説明

液体ディスペンサ装置

液体容器(R)と組み合わされる液体ディスペンサ装置であって、チャンバ(10)であって、入り口弁(5、15)、出口弁(32、232)、そしてチャンバの容積を変化させるのに適したピストン(3)、を備えたチャンバと、
液体ディスペンサ開口部(25)と、休止位置と押下位置との間を軸方向に上下移動することが可能なプッシャ(2)と、を有し特徴となるのは、プッシャ(2)は弾性変形可能な壁(212)を有し、当該壁(212)は、プッシャの他の部分に対し移動可能で、ピストン(3)は少なくとも瞬間的に変形可能な壁(212)と接触して、壁が変形させられている間にプッシャの他の部分に対し移動する形で押され、それにより出口弁が開くことである、というディスペンサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に液体容器と組み合わされ、液体容器と共に液体ディスペンサを構成する液体ディスペンサポンプに関する。また、本発明は、一般的にユーザが指を使って手動で駆動するディスペンサ部材に関する。液体は、細かいスプレー液滴の噴流、切れ目のない細流、さらには液体(具体的に言えば、化粧品クリームといった粘性のある液体)の小さな塊の形で投与される。そうした液体ディスペンサ部材は、具体的に言えば、香水、化粧品、さらには医薬品の分野において、多かれ少なかれ粘性のある液体を投与するため用いることができる。
【0002】
さらに具体的にいえば、本発明は、限定的ではないが、一般的に「プッシャポンプ」として知られるタイプのポンプに関する。この用語は、ディスペンサ部材がプッシャを有し、プッシャには、ディスペンサ開口部だけでなく液体チャンバの一部分が形作られ、液体チャンバの中の液体には選択的に圧力が加えられている、という事実から説明できる。ポンプには、(通常は実質的に筒状の形をした)プッシャの内面が出口弁ピストンの密封様態のスライド用シリンダとして働き、前記出口弁ピストンは、シリンダの内部を密封様態で接触しながら移動し、それにより、ディスペンサ開口部を選択的に開くというものもある。一般的に、ピストンは差動式のタイプで、チャンバ内部の液体の圧力の変化に応じて移動する。また、こうしたプッシャポンプの中には、弁ピストンとメインピストンとが存在し、これらピストンは、それぞれのシリンダの中で密封様態で接触しながら移動することができる。2つのピストンを一体化して作り、全体としてのユニットを、メインピストンリップと出口弁リップとを有するものとして、単に「ピストン」と呼ぶこともできる。
【背景技術】
【0003】
先行技術においては、特許文書WO97/23304号、US4 050 613号、WO2005/063405号が知られ、これら全てで、上述した原理で動作するプッシャポンプについて説明がある。いずれにおいても、プッシャと、貯蔵器の開口部にリングを用いてしっかりと設置された本体と、そして、メインピストンリップおよび1つまたは2つの出口弁リップを形成し、メインピストン機能および弁ピストン機能を組み込んだ差動ピストンと、を有するポンプについて説明がある。差動ピストンは、圧力の変化に応じてプッシャの内部でスライド移動する。本体、プッシャ、そして差動ピストンは共にチャンバを形成している。チャンバの中で圧力が上昇すると、差動ピストンはプッシャに対し移動される。加えて、チャンバの入り口弁は、ボール、変形可能なフラップ弁、または差動ピストンそのものによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO97/23304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そうしたタイプのポンプが直面する問題は、ポンプのプライミング(すなわち、チャンバに容器からの液体を初めて充填する作業)である。上述した従来技術の特許文書では、そうした問題は取り扱われていない。初期状態においてチャンバに入っていた空気をポンプにより容器内部に放出することができる従来型のディスペンサと違い、プッシャポンプでは、それが不可能であることが多い。なぜなら、プッシャポンプは極めて容積の小さな容器に設置されているためである。それゆえ、初期状態においてチャンバに入っていた空気を容器に放出することはできない。容器は液体で完全に満たされているからである。容積の小さい容器の中に空気を放出すれば、容器に貯蔵された液体の圧力は上昇するため、ポンプの故障にもつながりかねない。結果として、従来技術による解決法を容積の小さな容器(プッシャポンプが全体にわたって設置された容器など)に応用することはできない。