説明

液体カートリッジ付勢ユニット

【課題】液体カートリッジの装着部に設けられて該液体カートリッジを付勢する液体カートリッジ付勢ユニットであって、小型化を実現できるものを提案する。
【解決手段】ユニットフレーム45に、第一の向きに延びる2つの略平行なサイド部46,46と、これらの第一の向きの端を繋ぐ連結部47と、サイド部46,46間において連結部47から第一の向きと対向する第二の向きに延びる1つ以上のガイドバー49とを備えた。隣り合うガイドバー49とガイドバー49又はサイド部46との間に、付勢体85により第二の向きへ付勢されたスライダ84を1つずつ配設した。そして、スライダ84とこれを案内する1つ以上のガイドバー49に、第一の向きと直交する方向への移動を互いに規制し合う係止形状部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体カートリッジを着脱可能に装着できるカートリッジ装着部に備えられ、液体カートリッジをカートリッジ装着部から取り出す向きに付勢するための液体カートリッジ付勢ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドから液滴を吐出して記録用紙等の記録媒体に画像等を形成する記録装置の一つとして、インクジェット記録装置が広く知られている。このインクジェット記録装置は、インクが収容されたインクカートリッジを装着可能に備え、このインクカートリッジから供給されたインクを記録ヘッドからインク滴として吐出するように構成されている。インクカートリッジは、記録媒体の記録面に沿って往復動するキャリッジに記録ヘッドとともに搭載されて該記録ヘッドに直接的にインクを供給する形態のものや、記録装置本体に設けられたホルダ等に装着されて記録ヘッドにチューブを介してインクを供給する形態のものが知られている。いずれの形態においても、インクカートリッジは、インクの残量が少なくなった場合に装置本体から取り外されて、インクが充填された新たなインクカートリッジと交換できるようになっている。
【0003】
インクカートリッジの交換作業は専門技術を有する者に限られずエンドユーザーが行う場合もあるため、誰もが容易且つ確実にインクカートリッジを交換できる構成を記録装置が備えることが要求されている。そこで、特許文献1では、液体容器(インクカートリッジ)を液体容器ホルダに装着する際には、液体容器ホルダに液体容器を挿入して挿入する向きへ押圧することで装着固定され、液体容器を液体容器ホルダから取り外す際には、液体容器ホルダに装着された液体容器を挿入する向きへ押圧することにより固定が解除されて、付勢されたスライダー部材により液体容器が取り出す向きへ押し出されるように構成された液体容器ホルダが提案されている。この液体容器は扁平な直方体形状を有し、液体容器ホルダは複数の液体容器を挿入方向と直交する方向に並べて収容するために各液体容器に対して独立した装着部を複数並べて備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、記録装置に対して小型化のニーズがあり、液体カートリッジ及びこれが装着される装着部も小型化が望まれている。ところが、特許文献1に記載された液体容器ホルダは、各液体容器に対して独立して設けられているので、液体容器ホルダの構成部品も各液体容器に対して独立して必要である。よって、液体容器ホルダの構成部品点数が多くなり、それらの占有容積によって装着部の小型化が妨げられる。
【0006】
そこで本発明では、液体カートリッジの装着部に設けられて該液体カートリッジを付勢する液体カートリッジ付勢ユニットであって、小型化を実現できるものを提案することを目的とする。ひいては、液体カートリッジの装着部の小型化、さらには、記録装置の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体カートリッジ付勢ユニットは、液体カートリッジを第一の向きへ移動さ
せることによって装着できるカートリッジ装着部に設けられ、前記液体カートリッジに当接するスライダを備えて該液体カートリッジを前記第一の向きと対向する第二の向きへ付勢できる液体カートリッジ付勢ユニットであって、前記第一の向きに延びる2つの略平行なサイド部と、この2つのサイド部の前記第一の向きの端同士を繋ぐ連結部と、前記2つのサイド部間において前記連結部から前記第二の向きに延びる1つ以上のガイドバーとを有するフレームと、隣り合う前記サイド部と前記ガイドバーの間及び隣り合う前記ガイドバー同士の間に1つずつ配置され、解除位置と該解除位置より前記第一の向きに隔てられた装着位置との間を前記ガイドバーに案内されて往復移動できる2つ以上のスライダと、前記スライダの各々を前記第二の向きへ付勢する2つ以上の付勢体と、前記1つ以上のガイドバーに配置されており、前記2つ以上のスライダの各々に当接して前記スライダが前記解除位置から前記第二の向きへ移動するのを規制できる1つ以上のストッパとを備え、前記スライダとこれを案内する1つ以上の前記ガイドバーは、前記第一の向きと直交する方向へ互いに離れるように移動するのを規制できる係止形状部を各々に備えているものである。
【0008】
上記構成の液体カートリッジ付勢ユニットでは、2つのスライダで、これらの間に存在する1つのガイドバーが共用される。従って、各スライダに対して所定の数のガイドバーをそれぞれに設ける場合と比較して、ガイドバーの占有空間を削減することができるので、液体カートリッジ付勢ユニットの小型化を実現することができる。そして、このような液体カートリッジ付勢ユニットの小型化により、これを備える液体カートリッジの装着部の小型化、さらには、装着部を備える記録装置の小型化に寄与することができる。また、フレームにおいて、全てのサイド部及び全てのガイドバーの第一の向きの端は連結部に固定された固定端であるが、第二の向きの端は自由端となっているため、フレームは第二の向きの端が第一の向きと直交する方向へ拡がって扇状に弾性変形し得る。すなわち、ガイドバーがスライダから離れるように移動し得る。