説明

液体加熱装置

【課題】装置構成がコンパクトで、熱エネルギーを有効利用可能な液体加熱装置の提供を目的とする。
【解決手段】液体加熱装置1は、筐体C内に本体部2と燃焼部3および消音器4に加えて、後述する上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材が内蔵された構成とされている。上水系統Sは、上水用熱交換器30を中心として構成されている。上水用熱交換器30は、貯留部6に対して下方に離反した位置に設けられており、貯留部6から供給される熱媒体との熱交換により上水を加熱可能な構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体加熱装置に関するものであり、特に上水の加熱系統に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されているような液体加熱装置が提供されている。この種の液体加熱装置の多くは、湯水や熱媒体等の液体を貯留可能な貯留タンクと、貯留タンク内の液体を加熱可能な加熱手段とを有し、この貯留タンクに貯留されている液体を介して熱エネルギーを暖房装置等の負荷端末に供給可能な構成とされている。また、前記したような従来技術の液体加熱装置では、上水を加熱するための熱交換器を貯留タンク内に配置し、貯留タンク内の液体との熱交換により、熱交換器に供給される上水を加熱して供給可能な構成とされている。
【特許文献1】特開2001−235231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているような液体加熱装置では、貯留タンク内に熱交換器を配置せねばならない分、貯留タンクの容積が大きくなってしまうという問題がある。そのため、従来技術の液体加熱装置は、装置構成が大型化してしまうという問題があった。
【0004】
また、上記したように貯留タンクが大型化すると、貯留タンクに貯留される液体の量が多くなってしまう。そのため、従来技術の液体加熱装置では、上水の加熱時に貯留タンク内に貯留されている大量の液体を所定温度に調整しなければならず、熱エネルギーを十分有効利用できていないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、装置構成がコンパクトで、熱エネルギーを有効利用可能な液体加熱装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、筐体を有し、当該筐体内に液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、熱交換手段と、当該熱交換手段に前記貯留手段内に貯留されている液体を供給可能な一次流路と、上水が流れる二次流路とを備えており、熱交換手段が、前記貯留手段に対して下方に離間した位置に配されており、二次流路を流れる上水を、前記一次流路を介して前記貯留手段から供給される液体との熱交換により加熱可能なものであることを特徴とする液体加熱装置である。
【0007】
本発明の液体加熱装置では、上水を加熱するための熱交換手段が貯留手段から離間した位置に配置されている。そのため、上記した従来技術の液体加熱装置のように上水の加熱用の熱交換手段を貯留手段内に配置した場合に比べて、貯留手段の容量や高さを抑制することができる。従って、本発明によれば、装置構成がコンパクトな液体加熱装置を提供できる。
【0008】
また、本発明の液体加熱装置は、貯留手段から一次流路を介して取り出した液体を熱交換手段に供給し、この液体との熱交換により上水を加熱する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置において、上水の加熱(熱交換)のために貯留手段から熱交換手段に供給される液体の量は、貯留手段に貯留されている液体の一部である。よって、本発明の液体加熱装置では、上水を加熱する際に貯留手段から熱交換手段に供給される液体さえ所定の温度に到達しておればよく、必ずしも貯留手段内に貯留されている液体全体を所定温度に調整しなければならない訳ではない。従って、本発明の液体加熱装置によれば、上水の加熱に必要とされる熱エネルギー量を最小限に抑制することができる。
【0009】
また、上記したように、本発明の液体加熱装置では、上水の加熱のために貯留手段から熱交換手段に供給される液体の量は、貯留手段に貯留されている液体の一部である。そのため、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段で熱交換に供する液体の温度ムラ等が発生しにくい。従って、本発明の液体加熱装置によれば、貯留手段に貯留されている液体の温度ムラに殆ど左右されることなく、上水の出湯温度を安定化することができる。
【0010】
さらに、本発明の液体加熱装置では、上水の加熱時に貯留手段に貯留されている液体の一部を熱交換手段に送り込めばよいため、貯留手段内の液体全体が所定の温度に到達するのを待つことなく上水の加熱を実施できる。従って、本発明の液体加熱装置は、従来技術の液体加熱装置に対して上水の供給動作を開始してから所定温度まで加熱された上水が供給されるまでに要する時間(立ち上がり時間)を大幅に短縮することができる。
【0011】
本発明の液体加熱装置は、貯留手段や加熱手段、熱交換手段、一次流路、二次流路を筐体内に収容した構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置は、一次流路を介して貯留手段から液体を取り出したり、この液体を用いて熱交換手段において上水を熱交換加熱したりすることによる熱エネルギーのロスが少ない。
【0012】
ここで、本発明の液体加熱装置は、加熱手段が貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能なものであるため、加熱手段を作動させて貯留手段内の液体を加熱すると、貯留手段内において液体が対流を起こし、貯留手段の上方側の液体が下方側の液体に比べて高温になる傾向にある。そのため、本発明の液体加熱装置において、上水の加熱用に設けられた熱交換手段が貯留手段と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に液体加熱装置が配置されていると、一次流路等を介して貯留手段の上方側から熱交換手段に熱エネルギーが伝達される可能性がある。上水の供給停止時にこのような事態が発生すると、熱交換手段に滞留している上水が加熱されてしまい、次の上水の供給開始直後に高温の上水が供給されてしまう可能性がある。
【0013】
そこで、かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段が、貯留手段に対して下方に配置されている。そのため、本発明の加熱装置では、貯留手段から熱交換手段への伝熱が殆ど起こらず、上水の供給停止時に熱交換手段に滞留している上水が必要以上に加熱されたり、次の上水の供給開始直後に高温の上水が供給されるといったような不具合が起こりにくい。
【0014】
また、上記請求項1に記載の液体加熱装置は、熱交換手段が、プレート型熱交換器によって構成されたものであることが望ましい(請求項2)。
【0015】
