説明

液体処理装置

【課題】 常に良好な液体処理能力を発揮することのできるようにした無電極放電管からなる液体処理装置の提供。
【解決手段】 リード線を介して通電される誘導コイルを巻き回したフェライトコアが一部を囲む形で無電極の紫外線放電管と鎖交して配置される凹凸ある複雑な形状の装置全体を、紫外線透過性の被膜部材によって被膜する。こうすると、装置全体が均一形状でなく凹凸形状であっても被膜部材で覆うことのできない箇所を生じさせることなく、そうした箇所からの被処理液体の侵入を許してしまうことがない。特には被膜部材により紫外線放電管と被処理液体とが直接的に接した状態とならないが故に、被処理液体の汚れが紫外線放電管に付着することがなくまた温度変化による紫外線放電管からの紫外線の出力低下を抑制することができる。したがって、液体処理能力を常に良好に発揮することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線の照射によって被処理液体の殺菌並びに被処理液体中の微生物や小動物等の防除などの液体処理を行う液体処理装置に関する。特に、被処理液体中に浸漬させた状態にある無電極放電管からの紫外線照射によって液体処理を行う液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線を照射することによって被処理液体を殺菌したり、被処理液体中に含まれている微生物や小動物等を防除したりするなどの液体処理を行う液体処理装置が知られている。また、最近では特に紫外線を照射する紫外線放射放電管を被処理液体中に浸漬させて被処理液体を外側からではなく内側から紫外線照射する、所謂浸漬型などと呼ばれるタイプの液体処理装置が広く用いられるようになってきている。
【0003】
ところで、こうした液体処理装置においても、寿命が比較的短い有電極の放電管を用いるかわりに、一般的に有電極の放電管に比較して約6倍乃至10倍前後の長い寿命をもつ無電極の放電管を用いることで、放電管交換の頻度をできる限り低減することが既に考えられている。ここで、無電極放電管の一例を挙げると、例えば下記に示す特許文献1に記載の装置などがある。この特許文献1にはフェライトコアにより放電管を励起するもの、より具体的にはフェライトコアに巻き回された誘導コイルにリード線を介して高周波電流を通電することによって前記フェライトコアに鎖交する無電極放電管を点灯制御するものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−92774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるようなフェライトコアにより励起される無電極放電管を液体処理装置に適用することは、以下に示すような問題があり難しかった。すなわち、上記した無電極放電管を被処理液体中で使用する場合には放電管と被処理液体とが直接的に接した状態となるが故に、液中の汚れによって放電管に限らずフェライトコアなどにも汚れが付着しやすい、また放電管やフェライトコアなどに汚れが付着した場合にそれらの汚れを落としにくい、さらには水銀蒸気圧を制御する放電管における最冷部温度が最適値からずれてしまう、などといった紫外線の出力低下を引き起こし得る不都合が生じ易い、という問題があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、被処理液体の汚れの付着を防ぐと共に温度変化による無電極放電管からの紫外線の出力低下を抑制し、常に良好な液体処理能力を発揮することのできるようにした無電極放電管からなる液体処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体処理装置は、紫外線照射により被処理液体を処理する液体処理装置であって、無電極の紫外線放電管と、前記放電管の一部を囲む形で前記放電管と鎖交して配置されるフェライトコアと、前記フェライトコアに巻き回された誘導コイルと、前記誘導コイルにリード線を介して高周波電流を通電する高周波電源であって、該高周波電源は前記誘導コイルを通電することにより前記紫外線放電管に紫外線を発生させるものと、前記紫外線放電管と前記フェライトコアと前記誘導コイルと前記リード線とを被膜する紫外線透過性の被膜部材とを備える。
