液体収納容器
【課題】液体の収納効率の低下や多大なコストアップを招くことなく、液体収納容器が強い衝撃を受けたときに、液体収納室を形成する可撓性のフィルムの損傷を抑制して、信頼性の高い液体収納容器を提供すること。
【解決手段】板部材40と対向する蓋部材20の内面22に凹部23を設け、その凹部23の開口に、板部材40が衝突したときに凹部23内に弾性変形する緩衝シート60を備える。
【解決手段】板部材40と対向する蓋部材20の内面22に凹部23を設け、その凹部23の開口に、板部材40が衝突したときに凹部23内に弾性変形する緩衝シート60を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用インクやインク定着性を向上させる特殊液体などを含む種々の液体を収容可能な液体収納容器に関するものであり、例えば、インクジェット記録装置に着脱自在に搭載されるインクタンクが含まれる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを貯留するインクタンクから記録ヘッドにインクを供給し、その記録ヘッドからインクを吐出することによって記録媒体に画像を記録する。いわゆるシリアルタイプのインクジェット記録装置は、記録ヘッドを搭載可能なキャリッジを備え、そのキャリッジを記録媒体に対し移動させながら、そのキャリッジに搭載された記録ヘッドの吐出口から、記録媒体にインクを吐出することによって記録を行う。また、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置は、記録媒体の幅に対応した範囲に渡って吐出口が配列された記録ヘッドを用い、この記録ヘッドに対して搬送されてくる記録媒体に向かって、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出して記録を行う。
【0003】
このような記録ヘッドに供給するためのインクタンクは、所定の負圧でインクを貯留する。この負圧は、記録ヘッドの吐出口に形成されるインクのメニスカスの保持力と平衡して、吐出口からのインク漏れを防止するための負圧であって、記録ヘッドのインク吐出動作を可能とする所定範囲内の適切な負圧に設定される。
【0004】
このような負圧を発生する機構として、インクを含浸保持するスポンジ等の多孔質部材をインクタンク内に収納し、その多孔質部材によるインクの保持力によって、適切な負圧を生じさせるものが知られている。また、容積を拡張する方向の張力を発生するゴム等の弾性材料によって袋状部材を形成し、その袋状内部にインクを充填し、その袋状部材が発生する張力によってインクに負圧を作用させるものも知られている。
【0005】
さらに、可撓性フィルムによって袋状部材を形成し、その内部または外部に、袋状部材の容積を拡張させる方向にフィルムを付勢するためのバネ等を接合することにより、その袋状部材の内部のインクに負圧を作用させるものも知られている。この負圧発生機構を用いたインクタンクとして、特許文献1および2に記載されたものが知られている。
【0006】
特許文献1および2には、図22(a),(b)のように構成されたインクタンク100が記載されている。インクを導出するための供給口(不図示)が形成された筐体101に、可撓性の凸型のフィルム102を接合することにより、インク収納部103が形成され、インク収納部102内には、負圧を発生させるためのバネ104が備えられる。フィルム103とバネ104との間には、板部材105が配置される。さらに蓋部材106を備え、その蓋部材106には、板部材105の移動を規制するためのリブ106Aが形成されている。このようにフィルム102とバネ104を用いて構成されるインクタンク100においては、バネ104の押圧をフィルム102に伝達させるために、それらの間に板部材105が存在する。このバネ104と板部材105は、加締め、あるいは溶着等により位置ズレが生じさないように固定される。
【0007】
フィルム102と接合される筐体101は、フィルム102と同一樹脂材料で形成されていることが望ましく、これらを互いに熱溶着によって接着することにより形成されるインク収納部103は、供給口を除いて密閉される密閉構造とすることができる。供給口の開口部は、バネ104により生じる負圧によって、インク収納部103内に外部の空気を取り込むことがない程度に、インクのメニスカス力を発生させるように構成されている。例えば、インクのメニスカス力を発生するメッシュフィルタ等が供給口に固定されている。
【0008】
このようにフィルム102を用いてインク収納部103が形成されるインクタンク100は、例えば、スポンジ等にインクを含浸保持させて負圧を発生するインクタンクと較べて、インクの収納効率が優れている。
【0009】
また、特許文献1には、フィルム102を凸型に成形する方法が記載されている。その方法においては、先ず、平坦なシート材料(フィルム102の成形材料)をインクタンクの筐体101に溶着し、その後、シート材料を凸型に成形する。すなわち、平坦なシート材料をそのまま筐体101に溶着し、その筐体101をフィルム102の成形型として利用する。具体的には、筐体101に溶着されたシート材料を加熱し、そのシート材料と筐体101との間の空気を吸引排除することにより、筐体101の内部の凹形状に沿うようにシート材料が凸型に成形される。これにより、凸型に成形後のフィルム102を筐体101に位置決めする面倒がなく、筐体101の形状に合わせるように、シート材料から凸型のフィルム102を成形することができる。また、取り扱いが比較的困難であるフィルム102が筐体101と同一部品となるため、その取り扱いが容易となる。
【0010】
【特許文献1】特開2007−069351号
【特許文献2】米国特許6168267号明細書
【特許文献3】特開平6−226993号
【特許文献4】特開昭60−151055号
【特許文献5】特開2007−062337号
【特許文献6】特開平9−123476号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような負圧発生機構を備えるインクタンク100は、それがバネ104の伸縮方向と直交する方向(図22(a)中の矢印方向)に落下した際に、図22(b)のように、板部材105が蓋部材106に激しく衝突するおそれがある。板部材105と蓋部材106との間に存在しているフィルム102は10〜100μm程度と非常に薄いため、衝突の際の挟み込みにより、フィルム102が損傷するおそれがある。
【0012】
このような落下によって生じるおそれがあるフィルム102の損傷について、図22(a),(b)を用いて、そのメカニズムを説明する。
【0013】
