説明

液体収納容器および該液体収納容器を備えたインクジェット記録装置

【課題】液体収納容器内の液体の液位をより高い精度で検出することができる液体収納容器を提供する。
【解決手段】液体収納容器1は、液体8を収納する容器本体13と、容器本体13に形成され、容器本体13内に液体8を注入する注入口14と、容器本体13内に設けられ、注入口14から液体8の補充を開始させることが必要な第一の液位、及び該補充を停止させることが必要な第二の液位を、液体8が接触することにより検出するレベルセンサ16と、を備える。レベルセンサ16は、第二の液位よりも上側に位置する容器本体13の壁を挿通して鉛直方向下側に向かって少なくとも第二の液位から第一の液位まで容器本体13の側壁に沿って延びており、レベルセンサ16の全体が注入口14から離間され、レベルセンサ15の、第一の液位と第二の液位との間にある部分が、容器本体13の側壁から所定の距離に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用のインクといった液体を収納する液体収納容器および該液体収納容器を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、例えば印刷用紙といった記録媒体を横切って往復動するキャリッジと、該キャリッジに搭載され、インクを吐出するヘッドユニットを有するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと称す)とを備えている。記録ヘッドは、記録媒体上を往復動しながら所定のタイミングでヘッドユニットから記録媒体へインクを吐出する。その結果、記録媒体に所望の文字や画像等が記録される。
【0003】
記録ヘッドへのインク供給方式として、インクを収納する液体収納容器(以下、メインタンクという)を記録装置本体に設け、該メインタンクと記録ヘッドとを可撓性チューブで接続したチューブ供給方式が知られている。
【0004】
チューブ供給方式では、キャリッジにメインタンクを搭載しないため、メインタンクの容量を比較的大きくすることが容易である。そのため、チューブ供給方式を用いたインクジェット記録装置では、メインタンクの交換頻度が減り、ランニングコストを低くすることができる。このような理由から、近年、主に大型のインクジェット記録装置(例えば業務用のインクジェット記録装置)に採用されている。
【0005】
チューブ供給方式を用いたインクジェット記録装置の記録ヘッドは、メインタンクから供給されたインクを一時的に収納してヘッドユニットへインクを供給する液体収納容器(以下、サブタンクという)を備えている。サブタンクは、ヘッドユニットへインクを送出する送出口、およびサブタンク内にインクを注入する注入口を除いて密閉されている。メインタンクには、メインタンク内の圧力が大気圧になるように、大気連通穴が形成されている。ヘッドユニットからインクが吐出されてサブタンク内のインクが減ると、サブタンク内の圧力が大気圧よりも低くなり、メインタンクからサブタンクへインクが自動的に補充される。
【0006】
サブタンクが密閉されていても、インク中に溶存している空気や、可撓性チューブの壁を通して流入してくる空気がサブタンクに溜まることがある。サブタンク内に空気が溜まると、サブタンク内のインクの量が減ってもメインタンクからサブタンクにインクが補充されなくなり、ヘッドユニットに十分な量のインクを供給できなくなることがあった。そこで、サブタンク内の空気を強制的に排出することができるインクジェット記録装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0007】
図4は、特許文献1で開示されている、サブタンク内の空気を強制的に排出する機能を備えたインクジェット記録装置の概略図である。図4には、メインタンクからサブタンクへインクを供給するインク供給系およびサブタンク内の空気を排出する排気系が示されている。
【0008】
図4に示すように、インクジェット記録装置は、サブタンク1およびヘッドユニット2を有する記録ヘッド3と、メインタンク4と、記録装置本体に設けられた吸引ポンプ5と、を備えている。メインタンク4、吸引ポンプ5は、それぞれ可撓性チューブ6,7を介してサブタンク1に接続されている。吸引ポンプ5を駆動させることによって、サブタンク1内の空気が排出され、メインタンク4からサブタンク1へインク8が補充される。
【0009】