【0008】
本発明によれば、リード線を介して通電される誘導コイルを巻き回したフェライトコアが一部を囲む形で無電極の紫外線放電管と鎖交して配置される凹凸ある複雑な形状の装置全体を、紫外線透過性の被膜部材によって被膜する。こうすると、装置全体が均一形状でなく凹凸形状であっても、被膜部材を密着させた状態で覆うことのできない箇所を生じさせることなく、そうした箇所からの被処理液体の侵入を許してしまうことがない。特には被膜部材により紫外線放電管と被処理液体とが直接的に接した状態とならないが故に、被処理液体の汚れが紫外線放電管に付着することがなくまた温度変化による紫外線放電管からの紫外線の出力低下を抑制することができる。こうした液体処理装置は、被処理液体の殺菌並びに被処理液体中の微生物等の防除といった液体処理能力を常に良好に発揮することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、リード線を介して通電される誘導コイルを巻き回したフェライトコアが一部を囲む形で無電極の紫外線放電管と鎖交して配置される凹凸ある複雑な形状の装置全体を、紫外線透過性の被膜部材によって被膜するようにした。これにより、被処理液体の汚れの付着を防ぐと共に温度変化による無電極放電管からの紫外線の出力低下を抑制することができることから、常に良好な液体処理能力を発揮する液体処理装置を提供することができるようになる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る液体処理装置の一実施例を示す概念図である。
【図2】液体処理装置に対する樹脂製の被膜部材を用いての被覆形成について説明するための概念図である。
【図3】液体処理装置の別の実施例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る液体処理装置の一実施例を示す概念図である。図1に示すように、本発明に係る液体処理装置は処理槽A内に貯められた被処理液体P中に浸漬せしめるように処理槽A内に配置される浸漬型の液体処理装置であって、図中左側の導水管Xから被処理液体流入口Aaを介して流れ込んで処理槽A内に貯められた被処理液体Pを紫外線照射して、被処理液の殺菌並びに被処理液体中の微生物等の防除といった液体処理を行う。液体処理された後の被処理液体Pは、浄化水などとして処理槽A内から被処理液体流出口Abを介して図中右側の導水管Xから流れ出るようになっている。上記したような液体処理を行うために、当該液体処理装置では波長254nmあるいは波長365nmの紫外線を被処理液体Pに対して照射することのできるようになっている。
【0013】
この実施形態に示される液体処理装置は、1乃至複数(図1では1個のみを示した)の紫外線放射放電管1(又は紫外線ランプとも呼ぶ)からなり、当該紫外線放射放電管1は無電極の水銀放電管であって、紫外線を放射するガスとなる例えば水銀粒あるいは水銀アマルガムなどを封入したループした楕円形状の放電管Hと、当該放電管Hにおいて管軸方向に離間した位置をそれぞれ囲む形で前記放電管Hと鎖交するようにして配置された磁性材料からなる1乃至複数(図1では2個の例を示した)のフェライトコアF1,F2と、前記フェライトコアF1,F2それぞれに巻き回され2つの誘導コイルを形成するワイヤW(リード線)を含む。
【0014】
これら放電管H及びフェライトコアF1,F2さらには前記誘導コイルを含むワイヤWからなる紫外線放射放電管1は、被処理液体P中に浸漬されることに鑑みて、紫外線透過性の樹脂製の被膜部材2(例えば、テフロン(登録商標)製のチューブなど)によって全体が被覆されている(図中では便宜的に斜線で示す)。この実施形態では、少なくとも紫外線放射放電管1全体を例えば樹脂製の被膜部材2によって被膜することにより、紫外線放射放電管1が被処理液体P中に浸漬された際に(又は被処理液体Pの液面上に浮かせた際に)、被処理液体Pにより引き起こされ得る紫外線の出力低下などの悪影響を受けることのないようにしている。なお、こうした被膜部材2とは別に放電管H、フェライトコアF1,F2、前記誘導コイルを含むワイヤWそれぞれに対して別途の防水処理が施されていてもよい。