インクタンク100は、落下前の図22(a)の状態を維持したまま、バネ104の伸縮方向と直交する矢印方向に落下することになる。そして図22(b)のように、インクタンク100が地面に衝突した瞬間に、インクタンク100に収納されているインクは、慣性力により重力方向に移動する。その際、インクタンク100における地面との衝突側(下側)の部分がリジットな筐体101であるため、インクはインクタンク100の衝突側に集まって、変形可能なフィルム102の方向(図22(b)の矢印方向)へ移動する。板部材105は、慣性力によって同様に衝突側に移動すると共に、フィルム102側へのインクの移動によって、衝突側の部分が図22(b)中の矢印方向に押される。そのため、板部材195の衝突側の部分と蓋部材106の内面が衝突する。このような一連の挙動は、インクタンク100の落下衝突時に、エネルギーをもったまま瞬時に行われるため、板部材105と蓋部材106は、勢いをもって激しく衝突する。この激しい衝突により、板部材105と蓋部材106との間に介在するフィルム102は、それらの間に挟み込まれて損傷するおそれがある。
【0014】
凸型のフィルム102が損傷するおそれがある箇所は、図23のように、特に、板部材105のコーナー部105Aに対応する部分102Aであることが判明した。図23は、蓋部材106を外した筐体101を図22(a)中の矢印XXII方向から見た側面図である。特許文献1および2に示されるように、板部材105は、図23のような略四角形状である場合が多い。略四角形状の板部材105と蓋部材106との衝突時に、コーナー部105Aを突き出すように板部材105が傾いて、そのコーナー部105が蓋部材106に対して点当たりする。このような点当たりの部分に応力が集中することにより、そのコーナー部105Aに対応する部分102Aにおいてフィルム102が損傷するおそれがある。
【0015】
フィルム102を損傷し難くするために、特許文献3には、板部材105にガード部材(緩衝材)を取付ける対策が提案されており、また特許文献4には、蓋部材106とフィルム102との間に緩衝材を配置する対策が提案されている。
【0016】
しかしながら、これらの対策においては、緩衝材が撓むことによって衝撃を吸収することになるため、インクタンクの落下衝撃のような高エネルギーを吸収するには、緩衝材の厚みを厚くして、その撓み代を大きく設定する必要がある。緩衝材の厚みを厚くした場合には、板部材の移動許容範囲が制限されて、インクの収納空間が減少し、インク充填量が低減するおそれがある。また緩衝材として、薄く且つ衝撃を吸収する素材は、例えばシリコーン系ゲル状素材などの特殊な材質に制限される。一般に、このようなエネルギーの高吸収性を有する素材は非常に高価であるため、それを緩衝材として用いた場合には、インクタンクの多大なコストアップを招くおそれがある。
【0017】
また、特許文献1に記載されているように筐体101などの凹型部材によって、平坦なシート材料から凸型のフィルム102を成型した場合、シート材料が凹型型材に当接していくにしたがって、順次冷えて固まっていく。シート材料は最後に凹型部材の底面に当接し、その凹型部材の底面に当接するシート材料の部分は、凸型のフィルム102の角部分に相当する。そのため、そのフィルム102の角部分は、成形時に最も伸ばされて薄くなる。そのフィルム102の角部分は、板部材105のコーナー部105Aに対応する部分102A、つまり損傷しやすい部分でもある。したがって、そのフィルム102の部分102Aはより損傷しやすくなる。
【0018】
特許文献1のように筐体101をフィルム102の成形型として利用する場合、シート材料の伸びおよび厚みは、筐体101内の凹部の深さに応じたものとなる。特許文献5には、筐体101の凹部の深さの半分の位置から、シート材量を折り返すような金型を用いて、フィルム102を凸型に成形する方法が記載されている。この方法によれば、例えば、フィルム102における折り返し部の前後の部分を伸張させることにより、それを約2倍の高さの凸型のフィルムとして用いることができる。これにより、成形時におけるシート材料の伸び量を少なくして、フィルム102が部分的に薄くなる程度を小さく抑えることができる。この結果、フィルム102の損傷を抑制することができる。
【0019】
ところで、インクタンクとして、インクの収容量が現行の2倍程度の製品が企画された場合には、インクタンクを大きくする必要がある。高さを低く抑えて小型化される記録装置に対応するためには、インクタンクの高さや奥行を拡大させることは難しい。そのため、インクタンクの幅を変えるという選択をせざるをえない。インクタンクの幅は筐体の深さ方向(図22におけるタンクの左右幅に相当)であるため、筐体の凹部は現行の2倍近い深さとする必要がある。前述したように、凹型の成形型を使用する特許文献1および特許文献5の凸型のフィルムの成形方法において、シート材料の伸び量および厚みは、筐体の凹部の深さに応じて変化し、その凹部が深ければ深いほどシート材料は薄くなってしまう。さらに、インクタンクの大容量化によって、その重量が増加するため、落下時の衝撃も増大して、フィルムの損傷が生じる可能性が高くなる。
【0020】
その対策として、例えば、特許文献5に記載の成形方法を用い、さらに、成形前のシート材料の厚みを厚くして、凸型のフィルム全体の厚みを厚くする方法が考えられる。しかし、この場合には、損傷しやすいフィルムの部分を厚くすることができるものの、その他の部分が必要以上に厚くなって、フィルムの剛性が高まってしまう。その結果、インクタンク内のインクの消費に伴うフィルムの挙動がスムーズでなくなり、インク収納部内の負圧が急激に変化したり、またインク収納部内のインクを使い切ることができなくなるおそれがある。
【0021】
また特許文献6には、フィルム102の損傷を抑制するために、板部材の角部を丸める構成が記載されている。しかし、このように板部材の角を丸めるだけでは、後述するように、凹型の成形型を用いた凸型のフィルム特有の厚み分布に対応することができない。さらに、板部材の大きさを小さくする必要があり、インクの収容効率が大幅に低下するおそれがある。
【0022】
本発明の目的は、液体の収納効率の低下や多大なコストアップを招くことなく、液体収納容器が強い衝撃を受けたときに、液体収納室を形成する可撓性のフィルムの損傷を抑制して、信頼性の高い液体収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の液体収納容器は、液体を収容可能な液体収容室を形成する筐体および可撓性のフィルムと、前記液体収納室内の液体を外部に導出するための供給口と、前記フィルムの内面に位置する板部材と、前記液体収納室内に負圧を発生させるように前記板部材を介して前記フィルムを付勢するバネ部材と、前記フィルムの外側に位置する蓋部材と、を含む液体収納容器において、前記板部材と対向する前記蓋部材の内面に設けられた凹部と、前記板部材が衝突したときに前記凹部内に弾性変形するように、前記凹部の開口に位置する緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、液体収納容器が強い衝撃を受けたときに、蓋部材に設けた凹部の内部空間を利用して緩衝部材が板部材の衝撃を吸収するため、液体の収納効率の低下を招くことなく、可撓性のフィルムの損傷を抑制することができる。また、緩衝部材として緩衝シートを用いることにより、凹部の形成位置や形状に柔軟に対応するように緩衝シートを容易に配備することができて、液体収納容器の製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、液体収納室を形成する可撓性のフィルムを凸型に成型した場合には、そのフィルムの薄肉となる部位と対向する板部材の部分に切り欠き部を設けることにより、さらに、可撓性のフィルムの損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1から図11は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの外観斜視図、図2は、そのインクタンクの分解斜視図である。