また、特許文献1で開示されているインクジェット記録装置では、サブタンク1内のインク8の液位を検出するレベルセンサを備えている。レベルセンサは、導電性材料で形成され、サブタンク1の側壁に挿通されたニードル9と、サブタンク1の底面に設けられた電極(不図示)と、を含み、ニードル9と電極との電気的導通を検知することによってインク8の液位を検出している。当該電気的導通が検知された場合には、インク8とニードル9とが接触している、すなわち、インク8の液面がニードル9よりも上側にあると判断される。当該電気的導通が検知されない場合にはインク8の液面がニードル9よりも下側にあると判断される。
【0010】
なお、特許文献1では、ニードル9は、中空状に形成され、可撓性チューブ6とともにメインタンク4からサブタンク1へのインク8の供給路を形成している。
【0011】
レベルセンサを備えたインクジェット記録装置では、サブタンク1内のインク8の量を検出することによって、より確実なタイミングでサブタンク1内の空気を排気することができる。特許文献1のレベルセンサを用いた場合、電極とニードル9との電気的導通が検知されなくなったところで吸引ポンプ5を駆動させる。その結果、サブタンク1内のインク8の量が所定量以下になることを防ぐことができ、サブタンク1からヘッドユニット2へインク8を安定して供給することが可能となる。
【0012】
さらに、特許文献1で開示されているインクジェット記録装置は、吸引ポンプ5の駆動によるインク8の液面の上昇を検出できるようになっている。具体的には、記録ヘッド3は、ニードル9よりも鉛直方向上側でサブタンク1の側壁に挿通されたニードル10を備えている。ニードル10は導電性材料で形成されており、インクジェット記録装置はニードル9とニードル10との電気的導通を検出できるようになっている。
【0013】
インク8が供給されてインク8の液面がニードル10に到達すると、インク8がニードル10に接触してニードル9とニードル10との電気的導通が検出される。インクジェット記録装置は、当該電気的導通を検出したところで吸引ポンプ5の駆動を停止することにより、サブタンク1内に所望量のインク8が補充されたタイミングでメインタンク4からサブタンク1へのインク8の補充を止めることができる。
【0014】
なお、特許文献1では、ニードル10は、中空状に形成され、可撓性チューブ7とともにサブタンク1から吸引ポンプ5への空気の排気路を形成している。ニードル10にインク8の液面が到達したところで吸引ポンプ5の駆動が停止されるため、当該排気路からのインク8の排出を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−248788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1で開示されている記録ヘッド3では、サブタンク1内のインク8の液位を、レベルセンサが誤って検出してしまうことが懸念される。懸念されるレベルセンサの誤検出について、図5を用いて説明する。図5は、図4に示すインクジェット記録装置において、サブタンク1内の空気の量が増加し、サブタンク1内のインク8の量が減った状態の図である。
【0017】
図5に示すように、インク8の液位は、インク8の表面張力により、サブタンク1の中心からサブタンク1の側壁へ向かって進むにつれて高くなっている。そのため、サブタンク1の中心付近のインク8の液面がニードル9より下がってもサブタンク1の側壁付近のインク8がニードル9と接触している虞がある。この場合、インク8の液位がニードル9よりも上側にあると判断され、サブタンク1内のインク8が所定量よりも少なくなっているにもかかわらず、吸引ポンプ5の駆動が行われなくなる。
【0018】
また、特許文献1で開示されている記録ヘッド3では、ニードル9からサブタンク1内へ供給されるインクの勢いや噴出方向によっては、当該インクによりニードル9とニードル10とが電気的に導通されるかもしれない。例えば、インクがニードル9からニードル10へ向かって噴出されてニードル9とニードル10との間にインクからなる水柱が形成された場合である。
【0019】
このような場合には、サブタンク1内の空気が十分に排気されていないにもかかわらず、ニードル9とニードル10との電気的導通が検知されて、吸引ポンプ5の駆動が停止されてしまう。その結果、サブタンク1内のインク8の量が不足し、サブタンク1からヘッドユニット2へインク8を安定して供給することができなくなる。
【0020】
