説明

液体の噴霧システム及び液体の噴霧方法

【課題】噴霧終了時における噴霧ノズルからの液だれ現象を容易かつ確実に防止できる噴霧システムを提供すること。
【解決手段】液体を加圧することで霧を形成する噴霧ノズル(14)を用いる噴霧システムであって、液体への加圧停止後に、液体の圧力が第1の圧力値まで降圧したときに作動する残圧排出弁(16)と、この残圧排出弁(16)の作動時又は作動後に、配管(15)を大気と連通させる開放弁(17)と、噴霧ノズル(14)内に設けられ、残圧排出弁(16)の作動後に、液体の圧力が第2の圧力値まで降圧したときに噴霧ノズル(14)への液体の供給を停止させるように作動するチェックバルブ(144)と、を少なくとも備える噴霧システム(1)とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の噴霧システム及び噴霧方法に関する。より詳しくは、噴霧ノズルの液だれ現象を防止できる噴霧技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴霧する技術は、加湿、消臭・脱臭、除菌・殺菌、リラクゼーション等を目的として幅広く用いられている。そして、前記液体を加圧することで噴霧ノズルのノズル噴霧孔から前記液体を噴霧する手法が用いられている。
【0003】
液体を噴霧する際、噴霧ノズルからの液だれ現象をいかに防ぐかについて常に考えられてきた問題である。これに関してこれまでは通常、噴霧ノズルの内部にチェックバルブ(チャッキ弁)を設け、所定圧まで降圧したら噴霧防止する構造等が用いられている。例えば、球体と弾性体によって構成されるチェックバルブにあっては、この弾性体が作動することで球体を弁体に押圧することで液体の噴霧を防止する構造が用いられている。
【0004】
また、粘性流体の塗布ノズルに関するものとして、塗布ノズルを、シリンジと連通する管体と吐出部とで構成し、吐出部内に弁座と弁体とスプリングより構成される吐出制御弁を内蔵したものが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−79473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の噴霧ノズルを用いた噴霧技術では、噴霧終了時に噴霧ノズルからの液だれが発生してしまうという問題を十分に解決することができなかった。噴霧を終了させるべく液体への加圧を停止した後であっても、ノズル噴霧孔からの液体の噴霧が即座に停止されずに、流径が大きすぎる粗大霧や、ひどい場合には水鉄砲状の放水となったり、更には水滴となってボタ落ちしてしまう現象等が起こってしまう。
【0007】
また、噴霧ノズルに用いるチェックバルブの作動圧を高くすることも考えられるが、実際に作動圧が高いチェックバルブを大量生産することは製造面からしてみれば容易ではない。また、作動圧の高いチェックバルブを用いたとしても、液だれ現象の防止は不十分だった。
【0008】
そこで、本発明は、噴霧終了時における噴霧ノズルからの液だれ現象を容易かつ確実に防止できる噴霧システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、噴霧ノズルや配管の内部に残留する液体が、液だれ現象の主な原因であることに着目した。そして、これら残留液体をいかにして排除し得るかについて鋭意研究したところ、加圧停止後の残圧の排出条件や、チェックバルブ等によるノズル噴霧孔への液体供給の停止条件等が重要であり、加えて開放弁を設けるという新規着想を得て、以下の本発明を完成させた。
まず、本発明は、液体を加圧することで霧を形成する噴霧ノズルを用いる噴霧システムであって、液体への加圧停止後に、液体の圧力が第1の圧力値まで降圧したときに作動する残圧排出弁と、残圧排出弁の作動時又は作動後に、配管を大気と連通させる開放弁と、噴霧ノズル内に設けられ、残圧排出弁の作動後に、液体の圧力が第2の圧力値まで降圧したときに噴霧ノズルへの液体の供給を停止させるチェックバルブと、を少なくとも備える噴霧システムを提供する。残圧排出弁が作動することで残圧を排出して、開放弁が作動することで大気開放させ、その後に噴霧ノズル内のチェックバルブを作動させることで、液だれの原因である残留液体を排除でき、液だれをすることなく確実に噴霧を停止させることができる。なお、前記液体として用いられるものは、噴霧可能な液体であればよく、例えば、水や、その他の種類の液体であってもよい。あるいは、複数の液体を混合したものでもよいし、添加剤等を含む液体であってもよい。