さらに一般的に言えば、本発明の目的は、液体ディスペンサ装置を単純な形で、ステップを追加することなく、かつ低コストにプライミングすることである。空気を容器に放出することを本質とする解決法は不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成のため、本発明は、液体容器と組み合わされる液体ディスペンサ装置であって、チャンバであって、入り口弁、出口弁、そしてチャンバの容積を変化させるのに適したピストン、を備えたチャンバと、液体ディスペンサ開口部と、休止位置と押下位置との間を軸方向に上下移動することが可能なプッシャと、を有し特徴となるのは、プッシャは弾性変形可能な壁を有し、当該壁は、プッシャの他の部分に対し移動可能で、ピストンは少なくとも瞬間的に変形可能な壁と接触して、壁が変形させられている間にプッシャの他の部分に対し移動する形で押され、それにより出口弁が開くことである、というディスペンサ装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
効果的な実施の形態において、ピストンは、チャンバの中の液体の圧力の変動によって移動されるのに適した差動ピストンであって、プッシャの変形可能な壁と瞬間的に接触が途絶えることとする。
効果的な構成として、チャンバの中の圧力が事前決定された閾値より小さければ、ピストンは、戻しスプリングによりプッシャの方へ動かされて、当該プッシャと接触することとする。
【0008】
効果的な構成として、プッシャはチャンバの一部分を形作っていることとする。
効果的な構成として、出口弁は、移動可能な弁部材と弁シートとを有し、当該弁部材はピストンに固着され共に移動することとする。
効果的な構成として、プッシャには、壁の変形によってピストンが移動することで出口弁が開く、という形で出口弁の弁シートが形成されていることとする。この構成では、出口弁は、ピストンとプッシャとの間の位置に形成され、通常の動作においては、ピストンはチャンバの中の液体の圧力の上昇に応じてプッシャの中で移動される。しかし、チャンバに液体がない場合(たとえば、最初の充填が行われる前の状態では)、ピストンは空気を圧縮するだけなので、プッシャの中で移動することはない。つまり、チャンバの中の圧力は、ピストンがプッシャの中で移動するために必要な閾値に達しない。このように、従来技術の特許文書において、チャンバに最初に液体が充填される前にプッシャを駆動しても、それによって得られる結果は、チャンバの中に貯まった空気の圧縮のみである。ピストンはプッシャの中で移動しないため、出口弁は開かない。本発明によれば、出口弁シートが形作られたプッシャの部分に対し、ピストンを移動させることが可能となる。このことが可能となる理由は、プッシャが弾性変形可能な壁を有し、当該壁により、出口弁シートが形作られたプッシャの他の部分に対してピストンを移動させることができるためだ。本明細書において、本発明はプッシャポンプの中で利用できるものとして説明しているが、他のタイプのポンプでも(さらに具体的に言えば、出口弁を開くためにはピストンが必ずプッシャに対し移動しなければならない、という液体ディスペンサであれば、いかなるタイプでも)用いることができる。
【0009】
効果的な実施の形態において、出口弁の弁シートは、弁スライド用シリンダを有し、プッシャには、前記シリンダの位置で、ディスペンサ開口部が形作られていることとする。効果的な構成として、装置は容器の開口部に設置される本体をさらに有し、当該本体には、前記ピストンがスライド可能な形で収容するシリンダが形成され、前記ピストンは、ピストン収容シリンダで耐漏洩様態でスライド接触するピストンリップと、弁シリンダでスライド接触する弁リップと、そして、変形可能な壁と接触する受け面とを有することとする。
【0010】
本発明の別の側面において、プッシャは、受けプレート、ディスペンサ開口部が形成された周縁スカート、そして前記プレートに形成された変形可能な壁(効果的な構成としてプレートの厚みを薄くする形で形成されたもの)を有し、ユーザは指を使って前記受けプレートに力を加えることができる。スカートは、効果的な構成として、押下位置において本体と受け接触することとなり、そうして、変形可能な壁が変形されることで、ピストンは移動し、そうして出口弁が開く。ピストンは、効果的な構成として、押下位置においては壁と接触している。変形可能な壁は、効果的な構成として、変形に対する耐性を示し、当該耐性は、スプリングにから加わる力を上回り、チャンバに存在し得る最大圧力を上回るか、またはそれと等しい。壁は、効果的な構成として、プッシャが押下位置に達した後に変形される。
