説明

液体収容パッケージおよびその製造方法

【課題】液体を導出させるための格別な構成を外部に設けずとも、収容した液体を導出することのできる液体収容パッケージおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】板材10およびフィルム材11を重ね合わせて接着接合することにより袋状のケース12を形成するとともに、これら板材10とフィルム材11との間に形成されたインク収容室の内部にインクを収容するようにした。そして、このうち板材10を、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成するとともに、インク収容時にはその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を収容する液体収容パッケージおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタで使用されるインクを収容する容器として、樹脂製のシート材やフィルム材にて形成されたインク袋内にインクを密封したインクパッケージが使用されている。こうしたインクパッケージからのインクの導出方式としては、ポンプでインク袋内のインクを吸引する方式と、外部からインク袋を加圧してインクを押し出す方式とが採用されている。
【0003】
従来、後者の導出方式としては、例えば特許文献1に見られるように、プリンタ本体に設けられた気密ケース内にインクパッケージを収容するとともに、その気密ケース内に加圧した空気を送り込むことで、空気圧にて外部からインクパッケージを押圧するものが知られている。
【特許文献1】特開2002−192738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにインクパッケージの外部から押圧を加えてインクを導出する場合には、気密ケースやエアポンプ等により、プリンタ本体の部品点数が増加してその製造コストの増大を招いてしまうようになる。勿論、前者の導出方式においても、インク吸引用のポンプが必須となるため、同様に製造コストの増大を招くものとなっている。もっとも、こうした問題は、インクジェットプリンタに限らず、シート材やフィルム材からなる収容袋内に液体を密封した液体収容パッケージに使用する液体を貯留する装置全般に共通したものとなっている。
【0005】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、液体を導出させるための格別な構成を外部に設けずとも、収容した液体を導出することのできる液体収容パッケージおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、重ね合わせた2枚の面材をそれらの外縁部で互いに接合することで、それら面材間に液体収容室を形成した液体収容パッケージにおいて、上記面材の少なくとも一方を、上記液体収容室の容積を増大させるように予め弾性反り変形された板材にて形成するようにした。
【0007】
弾性反り変形された板材は、荷重が取り去られると元の形状に復元する力、いわゆる復元力を有している。上記構成では、板材、シート材、フィルム材等の面材を2枚重ね合わせて液体収容パッケージが形成されている。そして、それら面材の少なくとも一方が板材にて形成されるとともに、この板材が、上記液体収容室の容積を増大させるように予め弾性反り変形されている。このため、液体収容室に液体が収容された状態にあっては、液体収容室の容積を減少させる方向に上記板材の復元力が押圧力として液体に加わるようになる。液体収容パッケージに収容された液体は、こうした板材による押圧によって外部に導出される。このため、エアポンプ等の格別の構成を外部に設けずとも、液体収容パッケージに収容された液体を導出することができるようになる。
【0008】
なお、上記構成の液体収容パッケージにおいては、上記液体収容室の容積が零となるときの上記板材の弾性反りひずみε0 と液体収容時の上記板材の弾性反りひずみεとが、
0≦ε0 <ε
となるように上記板材を予め弾性反り変形させておくことで、液体収容室に収容された液体を最後まで好適に導出することができるようになる。
【0009】
ただし、実際には、面材の表面は完全な平坦ではなく、また2枚の面材を接合した際に両者の面間に隙間が生じることも十分にあり得る。このため、上記板材の弾性反りひずみε0 が「0」となるように上記板材を予め弾性反り変形させた場合には、上記液体収容室の容積が理論上は零となったとしても、実際には同液体収容パッケージ内に液体が残留してしまうおそれがある。そこで、上記液体収容室の容積が零となるときの上記板材の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくなるように上記板材を予め弾性反り変形させておくことが望ましい。このようにすれば、液体収容室に収容された液体には、同液体収容室の容積が零となった後においても上記板材による押圧が加えられるようになり、液体収容パッケージに収容された液体を最後まで好適に導出することができるようになる。
