説明

消色方法および消色材料

【課題】ロイコ色素等の電子供与性の呈色性化合物が活性シリカ表面に直接結合して得られる発色を永続的に消色可能な方法を提供する。
【解決手段】活性シリカの表面に電子供与性の呈色性化合物を直接反応させることで発色させた発色体に対して、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含む消色材料を接触させて、前記発色体を消色することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ色素からなる発色体を消色する方法およびその消色材料に関する。
【背景技術】
【0002】
室温付近の温度で発色状態が安定に存在し、熱や溶媒による処理で、実用温度において長期に消色状態を固定することができる画像記録材料として、呈色性化合物、顕色剤、および顕色剤を捕獲する消色剤を含有する画像記録材料が知られている。しかしながら、この組成系では、発色および消色は、いずれも軟化したバインダー内での染料と顕色剤の作用の平衡によって決定される。そのため、選択された材料の組み合わせによって、発色濃度は一義的に決定されてしまう。
【0003】
一方、ロイコ色素等の有機物は、活性アルミナなどの活性表面で発色することが報告されている。例えば、珪酸ゲルや酸化アルミの活性表面に、無色のマラカイトグリーンが吸着されて発色することである(例えば、非特許文献1参照)。吸着で発色することや(例えば、非特許文献2参照)、活性表面に吸着されたアミノ化合物、ニトロ化合物についての研究(例えば、非特許文献3参照)も報告されている。また、塩基性アミンが活性表面に吸着されて直ちに発色することが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0004】
いずれにおいても、ノンカーボン紙のような複写用材料として専ら応用されており、発色に重点が置かれていたものである。このような性質が着色した状態で使用する顔料粒子のような形では、応用されてはこなかった。また、これらの報告の中には発色体が水で消色する場合があることが記載されている。得られた発色体は、極性の高いアセトンなどの有機溶剤により消色可能であるものの、有機溶剤が蒸発すると復活してしまう。
【非特許文献1】E.Weitz;Z.Electrochemie.,44,488(1938)
【非特許文献2】Boer; Z.Electrochemie.46.222(1940)
【非特許文献3】G.Kortune;Z.Angew.Chem.,67(1955), 70(1956)
【非特許文献4】亀岡、岡;工化、33,982(1930), 32,294(1929)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ロイコ色素等の電子供与性の呈色性化合物が活性シリカ表面に直接反応して得られる発色体を永続的に消色状態とすることの可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる消色方法は、活性シリカの表面に電子供与性の呈色性化合物を直接反応させることで発色させた発色体に対して、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含む消色材料を接触させて、前記発色体を消色することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様にかかる消色材料は、電子供与性の呈色性化合物が活性シリカ表面に直接反応してなる発色体を消色する材料であって、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロイコ色素等の電子供与性の呈色性化合物が活性シリカ表面に直接反応して得られる発色体を永続的に消色状態とすることの可能な方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含む化合物は、電子供与性の呈色性化合物が活性シリカの表面に直接結合してなる発色体を消色することを見出した。
【0011】
ここで電子供与性の呈色性化合物としてはロイコ色素、具体的には、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、およびフルオラン類等の電子供与性有機物が挙げられる。
【0012】
より具体的には、次の色素である。クリスタルバイオレットラクトン(CVL)、マラカイトグリーンラクトン、2−アニリノ−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、3−[4−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル]アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−アニリノ−6−(N−メチル−N−イソブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(ジブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、3−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−クロロ−6−(ジエチルアミノ)フルオラン、7−(N,N−ジベンジルアミノ)−3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3,6−Bis(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)アニリノラクタム、3−ジエチルアミノベンゾ[a]−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−キシリジノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エソキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタライド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタライド、3−ジエチルアミノ−7−クロロアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−Bis(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタライド、3,6−ジメチルエソキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メソキシ−7−アミノフルオラン、DEPM、ATP,ETAC、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2、3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミン、N−フェニルオーラミン、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8’−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジメチルフルオラン−フェニルヒドラジド−γ−ラクタム、および3−アミノ−5−メチルフルオランなどである。
【0013】
これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。呈色性化合物を適宜選択することによって多様な色の発色状態が得られ、カラー対応も容易である。これらの中で、特に適している材料は、トリフェニルメタン系、フルオラン系、およびフェニル−インドール−フタライド系のカラーフォーマーである。
【0014】
活性シリカとは、表面積が大きいことに起因した反応性の高いシリカであり、50m2/g以上の表面積を有するシリカが好ましい。こうした活性シリカの平均粒子径は、通常、0.007〜0.1μm程度である。電子供与性の呈色性化合物が反応する活性シリカとして、0.01〜0.04μmがより好ましい。平均粒子径は、例えば、動的光散乱法といった手法により求めることができる。平均粒子径が大きすぎる場合には、十分に大きな表面積が得られないので活性が乏しく、小さすぎる場合には、強固に凝集してしまうおそれがある。
【0015】
具体的には、活性シリカとしては、デグサ社(Degussa)のアエロジル,シリカヒューム、珪藻土等が挙げられる。
【0016】
本発明の実施形態にかかる方法においては、こうした活性シリカの表面にロイコ色素等の電子供与性の呈色性化合物が直接結合してなる発色体が、アルコキシ基が結合したシリコン原子を有する化合物によって消色される。
【0017】
アルコキシ基は、エトキシ基、メトキシ基、プロポキシ基、およびイソプロポキシ基等から選択されるいずれでもよく、特に限定されない。また、1つのシリコン原子に2つ以上のアルコキシ基が結合していてもよい。コストを考慮すると、炭素数2〜5のアルコキシ基が好ましい。
【0018】
アルコキシ基が結合したシリコン原子を有する化合物としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0019】
例えば、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメトキシシラン、3−アミノプロピルメトキシシラン、3−ウレイドプロピルメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、スルフィドシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、n−オクチルメトキシシロキサン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス、(トリメトキシシリル)ヘキサン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびトリフルオロプロピルトリメトキシシランなどである。通常、シランカップリング剤と称される化合物であり、本発明の実施形態においては消色材料として用いられる。
【0020】
上述したように、活性シリカの平均粒子径は最大でも0.1μm程度なので、ロイコ色素等の電子供与性の呈色性化合物が直接結合した活性シリカ(発色体)は、微粉体であるということができる。こうした微粉体状の発色体の発色を消色するには、前述の消色材料を水に溶解させて溶液として用いる。
【0021】
消色材料の溶液は、消色対象である発色体が完全に埋没する量で用いることが望まれる。例えば、1gの発色体を消色する場合には、1〜5ml程度の消色材料と1〜5ml程度の水とを用いればよい。
【0022】
発色体を消色材料の溶液に接触させて、5〜10分程度放置することによって、発色した発色体が消色される。活性シリカの表面に直接結合していた呈色性化合物が、消色材料としてのシランカップリング剤によって置き換えられることによって、消色されるものと推測される。この反応は、室温(20℃)程度でも進行するが、加熱することによって促進することができる。加熱温度は、50℃程度であれば十分であり、これ以上高温にしても顕著な効果は得られない。
【0023】
発色体により紙等の記録媒体上で画像を形成して場合には、上述したような手法を用いて、画像を消色し、無色化することができる。
【0024】
呈色性化合物が活性シリカの表面から排除されることによって、発色体が消色されるので、消色後には再度発色が復活することはない。すなわち、本発明の実施形態にかかる方法によって、発色体を永続的に消色することが可能となった。