そこで、本発明は、上記従来技術における懸念事項に鑑み、液体収納容器内のインクの液位をより高い精度で検出することができる液体収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、液体を収納する容器本体と、該容器本体に形成され、該容器本体内に液体を注入する注入口と、容器本体内に設けられ、注入口から液体の補充を開始させることが必要な第一の液位、及び該補充を停止させることが必要な第二の液位を、液体が接触することにより検出するレベルセンサと、を備えた液体収納容器に係る。この態様において、レベルセンサは、第二の液位よりも上側に位置する容器本体の壁を挿通して鉛直方向下側に向かって少なくとも第二の液位から第一の液位まで容器本体の側壁に沿って延びており、レベルセンサの全体が注入口から離間され、レベルセンサの、容器本体の側壁に沿って延びている部分が、容器本体の側壁から所定の距離に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液体収納容器によれば、液体収納容器内のインクの液位をより高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る液体収納容器を備えたインクジェット記録装置の概略図。
【図2】挿通口が容器本体の上壁に形成されている液体収納容器を備えた記録ヘッドの概略図。
【図3】図2に示す液体収納容器内に空気が溜まり、インクが、注入口からインクの補充を開始させることが必要な第一の液位まで低下している状態の概略図。
【図4】液体収納容器内の空気を強制的に排出する機能を備えたインクジェット記録装置の概略図。
【図5】図4に示すインクジェット記録装置において、液体収納容器内の空気の量が増加し、液体収納容器内のインクの量が減った状態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る液体収納容器およびインクジェット記録装置について、図を参照して説明する。本実施形態では、インクに気泡を生じさせる熱エネルギーを生成する電気熱変換素子を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式を採用した記録ヘッドを用いて説明するが、本発明は、バブルジェット方式の記録ヘッドに限られるものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る液体収納容器を備えたインクジェット記録装置の概略図である。図1に示すように、記録ヘッド3は、インク8といった液体を収納する液体収納容器(以下、サブタンク1と称す)と、ヘッドユニット2と、電気配線が形成されたTAB(Tape Automated Bonding)11と、を有している。
【0026】
サブタンク1は、連結部材(不図示)によりヘッドユニット2に連結されており、サブタンク1に貯留されたインク8をヘッドユニット2へ供給できるようになっている。ヘッドユニット2は、サブタンク1から供給されたインク8を印刷用紙といった記録媒体12へ向けてインク滴を吐出する。
【0027】
なお、本実施形態では、サブタンク1は、ヘッドユニット2を保持するための保持部材としても機能している。サブタンク1とヘッドユニット2とが着脱可能に形成されていてもよい。
【0028】
TAB11は、記録装置本体から送信された電気信号をヘッドユニット2へ伝える。ヘッドユニット2は、該電気信号に応じた電気パルスによりインクに気泡を生じさせて記録媒体12へ向けてインク滴を吐出する。記録ヘッド3が走査方向Aに沿って往復動作することで、記録媒体12に所望の文字や画像等が記録される。
【0029】
サブタンク1は、インク8を収納する容器本体13を備えている。容器本体13には、外部から容器本体13内にインク8を注入するための注入口14と、容器本体13内の空気を外部へ排出するための排気口15とが形成されている。容器本体13は、インク8をヘッドユニット2へ送出する送出口(不図示)、注入口14および排気口15を除いて密閉されている。
【0030】
また、インクジェット記録装置は、サブタンク1へ補充するための液体を収納する液体収納容器(以下、メインタンク4と称す)と、空気を吸引する吸引ポンプ5とを備えている。
【0031】
注入口14とメインタンク4とが可撓性チューブ6を介して接続されており、これによってメインタンク4からサブタンク1へのインク8の供給経路が形成されている。メインタンク4には、メインタンク4内の圧力が大気圧と同じになるように、大気連通穴(不図示)が形成されている。
【0032】
ヘッドユニット2からインク8が吐出されると、サブタンク1内のインク8が消費されてサブタンク1内の圧力が低下する。メインタンク4内の圧力は大気圧に保たれているため、サブタンク1内の圧力の低下により、メインタンク4からサブタンク1へインク8が補充される。