【0010】
また、上記面材の一方を上記板材にて形成するとともに、他方をフィルム材にて形成するようにすれば、液体収容パッケージに収容された液体を必要最小限の構成にて導出することができるようになるとともに、液体収容パッケージの製造コストを抑制することができるようにもなる。
【0011】
さらに、上記液体収容室内に、液体の密封された液体収容袋を収容することとすれば、液体収容パッケージへの液体の密封を容易に行なうことができるようになる。
なお、こうした液体収容パッケージにおいて、上記板材を、液体収容時にその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されるとともに、上記液体収容室の容積の減少とともにその湾曲の曲率が大きくなるように形成することもできる。板材を湾曲形状に弾性反り変形させると、その湾曲形状を解消する方向、すなわちその湾曲の曲率が大きくなる方向に復元力が働く。上記構成では、上記板材が、液体収容時にその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されるとともに、上記液体収容室の容積の減少とともに上記湾曲の曲率が大きくなるように形成されているため、液体収容時にあっては、板材の内表面側に上記復元力が働くことになる。このため、液体収容パッケージに収容された液体は、上記板材の復元力による押圧を受けつつ好適に導出されるようになる。
【0012】
ただし、上述のように、実際には面材の表面は完全な平坦ではなく、また2枚の面材を接合した際に両者の面間に隙間が生じることも十分にあり得る。この場合には、板材が平坦となって上記液体収容室の容積が理論上は零となったとしても、実際には同液体収容パッケージ内に液体が残留してしまうおそれがある。そこで、上記板材が、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成されるとともに、液体収容時にはその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されるようにすることが望ましい。このようにすれば、板材が、平坦となった後もその外表面側を凹とした湾曲形状へと復元しようとするため、液体収容室に収容された液体は、同液体収容室の容積が零となった後においても板材による押圧が加えられるようになる。このため、液体収容パッケージに収容された液体を最後まで好適に導出することができるようになる。
【0013】
さらに、上記板材が、ロール状に巻かれた形状に形成されており、液体収容時にはその巻きを解くように弾性反り変形されるようにすれば、板材の巻き態様を視認することによって、液体収容パッケージ内に収容された液体の残量を容易に確認することができるようにもなる。
【0014】
なお、こうした液体収容パッケージは、インク噴射式記録装置に使用されるインクを上記液体として収容する液体収容パッケージ、すなわちインクパッケージとして採用してもよい。上述のように、従来のインク噴射式記録装置にあっては、インクパッケージに収容されたインクを導出するために、エアポンプ等の格別の構成をインク噴射式記録装置本体側に設ける必要がある。これに対して、本発明の液体収容パッケージによれば、液体収容パッケージを構成する板材の復元力を利用して液体を外部に導出するため、インク噴射式記録装置本体側に格別の構成を設けずとも、収容された液体を外部に好適に導出することができるようになる。このため、インク噴射式記録装置本体の部品点数の削減を通じて、インク噴射式記録装置の製造コストの抑制を図ることができるようになる。また、液体収容パッケージを構成する板材として、ロール状に巻かれた形状を有する上述の板材を採用するようにすれば、インクパッケージ内のインクの残量を容易に確認することができるようになり、インクパッケージを交換するタイミングを的確に判断することができるようにもなる。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明では、重ね合わせた板材とフィルム材とをそれらの外縁部で互いに接合することで、それら板材とフィルム材との間に液体収容室の形成された液体収容パッケージを製造する方法として、上記フィルム材の接合される面側を凸とした湾曲形状に前記板材を形成する工程と、その形成された板材を平坦に弾性変形させる工程と、平坦に弾性変形された上記板材上に前記フィルム材を撓みの無いように重ね合わせる工程と、重ね合わされた上記板材と上記フィルム材とをそれらの外縁部にて互いに接合する工程と、接合された上記板材と上記フィルム材との間に隙間が形成されるように上記板材を弾性反り変形させるとともに、その形成された隙間に液体を収容する工程とを備えるようにした。
