説明

消防用ポンプ装置

【課題】大容量の取水及び送水が可能な消防用ポンプ装置を提供すること。
【解決手段】車輌に搭載されたエンジンと、このエンジンによって駆動されるメインポンプと、前記車輌に搭載されるとともに、取り外して水中に投入可能な取水ポンプと、車輌エンジンによって駆動される取水ポンプのための油圧駆動系と、前記取水ポンプを車輌から降ろして水中に投入したり、水中から引き上げるためのクレーンアームと、前記取水ポンプとメインポンプの間を接続するホース及び取水ポンプに使用する油圧ホースを巻回収納するホースリールとを備え、前記メインポンプとホースで接続された取水ポンプを前記クレーンアームで水中に投入するとともに、前記油圧駆動系によって取水ポンプを駆動してメインポンプに給水するので、大容量の取水及び送水が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油コンビナート等の大規模なタンク火災が発生した場合に、いち早く現場に駆けつけて、泡消火用の大量の水または海水を短時間に供給することのできる消防用ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、石油コンビナートや化学コンビナートにおける大規模火災を想定して、大容量の消防用ポンプ装置が要望されております。
しかし、このような大容量の水源として、既存の消火栓等では不充分な場合が多く、多量の消火水の確保が困難であった。そこで、大量に存在する海水や湖水の利用が考慮されるが、消防用ポンプ装置の設置位置と取水面(海面)までの距離が長く、どうしても吸水高さが大きくなる場合が多かった。理論上、消防用ポンプの呼び水は真空ポンプにて呼び水をする場合に、吸水長が10m程度、吸水高さが7m程度を越えると呼び水が難しかった。
そこで、消防用ポンプを何段か直列に接続して中継運転する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。これは、火災現場から水源までの距離が長い場合に効果的である。
【特許文献1】特開平9−154974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような構成の従来の消防ポンプを中継運転する方法にあっては、火災規模が小さい場合に効果的であるが、石油コンビナート等の大規模なタンク火災が発生した場合に、いち早く現場に駆けつけて、大量の水(例えば、2万L/min)を短時間に供給するには適していなかった。また、各消防ポンプを複数使用して中継、送水する時の各消防ポンプの圧力調整を問題無く緊急の火災現場で操作するのは、困難であった。更に、大容量の取水を行う場合、取水口の管理を適切に行わないと、空気を吸い込んだり、吸水管内でキャビテーションが発生してインペラー等を損傷させる虞れが存在した。
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、取水口から確実に吸水できるとともに、吸水管内でキャビテーションを発生させることなく、大量の水を短時間に供給することのできる消防用ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は車輌に搭載されたエンジンと、このエンジンによって駆動されるメインポンプと、前記車輌に搭載されるとともに、取り外して水中に投入可能な取水ポンプと、車輌エンジンによって駆動される取水ポンプのための油圧駆動系と、前記取水ポンプを車輌から降ろして水中に投入したり、水中から引き上げるためのクレーンアームと、前記取水ポンプとメインポンプの間を接続するホース及び取水ポンプに使用する油圧ホースを巻回収納するホースリールとを備え、前記メインポンプとホースで接続された取水ポンプを前記クレーンアームで水中に投入するとともに、前記油圧駆動系によって取水ポンプを駆動してメインポンプに給水することを特徴としている。
【0005】
また、本発明において、前記取水ポンプは、水中に於いて自重を支えるとともに、取水ポンプの取水口が所定の水面下に位置する浮き部材を備えたことを特徴とするものである。
また、本発明において、前記取水ポンプは、取水口をポンプ本体の下端部側面に配設したことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明において、前記取水ポンプは、上端に向かって断面積の減少した浮き部材を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0008】
請求項1に記載の発明では、車輌に搭載されたエンジンと、このエンジンによって駆動されるメインポンプと、前記車輌に搭載されるとともに、取り外して水中に投入可能な取水ポンプと、車輌エンジンによって駆動される取水ポンプのための油圧駆動系と、前記取水ポンプを車輌から降ろして水中に投入したり、水中から引き上げるためのクレーンアームと、前記取水ポンプとメインポンプの間を接続するホース及び取水ポンプに使用するホースを巻回収納する油圧ホースリールとを備え、前記メインポンプとホースで接続された取水ポンプを前記クレーンアームで水中に投入するとともに、前記油圧駆動系によって取水ポンプを駆動してメインポンプに給水するので、取水ポンプの取水口から確実に吸水できるとともに、吸水管内でキャビテーションを発生させることなく、大量の水を短時間にメインポンプから供給することができる。
【0009】
また、本発明では、前記取水ポンプは、水中に於いて自重を支えるとともに、取水ポンプの取水口が所定の水面下に位置するために浮き部材上端に向かって断面積の減少した浮き部材を備えたので、取水ポンプの取水口から空気を吸い込んだりすることなく、確実に大量の水を供給できる。
【0010】
また、本発明では、前記取水ポンプは、取水口をポンプ本体の下端部側面に配設したので、取水ポンプが揺動しても空気を吸い込んだりすることなく、確実に大量の水を供給することができる。また、本発明では、前記取水ポンプは上端に向かって断面積の減少した浮き部材を備えたので、取水ポンプが揺動しても取水口が所定の水面下に位置して、空気を吸い込んだりすることなく、確実に大量の水を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、車輌に搭載されたエンジンによって駆動されるメインポンプと、取り外して水中に投入可能な取水ポンプと、車輌エンジンによって駆動される取水ポンプのための油圧駆動系とを備え、前記メインポンプとホースで接続された取水ポンプを油圧駆動してメインポンプに給水するので、取水ポンプの取水口から確実に吸水できるとともに、吸水管内でキャビテーションを発生させることなく、大量の水を短時間に取水ポンプから供給することができる。
【実施例1】
