説明

液位センサ

【課題】本発明は、ヒーターの通電直後から容器内の液位を正確に検出することが可能な応答性に優れた液位センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の液位センサは、第2のハーフブリッジ回路における第2の上位側サーミスタ19および第1のハーフブリッジ回路における第1の下位側サーミスタ18の近傍に位置してヒーターを設けたものであり、第2の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタが水没せず、空気中にある場合には、ヒーターの通電加熱直後からサーミスタの抵抗値が変化することになり、ヒーターの通電直後から容器内の液位を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動車のエンジンのオイルパンや、燃料タンク、スチーム型電子レンジ等に使用される容器内に入れられた液体の液量を検出する液位センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の液位センサは、図7、図8に示すように構成されていた。
【0003】
図7は従来の液位センサを支持アームに取り付けた状態を示す斜視図、図8は同液位センサにおける絶縁基板の上面図である。
【0004】
図7、図8において、1はポリイミドで構成された絶縁基板、2はサーミスタで、このサーミスタ2は前記絶縁基板1の側面に上方から下方にわたって設けられている。3はヒーターで、このヒーター3は前記絶縁基板1の側面に上方から下方にわたって前記サーミスタ2の両側に位置して並設されている。4は一対のガイドバーで、このガイドバー4は前記絶縁基板1を立設するように固定している。5は一対の支持アームで、この支持アーム5は、前記一対のガイドバー4が並設されるようにガイドバー4の上下を固定している。6は把持部で、この把持部6は前記一対の支持アーム5を固定している。
【0005】
以上のように構成された従来の液位センサについて、次にその動作を図面を参照しながら説明する。
【0006】
液体を内側に入れた容器(図示せず)の外側面に、把持部6を手に持って容器(図示せず)に向って押し付け、かつガイドバー4が容器(図示せず)に密着するように液位センサを固定する。そして、この固定状態において、ヒーター3を通電加熱して容器(図示せず)の表面から熱伝達を行い、容器(図示せず)の温度をサーミスタ2によって抵抗値の変化として測定するものである。この場合、容器(図示せず)の内部に液体が接するか否かによって、容器(図示せず)の表面の温度が変化するため、サーミスタ2の抵抗値変化を測定することにより、容器(図示せず)の内側に充填した液体の液面を検出することができるものである。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−349765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の液位センサにおいては、ヒーター3を通電加熱して容器(図示せず)の表面から熱伝達を行い、そしてこの容器(図示せず)の温度をサーミスタ2によって抵抗値の変化として測定していたため、ヒーター3の通電直後は、容器(図示せず)に熱が完全に伝わらないことになり、これにより、容器内の液位を正確に測定できないという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、ヒーターの通電直後から容器内の液位を正確に検出することが可能な応答性に優れた液位センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、上面に電源電極、第1の出力電極、第2の出力電極およびGND電極を設け、かつ立設されたフィルム状の絶縁基板と、この絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記電源電極、第1の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第1のハーフブリッジ回路を構成する第1の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタと、前記絶縁基板の上面に前記第1のハーフブリッジ回路と並設するように設けられ、かつ前記電源電極、第2の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第2のハーフブリッジ回路を構成する第2の上位側サーミスタおよび第2の下位側サーミスタとを備え、前記第2のハーフブリッジ回路における第2の上位側サーミスタおよび前記第1のハーフブリッジ回路における第1の下位側サーミスタの近傍に位置してヒーターを設けたもので、この構成によれば、第2のハーフブリッジ回路における第2の上位側サーミスタおよび第1のハーフブリッジ回路における第1の下位側サーミスタの近傍に位置してヒーターを設けているため、第2の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタが水没せず、空気中にある場合には、ヒーターの通電加熱直後からサーミスタの抵抗値が変化することになり、これにより、ヒーターの通電直後から容器内の液位を検出することができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の液位センサは、上面に電源電極、第1の出力電極、第2の出力電極およびGND電極を設け、かつ立設されたフィルム状の絶縁基板と、この絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記電源電極、第1の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第1のハーフブリッジ回路を構成する第1の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタと、前記絶縁基板の上面に前記第1のハーフブリッジ回路と並設するように設けられ、かつ前記電源電極、第2の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第2のハーフブリッジ回路を構成する第2の上位側サーミスタおよび第2の下位側サーミスタとを備え、前記第2のハーフブリッジ回路における第2の上位側サーミスタおよび前記第1のハーフブリッジ回路における第1の下位側サーミスタの近傍に位置してヒーターを設けているため、第2の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタが水没せず、空気中にある場合には、ヒーターの通電加熱直後からサーミスタの抵抗値が変化することになり、これにより、ヒーターの通電直後から容器内の液位を検出することが可能な応答性に優れた液位センサを提供することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態における液位センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態における液位センサの上面図、図2は同液位センサの側断面図、図3は同液位センサの絶縁基板におけるサーミスタおよび回路パターンを示す上面図である。
【0015】
図1〜図3において、11はポリイミドからなる樹脂系材料によりフィルム状に構成された絶縁基板で、この絶縁基板11の長手方向の一端側にはAgからなる電源電極12,第1の出力電極13、第2の出力電極14およびGND電極15を設けている。16はポリイミドからなる樹脂とMn、Co、Niを含有する金属酸化物とカーボンとの混合物からなる第1の上位側サーミスタで、この第1の上位側サーミスタ16は前記絶縁基板11の上面に設けられるとともに、一端を回路パターン17を介して前記電源電極12と電気的に接続するとともに、他端を回路パターン17を介して第1の出力電極13と電気的に接続している。
【0016】
18は前記第1の上位側サーミスタ16と同一の材料からなる第1の下位側サーミスタで、この第1の下位側サーミスタ18は前記絶縁基板11の上面に前記第1の上位側サーミスタ16と離間して設けられるとともに、一端を前記第1の出力電極13に回路パターン17を介して電気的に接続し、かつ他端をGND電極15に電気的に接続している。19は前記第1の上位側サーミスタ16と同一の材料からなる第2の上位側サーミスタで、この第2の上位側サーミスタ19は前記絶縁基板11の上面に前記第1の上位側サーミスタ16と略同一の高さに並設して設けられるとともに、一端を前記電源電極12に電気的に接続し、かつ他端を第2の出力電極14に電気的に接続している。20は前記第1の上位側サーミスタ16と同一の材料からなる第2の下位側サーミスタで、この第2の下位側サーミスタ20は前記絶縁基板11の上面に前記第2の上位側サーミスタ19と離間して設けられるとともに、一端を前記第2の出力電極14に回路パターン17を介して電気的に接続し、かつ他端をGND電極15に電気的に接続している。そして、前記電源電極12、第1の出力電極13、GND電極15、第1の上位側サーミスタ16および第1の下位側サーミスタ18により、図5に示すように、第1のハーフブリッジ回路21を構成している。
【0017】
また、これと同様に、前記電源電極12、第2の出力電極14、GND電極15、第2の上位側サーミスタ19および第2の下位側サーミスタ20により第2のハーフブリッジ回路22を構成している。そしてまた、前記第1の上位側サーミスタ16、第2の上位側サーミスタ19、第1の下位側サーミスタ18、第2の下位側サーミスタ20は樹脂系材料によりフィルム状に構成されているものである。