【0015】
前記ワイヤWに高周波電流を通電する発振器Bは、処理槽Aの外部につまり被処理液体P内に浸漬されないように配置されている。そのため、紫外線放射放電管1が被処理液体P中に浸漬された場合には、前記ワイヤWは被処理液体P中を通って前記発振器Bに繋がれることになる。
【0016】
ここで、紫外線放射放電管1(液体処理装置)に対する樹脂製の被膜部材2を用いての被覆形成について、図2を用いて説明する。ただし、ここでは、加熱によって収縮する熱収縮特性を有するテフロン(登録商標)チューブにより被膜された紫外線放射放電管1を例に説明する。
【0017】
上述したように、紫外線放射放電管1は例えば熱収縮特性を有するチューブ状のテフロン(登録商標)製などの被覆部材(2a,2b)により全体が被膜される。前記被膜部材は、紫外線放射放電管1全体が入り込む程度の大きさの直径に且つ両端のうち少なくとも一端(図2では右端M)が開口に形成されてなる第1被覆部材2aと、該第1被覆部材2bよりも小さい直径に且つ両端(N)が開口に形成されてなる第2被覆部材2bとからなる。これら第1及び第2の各被覆部材2a,2bは各々が分離独立した状態で別々に形成されている。
【0018】
紫外線放射放電管1(図示せず)は、まず第1被覆部材2aの中にその開口端M側から挿入される。このとき、ワイヤWは処理槽Aの外部にある発振器Bと繋ぐ必要あることから、第1被覆部材2aの開口端Mから出した状態とされる。その後、第1被覆部材2aに対して万遍なく外部から熱が加えられる。すると、第1被覆部材2aは加熱により径方向及び長尺方向に熱収縮を起こすので、当該第1被覆部材2aが内部に挿入された紫外線放射放電管1に密着した状態となる。これにより、紫外線放射放電管1を構成する放電管H、フェライトコアF1,F2、前記誘導コイルを含むワイヤWの相対的な配置位置が固定される。
【0019】
ただし、第1被覆部材2aを熱収縮させたとしてもその開口端Mは完全に塞がれた状態にはならない(図2において一点鎖線で示す)。したがって、この状態のまま被処理液体P中に浸漬させると、被処理液体Pが前記開口端Mから内部に入り込む恐れがあるし、またワイヤWは被覆されていないことからワイヤWがそのままでは腐食する危険性が高い。そこで、本実施形態では、前記開口端Mに対してワイヤWを通した第2被覆部材2bの一端を接着剤で密着させた状態に接合することによって上記不都合を回避するのだが、従来では接着剤等でテフロン(登録商標)同士を接合するのは非常に難しいことであった。
【0020】
この点に関し、波長254nmや365nmの紫外線をテフロン(登録商標)に対して照射しても何らの影響を及ぼすこともなく紫外線が透過される一方で、波長185nmの紫外線をテフロン(登録商標)に対して照射すると吸収されてテフロン(登録商標)を分解することが本出願人により実験的に確認された。そこで、テフロン(登録商標)同士を接合する接合面を波長185nmの紫外線で照射すると、テフロン(登録商標)表面が微視的に荒らされて当該箇所において未結合の分子端が現れるので、その箇所では接着剤との結合強度が増すことになる。これを利用して、本実施形態においては従来接着剤による接合が困難であった共にテフロン(登録商標)からなる前記第1被覆部材2aの開口端Mと第2被覆部材2bの一方の開口端Nを接着剤により密着させた状態に接合することを実現させている。
【0021】
前記第1被覆部材2aと第2被覆部材2bの各開口端(M,N)が接着剤により密着接合された後には、第2被覆部材2b全体が加熱されることで前記液面に向けた側の開口端Nの間口をできるだけ小さくするように形成される。また、第2被覆部材2bは側面に沿って一方向から加熱されることにより、他方の開口端Nが被処理液体Pの液面に向くように例えばL字型に曲げ加工される(図1参照)。これは、第2被覆部材2bの他方の開口端NからワイヤWを出して外部の発振器Bに対し繋ぐ必要があるがために、このワイヤWが存在することで熱収縮によっても前記開口端Nを完全には閉じることができずにそこから被処理液体Pが侵入する恐れがあり、それを防ぐために必要とされる加工である。なお、第2被覆部材2bは被処理液体P中に浸漬された場合に一方の先端部Nが被処理液体Pの液面上に出る長さであることは言うまでもない。