ストッパはガイドバーに配置されているので、ガイドバーがスライダから離れるように移動すると、解除位置にあるスライダと当接していたストッパがスライダから離れ、第2の向きに付勢されているスライダが解除位置からさらに第2の向きに移動して、フレームから脱落してしまう恐れがある。しかしながら、スライダとガイドバーとに設けられた係止形状部によりこのようなフレームの弾性変形が抑制されて、スライダがフレームから脱落することが抑制される。したがって、液体カートリッジ付勢ユニットの小型化を実現しつつ、その組立性も向上させることができる。なお、サイド部とガイドバーとが同じ形状を有していても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つのスライダで、これらの間に存在する1つのガイドバーが共用されるので、各スライダに対して所定の数のガイドバーをそれぞれに設ける場合と比較して、ガイドバーの占有空間を削減して、液体カートリッジ付勢ユニットの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る液体供給装置を備えた記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】記録装置が備えるプリンタ部の構成を示す模式的断面図である。
【図3】液体供給装置を前後方向に切断した断面図である。
【図4】液体カートリッジの斜視図である。
【図5】液体カートリッジの構成を示す図であり(a)は側面図、(b)は側面断面図である。
【図6】装着ケースの前方斜視図である。
【図7】装着ケースを前後方向に切断した断面図である。
【図8】液体カートリッジ付勢ユニットの前方斜視図である。
【図9】液体カートリッジ付勢ユニットの正面図である。
【図10】(a)は液体カートリッジ付勢ユニットの平面図であり、(b)は液体カートリッジ付勢ユニットの底面図である。
【図11】装着ケースから液体カートリッジを取り出す態様を説明する図であり(a)は液体カートリッジの装着時の液体供給装置の断面図、(b)は液体カートリッジの装着解除時の液体供給装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る液体カートリッジ付勢ユニットを備えた液体カートリッジ装着部は、記録装置のインク供給装置に設けられており、この記録装置はプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機として構成されている。インク供給装置は、液体カートリッジとして液体状のインクを収容したインクカートリッジを備え、このインクカートリッジから記録装置に設けられたプリンタ機能部へインクを供給するように構成されている。但し、本発明に係る液体カートリッジ付勢ユニットの適用形態は本実施の形態に限定されない。
【0012】
[記録装置全体の概要]
まず、記録装置の全体の概要から説明する。図1に示すように、記録装置1は、略直方体形状の筐体1aの下部にインクジェット方式によって画像等を記録するプリンタ部2を備え、この筐体1aの上部にスキャナ部3を備えている。
【0013】
プリンタ部2は、筐体1aの正面(前側)に開口4を有し、この開口4の内側に、下側に被記録体として複数枚の記録用紙を収容できる給紙トレイ5を、上側に画像が記録された記録用紙を複数枚収容できる排紙トレイ6をそれぞれ備えている。プリンタ部2の正面の右下部分には扉7が開閉自在に設けられ、該扉7の内方にはインク供給装置8(図2、参照)が設けられている。従って、扉7が開くとインク供給装置8が正面側に露出し、インクカートリッジ10(図2、参照)が水平方向に着脱可能になっている。インク供給装置8には、使用されるインク色に対応したインクカートリッジ10の装着ケース9(図2、参照)が備えられている。本プリンタ部2では、例えば4色のカラーインクが使用され、インク供給装置8には内部が4つに区分けされた装着ケース9が設けられており、区分けされた各スペースに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)ブラック(Bk)の各色インクを貯留するインクカートリッジ10が装着されている。
【0014】
スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。即ち、記録装置1の上面には、記録装置1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー1bが備えられている。そして、原稿カバー1bの下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。
【0015】
記録装置1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル11が設けられ、同じく正面左上部分には記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能なスロット部12が設けられている。操作パネル11は、各種操作ボタンや情報を出力する出力部としての液晶ディスプレイ11a等から構成されており、記録装置1は、オペレータによる操作パネル11の操作の結果、該操作パネル11から出力される指示に基づいて動作できる。また、記録装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても記録装置1は動作できる。
【0016】
図2に示すように、記録装置1の底部近傍には設けられた給紙トレイ5の上方には、図1の左右方向に長寸を成す平坦な板状のプラテン14が設けられている。このプラテン1
4の更に上方には画像記録ユニット17が設けられており、この画像記録ユニット17は、図示しないノズル孔からインクを吐出するヘッドユニット15a、該ヘッドユニット15aへインクを供給するサブタンク15b、及びヘッドユニット15aと電気的に接続されたアクチュエータへ駆動信号を出力するヘッド制御基板15c等から構成されている。この画像記録ユニット17が有するサブタンク15bは、記録装置1のインク供給装置8へ装着されたインクカートリッジ10との間で、可撓性のチューブ22を介して連通されており、インクカートリッジ10から供給されたインクを一時的に貯留し、更にこれをヘッドユニット15aへと供給する。