【0027】
本実施形態のインクタンクは、図1のように、筐体10と蓋部材20とを結合した外観形状となっており、内部には、後述するように液体収納部(液体収納室)としてのインク収納部が形成されている。筐体10の底部には、インク収納部内のインクを不図示の記録ヘッドに供給するためのインク供給口11が形成されている。
【0028】
インクタンクは、図2のように、筐体10、バネ部材30、板部材40、可撓性のフィルム50、緩衝シート60、蓋部材20、メニスカス形成部材70、押え板80を備える。筐体10は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂材料として形成することができる。メニスカス形成部材70は、その外周が押え部材70によって押え付けられることにより、供給口11に取り付けられている。メニスカス形成部材70は、例えば、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛細管力を有する毛管部材であり、あるいは、この毛管部材とフィルター部材とを組み合わせたものである。そのフィルター部材は、透過寸法が15〜30μm程度であり、材質は、例えば、ステンレス材料やポリプロピレン等である。メニスカス形成部材70と、筐体10内部の後述するインク収容部と、の間は、インク流路(不図示)によって連通されている。メニスカス形成部材70は、インク収納部に外部から気泡が侵入しないように、インクのメニスカスを形成する。
【0029】
筐体10は、その開口周縁部に可撓性のフィルム50を溶着することにより、インク収納部を形成する。図2は、筐体10の開口周縁部とフィルム50との溶着がなされていない状態を示す。フィルム50は、例えば、ポリプロピレンの薄膜を含むフィルム(厚み10〜100μm程度)によって形成することができる。バネ部材30が板部材40を介してフィルム50を外方に付勢することにより、インク収納部内に負圧が発生する。バネ部材30は、例えば、ステンレス材料により形成されている。筐体10の開口周縁部にはさらに蓋部材20が取り付けられ、この蓋部材20によって、外方に向かって凸形状となるフィルム50が保護される。蓋部材20には、大気連通部27が形成されており、インク収納部の外側における筐体10の内部が大気圧とされる。
【0030】
図3(a)および(b)は、図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図である。図3(a)は、インクが充填されていない組立て直後の状態を示し、図3(b)は、筐体10とフィルム50とによって形成されるインク収納部内にインク1が充填されて、使用されている状態を示す。図3(b)のようなインクタンクの使用状態において、板部材40は、バネ30の力によってフィルム50に当接する。これにより、フィルム50はインク収納部内を拡張する方向に付勢され、そのインク収納部内に負圧が生じる。インク収納部内のインクの消費に伴って、板部材40とフィルム50は、バネ30の付勢力に逆らって図3(b)中の左方へ移動する。このようなインク収納部内に収容するインク量の変化に拘わらず、そのインク収納部内の負圧はほぼ一定に保たれる。
【0031】
フィルム50は、インクの充填前においては図3(a)のような形状に維持されている。図3(b)のようにインクが充填されると、フィルム50は、インク収納部内の負圧により板部材50にと右折する部分以外は、内側(同図中の左側)に撓んで窪み部51を形成する。
【0032】
図4(a)は板部材40の正面図、図4(b)は、図4(a)のIV−IV線に沿う断面図である。板部材40は、例えば、ポリプロピレン樹脂などの樹脂材料によって構成されており、その全域に渡って、1〜2mm程度の厚みを有している。板部材40は、薄いフィルム50と接触する部品であるため、コーナー部(角部)41A,41Bは、図4(a)のように曲面形状(R形状)とされている。コーナー部41Aは外側を向く角部であり、コーナー部41Bは内側を向く角部である。また、コーナー部41A同士を結ぶ稜線部(辺部)42A、およびコーナー部41A,41Bを結ぶ稜線部(辺部)42Bも、図4(b)のように曲面形状(R形状)とされている。これらのコーナー部および稜線部を曲面形状とすることにより、インクタンクの落下や振動によるフィルム50の損傷を抑制することができる。このように本例の板部材40は、外周縁にコーナー部41A,41Bおよび稜線部42A,42Bが形成された平面形状である。
【0033】
本実施形態における板部材40の外形は、フィルム50の形状および剛性を考慮して、略十字状となっている。すなわち板部材40は、図4(a)中における2点鎖線のような平面略四角形の板部材を基準にした場合、その板部材の四隅の部分を切り欠いたような形状となっている。図4(a)中の部分44は、その板部材の四隅を切り欠いた切り欠き部である。ここで、板部材40の略十字形状の理由の説明に先立ち、フィルム50について説明する。
【0034】
フィルム50は、インクタンクのインク消費に伴って、板部材40と共に筐体10側へ移動し、最終的には、筐体10の内部形状と同一形状となるように筐体10の内面に張り付いて、インクを使い切ることができるようにインクの収納空間を無くす。そのためフィルム50は、伸ばされたときに筐体10の内部形状とほぼ同一形状となるように形成されている。本実施形態におけるフィルム50は、筐体10の内部形状と同様に、略直方形状となっている。図5は、蓋部材20を取り外した状態のインクタンクを図3(a)中の矢印V方向から見た側面図であり、同図のように、側面視におけるフィルム50は略四角形状となっている。フィルム50の四隅におけるコーナー部52は、極めてシワが発生しやすい。また、樹脂製の平坦なシート材料によってフィルム50を凸型に成型した場合、コーナー部52は、肉薄となって剛性および強度が最も弱い箇所となる。
【0035】
