説明

液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物

本発明は、液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物、該液状組成物を含む物品、該液状組成物から得られるゲル、該ゲルを含む物品、及び該液状組成物の使用に関する。該液状組成物は、液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含み、該組成物において該ポリマー鎖は該ポリマー鎖中に存在する官能基により該無機物質の粒子に結合されており、使用されるポリマーは使用される液体中で下限臨界溶解温度を有し、かつ該液状組成物は熱に誘発されるゲル化を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物、該液状組成物を含む物品、該液状組成物から得られるゲル、該ゲルを含む物品、及び該液状組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2004/098756号から、2つの異なるポリマー、即ちポリ(N―イソプロピルアクリルアミド)のコポリマーと親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)又はポリエチレングリコール、とのポリマーブレンドを含む、熱ゲル化ハイドロゲルが公知である。該公報に記載された該ポリマーブレンドは室温において液体から固化して、体温において固体を形成する。そのようなポリマーブレンドが使用されて、体温より下でポリマーブレンドを液体として体の選択された場所に注射することにより体にハイドロゲルを移植することができ、次に、該場所において、該ポリマーブレンドは、該移植物が体温まで温まるにつれて体内において固体のハイドロゲルを形成する。該ポリマーブレンドの固化は、親水性ポリマーの水酸基とポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)のアクリルアミド基の間の鎖間の水素結合の結果であると考えられている。該ハイドロゲルは、多様な医療用移植目的のために使用されることができる。しかし、使用される該ポリマーのそれぞれの濃度は、該ブレンドの水分含有量に比較すると相対的に高く、このことはこれらのブレンドを相対的に高価にする。その上、得られる移植は追加の機能、例えば移植の場所における医薬成分の緩慢な放出、を示すことが所望され得る。しかし、そのようなポリマーブレンドの機能の強化は、要求される機能を示す化学基の共有結合を要求し、そのために、ほとんど柔軟性を許さない相対的に複雑な方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、例えば移植、において同様に使用されることができるが、より安価であり、製造するのが容易であり、簡単な方法でその機能が強化されることを魅力的に許す組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚いたことに、これは液体中に特定のポリマーの鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物を使用するとき実現されることができることが今見出された。
【0005】
従って、本発明は、液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物において、該ポリマー鎖が該ポリマー鎖中に存在する官能基により該無機物質の粒子に結合されており、使用されるポリマーは使用される液体中で下限臨界溶解温度を有し、かつ該液状組成物は熱に誘発されるゲル化を示す該組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液状組成物は非常に容易に製造されることができ、より少量の高価な物質を必要とし、かつ種々の機能の簡単な実施を許すという利点を有する。さらに、無機粒子の使用は、特定の若しく自己集合性の構造を有するゲル又は骨を刺激する性質を有するゲルの形成を許す。
【0007】
本発明に従う液状組成物において、ポリマー鎖は、該ポリマー鎖に存在する官能基により該無機物質の粒子に結合されている。ポリマー鎖と無機粒子との間の結合は、物理性又は化学性、例えばイオン結合、共有結合若しくは配位結合又は水素結合のいずれかであることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に従って使用されるポリマーは、使用される液体中において、下限臨界溶解温度(LCST)を有する。これは、ポリマーが液体において下限臨界溶解温度挙動を示すことを意味する。当業者に理解されるように、LCSTより低い温度では該ポリマーは親水性を示し、その結果該液状組成物は液体である。LCSTに近似する温度又はそれより上の温度においては、該ポリマーは疎水性を示し、その結果該液状組成物はゲル性を示す。言い換えると、LCSTより上では、該液状組成物はゲルになる。従って、本発明の液状組成物は熱に誘発されるゲル化を示す。
【0009】
