説明

液体収納体の蓋体構造

【課題】液体収納体が傾いたり倒れたりした場合でも液体収納体内部の液体がこぼれ出ることがなく、蓋体とは別に固定用キャップを用いる必要もなく、安価な液体収納体の蓋体構造を提供する。
【解決手段】容器1の液体取り出し用開口部2となる筒部4に螺合させて閉じる蓋体7を備え、蓋体7の上端板部7aには液体吸い上げ用のチューブ10を差し込むための液体取り出し口7bが形成されており、蓋体7の内部には上端板部7aの下面に重なるようにシリコンなどで作られて柔軟性があり、Oリング状の外周部8aと、この外周部8aで囲まれる範囲内に存在し外周部8aに折れ曲がり自在な一箇所の繋がり部8bで繋がり上端板部7aの液体取り出し口7bを下側から開閉する円形の弁板8cを備えた弁体8が設けられ、さらに蓋体7の内部には弁体8の外周部8aを蓋体7の上端板部7aとの間で挟むようにOリング状のパッキン9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収納する容器などの液体収納体の液体取り出し用開口部に設けられる蓋体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体を収納する容器は例えば特許文献1に開示されているように、容器の液体取り出し用開口部に液体吸い上げチューブを容器に対して起立状態で保持する固定用キャップを嵌め込み、この固定用キャップの孔部より容器内に液体吸い上げチューブを差し込み容器内の液体を吸い上げて取り出すようにしたものが知られている。つまり、この特許文献1に開示されている前記固定用キャップは容器の液体取り出し用開口部に嵌め込んで装着され、容器の液体取り出し用開口部を閉じる蓋体を取り外した状態で固定用キャップの孔部より液体吸い上げチューブを差し込んで容器内の液体を吸い上げて取り出すものである。
【特許文献1】特開平11−1254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている容器にあっては、固定用キャップから液体吸い上げチューブを引き抜いたままにしておくと、容器に人の足がつまづいて容器が倒れた場合、固定用キャップの孔部から容器内部の液体がこぼれ出るという問題があり、固定用キャップから液体吸い上げチューブを引き抜いたときは必ず容器の液体取り出し用開口部を蓋体で閉じておく必要があった。また、上記特許文献1に開示されているものでは、液体吸い上げチューブを容器内に差し込むために容器の液体取り出し用開口部を開閉する蓋体とは別に固定用キャップが必要であった。
【0004】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、容器あるいは合成樹脂製袋などの液体収納体が傾いたり倒れたりした場合でも液体収納体内部の液体がこぼれ出ることがなく、蓋体とは別に固定用キャップを用いる必要もなく、安価な液体収納体の蓋体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の液体収納体の蓋体構造は、液体収納体の液体取り出し用開口部となる筒部に合成樹脂製の蓋体を螺合させて閉じるようにした液体収納体の蓋体構造であって、蓋体の上端板部には液体吸い上げ用のチューブを差し込むための液体取り出し口が形成されており、また蓋体の内部には上端板部の下面に重なるようにシリコンあるいはゴムなどで作られて柔軟性があり、Oリング状の外周部と、この外周部で囲まれる範囲内に存在し外周部に折れ曲がり自在な一箇所の繋がり部で繋がり前記蓋体の上端板部の液体取り出し口を下側から開閉する円形の弁板を備えた弁体が設けられ、さらに蓋体の内部には前記弁体の外周部を蓋体の上端板部との間で挟むようにOリング状のパッキンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明の液体収納体の蓋体構造は、容器あるいは合成樹脂製袋などの液体収納体にチューブが差し込まれていない状態で液体収納体が傾いたり倒れたりした場合、液体の内圧により弁板は蓋体の上端板部に形成してある液体取り出し口を内側から閉じることができ液体収納体内部の液体がこぼれ出ることがない。従って、蓋体と固定用キャップの両方を用いる必要がなく、安価な液体収納体の蓋体構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図9を用いて具体的に説明する。
