説明

液体収納容器、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置

【課題】 本発明は、落下の衝撃などによって液体を収納する袋の変形を防止し、かつ液体残量の低減を図ることができる、液体収納容器、インクカートリッジ、及びランニングコストの低減を図ることができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 本発明は可撓性の液体収納袋に液体を収納する液体収納容器であって、液体を収納する液体収納部(11)と、袋の形状を保持する袋形状保持部(12)とを袋の一部に具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収納容器、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置に関し、詳細にはインクを収納するインクカートリッジの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来のインクカートリッジの構成を示す斜視図である。同図に示す従来のインクジェット記録装置のインクカートリッジ70では、インクの脱気性を保つためのアルミラミネートフィルムからなる袋71にインクを取り出すための供給口72を熱溶着等により取り付けたものを樹脂製のケース73に取り付けたものが広く用いられている。しかし、このような袋では、図8の(a)に示すように輸送等で衝撃を受けた場合などで変形したケース73によって袋71も変形してしまい、いざインクを吸い出そうとした際に、図8の(b)に示すように袋71が変形部分を核として突っ張るためきれいにつぶれずにインクの残量が残ってしまう場合があった。
【0003】
そこで、特許文献1では、袋の一方の面をケースに接着し、他方をインク袋の外形形状に相当するリブにより支える方法が記載されている。また、特許文献2、特許文献3や特許文献4には、概略インク袋の外形形状に沿ったリブや面で支える方法が提案されている。これらいずれの方法もインク袋を適切に支えることが可能なため落下による衝撃や振動に関して改善が期待できる優れた方法である。
【特許文献1】特開平08−230204号公報
【特許文献2】特公平06−065492号公報
【特許文献3】特開2001−105619号公報
【特許文献4】特開2002−331684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜4の従来の方法では、インク袋へのインクの充填量が少ない場合には剛体であるケースとインク袋の間に空間が生じてしまうため、空間を埋めるための部材を追加するなどの対策をとらなければならなかった。また、想定より強い衝撃を受けたなどの何らかの理由により袋に変形が生じた場合に、変形を強制的に修正する手段が無いため、残量が残る可能性があった。
【0005】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、落下の衝撃などによって液体を収納する袋の変形を防止し、かつ液体残量の低減を図ることができる、液体収納容器、インクカートリッジ、及びランニングコストの低減を図ることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は可撓性の液体収納袋に液体を収納する液体収納容器であって、液体を収納する液体収納部と、袋の形状を保持する袋形状保持部とを袋の一部に具備することに特徴がある。よって、液体を収納する袋の変形を防止し、かつ液体残量の低減を図ることができる。
【0007】
また、袋形状保持部は液体収納部と個別に設けられていることにより、袋の変形を防止して液体収納部から液体を供給する時の袋のきれいなつぶれを促進することで、収納液体の残量を低減できる。
【0008】
更に、袋形状保持部には流体又は気体を収納され、流体又は気体の供給又は排出を行う出入口を有する。よって、輸送時などは袋形状保持部を低圧気味にしておき弾力性を持たせることで、クッション材として活用し、収納液体使用時には流体の出入口より袋形状保持(回復)のために流体又は気体を高圧で注入することにより、袋形状の原状回復を行うことで液体収納部に収納された液体を供給する時の袋のきれいなつぶれを促進することで、収納液体の残量を低減できる。
【0009】
また、出入口を複数設けることにより、袋形状保持部への流体又は気体の供給を複数の出入口を用いて行うことで袋原状回復時間を短縮できる。
【0010】
更に、袋形状保持部を液体収納部の略外周に設けることにより、袋外周方向に対して形状を保持することにより、袋形状全体の形状保持が図りやすくなる。
【0011】
また、別の発明としてのインクカートリッジは、上記の液体収納容器の液体収納部にインクを収納し、インクを収納する袋の変形を防止し、かつインクの残量の低減を図ることができる。
【0012】
更に、別の発明としてのインクジェット記録装置は、上記のインクカートリッジを有することに特徴がある。よって、落下の衝撃などによってインクを収納する袋の変形を防止し、かつインクの残量の低減を図りランニングコストの低減を図れるインクジェット記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体収納容器によれば、液体を収納する液体収納部と袋の形状を保持する袋形状保持部とを袋の一部に個別に設け、液体を収納する袋の変形を防止し、かつ液体残量の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。同図に示す本実施の形態例の液体収納容器10は、液体を収納する液体収納部11と、この液体収納部11の後側に袋形状保持のために高圧の流体を封入する袋形状保持部12を、同一の袋にそれぞれシール部13をもって隔てられて個別に設けられている。このような構成を有する本実施の形態例の液体収納容器10によれば、高圧の流体を封入する袋形状保持部12の部分はつぶれにくく、さらには一体化した液体収納部11の部分の変形も防ぐことができる。
【0015】