【0017】
画像記録ユニット17は、図1の左右方向(プラテン14の長手方向)へ延びる図示しないガイドロッドにより、図1の左右方向へのスライド移動可能なように支持されており、更に画像記録ユニット17は、プーリ及びベルト等から成る図示しないヘッド駆動機構に連結されている。従って、該ヘッド駆動機構が駆動することにより、前記ガイドロッドに沿って図1の左右方向へ所定範囲内で走査可能になっている。
【0018】
また、給紙トレイ5の後方には、給紙トレイ5の後方から上方へ向かい更に前方へ向かうように湾曲した湾曲パス18aと、湾曲パス18aの終点から更に前方へ延びるストレートパス18bとから成る用紙搬送路18が設けられている。給紙トレイ5の直上には、該給紙トレイ5内の記録用紙を用紙搬送路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。そして、用紙搬送路18には、搬送ローラ及びピンチローラから成る一対の搬送ローラ対20と、排紙ローラ及びピンチローラから成る一対の排紙ローラ対21とが、それぞれ2つのローラによって搬送される記録用紙を上下から挟むようにして設けられている。
【0019】
このようなプリンタ部2によれば、給紙トレイ5内の記録用紙が、給紙ローラ19によって用紙搬送路18へ供給され、続いて搬送ローラ対20によって用紙搬送路18上を湾曲パス18aからストレートパス18bへと搬送される。ストレートパス18bに到達した記録用紙は、ここで対向配置された画像記録ユニット17が有するヘッドユニット15aから吐出されるインクにより画像が記録され、記録が完了すると排紙ローラ対21によってストレートパス18bから排出されて排紙トレイ6へ収容される。
【0020】
[インク供給装置の構成]
次に、インク供給装置8について詳細に説明する。図3に示すように、インク供給装置8は、インクカートリッジ10と、このインクカートリッジ10を着脱可能に装着できる装着ケース9を有する装着部99とを備えている。以降の説明では、図3における紙面左側を前部または前方とし、紙面右側を後部または後方として説明する。
【0021】
先ず、インクカートリッジ10の構成から説明する。図4及び図5(a)(b)にも示すように、インクカートリッジ10は扁平形状の略六面体に構成されており、図4に図示された起立姿勢で幅方向の寸法が小さく、高さ方向及び奥行き方向の各寸法が幅方向の寸法よりも大きい直方体形状である。インクカートリッジ10は、図4に図示された起立姿勢において、装着ケース9内に挿入される。このインクカートリッジ10は、ケース本体31と、このケース本体31の後部を覆う後部カバー32と、ケース本体31の前部を覆う前部カバー33とで構成されている。ケース本体31は、インクを収容できるインク収容室51を内部に備え、このインク収容室51からインクを外部へ供給するインク供給部60と、インク収容室51を外部と大気連通させる大気連通部70とをいずれも後面に備えている。後部カバー32は、ケース本体31の後部を覆うように形成されており、大気連通部70を露出させるための上部開口32aと、インクカートリッジ10が装着ケース9内に挿入されるときの姿勢において上部開口32aよりも下方に位置する、インク供給部60を挿通させるための下部開口32bと、インクカートリッジ10が装着ケース9内に挿入されるときの姿勢において下部開口32bよりも下方に位置し、水平方向と平行に
後方へ突出する突出部52とをいずれも後面に備えている。このようなインクカートリッジ10の後面は、大気連通部70が後部カバー32の上部開口32aよりもインクカートリッジ10の内方に位置し、インク供給部60が後部カバー32の下部開口32bから後向きに突き抜けており、突出部52がインク供給部60の下方において該インク供給部60よりもさらに後向きに突出している。突出部52の後端は、インクカートリッジ10全体で最も後方に位置しており、インクカートリッジ10を装着ケース9へ装着する過程及び装着されている状態で、装着ケース9の奥部に設けられた後述するスライダ84の当接面841に当接する部分となる。
【0022】
大気連通部70には、大気連通バルブ71が設けられている。大気連通バルブ71は、図5(b)に示すようにケース本体31の後上部に形成された第一バルブ収容室72に収容されている。第一バルブ収容室72は、開口73を介してケース本体31の外部に開口している。第一バルブ収容室72は、開口73とは反対側の端部において不図示の通路を介してインク収容室51に連通している。
【0023】
大気連通バルブ71は、バルブ本体74、バネ75、シール部材76、及びキャップ77等の部材で構成されている。シール部材76及びキャップ77は共に円筒形状を成し、開口73を塞ぐように開口73に挿入されたシール部材76にキャップ77が外嵌されている。シール部材76は、シール部材76を前後方向に貫通するように形成された大気連通口79を有する。バルブ本体74は軸形状を成し、前後方向へ往復移動可能に第一バルブ収容室72に収容されている。このバルブ本体74の前部は第一バルブ収容室72内に収容されているが、その後部はシール部材76の大気連通口79を挿通して大気連通口79から後向きに突出している。さらに、バネ75は第一バルブ収容室72内に配設されて、バルブ本体74を後向きに付勢している。
【0024】
このような大気連通バルブ71において、バネ75により後向きに付勢されたバルブ本体74がシール部材76と圧接することによって、大気連通口79が閉止され、大気連通バルブ71が閉じられる。そして、装着ケース9にインクカートリッジ10が装着されているときは、後述するバルブ操作ピン82により押圧されたバルブ本体74がバネ75の付勢力に抗して前向きに移動し、大気連通バルブ71が開放されてシール部材76の大気連通口79を画定している内周とバルブ本体74との隙間において大気連通口79が開口され、インク収容室51はこの大気連通口79を介して大気に開放される。
【0025】