【0016】
この発明では、フィルム材の接合される面側を凸とした湾曲形状に板材を形成しておき、この板材を平坦に弾性変形させた後、その上に上記フィルム材を撓みの無いように重ね合わせてこれらの外縁部を互いに接合する。そして、こうして接合された上記板材と上記フィルム材との間に隙間が形成されるように上記板材を弾性反り変形させ、その形成された隙間に液体を収容する。このとき、板材が、その外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形するため、液体収容パッケージに収容された液体は、板材の復元力による押圧を加えられることとなる。このため、エアポンプ等の格別の構成を外部に設けずとも、液体収容パッケージに収容された液体を導出することができるようになる。しかも、この発明によれば、湾曲形状に形成された板材を平坦に弾性変形させた後、同板材と上記フィルムとの外縁部を互いに接合するようにしているため、板材は、平坦となった後においても上記フィルム材の接合される面側を凸とした湾曲形状へと復元しようとする。液体収容室に収容された液体は、こうした板材の復元力によって、同液体収容室の容積が実際に零になるまで押圧されるようになる。このため、液体収容パッケージに収容された液体を最後まで確実に導出することができるようにもなる。
【0017】
なお、上記液体の収容が、同液体の密封された液体収容袋を上記隙間に挿入することで行われるようにすれば、液体収容パッケージへの液体の密封を容易に行なうことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の液体収容パッケージおよびその製造方法を具体化した第1の実施の形態について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態にかかる液体収容パッケージは、インク噴射式記録装置(インクジェットプリンタ)のインクパッケージとして構成されている。
【0019】
図1は、本実施の形態にかかるインクパッケージについて、インクが収容された状態におけるその斜視構造を模式的に示したものである。同図1に示すように、このインクパッケージは、矩形状に形成された金属製の板材10の外縁部と、この板材10と同一平面形状を有する可撓性のフィルム材11の外縁部との接着接合によって形成された袋状のケース12の内部に、インクの密封されたインク袋13が収容された構造を有している。このうち上記板材10は、弾性反り変形可能な材料として採用されることの多いステンレス板にて形成されている。一方、上記フィルム材11は、面方向の引張り変形が少なく、耐クリープ性の高い材料として採用されることの多いPET(ポリエチレンテレフタレート)にて形成されている。
【0020】
こうしたインクパッケージにおいて、インク袋13の図中左側における端面中央には、略筒状のインク導出部14が同インク袋13から突出する態様で取り付けられている。なお、インクジェットプリンタ本体に設けられたインク導入針20は、このインク導出部14を通じてインク袋13の内部に刺入されるようになっている。こうした構成に対応して、上記インク導出部14には、刺入中のインク導入針20の外周を封止するゴム等の弾性体(エラストマ)からなるパッキンや、インク導入針20の未刺入時に同インク導出部14を通じたインクの漏出を防止する逆止弁(共に図示略)が内蔵されている。
【0021】
また、インクパッケージにおいて、上記インク袋13のインク導出部14の周側面上には、同インク導出部14を挟んで両側に取付板15,16がそれぞれ設けられている。これら取付板15,16には、貫通孔15a,16aがそれぞれ形成されている。インクパッケージは、インクジェットプリンタ本体の収容室に設けられたホルダにこれら取付板15,16を通じて装着される。なお、このホルダは、同収容室の奥側に固定された上記インク導入針20に対して近接する方向および離間する方向に往復動されるように配設されている。そして、インク導入針20から離間した位置にホルダを移動させた状態でインクパッケージを同ホルダに装着した後、このインクパッケージの装着されたホルダをインク導入針20に近接させることで、インク袋13の内部に上記インク導入針20が刺入されるようになっている。
【0022】
ここで、上記インク袋13を収容するケース12の構造について、図2を参照しつつさらに詳細に説明する。図2は、図1のA−Aに沿ったインクパッケージの断面構造を模式的に示したものである。
【0023】
上述のように、ケース12は、矩形状の板材10の外縁部とフィルム材11の外縁部とが接着接合されることで袋状に形成されている。そして、同図2に示すように、これら板材10およびフィルム材11との間には、インク収容室17が形成されている。上記インク袋13は、このインク収容室17に収容されている。