【0033】
サブタンク1へインク8が補充されてサブタンク1内の圧力が大気圧に戻ったところで、メインタンク4からサブタンク1へのインク8の補充が止まる。このように、サブタンク1内の圧力がほぼ大気圧に保たれた状態で、メインタンク4からサブタンク1へのインク8の補充が繰り返される。
【0034】
また、排気口15と吸引ポンプ5とが可撓性チューブ7を介して接続されており、これによって、サブタンク1から吸引ポンプ5への空気の排気経路が形成されている。吸引ポンプ5は、駆動していない状態では、排気経路と大気とを遮断している。すなわち、可撓性チューブ7を通ってサブタンク1内に空気が流入しないようになっている。
【0035】
サブタンク1が密閉されていても、インク8中に溶存している空気や、可撓性チューブ6,7の壁を通して流入してくる空気がサブタンク1に溜まることがある。この場合、サブタンク1内の空気の量が増加した分だけ、サブタンク1内のインク8の量が減少する。また、サブタンク1内では大気圧が維持されているため、サブタンク1内のインク8の量が減ってもメインタンク4からサブタンク1へインク8は補充されない。
【0036】
サブタンク1内の空気が増加し、サブタンク1内のインク8の量が減少した場合、インクジェット記録装置は吸引ポンプ5を駆動させる。吸引ポンプ5によりサブタンク1内の空気が可撓性チューブ7を通って吸引され、サブタンク1内の圧力が低下する。メインタンク4内は大気圧に保たれているため、メインタンク4からサブタンク1へインク8が補充される。
【0037】
吸引ポンプ5の駆動を停止することによりサブタンク1内の空気の排気が止まり、メインタンク4からサブタンク1へのインクの補充が止まる。このようにして、サブタンク1内の空気の排気と、サブタンク1へのインク8の補充が行われる。
【0038】
可撓性チューブ6,7をサブタンク1へ接続する方法として、中空形状のニードル(不図示)を用いた方法が知られている。具体的には、可撓性チューブ6,7の先端にニードルを取り付けておき、注入口14および排気口15をゴム栓といった弾性部材(不図示)で塞いでおく。ニードルを弾性部材に貫通させることにより、可撓性チューブ6,7とサブタンク1とが連通される。
【0039】
ニードルを用いた接続方法では、注入口14や排気口15とニードルとの間の隙間が弾性部材により塞がれるため、サブタンク1からのインク8の漏れや、サブタンク1への空気の流入を防ぐことができる。
【0040】
また、ニードルを用いて可撓性チューブ6,7とサブタンク1とを接続することにより、記録ヘッド3の交換をより容易にすることができる。具体的には、記録ヘッド3を交換する際に、サブタンク1から可撓性チューブ6,7を取り外す必要がある。ニードルを弾性部材から引き抜くと弾性部材の復元力により注入口14や排気口15が塞がれる。その結果、サブタンク1からのインク8の漏れやサブタンク1への空気の流入が生じることなくサブタンク1から可撓性チューブ6,7を取り外すことができる。
【0041】
サブタンク1は、容器本体13内のインク8の液位を検出するレベルセンサ16を備えている。レベルセンサ16は、容器本体13の内部に配置されており、インク8が接触することによりインク8の液位を検出することができるようになっている。このようなレベルセンサ16として、例えば、インク8の誘電率と空気の誘電率との差を計測して液位を検出する静電容量式液位計が知られている。
【0042】
レベルセンサ16を用いて容器本体13内のインク8の液位を検出することにより、インク8が、注入口14からインク8の補充を開始させることが必要な第一の液位まで低下したところで吸引ポンプ5を駆動させることができる。また、インク8が、該補充を停止させることが必要な第二の液位まで上昇したところで吸引ポンプ5の駆動を停止させることができる。
【0043】
第一の液位の具体例としては、サブタンク1からヘッドユニット2へインク8を安定して供給可能な液位が挙げられる。インク8が第一の液位以下になる前に吸引ポンプ5を駆動させることによって、ヘッドユニット2へのインク8の供給不足を防ぐことができる。
【0044】
第二の液位の具体例としては、排気口15を通る水平面の位置に相当する液位が挙げられる。第二の液位を、排気口15を通る水平面の位置に相当する液位とすることによって、より多くのインク8をサブタンク1内に貯留させることができ、より安定してヘッドユニット2へインク8を供給することができる。
【0045】