好ましくは、本発明に従う液状組成物は、可逆な熱ゲル化性を示す。これは、該液状組成物の温度が該ポリマーのLCSTより上に上げられたとき該組成物がゲルになるが、該組成物の温度が該ポリマーのLCSTより下に下げられたとき、該組成物はそのようにして得られたゲルから液体に再び戻ることを意味する。この点において、本発明のある態様においては、該ゲルの温度がポリマーのLCSTより下の温度に下げられたとき、再び液体に戻らない場合もあることに留意されたい。これは、例えば、1以上の官能基を有するポリマー鎖が、(合成)粘土、例えばラポナイト、に結合されている態様において観察される。ゲル化の不可逆性は、無機粒子に結合されたポリマー鎖が再配列し、系の架橋をもたらし、該系はポリマーのLCSTより下に冷却してもゲルのままでいることにより起きると考えられている。不可逆な熱ゲル化は、無機粒子に結合する官能基を一つしか有しないポリマーの場合には観察されない。
【0010】
LCSTより低い温度において無機の粒子をポリマーの溶液と混合すると、該ポリマー鎖は、ポリマーが無機粒子と結合されるように無機粒子と結合を形成するが、該無機粒子は大きい程度まで相互に結合されるわけではない(即ち、無機粒子がポリマーを通して架橋されている架橋系はない)と、本発明者らは、理論に拘束されることを望むことなく信じている。この状況は図1A及び1Bに模式的に示される。図1Aにおいて、ポリマーはただ一つの官能基で粒子に結合され、該ただ一つの官能基は、別々の粒子の間の相互の結合をもたらさない。図1Bにおいて、ポリマーは、1以上の官能基で粒子に結合されているが、別々の粒子間には非常に制限された相互結合しかない。両方の場合において、系は全体として液体のままである。LCSTより上の温度まで加熱するとLCSTの結果ポリマー鎖は、より疎水性になり、他のポリマー鎖と集合する。別々の無機の粒子に結合したポリマー鎖(すなわち一つの無機粒子に結合した一のポリマー鎖及び別の無機粒子に結合した別のポリマー鎖)が一緒に集合するとき、それらは一種の物理的架橋を形成し、該架橋は2つの別々の無機の粒子を相互に結合する。このようにして、LCSTより上の温度において、別々の無機の粒子は、該ポリマーのそれぞれに結合されているポリマー鎖により架橋される。この状況は図1C及び1Dにおいて模式的に示されている。このようにして形成された、架橋された系は、もう液体に可溶ではないが、内部に液体の一部又は全部を保持するゲルを形成する。
【0011】
適切には、無機物質の粒子は、平均して、無機物質の2個以下の他の粒子に相互に結合されている。本発明の文脈において、用語「平均して」は、任意の他の粒子に相互に結合されていない無機粒子を数えないで、任意の無機粒子に相互に結合されている他の無機粒子の数平均が2以下であることを意味する。実際には、これは、無機粒子がポリマー鎖と架橋されたネットワークを形成しないことを意味する。
【0012】
好ましくは、無機物質の粒子の少なくとも90%が無機物質の他の粒子に相互に結合されていない。
【0013】
本発明の液状組成物において、ポリマー鎖上の官能基(A):粒子のイオン交換の容量(B)の比は、1.1(A/B)より小さい。これは、ポリマーの量と比較したとき、ごく少量の無機物質が使用される必要があることを意味する。
【0014】
好ましくは、ポリマー鎖上の官能基(A):粒子のイオン交換の容量(B)の比は、1.0(A/B)より小さい。
【0015】
適切には、該液体は組成物全体に基づいて60〜99重量%の量で存在する。好ましくは、該液体は組成物に全体に基づいて70〜98重量%の範囲の量で存在する。
【0016】
適切には、液体は水及び1以上の溶媒を含む。好ましくは、水は液体全体に基づいて50重量%超の量で存在する。適切には、1以上の溶媒は、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、蟻酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンからなる群から選択される。本発明の好ましい態様において、該液体は、水及びエチレングリコールを含む。別の好ましい態様において、液体は水からなる。一つの実施態様において、該液体は塩又は他の溶質を含む。
【0017】
本発明において使用されるポリマーの下限臨界溶解温度は、適切には−40℃〜300℃の範囲である;ポリマーの下限臨界溶解温度は、好ましくは−20℃〜100℃の範囲である。
【0018】
本発明に従って使用されるポリマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アリルアミン、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート及びN−ビニル−N,N−二置換アミド(例えばN−ビニルカプロラクタム又はビニルエチルイミダゾール)のポリマー及びコポリマー、エチレングリコール及びプロピレングリコールのポリマー及びコポリマー、オリゴ(エチレングリコール)を含む界面活性剤、ビニルアセテート及びビニルアルコールのポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体から成る群から適切に選択されることができる。本発明に従って使用されるポリマーは、無機粒子に結合されることができる1以上の官能基を取り込んでいる。
【0019】
ポリマー鎖に存在する官能基は、ヒドロキシル、アミン、エポキシド、酸、無水物、アンモニウム、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、シラン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、ホスフィナイト、サルファイド、ジサルファイド、マレイン酸、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、ホスホニウム、スルホニウム、オキソニウム、エーテル、又はアルデヒドからなる群から適切に選択されることができる。