【0022】
図1に戻って、このような無電極紫外線放射放電管1を被処理液体P中に浸漬する際には、処理槽Aの下面あるいは側面などの内壁面から伸びる支持部材Jを介して、処理槽A内ひいては処理液体P中において常時被処理液体Pが貯まる所定の高さ以下などの任意の位置に放電管Hを配置させるようにしてよい。この場合、支持部材Jを側壁面に高さを異ならせて複数設けたり、あるいは下面から伸びる支持部材Jを高さを異ならせて複数設けるようにして、処理槽A内ひいては処理液体P中において任意の高さ位置に放電管Hを配置できるようになっていてよい。
【0023】
あるいは、支持部材Jを用いて放電管Hを支持させることなく、図に示すようにしてフェライトコアF1,F2が液面に対して上下の位置関係となる縦置きの状態で放電管H自体がバランスを保つように、フェライトコアF1,F2のそれぞれの重さを調整する(この場合には異ならせる)ことによって、被処理液体P中の所定の高さ位置に浮遊した状態に放電管Hを配置するとよい(つまり、放電管Hを被処理液体Pの液面に対して垂直に沈めた縦置き状態に浸漬させる)。こうすれば、処理槽Aを幅の狭い箇所にしか設置できないような場合であっても、幅を確保することなく当該液体処理装置を配置することができるようになり有利である。勿論、フェライトコアF1,F2のそれぞれの重さを調整することに限らず、フェライトコアF1,F2のそれぞれの重さを同一重量としておき、例えば各フェライトコアF1,F2の巻き数を異ならせるなどの他の方法により、放電管Hを被処理液体Pの液面に対して垂直に沈めた縦置き状態に浸漬させてもよいことは言うまでもない。
【0024】
なお、放電管H自体は図示のようにして必ずしもフェライトコアF1,F2が鎖交配置される一部が被処理液体P中において平衡状態を保つ必要はなく、フェライトコアF1,F2が鎖交配置される左右どちらかの一部がより深い位置(又は浅い位置)に傾いた状態を保つようになっていてもよい。
【0025】
さらに、図示を省略したが、支持部材Jを用いて放電管Hを支持させることなく、フェライトコアF1,F2が共に液面に対して同じ水平位置にある位置関係となる横置きの状態で放電管H自体がバランスを保つように、フェライトコアF1,F2のそれぞれの重さを調整する(この場合には同一重量にする)ことによって、被処理液体P中の所定の高さ位置に浮遊した状態に放電管Hを配置してもよい(つまり、放電管Hを被処理液体Pの液面に対して水平に沈めた又は液面に浮かべた横置き状態に浸漬させる)。この場合でも、第2被覆部材2bの先端部が被処理液体Pの液面上に出ているように加工されることは言うまでもない。
【0026】
こうした構成の無電極紫外線放射放電管1では、発振器Bから発生される周波数50kHz以上500kHz以下の範囲にある高周波電流によりフェライトコアF1,F2が励磁されると、楕円形状に形成された放電管Hに2次誘起起電力を発生させるので、これにより放電管H内の放電が生起する。そして、放電管H内に封入されている水銀粒(あるいは水銀アマルガム)の一部が気体となって存在することで、紫外線が効率よく放射される。無電極紫外線放射放電管1は放電管Hから紫外線を発することで、被処理液体Pの殺菌並びに微生物の防除などを行う液体処理機能を発揮する。すなわち、前記放電管Hは石英ガラス製などの所望の紫外線を透過する材質で形成されていることから、放電管Hから発せられる紫外線によって被処理液体Pが処理槽Aの内側から照射される。こうした無電極の放電管Hは従来において用いられていた有電極の放電管に比べて長寿命であり、従来に比べて放電管交換の頻度を低減することができる。
【0027】