図において、1は例えば洗剤や洗浄液などの液体(詳しくは後で希釈して使用される原液)を収納する合成樹脂製の容器で、この容器1の上端には一側部近傍に液体取り出し用開口部2が上方に開口して形成されている。詳しくはこの液体取り出し用開口部2は、容器1の上面より一段高くなるように形成された肩部3から立ち上がる長さの短い筒部4に形成されており、筒部4の外周面に雄ねじ部5が形成されている。液体取り出し用開口部2は前記筒部4の雄ねじ部5に螺合する雌ねじ部6が内周面に形成された合成樹脂製の蓋体7により閉じられるようになっている。蓋体7の上端板部7aには中央に円形の液体取り出し口7bが形成されるとともに、この液体取り出し口7bの近傍に液体取り出し口7bよりも小さな空気孔7cが形成されている。そして、この蓋体7の内部には上端板部7aの下面に重なるようにシリコンあるいはゴムなどからなる柔軟性のある弁体8が設けられ、さらに蓋体7の内部には前記弁体8を蓋体7の上端板部7aとの間で挟むようにOリング状のパッキン9が設けられている。このパッキン9の外径は蓋体7の内径とほぼ同じで、蓋体7にパッキン9が内装された状態において勝手に抜け落ちないようになっている。なお、前記弁体8はOリング状の外周部8aと、この外周部8aで囲まれる範囲内に存在し外周部8aに折れ曲がり自在な一箇所の繋がり部8bで繋がり前記蓋体7の上端板部7aの液体取り出し口7bを下側から開閉する円形の弁板8cとを備えている。また、前記パッキン9は発泡材からなるリング状部材9aを合成樹脂フィルムからなるシート9b,9cで上下から挟んで構成されている。そして、前記筒部4に蓋体7を螺合させて締め付けることにより前記パッキン9が筒部4の上端に圧接するとともに前記弁体8の外周部8aは蓋体7の上端板部7aとパッキン9との間に挟まれ、筒部4と蓋体7とのシール性が保持される。
【0008】
ところで、前記蓋体7の上端板部7aに形成されている液体取り出し口7bには吸い上げ手段(図示せず)に繋がるチューブ10が前記弁板8cを斜めに押し下げて容器1内の底まで差し込まれ、ポンプなどを用いて容器1内の液体(原液)を取り出し、希釈されて使用されるようになっている。
【0009】
上記の構成では蓋体7は筒部4に螺合されて取り付けられているので、チューブ10を容器1から引き抜いて蓋体7を逆転させることにより蓋体7は筒部4から簡単に取り外せるものであり、容器1内の液体が不正に抜き取られるという問題が生じる。このような問題に対処すべく、本実施の形態では蓋体7の周囲を包む硬質合成樹脂製の保護カバー11を備え、液体取り出し用開口部2を開けるために保護カバー11の外側から蓋体7を逆転させて外そうとしても蓋体7を回せないようになっている。その詳細について述べると、保護カバー11は半円形の2つのカバー体12,13を互いに結合させて組み合わせることにより構成されるもので、各カバー体12および13のそれぞれの一端側には他方のカバー体13および12の他端側への差し込み片12a,13aを突出するように備え、また各カバー体12および13のそれぞれの他端側にはカバー体12,13を互いに近づく方向に移動させて他端側に差し込まれた差し込み片13a,12aの外面に形成された凹状部13b,12bに嵌入してカバー体12,13の前記差し込み方向とは逆方向への動きを止める係止片12c,13cを備えている。なお、カバー体12,13の上下端部には蓋体7を上下から挟むべく蓋体7の上端肩部7dに当接する板部12d,13dと蓋体7の下面に当接する板部12e,13eが設けられている。また、カバー体12,13の内面には他端部を除いて周方向に補強用のリブ12f,13fがその先端が蓋体7の外周に当接しない長さに形成されている。さらに、カバー体12,13の両端部には前記差し込み片12a,13aとの繋がり部および係止片12c,13cの形成部に開口する窓部12gおよび13gが形成されている。
【0010】
上記構成において、蓋体7の周囲を保護カバー11で包むときは2つのカバー体12,13を蓋体7の両側に位置させ、その状態でカバー体12,13を互いに近づく方向に移動させて各カバー体12および13のそれぞれの一端側の差し込み片12a,13aを他方のカバー体13および12の他端側の内側に差し込む。これにより、差し込み片12a,13aの凹状部12b,13bに係止片13c,12cが嵌入し、カバー体12,13の前記差し込み方向とは逆方向への動きが止められる。この保護カバー11を蓋体7の周囲を包むようにセットした状態において2つのカバー体12,13の結合を外すために互いに左右にずれる方向に移動させようとするとすぐに蓋体7の外面に当たるために、左右にずれる方向に移動させることができず、また2つのカバー体12,13を前記差し込み方向とは逆方向へ移動させようとすると前記差し込み片12a,13aの凹状部12b,13bに係止片13c,12cが嵌入しているために前記差し込み方向とは逆方向へ移動させることができない。さらに、保護カバー11を蓋体7の外周に強く圧接させて保護カバー11と蓋体7を一体に回そうとしても、保護カバー11が硬質合成樹脂で作られて硬いこと、前記リブ12f,13fの先端が蓋体7の外周に当接しない長さに形成されていることにより、保護カバー11は蓋体7に対して空回りすることになって蓋体7を回すことができないものである。そこで、差し込み片12a,13aの凹状部12b,13bと係止片13c,12cの結合を外す場合は前記窓部12g,13gの何れかの位置で差し込み片12a,13aの何れかを内側に治具を用いて強く押すことにより差し込み片12a,13aと係止片13c,12cとの結合を解くことができるものであるが、この作業は容器1内部の液体が無くなって、再び容器1に液体を注入するために蓋体7を筒部4から外すときに行なわれる。つまり、いたずらに容器1内の液体を取り出すために蓋体7を開けようとしても適当な治具なしでは破壊しない限り保護カバー11を外して蓋体7を開けることができないように構成されている。