次に、本発明は、残圧排出弁が作動する第1の圧力値は、2.5MPa以上であるように工夫できる。また、チェックバルブが作動する第2の圧力値は、0.7MPa以上であるように工夫できる。かかる作動圧とすることで、より容易かつ確実に噴霧ノズルからの液だれを防止できる。
そして、本発明は、開放弁は、残圧排出弁の作動と連動する噴霧システムを提供する。これにより、加圧停止後の残圧排出と連動して大気開放することができ、速やかにかつ確実に液だれを防止できる。
また、本発明は、噴霧ノズルを複数備え、かつ前記噴霧ノズル同士を連結する配管に開放弁が少なくとも1以上備えられている噴霧システムを提供する。このように、複数の噴霧ノズルを設けた噴霧システムについて、開放弁を少なくとも1以上設けることで、夫々の噴霧ノズルからの液だれを防止できる。
更に、本発明は液体に圧力を加えることで霧を形成する噴霧ノズルを用いて噴霧し、噴霧ノズル内に備えられたチェックバルブにより液体の供給を停止する噴霧方法であって、(1)噴霧を終了させるために加圧を停止する工程、(2)液体の圧力が第1の圧力値まで降圧したときに配管内の残圧を排出し、配管を大気と連通させる工程、(3)液体の圧力が第2の圧力値まで降圧したときに、チェックバルブを作動させることで噴霧ノズルへの液体の供給を停止させる工程を、少なくとも行う液体の噴霧方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴霧終了時における噴霧ノズルからの液だれ現象を容易かつ確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る噴霧システム及び噴霧方法について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明に係わる代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、以下に使用する図面では、説明の便宜上、装置の構成等については簡素化して示している。
【0012】
図1は、本発明に係る噴霧システムの第1実施形態の簡略図である。図2は、同実施形態の噴霧ノズル14の一部の簡略断面図である。図3は、同実施形態の開放弁17の一部の簡略断面図である。図1中の符号1は、本発明に係る噴霧システム1を示している。この噴霧システム1の大きさや装置構成は、本発明の目的に沿う範囲で設計又は変更可能である。なお、噴霧システム1は、水を噴霧する場合の一例であるが、本発明において噴霧する液体は水に限定されるものではない。
【0013】
噴霧システム1は、水槽11と、液体を供給するためのポンプ12と、フローセンサー13と、噴霧ノズル14と、ポンプ12と噴霧ノズル14とを連結する配管15を備えている。噴霧すべき液体は、配管15内で矢印W方向に加圧・送液されることで、噴霧ノズル14から霧Mとして噴霧される。そして、ポンプ12の近傍に残圧排出弁16を、噴霧ノズル14の近傍に開放弁17を、噴霧ノズル14の内部にチェックバルブ144を夫々備えている。
【0014】
本発明では、残圧排出弁16と開放弁17とチェックバルブ144を併せ持っている。そして、残圧排出弁16が作動する圧力値(以下、「第1圧力値」ということがある。)と、チェックバルブ144が作動する圧力値(以下、「第2圧力値」ということがある。)の関係は、少なくとも、第1圧力値>第2圧力値であることを特徴の一とする。そして、残圧排出弁16の作動時又は作動後に、開放弁17が作動することで配管15と大気とを連通させる構造である。以下、噴霧システム1の全体について説明する。
【0015】
水槽11内の液体は配管15を経由してポンプ12へと移送される。液体はポンプ12により所定圧まで加圧されることで霧Mが噴霧される。噴霧システム1における液体の供給方式はいわゆる自吸式であってもよいし、非自吸式であってもよい。また水槽11を用いることに限定されず、水道等から直接給水する方式等であってもよく、使用する環境によって適宜好適な方式を選択することができる。
【0016】
噴霧時の液体への加圧は、適宜、従来公知の加圧手法を採用することができ、ポンプ12の種類については限定されない。例えば、プランジャーポンプ等の加圧ポンプ等を用いることができる。
【0017】
そして、必要に応じて、フローセンサー13を水槽11とポンプ12の間に設けることが望ましい。フローセンサー13は、配管15内に液体が導通しているか否かをセンシングする。配管15内に液体が導通していない場合には、ポンプ12を停止させるように制御することができる。このフローセンサー13を設けることでポンプ12の空運転(いわゆる焼き付き)を防止することができる。