【0020】
好ましくは、本発明に従う液状組成物において使用されるポリマーは、アミノ末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、スルホネート末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アリルアミン)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−トリメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−4−ビニルベンゼンスルホネート)又はポリエーテルアミンを含む。
【0021】
本発明の液状組成物におけるポリマー鎖は、適切には、500〜100000ドルトンの範囲の数平均分子量を有する。好ましくは、該ポリマー鎖は1000〜10000ドルトンの範囲の数平均分子量を有する。
【0022】
本発明に従って使用される粒子は無機物質から誘導される。適切には、該無機物質は鉱物、シリケート、金属酸化物、合成粘土、及び層状複水酸化物からなる群から選択される。好ましくは、該無機物質はハイドロタルサイト、スメクタイト、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バーミキュライト、クロライト、セピオライト、パリゴルサイト又はマガディアイトを含む。より好ましくは、無機物質はハイドロタルサイト、ラポナイト、ベントナイト又はヘクトライトを含む。
【0023】
本発明に従って使用される無機物質の粒子は、適切には、25nm〜5μmの範囲の平均最大直径を有する。好ましくは、無機物質の粒子は50nm〜2μmの範囲の平均最大直径を有する。
【0024】
無機物質の粒子は、適切には20〜2000の範囲のアスペクト比を有する。好ましくは、該無機物質の粒子は、50〜1000の範囲のアスペクト比を有する。
【0025】
さらなる特徴において、本発明は、本発明の液状組成物を含む物品に向けられる。該物品は、例えば消火流体、センサー又は培養媒体であることができる。本発明の液状組成物を含む消火流体は特に面白いことが見出された。液状の形態において、該消火流体は、簡単に噴霧又は噴出されることができる。噴霧又は噴出された後、本発明の液状組成物は火の熱のためにゲルに変わる。該液状組成物において使用され、ゲルに存在するナノ粒子は、有利にはそれ自体で難燃性を有する。この消火流体は、山火事、建設設備の火事及びその他の火事の消火、並びに防火及び火事に隣接する物の保護に使用されることができる。該消火流体は、自己ゲル化液体のこれらの物への粘着性故に、効率的な冷却を達成する。従って、水がどっと流れ去ることがなく、水は表面で蒸発し、それにより物を効率的に冷却する。該液体は、土壌又はより下方の床に流れ落ちず、これらの床への水の損害を防ぐ。
【0026】
さらなる特徴において、本発明は、本発明の液状組成物の温度を、使用されるポリマーの下限臨界溶解温度より上に上げることにより得られるゲルに向けられる。
【0027】
さらに、本発明は、本発明のゲルを含む物品を提供する。適切には、そのような物品は、インプラント、センサー、スキャフォールド、センサー又は細胞培養のための培養媒体である。例えば、本発明は、本発明の液状組成物を含む注射可能なインプラント又は注射可能なスキャフォールドを可能にする。患者(例えば、哺乳類より好ましくはヒト)の体内に該注射可能なインプラント又は注射可能なスキャフォールドを注射すると、該液状組成物はその患者の体熱の結果ゲルに変わり、それにより本格的な手術の必要なしに有用なインプラント又はスキャフォールドを形成することができる。
【0028】
さらに、本発明は、インプラント、センサー、細胞培養のための培養媒体又は消火流体を製造するために本発明の液状組成物を使用する方法に向けられる。本発明の液状組成物は、熱い物体に例えば施与されることができる、火から保護するための流体及び/又は防火流体の製造においてもまた使用され得る。
実施例
【0029】
実施例1
磁気撹拌棒で撹拌しながら、0.50gのモノアミン末端ポリ(エチレンオキサイド−コ−プロピレンオキサイド)(Jeffamine M2005)が50mlの脱ミネラル水に溶解され、1.0Mの塩酸で酸性化された。1.0gのラポナイトが添加され、該生成物は1.0Mの塩酸で再び酸性化された。混合物は16時間撹拌されて、ラポナイトを剥離させた。得られた生成物が50℃まで温められたとき、それは固体のゲルになった。該生成物を冷却したとき、それは再び液体になった。該生成物を加熱しながら、アントンレオメーターを使用して1Hzにおいてプレート−プレート型で貯蔵弾性率G’が測定された。ゲル化のために、G’は、0.1mPa(LCSTより下)から0.1kPa(LCSTより上)まで変化する。
【0030】
実施例2
磁気撹拌棒で撹拌しながら、0.50gのビスアミン末端ポリ(エチレンオキサイド−コ−プロピレンオキサイド)(Jeffamine D2000)が50mlの脱ミネラル水に溶解され、1.0Mの塩酸で酸性化された。2.0gのラポナイトが添加され、該生成物は1.0Mの塩酸で再び酸性化された。混合物は16時間撹拌されて、ラポナイトを剥離させた。得られた生成物が50℃まで温められたとき、それは固体のゲルになった。該生成物を冷却したとき、それは固体のゲルのままであった。
【0031】
実施例3