板部材40を十字形状としている理由は、インクタンクの落下や振動によって、フィルム50のコーナー部52において板部材40と蓋部材20との衝突が起きないようにするためである。そのために板部材40は、フィルム50のコーナー部52を避けた形状となっている。このように、本例における板部材40の十字形状は、コーナー部52の剛性が弱いことによって生じるおそれがあるフィルム50の損傷の対策として採用されている。しかし、四隅のコーナー部52の剛性が充分にある場合には、これに限らず、図6(a),(b)のように、略四角形状の板部材40であってもよい。
【0036】
次に、図7(a)、(b)を用いて、蓋部材20について説明する。同図(a)は蓋部材20の正面図であり、同図(b)は、同図(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【0037】
蓋部材20は、筐体10の開口部周縁と略同一形状の外形を有しており、その筐体10の開口部を塞ぐように取り付けられることにより、筐体10の内側に、インク収納部(=液体収納室)が存在する空間を形成する。蓋部材20の内面22(液体収納室側の内面)には、筐体10側に突出るリブ21が形成されている。このリブ21は、板部材40の外側に位置して、その外周全域を包囲するように形成されている。リブ21が配される目的は、インク収納部内の負圧を安定化させることにある。インクタンクの落下や振動によって外力が加えられた場合、リブ21によって板部材40の移動が規定量に制限されることになり、仮にリブ21が無いと、板部材40は規定量以上に移動するおそれがある。板部材40が規定量以上に移動した場合には、板部材40が傾いて、バネ部材30の付勢力がダイレクトに板部材40に伝達されなくなって、インク収納部内の負圧が低下するおそれがある。リブ21は、板部材40が規定量以上移動することを制限するストッパーとして機能する。
【0038】
また蓋部材20の内面22には、他の領域に対して、一段低い凹部23が設けられている。図中の2点鎖線は板部材40を示す。凹部23は、板部材40のコーナー部41A(図4参照)に相当する位置に設けられており、その大きさは、板部材40がリブ21の内側の許容範囲において移動したとしても、必ず板部材40のコーナー部41Aと対向する大きさに設定されている。すなわち、板部材40の移動位置に拘わらず、図7(a)の正面図において凹部23が板部材40のコーナー部41Aを必ず網羅するように、つまり図7(a)の図面中において凹部23がコーナー部41Aを必ず含むように、凹部23の大きさが設定されている。この凹部23は、緩衝シート(緩衝部材)60と共に、板部材40の衝撃を吸収するための衝撃吸収部90を形成する。
【0039】
次に、図8(a),(b)を用いて、衝撃吸収部90を形成する緩衝シート(緩衝部材)60について説明する。この緩衝シート60は弾性を有する材料であり、本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂により構成された非常に廉価な可撓性シートである。その厚みは、後述する緩衝効果に応じて設定可能であり、本例のインクタンクの場合には0.01〜1mm程度に設定している。
【0040】
図8(a),(b)は、衝撃吸収部90を形成する緩衝シート60と、蓋部材20と、が接着された状態を示し、図8(a)中の点線は凹部23である。緩衝シート60は、リブ21の内側における蓋部材20の内面22の略全域を覆う形状であり、凹部23以外の内面22上の領域に接着されている。本実施形態においては、緩衝シート60の接着方法として熱溶着を用いている。緩衝シート60の接着箇所は、1つまたは2つの凹部23を挟むように位置する。本例の場合、その接着箇所として、7箇所の接着領域200が設定されている。このように、凹部23を挟むように接着領域200を設定することにより、緩衝シート60は、凹部23の開口を覆う部分にシワを生じることなく取付けられる。したがって、凹部23の直上の緩衝シート60に荷重が加えられた場合に、その緩衝シート60は、凹部23内に向かって弾性変形して緩衝作用を発揮する。
【0041】
また接着領域200は、緩衝シート60が凹部23内に変形したときに、それが凹部23の底面24にまでは達しないように緩衝シート60の位置を規制する。つまり、凹部23を挟むように位置する対の接着領域200間の最短距離Lの範囲において、蓋部材20の表面上の距離LAと、緩衝シート60の長さLBと、の関係がLA>LBに設定されている。距離LAは、対の接着領域200間の蓋部材20の内面に沿った最短距離であり、長さLBは、対の接着領域200間に存在する緩衝シート60の最短の長さである。これらの距離LAおよび長さLBは、いずれも対の接着領域200間の最短距離L以上である。このようなLA>LBの関係により、緩衝シート60が凹部23内に向かうように、つまり蓋部材20の内面に沿うように変形したとしても、それは凹部23の底面24までは達しない。接着領域とは、蓋部材の液体収納室側の内面上に設けられた接合部を意味している。
【0042】
図8(a)におけるLは、同図中左上側に位置する対の接着領域200間を結ぶ最短距離であり、この最短距離の範囲内には、2つの凹部23が存在する。つまり、それらの接着領域200は2つの凹部23を挟むように位置している。また、図8(a)中の中央下側の接着領域200と同図中右下側の接着領域200は、1つの凹部23を挟むように位置し、同様に、図8(a)中の中央下側の接着領域200と同図中左下側の接着領域200は、1つの凹部23を挟むように位置する。いずれの場合においても、LA>LBの関係により、緩衝シート60が凹部23の底面24にまでは達しないように、その変形が規制される。対の接着領域200は、少なくとも1つの凹部23を挟むように位置すればよい。
【0043】
また、LA>LBの関係は、緩衝シート60の弾性変形を考慮して設定する。すなわち、緩衝シート60が弾性変形を伴って凹部23内に向かって変形しても底面24までは達しないように、緩衝シート60の材質により緩衝シート60自体の剛性が弾性変形しやすい程、距離LAと長さLBの差を大きく設定する。また、緩衝シート60が弾性変形によって緩衝作用を発揮できる限りにおいては、長さLBが対の接着領域200間の最短距離Lと同じであってもよい。
【0044】
接着領域200は、緩衝シート60の位置を規制するための接合部であればよく、溶着以外に、緩衝シートを蓋部材に挟持させるなどの方法によって緩衝シート60の位置を規制するものであってもよい。要は、凹部23を挟んで位置するように対を成して、その対の接合部間を結ぶ蓋部材20の内面に沿った最短距離LAと、その対の接合部間に存在する緩衝シート60の最短の長さLBと、の関係がLA>LBであればよい。
【0045】
緩衝シート60が最も撓む箇所は、凹部23の中央部と対向する部分である。緩衝シート60の撓み量は、凹部23の中央部と対向する部分から、凹部23の縁部と対向する部分に向かうにつれて減少する。本例の凹部23は、擂鉢状の形状によってその機能は果たす。凹部23を擂鉢状とした場合には、その凹部の内容積を小さく設定し、蓋部材20の強度低下を最小限に抑えて、外力が加わった際の蓋部材20の変形量を小さく止めることができる。しかしながら、蓋部材20の強度が十分にある場合などにおいて、凹部23の形状は、その限りではない。このように蓋部材20の凹部23と緩衝シート60とを組み合わせることにより、凹部23と、それに対向する緩衝シート60の部分と、によって衝撃吸収部90が形成される。