【0011】
また、蓋体7が保護カバー11で覆われた状態で、いたずらに容器1内の液体を取り出すために前記チューブ10を容器1から引き抜き、容器1を傾けて液体取り出し用開口部2から液体を取り出そうとしても、蓋体7の内部には前記上端板部7aの下面に重なるようにシリコンあるいはゴムなどからなる柔軟性のある弁体8が設けられているので、液体の内圧により前記弁板8cが液体取り出し口7bや空気孔7cを内側から閉じることになり、容器1内の液体を取り出すことができないものである。仮に弁板8cがチューブ10の差し込みにより繋がり部8bの位置で下向きのくせがついていても、液体の内圧により前記弁板8cは液体取り出し口7bを内側から閉じることができる。
【0012】
また、容器1に人の足がつまづくなどして容器1が傾いたり倒れたりした場合、蓋体7の内部には前述のように上端板部7aの下面に重なるようにシリコンあるいはゴムなどからなる柔軟性のある弁体8が設けられているので、液体の内圧により前記弁板8cが液体取り出し口7bや空気孔7cを内側から閉じることになり、容器1内の液体がこぼれ出ることがない。
【0013】
ところで、以上述べた実施の形態では、液体を収納するために合成樹脂製の容器を例に挙げたが、合成樹脂製の袋や瓶、缶などの液体収納体を用いるようにしても良い。合成樹脂製の袋を用いる場合、袋は例えば段ボールなどの厚紙からなる箱体に内蔵し、箱体の上端より袋の液体取り出し用開口部となる筒部を突出させ、その筒部に前述の蓋体7を螺合させて取り付けるとともに、蓋体7を包む保護カバー11を装着させれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態における液体収納体の蓋体取り付け部構造の概略分解斜視図である。
【図2】同蓋体の拡大分解斜視図である。
【図3】同保護カバーの拡大分解斜視図である。
【図4】同保護カバーで蓋体を覆った状態を示す要部斜視図である。
【図5】同保護カバーで蓋体を覆った状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】図4のX−X断面図である。
【図7】図4のY−Y断面図である。
【図8】同蓋体より容器内に吸い上げ用のチューブを差し込んだ状態を示す容器の全体断面図である。
【図9】同チューブが容器から引き抜かれた状態において容器が傾いた状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 容器
2 液体取り出し用開口部
3 肩部
4 筒部
5 雄ねじ部
6 雌ねじ部
7 蓋体
7a 上端板部
7b 液体取り出し口
7c 空気孔
8 弁体
8a 外周部
8b 繋がり部
8c 弁板
9 パッキン
9a リング状部材
9b,9c シート
10 チューブ
11 保護カバー
12,13 カバー体
12a,13a 差し込み片
12b,13b 凹状部
12c,13c 係止片
12d,13d 板部
12e,13e 板部
12f,13f リブ
12g,13g 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収納体の液体取り出し用開口部となる筒部に合成樹脂製の蓋体を螺合させて閉じるようにした液体収納体の蓋体構造であって、蓋体の上端板部には液体吸い上げ用のチューブを差し込むための液体取り出し口が形成されており、また蓋体の内部には上端板部の下面に重なるようにシリコンあるいはゴムなどで作られて柔軟性があり、Oリング状の外周部と、この外周部で囲まれる範囲内に存在し外周部に折れ曲がり自在な一箇所の繋がり部で繋がり前記蓋体の上端板部の液体取り出し口を下側から開閉する円形の弁板を備えた弁体が設けられ、さらに蓋体の内部には前記弁体の外周部を蓋体の上端板部との間で挟むようにOリング状のパッキンが設けられていることを特徴とする液体収納体の蓋体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−262960(P2009−262960A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114692(P2008−114692)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】