本発明の液体加熱装置では、熱交換手段としてプレート型熱交換器を採用しているため、熱交換手段をさほど大きくしなくても所望の熱交換効率を得ることができる。よって、本発明によれば、筐体内において熱交換手段の設置に要するスペースを最小限に抑制でき、液体加熱装置の装置構成のコンパクト化に資することができる。
【0016】
ここで、上記請求項1又は2に記載の液体加熱装置は、一次流路の中途に、液体を圧送可能な圧送手段が設けられていることが望ましい(請求項3)。
【0017】
かかる構成によれば、圧送手段の動作を制御することにより、上水の加熱状態を制御することができる。
【0018】
ここで、上記したように、貯留手段内に貯留されている液体を加熱すると、貯留手段の上方側に存在する液体が下方側に存在する液体に対して優先的に加熱される傾向にある。そのため、上記請求項1〜3のいずれかに記載の液体加熱装置において、一次流路は、貯留手段の上方側に存在する液体を下方側に存在する液体に対して優先的に取り出して熱交換手段に供給可能であることが望ましい(請求項4)。
【0019】
かかる構成によれば、貯留手段内において高温に加熱された液体を優先的に熱交換手段に供給することができる。従って、本発明の液体加熱装置によれば、熱エネルギーを有効利用しつつ、上水の供給を開始してから所定温度まで加熱された上水が供給されるまでに要する時間(立ち上がり時間)をさらに短縮することができる。
【0020】
ここで、上記した液体加熱装置では、上水を加熱して供給する動作の実施中に、供給すべき上水の設定温度や量が急激に変更される場合が想定される。そのため、上記した液体加熱装置は、前記したような上水の供給条件の急激な変更があっても、上水を安定供給可能な構成であることが望ましい。
【0021】
そこで、かかる事態が想定される場合、上記請求項1〜4のいずれかに記載の液体加熱装置は、上水の流量を調整可能な流量調整手段を設けた構成とすることが望ましい(請求項5)。
【0022】
かかる構成によれば、上水の供給温度をより一層安定化することができる。
【0023】
また、同様の知見に基づき上記請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置は、熱交換手段において加熱された上水と、外部から供給された上水とを混合する混合手段を設けた構成とすることも可能である(請求項6)。
【0024】
かかる構成とすることによっても、上水の供給温度を安定化することができる。
【0025】
ここで、上記請求項6のように混合手段を設ける場合、従来技術の液体加熱装置のように貯留手段内に配された熱交換手段で上水を加熱する構成とすると、上水の加熱を停止している間に給湯動作の停止等に伴って滞留している液体等を介して貯留手段側から伝熱が起こるものと想定される。上水の加熱停止中にこのような伝熱が起こると、混合手段に滞留している上水が高温に加熱されてしまい、次に給湯動作などを開始した直後に予期せぬ高温の上水が供給されてしまうといった不具合が起こり兼ねない。
【0026】
かかる不具合を防止すべく、従来技術の液体加熱装置では、上水の加熱停止中は混合手段に熱交換手段側から上水が流入できない状態とする構成とされている。このような構成とした場合、上記したような予期せぬ高温の上水が供給されるのを防止できる反面、上水を所定の温度に調整された状態で供給すべき状態になってから混合手段に対して熱交換手段において加熱された上水が流入可能な状態とせねばならず、その分だけ上水が所定の温度に到達するのが遅れてしまうという問題がある。
【0027】
そこで、かかる問題に対処すべく提供される請求項7に記載の発明は、熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、当該混合手段が、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0028】
本発明の液体加熱装置は、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされている。そのため、本発明の液体加熱装置では、上記した従来技術のように次に上水を所定の温度に調整して供給すべき状態になった際に、改めて混合手段に対して熱交換手段において加熱された上水が混合手段に流入可能な状態とする必要がない。従って、本発明の液体加熱装置は、上水を所定の温度に調整して供給すべき状態になった後、上水が所定の温度に到達するまでに要する期間を最小限に抑制することができる。
【0029】
また、上記したように、本発明の液体加熱装置では、貯留手段の外部に別途配された熱交換手段において熱交換加熱された上水を混合手段に供給する構成としているため、上水の加熱の停止中に貯留手段側からの伝熱による上水の昇温が起こりにくい。そのため、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態としておいても、次に上水の供給を開始した直後に予期せぬ高温の上水が供給されてしまうといった不具合が起こらない。
【0030】
ここで、上記請求項1〜7のいずれかに記載の液体加熱装置は、二次流路を流れる上水の加熱だけでなく、例えば貯留手段内に存在する加熱状態の液体を外部に設けられた負荷端末に供給可能な流路を設けたり、貯留手段内の液体との熱交換により浴槽の湯水などを加熱(追い焚き)可能な流路を上記した一次流路に対して独立的に設けた構成とすることも可能である。かかる構成とした場合、貯留手段内の液体やこれにより加熱された湯水等を負荷端末や浴槽等の熱負荷に供給する動作のように、貯留手段内の液体そのものや、貯留手段内の液体との熱交換により加熱された湯水等の液体を介して熱エネルギーを外部に設けられた負荷端末や浴槽などの熱負荷に対して供給する動作(以下、必要に応じて熱エネルギー供給動作と称する)を実施することができる。
【0031】
一方、上記請求項1〜7に記載の液体加熱装置は、貯留手段から熱交換手段に対して液体を供給することにより上水を加熱することができる。換言すれば、請求項1〜7に記載の液体加熱装置は、貯留手段から熱交換手段に対する液体の供給を停止することにより上水を加熱せず外部に供給する動作(以下、必要に応じて非加熱供給動作と称する)を実施することができる。そのため、上記請求項1〜7に記載の液体加熱装置は、貯留部内の液体を介して付与された熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を設けた構成としつつ、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能な構成とすることにより、非加熱状態の上水の使用と熱負荷の使用とを同時に実施でき、使い勝手がさらに向上するものと想定される。
【0032】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項8に記載の発明は、貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を有し、一次流路が前記熱負荷系統に対して独立して設けられており、貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給する熱エネルギー供給動作と、貯留手段から熱交換手段への液体の供給を停止した状態において、二次流路を介して供給される上水を熱交換手段を通過させて前記加熱系の外部に供給する非加熱供給動作を実施可能なものであり、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0033】