【0046】
図9(a),(b)は、インクタンクの落下状態における板部材40と衝撃吸収部90との関係の説明図である。同図(a)は、物流時におけるインクタンクの落下前の状態を示す断面図であり、同図(b)は、インクタンクが落下して地面に衝突した状態を示す断面図である。これらの図9(a),(b)は、いずれも図1中のIII−III線に沿う断面図である。
【0047】
図9(a)のような物流時のインクタンクは、インクの充填後、インクが全く消費されていない状態である。この状態において、板部材40は、蓋部材20のリブ21の内側に位置しており、蓋部材20の内面22とはクリアランス300をおいて配されている。板部材40と内面22との間のクリアランス300は、外力により蓋部材20が変形したとしても、それが板部材40に当接しないように設定されている。仮に、外力により蓋部材20が板部材40を押圧してしまうと、インク収納部を収縮させて、その内部の負圧が変化するおそれがある。このような負圧の変化を抑制するために、板部材40と蓋部材20との間には一定のクリアランス300が設定されている。
【0048】
このようなインクタンクがバネ部材30の伸縮方向と直交する方向(図9(a)中の矢印方向)に落下して、それが地面に衝突した場合には、図9(b)のように、インク収納部内に収納されているインク1は、慣性力によりさらに重力方向に移動することになる。その際、インクを収納しているフィルム50が柔らかくて変形自在であるため、インク1は、インクタンクの地面との衝突側(図9(b)中の下側)に集まり、フィルム50側にも移動する。板部材40も同様に、慣性力により地面との衝突側に移動する。板部材40は、さらに、フィルム50側へのインク1の移動により、図9(b)のように、地面との衝突側が蓋部材20側に移動するように傾くことになる。このような一連の動作は、インクタンクが落下した瞬間に起こる瞬時の挙動であるため、板部材40は、落下による高エネルギーを持ったまま、瞬時に且つ極めて激しく蓋部材20と衝突することになる。
【0049】
次に、図10(a),(b)を用いて、インクタンクの落下姿勢および板部材の挙動についてさらに詳細に説明する。同図(a)は、インクタンクの落下姿勢を説明するための斜視図である。同図(b)は、インクタンクが落下した瞬間における板部材40の挙動を説明するために、蓋部材40およびフィルム50を取り外し、かつ筐体10を一部切り欠いた斜視図である。
【0050】
インクタンクは、その平らな外面から落下する場合もあるが、ほとんどの場合は、図10(a)に示すように、若干傾いて角部から落下する。すなわち、略直方形状のインクタンクは、その8つ角部の内、いずれかの角部が最初に地面に衝突するように落下する場合がほとんどである。例えば、図10(a)中の角部Fが地面に衝突した場合、同図(b)に示されるように、板部材40は、インクタンクの角部Fに近いコーナー部G,Hを下方に突き出すように傾いた状態になる。このようにインクタンクが落下した場合には、ほとんど板部材40のコーナー部41Aが最初に蓋部材20の内面22に当たることになる。
【0051】
図11は、蓋部材20の内面22に位置する衝撃吸収部90に、板部材40が衝突した状態を説明するための要部の断面拡大図である。
【0052】
板部材40の位置は、蓋部材20のリブ21により制限されている。前述したように、このような規制範囲内のいかなる位置に板部材40が存在しても、そのコーナー部41Aは、緩衝シート60を介して蓋部材20の凹部23と対向する。つまり、コーナー部41Aは、常に、衝撃吸収部90と対向する位置にある。つまり、板部材40のコーナー部41Aは、必ず衝撃吸収部90に当接することになり、蓋部材20の内面22の他の領域には当接しない。板部材40のコーナー部41Aが衝撃吸収部90に当たると、まず、緩衝シート60の衝撃吸収部90およびその周辺部分が撓むことにより、インクタンクの落下による板部材40の衝撃エネルギーを吸収し始める。そして、緩衝シート60が更に撓むことにより、最終的には、板部材40の衝撃エネルギーを全て吸収して、板部材40の蓋部材20側への移動を食い止める。接着領域200によって緩衝シート60の移動量は制限され、緩衝シートの位置が規制される。よって、緩衝シート60が最も大きく撓んだ状態においても、緩衝シート60、フィルム50、および板部材40は、凹部の底面24にまで到達することはない。
【0053】
したがって、フィルム50は直接リジットな蓋部材20に当たることがなく、板部材40と蓋部材20との間におけるフィルム50の挟み込みは発生せず、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るインクタンクの構成を図12に基づいて説明する。図12は、衝撃緩衝部90を形成する蓋部材20および緩衝シート60の正面図である。
【0055】
本実施形態のインクタンクは、例えインクタンクが平らな外面から落下したとしても、フィルム50の損傷を抑制できる構成となっている。つまり、フィルム50の剛性が低くて、板部材40のコーナー部41Aだけでなく、その稜線部42Aが蓋部材20の内面22と衝突しても、フィルム50が損傷しやすい場合であっても、その損傷を抑制することができる。
【0056】
本実施形態における蓋部材20の凹部23は、前述した第1の実施形態の場合と比較して幅広く設けられている。つまり、板部材40がリブ21の内側の許容範囲において移動したとしても、必ず板部材40のコーナー部41Aおよび稜線部42Aと対向するように、凹部23の大きさが設定されている。すなわち、板部材40の移動位置に拘わらず、図12の正面図において、凹部23が板部材40のコーナー部41Aおよび稜線部42Aを必ず網羅するように、つまり図12の図面中において凹部23がコーナー部41Aおよび稜線部42Aを必ず含むように設定されている。この凹部23と緩衝シート60とにより、前述した実施形態と同様に、板部材40の衝撃を吸収するための衝撃吸収部90が形成される。
【0057】
このような構成により、板部材40の稜線部42Aが蓋部材20の内面22に衝突しても、その衝撃を必ず衝撃吸収部90によって吸収することができるため、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0058】
図13(a),(b)は、前述した図6のような略四角形状の板部材40を備えた場合の構成例であり、図13(a)に、衝撃吸収部90を形成する蓋部材20の凹部23と緩衝シート60を示す。
【0059】