なお、第1の実施の形態例の液体収容容器10の使用形態としては、図2に示すように、図1の袋形状保持部12の袋部分に連通した流体の出入口14を設けている。これにより、例えば液体収納容器10の輸送時には袋形状保持部12の流体の圧力を低くしておき弾性を持たせることでクッション材として機能させ、液体を吸い出すときには袋形状保持部12を高圧にして出入口14を通じ、袋形状を原状に回復させるという使い方が可能になる。また、第1の実施の形態例の液体収容容器10の別の使用形態としては、図3に示すように、出入口14の反対側にもう一つ出入口15を設けることが考えられる。これにより袋形状保持部12への流体の供給を2つの出入口14,15を用いて行うことで袋原状回復時間を短縮できる。更に、袋形状保持部12に封入する流体を気体にすることで、気体は液体や粉体に比べて密度が低いため袋全体の軽量化が測れ、振動や落下に対して有利である。また、特に気体として空気を選択すれば、調達も容易であるし、また袋形状保持部12より排出する際にそのまま大気中に放出しても環境を汚染しない。
【0016】
図4は本発明の第2の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。同図において、図1と同じ参照番号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態例の液体収納容器20では、図1に示した第1の実施の形態例の液体収納容器10のように袋形状保持部12が1つの場合に比べ袋形状保持部12を2つ設けており、袋形状保持部12の袋内部での袋形状保持部の偏りによる袋形状の復元力低下を抑えられる。なお、本実施の形態例においては袋形状保持部12を2つ設けたがこれに限らず3つ以上設けてもよい。
【0017】
図5は本発明の第3の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。同図において、図1と同じ参照番号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態例の液体収納容器30では、液体収納部11の略外周に袋形状保持部12を設けている。このような構成を有する本実施の形態例の液体収納容器によれば、袋外周方向に対して形状を保持することにより、袋形状全体の形状保持が図りやすくなる。
【0018】
図6は本発明のインクジェット記録装置の内部構成を示す斜視図である。同図に示す本発明のインクジェット記録装置60によれば、本発明の液体収納容器であるインクカートリッジ61内のインクはインク供給ポンプ(図示せず)によりガイドロッド62に案内されながら主走査方向に移動するキャリッジ63上のサブタンク(図示せず)にインク供給チューブ64を通って送液される。サブタンクはキャリッジ63上のインクジェット記録ヘッド(図示せず)に接続されており、このインクジェット記録ヘッドからインクが被記録体に吐出されることで画像が形成される。よって、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収納する液体収納部と袋の形状を保持する袋形状保持部とを袋の一部に個別に設けたインクカートリッジを用いることにより、インクを収納する袋の変形を防止し、かつインクの残量の低減を図り、強いてはランニングコストの低減を図ることができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態例の液体収納容器の使用形態を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態例の液体収納容器の別の使用形態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態例に係る液体収納容器の構成を示す断面図である。
【図6】本発明のインクジェット記録装置の内部構成を示す斜視図である。
【図7】従来のインクカートリッジの構成を示す斜視図である。
【図8】従来のインクカートリッジが変形した際の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
10,20,30;液体収納容器、11;液体収納部、
12;袋形状保持部、13;シール部、14,15;出入口、
60;インクジェット記録装置、61;インクカートリッジ、
62;ガイドロッド、63;キャリッジ、64;インク供給チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の袋に液体を収納する液体収納容器において、
液体を収納する液体収納部と、前記袋の形状を保持する袋形状保持部とを前記袋の一部に具備することを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記袋形状保持部は、前記液体収納部と個別に設けられている請求項1記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記袋形状保持部には、流体を収納される請求項1又は2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記袋形状保持部には、気体を収納される請求項1又は2に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記袋形状保持部は、前記流体又は前記気体の供給又は排出を行う出入口を有する請求項1〜4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記出入口を複数設ける請求項5記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記袋形状保持部を前記液体収納部の略外周に設ける請求項1〜6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液体収納容器の前記液体収納部にインクを収納することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項9】
請求項8記載のインクカートリッジを有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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