本発明の液体加熱装置では、上水の加熱に使用される液体が流れる一次流路が熱負荷系統に対して独立しており、熱交換手段に対する液体の供給と、熱負荷に対する液体の供給とを独立的に行うことができる。そのため、上記した構成によれば、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施でき、使い勝手に優れた液体加熱装置を提供できる。
【0034】
ここで、上記請求項1〜8に記載の液体加熱装置は、熱交換手段を貯留手段の外部に配し、この熱交換手段を用いて上水を加熱するものであったが、さらに別の用途に使用する液体を加熱可能な構成とすることも可能である。この場合、上記請求項1〜8のいずれかに記載の液体加熱装置は、貯留手段の内部に、貯留手段内に貯留されている液体との熱交換により液体を加熱可能な液−液熱交換手段が設けられた構成とすることが可能である(請求項9)。
【0035】
かかる構成によれば、上水の加熱に加えて、暖房装置等に代表される他の負荷端末に供給するための液体を加熱できる。従って、本発明によれば、給湯に代表されるような上水の供給だけでなく他用途にわたって使用可能な液体加熱装置を提供できる。
【0036】
また、上記したように、請求項1〜8に記載の液体加熱装置は、貯留手段内の液体を熱交換手段に供給することにより、熱交換手段に供給される上水を熱交換加熱して供給すると共に、熱交換手段に対して貯留手段内の液体を供給するのを停止することにより、二次流路を介して熱交換手段に供給される上水を非加熱状態で加熱系の外部に供給することができる。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段内の液−液熱交換手段で加熱された液体を加熱して供給する動作と、外部から熱交換手段に供給された上水を非加熱状態で供給する動作とを並行して実施できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、装置構成がコンパクトで、熱エネルギーを有効利用可能な液体加熱装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
続いて、本発明の一実施形態にかかる液体加熱装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の液体加熱装置である。図1および図2に示すように、液体加熱装置1は、金属製の筐体Cの内部に本体部2と燃焼部3および消音器4に加えて、後述する上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材が内蔵された構成とされている。
【0039】
本体部2は、大きく燃焼空間部5と貯留部6(貯留手段)とに分かれている。燃焼部3および燃焼空間部5は、貯留部6内に貯留される熱媒体を加熱する加熱手段7として機能する。本体部2は、全体形状が円筒形であり、2重構造となっている。本体部2の内部には、貯留部6が形成されている。より具体的には、本体部2は外筒8と内筒9とを有し、その内部に熱媒体を貯留できる構造とされている。また、特に本体部2の上半分には、上鏡板10と下鏡板11とによって囲まれた熱媒体室12が形成されている。
【0040】
熱媒体室12には、複数の燃焼ガス通路13が形成されている。燃焼ガス通路13は、貯留部6の熱媒体室12を軸方向に貫通する貫通孔である。また、燃焼部3は、灯油等の液体燃料の燃焼を行うバーナを備えており、燃料噴射ノズル15が内蔵されている。また、燃焼部3は、送風機16を具備しており、本体部2の下方に位置する燃焼空間部5に接続されている。燃焼空間部5は、燃焼部3の燃焼室として機能する。
【0041】
一方、本体部2の上方には、消音器4が設けられている。消音器4は、外観が円筒状または直方体状をしており、内部がラビリンス構造となっており、燃焼音を低減させるものである。なお、図1および図2において、消音器4のラビリンス構造は図示せず省略している。
【0042】
燃焼部3の燃料噴射ノズル15から噴射された燃料は、燃焼空間部5内において燃焼し、高温の燃焼ガスと火炎とを発生する。燃焼ガスは、熱媒体室12内の燃焼ガス通路13を流れ、消音器4を通過した後、外部に排出される。熱媒体室12内の熱媒体は、燃焼ガス通路13を流れる高温の燃焼ガスにより加熱され、昇温する。
【0043】
貯留部6には、熱媒体として不凍液を貯留することができる。貯留部6には、上水系統Sを構成する上水一次側往き流路20(一次流路)および上水一次側戻り流路21(一次流路)と、暖房系統Dを構成する暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とが接続されている。また、貯留部6の内部には、コイル状の熱交換器17(液−液熱交換手段)が内蔵されており、これに風呂系統Fを構成する風呂往き流路25および風呂戻り流路26が接続されている。
【0044】
上水系統Sは、図1に示すように上水用熱交換器30(熱交換手段)を中心として構成されるものであり、これに上水一次往き流路20や上水一次戻り流路21をはじめとする流路を接続して構成されるものである。上水用熱交換器30は、いわゆるプレート型の熱交換器によって構成されており、一次側接続口30a,30bおよび二次側接続口30c,30dを有する。上水用熱交換器30は、一次側接続口30a,30b間、および、二次側接続口30c,30d間で連通しており、一次側接続口30a,30b間を流れる液体と、二次側接続口30c,30d間を流れる液体とを熱交換させることができる構成となっている。上水用熱交換器30は、内部に多数のフィンが設けられており、このフィンの数を調整することにより、熱交換効率を適宜調整することができる。
【0045】
上水用熱交換器30は、図1では図示の都合で貯留部6の側方に隣接する位置に記しているが、実際は図2に示すように筐体Cの内部であって、貯留部6から下方に離間した位置に設けられている。さらに具体的には、上水用熱交換器30は、貯留部6を含む本体部2の下方に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上端側から上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水用熱交換器30等への伝熱が起こりにくい構成となっている。
【0046】
貯留部6に接続されている上水一次側往き流路20および上水一次側戻り流路21は、それぞれ上水用熱交換器30の一次側接続口30a,30bに接続されている。また、上水一次側戻り流路21の中途には、循環ポンプ32(圧送手段)が設けられている。そのため、循環ポンプ32を作動させることにより、貯留部6内に貯留されている熱媒体を、貯留部6の上端側に接続された上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給し、貯留部6側に戻すことができる。すなわち、循環ポンプ32を作動させることにより、貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体の循環流を発生させ、熱媒体の持つ熱エネルギーを上水用熱交換器30に供給することができる。