一方、インク供給部60には、インク供給バルブ61が設けられている。図5(b)に示すように、インク供給バルブ61は、ケース本体31の後下部に形成された第二バルブ収容室62に収容されている。第二バルブ収容室62は、開口63を介してケース本体31の外部に開口している。第二バルブ収容室62は、開口63とは反対側の端部において不図示の通路を介してインク収容室51に連通している。
【0026】
インク供給バルブ61は、バルブ本体64、バネ65、シール部材66、キャップ67等の部材で構成されている。バルブ本体64は、軸芯を前後方向へ向け後部にフランジを有する軸形状を成している。シール部材66及びキャップ67は共に前後方向への貫通孔を有する略円筒形状を成し、シール部材66にキャップ67が外嵌した状態で、該シール部材66が開口63を塞ぐように開口63に挿入されている。このシール部材66の貫通孔とキャップ67の貫通孔とによって、インク供給口69が形成されている。バルブ本体64は、第二バルブ収容室62内であってシール部材66よりもインクカートリッジ10の内方、すなわち、インク収容室51側において、前後方向へ往復移動可能に設けられている。さらに、バネ65は第二バルブ収容室62内に配設されて、バルブ本体64を後向きに付勢している。
【0027】
バネ65により付勢されたバルブ本体64のフランジがシール部材66に圧接されることによって、シール部材66の貫通孔とキャップ67の貫通孔とからなるインク供給口69が閉止され、インク供給バルブ61が閉じられている。そして、装着ケース9にインクカートリッジ10が装着されているときは、後述するインク供給筒81でバルブ本体64が後方へ押し動かされて、バルブ本体64がバネ65の付勢力に抗して後方へ移動してシール部材66から離れ、インク供給バルブ61が開放される。その結果、インク収容室51はインク供給装置8に接続されたチューブ22とインク供給口69に挿入されたインク供給筒81を介して連通し、インク収容室51内のインクがチューブ22を通じて装置本体側のサブタンク15b(図2、参照)へ供給される。
【0028】
次に、装着部99について説明する。図6及び図7にも示すように、装着部99は装着ケース9を有しており、装着ケース9内には、略直方体形状の装着空間90が形成されている。この装着ケース9は、前向きに開放された挿脱開口91を有している。装着空間90は、この挿脱開口91を介して装着ケース9の外部に露出している。装着ケース9は、の挿脱開口91から水平方向と平行な後向きに隔てられた奥部に閉塞された奥部壁面を有し、また、挿脱開口91から奥部壁面に向かって後向きに延びる底面を有している。この装着ケース9に対して、インクカートリッジ10を挿脱開口91から水平方向と平行に後向きに挿入して装着し、装着されたインクカートリッジ10を水平方向と平行に前向きに移動させて取り出すことができる。以下では、装着ケース9において、インクカートリッジ10が挿入される水平方向と平行な後向きを「挿入向き(第一の向き)」ともいい、この挿入向きと対向する向きを「脱出向き(第二の向き)」ともいい、挿入向きと脱出向きとを「挿脱方向」ともいう。また、挿脱方向に直交する重力方向を「上下方向」といい、これら挿脱方向及び上下方向のいずれにも直交する方向を「左右方向」という。
【0029】
装着ケース9は、挿脱方向の両端が開放された角管状のケース本体40に、このケース本体40の挿入向きの端を閉塞するように接続ユニット41と液体カートリッジ付勢ユニット42とをそれぞれ固定して構成されている。接続ユニット41は、ケース本体40の挿入向きの端の上部を閉塞しており、液体カートリッジ付勢ユニット42は、ケース本体40の挿入向きの端の下部を閉塞している。この接続ユニット41が、挿脱開口91から後向きに隔てられた奥部壁面を形成している。装着ケース9には、装着されるインクカートリッジ10の数に合わせて4つに区画された装着空間90が形成されている。装着部99は、各装着空間90毎に、装着ケース9の奥部に設けられたインク供給筒81、バルブ操作ピン82、スライダ84、及び付勢体85と、装着ケース9の底面に設けられたガイド溝92と、装着ケース9の上部に設けられたロックレバー87とを、それぞれに1つずつ備えている。なお、以下では装着部99に4つのインクカートリッジ10を装着するものとして説明するが、装着部99に装着されるインクカートリッジ10の数はこれに限定されるものではなく、装着部99に装着されるインクカートリッジ10に合わせた数のスライダ84などを適宜備えることができる。
【0030】
装着ケース9の奥部壁面の上部分を形成している接続ユニット41は、4つのインク供給筒81を備えている。インク供給筒81は、装着ケース9の奥部壁面に貫設されて奥部壁面から脱出向きに延びる中空針状の部材であって、このインク供給筒81の後端には、装置本体のサブタンク15bに一端が接続されたチューブ22の他端が接続されている。このインク供給筒81は、装着されたインクカートリッジ10のインク供給口69にその先端から挿入できるように位置決めされており、該インク供給筒81が装着空間90内に装着されたインクカートリッジ10のインク供給口69に挿入されると、インクカートリッジ10のインク収容室51とサブタンク15bとがチューブ22及びインク供給筒81を介して連通される。
【0031】
また、接続ユニット41は、各インク供給筒81の周囲のそれぞれにおいて、インク供
給筒81と同心で円筒状のガイド筒83を備えている。ガイド筒83は、装着ケース9の奥部壁面から脱出向きに延びている。このガイド筒83の内周はインクカートリッジ10のインク供給部60の挿入部であって、ガイド筒83はインク供給部60に被せられたキャップ67の外周が摺動できる内径を有している。そして、装着空間90内にインクカートリッジ10を装着する際には、ガイド筒83はインク供給筒81のインク供給口69への挿入を案内することができ、また、装着空間90内にインクカートリッジ10が装着されると、ガイド筒83はインク供給部60とインク供給筒81との間にねじれが生じたりしないようにこれらを保持することができる。
【0032】