排気口15にインク8の液面が到達すると、排気口15からインク8が吸引ポンプ5により吸引されてインク8の浪費を招くため、第二の液位は排気口15よりも下側であることが好ましい。吸引ポンプ5により吸引したインク8を、再びメインタンク4に戻して再使用する構成としてインク8の使用効率を向上させてもよい。
【0046】
なお、図1は、インク8が第二の液位に達している状態を示す図である。
【0047】
吸引ポンプ5の駆動は、インク8が第一の液位よりも下がったことをレベルセンサ16が検出した場合に限られず、記録ヘッド3の記録動作の終了後や、インクジェット記録装置の電源ON後などに行ってもよい。
【0048】
ここで、レベルセンサ16の形状および位置について、詳細に説明する。
【0049】
レベルセンサ16は、太さが一定の棒形状を有しており、容器本体13の壁に形成された挿通口17に挿通されている。容器本体13内において、レベルセンサ16が曲がっていてもよい。容器本体13を密閉しておくため、レベルセンサ16と挿通口17との間の隙間は塞がれている。
【0050】
挿通口17は、容器本体13の壁のうちの、第二の液位よりも上側に位置する領域に形成されている。挿通口17が形成される位置の具体例としては、図2に示すような容器本体13の上壁や、図1に示すような、容器本体13の、第二の液位よりも上側に位置する側壁が挙げられる。図2は、挿通口17が容器本体13の上壁に形成されている記録ヘッド3の概略図である。
【0051】
レベルセンサ16は、容器本体13の外側においてTAB11と電気的に接続されており、レベルセンサ16が検出したインク8の液位の信号を、記録装置本体に送信することができるようになっている。記録装置本体は、レベルセンサ16が検出したインク8の液位を基に、吸引ポンプ5の駆動や停止を行う。
【0052】
挿通口17は第二の液位よりも上側に形成されているため、インク8が挿通口17から漏出しない。したがって、インク8がTAB11に接触することはなく、TAB11の短絡を防止することが可能となる。すなわち、挿通口17とレベルセンサ16との間の隙間の閉塞は、空気の通過が防止されればよいため、インク8の漏出を防止する場合に比べて簡易な構造でよい。
【0053】
図3は、サブタンク1内に空気が溜まり、インク8が第一の液位まで低下している状態の概略図である。図3に示すように、容器本体13の側壁におけるインク8の液位は、インク8の表面張力により、容器本体13の中心におけるインク8の液位よりも上昇していることがある。インク8の液面が挿通口17に到達することをより確実に防止するために、挿通口17を、表面張力により生じる液位の上昇分を第二の液位に加えた位置よりも上側に設けておくことが好ましい。
【0054】
また、レベルセンサ16は、挿通口17から鉛直方向下側へ向かって、少なくとも第二の液位から第一の液位まで容器本体13の側壁に沿って延びている。レベルセンサ16が鉛直方向へ向かって延びているため、レベルセンサ16の、インク8に浸漬する部分がインク8の液位の高さに応じて変化する。レベルセンサ16は、レベルセンサ16の、インク8が接触している部分の最も上側の位置を、インク8の液面として検出する。
【0055】
さらに、レベルセンサ16の、容器本体13の側壁に沿って延びている棒形状の部分は、容器本体13の側壁から所定の距離に配置されている。当該所定の距離は、インク8の表面張力により生じる液面の上昇の影響を受けない距離であることが望ましい。
【0056】
レベルセンサ16の、容器本体13の側壁に沿って延びている部分が容器本体13の側壁から所定の距離に配置されているため、容器本体13の側壁においてインク8がレベルセンサ16に接触しなくなる。したがって、レベルセンサ16は、サブタンク1の中心にあるインク8の液位を検出することができる。すなわち、レベルセンサ16がインク8の液位を検出する際の、インク8の表面張力による誤検出を抑制することができる。
【0057】
レベルセンサ16の誤検出をより確実に防止するために、レベルセンサ16の、容器本体13の側壁に沿って延びている部分が、容器本体13の中心を通って鉛直方向下側に向かって延びていることが好ましい。
【0058】
レベルセンサ16付近のインク8の液位も、インク8の表面張力によりレベルセンサ16から離れた場所のインク8の液位に比べて高くなっていることがある。しかしながら、レベルセンサ16とインク8の液面とが接触している面積は、容器本体13の側壁とインク8の液面とが接触している面積よりも小さい。そのため、レベルセンサ16付近では、インク8の液位の上昇は容器本体13の側壁付近に比べて小さい。したがって、レベルセンサ16付近のインク8の液位の上昇による、インク8の液位の検出精度はほとんど低下しない。
【0059】