【0047】
上水用熱交換器30の二次側接続口30cには給水流路33が接続されており、二次側接続口30dには上水二次側往き流路34(二次流路)が接続されている。給水流路33は、外部の給水源から液体加熱装置1に湯水(上水)を供給するための流路であり、中途に水量センサ36、水温センサ37および給水用膨張タンク38が設けられている。また、水量センサ36よりも上流側には、逆止弁29が設けられている。そのため、万一、上水用熱交換器30の内部破壊によりその一次側(熱媒体側)と二次側(湯水側)とが連通しても、図示しない上水の上流側に熱媒体が逆流することがない。給水流路33は、中途で分岐流路40に分岐されている。分岐流路40は、後述する水量サーボ41(混合手段)に接続されている。
【0048】
上水二次側往き流路34は、上水用熱交換器30において熱交換加熱された湯水が流れる流路であり、水量サーボ41に接続されている。さらに詳細に説明すると、水量サーボ41は、3つの接続部41a,41b,41cを有し、接続部41a,41bから流入した湯水(液体)を混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。水量サーボ41は、接続部41a,41bの開度、すなわち接続部41a,41bから流入可能な湯水の量を調整可能な構成とされており、これにより接続部41a,41bから流入する湯水の混合比を調整可能な構成とされている。水量サーボ41の接続部41a,41bの開度は、供給すべき湯水の設定温度や、前記した分岐流路40を介して外部の給水源から供給される湯水の温度(入水温度)、供給すべき湯水の量に応じて調整される。
【0049】
上記した上水二次側往き流路34は、水量サーボ41の接続部41aに接続されている。また、水量サーボ41の接続部41bには、給水流路33から分岐された分岐流路40が接続されている。そのため、液体加熱装置1では、上水用熱交換器30において加熱され、上水二次側往き流路34を介して供給される高温の湯水と、分岐流路40を介して加熱系Hの外部から供給される低温の湯水とを水量サーボ41で混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。
【0050】
水量サーボ41は、後述する給湯運転や落とし込み運転の待機中に、上水二次側往き流路34が接続された接続部41aが多少開いた状態とされている。すなわち、給湯運転の待機中、水量サーボ41は上水二次側往き流路34に対して開状態の状態で維持されている。
【0051】
水量サーボ41には、上水流路35が接続されている。上水流路35は、給湯用や浴槽60への落とし込み用に使用される上水を供給するための流路である。上水流路35は、水量サーボ41の接続部41cに接続されており、中途に水量調整弁43(流量調整手段)と出湯温度センサ45とを有する。上水流路35の末端には、給湯栓47に繋がる配管を接続するための給湯接続口46が設けられている。
【0052】
上水流路35は、出湯温度センサ45の取り付け位置よりも湯水の流れ方向下流側の位置で注湯バイパス流路50に分岐されている。注湯バイパス流路50は、後述する風呂戻り流路26に接続されている。注湯バイパス流路50は、浴槽60への落とし込み用の湯水を供給するための流路であり、中途に注湯電磁弁51と、注湯水量センサ52と、逆止弁53,54が設けられている。注湯水量センサ52は、注湯バイパス流路50を流れる水量を検知するものである。注湯電磁弁51は、図示しない制御手段から発信される浴槽60への落とし込み運転のための制御信号に基づいて開閉される。また、逆止弁53,54は、浴槽60側から湯水が逆流するのを防止するために設けられている。
【0053】
図1に示すように、暖房系統Dは、貯留部6に接続された暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とを備えている。暖房往き流路22は貯留部6の頂部側に接続されており、暖房戻り流路23は貯留部6の底部側の位置に接続されている。暖房戻り流路23の中途には、暖房タンク65と循環ポンプ66とが設けられている。暖房往き流路22および暖房戻り流路23の末端には、暖房接続口67,68が設けられており、これらに液体加熱装置1の外部に設けられた負荷端末75に繋がる配管69,70を接続することにより、負荷端末75と液体加熱装置1との間で貯留部6内に貯留されている熱媒体が往き来可能な状態とすることができる。
【0054】
暖房系統Dを構成する暖房往き流路22および暖房戻り流路23は、それぞれ上記した上水系統Sの上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21に対して独立的に貯留部6に接続されており、熱媒体を上水系統Sに対して独立的に循環させることができる。そのため、液体加熱装置1は、循環ポンプ32が停止中であっても、循環ポンプ66を作動させることにより熱媒体を負荷端末75との間で循環させ、負荷端末75に熱エネルギーを供給することができる。
【0055】
暖房タンク65には、暖房系統D内に存在する空気を外部に排出するためのエア抜き弁71が取り付けられている。また、暖房タンク65には、バイパス流路72が接続されている。バイパス流路72は、循環ポンプ66の保護を主目的として設けられた流路であり、暖房タンク65と貯留部6の上端側の部位とをバイパスするように取り付けられている。バイパス流路72は、暖房戻り流路23よりも流路断面積が小さく、流路抵抗が大きい。そのため、負荷端末75に液体を供給可能な状態で循環ポンプ66を作動させると、貯留部6から暖房往き流路22を介して吸い出された熱媒体が、配管69,70および負荷端末75を流れ、暖房戻り流路23を介して貯留部6に戻る。一方、負荷端末75に液体を供給不可能な状態で循環ポンプ66が作動すると、熱媒体が貯留部6からバイパス流路72を介して吸い出され、暖房戻り流路23を経て貯留部6に戻る。
【0056】
風呂系統Fは、浴槽60内の湯水を加熱(追い焚き)したり、浴槽60内に湯水を落とし込むために使用されるものである。風呂系統Fは、図1に示すように、貯留部6内に配置された熱交換器17に風呂往き流路25および風呂戻り流路26を接続した構成とされている。
【0057】
風呂系統Fを構成する風呂往き流路25や風呂戻り流路26は、それぞれ上記した上水系統Sの上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21に対して独立的に設けられている。そのため、液体加熱装置1は、循環ポンプ32が停止中で、上水系統Sにおける湯水の加熱動作が停止中あっても、循環ポンプ83を作動させることにより浴槽60内の湯水を循環させ、貯留部6内に配された熱交換器17において加熱することができる。
【0058】