さらに、接続ユニット41は、インク供給筒81の上方において、装着ケース9の奥部壁面から脱出向きに突出するバルブ操作ピン82を4つ備えている。このバルブ操作ピン82は、装着されたインクカートリッジ10の大気連通口79から突出している大気連通バルブ71に当接するように配置されており、インクカートリッジ10が装着空間内90に装着されている間、大気連通口79を開放するように大気連通バルブ71を操作することができる。
【0033】
また、装着ケース9の奥部壁面の下部分を形成している液体カートリッジ付勢ユニット42は、装着ケース9の奥部であってインク供給筒81の下方において4つのスライダ84を備えている。さらに、液体カートリッジ付勢ユニット42は、各スライダ84を付勢する4つの付勢体85を備えている。図8、図9及び図10(a)(b)に示すように、装着ケース9が備える4組のスライダ84及び付勢体85は、1つのユニットとして一体的に取り扱うことができるように構成されている。
【0034】
液体カートリッジ付勢ユニット42は、ケース本体40に接続固定されるユニットフレーム45を備えている。ユニットフレーム45は、挿脱方向に延びる2つの略平行なサイド部46,46と、この2つサイド部46,46の挿入向きの端を繋ぐ連結部47とで、平面視略U字状に形成されている。このユニットフレーム45の2つサイド部46,46の間には、スライダ84の数に合わせて4つのレールバー48と、隣り合うレールバー48,48間のそれぞれに1つずつ配置された3つのガイドバー49とが設けられている。いずれのレールバー48及びガイドバー49も、ユニットフレーム45の2つのサイド部46,46と連結部47とで囲まれる面内に配置され、挿入向きの端が連結部47に固定されて、該連結部47から脱出向きへ延びるように形成されている。
【0035】
なお、ユニットフレーム45とレールバー48とガイドバー49とは、一体成形された樹脂成形品である。2つのサイド部46,46、各レールバー48、及び各ガイドバー49は、いずれも挿入向きの端は連結部47に固定されて固定端であるが、脱出向きの端は自由端である。このため、2つのサイド部46,46の脱出向きの端の間隔を広げるように扇状に弾性変形させることができる。2つのサイド部46,46は、その脱出向きの端であって互いに対向する面に内側へ突出する突起46a,46aを有している。これらの突起46a,46aは、液体カートリッジ付勢ユニット42をケース本体40へ固定する際に機能する固定形状部となる。液体カートリッジ付勢ユニット42をケース本体40へ固定する際には、2つのサイド部46,46の脱出向きの端の間隔を広げるようにユニットフレーム45を弾性変形させながらサイド部46,46の脱出向きの端部分の間にケース本体40を挿入し、該ケース本体40に形成された図示しない係止凹部に前記突起46a,46aを係止させることによってケース本体40に液体カートリッジ付勢ユニット42を固定する。このようにユニットフレーム45の弾性変形を利用することができるので、固定形状部は単純な突起などで足り特別な固定具を必要としないので、部品点数の削減による小型化及びコストの削減と、液体カートリッジ付勢ユニット42の装着ケース9の他の部分(ケース本体40)への組み付け性の向上を図ることができる。
【0036】
レールバー48は、スライダ84を挿脱方向に貫通している貫通孔847に遊挿されている。このようにして液体カートリッジ付勢ユニット42に設けられた4つのスライダ84の隣り合うスライダ84,84の間には、これら両方の移動を案内する1つのガイドバー49が存在している。スライダ84には、左右方向の両側の側端面において、挿脱方向に延びる被案内溝845,845が形成されている。被案内溝845は、上下方向に延びる面と、その面の上下端それぞれから、ガイドバー49に向かって左右方向に延びる上面および下面により形成されている。さらに、この被案内溝845の上面のガイドバー49側の端には、挿脱方向に延び、かつ、下垂するリップ(突条)846が形成されている。一方、ガイドバー49の上面における左右方向の両側の端に、挿脱方向に延び、かつ、上方へ突出するリップ(突条)49aが形成されている。そして、スライダ84の被案内溝845にガイドバー49の側端部分が側方から嵌入されており、ガイドバー49のリップ49aはスライダ84のリップ846を超えて被案内溝845の内側に位置している。また、ガイドバー49のリップ49aとスライダ84のリップ846とは、左右方向において重なっている。つまり、スライダ84のリップ846と、当該スライダ84の被案内溝845に嵌め入れられたガイドバー49のリップ49aとが係止し合っている。このようにして、スライダ84の被案内溝845,845内のそれぞれにガイドバー49,49の側端部分が存在することによって、スライダ84はレールバー48を中心として挿脱方向に直交する面内で揺動することなくこれらのガイドバー49,49に沿って挿脱方向に移動するように案内される。さらに、スライダ84とこれを案内するガイドバー49との互いの係止形状部(リップ846,49a)が係止し合うことによって、スライダ84とこれを案内するガイドバー49とが挿脱方向と直交する左右方向へ互いに離れないように移動が規制され、挿脱方向と直交する左右方向に連結されている。
【0037】
ガイドバー49と同様に、サイド部46のレールバー48と対峙する部分には、スライダ84の被案内溝845に側方から嵌め入れられるガイド形状部46bが形成されており、この挿脱方向に延びるガイド形状部46bの上面における左右方向におけるスライダ84側の端に、挿脱方向に延び、かつ、上方へ突出するリップ(突条)46cが形成されている。そして、サイド部46のガイド形状部46bはスライダ84の被案内溝845に側方から嵌入しており、ガイド形状部46bのリップ46cはスライダのリップ846を超えて被案内溝845の内側に位置している。また、ガイド形状部46bのリップ46cはスライダのリップ846とは、左右方向において重なっている。つまり、スライダ84のリップ846と、当該スライダ84の被案内溝845に嵌め入れられたサイド部46のガイド形状部46bのリップ46cとが係止し合っている。このようにして、サイド部46とガイドバー49との間に配置されたスライダ84は、その被案内溝845,845内のそれぞれにガイドバー49の側端部分又はサイド部46のガイド形状部46bが存在することにより、レールバー48を中心として挿脱方向に直交する面内で揺動することなく挿脱方向に移動するように案内される。さらに、スライダ84とこれを案内するサイド部46との互いの係止形状部(リップ846,46c)が係止し合うことによって、スライダ84とこれを案内するサイド部46とが挿脱方向と直交する左右方向へ互いに離れないように移動が規制され、挿脱方向と直交する左右方向に連結されている。