【0018】
ポンプ12により加圧された液体は、配管15を経由して(矢印W参照)、噴霧ノズル14から噴霧される。噴霧ノズル14について、図2を参照しながら説明する。噴霧ノズル14は、筒体140と、ノズル噴霧孔Hを有するチップ142と、チェックバルブ(チャッキ弁)144と、液体をろ過するストレーナー146と、を備えている。このチェックバルブ144は、チップ142の上方に配置されている。また、ストレーナ146は、チェックバルブ144の上方に配置されている。
【0019】
チップ142等の素材は限定されず、適宜、好適な材料をノズル先端部として用いることができる。例えば、耐圧性や耐腐食性等に優れたセラミックス製のチップ等を用いることができる。
【0020】
チェックバルブ144は、ボール1440と、このボール1440を配置する弁座1442と、弾性体1444と、この弾性体1444を配置する止座1446と、を備えている。ボール1440は弾性体1444の付勢により弁座1442に押圧される。これにより、ボール1440が弁座1442に嵌着することで、チェックバルブ144は「閉」の状態となる。従って、図2に示す状態は前記チェックバルブ144が「閉」の状態であり、この状態はチェックバルブが作動した状態である。
【0021】
チェックバルブ144は、弁座1442と、弁座1442に嵌着可能なボール1440と、ボール1440を弁座1442に押圧する弾性体1444と、を有する構造である。チェックバルブ144の構造について、ボール1440や弾性体1444を用いる構造に限定されず、適宜、好適な構造を採用することができる。チェックバルブ144では、ボール1440が弁座1442に嵌着することで、噴霧ノズル14内への液体の流入を防止できる。これにより、噴霧ノズル14の噴霧孔を遮断することができる。
【0022】
この場合、チェックバルブ144の作動圧は弾性体1444の弾性強度に依存するため、弾性体1444の弾性強度を調節することでチェックバルブ144の作動圧を調節することができる。例えば、チェックバルブ144の作動圧を高くするには弾性体1444の弾性強度を強くする必要がある。しかし、その作動圧を数MPa等といった高圧力値とする場合、弾性強度がかなり高い弾性体1444を用いなければならない。しかし、このような高い弾性強度のものは、製造上のばらつきが大きかったり、製造コストがかかりすぎる等といった問題があるため、量産を考慮した実用面では望ましくない場合がある。
【0023】
その点、本発明では、残圧排出弁16や開放弁17を備えることで、チェックバルブ144の作動圧が低くても確実に液だれを防止できる。即ち、チェックバルブ144に用いる弾性強度を必ずしも高くする必要がないため、製造上のばらつきや製造コスト等といった前述の問題等にも資することができる。これについては後述する。
【0024】
そして、噴霧時には液体が矢印Wの方向に加圧・移送されるため、その圧力によってボール1240は弁座1442から下方に押し出される。これによりボール1440と弁座1442との間に隙間が生じて、チェックバルブは「開」の状態になる。この結果、液体が流れ込んでノズル噴霧孔Hから噴霧することができる。また、本発明では、チェックバルブ144の配置構成は限定されず、適宜好適な構成とすることができる。
【0025】
本発明では、チェックバルブ144の構造は、弾性体1444等を用いる構造に限定するものではなく、適宜、従来公知のチェックバルブ構造を採用することができる。本発明のチェックバルブ構造は、噴霧ノズル14内に設けられ、液体の逆流を阻止し得る機能を有するものであればよく、例えば、チャッキ弁、逆止弁等と呼ばれることもある。本発明では、開放弁17等を設けることで、チェックバルブ144の作動圧に影響する弾性体1444の弾性強度が、通常用いる程度の弾性強度であっても、確実に液だれ現象を防止できるという利点を少なくとも有する。
【0026】
配管15について、残圧排出弁16と水槽11の間に環水系配管151を設けてもよい。環水系配管151を設けることで、残圧排出弁17の作動によって吐出される液体を水槽11へ導いて再利用することもできる。
【0027】
残圧排出弁16は、配管15内の残圧を外部に放圧する弁である。より具体的には、噴霧を終了する際にポンプ12の加圧を停止させると、加圧されている水(以下、「加圧水」ということがある。)の圧力が降圧し始める。この加圧水の圧力が所定圧力値(第1圧力値)まで降圧した時に、残圧排出弁16が開弁する。残圧排出弁16が開弁することで、残圧を外部に放圧することができる。この所定圧力値等については後述する。