磁気撹拌棒で撹拌しながら、0.25gのアミン末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が2.5mlの脱ミネラル水に溶解され、0.06gのベントナイトが添加された。ベントナイトが剥離されたとき、生成物の一部が温められた。以降、これは固体ゲルであった。生成物を冷却したとき、それは再び液体であった。
【0032】
実施例4
磁気撹拌棒で撹拌しながら、0.37gのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アリルアミン)が18.5mlの脱ミネラル水に溶解され、0.08gのラポナイトが添加された。ラポナイトが剥離されたとき、生成物の一部が温められた。以降、これは固体ゲルであった。冷却したとき、該生成物は再び液体になった。該生成物を加熱しながら、アントンレオメーターを使用して1Hzにおいてプレート−プレート型で貯蔵弾性率G’が測定された。ゲル化のために、G’は、0.01mPa(LCSTより下)から0.1kPa(LCSTより上)まで変化する。
【0033】
実施例5
窒素下、磁気撹拌棒で撹拌しながら、2.0gのスルホネート末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が10mlのCOフリーの脱ミネラル水に溶解され、0.15gの焼成されたハイドロタルサイト(Mg:Al 3:1)が添加された。該混合物は18時間窒素下で撹拌された。得られた生成物の一部が温められたとき、それは固体のゲルになった。冷却したとき、該生成物は再び液体になった。該生成物を加熱しながら、アントンパールのレオメーターを使用して1Hzにおいてプレート−プレート型で貯蔵弾性率G’が測定された。ゲル化のために、G’は、10Pa(LCSTより下)から1kPa(LCSTより上)まで変化する。
【0034】
実施例6
窒素下、磁気撹拌棒により撹拌しながら、1.0gのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−4−ビニルベンゼンスルホネート)が30mlのCOフリーの脱ミネラル水に溶解され、0.04gの焼成されたハイドロタルサイト(Mg:Al 3:1)が添加された。該混合物は18時間窒素下で撹拌された。得られた生成物の一部が温められたとき、それは固体のゲルになった。冷却すると、該生成物は再び液体になった。該生成物を加熱しながら、アントンパールのレオメーターを使用して1Hzにおいてプレート−プレート型で貯蔵弾性率G’が測定された。ゲル化のために、G’は、0.1Pa(LCSTより下)から50Pa(LCSTより上)まで変化する。
【0035】
実施例7
磁気撹拌棒により撹拌しながら、0.30gのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−4−ビニルベンゼンスルホネート)が10mlのCOフリーの脱ミネラル水に溶解され、0.014gの焼成されたハイドロタルサイト(Mg:Fe 3:1)が添加された。該混合物は18時間、撹拌された。得られた生成物の一部が温められたとき、それは固体のゲルになった。冷却すると、該生成物は再び液体になった。
【0036】
実施例8
実施例1の冷たい液体が、ホットメルトの表面にスプレーガンで噴霧された。直ちに、該液体は粘着性になり、表面に当たったとき、ハイドロゲルへと固化する。多量の水がどっと流れ去ることなく、噴霧された水の全量の蒸発がホットプレートの表面において起きた。
【0037】
実施例9
25gの実施例1の冷たい液体が木の棒(7×20×0.5cm)にスプレーガンで噴霧され、該棒はガスバーナーで燃やされた。同時に、同じ木の棒に25gの水で同じことが行われた。両方の棒の火は消えたが、ガスバーナーがまだついている間に、水で消火された棒は実施例1の液体で消火された棒よりずっと素早く燃えた。実施例1の液体で消火された棒の記録された温度は、水で消火された棒より100℃低かった。水で消火された棒は15分内にほとんど完全に燃えたが、実施例1の液体で消火された棒は部分的に焦げただけであった。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中にポリマー鎖及び無機物質の粒子を含む液状組成物において、該ポリマー鎖が該ポリマー鎖中に存在する官能基により該無機物質の粒子に結合されており、使用されるポリマーは使用される液体中で下限臨界溶解温度を有し、かつ該液状組成物は熱に誘発されるゲル化を示す前記組成物。
【請求項2】
該組成物が可逆性の熱ゲル化を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該無機物質の粒子が、該無機物質の、平均して2個以下の他の粒子にポリマー鎖により結合されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
無機物質の粒子の少なくとも90%が、該無機物質の他の粒子に結合されていない、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該ポリマー鎖上の官能基(A):該粒子のイオン交換の容量(B)の比が1.1(A/B)より小さい、好ましくは1.0(A/B)より小さい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該液体が、組成物全体に基づいて60〜99重量%の範囲、好ましくは、70〜98重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