【0038】
上記のようにスライダ84はレールバー48上を挿脱方向に移動して、装着位置K1と装着位置K1から脱出向きに隔てられた解除位置K2との間を往復移動することができる。なお、図7では、装着位置K1のスライダ84が二点鎖線で示され、解除位置K2のスライダ84が実線で示されている。このスライダ84の脱出向きの端には、インクカートリッジ10の突出部52の先端に当接できる当接面841が形成されている。装着位置K1のスライダ84に当接しているインクカートリッジ10は、即ち装着空間90内に装着された状態にあり、インク供給筒81によりインク供給バルブ61のバルブ本体64が押圧されてインク供給口69が開放され、バルブ操作ピン82により大気連通バルブ71のバルブ本体74が押圧されて大気連通口79が開放されている。一方、解除位置K2のス
ライダ84に当接しているインクカートリッジ10は、装着空間90から装着解除された状態にあり、インク供給口69及び大気連通口79は閉止されている。
【0039】
上記スライダ84を脱出向きへ付勢する付勢体85は、連結部47とスライダ84との間であって、このスライダ84と隣り合う2つのガイドバー49,49の間、又はこのスライダ84と隣り合うサイド部46とガイドバー49との間に配設されている。このように付勢体85が、ユニットフレーム45内に配置されているので小型化に寄与することができる。本実施の形態に係る付勢体85は、レールバー48に外装された圧縮コイルバネであって、レールバー48の基端が固定されているユニットフレーム45の連結部47とスライダ84との間で圧縮されている。このように付勢体85であるコイルバネにレールバー48が挿通しているので、コイルバネの座屈を防止して、スライダ84をより安定して動作させることができる。但し、付勢体85は上記形態に限定されるものではなく、付勢体85を脱出向きに付勢することができるものであれば足りるので、スライダ84を脱出向きに引っ張るように設けられた引張コイルバネやスライダ84を脱出向きに押し出すように設けられた弾性発砲体などで構成されていてもよい。
【0040】
解除位置K2のスライダ84の当接面841は、インク供給筒81の先端(脱出向きの端)のほぼ真下に位置している。スライダ84の下面には、ガイドバー49又はサイド部46のガイド形状部46bと上下方向に重なる両方の側部のそれぞれにおいて、係止爪844,844が設けられている。一方、ガイドバー49の下面には脱出向きへ移動してくるスライダ84の係止爪844と当接可能なストッパ49bが設けられており、サイド部46のガイド形状部46bの下面には脱出向きへ移動してくるスライダ84の係止爪844と当接可能なストッパ46dが設けられている。スライダ84が解除位置K2に至ると、この係止爪844とストッパ49b又はストッパ46dとが挿脱方向において当接する。係止爪844におけるスットパ49b又はストッパ46dと当接する面は、挿脱方向と直交する面である。また、スットパ49b及びストッパ46dにおける係止爪844と当接する面も、挿脱方向と直交する面である。これにより、係止爪844がストッパ49b又はストッパ46dにより係止され、解除位置K2のスライダ84はそれ以上の脱出向きへの移動が規制される。ここでは、1つのガイドバー49の両側に2つのスライダ84,84が配設されているが、1つのガイドバー49に形成された1つのストッパ49bでこれら2つのスライダ84,84に設けられた係止爪844,844の両方を係止できるようにしている。このように、隣り合う2つのスライダ84,84で1つのガイドバー49を共用し、さらに、このガイドバー49に形成された一つのストッパ49bを共用するので、各スライダ84に対して所定の数のガイドバーやストッパをそれぞれに設ける場合と比較して、ガイドバー及びストッパの占有空間を削減することができるので、液体カートリッジ付勢ユニット42のさらなる小型化を実現することができる。そして、このような液体カートリッジ付勢ユニットの小型化により、これを備える液体カートリッジの装着部の小型化、さらには、装着部を備える記録装置の小型化に寄与することができる。なお、スライダ84の下面には、係止爪844,844よりも左右方向内側において該スライダ84の後端部から脱出向きに延びる2つの切り欠き850,850が形成されている。この切り欠き850,850により、係止爪844,844が形成されたスライダ84の一部分はレールバー48が挿通されているスライダ84他の部分から左右方向に離れ、独立して弾性変形可能となっている。
【0041】
上述の液体カートリッジ付勢ユニット42を組み立てる際には、レールバー48を付勢体85に挿通させる。次に、付勢体85に挿通されたレールバー48をスライダ84に挿通させる。このとき、スライダ84の被案内溝845内にガイドバー49の側端部分またはガイド形状部46bが位置した状態にて、スライダ84を連結部47に向かって挿入向きに移動させると、係止爪844の挿入向きの端がストッパ49b又はストッパ46dと当接する。ここで、係止爪844の挿入向きの端は、ストッパ49b又はストッパ46d
に当接することによって係止爪844が弾性変形を利用して内側へ移動するように傾斜しており、ストッパ49b又はストッパ46dの脱出向きの端は、係止爪844の挿入向きの端の斜面に倣う傾きを有しているので、スライダ84の係止爪844を含む一部分がストッパ49b又はストッパ46dに当接して左右方向内側へ弾性変形することによって、スライダ84はストッパ46d又はストッパ49bを乗り超えて挿入向きへ移動することができる。そして、一旦、係止爪844がストッパ49b又はストッパ46dを挿入向きに乗り越えると、スライダ84が脱出向きに移動しても、係止爪844の脱出向きの面とストッパ49b又はストッパ46dの挿入向きの面とが当接して係合し、係止爪844がストッパ49b又はストッパ46dを脱出向きに乗り越えて移動することはなく、スライダ84は付勢体85の付勢力に抗して解除位置K2にとどまる。同時に、隣接するサイド部46とスライダ84又は隣接するガイドバー49とスライダ84は、挿脱方向と直交する左右方向に連結される。この作業を、スライダ84の数(本実施の形態では4回)繰り返すことにより、液体カートリッジ付勢ユニット42の組み立てが完了する。