【0012】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る消防用ポンプ装置の一実施の形態を示す側面図、図2は本発明の消防用ポンプ装置の平面図である。ここで、消防用ポンプ装置10は、消防ポンプ車等の車輌に搭載されたエンジン11と、このエンジン11によって駆動されるメインポンプ12と、車輌に搭載されるとともに、取り外して水中に投入可能な取水ポンプ13と、車輌エンジン26によって駆動される取水ポンプ13のための油圧駆動系14と、車輌エンジン26を車輌から降ろして水中に投入したり、水中から引き上げるためのクレーンアーム15と、前記取水ポンプ13とメインポンプ12の間を接続するホース16及びメインポンプに使用するホース17を巻回収納するホースリール18とを備えている。
【0013】
消防ポンプ車等の車輌には、前端側面に取水ポンプ13、13が容易に取り出せる位置に収納されている。メインポンプ12は、エンジン11により駆動され大量の水を給送することができる。クレーンアーム15は、車輌の後端に取り付けられており、車輌エンジン26によって駆動される油圧機構に作動する。クレーンアーム15は、取水ポンプ13を車輌から降ろしたり、海中や水中に設置するために使用することができる。
【0014】
図3は、本発明の消防用ポンプ装置における主ポンプを示す正面図、図4は主ポンプを示す平面図である。エンジン11とメインポンプ12はカップリング20を介して接続されており、基台21の上に搭載されている。また、エンジン11には、排気音を消音するマフラー19が取り付けられている。
【0015】
図5は、本発明の消防用ポンプ装置における取水ポンプの正面図、図6は、取水ポンプの側面図である。取水ポンプ13は、水中に於いて自重を支えるとともに、取水ポンプ13の取水口22が所定の水面下に位置する浮き部材23を備えている。また、浮き部材23は、上端に向かって断面積の減少した一側面から見てほぼ台形に形成されている。取水口22は、ポンプ本体の下端部側面に配設されている。更に、取水ポンプ13には、ホースを取り付けるための取り付け口24が形成されている。また、取水ポンプ13の底面には、移動用のキャスター25が取り付けられている。そして、取水ポンプ13は、水中に投入した場合、Lの位置まで水没するように浮き部材23の浮力が調整されている。
【0016】
図7は、本発明の消防用ポンプ装置における取水ポンプの油圧系統図である。車輌エンジン26によって油圧ポンプ70が駆動され、オイルタンク71内の作動油を加圧して取水ポンプ13に配設された油圧モータ72へ給油する。油圧モータ72を回転駆動した作動油はフィルター73を介してオイルタンク71へ返還される。
【0017】
次に、以上のように構成された消防用ポンプ装置10の使用方法について説明する。先ず、図8に示すように取水ポンプ13の取り付け口24にホースリール18から取り外したホース16を接続しクレーンアーム15で海中に設置する。また、エンジン11及びメインポンプ12は、陸上に設置する。取水ポンプ13は、車輌エンジン26によって駆動される油圧駆動系によって駆動され、海水を多量に取水してホース16を介してメインポンプ12に供給する。メインポンプ12は、エンジン11に駆動されて大量の海水をホース17を介して給送することができる。このように、本発明の消防用ポンプ装置では、取水ポンプ13によって取水した後、メインポンプ12で給送するので、吸水のための揚程を必要とすることなく、大量の水を給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係る消防用ポンプ装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図2は、同消防用ポンプ装置の平面図である。
【図3】図3は、同消防用ポンプ装置における主ポンプを示す正面図である。
【図4】図4は、同主ポンプを示す平面図である。
【図5】図5は、同消防用ポンプ装置における取水ポンプの正面図である。
【図6】図6は、同取水ポンプの側面図である。
【図7】図7は、同消防用ポンプ装置における取水ポンプの油圧系統図である。
【図8】図8は、同消防用ポンプ装置の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 消防用ポンプ装置
11 エンジン
12 メインポンプ
13 取水ポンプ
14 油圧駆動系
15 クレーンアーム
16 ホース
17 ホース
18 ホースリール
19 マフラー
20 カップリング
22 取水口
23 浮き部材
24 取り付け口
25 キャスター
26 車輌エンジン
70 油圧ポンプ
71 オイルタンク
72 油圧モータ
73 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載されたエンジンと、
このエンジンによって駆動されるメインポンプと、
前記車輌に搭載されるとともに、取り外して水中に投入可能な取水ポンプと、
車輌エンジンによって駆動される取水ポンプのための油圧駆動系と、
前記取水ポンプを車輌から降ろして水中に投入したり、水中から引き上げるためのクレーンアームと、
前記取水ポンプとメインポンプの間を接続するホース及び取水ポンプに使用する油圧ホースを巻回収納するホースリールとを備え、
前記メインポンプとホースで接続された取水ポンプを前記クレーンアームで水中に投入するとともに、前記油圧駆動系によって取水ポンプを駆動してメインポンプに給水することを特徴とする消防用ポンプ装置。
【請求項2】
前記取水ポンプは、水中に於いて自重を支えるとともに、取水ポンプの取水口が所定の水面下に位置する浮き部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の消防用ポンプ装置。
【請求項3】
前記取水ポンプは、取水口をポンプ本体の下端部側面に配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の消防用ポンプ装置。
【請求項4】
前記取水ポンプは、上端に向かって断面積の減少した浮き部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の消防用ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291289(P2009−291289A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145586(P2008−145586)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(391043240)日本機械工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】