【0018】
23は絶縁層で、この絶縁層23は前記絶縁基板11の上面に設けた第1の上位側サーミスタ16、第2の上位側サーミスタ19、第1の下位側サーミスタ18、第2の下位側サーミスタ20および回路パターン17の上面を覆うように設けられている。24はヒーターで、このヒーター24は前記絶縁層23の上面に第1の下位側サーミスタ18および第2の上位側サーミスタ19の近傍に位置して蛇行するように設けられているとともに、回路パターン17を介して前記絶縁基板11の上面に設けたAgからなるヒーター電極25に電気的に接続されている。26は保護層で、この保護層26は前記ヒーター24の上面を覆うように設けられている。
【0019】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における液位センサについて、次にその組立方法を説明する。
【0020】
まず、ポリイミドで構成された絶縁基板11の上面における電源電極12、第1の出力電極13、第2の出力電極14、GND電極15および回路パターン17を設ける位置に、厚膜印刷工法によりAgペーストを印刷した後、約250℃で約30分間焼成することにより、絶縁基板11の上面に電源電極12、第1の出力電極13、第2の出力電極14、GND電極15および回路パターン17を形成する。
【0021】
次に、絶縁基板11および回路パターン17の上面における第1の上位側サーミスタ16、第1の下位側サーミスタ18、第2の上位側サーミスタ19および第2の下位側サーミスタ20を設ける位置に厚膜NTC素子のペーストを印刷した後、約270℃で約2時間焼成することにより、絶縁基板11および回路パターン17の上面に第1の上位側サーミスタ16、第1の下位側サーミスタ18、第2の上位側サーミスタ19および第2の下位側サーミスタ20を形成する。
【0022】
次に、前記絶縁基板11、回路パターン17、第1の上位側サーミスタ16、第1の下位側サーミスタ18、第2の上位側サーミスタ19および第2の下位側サーミスタ20の上面に絶縁層ペーストを印刷した後、紫外線を照射して硬化させることにより、絶縁層23を形成する。
【0023】
次に、前記絶縁層23の上面で、第1の下位側サーミスタ18および第2の上位側サーミスタ19の近傍にヒーターペーストを印刷した後、約150℃で約30分間焼成することにより、絶縁層23の上面にヒーター24を形成する。
【0024】
最後に、前記絶縁基板11およびヒーター24の上面に保護層ペーストを印刷した後、紫外線を照射して硬化させることにより、絶縁基板11およびヒーター24の上面に保護層26を形成する。
【0025】
以上のようにして組み立てられた本発明の一実施の形態における液位センサについて、次にその動作を図面を参照しながら説明する。
【0026】
図4に示すように、予めチーム型電子レンジ(図示せず)に使用される熱伝導性のプラスチックからなる容器27に水28を満たした後、この容器27の外側面に液位センサを立設するように接着剤で貼り付けて取り付ける。
【0027】
また、液位センサにおける電源電極12、第1の出力電極13、第2の出力電極14、GND電極15、ヒーター電極25をコネクタ30に固定する。この場合、液位センサにおける電源電極12およびGND電極15は予め5Vの電源と接続されており、初期状態では、第1の出力電極13および第2の出力電極14は2.5Vに設定されている。そしてまた、図5に示すように、第1のハーフブリッジ回路21における第1の出力電極13を比較器32における反転端子33に接続するとともに、第2のハーフブリッジ回路22における第2の出力電極14を非反転端子34に電気的に接続している。一方、絶縁基板11におけるヒーター電極25に電圧を印加することにより、ヒーター24を発熱させる。
【0028】
このような状態において、プラスチックからなる容器27内の水28がスチーム型電子レンジ(図示せず)の使用により減少していく場合を考えて見ると、液位が満水である初期状態のレベル3の場合は、第1の上位側サーミスタ16、第2の上位側サーミスタ19、第1の下位側サーミスタ18および第2の下位側サーミスタ20の全てが水没している。したがって、第1の下位側サーミスタ18および第2の上位側サーミスタ19の周囲の温度は約26℃となり、また、第1の上位側サーミスタ16および第2の下位側サーミスタ20の温度は約25℃となる。それゆえに、初期状態では、図6(a)に示すように、第2の出力電極14の出力電圧が第1の出力電極13の出力電圧よりも若干高いものの略等しくなるため、図6(b)に示すように、比較器32からの出力信号は略零となる。
【0029】