【0024】
このケース12において、板材10は、インク収容室17の容積が零となるときの同板材10の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくなるように形成されている。そして、板材10は、インク収容室17内のインク袋13にインクが収容された状態にあっては、図中下側の外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されている。すなわち、インク収容室17の容積が零となるときの板材10の弾性反りひずみε0 とインク収容時の板材10の弾性反りひずみεとの関係は、

0<ε0 <ε

となる。
【0025】
次に、上記構成のインクパッケージからインクが導出され、同インクパッケージ内のインクが空になるまでの様子を、先の図2とともに図3および図4を参照しつつ説明する。図3および図4は、先の図1のA−Aに沿ったインクパッケージの断面構造を、インクパッケージからインクが導出された後の各時点にそれぞれ対応させて示したものである。
【0026】
図2に示すように、インク収容室17内のインク袋13にインクが収容されている状態にあっては、ケース12を構成する板材10はその外側面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されている。このとき、板材10は、上記弾性反りひずみεを解消して元の形状に復元しようとする力、いわゆる復元力を有している。こうした板材10の復元力は、その湾曲の曲率が大きくなる方向、すなわちインク収容室17の容積を減少させる方向に働く。これにより、インク袋13は、板材10の復元力による押圧を通じて加圧されることとなる。このため、上記インク袋13のインク導出部14に上記インク導入針20が刺入されると、インク袋13内のインクが同インク導出部14を通じてインクジェットプリンタ本体側に導出されるようになる。
【0027】
その後、図3に示すように、インク袋13内のインクの減少に伴ってインク収容室17の容積が減少すると、板材10の湾曲の曲率は次第に大きくなっていく。このときも、板材10が弾性反り変形した状態にあるため、インク袋13は、板材10の復元力による押圧を通じて引き続き加圧されることとなる。このため、インク袋13内のインクは、上記インク導出部14を通じてインクジェットプリンタ本体側に引き続き導出される。
【0028】
そして最終的には、インク収容室17の容積が零となって、インク袋13内のインクは空となる。ただし、板材10は、上述のように、インク収容室17の容積が零となるときの同板材10の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくなるように形成されているため、図4に示すように、インク収容室17の容積が零となった後においてもさらに変形して、その外表面側に凹とした湾曲形状となる。これにより、板材10やフィルム材11が完全な平坦でない場合や、板材10とフィルム材11とを接着接合した際に両者の面間に隙間が生じた場合であっても、そうした隙間に残留したインクを確実に導出することが可能となり、インクパッケージに収容されたインクを最後まで好適に導出することができるようになる。
【0029】
さて、こうしたインクパッケージは、次の各工程を経ることにより製造される。
1.まず、図5に示すように、フィルム材11の接合される面側を凸とした湾曲形状に板材10を形成する。これにより、板材10は、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成される。このように、板材10をその外表面側を凹とした湾曲形状に予め形成しておくことにより、板材10が平坦となったとき、すなわちインク収容室17の容積が零となったときの同板材10の弾性反りひずみε0 を「0」よりも大きくすることができる。
【0030】
2.そしてその後、同図5に破線にて示すように、この板材10を平坦に弾性変形させる。
3.次に、図6に示すように、平坦に弾性変形された上記板材10上にフィルム材11を撓みの無いように重ね合わせる。
【0031】
4.こうして重ね合わされた板材10とフィルム材11とを、それらの外縁部10a,11aにて互いに接着接合する。これにより、ケース12が形成される。
5.続いて、図7に示すように、板材10とフィルム材11との間に隙間が形成されるように板材10を弾性反り変形させる。この隙間がインク収容室17となる。このように、板材10は、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成され、インク収容時にはその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形させられる。その後、インク収容室17にインク袋13を収容することによって本実施の形態にかかるインクパッケージが完成する。なお、インク袋13にインクを収容した後、同インク袋13を上記インク収容室17に収容することで、インクパッケージ内へのインクの密封が行なわれる。