熱交換器17は、貯留部6内に配されており、貯留部6の底部側および頂部側に接続口17a,17bを有する。貯留部6の底部側に設けられた接続口17aには、風呂往き流路25が接続されており、頂部側に設けられた接続口17bには、風呂戻り流路26が接続されている。風呂往き流路25および風呂戻り流路26の端部には、それぞれ浴槽60に繋がる配管77,78を接続するための風呂接続口61,62が設けられている。また、風呂往き流路25および風呂戻り流路26は、バイパス流路63によってバイパスされている。
【0059】
風呂戻り流路26の中途には、熱交換器17側から湯水の流れ方向上流側に向けて三方弁80、湯温センサ81、水流スイッチ82、循環ポンプ83および水位センサ84の順で設けられている。また、風呂戻り側流路26の中途であって、循環ポンプ83よりも上流側の位置には、上記した注湯バイパス流路50が接続されている。三方弁80は、上記したバイパス流路63と風呂戻り流路26との接続部分に設けられており、必要に応じて開閉できる構成とされている。さらに具体的には、予め浴槽60内に張られている湯水を加熱(追い焚き)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。これにより、熱交換器17と浴槽60との間で湯水の往き来が可能な状態になる。一方、浴槽60内に湯水を供給(落とし込み)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートが閉止した状態とされる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水を、注湯バイパス流路50側から風呂往き流路25や風呂戻り側流路26に流し、配管77,78を介して浴槽60に供給可能な状態になる。
【0060】
続いて、本実施形態の液体加熱装置1の動作について説明する。液体加熱装置1は、給湯栓47に上水用熱交換器30において熱交換加熱された湯水を供給する給湯運転に加えて、外部から供給された湯水を熱交換加熱せずにそのまま給湯栓47に供給する給水運転、負荷端末75に貯留部6内に貯留されている熱媒体を介して熱エネルギーを供給する負荷運転、浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転、浴槽60内の湯水を加熱する追い焚き運転から一又は複数の運転方法を選択して実施することができる。以下、液体加熱装置1の動作を各運転方法毎に説明する。
【0061】
(給湯運転)
液体加熱装置1が給湯運転を実施する場合は、上水用熱交換器30において、外部の給水源から供給された湯水が貯留部6内に貯留されている高温の熱媒体との熱交換により加熱され、給湯栓47に向けて供給される。さらに具体的には、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオン状態とされ、給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して低温の湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水流を検知すると、循環ポンプ32が作動を開始する。
【0062】
循環ポンプ32が作動すると、貯留部6の頂部側に設けられた一次側接続口30aから吸い出された高温の熱媒体が上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給される。貯留部6から吸い出された高温の熱媒体は、上水用熱交換器30において熱エネルギーを放出した後、上水一次側戻り流路21を介して貯留部6に戻る。すなわち、循環ポンプ32が作動すると、貯留部6と上水用熱交換器30との間で貯留部6内に貯留されている熱媒体が循環する。
【0063】
給水流路33を介して外部から供給された低温の湯水の一部は、上水用熱交換器30に供給され、残部は、分岐流路40を介して水量サーボ41に供給される。ここで、上水用熱交換器30に供給される湯水と、分岐流路40側に流れる湯水の流量比は、給湯栓47において必要とされる湯水の設定温度等に基づいて水量サーボ41により調整される。
【0064】
給水流路33を介して上水用熱交換器30に供給された湯水は、上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給されている高温の熱媒体との熱交換により加熱される。上水用熱交換器30において加熱された高温の湯水は、上水二次側往き流路34を介して水量サーボ41に供給される。
【0065】
水量サーボ41に供給された高温の湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と混合されて所定温度に調整された後、上水流路35に流れ込む。上水流路35に流れ込んだ湯水は、給湯接続口46に接続された配管48を介して給湯栓47に供給され、給湯に使用される。
【0066】
(給水運転)
給水運転は、液体加熱装置1の外部にある給水源から供給された湯水を上水用熱交換器30で熱交換加熱することなく、そのまま給湯栓47に供給する運転形態である。給水運転を実施する場合は、さらに具体的には、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオフ状態の場合は、給湯運転を行わない。すなわち、運転スイッチがオフ状態である場合は、循環ポンプ32が作動せず、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)が供給されない。そのため、この状態において給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して供給された低温の湯水が上水用熱交換器30を素通りして給湯栓47に供給される。
【0067】
本実施形態の液体加熱装置1は、上記した運転スイッチがオン状態であるか否かにかかわらず、負荷運転や追い焚き運転のように外部の給水源から供給された湯水(上水)の加熱を伴わない運転を実施できる構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、仮に循環ポンプ32がオフ状態で故障しており、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態において、湯水を加熱して供給する給湯動作を実施することは不可能であるが、給水動作は実施することができる。
【0068】
(負荷運転)
液体加熱装置1が負荷運転で運転する場合、図示しない運転スイッチがオン状態とされると、燃焼部3が燃焼運転を開始し、貯留部6内に貯留されている熱媒体が加熱される。また、暖房戻り流路23に設けられた循環ポンプ66が作動し、貯留部6内の熱媒体が暖房往き流路22、暖房戻り流路23および配管69,70で構成される循環流路内を循環する。これにより、熱媒体を介して熱エネルギーが負荷端末75に供給される。
【0069】
(落とし込み運転)
