説明

液体供給装置

【課題】液体供給部を軸筒の中心軸から大きく偏心させることができて、使い勝手のよい液体供給装置を提供する。
【解決手段】第1中心軸12aを有し、液体を収容する軸筒12と、軸筒12の先端側に配置されて、第1中心軸に対して傾斜した第2中心軸を有する先具22と、軸筒12の内部に設けられて、第1中心軸12a上を延設された第1液体中継芯20と、先具22の内部に設けられて、第2中心軸22a上を延設された第2液体中継芯30と、先具22の先端に設けられて、第2中心軸22aに対して対称的に配置された液体供給部を備える。第1液体中継芯20の先端と第2液体中継芯30の後端とは、第1中心軸12aと第2中心軸22aの交差部に配置された液体保持材32内に挿入されており、互いに角度を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用、筆記用等の液体を供給する液体供給装置に関し、特に、液体を収容する軸筒の中心軸上にない液体供給部を持つ液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体供給装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の液体供給装置においては、軸筒の中心軸上に形成されて、インク収容室からインクを導入する第一のインク流路と、第一のインク流路からインクが導入される第二のインク流路とを備えており、第二のインク流路は軸筒の中心軸上からはずれて中心軸に並行する状態で第一のインク流路の先端に連結されており、さらに、第二のインク流路に導入されたインクはボールの転動によって導出され、ボールの抱持方向が第二のインク流路の軸線に対して所定角度傾斜しており、且つ、第二のインク流路の軸線がボールの領域を通過するように配置されている。
【0004】
そして、この構成によって、筆記時に軸筒を大きく傾斜させたとしても、ボールの抱持部が筆記面に傾斜することなく、ボールの露出面が筆記面に適度に臨むようにすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−125754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる従来の装置においては、第二のインク流路が第一のインク流路と平行であり、しかも、第二のインク流路は、第一のインク流路の先端と連結するために、第一のインク流路と一部重複している。そのため、第二のインク流路の先端に設けられた液体供給部となるボールは、軸筒の中心軸の近傍にあり、液体供給部を軸筒の中心軸から大きく偏心させることができない、という問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、液体供給部を軸筒の中心軸から大きく偏心させることができて、これによって使い勝手のよい液体供給装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、
第1中心軸を有し、液体を収容する軸筒と、
軸筒の先端側に配置されて、第1中心軸に対して傾斜した第2中心軸を有する先具と、
軸筒及び先具の内部に設けられて、第1中心軸上及び第2中心軸上を延設され、且つ前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部において屈曲し液体を誘導する液体誘導体と、
先具の先端に設けられて、前記第2中心軸に対して対称的に配置された液体供給部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記液体誘導体は、第1中心軸上に配置された第1液体誘導体と、第2中心軸上に配置された第2液体誘導体と、から構成され、第1液体誘導体の先端と第2液体誘導体の後端は、前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部に配置され液体を保持可能な液体保持材内にそれぞれ挿入されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記液体誘導体は、前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部において屈曲した単一の液体誘導体で構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、
前記液体誘導体の少なくとも一部の周囲には、液体を保持可能な液体保持材が配設されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記軸筒の外形断面形状は多角形形状であり、多角形の1つの角が前記第2中心軸の傾斜側に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発明において、前記軸筒と前記先具との接続部分には、両者の間のシールを行うシール材が配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1中心軸を有する軸筒と、第1中心軸に対して傾斜した第2中心軸を有する先具と、第1中心軸上及び第2中心軸上を延設され、且つ前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部において屈曲した液体誘導体と、第2中心軸に対して対称的に配置された液体供給部とを備えることによって、第2中心軸の第1中心軸から任意に傾斜させることができるので、液体供給部を軸筒の第1中心軸から大きく偏心させることができて、使い勝手の良い液体供給装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体供給装置の全体縦断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿って見た端面図である。