ここで、高周波の損失は駆動周波数に比例することが知られており、放電管Hから紫外線を発生させるために用いられる駆動周波数が数百kHz例えば200kHz駆動である場合には、上述したような従来装置における13.36MHz駆動である場合に比べて約70分の1にエネルギー損失が低減される。そのために、この実施形態に示される液体処理装置は、放電管Hを駆動するためのワイヤWやフェライトコアF1,F2(及びその巻き線)などを、水を主体とした被処理液体P中に直接浸漬つまりは接触させた状態で駆動させたとしても、高周波によるエネルギー損失の影響に比べて誘電体である水によるエネルギー損失の影響は小さく、従ってトータルのエネルギー損失が従来に比べて少なくて済み、放電管Hを正常にかつエネルギー効率よく駆動することができるといった長所を有するものである。また、駆動周波数を概ね1MHz以下更に望ましくは500kHz以下に調整すれば、このような水を主体とした被処理液体Pによるエネルギー損失をより少なくした装置を提供することが容易にできる。
【0028】
また、放電管Hに鎖交させたフェライトコアF1,F2の透磁率をμ、磁界強度をHとすると、フェライトコアF1,F2を介して発振器B(電源)側から放電管H側へと伝達されるエネルギーは、フェライトコアF1,F2の単位体積当り「μfH2/2」で表される。したがって、周波数(f)が低くなると単位体積当りのエネルギー伝達量が少なくなるので、一定量のエネルギーを伝達するためにはフェライトコアF1,F2を大きくしなければならなくなる。例えば20kHzの周波数で駆動する場合には、200kHzの周波数で駆動する場合に比べて約10倍の大きさのフェライトコアFが必要になる。そこで、本実施形態においては放電管Hから紫外線を発生させるための駆動周波数の下限がフェライトコアF1,F2への駆動周波数で決まり、望ましくは20kHz以上更に望ましくは50kHz以上の周波数で駆動するように調整するのがよい。そうすることで、フェライトコアF1,F2をあえて大きくしなくても、発振器B(電源)側から放電管H側へと効率的にエネルギーを伝達させることが簡単にできる。
【0029】
なお、上述の図1に示した実施例では、1つのワイヤWを2つのフェライトコアF1,F2に対してそれぞれ巻き回すことで2つの誘導コイルを形成するようにしたが、それぞれ別々のワイヤWを2つのフェライトコアF1,F2に対してそれぞれ巻き回すことで2つの誘導コイルを形成するようにしてもよい。
【0030】
なお、フェライトコアF1,F2は円環状でも楕円環状でも長方形環状でもどのような形状であってもよいが、放電管Hと鎖交するように配置されている必要があり、また放電管Hと共に被覆部材によって被覆されることは勿論である。また、フェライトコアF1,F2を放電管Hに密着させるとエネルギー伝達効率が向上することが知られているが、本実施例では放電管Hと共に被覆部材によって被覆することだけでユーザは特に意識せずともフェライトコアF1,F2と放電管Hとをできる限り密着させた状態とすることができる。さらに、フェライトコアF1,F2は、環状に形成可能である複数の部品に分割することができるようにしてよい。
【0031】
なお、上述した実施例では、テフロン(登録商標)チューブを用いて紫外線放射放電管1を被覆することで熱絶縁性を確保しているが、より被処理液体Pとの熱的遮断を高めるために、紫外線放射放電管1とテフロン(登録商標)チューブとの間に絶縁性の高い空気層を形成するように紫外線放射放電管1を被覆するとよい。そのための1つの方法として、例えばテフロン(登録商標)製の小粒子を紫外線放射放電管1外面及びテフロン(登録商標)チューブ内面の少なくとも一方にコーティング乃至付着させた後に、テフロン(登録商標)チューブを用いて紫外線放射放電管1を被覆するとよい。あるいは、気泡を混入させたテフロン(登録商標)チューブを用いて紫外線放射放電管1を被覆してもよい。
【0032】
なお、紫外線放射放電管1を被覆するための被覆部材としてテフロン(登録商標)チューブを用いているが、よりチューブの強度を増すためにテフロン(登録商標)チューブ内に例えばシリカ製あるいはセラミック製のファイバーを混入したものを用いてもよいのは勿論である。また、チューブ形状に限らずフィルム状のものであってもよい。
なお、上述した実施例においては一端が開口した第1被覆部材2aを用いた例を示したがこれに限らず、両端が開口した第1被覆部材2aを用いてもよい。その場合、第1被覆部材2aを熱収縮させた後に両端に第2被覆部材2bを接合し、これら両端に接合した第2被覆部材2bの一端が被処理液体Pの液面上に出るように曲げ加工されるのは勿論である。