液体加熱装置1は、浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転を湯張りモード、足し湯モード、足し水モードからなる3つの動作モードで実施することができる。足し水モードは、上記した給水運転と同様に、外部から供給された湯水を加熱することなく浴槽60に供給するモードである。液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、湯水を加熱する必要がないため、循環ポンプ32が作動しない。すなわち、足し水モードで動作する場合は、外部から供給された低温の湯水の一部が上水用熱交換器30を素通りして水量サーボ41に供給されると共に、外部から供給された低温の湯水の残部が分岐流路40を介して水量サーボ41に流入して合流し、上水流路35および注湯バイパス流路50を介して浴槽60に落とし込まれる。
【0070】
液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、上記した給水運転と同様に、仮に循環ポンプ32がオフ状態で故障しており、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態においても実施することができる。
【0071】
湯張りモードは、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30において加熱して浴槽60に落とし込み、浴槽60に湯水を張るモードである。また、足し湯モードは、予めある程度の湯水が浴槽60に溜められている状況下で、浴槽60内に上水用熱交換器30において加熱された湯水を追加するモードである。
【0072】
液体加熱装置1が湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転で運転する場合は、給水源から供給された低温の湯水が上水用熱交換器30において加熱され、これが浴槽60に落とし込まれる。すなわち、湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転が実施される場合は、外部の給水源から湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水量を検知すると、循環ポンプ32が作動し始める。
【0073】
一方、液体加熱装置1が湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80が熱交換器17側に閉止された状態とされると共に、上水流路35の分岐流路である注湯バイパス流路50に設けられた注湯電磁弁51が開かれる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と水量サーボ41において混合された後、上水流路35および注湯バイパス流路50を経て、風呂戻り流路26に流入する。風呂戻り流路26に流入した湯水の一部は、そのまま配管78に流入し、浴槽60に落とし込まれる。また、風呂戻り流路26に流入した湯水の残部は、バイパス流路63を経て風呂往き流路25に流入し、配管77を介して浴槽60に落とし込まれる。
【0074】
(追い焚き運転)
追い焚き運転は、貯留部6内に設けられたコイル式の熱交換器17と浴槽60との間で湯水の循環流を発生させ、貯留部6内に貯留されている高温の熱媒体との熱交換により、熱交換器17内を流れる湯水を加熱するモードである。さらに具体的には、液体加熱装置1が追い焚き運転で作動する場合は、上記した各運転で動作する場合と同様に燃焼部3が燃焼運転を実施し、貯留部6内の熱媒体が加熱される。また、追い焚き運転で運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。この状態で循環ポンプ83を作動させると、浴槽60内の湯水が配管78を介して吸い出されて風呂戻り流路26に流れ込み、熱交換器17に流入する。熱交換器17に流入した湯水は、貯留部6内の熱媒体との熱交換により加熱され、風呂往き流路25および配管77を介して浴槽60に戻される。これにより、浴槽60内の湯水が次第に加熱される。
【0075】
上記したように、本実施形態の液体加熱装置1では、給湯用や落とし込み用に使用される上水を加熱するために設けられた上水用熱交換器30が貯留部6の内部ではなく、貯留部6を含む本体部2に対して下方に離間した位置に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、従来技術のように追い焚き用に設けられたコイル式の熱交換器17と同様の熱交換器を上水の加熱用に設ける場合に比べて貯留部6の高さや容積が小さい。
【0076】
液体加熱装置1は、貯留部6の上方側に接続された上水一次側往き流路20を介して熱媒体を取り出して上水用熱交換器30に供給し、給水流路33を介して外部から供給された湯水を熱交換加熱する構成とされている。すなわち、液体加熱装置1では、貯留部6内に貯留されている熱媒体の一部を取り出し、これを用いて湯水を熱交換加熱する構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が所定の温度に到達していれば、上水用熱交換器30において上水をムラ無く加熱することができる。すなわち、液体加熱装置1では、貯留部6内に貯留されている液体の温度ムラ(温度分布)に殆ど左右されることなく、上水をムラ無く加熱することができる。
【0077】
ここで、本実施形態の液体加熱装置1において、燃焼部3を作動させて貯留部6内の熱媒体を加熱する場合、通常は熱媒体の対流等の影響により貯留部6の下方側よりも上方側の方に高温の熱媒体が集まる傾向にある。本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6の上方側から優先的に熱媒体を取り出して上水用熱交換器30に供給し、放熱後の熱媒体を貯留部6の下方側に戻す構成を採用している。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6に熱媒体を介して貯留されている熱エネルギーを給湯や落とし込みに使用される上水の加熱に効率よく利用し、給湯や落とし込みに要する熱エネルギー消費を最小限に抑制することができる。
【0078】
上記したように、液体加熱装置1は、貯留部6内に存在する熱媒体の一部を取り出して上水用熱交換器30に供給し、上水を熱交換加熱する構成としている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が高温になった時点で上水を十分加熱可能な状態になる。すなわち、液体加熱装置1は、貯留部6内の熱媒体全体が高温になるのを待つことなく所定の温度に加熱された湯水を給湯用や落とし込み用として供給可能な状態になる。そのため、液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込み運転を開始してから短時間のうちに所定温度まで加熱された湯水を供給可能な状態になる。
【0079】
本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6や加熱手段7、上水用熱交換器30等に加えて上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材や配管を収容した構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6と上水用熱交換器30との間における熱媒体の往来等に伴う放熱や、上水用熱交換器30における放熱に伴う熱エネルギーロスが少ない。