本例における凹部23は、リブ21のすぐ内側に、全周に渡ってリブ21と相似形状となるように環状に形成されている。そのため、前述した図8(a)および図12のように、板部材40の周縁に沿う方向から凹部23を挟むように接着領域200を設定することはできない。そこで本例においては、緩衝シート60を図12のものよりも相似状に若干大きくし、環状の凹部23の内側と外側の位置に接着領域200を設定する。これにより対の接着領域は、凹部23を内側と外側の方向から挟むことができる。凹部23の内側の接着領域200は、蓋部材20の内面22に位置し、凹部23の外側の接着領域200は、リブ21の面(リブ面)25に位置する。図13(b)中に矢印は、接着領域200における緩衝シート60の接着方向を示す。本例の場合、接着領域200は、略四角枠形状の凹部23の短辺部分に対して2組設定し、その長辺部分に対しては3組設定している。このように、一対の接着領域200を略四角枠形状の凹部23の一つの辺部分に対して複数組設定することができる。
【0060】
このように接着領域200によって緩衝シート60の位置を規制することにより、それが撓んだときに凹部23の底面24に当たることを防止して、板部材40の衝突時における衝撃を吸収することができる。よって本構成であっても本発明の効果を発揮して、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るインクタンクの構成を図14(a),(b)および図15を用いて説明する。図14(a)は、本実施形態の衝撃吸収部90を形成する蓋部材20の凹部23および緩衝シート60を示す正面図であり、同図(b)は、同図(a)中のXIV−XIV線に沿う断面図である。図15は、図1中のIII−III線と同様の線に沿う本実施形態のインクタンクの断面図である。
【0062】
前述したように、インクタンクが落下して地面に衝突した際、板部材40は重力方向に移動しながら、その落下衝突側を蓋部材20寄りに移動させるように傾く。その際、板部材40は、最初に蓋部材20の内面22に衝突するのではなく、蓋部材20のリブ21に衝突する場合がある。この場合、フィルム50は、リジットな板部材40とリブ21との間に挟まれて、損傷するおそれがある。本実施形態においては、このように板部材40がリブ21に衝突した場合にも、フィルム50の損傷を抑制する。
【0063】
本実施形態における板部材40の形状は、前述した図6と同様の略四角形状である。勿論、その板部材49は、前述したような十字形状であってもよい。本実施形態の蓋部材20におけるリブ21の形状は、前述した実施形態の図13(a),(b)におけるリブ21と異なる。すなわち本実施形態のリブ21において、4つのコーナー部は、前述した図13(a),(b)のリブ21と同様に比較的厚く形成されているものの、その他の部分は、内周面が距離dだけ後退することにより比較的薄く形成されている。つまり平面四角枠形状のリブ21は、4つのコーナー部に対して、4つの辺部分の内周面(内側壁面)が距離dだけへこみ、それらの辺部分の根元が細くなっている。このようにへこんだ部分は、前述した実施形態における凹部23に相当する。
【0064】
緩衝シート60の形状は、蓋部材20の内面22形状に対応し、リブ21の全ての頂上部26を覆う大きさに設定されている。接着領域200は、凹部23を挟むように、蓋部材20の内面22とリブ21に設定されている。本例の場合、リブ21側の接着領域200は、頂上部26に位置する。前述した実施形態と同様に、凹部23と緩衝シート60によって衝撃吸収部90が形成される。
【0065】
このような構成により、図15に示すように、蓋部材20のリブ21に衝撃吸収部90を設けることができる。この結果、蓋部材20のリブ21と板部材40との衝突が発生したとしても、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0066】
(可撓性フィルム50の成形方法)
ここで本発明の液体収納容器における可撓性フィルム50(以下凸型シートと記載)について更に詳細に説明する。凸型シートは各実施例に共通するものである。
【0067】
本発明の凸型シート50は、その中央部分が平板状の板部材40によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。この凸型シート50は、後述する成形方法によって、折り返し部を有する凸型に成形され、その断面形状はほぼ台形となっている。その凸型シート50は、バネ部材30の付勢方向に向かって突出する凸型に成型される。インクタンクの物流時の振動や落下などの衝撃によって、板部材40と凸型シート50との間にずれが生じることを防止するために、それらの中心部付近は互いに固定されている。本例の場合、板部材40と凸型シート50は樹脂材料により形成されており、それらは熱により溶着されている。そのため、凸型シート50の板部材40と接触する側は、板部材40と同じ材質であることが望ましく、本例では、ポリプロピレンによって形成されている。筐体10の開口周縁部に蓋部材20が取り付けられることにより、凸型シート50が保護される。蓋部材20には大気連通部27が形成されており、これにより、筐体10内におけるインク収容部の外側を大気圧としている。
【0068】
図16から図18を用いて、凸型シート50の成形方法および成形後の厚みの分布について説明する。
【0069】
図16(a)は、凸型シート50を成形するための金型(成形型)110の斜視図、図16(b)は、その金型110の図16(a)中のXVI−XVI線に沿う断面図である。図17は、凸型シート50の成形時の状況を示し、図218は、成形後の凸型シート50の厚み分布を示す。
【0070】
金型110には、図16(a)のように、凸部111が環状に設けられている。凸部111の根元部分における内周側と外周側には、その全周に渡って点在するように、真空引きするための複数のポート112が形成されている。図17において50Aは、凸型シート50を成形材料としての平坦なシート素材である。凸型シート50の成形に際しては、まず、図17中の2点鎖線のように、樹脂製のシート素材(シート材料)50Aの周囲を固定治具120により固定して、そのシート素材50Aにおける凸型シート50の成形部分を平面状とする。その後、充分に加熱されたシート素材50Aに、金型110の外周稜線部113がシート素材50Aに接するまで下降させる。そして、金型110のポート112から真空引きすることにより、シート素材50Aを金型110の成形面に密着させて、シート素材50Aを凸状に成形する。
【0071】
図18は、このような成形方法によって成形された凸型シート50に関して、板部材40と当接する面の厚み分布を模式的に表した図である。厚みの分布は、成形前のシート素材50Aの厚み、および金型110の凸部111の高さなど寸法によって異なる。本例の凸型シート50は、T1の領域の厚みが51μm以上、T2の領域の厚みが40〜50μm、T3の領域の厚みが40μm未満となっている。
【0072】