【0028】
残圧排出弁16は、電磁弁により自動化されていることが望ましいが、本発明では、残圧排出弁16は電磁弁に限定するものではなく、前述の所定圧力値で作動する構造であり、加圧停止後の加圧水の残圧を外部に放圧できるものであればよい。従って、残圧排出弁16としては、例えば、手動弁や、電動弁等の他の自動弁を用いることもできる。
【0029】
より好適には、残圧排出弁16は、加圧に用いるポンプ12の空気溜り(エアー溜り)も排除可能であることが望ましい。噴霧システム1において噴霧を行うにはポンプを始動させる必要がある。ポンプ12を運転させるには、ポンプ12内のシリンダー等に発生する空気溜りを空気抜き弁(図示せず)等によって外部へ排出する必要がある。この操作に関して、本発明では、残圧排出弁16を、ポンプ12の空気抜き弁としても兼用させることができる。残圧排出弁16はポンプ12と噴霧ノズル14の間に設けることが望ましい。その際、残圧排出弁16と水槽11との間に環水系配管151を設けてもよい。
【0030】
残圧排出弁16をポンプ12の空気抜き弁として兼用する場合には、運転開始時の空気抜きに必要な時間だけ開弁する。例えば、ポンプ12の始動後5〜10秒程度の間、残圧排出弁16を開弁させておくように自動化させておくことができる。これにより、運転開始とともに自動的にポンプ12内の空気溜りを排除することができる。
【0031】
更に、本発明では、別途、真空ポンプ等を配管15に接続してもよい。真空ポンプを接続ことでより確実に減圧することができる。
【0032】
開放弁17について、図3を参照しながら説明する。開放弁17は、外筒体171と、この外筒体171と接離可能な内筒体172と、弁体173と、弾性体174と、Oリング175,176と、を備えている。この弁体173側が配管15と連通しており、対向する内筒172側が大気側である。
【0033】
噴霧時等には液体が加圧されているため、配管15内の圧力は正圧(矢印W方向)となる。その圧力によって弁体173が弾性体174を押圧する。更に、弁体173は、内筒体172側へと押され、やがてはOリング17に密着する。これにより、開放弁17は「閉」の状態となる。この結果、配管15内の液体を逆止できる。
【0034】
一方、加圧停止後に配管15内の圧力が低下すれば、弾性体174の付勢等により弁体173は外筒171側へと引き戻される(図3の状態)。特に、残圧排出弁16が作動した場合には、配管15内の圧力は一時的に負圧(矢印A方向)になることが考えられので、弁体173は外筒171側に強く引き戻される。その結果、外筒171と内筒172と弁体173の間にはクリアランスが生じるため、大気と配管15内とが連通した状態となる。これにより、開放弁17は「開」の状態となる。図3は、開放弁17が作動した状態であり、「開」の状態である。
【0035】
更に、開放弁17は、少なくとも残圧排出弁16の作動時又は作動後に作動すればよいが、好ましくは、残圧排出弁16の作動直後に開放弁17が作動することが望ましく、例えば、開放弁17を残圧排出弁16と連動させることで実現することができる。これにより、確実に液だれ防止できるともに、加圧停止後に速やかに噴霧を終了できる。これについては後述する。
【0036】
開放弁17について、より好ましくは、配管15内の圧力が所定圧力値以上のときは配管15の液体の流出(矢印W方向)を防止するように逆止し、配管15内の圧力が所定圧力値未満のときは配管15を大気と連通させる(矢印A方向)ことができる逆止機能付き開放弁であることが望ましい。この所定圧力値は、例えば、開放弁17の弾性体174の弾性強度を調節すること等で適宜設定することができる。従って、開放弁17に水圧がかかった時には液体を逆止し、残圧排出弁16が作動して開放弁17に水圧がかからなくなった時には配管15と大気を連通させるように作動する逆止機能付き開放弁を用いることもできる。
【0037】
以上のような開放弁として実用できる好適な一例としては、例えば、開放弁17の作動圧の下限値が0.1MPa以上である開放弁17が挙げられる。
【0038】
本発明では、開放弁17の構造は、かかる構造に限定するものではなく、適宜、従来公知の構造を採用することができ、例えば、チェックバルブ構造を用いることができる。また、手動弁等の他の自動弁を用いることもできる。
【0039】