【0080】
本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6の上方側に高温の熱媒体が集まる傾向にあることを考慮して、上水用熱交換器30が貯留部6に対して下方に配置されている。すなわち、上水用熱交換器30が貯留部6と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置されると、貯留部6側から上水用熱交換器30側への伝熱が起こりやすい。そのため、上水用熱交換器30を貯留部6と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置すると、給湯運転や落とし込み運転の停止中に上水用熱交換器30に滞留している湯水が必要以上に加熱されたり、次の給湯運転や落とし込み運転の開始直後に高温の湯水が供給される可能性がある。そこで、かかる事態を想定し、本実施形態の液体加熱装置1では、上水用熱交換器30を貯留部6に対して下方に配置し、貯留部6側から上水用熱交換器30に伝熱が起こりにくい構造としている。そのため、液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込みの停止中、すなわち上水用熱交換器30への上水の供給の停止中に、上水用熱交換器30内に滞留している湯水が過度に昇温したり、次の給湯運転や落とし込み運転の開始直後に予期せぬ高温の湯水が供給されるといったような不具合(高温出湯)が起こりにくい。
【0081】
上記実施形態では、高温出湯等の不具合の発生を考慮して上水用熱交換器30を貯留部6の下方に配置する構成を例示したが、高温出湯等の不具合を考慮する必要がない場合は上水用熱交換器30を貯留部6と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置した構成としてもよい。
【0082】
液体加熱装置1は、上水用熱交換器30としてプレート型の熱交換器を採用しているため、上水用熱交換器30をさほど大きくしなくても所望の熱交換効率を得ることができる。よって、液体加熱装置1は、筐体C内において上水用熱交換器30の設置に要するスペースが小さく、全体の装置構成がコンパクトである。
【0083】
上記実施形態では、上水用熱交換器30として、いわゆるプレート型の熱交換器を採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類の熱交換器を採用してもよい。
【0084】
上記したように液体加熱装置1は、上水一次側戻り流路21の中途に循環ポンプ32を設け、これを作動させることにより上水用熱交換器30と貯留部6との間で熱媒体を循環させることができる構成となっている。そのため、液体加熱装置1は、循環ポンプ32の動作を制御することにより、給湯用や落とし込み用に使用される上水の加熱状態を制御することができる。
【0085】
液体加熱装置1は、水量サーボ41を有し、これに上水用熱交換器30において加熱された湯水と、外部から供給された低温の湯水とを供給して混合した後、上水流路35を介して給湯栓47に湯水を供給可能な構成とされている。また、液体加熱装置1は、上水流路35の中途に水量調整弁43が設けられている。そのため、本実施形態の液体加熱装置1は、上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水二次側往き流路34等の中途で放熱等が起こるなどしても、給湯用あるいは落とし込み用として供給される上水の温度を精度良く調整することができる。
【0086】
また、液体加熱装置1は、水量サーボ41や水量調整弁43を設けた構成であるため、給湯運転中にリモコン91の操作により給湯の設定温度Stが急激に変更されたり、給湯栓47の操作により給湯流量が急激に変更されるなどして、湯水(上水)の供給条件が急激に変更された場合であっても安定的な出湯温度で給湯運転を実施することができる。
【0087】
上記実施形態では、水量サーボ41や水量調整弁43を設けることにより、上水の供給温度を安定化させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水量サーボ41や水量調整弁43のいずれか一方あるいは双方をもたない構成であってもよい。
【0088】
上記したように、液体加熱装置1は、上水用熱交換器30を貯留部6の外部に配すると共に、貯留部6内の熱媒体を負荷端末75に供給したり、貯留部6内に配された熱交換器17において熱交換加熱することにより浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成とされている。そのため、液体加熱装置1では、貯留部6内に熱媒体を介して貯留されている熱エネルギーを負荷端末75の使用や浴槽60内の湯水の追い焚きに有効利用することができる。
【0089】
また、本実施形態の液体加熱装置1は、循環ポンプ32を作動させて貯留部6内の熱媒体を上水用熱交換器30に供給することにより、給湯や落とし込みに使用される湯水(上水)を熱交換加熱できる。また逆に、循環ポンプ32を停止状態として上水用熱交換器30への貯留部6内の熱媒体の供給を停止することにより、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30に素通りさせ、非加熱状態で供給することができる。そのため、液体加熱装置1は、循環ポンプ32を停止状態にすれば、負荷運転や追い焚き運転と、加熱系Hの外部から供給された湯水を非加熱状態で供給する給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。また、液体加熱装置1は、故障等の理由で循環ポンプ32が作動できない状態においても、負荷運転や追い焚き運転と、給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。
【0090】
上記したように、液体加熱装置1は、循環ポンプ32を停止状態とすることにより、外部から供給された上水を非加熱状態で供給する(給水運転、足し水モードでの落とし込み運転)ことができる。そのため、液体加熱装置1は、例えば、いわゆる太陽熱温水器のような加熱装置によって加熱系Hの外部で予熱(加熱)された湯水を上水用熱交換器30に供給可能な構成とすれば、循環ポンプ32を作動させない状態であったり、循環ポンプ32が故障等で作動できない状態であっても加熱状態の湯水を給湯栓47や浴槽60に供給することができる。
【0091】
上記した液体加熱装置1は、浴槽60内の湯水を追い焚きするために使用する熱交換器17を貯留部6の内部に配した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱交換器17を持たない構成であってもよい。かかる構成によれば、貯留部6をさらに小容量化したり、貯留部6の高さを低くすることができ、液体加熱装置1の小型化に資することができる。
【0092】