【0033】
以上、図面に基づいて実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは言うまでもない。上述した実施例においては、放電管Hを被処理液体P中に完全に浸漬させるタイプの液体処理装置を示したがこれに限らない。例えば牛乳などのような紫外線透過率の低い被処理液体Pを処理する場合、上述した浸漬型の液体処理装置では紫外線が狭い範囲(放電管Hの直径方向の範囲)内にある被処理液体Pにしか届かないことから液全体を殺菌できないという欠点を有する。そこで、特に牛乳などのような紫外線透過率の低い被処理液体Pを処理するのに最適な液体処理装置を図3に示す。図3は、本発明に係る液体処理装置の別の実施例を示す概念図である。
【0034】
図3に示される液体処理装置はいわば滴下型の液体処理装置であって、未処理の被処理液体Pをテフロン(登録商標)チューブにより被覆された紫外線放射放電管1(図2参照)に滴下する案内路Dを有する。この案内路Dにより放電管H上方に案内された被処理液体Pは、放電管H表面を伝って下方に流下する。被処理液体Pは、放電管H表面を伝って流下する間に紫外線が照射されることによって殺菌される。放電管Hの最下端まで流下した殺菌後の被処理液体Pは、紫外線放射放電管1の下方に配置された貯留タンクE内へと流れ落ちる。
【0035】
このように、被処理液体Pを放電管H表面において上方から下方へと層状に流下(滴下)させる間に紫外線を照射することで、これら流下する被処理液体Pに対し均一に紫外線を十分に届かせることができると共に、また殺菌に必要とされる紫外線照射時間を確保することができる。したがって、十分に被処理液体Pを殺菌することができる。また、フェライトコアFにより励起される無電極の放電管Hは直径が有電極の放電管よりも比較的に太く形成することができる故に、それだけ被処理液体Pと触れる放電管Hの表面積は大きいことから、被処理液体Pを放電管H表面において上方から下方へと流下(滴下)させるタイプの液体処理装置であっても被処理液体Pを効率よく殺菌することができる。
【0036】
以上のように、本願発明に係る液体処理装置においては、汚れが付着しにくい紫外線透過性の例えば樹脂製の被覆部材2a,2b(具体的にはテフロン(登録商標)チューブ)によって、放電管H及びフェライトコアF1,F2さらには誘導コイルを含むワイヤWからなる紫外線放射放電管1全体を被覆するようにした。こうすると、装置全体が均一形状でなく凹凸形状であっても、被膜部材2を密着させた状態で覆うことのできない箇所を生じさせることなく、そうした箇所からの被処理液体Pの侵入を許してしまうことがない。特には被膜部材2により放電管Hと被処理液体Pとが直接的に接した状態とならないが故に、被処理液体Pの汚れが放電管Hに付着することがなくまた温度変化による放電管Hからの紫外線の出力低下を抑制することができる。こうした液体処理装置は、被処理液体Pの殺菌並びに被処理液体P中の微生物等の防除といった液体処理能力を常に良好に発揮することができるようになる。
【0037】
前記被覆部材2a,2bとして熱収縮特性を有するものを用い、紫外線放射放電管1を構成する放電管H及びフェライトコアF1,F2さらには誘導コイルを含むワイヤWを適宜の位置に密着させた状態で固定することにより、放電管Hの始動性のよさ、紫外線出力の最適条件を維持することができるようになる。
従来において放電管Hの寿命を左右していた電極がない無電極の放電管Hを用いたものであり寿命を大幅に伸ばすことができることから、ユーザに係る放電管Hの交換の負担を減らすことができるのみならず、放電管Hの交換回数を少なくすることによる放電管Hの使用数の削減にも寄与することから、間接的ではあるが地球温暖化防止に役立つ、という利点もある。
なお、本願発明に係る液体処理装置は排水処理路中に設置することが可能であることは勿論であるし、また小川などに直接的に浸漬設置することで小川の殺菌浄化などを行うことができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1・・・無電極紫外線放射放電管