【0042】
前述した通り、ユニットフレーム45は、2つのサイド部46,46の脱出向きの端の間隔を広げるように扇状に弾性変形し得る。従って、4つのスライダ84をユニットフレーム45に順次組み付けていく過程で、仮に隣接するスライダ84とサイド部46又はガイドバー49とが左右方向に連結されなければ、ユニットフレーム45が弾性変形することによりガイドバー49及びサイド部46がスライダ84から左右方向に離れるように移動し得る。こうして隣接するガイドバー49,49同士の間又はガイドバー49とサイド部46との間が左右方向に拡がれば、係止爪844とストッパ49b又はストッパ46dとの係止が解除されて、解除位置K2に留められていたスライダ84が付勢により解除位置K2よりも脱出向きへ移動して、ユニットフレーム45から脱落してしまうこととなる。これに対し、本実施の形態に係る液体カートリッジ付勢ユニット42では、隣接するスライダ84とサイド部46又はガイドバー49がこれらの係止形状部により挿脱方向と直交する左右方向への互いの移動を規制し合うので、ユニットフレーム45の弾性変形が抑制されて、スライダ84がユニットフレーム45から脱落することが抑制される。このように本液体カートリッジ付勢ユニット42では、小型化を実現しつつ、その組立性も向上させることができる。
【0043】
なお、係止し合うスライダ84とガイドバー49との間、及び係止し合うスライダ84とサイド部46のガイド形状部46bとの間は、いずれも若干の遊びが設けられている。よって、スライダ84とこれと隣り合うガイドバー49又はサイド部46が係止形状部(リップ846,49a,46c)の係止によって挿脱方向と直交する左右方向に連結されるが、これによってスライダ84の挿脱方向の移動が妨げられることはない。
【0044】
図6及び図7に戻って、ケース本体40は、開放された脱出向きの端に挿脱開口91を有し、この挿脱開口91から挿入向きに延びる4つの略平行なガイド溝92を内周底面に有している。さらに、ケース本体40の内周上面の各ガイド溝92と対向する部分には、4つのロックレバー87が設けられている。このロックレバー87は、装着位置K1のスライダ84と当接しているインクカートリッジ10の脱出向きの移動を規制したり、この規制を解除したりするための規制体且つ操作具である。
【0045】
ロックレバー87は、装着ケース9の挿脱開口91の近傍に設けられた支軸89に支承されている。ロックレバー87の支軸89を介して挿入向き側は装着ケース9内に配置された作用部87aであり、支軸89を介して脱出向き側は装着ケース9の挿脱開口91よりも外側に配置された操作部87bであり、それぞれ下上又は上下に揺動可能である。ロックレバー87と装着ケース9との間には引張コイルバネである付勢部材88が設けられて、作用部87aは下向きに付勢され、操作部87bは上向きに付勢されている。ロックレバー87の作用部87aは、インクカートリッジ10の上面に形成された係止溝53(
図5(b)参照)に嵌ってインクカートリッジ10の脱出向きへの動きを規制することができる。
【0046】
続いて、上記構成のインク供給装置8において、装着ケース9の装着空間90内へインクカートリッジ10を挿脱する態様について説明する。インクカートリッジ10は、図4に示すように突出部52がインク供給口69の下方に位置する起立姿勢で、且つ、インクカートリッジ10の突出部52の突出向きが装着ケース9の挿入向きと平行となる姿勢で、装着ケース9の挿脱開口91から装着空間90内へ挿入される。装着空間90内に挿入されたインクカートリッジ10を挿入向きへ押圧すると、インクカートリッジ10は装着ケース9の底面に形成されたガイド溝92の底面上を摺動しながら挿入向きへ移動する。この間、ロックレバー87の作用部87aの下端はインクカートリッジ10の上面に当接して押し上げられる。
【0047】
インクカートリッジ10が装着空間90内を挿入向きへ移動するうちに、インクカートリッジ10の突出部52の突出向きの先端が、解除位置K2のスライダ84の当接面841と当接する。ここから付勢体85の付勢力に抗してさらにインクカートリッジ10を挿入向きへ押圧すると、インクカートリッジ10とスライダ84は一体となって挿入向きへ移動し、やがて、スライダ84が装着位置K1に到達する。
【0048】
インクカートリッジ10に押圧されたスライダ84が解除位置K2から装着位置K1まで移動する間に、インク供給筒81がインクカートリッジ10のインク供給口69に挿入される。インク供給口69に挿入されたインク供給筒81は、バルブ本体64をインクカートリッジ10の内側へ押し込み、第二バルブ収容室62内に進入する。このとき、シール部材66は、弾性変形しつつ、インク供給筒81の外周面に密着する。これにより、第二バルブ収容室62内とインク供給筒81の内孔とが連通し、インク収容室51内のインクがインク供給筒81及びチューブ22を通じてサブタンク15bへ供給できるようになる。また、同時に、バルブ操作ピン82によりインクカートリッジ10の大気連通バルブ71のバルブ本体74がインクカートリッジ10の内側へ押し込まれて、大気連通口79が開放されて、インク収容室51内が大気と連通して外部から供給される気体によりインクの減少分が補間できるようになる。
【0049】
そして、スライダ84が装着位置K1まで移動すると、このスライダ84に当接しているインクカートリッジ10の上面に形成された係止溝53にロックレバー87の作用部87aが嵌り込む。係止溝53内に嵌り込んだロックレバー87の作用部87aは、係止溝53内の後壁に当接し、これによって、インクカートリッジ10はこれ以上脱出向きに移動できないように規制される。このようにインクカートリッジ10は、ロックレバー87により脱出向きへの移動が規制されるとともに、スライダ84により脱出向きへ押圧されることによって挿入向きへの移動が規制されて、装着空間90内に保持される。以上のようにして、図11(a)に示すように、装着部99における装着ケース9の装着空間90内にインクカートリッジ10が装着される。
