ついで、ペルオキソチタン酸水溶液を限外濾過膜でTiO2重量に対して200倍の水で洗浄した後、シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN−350、平均粒子径10nm、固形分濃度16重量%)62.5gを添加し、155℃で16時間水熱処理した後、濃縮し、固形分濃度11重量%の消臭抗菌性組成物(R5)の分散液を調製した。
消臭抗菌性組成物(R5)について、抗菌・消臭試験、耐光性・耐候性試験および安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子の表面をシリカで被覆したことを特徴とする消臭抗菌性組成物。
【請求項2】
前記シリカの被覆量が0.1〜30重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の消臭抗菌性組成物。
【請求項3】
平均粒子径が2〜300nmの微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭抗菌性組成物。
【請求項4】
前記酸化チタンがアナタース型酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭抗菌性組成物。
【請求項5】
前記消臭抗菌成分が消臭抗菌成分安定化剤とともに担持されており、該消臭抗菌成分安定化剤がエチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の消臭抗菌性組成物。
【請求項6】
銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の消臭抗菌成分が担持された酸化チタン微粒子分散液のpHを8〜12に調整し、ついで酸性珪酸液を最終的に得られる消臭抗菌性組成物中にSiO2として0.1〜30重量%の範囲となるように添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消臭抗菌性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−284242(P2008−284242A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133522(P2007−133522)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】