【0011】
従って、ポンプがいったんプライミングされた後は、プッシャの変形可能な壁が前記ポンプの通常動作中に変形されることはない。変形可能な壁は、プライミング時にのみ、プッシャを強く押す形で利用できる。その後の通常動作中にポンプに加わる力は、壁を変形させるためには不十分である。当然のことながら、ユーザがプッシャをその押下状態において極めて強く押したなら、プッシャの壁は変形するだろう。しかしながら、通常の使用条件においては、壁は動かない状態のままである。ピストンの壁は、ディスペンサが充満され切って閉じられた直後に自動的に変形し得る。また、ディスペンサの初回使用時にユーザによって変形され得る。さらに、変形可能な壁は、ディスペンサ装置が未だ使用されていないことをユーザに示し、未使用を証明する役割も果たす。
【0012】
本発明について、以下、非限定的な例として本発明の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を構成する液体ディスペンサ装置を休止状態において示す縦断面図である。
【図2】図1と同様の図であって、プライミングを行うための押下状態において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図のディスペンサ装置は、ポンプであって、ネックCを有する貯蔵器Rに組み合わされた状態で示されており、前記ネックCに本発明のディスペンサ装置が固定されている。
ポンプは、5つの部品、すなわち、本体1、プッシャ2、ピストン3、スプリング4、そして入り口弁部材5を有する。ポンプは、ディップチューブ6をさらに有することとしてもよい。本体、プッシャ、ピストン、弁部材5、そしてディップチューブ6は、好ましい構成として、プラスチック素材を成形して作られる。ポンプはポンプチャンバ10を有する。
【0015】
本体1は、固定リング11を有し、当該固定リング11はネックCと協働してポンプを貯蔵器Rに固定する。リング11は、ネックの外側と係合する。さらに、本体には自動密封リップ12が形成され、当該自動密封リップ12は、ネックの内側壁と耐漏洩様態で係合している。本体1には、誘導ブッシング14がさらに形成されている。また、本体には、メインピストン収容シリンダ17がさらに形成され、当該シリンダ17の内部には耐漏洩様態のスライド面が形作られている(スライド面の機能については後述する)。本体には、入り口スリーブ16がさらに形成され、当該入り口スリーブ16には入り口弁シート15が形成されている。ディップチューブ6はスリーブ16に接続しており、スリーブの中を入り口ダクト18が通る形となっている。入り口スリーブ16はメインシリンダ17の下方に、その同軸を中心として筒状の形で延びている。
【0016】
本体1は、入り口ダクト18の中心軸に沿って縦方向に延びる軸Xを中心として円形に対称となっている。
これは、本発明の実施の形態を構成するディスペンサ装置の特定の本体のための特定のデザインである。当然のことながら、本発明の範囲を逸脱しないのであれば、本体が上述した特徴以外の特徴を呈することとしてもよい。
【0017】
プッシャ2はポンプのディスペンサヘッドを形成している。プッシャ2は、受けプレート21と周縁スカート22とを有し、当該周縁スカート22は、受けプレートの外周縁から下向きに延びている。つまり、プッシャ2は、全体的にバケツを伏せた形状をしており、バケツで言えば、受けプレートが底、スカートが筒状の側壁である。ただし、スカートは必ずしも筒状の形状でなくてもよい。スカートは、円錐台状または円形状の断面を呈することとしてもよい。
【0018】
受けプレート21は受けゾーン211を有し、当該受けゾーン211は1本または複数本の指を使って押すことができる。本発明において、プレートは、弾性変形可能な壁212を有し、当該壁は、受けゾーン211内に置かれている。受けゾーンが変形可能な壁を有していると言うこともできる。本実施の形態において、変形可能な壁212は、プレート21の壁の厚みを薄くすることによって作られる。また、壁212は、(たとえば、二重射出またはオーバーモールドを利用して)プッシャの他の部分を上回る可撓性を有したプラスチック素材で作ることができる。壁212の中心は軸Xに来る。こうした構成により、壁212は、変形させることによってプッシャの他の部分に対し相対的に移動可能である。
【0019】