【0032】
なお、本実施の形態では、板材10およびフィルム材11が「面材」に、インク袋13が「液体収容袋」にそれぞれ相当する構成となっている。また、本実施の形態では、インク収容室17が「液体収容室」に相当する構成ともなっている。
【0033】
以上説明した本実施の形態にかかるインクパッケージによれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
(1)矩形状をなす板材10およびフィルム材11を重ね合わせて接着接合することにより袋状のケース12を形成するとともに、これら板材10とフィルム材11との間に形成されたインク収容室17の内部にインク袋13を収容するようにした。そして、このうち板材10を、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成するとともに、インク収容時にはその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形するようにした。これにより、インク収容室17に収容されたインク袋13内にインクが収容された状態にあっては、インク収容室17の容積を減少させる方向に上記板材10の復元力が押圧力としてインク袋13に加わるようになる。こうした板材10による押圧により、インク袋13に収容されたインクはインク導出部14を通じてインクジェットプリンタ本体側に導出される。このため、エアポンプ等の格別の構成を外部に設けずとも、インクパッケージに収容されたインクを導出することができるようになる。
【0034】
(2)インクパッケージを製造するにあたって、フィルム材11の接合される面側を凸とした湾曲形状に板材10を形成した後、この板材10を平坦に弾性変形させ、この平坦に弾性変形された上記板材10の外縁部とフィルム材11の外縁部とを接着接合するようにした。すなわち、インク収容室17の容積が零となるときの板材10の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくなるようにした。これにより、板材10は、平坦となった後においてもその外表面側を凹とした湾曲形状へと復元しようとする。このため、板材10やフィルム材11の表面が完全に平坦でない場合や、板材10とフィルム材11とを接着接合した際に両者の面間に隙間が生じた場合であっても、インクパッケージに収容されたインクを最後まで好適に導出することができるようになる。
【0035】
(3)矩形状に形成された金属製の板材10と、この板材10と同一平面形状を有する可撓性のフィルム材11とをそれらの外縁部を接着接合することで袋状のケース12を形成するようにした。すなわち、ケース12を構成する面材のうちの一方のみを板材10とした。これにより、インクパッケージに収容されたインクを必要最小限の構成にて導出することができるようになるとともに、インクパッケージの製造コストを抑制することができるようにもなる。
【0036】
(4)インクの収容されたインク袋13を、板材10とフィルム材11とにより形成されたケース12の内部に収容するようにした。このため、従来のインクパッケージにおけるインク袋を本実施の形態にかかるケース12に収容することによっても、本実施の形態の効果を得ることができるとともに、インクパッケージの大幅な設計変更を回避することができるようになる。また、インクパッケージへのインクの密封を容易に行なうことができるようにもなる。
【0037】
(5)板材10を弾性反り変形させたときの同板材10の復元力を利用してインクパッケージからインクを導出するようにした。こうした構成は、構成部品も少なく、構造そのものが単純であることから、インク袋13に収容されたインクが空になるまで同インク袋13を安定的に加圧することができる。また、こうした構成のもとでは、インクジェットプリンタ本体側に上記インク袋13からインクを導出するための格別の構成を設ける必要がない。このため、インクジェットプリンタ本体の部品点数の削減を通じて、インクジェットプリンタの製造コストの抑制を図ることができるようにもなる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる液体収容パッケージを具体化した第2の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる液体収容パッケージの構造も、基本的には、先の第1の実施の形態にかかるインクパッケージの構造に準じたものとなっている。ただし、本実施の形態にかかるインクパッケージでは、インクパッケージを構成する板材をロール状に巻いて形成することで、インクパッケージ内に収容されたインクの残量を容易に視認することができるようにしている。こうしたインクパッケージについて、図8〜図10を参照しつつ説明する。なお、先の第1の実施の形態と同様あるいはそれに準じた構造については、同一の符号を付してその説明は割愛する。