レベルセンサ16をより細くしてレベルセンサ16とインク8の液面との接触面積をより小さくすることで、レベルセンサ16付近におけるインク8の液位の上昇をより抑制することができる。
【0060】
また、レベルセンサ16の全体が注入口14から離間されている。したがって、注入口14からサブタンク1内にインクが供給される際に注入口14からインクが飛散したとしても、飛散したインクがレベルセンサ16に付着することが抑制される。すなわち、注入口14からのインクの飛散による、レベルセンサ16の誤検出を抑制することができる。
【0061】
注入口14から飛散したインクがレベルセンサ16に付着することをより確実に防止するために、レベルセンサ16が注入口14からより離されていることが好ましい。レベルセンサ16へ向かう方向とは異なる方向(例えば、鉛直方向下側)に向かってインクを注入するように注入口14を形成してもよい。また、注入口14を第一の液位よりも下側に設けて注入口14が常にインク8に浸かっている状態にして、注入口14からのインクの飛散を抑制してもよい。
【0062】
本実施形態では、密閉されたサブタンク1の空気を吸引することでメインタンク4からサブタンク1へインク8を供給しているが、本発明は、他の移送手段によりメインタンク4からサブタンク1へインク8を移送するインクジェット記録装置にも適用可能である。例えば、インクを移送するポンプをメインタンク4とサブタンク1との間に設けたインクジェット記録装置や、メインタンク4内を加圧するポンプを備えたインクジェット記録装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1 サブタンク
2 ヘッドユニット
8 インク
13 容器本体
14 注入口
16 レベルセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納する容器本体と、該容器本体に形成され、該容器本体の内部に液体を注入する注入口と、前記容器本体の内部に設けられ、前記注入口から液体の補充を開始させることが必要な第一の液位、及び該補充を停止させることが必要な第二の液位を、液体が接触することにより検出するレベルセンサと、を備えた液体収納容器において、
前記レベルセンサは、前記第二の液位よりも上側に位置する前記容器本体の壁を挿通して鉛直方向下側に向かって少なくとも前記第二の液位から前記第一の液位まで容器本体の側壁に沿って延びており、前記レベルセンサの全体が前記注入口から離間され、前記レベルセンサの、前記容器本体の側壁に沿って延びている部分が、前記容器本体の側壁から所定の距離に配置されていることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記所定の距離が、前記容器本体の内部の液体の表面張力により生じる液面の上昇の影響を受けない距離であることを特徴とする、請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記レベルセンサが、太さが一定の棒形状を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記注入口が、前記第一の液位よりも下側に形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記容器本体に形成され、前記容器本体の内部に溜まった空気を排出する排気口をさらに備え、
前記第二の液位が、前記排気口の位置に相当する液位であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記レベルセンサが、前記容器本体の上壁に挿通されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体収納容器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体収納容器と、
前記液体収納容器の内部の液体を吐出するヘッドユニットと、
前記液体収納容器へ補充するための液体を収納する別の液体収納容器と
前記別の液体収納容器から前記液体収納容器へ液体を移送する移送手段と、を備えた、インクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−1102(P2013−1102A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138143(P2011−138143)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】