図19は、このように成形された凸型シート50と板部材40との位置関係を表している。板部材40が位置する凸型シート50の内面は、平面四角形であり、板部材40は、前述した実施形態における図4(a),(b)と同様の十字状である。つまり、その板部材40は、平面略長方形の平板の四隅を切り欠いたような形状となっており、その切り欠き部によって、内側を向く角部41Bが形成されている。前述したように、インクタンクが落下した衝撃によって、板部材40と蓋部材20との間に凸型シート50が挟み込まれた場合には、凸型シート50が損傷するおそれがある。図19中の破線Taは、そのような場合に凸型シート50が損傷するおそれがある厚み部分と、そのおそれがない厚み部分と、の間の境界線、つまり損傷するおそれがあるかないかの厚みの閾値の境界線である。破線Taの内側は、インクタンクの落下時に板部材40と蓋部材20との間に挟み込まれても損傷するおそれの領域であり、一方、破線Taの外側は、損傷するおそれがある領域である。破線Ta上における厚み、つまり損傷するおそれがあるかないかの厚みの閾値は、インクタンクの構成や重量などによって変わるため、実際に落下試験を行って決定する。本例の場合、その厚みの閾値は40μmであったため、破線Taは、前述した図18中の領域T2と領域T3との間に位置する。
【0073】
図20(a),(b)は、このような厚み分布を持つ凸型シート50と、角部を丸めた長方形の板部材130と、の位置関係を表している。図20(a)のような板部材130は、その角部を可能な限り大きく丸めても、その一部が破線Taの外側、つまり厚み閾値よりも薄い領域にはみ出してしまう。そのため、インクタンクの落下によって凸型シート50が損傷するおそれがある。板部材130を破線Taの内側に収めるためには、図20(b)のように、板部材130の長さL1(またはL2)を大幅に小さくする必要がある。
【0074】
図21は、図20(b)のように板部材130の長さを短くした場合の弊害を説明するための断面図である。図21において、実線の板部材130は図20(b)中の板部材であり、点線の板部材130は図20(a)中の板部材である。図21中の実線の板部材130のように、その長さL1を大幅に小さくした場合、その板部材130の支えを失った凸型シート50の部分は、インク収納R内の負圧によってインク収納部R内へ引き込まれる。そのため、インク1がインク収納部R内の中心部方向へ移動して、板部材130を矢印C方向へ押し上げてしまう。その結果、板部材130に追従するバネ部材30も矢印C方向へ伸びてしまい、その分、インク収納部R内の負圧が低下するおそれがある。さらに、インク1を使い切るようにインク収納部Rを収縮させることが難しく、インク残量がなくなるまでインク1を使い切ることが難しくなる。このように、板部材130の長さを短くした場合には数々の弊害が生じるために、インクタンクの製品設計の大幅な見直しが必要となる。
【0075】
一方、本実施形態の板部材40は、図19のように角に切り欠き部が形成された形状であり、その切り欠き部を図18のような凸型シート50の厚み分布に合わせて形成することにより、板部材40を点線Taの内側に収めることができる。つまり、板部材40の長さを短くすることなく、破線Ta上の厚みの閾値よりも厚い凸型シート50の領域内に、板部材40を位置させることができる。このように、板部材40に切り欠き部を設けることにより、板部材40の長さを短く変更した場合の弊害を招くことなく、凸型シート50の損傷を抑制することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態においては、板部材の角部に切り欠き部を設けることにより、インクタンクの大幅な設計変更や、凸型シートの損傷を抑制するための特別な保護シート等の部材を追加することなく、凸型シートの損傷を抑制することができる。また、インクの収容量が大きいインクタンクにおいても、その落下等の衝撃による凸型シートの損傷を抑制して、高い信頼性を確保することができる。また凸型シートは、板部材の切り欠き部に対応する部分の厚みが従来と同様に薄くてもよく、インクを使い切るようにインク収納部Rを収縮させて、インクの使い切り性のよいインクタンクを提供することができる。
【0077】
(他の実施形態)
筐体および可撓性のフィルムは、インクなどの液体を収容可能な液体収容室を形成することができればよく、また供給口は、その液体収納室内の液体を外部に導出することができればよく、それらの形態は前述した実施形態のみに特定されない。またバネ部材は、インク収納部内に負圧を発生するように、可撓性のフィルムを付勢することができればよく、その形状や配備位置は、上述した実施形態のみに特定されない。例えば、上述した実施形態にようにバネ部材をインク収納部内に配備する他、それをインク収納部の外に配備してもよい。
【0078】
また、蓋部材に設ける凹部は、前述した第1および第2の実施形態のようにリブの内側に位置する蓋部材の内面のみ、または前述した第3の実施形態のようにリブの内側壁面のみに特定されない。例えば、それらの両方の面に凹部を設けてもよい。要は、板部材の衝突時に、その板部材の一部(角部や辺部など)が移動する方向に凹部が位置すればよく、その凹部の形状や数は上述した実施形態に特定されない。また、リブは必ずしも環状である必要はなく、板部材の周囲を包囲する位置に点在するものであってもよい。
【0079】
また、フィルムや緩衝シートなどの形状として、平面四角形や十字形などは、略平面四角形や略十字形であればよく、角部が丸くなっていたり、部分的に直線部や曲線部が含まれていてもよい。要は、実質的に四角形や十字形であればよい。また、本発明の液体収納容器をインクジェット記録装置に用いられるインクタンクに適用した場合には、そのインクタンクと、インクジェット記録ヘッドと、を結合したインクジェットカートリックを構成することもできる。そのインクジェット記録ヘッドは、インクタンクから供給されたインクを吐出可能な記録ヘッドであり、インクを吐出するための吐出エネルギー発生手段としては、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。
【0080】
また、凹部の開口に位置する緩衝部材としては、上述したような弾性の緩衝シート以外の部材を用いることができる。要は、凹部の開口に位置し、板部材が衝突したときに、凹部内に向かって弾性変形して緩衝作用を発揮できる部材であればよい。また、緩衝部材の凹部の開口をほぼ密閉することにより、凹部内の空気をエアクッションとして利用することもできる。
【0081】
また本発明は、インク以外の種々の液体を収容するための液体収納容器として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの外観斜視図である。
【図2】図1のインクタンクの分解斜視図である。
【図3】(a)は、インクが満たされていない状態における図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図、(b)は、インクが満たされている状態における図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図である。