【0038】
図8は、インク袋13の内部にインクが収容されていない状態におけるインクパッケージの斜視構造を示したものである。同図9に示すように、本実施の形態にかかるインクパッケージでは、ケース12が、インク導出部14の軸心Sの方向に沿ってロール状に巻かれた形状に形成されている。
【0039】
次に、上記構成を有するインクパッケージからインクが導出されて同インクパッケージ内のインクが空になるまでの様子を、図9、図10および図8を参照して説明する。図9および図10は、インク袋13にインクが収容された状態からインクが空になるまでの各時点に対応させてインクパッケージの斜視構造をそれぞれ示したものである。
【0040】
図9に示すように、インク袋13にインクが収容されている状態では、ケース12を構成する板材10がその巻きを解くように弾性反り変形している。このとき、板材10は、ロール状に巻かれた形状に戻ろうとする力(復元力)を有している。こうした板材10の復元力は、インク導出部14の軸心Sに沿ったその巻きの曲率が小さくなる方向、すなわちインク収容室17の容積を減少させる方向に働く。これにより、先の第1の実施の形態と同様、インク袋13は、板材10の復元力による押圧を通じて加圧されることとなる。このため、上記インク袋13のインク導出部14に上記インク導入針20が刺入されると、インク袋13内のインクが同インク導出部14を通じてインクジェットプリンタ本体側に導出されるようになる。
【0041】
その後、図10に示すように、インク袋13内のインクの減少に伴ってインク収容室17の容積が減少すると、板材10の上記巻きの曲率が小さくなる。このときも、板材10が依然として弾性反り変形した状態にあるため、インク袋13には、板材10の復元力による押圧が引き続き加えられる。このため、インク袋13内のインクは、上記インク導出部14を通じてインクジェットプリンタ本体側に引き続き導出される。このように、板材10の巻きの曲率がだんだん小さくなりつつ、同板材10の復元力による押圧を受けながらインクパッケージからインクが導出される。このため、インクパッケージの巻き態様を視認することにより、インク袋13に収容されたインクの残量を容易に確認することができる。
【0042】
そして最終的には、インク収容室17の容積が零となって、先の図9に示すように、インク袋13内のインクは空となる。
以上の構成を有するインクパッケージも、先の第1の実施の形態に準じた以下の各工程を経て製造される。
【0043】
1.まず、フィルム材11の接合される面側にロール状に巻かれた形状となるように板材10を形成する。これにより、インク収容室17の容積が零となるときの板材10の弾性反りひずみε0 を「0」よりも大きくすることができる。
【0044】
2.そして、第1の実施の形態と同様にこの板材10を平坦に弾性変形させる。
3.次に、平坦に弾性変形された上記板材10上にフィルム材11を撓みの無いように重ね合わせる。
【0045】
4.こうして重ね合わされた板材10とフィルム材11とを、それらの外縁部にて互いに接着接合する。これにより、ケース12が形成される。
5.板材10とフィルム材11との間に隙間が形成されるように板材10を弾性反り変形させる。この隙間がインク収容室17となる。このように、板材10は、ロール状に巻かれた形状に形成され、インク収容時にはその巻きを解くように弾性反り変形させられる。その後、インク収容室17にインク袋13を収容することによって本実施の形態にかかるインクパッケージが完成する。なお、先の第1の実施の形態と同様、インク袋13にインクを収容した後、同インク袋13を上記インク収容室17に収容することで、インクパッケージ内へのインクの密封が行なわれる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態にかかるインクパッケージによれば、先の第1の実施の形態における上記(1)〜(5)の効果に加え、以下のような新たな効果を得ることができるようになる。
【0047】
(6)ケース12において、ロール状に巻かれた形状に板材10を形成しておき、インク袋13へのインク収容時にはその巻きを解くように上記板材10が弾性反り変形するようにした。このため、ケース12(板材10)の巻き態様を視認することによって、インクパッケージ内に収容されたインクの残量を容易に確認することができるようになり、ひいては、インクパッケージを交換するタイミングを的確に判断することができるようになる。
【0048】