【0050】
一方、インクカートリッジ10が装着空間90から取り出されるときには、先ず、ロックレバー87の操作部87bが押し下げられる。すると、インクカートリッジ10の係止溝53に嵌り込んでいたロックレバー87の作用部87aが上方へ移動して係止溝53から抜け出し、インクカートリッジ10の脱出向きへの移動の規制が解除される。インクカートリッジ10はスライダ84により脱出向きへ押圧されているので、脱出向きへの移動の規制が解除されると脱出向きへ移動を始める。
【0051】
スライダ84が装着位置K1から解除位置K2まで移動する間は、スライダ84とこれに当接しているインクカートリッジ10とは一体となって脱出向きへ移動する。この間、
インク供給筒81がインク供給バルブ61のバルブ本体64から離れてインク供給口69が閉じられ、インク供給筒81はインク供給口69から抜き出される。また、バルブ操作ピン82が大気連通バルブ71のバルブ本体74から離れて大気連通口79が閉じられる。そして、図11(b)に示すように、スライダ84が解除位置K2に至ると、スライダ84は脱出向きへの移動を停止するが、インクカートリッジ10はスライダ84から離れて慣性によりそのまま脱出向きへ移動を続けて装着ケース9から脱出する。このように、ユーザーがロックレバー87を操作すれば装着ケース9からインクカートリッジ10が自動的に搬出されてくるので、ユーザーは装着ケース9内へ手を入れて汚すことなく簡単にインクカートリッジ10の着脱作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る液体カートリッジ付勢ユニットは、液体カートリッジをこれが装着されている装着ケースから脱出させる方向へ付勢するための小型化が可能な構造として有用であり、上記実施の形態に限定されることなく液体カートリッジと装着ケースを備えたインク供給装置及び記録装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 記録装置
2 プリンタ部
3 スキャナ部
8 インク供給装置
9 装着ケース
10 インクカートリッジ(液体カートリッジ)
22 チューブ
31 ケース本体
32 後部カバー
33 前部カバー
42 液体カートリッジ付勢ユニット
45 ユニットフレーム
46 サイド部
47 連結部
48 レールバー
49 ガイドバー
49a リップ(係止形状部)
49b ストッパ
51 インク収容室
52 突出部
60 インク供給部
61 インク供給バルブ
64 バルブ本体
70 大気連通部
71 大気連通バルブ
74 バルブ本体
81 インク供給筒
82 バルブ操作ピン
84 スライダ
841 当接面
844 係止爪
845 被案内溝
846 リップ(係止形状部)
85 付勢体
87 ロックレバー
90 装着空間
91 挿脱開口
92 ガイド溝
99 装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体カートリッジを第一の向きへ移動させることによって装着できるカートリッジ装着部に設けられ、前記液体カートリッジに当接するスライダを備えて該液体カートリッジを前記第一の向きと対向する第二の向きへ付勢できる液体カートリッジ付勢ユニットであって、
前記第一の向きに延びる2つの略平行なサイド部と、この2つのサイド部の前記第一の向きの端同士を繋ぐ連結部と、前記2つのサイド部間において前記連結部から前記第二の向きに延びる1つ以上のガイドバーとを有するフレームと、
隣り合う前記サイド部と前記ガイドバーの間及び隣り合う前記ガイドバー同士の間に1つずつ配置され、解除位置と該解除位置より前記第一の向きに隔てられた装着位置との間を前記ガイドバーに案内されて往復移動できる2つ以上のスライダと、
前記スライダの各々を前記第二の向きへ付勢する2つ以上の付勢体と、
前記1つ以上のガイドバーに配置されており、前記2つ以上のスライダの各々に当接して前記スライダが前記解除位置から前記第二の向きへ移動するのを規制できる1つ以上のストッパとを備え、
前記スライダとこれを案内する1つ以上の前記ガイドバーは、前記第一の向きと直交する方向へ互いに離れるように移動するのを規制できる係止形状部を各々に備えている、液体カートリッジ付勢ユニット。
【請求項2】
前記ガイドバーは前記スットパを1つ備えており、当該1つのストッパはその両側に配置された2つの前記スライダに当接することができる、請求項1に記載の液体カートリッジ付勢ユニット。
【請求項3】
前記付勢体は、前記連結部と前記スライダとの間であって、当該スライダの両側に配置された一方の前記ガイドバーと他方の前記ガイドバーの間、又は当該スライダの両側に配置された前記サイド部と前記ガイドバーとの間に配設されている、請求項1又は請求項2に記載の液体カートリッジ付勢ユニット。
【請求項4】
前記フレームは、前記スライダと同じ数の前記連結部から前記第二の向きに延びるレールバーを更に有し、
前記レールバーは、前記スライダと、該スライダと前記連結部との間で圧縮される前記付勢体としてのコイルバネとに挿通されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体カートリッジ付勢ユニット。
【請求項5】
前記サイド部は、前記解除位置の前記スライダよりも前記第二の向きへ延設されており、この延設された部分に前記カートリッジ装着部の他の部分へ前記フレームを固定するための固定形状部を備えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体カートリッジ付勢ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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