スカート22は、上部ディスペンサ壁23と下部誘導壁24とを有する。ディスペンサ壁23の上側の端は、受けプレート21の外周縁に接続している。ディスペンサ壁23は、外側面231と内側面232とを有する。内側面232は、好ましい構成として、円筒状で、後述するように出口弁のスライド用シリンダを形作っている。加えて、ディスペンサ壁23は、貫通ディスペンサ開口部25を備えた形で形成されており、当該貫通ディスペンサ開口部25は前記ディスペンサ壁23の内側面と外側面との間で延びている。ディスペンサ開口部25は、外側面の拡散皿251に向って開く。
【0020】
本発明の効果的な特徴によれば、ディスペンサ壁23の内側壁232には渦システムが形成され、当該渦システムにより、液体を渦の形で回転させ、渦の目がディスペンサ開口部の中心に来る、という形にすることができる。
誘導壁24はその内側面に誘導ブッシング14と協働するための受けビード241を有する。受けビード241により、プッシャは本体に取り付けられ、その取り付けの様態は、当該プッシャは所定の最大ストロークを超えない範囲で軸方向に移動できる、というものとなる。
【0021】
本実施の形態において、ピストン3はリップ36の形のメインピストンと2つのリップ32、33で形成される弁ピストンとを有し、リップ36はシリンダ17の内側に係合して耐漏洩様態でスライド接触し、2つのリップ32、33は、ディスペンサ壁23の内側面232によって形成されたシリンダと耐漏洩様態でスライド接触する。ピストン3は、効果的な構成として、単一部品として作られている。ピストン3は、チャンバの中の圧力の変化に応じて移動する差動ピストンである。上部リップ32は、ディスペンサ開口部25の上方において内側面232と接触し、一方、下部リップ33は、開口部25の下方において内側面232と接触している。これは休止状態を示し、休止状態において、ピストン3はスプリング4により受けプレート21に押し付けられており、当該スプリング4は、第1に、本体と接し、第2に、ピストン3に形成された環状フランジ31の下方に受け止められている。また、2つのリップ32、33は、フランジ31の外周縁上に形成されている。フランジの中心には受けスタッド34が形成され、当該受けスタッド34には、プッシャの変形可能な壁212と接触する面341が形作られている。差動弁のピストンは、2つのリップ32、33が形成されたフランジ31で形成されていると考えることができる。さらに、ピストン3にはロッド35が形成され、当該ロッド35の下部の端にはメインピストンとして働くピストンリップ36が形成されている。リップは、本体のシリンダ17の中に、密封様態でスライド移動する形で係合している。ロッドは、接続チャネル37を、当該ロッドを貫通する形で有し、接続チャネルはピストンリップ36をフランジ31に接続する。ロッドの上部の端はスタッド34によって、下部の端はリップ36によって形成されている。
【0022】
本体1、プッシャ2、そしてピストン3は共にポンプチャンバ10を形成し、当該ポンプチャンバ10は、メインシリンダ17の内部で、接続チャネル37を通り、プレート21とフランジ31の間まで切れ目なく延びている。図1に示す休止状態において、ピストン3はスプリング4によって押され、変形可能な壁に受け止められる形で接触している。入り口弁は閉じている。差動ピストンの2つのリップ32、33は、ディスペンサ壁23の内側面232によって形成されたシリンダと接触している。
【0023】
受けゾーン211に力を加えると、プッシャは本体1に対し軸方向に移動される。ピストンが壁212に受け接触している場合、ピストンはプッシャによって押されている。初期状態においては、プッシャが移動されれば入り口弁が押し下げられる。そこで、ポンプチャンバ10は貯蔵器Rから隔離される。その瞬間から、ポンプチャンバ10の中の液体に圧力が加えられる。液体は圧縮不可能なため、ポンプチャンバの総動作容積は必ず一定のまま保たれる。しかし、メインピストン36は押されてシリンダ17の中へと下がり、それによりチャンバの下部分の容積が縮小するため、新たに容積を作らなければならない。これは差動ピストンが受けプレート21から離れる形で移動することで可能となる。これにより、リップ32、33はディスペンサ壁23の内部でスライド移動する。こうしてリップは移動し、最終的に上部リップ32がディスペンサ開口部に達する。その瞬間、ポンプチャンバの中で圧力をかけられた液体は、ディスペンサ開口部を通る出口経路に達する。そうして、この経路は、チャンバ内部の圧力がスプリング4の力を上回ることができる限り、開いたままの状態となる。チャンバの内部の圧力が特定の閾値を下回ると、ピストンはスプリング4によって図1に示す休止位置の方へ押される。その際にディスペンサ開口部は再びポンプチャンバから隔離される。これは、プライミング終了後の(すなわち、チャンバが液体で充填された状態での)ポンプの通常の動作サイクルに当たる。