なお、この発明にかかる液体収容パッケージおよびその製造方法は上記各実施の形態に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0049】
(変形例1)上記第2の実施の形態では、板材10を、インク導出部14の軸心Sの方向に沿ってロール状に巻かれた形状に形成した。しかし、板材10の巻き方向は、インク袋13に対するインク導出部14の取付位置に応じて任意に選択することができる。例えば、図11に示すように、インク袋13の側面における端部にインク導出部14が取り付けられている場合には、板材10を、インク導出部14の軸心Sと直交する方向に沿ってロール状に巻かれた形状に形成するようにしてもよい。いずれの板材10の巻き方によっても、インクパッケージからインクが導出されるにつれて板材10がその巻きの曲率を小さくしながら復元するため、インクパッケージを視認することにより、インク袋13内に収容されたインクの残量を容易に確認することができるようになる。
【0050】
(変形例2)上記各実施の形態において、板材10の材料はステンレス板に限定されるものではなく、弾性を有する材料であれば任意の材料を採用することができる。例えば、板材10の材料として、鉄板等の金属板をはじめ、PETやナイロン等の耐熱性樹脂を採用するようにしてもよい。また、フィルム材11の材料はPETに限定されるものではなく、紙等を採用するようにしてもよい。要するに、フィルム材11の材料は、可撓性を有するとともに、面方向の引張り変形が少なく、耐クリープ性の高い材料であれば任意の材料を採用することができる。
【0051】
(変形例3)上記各実施の形態では、板材10とフィルム材11とによって形成されるケース12の内部にインク袋13を収容し、このインク袋13の内部にインクを収容するようにした。この他にも、ケース12の開口部を閉塞するとともに、このケース12の側面にインク導出部14を取り付けるようにして、このケース12の内部にインクを収容するようにしてもよい。このようにすれば、インク袋13を割愛することができるため、インクパッケージの製造コストを抑制することができるようになる。
【0052】
(変形例4)上記各実施の形態では、ケース12を構成する面材のうち一方を板材10としていたが、剛性の異なる2枚の板材10を用意しておき、これら板材10のそれぞれの外縁部を接合することによりケース12を形成するようにしてもよい。
【0053】
(変形例5)上記第1の実施の形態では、インク収容室17の容積が零となるときの板材10の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくなるように、フィルム材11の接合される面側を凸とした湾曲形状に板材10を予め形成しておき、この板材10を平坦に弾性変形させた後、同板材10にフィルム材11を接着接合するようにしていた。また、上記第2の実施の形態では、フィルム材11の接合される面側にロール状に巻かれた形状となるように板材10を予め形成しておき、同様にこの板材10を平坦に弾性変形させた後、同板材10にフィルム材11を接着接合するようにしていた。すなわち、上記各実施の形態においては、板材10を、予め湾曲形状に形成するようにしていた。しかしながら、インク袋13内に多少のインクが残っていても問題がない場合には、板材10を予め湾曲形状に形成する工程を割愛するようにしてもよい。すなわち、平坦な板材10にフィルム材11を重ね合わせてこれら板材10の外縁部とフィルム材11の外縁部とを接着接合することによりケース12を形成するようにしてもよい。このようにしても、板材10とフィルム材11との間に形成されたインク収容室17の内部に収容されたインク袋13にインクが収容されると、板材10がその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形する。また、インク収容室17の容積の減少とともに、板材10の湾曲の曲率は大きくなる。このため、こうした構成によっても、板材10の復元力によってインク袋13内のインクがインクジェットプリンタ本体側に好適に導出されるようになる。要するに、板材10は、インク収容室17の容積が零となるときの板材10の弾性反りひずみε0 とインク収容時の板材10の弾性反りひずみεとが、「0≦ε0 <ε」となるように形成されればよい。
【0054】
(変形例6)本発明にかかる液体収容パッケージは、インクジェットプリンタのインクパッケージへの適用に限定されるものではなく、液体を収容するとともに同液体を導出する容器の構造として適宜採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明にかかる液体収容パッケージの第1の実施の形態についてその斜視構造を模式的に示す斜視図。
【図2】図1中のA−Aに沿ったインクパッケージの断面構造を示す断面図。
【図3】図1中のA−Aに沿ったインクパッケージの断面構造を示す断面図。