また、液体加熱装置1は、追焚き用の熱交換器17としてコイル式の熱交換器を採用し、これを貯留部6内に配置した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上水用熱交換器30と同様に貯留部6の外部に別途熱交換器を配し、これに貯留部6内の熱媒体を供給することによって浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成としてもよい。
【0093】
なお、貯留部6の外部に追い焚き用の熱交換器を配置する構成とした場合についても、負荷端末75に熱エネルギーを供給するために必要な量の熱媒体を貯留部6に貯留して加熱可能な構成とする必要がある。そのため、貯留部6の容量が負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさである場合は、追い焚き用の熱交換器を貯留部6の外部に設けることによる、液体加熱装置1の装置構成のコンパクト化に対する寄与が小さいものと想定される。従って、上記実施形態のように、貯留部6の容量を負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさとしつつ、追い焚き用の熱交換器17を貯留部6の内部に収容した構成とすることにより、液体加熱装置1全体の装置構成をコンパクト化することができる。
【0094】
本実施形態では、上水用熱交換器30が貯留部6よりも下方に配置されているため、給湯運転や落とし込み運転の停止時に上水用熱交換器30に高温の熱媒体が供給されたり、上水用熱交換器30が伝熱により高温になるといったような事態が発生しにくい。そのため、上記したように、給湯運転や落とし込み運転の待機中に、上水系統Sに設けられた水量サーボ41の接続部41aを多少開いた状態としておいても、水量サーボ41には高温の湯水が流入せず、次回の給湯運転や落とし込み運転の開始直後に高温の湯水が出るといった不具合が起こりにくい。
【0095】
また、液体加熱装置1は、水量サーボ41の接続部41aを多少開いた状態として給湯運転や落とし込み運転の開始まで待機する構成である。そのため、液体加熱装置1は、工場出荷時等に燃焼試験や通水検査を行った後や、長期にわたって不使用とされる場合、部品交換等のメンテナンスを行う際に上水系統Sから水抜きを行う際に、手間や時間をかけずに水抜きを実施することができる。
【0096】
上記実施形態では、貯留部6の下方に加熱手段7を配し、貯留部6内に貯留されている熱媒体を貯留部6の下方側から加熱可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加熱手段7としていわゆる逆燃焼方式の燃焼形態をとるものを採用し、これを貯留部6の上方側に加熱手段7を配した構成としたり、加熱手段7を貯留部6の側方から貯留部6内の熱媒体を加熱可能な構成とすることも可能である。かかる構成とした場合についても、熱媒体が貯留部6内において対流を起こし、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が下方側よりも高温になる可能性が高い。すなわち、加熱手段7を貯留部6の下方や上方、側方に配置することにより貯留部6が局所的に高温になると対流が起こり、熱媒体の温度分布が発生する可能性が高い。そのため、かかる構成の場合に、上記した液体加熱装置1と同様の構成を採用すれば、いわゆる出湯特性の改善や省エネルギーに資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態にかかる液体加熱装置を示す作動原理図である。
【図2】図1に示す液体加熱装置の一部を破断した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 液体加熱装置
2 本体部
6 貯留部(貯留手段)
7 加熱手段
17 熱交換器(液−液熱交換手段)
20 上水一次側往き流路(一次流路)
21 上水一次側戻り流路(一次流路)
30 上水用熱交換器(熱交換手段)
32 循環ポンプ(圧送手段)
34 上水二次側往き流路(二次流路)
35 上水流路
41 水量サーボ(混合手段)
43 水量調整弁(流量調整手段)
C 筐体
S 上水系統
D 暖房系統
F 風呂系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を有し、当該筐体内に液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、熱交換手段と、当該熱交換手段に前記貯留手段内に貯留されている液体を供給可能な一次流路と、上水が流れる二次流路とを備えており、
熱交換手段が、前記貯留手段に対して下方に離間した位置に配されており、二次流路を流れる上水を、前記一次流路を介して前記貯留手段から供給される液体との熱交換により加熱可能なものであることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項2】
熱交換手段が、プレート型熱交換器によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体加熱装置。
【請求項3】
一次流路の中途に、液体を圧送可能な圧送手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体加熱装置。
【請求項4】
一次流路が、貯留手段の上方側に存在する液体を下方側に存在する液体に対して優先的に取り出して熱交換手段に供給可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項5】
上水の流量を調整可能な流量調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項6】
熱交換手段において加熱された上水と、外部から供給された上水とを混合する混合手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項7】
熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、
当該混合手段が、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項8】
貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を有し、
一次流路が前記熱負荷系統に対して独立して設けられており、
貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給する熱エネルギー供給動作と、
貯留手段から熱交換手段への液体の供給を停止した状態において、二次流路を介して供給される上水を熱交換手段を通過させて前記加熱系の外部に供給する非加熱供給動作を実施可能なものであり、
熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項9】
貯留手段内に貯留されている液体との熱交換により液体を加熱可能な液−液熱交換手段が、貯留手段の内部に設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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