【0024】
反対に、チャンバ10に液体が入っておらず、空気のみで満たされている場合(すなわち、製造および組み立て後の初回使用前の状態では)、チャンバ内部の圧力がプッシャの内部のピストンを移動させるのに必要十分な閾値に達していないため、動作サイクルは起こり得ない。空気は、圧縮不可能な液体とは対照的に、圧縮可能な媒体である。つまり、チャンバの空気を外に出さなくてもプッシャが駆動することはできる。これは従来技術による装置の場合だが、そうした問題点に、本発明は、プッシャに弾性変形可能な壁212を持たせることで対処している。図2を参照する。ポンプが完全に押下された状態で見て取れ、スプリング4は最大限圧縮されている。チャンバ10は最小容積の状態となっている。プッシャのスカートは、本体の固定リング11と受け接触している。それから、プッシャ2の変形可能な壁212を強く押せば、前記壁は内向きに湾曲する形で変形する。この力は、図においてFで示されている。受けスタッドが壁212と接触していれば、ピストン3は軸方向下向きに移動する。言い換えれば、ピストン3がプッシャの他の部分に対し移動するのは、変形可能な壁212が同様にプッシャの他の部分に対し移動したことにより、前記ピストン3が押されるためである。これにより、リップ32、33は、プッシャにより形成されたシリンダの内部でスライド移動する。壁212を十分に変形させることにより、上部リップ32がディスペンサ開口部25からわずかに外れ、それにより、チャンバ内部で圧力をかけられた空気のための放出路が作られる。これは、図2に示されており、空気の放出は点線Aで表されている。リップ32は開口部25から完全に外れる必要はない。つまり、圧力をかけられた空気が開口部25を通って外側に放出され得るだけの小さな隙間があるだけで十分である。こうして、チャンバ10から、初期状態においてその内部に取り込まれていた空気が外に出て行く。受け力Fが減少すると、変形可能な壁212は非変形状態に戻り、それによってリップ32と開口部25との間の通路が再び閉じる。そして、チャンバは再び外部から隔離され、スプリング4が緩んでピストンとプッシャとが図1に示す休止位置に戻ると、空間が生じる。生じた空間により、入り口弁の弁部材5は上昇し、そうすると、容器から来る液体はディップチューブ6を通って上り、チャンバ10の中に入り、当該チャンバ10が初めて液体で充填され始める。
【0025】
留意すべき点として、受けプレート21には受けリング26が形成され、当該受けリング26は休止位置においてピストン3のフランジ31に載った状態となる。スプリング4により生じ、スタッド34から壁212に加えられる受け力の一部分は、リング26によって吸収される。図2に示すプライミング時の押下状態において、リング26はフランジ31と接触していない。
【0026】
効果的な構成として、変形可能な壁212は変形に対する耐性を示し、当該耐性は、スプリング4から加わる力を上回り、また、チャンバ10内部に存在する圧力を上回るか、またはそれと等しい。壁212は、ポンプの通常動作条件のもとでは変形しないことが好ましい。言い換えれば、ポンプがいったんプライミングされれば、もはやユーザは通常、液体の投与のためにプッシャを押す際も壁212を変形させなくてもよい。この目的ためには、壁212に満足いく程度の厚みを持たせれば足りる。当然のことながら、ユーザが押下状態において壁212を極めて強く押せば、当該壁は変形する。しかし、ポンプチャンバ10の中身がすでに空になっていれば、前記変形はポンプの動作に影響を及ぼさない。受け力を緩めることにより、壁212はまず非変形状態に戻り、その後になって初めてスプリング4は緩み始める。
【0027】
以上のように、プッシャの変形可能な壁によって出口弁を開け、初期状態においてポンプチャンバの中に閉じ込められていた空気のための放出路を作ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器(R)と組み合わされる液体ディスペンサ装置であって、
チャンバ(10)であって、入り口弁(5、15)、出口弁(32、232)、そしてチャンバの容積を変化させるのに適したピストン(3)、を備えたチャンバと、
液体ディスペンサ開口部(25)と、
休止位置と押下位置との間を軸方向に上下移動することが可能なプッシャ(2)と、を有し