【図4】図1中のA−Aに沿ったインクパッケージの断面構造を示す断面図。
【図5】同実施の形態にかかるインクパッケージの製造工程において、板材の斜視構造を示す斜視図。
【図6】同実施の形態にかかるインクパッケージの製造工程において、板材およびフィルム材の斜視構造をそれぞれ示す斜視図。
【図7】同実施の形態にかかるインクパッケージの分解斜視構造を示す斜視図。
【図8】本発明にかかる液体収容パッケージの第2の実施の形態についてその斜視構造を模式的に示す斜視図。
【図9】同実施の形態にかかるインクパッケージの斜視構造を示す斜視図。
【図10】同実施の形態にかかるインクパッケージの斜視構造を示す斜視図。
【図11】他の実施の形態にかかるインクパッケージの斜視構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0056】
10…板材、11…フィルム材、10a,11a…外縁部、12…ケース、13…インク袋、14…インク導出部、15,16…取付板、15a,16a…貫通孔、17…インク収容室、20…インク導入針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた2枚の面材をそれらの外縁部で互いに接合することで、それら面材間に液体収容室を形成した液体収容パッケージにおいて、
前記面材の少なくとも一方が、前記液体収容室の容積を増大させるように予め弾性反り変形された板材にて形成されてなる
ことを特徴とする液体収容パッケージ。
【請求項2】
前記液体収容室の容積が零となるときの前記板材の弾性反りひずみε0 と液体収容時の前記板材の弾性反りひずみεとが、
0≦ε0 <ε
とされてなる
請求項1に記載の液体収容パッケージ。
【請求項3】
前記液体収容室の容積が零となるときの前記板材の弾性反りひずみε0 が「0」よりも大きくされてなる
請求項2に記載の液体収容パッケージ。
【請求項4】
前記面材の一方が前記板材にて形成され、他方がフィルム材にて形成された
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項5】
前記液体収容室内に、液体の密封された液体収容袋が収容されてなる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項6】
前記板材は、液体収容時にその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されるとともに、前記液体収容室の容積の減少とともにその湾曲の曲率が大きくなるように形成されてなる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項7】
前記板材は、その外表面側を凹とした湾曲形状に形成されてなり、液体収容時にはその外表面側を凸とした湾曲形状に弾性反り変形されてなる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項8】
前記板材は、ロール状に巻かれた形状に形成されてなり、液体収容時にはその巻きを解くように弾性反り変形されてなる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項9】
当該液体収容パッケージは、インク噴射式記録装置に使用されるイ
ンクを前記液体として収容する
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体収容パッケージ。
【請求項10】
重ね合わせた板材とフィルム材とをそれらの外縁部で互いに接合することで、それら板材とフィルム材との間に液体収容室の形成された液体収容パッケージを製造する方法であって、
前記フィルム材の接合される面側を凸とした湾曲形状に前記板材を形成する工程と、
その形成された板材を平坦に弾性変形させる工程と、
平坦に弾性変形された前記板材上に前記フィルム材を撓みの無いように重ね合わせる工程と、
重ね合わされた前記板材と前記フィルム材とをそれらの外縁部にて互いに接合する工程と、
接合された前記板材と前記フィルム材との間に隙間が形成されるように前記板材を弾性反り変形させるとともに、その形成された隙間に液体を収容する工程と、
を備えることを特徴とする液体収容パッケージの製造方法。
【請求項11】
前記液体の収容は、同液体の密封された液体収容袋を前記隙間に挿入することで行われる
請求項10に記載の液体収容パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−176491(P2007−176491A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373412(P2005−373412)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】