本発明では、噴霧される液体の性質・性状についても限定されない。ここでは一例として水を噴霧する場合を例にして説明しているが、例えば、前記液体の比重や粘度や液温等について、噴霧目的や環境等を考慮して、調節・決定することができる。例えば、液体に薬剤等を溶解させて噴霧したり、粘性がある液状の薬剤を噴霧したりすることができる。例えば、水やアルコール等を噴霧してもよいし、種々の薬剤を溶解させた溶液を噴霧してもよい。
【0040】
また、噴霧システム1には、別途、送風手段を噴霧ノズル14の後方に配置して、噴霧ノズル14の後方から送風しながら噴霧することもできる。霧Mは、送風によってより遠方に、かつ正確な位置に噴霧することができる。送風手段は、従来公知の手法を用いることができ、例えば送風機等を用いることもできる。
【0041】
図4は、噴霧システム1の噴霧終了時の説明に供するフロー図である。図5は、噴霧システム1の噴霧終了時の説明に供する概念図である。以下、液体への加圧停止から噴霧終了までについてより詳細に説明する。なお、以下の説明はあくまで本発明に係る噴霧システム及び噴霧方法の一例を説明するものであり、本発明の範囲はこれに限定して解釈されるものではない。
【0042】
まず、噴霧システム1の水への加圧を停止する(図4の符号S1参照)。即ち、圧力Pでポンプ14の加圧を停止した状態である。このとき、加圧は停止したが、加圧水の圧力は依然として高圧である状態である。そして、残圧排出弁16と開放弁17とチェックバルブ144は作動していない。
【0043】
続いて、加圧水の圧力はPから徐々に降圧していく。そして、圧力が第1圧力値Pまで降圧した時に残圧排出弁16が作動する(図4の符号S2−1参照)。残圧排出弁16が作動することで、配管15内の圧力が系外に一気に放圧される。これにより、残圧排出弁16から配管15内の液体が吐出され、循環系配管151を経由して水槽11へと移送されたり、又は系外へ排出される(図5の矢印W2参照)。そして、配管15内に残存する液体も残圧排出弁16に向かって引き込まれる(図5の矢印W1参照)。この引き込みによって配管15内や噴霧ノズル14内に残留する液体は矢印W1方向へ引き込まれるものと考えられる。
【0044】
そして、開放弁17が作動する(図4の符号S2−2)。開放弁17は残圧排出弁16の作動と略同時あるいは直後に、開放弁17が作動することが望ましい。更に好ましくは、開放弁17を、残圧排出弁16の残圧排出する作動と連動させることが望ましい。これにより残圧開放弁16の作動直後に開放弁17を開弁させることができるので、残圧排出直後に大気開放を行うことができる。これにより確実に液だれを防止でき、短時間に噴霧を終了できる。
【0045】
残圧排出弁16が作動することで配管15内において矢印W1方向への急激な流れが発生する。これにより配管15内は少なくとも一時的に負圧になると考えられる。この引き込みが起こることで、開放弁17の弁体173は矢印Aの方向に強く引き戻され(図3参照)、大気も開放弁17から配管15内へ引き込まれる(矢印A参照)。
【0046】
続いて、圧力が第2圧力値Pまで降圧した時にチェックバルブ144が作動する(図4の符号S3参照)。チェックバルブ144が作動することで、ノズル噴霧孔への液体の供給を停止することができる。特に、前述した残圧排出弁16と開放弁17を作動させることで、チェックバルブ144の作動圧(第2圧力値P)を高圧に設定せずとも確実に液だれを防止できる。
【0047】
各作動圧をどの程度に設定するかにもよるが、残圧排出弁16が作動してから噴霧が完全に終了するまでの時間(符号S1〜符号S3)は極めて短時間である。従って、一連の工程を極めて短時間に行なうことができるので、噴霧終了後に残圧開放弁が作動すると略同時に噴霧を液だれすることなく停止できる。
【0048】
まず、残圧排出弁16を作動させることで、液だれ現象の原因となり得る噴霧ノズル14内の残留液体を、残圧排出とともに矢印W1方向(図5参照)に引き込むことができる。加えて、開放弁17を作動させることで、配管15を大気と連通させることができ、残留液体をより確実に排出することができる。そして、チェックバルブ144が作動することで、ノズル噴霧孔への液体の供給を停止することができる。従って、加圧停止後に、ノズル噴霧孔Hから液体がだらだらと噴出すること等を防止できる。その結果、ノズル噴霧孔Hの液だれ現象を確実に防止できる。
【0049】
残圧排出弁16が作動する第1圧力値Pは、好適には2.5Ma以上であることが望ましい。
【0050】