2・・・被膜部材
2a・・・第1被膜部材
2b・・・第2被膜部材
A・・・処理槽
Aa・・・被処理液体流入口
Ab・・・被処理液体流出口
B・・・発振器(安定器)
D・・・案内路
E・・・貯留タンク
F(F1,F2)・・・フェライトコア
H・・・放電管
J・・・支持部材
P・・・被処理液体
W・・・ワイヤ(リード線)
X・・・導水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射により被処理液体を処理する液体処理装置であって、
無電極の紫外線放電管と、
前記放電管の一部を囲む形で前記放電管と鎖交して配置されるフェライトコアと、
前記フェライトコアに巻き回された誘導コイルと、
前記誘導コイルにリード線を介して高周波電流を通電する高周波電源であって、該高周波電源は前記誘導コイルを通電することにより前記紫外線放電管に紫外線を発生させるものと、
前記紫外線放電管と前記フェライトコアと前記誘導コイルと前記リード線とを被膜する紫外線透過性の被膜部材と
を備える液体処理装置。
【請求項2】
前記紫外線放電管は、ループ状に閉じた形状に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液体処理装置。
【請求項3】
前記被膜部材は、少なくとも前記紫外線放電管及び前記フェライトコア及び前記誘導コイルを被膜する第1の被膜部材と、前記高周波電源に繋がれる前記リード線を被膜する第2の被膜部材とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体処理装置。
【請求項4】
前記第1の被膜部材及び前記第2の被膜部材は特定波長の紫外線によって分解される特性を有する樹脂部材からなり、前記被膜部材は、前記第1の被膜部材と前記第2の被膜部材の接合部を前記特定波長の紫外線照射による分解後に接合して形成されてなることを特徴とする請求項3に記載の液体処理装置。
【請求項5】
前記第1の被膜部材と前記第2の被膜部材は、熱収縮性を有するチューブ形状のテフロン(登録商標)製部材からなることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体処理装置。
【請求項6】
前記第1の被膜部材と前記第2の被膜部材とを分解する紫外線の特定波長は、185ナノメートルであることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体処理装置。
【請求項7】
前記第1の被覆部材は、少なくとも前記紫外線放電管と接触する側において熱絶縁性の粒子又は気泡を有してなることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の液体処理装置。
【請求項8】
前記第2の被覆部材は、前記紫外線放電管を被処理液体中に浸漬させた状態又は被処理液体の液面に浮かせた状態において、少なくとも端面が被処理液体の液面上に出るように前記第1の被覆部材に接合されることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の液体処理装置。
【請求項9】
被処理液体を前記紫外線放電管に案内する案内手段をさらに有してなり、前記案内された被処理液体を前記紫外線放電管の上方から下方へと当該放電管表面上を滴下させることに応じて処理させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の液体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223732(P2012−223732A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95485(P2011−95485)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391031155)株式会社日本フォトサイエンス (12)
【Fターム(参考)】