特徴となるのは、
プッシャ(2)は弾性変形可能な壁(212)を有し、当該壁(212)は、プッシャの他の部分に対し移動可能で、ピストン(3)は少なくとも瞬間的に変形可能な壁(212)と接触して、壁が変形させられている間にプッシャの他の部分に対し移動する形で押され、それにより出口弁が開くことである、
というディスペンサ装置。
【請求項2】
ピストン(3)は、チャンバの中の液体の圧力の変動によって移動されるのに適した差動ピストンであって、プッシャの変形可能な壁と瞬間的に接触が途絶えること、
を特徴とする請求項1に記載のディスペンサ装置。
【請求項3】
チャンバ(10)の中の圧力が事前決定された閾値より小さければ、ピストン(3)は、戻しスプリングによりプッシャ(2)の方へ動かされて、当該プッシャ(2)と接触すること、
を特徴とする請求項1または2に記載のディスペンサ装置。
【請求項4】
プッシャ(2)はチャンバ(10)の一部分を形作っていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスペンサ装置。
【請求項5】
出口弁は、移動可能な弁部材(32)と弁シート(232)とを有し、当該弁部材はピストン(3)に固着され共に移動すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスペンサ装置。
【請求項6】
プッシャ(2)には、壁(212)の変形によってピストン(3)が移動することで出口弁が開く、という形で出口弁の弁シート(232)が形成されていること、
を特徴とする請求項5に記載のディスペンサ装置。
【請求項7】
出口弁の弁シートは、弁スライド用シリンダ(232)を有し、プッシャ(2)には、前記シリンダの位置で、ディスペンサ開口部(25)が形作られていること、
を特徴とする請求項6に記載のディスペンサ装置。
【請求項8】
容器(R)の開口部(C)に設置される本体(1)をさらに有し、当該本体(1)には、前記ピストン(3)がスライド可能な形で収容するシリンダ(17)が形成され、前記ピストン(3)は、ピストン収容シリンダ(17)で耐漏洩様態でスライド接触するピストンリップ(36)と、弁シリンダ(232)でスライド接触する弁リップ(32)と、そして、変形可能な壁(212)と接触する受け面(341)とを有すること、
を特徴とする請求項7に記載のディスペンサ装置。
【請求項9】
プッシャ(2)は受けプレート(21)と周縁スカート(22)とを有し、ユーザは指を使って前記受けプレート(21)に力を加えることができ、前記周縁スカート(22)にはディスペンサ開口部(25)が形成されており、変形可能な壁(212)は、効果的な構成として、プレート(21)に、当該プレート(21)の厚みを薄くすることにより形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のディスペンサ装置。
【請求項10】
スカート(22)は押下位置において本体(1)と受け接触し、そうして、変形可能な壁(212)が変形することでピストン(3)は移動し、それにより出口弁が開くこと、
を特徴とする請求項9に記載のディスペンサ装置。
【請求項11】
ピストン(3)は押下位置において壁(212)と接触すること、
を特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のディスペンサ装置。
【請求項12】
変形可能な壁(212)は変形に対する耐性を示し、当該耐性は、スプリングから加わる力を上回り、また、チャンバ10内部に存在し得る最大圧力を上回るか、またはそれと等しいこと、
を特徴とする請求項3に記載のディスペンサ装置。
【請求項13】
壁は、プッシャがその押下位置に達した後に変形すること、
を特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のディスペンサ装置。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−504852(P2010−504852A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529737(P2009−529737)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051973
【国際公開番号】WO2008/037909
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】