即ち、チェックバルブ144が作動することで、加圧停止後の噴霧ノズル14のノズル噴霧孔Hを遮断することが可能となるが、本発明では、チェックバルブ144を作動させる前に、残圧排出弁16と開放弁17を作動させることで、より確実に液だれを防止できる。そして、一流体ノズル等の如く単純な構造であるノズルを用いた場合であっても、効果的に液だれ現象を防止することができる。
【0051】
加えて、本発明では、チェックバルブ144だけでなく残圧排出弁16と開放弁17も設けるため、チェックバルブ144の作動圧を高くする必要がない。即ち、弾性体1244(図2参照)の弾性強度を高くする必要等がない。従来でもノズル噴霧孔Hを遮断するためにチェックバルブを用いていたが、チェックバルブでは十分に液だれを防止することができなかった。そこで、チェックバルブだけで確実に噴霧停止するにはより高い弾性強度の弾性体1244を用いたりしていた。しかし、このような高い弾性強度のバネでも液だれの防止効果について改善の余地があることや、製造上のばらつきが大きいことや、製造コストがかかりすぎる等といった問題があった。これに関して、本発明では、前述のように残圧排出弁16や開放弁17を作動させることで、チェックバルブ144の作動圧が低くても確実に液だれを防止できる。
【0052】
チェックバルブ144が作動する第2圧力値Pは限定されないが、下限値が0.7MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上であることが望ましい。かかる作動圧であれば、液だれをより確実に防止できるとともに、チェックバルブ144に用いる弾性体1244について製造上のばらつきが少ない等といった製造上の利点も併せ持つ。
【0053】
更に、本発明に係る噴霧システム1では、本発明の効果の範囲内で、適宜、噴霧条件を決定でき、圧力Pの圧力値等について適宜調節することができる。例えば、霧Mの粒子径をより小さくしたり、噴霧流量を増加させたりする場合には、本発明の範囲内で、加圧する圧力Pをより高圧に設定することもできる。また、霧Mの粒子径を小さくすることで、人体や各種部材等に付着しても濡れることが少ない微細な霧Mとすることができる。
【0054】
そして、この圧力Pの好適な圧力値としては、9.8MPa以下であることが望ましい。一例として、現状の噴霧技術を参酌すれば、9.8MPaを越えると、噴霧システム1に構造上の負荷がかかりすぎるため経済的に好ましいものとは言えなくなる。
【0055】
従来から、噴霧ノズルへの液体供給を遮断するためにチェックバルブ等を備えた噴霧システム等は用いられてはいたが、チェックバルブを設けただけでは前述の液だれ現象を防止することは困難であった。従来では、液体の噴霧終了後からチェックバルブ作動時までの間に、圧力が徐々に降圧する。その間は、液体を微細霧化するための十分な圧力が加圧されていない状態でありながら、噴霧ノズル内や配管内等に残存する液体がノズル噴霧孔から放射してしまっていた。その結果、粒径が大きすぎる粗大霧や、水滴や、ボタ落ちや、水鉄砲状放水となっていた。
【0056】
この原因について本願発明者は研究をしたところ、チェックバルブが作動する前に残圧排出弁や開放弁を作動させることや、これらの作動圧等の条件が重要であるとの知見を得た。そして、残圧排出弁や開放弁やチェックバルブを併せ持つ噴霧システム1を完成させた。本発明は、噴霧技術に関する基本的技術として、多種多様な噴霧技術に応用可能な技術である。
【0057】
近年の噴霧技術は、高圧プランジャーポンプや、ノズル噴霧孔が小さい噴霧ノズル等を用いることで、より微細な霧を形成することが望まれており、このような場合には、液だれ現象の問題をいかに解消するのかが重要となる。
【0058】
更に、各種施設等の天井から下向きに噴霧する場合等では、特に液だれ現象の問題が重要となる。特に、病院や駅等といった施設等ではかかる液だれ現象を確実に防止することが望まれる。
【0059】
これに関して、本発明に係る噴霧システム1では複雑な構造の改良等を要することもなく、液だれ現象を防止でき、噴霧ノズル14から垂れた液体が床等を濡らすことがない。本発明では、前記噴霧ノズル14の構造は限定されないが、一流体ノズルを好適に用いることができる。
【0060】
図6は、本発明に係る噴霧システムの第2実施形態の一部簡略図である。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を割愛する。
【0061】
図6に示す符号2は、噴霧システムを示している。この噴霧システム2は、噴霧ノズル24を6個備え、これを配管25で接続した構造であり、かつ開放弁27を1個備える。図6は、同一円周上に略等間隔に配置した噴霧ノズル24を噴霧方向から正面視した状態である。