次に、プラスチックからなる容器27内の水28が減少して液面が第2の上位側サーミスタ19と第2の下位側サーミスタ20との間および第1の上位側サーミスタ16と第1の下位側サーミスタ18との間に位置するレベル2になった場合は、第2の上位側サーミスタ19の周囲温度は、ヒーター24により加熱されて約35℃となり、抵抗値が低下する。一方、第1の下位側サーミスタ18は水没しているため、ヒーター24により加熱された熱が奪われ、約26℃となる。また、第1の上位側サーミスタ16および第2の下位側サーミスタ20の周囲の温度は約25℃となる。従って、図6(c)に示すように、第2の出力電極14の出力電圧は高くなり、比較器32からの出力信号が図6(d)に示すように高くなる。
【0030】
次に、プラスチックからなる容器27内の水28がさらに減少して液面が第1の下位側サーミスタ18および第2の下位側サーミスタ20の下側に位置するレベル1になった場合は、第1の下位側サーミスタ18および第2の上位側サーミスタ19の周囲の温度はヒーター24により加熱されて、約35℃となり、抵抗値が低くなる。一方、第1の上位側サーミスタ16および第2の下位側サーミスタ20の周囲の温度は約25℃となる。従って、図6(e)に示すように、第2の出力電極14の出力電圧は高くなり、一方、第1の出力電極13の出力電圧は低くなる。ゆえに、図6(f)に示すように、比較器32からの出力信号は最大に高くなる。
【0031】
ここで、ヒーター24を通電加熱した直後の液位センサの動作について考えて見ると、本発明の一実施の形態における液位センサにおいては、第2の上位側サーミスタ19および第1の下位側サーミスタ18の近傍に位置してヒーター24を設けているため、第2の上位側サーミスタ19および第1の下位側サーミスタ18が水没せず、空気中にある場合には、ヒーター24の通電加熱直後から第1の下位側サーミスタ18および第2の上位側サーミスタ19の抵抗値が変化することになり、これにより、ヒーター24の通電直後から容器27内の液位を検出することができるという効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る液位センサは、ヒーターの通電直後から容器内の液位を検出することが可能な応答性に優れた液位センサを提供することができるという効果を有するものであり、特に自動車のエンジンのオイルパンや、燃料タンク、スチーム型電子レンジ等に使用される容器内に入れられた液体の液量を検出する液位センサとして有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態における液位センサの上面図
【図2】同液位センサの側断面図
【図3】同液位センサの絶縁基板におけるサーミスタおよび回路パターンを示す上面図
【図4】同液位センサをスチーム型電子レンジのプラスチックからなる容器に貼り付けて取り付けた状態を示す側断面図
【図5】同液位センサを出力検出回路に接続した状態を示す回路図
【図6】同液位センサの動作する状態を示す図
【図7】従来の液位センサの斜視図
【図8】同液位センサにおけるシートの上面図
【符号の説明】
【0034】
11 絶縁基板
12 電源電極
13 第1の出力電極
14 第2の出力電極
15 GND電極
16 第1の上位側サーミスタ
18 第1の下位側サーミスタ
19 第2の上位側サーミスタ
20 第2の下位側サーミスタ
21 第1のハーフブリッジ回路
22 第2のハーフブリッジ回路
24 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電源電極、第1の出力電極、第2の出力電極およびGND電極を設け、かつ立設されたフィルム状の絶縁基板と、この絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記電源電極、第1の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第1のハーフブリッジ回路を構成する第1の上位側サーミスタおよび第1の下位側サーミスタと、前記絶縁基板の上面に前記第1のハーフブリッジ回路と並設するように設けられ、かつ前記電源電極、第2の出力電極、GND電極と電気的に接続されることにより第2のハーフブリッジ回路を構成する第2の上位側サーミスタおよび第2の下位側サーミスタとを備え、前記第2のハーフブリッジ回路における第2の上位側サーミスタおよび前記第1のハーフブリッジ回路における第1の下位側サーミスタの近傍に位置してヒーターを設けた液位センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−74959(P2009−74959A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244840(P2007−244840)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】