【図3】図1の液体供給装置のキャップを取り外して使用した状態を表す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る液体供給装置の全体縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態を表す。図に示すように、本発明による液体供給装置10は、使用者によって把持され、内部に液体が収容された軸筒12を備える。
【0018】
軸筒12は、長手方向に沿った第1中心軸12aを有する筒形状をなしており、その外形断面形状は、使用者の把持に適した任意の構造とすることができる。例えば、円形とすることもできるが、この例では、使用者の指の位置決めをしやすいように、角形状となっている(図2参照)。また、角形状としては、三角形、四角形とすることもできるが、角数が少ないと、肉厚部分と肉薄部分との肉厚差が大きくなり、また、角数が多いと指を載せる平面の面積が小さくなるので、好ましくは五角形または六角形とするとよい。さらに、この例では、後述の第2中心軸22aの傾斜する側が分かりやすくなるように、五角形となっており、第1中心軸12a及び第2中心軸22aを含む平面内で、且つ、第1中心軸12aから第2中心軸22aが延びる側に軸筒12の1つの稜線が位置付けられる。
【0019】
軸筒12内には、タンク筒14が圧入され、タンク筒14の後端は尾栓16によって閉塞されてタンク部が形成されており、このタンク部内に液体が収容される。液体としては、アイライナといった化粧用液体や、筆記用インキといった筆記用液体とすることができる。尚、タンク筒14は軸筒12と一体部品とすることも可能である。
【0020】
タンク筒14の先端側には、蛇腹状の液体貯留溝を備えた液体貯留体18が挿入されており、液体貯留体18を貫通して、軸筒12の第1中心軸12a上を第1液体中継芯20が延設されている。液体貯留体18は、圧力差によりタンク部から液体が溢れたときに一時的に液体を貯留するためのものである。
【0021】
軸筒12の先端面12bは、第1中心軸12aに対して傾斜しており、タンク筒14の先端には、該軸筒12の先端面に当接する傾斜鍔部14aが形成され、さらに傾斜鍔部14aよりも先端側に、軸筒12の第1中心軸に対して傾斜した接続部14bが形成される。
【0022】
接続部14bが先具22に圧入されることによって、先具22が接続部14bを介して軸筒12に連結される。尚、この先具22と軸筒12との連結は、圧入によらず、螺着、接着等とすることも可能である。先具22は、円錐形状をなして、第1中心軸12aに対して傾斜した第2中心軸22aを有している。
【0023】
そして、先具22の先端には、ボールチップ24が連結される。ボールチップ24は、その先端にボール26を抱持しており、これが液体供給部となる。ボール26はセラミックス製、ステンレス製等とすることができる。
【0024】
ボール26及びボールチップ24は、第2中心軸22a上にあって、取付上または液体供給上の観点から見て第2中心軸22aに対して対称的に配置される。つまり、液体供給部における液体供給路は第2中心軸22aに対して対称的となっており、または、ボール26またはボールチップ24は第2中心軸22aに対して対称的に取り付けられており、従って、軸筒12に対して傾斜して設けられる。
【0025】
ボールチップ24の後端には第2液体中継芯30が挿入されており、第2液体中継芯30は、第2中心軸22a上を延設されている。
【0026】
第1中心軸12aと第2中心軸22aとが交差するタンク筒14の接続部14b内には、スポンジのような多孔質のエラストマーからなり液体を保持することが可能な液体保持材32が配置されている。第1液体中継芯20の先端と第2液体中継芯30の後端は、それぞれ液体保持材32内に挿入されて互いに接近している。
【0027】
また、先具22には、着脱可能にキャップ36が被着されており、不使用時の先具22の先端にある液体供給部を保護して、乾燥を防止する。キャップ36の外形断面形状も、軸筒12と同じ形状をしているとよく、これによってキャップ36を被着する周方向の位置合わせが分かりやすいものとなる。
【0028】
第1液体中継芯20及び第2液体中継芯30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等からなる繊維芯であり、その内部を液体が浸透して誘導されるようになっている。これらの第1液体中継芯20及び第2液体中継芯30によって、第1中心軸12aと第2中心軸22aの交差部において屈曲した液体誘導体が構成される。
【0029】
以上のように構成される液体供給装置10にあっては、使用時に、図3に示すようにキャップ36を取り外して、被供給面に対して液体供給部を当てて移動させる。これによって、ボール26が転動し、タンク部から第1液体中継芯20を通過し液体保持材32によって受けられ、さらにそこから、第2液体中継芯30を通過してきた液体が、ボール26の転動と共に被供給面へと供給されることになる。
【0030】
使用者は、五角形となった軸筒12の1つの角を下向きにし、上向きとなった斜面に指をおいて使用することができる。そして、液体供給部を下向きまたは水平に向けつつ、液体供給部を移動させることで、被供給面への液体の供給を行うことが可能になる。
【0031】
液体供給部が軸筒12の第1中心軸12aから大きく偏心しているので、水平な平面に筆記を行う場合のみならず、傾斜したまたは鉛直な平面または曲面のような個所に液体を供給する場合でも、供給する個所が軸筒の延長線上になくてよいので、使い勝手のよいものとすることができる。