【0025】
上述したような本発明の実施形態にかかる消色方法を用いて、シランカップリング剤によるシリカ粒子の表面の被覆状況を簡易に判定することができる。
【0026】
シリカ粒子の表面をシランカップリング剤により処理して、親水性を調整することは広く行なわれてきた。この処理によって、疎水性のシリカが得られるので物性調整が可能となり、より多くの材料への添加剤などとして用いることができる。シランカップリング剤によるシリカ粒子の被覆状況は反応によってムラがあり、必ずしも常に表面の100%が完全に被覆されるわけではない。シリカ粒子表面の被覆状況を確認するのは、容易ではなかった。
【0027】
例えばCVL(クリスタルバイオレットラクトン)は無色のロイコ色素であり、これをトルエン等に溶解してなる溶液も無色である。このCVLが活性シリカ粒子の表面に直接結合すると、発色して発色体が生じる。したがって、CVLのトルエン溶液に、シランカップリング剤で処理された活性シリカ粒子を添加し、発色状態から、シリカ粒子表面の被覆状態を判定することができる。あるいは、CVLのトルエン溶液をシリカ粒子に滴下して、判定してもよい。
【0028】
シリカ粒子の表面が100%シランカップリング剤で覆われている場合には、もはやロイコ色素が結合する余地がない。したがって、着色しないため発色体は生じない。一方、シリカ粒子の表面に未反応部分が存在する場合には、ここにロイコ色素が直接結合して知シリカ粒子がブルーに発色し、発色体となる。シリカ粒子とシランカップリング剤との接触後の濃度が高い場合には、未反応のシリカ粒子表面が大きいことが推察される。
【0029】
ロイコ色素が結合したシリカ粒子の表面は、シランカップリング剤との反応性が大きい。このため、ロイコ色素をシランカップリング剤で置き換えて、発色を消色することができる。これに対し、シランカップリング剤が結合したシリカ粒子の表面は、ロイコ色素との反応性は小さい。このため、いったん消色されると発色が復活することはなく、永続的な消色が可能である。
【0030】
以下、本発明の具体例を示す。
【0031】
まず、表面活性シリカ粒子として、アエロジル200およびアエロジル50(いずれもデグサ社(Degussa):日本アエロジル社製))の2種類を準備した。表面積は、それぞれ200m2/gおよび50m2/gであり、それぞれA200およびA50と表記する。
【0032】
電子供与性の呈色性化合物(ロイコ色素)としては、Blue203(山田化学)を準備し、前述のアエロジルと混合した。重量比(アエロジル/色素)は、0.5,1,1.5,および2の4種類とし、乳鉢内で5ccのトルエンを加えながら混合した。乾燥するまですり潰して、最終的に微粉体(A200/Blue203の発色体およびA50/Blue203の発色体)を得た。
【0033】
参照のために、アエロジルをEG(没食子酸エチル)に変更して、乳鉢内でアセトンを加えながら混合した。これを乾燥するまですり潰して、最終的に微粉体(EG/Blue203の発色体)を得た。
【0034】
得られた粉体は、室温により十分に乾燥した後、粉体用セルに収容してミノルタ色彩色差計CR300を用いて粉体濃度を測定した。その結果を、図1のグラフに示す。得られた結果から、これらの中ではEGが最も発色が大きく、アエロジルの場合は表面積の大きいものほど発色が大きいことがわかった。EG/Blue203の発色は、水やアセトン、メタノールで消色しない。
【0035】
A200/Blue203の発色体、およびA50/Blue203の発色体について、消色の実験を行なった。
【0036】
(実施例1)
A50/Blue203(1.5/1)の発色体(粉体濃度0.92)0.5gをビーカーに収容し、シランカップリング剤Z6040を0.25ml,水2mlを加えて水浴により50℃に加熱した。ここで用いたシランカップリング剤Z6040は、(東レシリコーン社製)であり、アルコキシ基としてのメトキシ基が、3個シリコン原子に結合している。
【0037】
その結果、発色体が脱色することが確認された。乾燥後、乳鉢でよくすり潰して白色粉体を得、粉体濃度を測定したところ0.21であった。即ち呈色性化合物であるBlue203のほとんどが無色化したことを意味する。この白色粉体にCVLのトルエン溶液を加えても、発色は確認されなかった。
【0038】
以上の結果から、A50/Blue203(1.5/1)の発色体にシランカップリング剤を作用させることによって、シランカップリング剤がシリカ粒子の表面を覆いつくしたものと判断できる。このことより、シランカップリング剤は消色性能を有し、しかも、発色体を永続的に消色する消色の固定効果(消色の永続性)のあるものであることがわかる。
【0039】
温度を室温(25℃)に変更した場合も、前述と同様の結果が得られた。アエロジルは、ロイコ色素が結合している表面の方が、シランカップリング剤の反応性が高まることがわかった。通常の反応性からすると100℃以上でないアエロジル(活性シリカ粒子)とシランカップリング剤とが十分に反応しなかったものが、室温で簡単に反応するようになることがわかった。
【0040】
このことから、活性シリカ粒子の表面にロイコ色素が直接結合してなる発色体を用いた記録材料による印刷は、シランカップリング剤を用いて消色できることが明らかになった。
【0041】
(比較例1)
アエロジル50とCVLとを同等の重量で混合し、乳鉢ですりつぶしても顕著な発色は得られない。しかしながら、トルエンを加えると急に発色した。この状態でよく混合し、乾燥するまで混合したところ、非常に濃い青色の発色体が得られた。この発色体は、水、アセトンといった溶剤で消色することはできるが、溶剤が蒸発すると発色状態は元に戻ることが確認された。
【0042】
(比較例2)
アエロジル/Blue203(1/1)発色体にアセトンを加えると、蒸発するまでの間は白色の粉体になる。このアエロジル50/Blue203(1/1)の発色体(粉体濃度0.85)0.5gに、0.5gのコール酸を加えて乳鉢で混合した。混合後の粉体の粉体濃度を測定したところ、白色粉体が混入した影響で0.6となった。
【0043】
ここにアセトンを加えて乾燥するまで混合した後、粉体濃度を再度測定した。その値は0.52であり、消色が行なわれなかった。コール酸は消色剤として知られているが、アエロジル/Blue203の系には効果がない。
【0044】
コール酸を、アミン類としてのトリエチルアミンに変更した以外は同様の手法により、実験を行なった。その結果、発色体を永続的に消色する消色の固定効果がないことがわかった。すなわち、発色体は一時的に消色されるものの、その後、復活して元に戻った。
【0045】
(実験例2)
0.1gのブルーの発色体(A50/Blue203およびA200/Blue203;重量比率1/1)を4ccのトルエンに分散し、0.1gのポリスチレン・ブタジエン(10%)共重合体を加えて1時間攪拌して、インキを調製した。得られたインキを、スポイトで紙に塗布して画像を形成した。画像濃度は1.12であった。乾燥後の画像に200℃のアイロンを当てて加熱したところ、変化はほとんど生じなかった。
【0046】
同様の画像にアセトンを滴下した場合には、即座に消色されたが、乾燥後、色が少し戻りうすく着色した状態で安定となった。消色操作後の画像濃度は、0.51であった。
【0047】
同等の濃さの画像にシランカップリング剤Z6040を直接滴下して、乾燥させた。その結果、画像は消色されて、画像濃度は、0.2から0.25まで減少した。このとき、画像周辺のやや濃い部分は消色性が悪かった。
【0048】
やや薄めの0.58から0.68の画像濃度のもので同様に消色実験を行なったところ、画像濃度は0.16から0.17の間まで減少した。このように、画像に原液を直接塗布した場合も、消色の効果があることがわかった。
【0049】
(実施例3)
前述と同様のA200/Blue203(1:1)の発色体(粉体濃度1.1)0.5gを、ビーカーに収容し、0.25mlのシランカップリング剤と2mlの水とを加えて50℃に加熱した。その結果、脱色することが確認された。乾燥後、乳鉢でよくすり潰して粉体濃度を測定した。シランカップリング剤としては、Z6040、トリメトキシシラン、およびメチルトリメトキシシランを用いた。また、前述と同様のA50/Blue203(1/1)の発色体(粉体濃度0.85)0.5gについても、同様の手法により脱色を行なって、粉体濃度を調べた。その結果を、下記表1にまとめる。
【表1】

【0050】
すでに説明したとおり、Z6040は、トリメトキシ基のシランカップリング剤である。表1の結果から、シランカップリング剤について、次のように考察される。シランカップリング剤におけるアルコキシ基としてのメトキシ基は、数が多いほうが消色率が大きい。また、単純なもの、具体的にはすべて同じメトキシ基より、エポキシ基が含まれる構造であっても消色することが可能である。
【0051】
上述したように、溶剤、樹脂などと混合することでインキを構成することができるので、これを用いて、ペンやマーカーなどの筆記具のほか、インクジェットプリンター用のインキも構成することができる。
【0052】
また、オフセットインキやグラビアインキ、フレキソインキのようなインキを構成することが可能である。アエロジルのようなシリカとしては、平均粒子径がμm以下のものを選ぶことによって、上述したようなインキ類を構成することが可能である。
【0053】
こうしたインキによる印刷物や筆記物を消色するためには、これらを集めた専用の紙再生プラントの中で、以下のような工程を準備すればよい。すなわち、紙を解く工程に続いて粉砕する工程があるのが通常であるが、この後の熟成工程の部分で前述したシランカップリング剤に相当するものを必要量投入すれば消色が完結する。したがって、紙再生プラントなどに、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含む材料を投入することによって、インキの発色状態の消色が完結する。
【0054】
その結果、引き続いて行なわれる脱墨工程や漂白工程を大幅に軽減することができる。すなわち、紙の再生工場などで資材やエネルギーを大幅に軽減でき、その工業的価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】重量比(アエロジル/色素)と粉体濃度との関係を示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性シリカの表面に電子供与性の呈色性化合物を直接反応させることで発色させた発色体に対して、
アルコキシ基が結合したシリコン原子を含む消色材料を接触させて、前記発色体を消色することを特徴とする消色方法。
【請求項2】
前記電子供与性の呈色性化合物は、フルオラン型ロイコ色素であることを特徴とする請求項1に記載の消色方法。
【請求項3】
前記電子供与性の呈色性化合物は、クリスタルバイオレットラクトンであることを特徴とする請求項1に記載の消色方法。
【請求項4】
電子供与性の呈色性化合物が活性シリカ表面に直接反応してなる発色体を消色する材料であって、アルコキシ基が結合したシリコン原子を含むことを特徴とする消色材料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−239904(P2008−239904A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85956(P2007−85956)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】