該液体が、水及び1以上の溶媒を含む。請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
水が、液体全体に基づいて50重量%超の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1以上の溶媒が、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、蟻酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
該液体が水及びエチレングリコールを含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
該液体が水からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマーの下限臨界溶解温度が、−40℃〜300℃の範囲、好ましくは−20℃〜100℃の範囲である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
該ポリマーが、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アリルアミン、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート及びN−ビニル−N,N−二置換アミド(例えばN−ビニルカプロラクタム又はビニルエチルイミダゾール)のポリマー及びコポリマー、エチレングリコール及びプロピレングリコールのポリマー及びコポリマー、オリゴ(エチレングリコール)を含む界面活性剤、ビニルアセテート及びビニルアルコールのポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体から成る群から選択され、好ましくは、該ポリマーがアミノ末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、スルホネート末端ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アリルアミン)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−トリメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−4−ビニルベンゼンスルホネート)又はポリエーテルアミンを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマー鎖が、500〜100000ドルトンの範囲、好ましくは1000〜10000ドルトンの範囲の数平均分子量を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該無機物質が鉱物、シリケート、金属酸化物、合成粘土、及び層状複水酸化物からなる群から選択され、好ましくは該無機物質がハイドロタルサイト、スメクタイト、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バーミキュライト、クロライト、セピオライト、パリゴルサイト又はマガディアイト又は層状複水酸化物を含み、より好ましくは該無機物質がハイドロタルサイト、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト又は層状複水酸化物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該粒子が、25nm〜5μmの範囲、好ましくは、50nm〜2μmの範囲の平均最大直径を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
該粒子が、20〜2000、好ましくは50〜1000の範囲のアスペクト比を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の液状組成物を含む物品。
【請求項19】
該物品が、消火流体、センサー又は培養媒体である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物の温度を、使用されるポリマーの下限臨界溶解温度より上に上げることにより得られるゲル。
【請求項21】
請求項20に記載のゲルを含む物品。
【請求項22】
該物品がインプラント、スキャフォールド、センサー、又は細胞培養のための培養媒体である、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
インプラント、スキャフォールド、センサー、細胞培養のための培養媒体、消火流体、又は熱い物のための防火流体及び/又は火から保護するための流体の製造のために請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物を使用する方法。

【公表番号】特表2011−518913(P2011−518913A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506218(P2011−506218)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050221
【国際公開番号】WO2009/131454
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】