【0032】
例えば、液体をアイライナとして使用する場合には、被供給面がほぼ垂直面となる使用者の顔であり、且つ、使用者は液体供給部を自分に向けての作業となるが、このような作業においても、第2中心軸22aと第1中心軸12aとが傾斜するので、第2中心軸22aを被供給面に対して略垂直になるように、即ち、液体供給部を被供給面に対して略垂直に当てたとしても、第1中心軸12aを持つ軸筒12は被供給面に対して傾斜させることができる。これによって、軸筒12を把持した手を顔に接近させることができ、顔に手を当てて支点とすることができるので、作業を行いやすい。
【0033】
本発明によれば、第2中心軸22aを第1中心軸12aに対して任意の角度で傾斜させることができ、且つ第2中心軸22aの長さも先具22の長さとともに任意に設定することができるから、液体供給部を第1中心軸12aから大きく偏心させることができる。傾斜角度は、この例では、15°であるが、0°より大きく180°の角度まで任意の角度で傾斜させることができる。
【0034】
次に、図4は、本発明の第2実施形態を表す。この実施形態において、第1実施形態と同一・同様の部分は、同一の符号を付してその詳細説明は省略する。
【0035】
前述の第1実施形態では、第1中心軸12aと第2中心軸22aの交差部において屈曲した液体誘導体が、第1液体中継芯20と第2液体中継芯30によって形成されていたが、この第2実施形態では、1つの屈曲した液体中継芯40で構成され、この液体中継芯40は、第1中心軸12aと第2中心軸22aの交点において屈曲している。
【0036】
また、液体保持材42が、第2中心軸22a上で、液体中継芯40の周囲に設けられている。また、好ましくは、先具22と軸筒12との接続部14bを介して連結において、接続部14bと先具22との間には、両者のシールを行って、液体の外部への漏れを防ぐためにOリング(シール材)44が介在されている。
【0037】
この実施形態によっても第1実施形態と同様の作用・効果が得られ、液体中継芯を単一の部品で構成するために、部品点数を低減させることができる。
【0038】
尚、以上の実施形態では、液体供給部がボールによって構成されていたが、これに限るものではなく、刷毛(ブラシ)、フェルト芯とすることもできる。液体供給部の先端は、塗布の容易性のために第2中心軸22aに対する回転対称性を持たない形状とすることができるが、その場合でも、取付基部を含めたいずれかの部位において少なくとも2回対称以上の対称性を有していればよい。
【0039】
また、以上の実施形態では、液体はタンク部内に直接収容されていたが、これに限るものではなく、中綿のような吸収体に液体を吸収させて収容してもよい。
【0040】
以上の実施形態において複数の部材で構成した部品を単一部材で構成することも可能であり、または単一の部材で構成した部品を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 液体供給装置
12 軸筒
12a 第1中心軸
20 第1液体中継芯(液体誘導体)
22 先具
22a 第2中心軸
26 ボール(液体供給部)
30 第2液体中継芯(液体誘導体)
32 液体保持材
40 液体中継芯(液体誘導体)
42 液体保持材
44 Oリング(シール材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心軸を有し、液体を収容する軸筒と、
軸筒の先端側に配置されて、第1中心軸に対して傾斜した第2中心軸を有する先具と、
軸筒及び先具の内部に設けられて、第1中心軸上及び第2中心軸上を延設され、且つ前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部において屈曲した液体誘導体と、
先具の先端に設けられて、前記第2中心軸に対して対称的に配置された液体供給部と、
を備えることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記液体誘導体は、第1中心軸上に配置された第1液体誘導体と、第2中心軸上に配置された第2液体誘導体と、から構成され、第1液体誘導体の先端と第2液体誘導体の後端は、前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部に配置され液体を保持可能な液体保持材内にそれぞれ挿入されることを特徴とする請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記液体誘導体は、前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差部において屈曲した単一の液体誘導体で構成されることを特徴とする請求項1記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記液体誘導体の少なくとも一部の周囲には、液体を保持可能な液体保持材が配設されることを特徴とする請求項3記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記軸筒の外形断面形状は多角形形状であり、多角形の1つの角が前記第2中心軸の傾斜側に配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記軸筒と前記先具との接続部分には、両者の間のシールを行うシール材が配設されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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