【0062】
このように、本発明では、複数の噴霧ノズル24を備えることができる。更に、複数の噴霧ノズル24に対して、少なくとも1以上の開放弁を設ける構造としてもよい。あるいは、1個の噴霧ノズル24に対して、1個の開放弁27を設けるが如き構造としてもよい。このように、本発明では、必要に応じて噴霧ノズル24を複数設けてもよい。また、開放弁27の数も必要に応じて複数設けてもよい。
【0063】
また、本発明に係る噴霧方法は、液体に圧力を加えることで霧を形成する噴霧ノズル14を用いて噴霧し、この噴霧ノズル14内に備えられたチェックバルブ144により液体の供給を停止する噴霧方法であり、(1)噴霧を終了させるために加圧を停止する工程(図4の符号S1参照)、(2)液体の圧力が第1の圧力値Pまで降圧したときに配管15内の残圧を排出し、配管15を大気と連通させる工程(図4の符号S2−1,S2−2参照)、(3)液体の圧力が第2の圧力値Pまで降圧したときに、チェックバルブ144を作動させることで噴霧ノズル14への液体の供給を停止させる工程(図4の符号S3参照)を、少なくとも行なう液体の噴霧方法である。本発明に係る噴霧方法は、本発明に係る噴霧システム1等で実現可能であることは勿論であり、今まで述べた効果が得られるのは明らかである。
【0064】
本発明に係る噴霧技術は、液だれ現象を防止するための大がかりな装置等も別途不要であるため、構造上の制限がないため使用用途・設置場所等の制限をうけることも少ないため好適である。あるいは、適宜、他の部材等を組み合わせて使用することもできるため、汎用性や応用性にも優れている。かかる観点からも、幅広い技術分野で応用可能な基本的技術として用いることができる。
【0065】
このように、本発明によれば、簡単な構造でありながら液だれ現象を確実に防止できるため、噴霧ノズル等の構造設計や噴霧条件(噴霧方向等)や使用環境・使用目的等について厳しい制限を受けずにすむ。従って、噴霧技術が用いられ得る幅広い分野に応用可能な技術である。そして、本発明に係る噴霧技術は、沈塵・排水処理施設等の環境関連、食品・化学・自動車・電子工業など産業界全般に渡って用いることができる技術である。
【実施例】
【0066】
本発明の効果を検証するために、以下の試験を実施した。具体的には、本発明に係る噴霧システム1について噴霧試験を行い、液だれ現象が確認できるか否かについて検証した。
【0067】
<実験条件>
噴霧ノズル14は、ノズル噴霧孔Hの直径が0.1mmの一流体噴霧ノズル(セラミックス製)を用いた。チェックバルブ144は、弾性体1244がコイルスプリングであるバルブを使用した。チェックバルブ144の第3作動圧Pは、コイルスプリングの弾性強度を調節することで適宜所定の圧力値で作動するように設定した。残圧排出弁16は、電磁弁を用いた。また、吐出圧力9.8MPaのプランジャーポンプを用いた。開放弁17は、実施例1,2で用いた。
【0068】
<試験>
実施例1,2、比較例1〜6の噴霧システムを用いて上水を噴霧し、噴霧後の液だれ現象の有無を判定した。なお、判定では、噴霧後に粗大霧、水滴、ボタ落ち、水鉄砲状の放水等を確認した場合に、「液だれ現象あり(×)」、と判定した。
【0069】
<実施例1>
残圧排出弁16の作動圧Pを2.5MPaとし、開放弁17の作動圧は0.1MPa、チェックバルブ144は作動圧Pを1.0MPaとして噴霧した。
【0070】
<実施例2>
チェックバルブ144の作動圧Pを0.7MPaとして点以外は実施例1と同様にして噴霧した。
【0071】
<比較例1〜4>
チェックバルブ144のみを設けた噴霧システムとし、チェックバルブ144の作動圧Pが0.7MPa(比較例1)、2.0MPa(比較例2)、5.0MPa(比較例3)、7.0MPa(比較例4)とした点以外は、実施例1と同様にして試験した。
【0072】
<比較例5>
残圧排出弁16とチェックバルブ144のみを設けた噴霧システムとし、残圧排出弁16の作動圧Pを1.5MPaとし、チェックバルブ144の作動圧Pを残圧排出弁作動圧Pより高い2.0MPaとした点以外は、実施例1と同様にして試験した。
【0073】
<比較例6>
残圧排出弁16とチェックバルブ144のみを設けた噴霧システムとし、残圧排出弁16の作動圧を2.5MPaとし、チェックバルブ144の作動圧P2を0.7MPaとした点以外は、実施例1と同様にして試験した。
【0074】
実施例1,2、比較例1〜6の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
<考察>
残圧排出弁16と開放弁17のいずれも設けない比較例1〜4では、チェックバルブ144の作動圧だけを高くしても液だれ現象の防止は不十分であった。更に、開放弁17がない比較例5,6についても、残圧排出弁16とチェックバルブ144を設けただけでは液だれ現象の防止は不十分であった。
このように比較例1〜6はいずれも液だれ防止の効果が認められなかったのに対して、実施例1,2は液だれ現象を良好に防止できた。特に、実施例1では、噴霧終了後の噴霧ノズル14を下方に向けてみても、噴霧ノズル14からの水の滴下は確認されなかった。そして、噴霧停止、ポンプ12を再稼動してみたところ正常に噴霧を再開できた。
以上より、本実施例によれば、本発明に係る噴霧システム及び噴霧方法は液だれ現象を防止できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る噴霧システム及び噴霧方法は、例えば、加湿、細霧冷房、空気冷却、消臭、脱臭、除菌、殺菌、衛生(感染症対策や食中毒対策等)、静電気防除、リラクゼーション、コンクリート養生、沈塵、アロマテラピー等をはじめ幅広い分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る噴霧システムの第1実施形態の簡略図である。
【図2】同実施形態の噴霧ノズル14の一部の簡略断面図である。
【図3】同実施形態の開放弁17の一部の簡略断面図である。
【図4】噴霧システム1の噴霧停止の説明に供するフロー図である。
【図5】噴霧システム1の噴霧停止の説明に供する簡略図である。
【図6】本発明に係る噴霧システムの第2実施形態の一部簡略図である。
【符号の説明】
【0079】
1,2 噴霧システム
11 水槽
12 ポンプ
13 フローセンサー
14,24 噴霧ノズル
15,25 配管
16 残圧排出弁
17,27 開放弁
144 チェックバルブ
M 霧
H 噴霧孔
第1圧力値
第2圧力値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を加圧することで霧を形成する噴霧ノズルを用いる噴霧システムであって、
前記液体への加圧停止後に、前記液体の圧力が第1の圧力値まで降圧したときに作動する残圧排出弁と、
前記残圧排出弁の作動時又は作動後に、配管を大気と連通させる開放弁と、
前記噴霧ノズル内に設けられ、前記残圧排出弁の作動後に、前記液体の圧力が第2の圧力値まで降圧したときに前記噴霧ノズルへの液体の供給を停止させるチェックバルブと、
を少なくとも備える噴霧システム。
【請求項2】
前記残圧排出弁が作動する前記第1の圧力値は、2.5MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の噴霧システム。
【請求項3】
前記チェックバルブが作動する第2の圧力値は、0.7MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴霧システム。
【請求項4】
前記開放弁は、前記残圧排出弁の前記作動と連動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の噴霧システム。
【請求項5】
前記噴霧ノズルを複数備え、かつ前記噴霧ノズル同士を連結する配管に前記開放弁が少なくとも1以上備えられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の噴霧システム。
【請求項6】
液体に圧力を加えることで霧を形成する噴霧ノズルを用いて噴霧し、前記噴霧ノズル内に備えられたチェックバルブにより液体の供給を停止する噴霧方法であって、少なくとも以下の(1)〜(3)工程を行う液体の噴霧方法。
(1)噴霧を終了させるために加圧を停止する工程、
(2)液体の圧力が第1の圧力値まで降圧したときに配管内の残圧を排出し、前記配管を大気と連通させる工程、
(3)前記液体の圧力が第2の圧力値まで降圧したときに、チェックバルブを作動させることで前記噴霧ノズルへの液体の供給を停止させる工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−148677(P2009−148677A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327811(P2007−327811)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000240293)
【Fターム(参考)】