【図4】(a)は、図2のインクタンクにおける板部材の正面図、(b)は、同図(a)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2のインクタンクにおける板部材と筐体との位置関係を説明するための要部の正面図である。
【図6】(a)は、板部材の他の例を説明するための正面図、(b)は、同図(a)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(a)は、図2における板部材と蓋部材との関係を説明するための要部の正面図であり、(b)は、同図(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】(a)は、図2における蓋部材と緩衝シートとの位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】(a)は、図2のインクタンクの物流時における断面図、(b)は、そのインクタンクの落下時における断面図である。
【図10】(a)は、図2のインクタンクの落下姿勢を説明するための斜視図、(b)は、そのインクタンクが落下した瞬間を説明するための要部の概略斜視図である。
【図11】図9(b)のXI円部の拡大図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における蓋部材、緩衝シート、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図である。
【図13】(a)は、板部材の他の例と、それに対応する蓋部材および緩衝シートと、の位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】(a)は、本発明の第3の実施形態における蓋部材、緩衝シート、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】図14のインクタンクの断面図である。
【0083】
【図16】(a)は、本発明の凸型シートを成形するための金型の斜視図、(b)は、同図(a)のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】本発明における凸型シートの成形方法を説明するための要部の断面図である。
【図18】本発明における凸型シートの厚み分布を説明するための模式図である
【図19】本発明における凸型シートと板部材との位置関係を説明するための正面図である。
【図20】(a)は、一般的な板部材と凸型シートとの位置関係を説明するための正面図、(b)は、一般的な他の板部材と凸型シートとの位置関係を説明するための正面図である。
【図21】図20(b)の板部材を備えたインクタンクの断面図である。
【図22】(a)は、従来のインクタンクにおける落下前の状態を説明するための断面図、(b)は、そのインクタンクが地面に衝突した状態を説明するための断面図である。
【図23】図22のインクタンクにおける筐体、フィルム、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 インク
10 筐体
20 蓋部材
21 リブ
23 凹部
30 バネ部材
40 板部材
41A,41B コーナー部
42A,42B 稜線部
50 フィルム
52 コーナー部
60 緩衝シート
90 衝撃吸収部
200 接着領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用インクやインク定着性を向上させる特殊液体などを含む種々の液体を収容可能な液体収納容器に関するものであり、例えば、インクジェット記録装置に着脱自在に搭載されるインクタンクが含まれる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを貯留するインクタンクから記録ヘッドにインクを供給し、その記録ヘッドからインクを吐出することによって記録媒体に画像を記録する。いわゆるシリアルタイプのインクジェット記録装置は、記録ヘッドを搭載可能なキャリッジを備え、そのキャリッジを記録媒体に対し移動させながら、そのキャリッジに搭載された記録ヘッドの吐出口から、記録媒体にインクを吐出することによって記録を行う。また、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置は、記録媒体の幅に対応した範囲に渡って吐出口が配列された記録ヘッドを用い、この記録ヘッドに対して搬送されてくる記録媒体に向かって、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出して記録を行う。
【0003】
このような記録ヘッドに供給するためのインクタンクは、所定の負圧でインクを貯留する。この負圧は、記録ヘッドの吐出口に形成されるインクのメニスカスの保持力と平衡して、吐出口からのインク漏れを防止するための負圧であって、記録ヘッドのインク吐出動作を可能とする所定範囲内の適切な負圧に設定される。
【0004】
このような負圧を発生する機構として、インクを含浸保持するスポンジ等の多孔質部材をインクタンク内に収納し、その多孔質部材によるインクの保持力によって、適切な負圧を生じさせるものが知られている。また、容積を拡張する方向の張力を発生するゴム等の弾性材料によって袋状部材を形成し、その袋状内部にインクを充填し、その袋状部材が発生する張力によってインクに負圧を作用させるものも知られている。
【0005】
さらに、可撓性フィルムによって袋状部材を形成し、その内部または外部に、袋状部材の容積を拡張させる方向にフィルムを付勢するためのバネ等を接合することにより、その袋状部材の内部のインクに負圧を作用させるものも知られている。この負圧発生機構を用いたインクタンクとして、特許文献1および2に記載されたものが知られている。
【0006】
特許文献1および2には、図22(a),(b)のように構成されたインクタンク100が記載されている。インクを導出するための供給口(不図示)が形成された筐体101に、可撓性の凸型のフィルム102を接合することにより、インク収納部103が形成され、インク収納部102内には、負圧を発生させるためのバネ104が備えられる。フィルム103とバネ104との間には、板部材105が配置される。さらに蓋部材106を備え、その蓋部材106には、板部材105の移動を規制するためのリブ106Aが形成されている。このようにフィルム102とバネ104を用いて構成されるインクタンク100においては、バネ104の押圧をフィルム102に伝達させるために、それらの間に板部材105が存在する。このバネ104と板部材105は、加締め、あるいは溶着等により位置ズレが生じさないように固定される。
【0007】
フィルム102と接合される筐体101は、フィルム102と同一樹脂材料で形成されていることが望ましく、これらを互いに熱溶着によって接着することにより形成されるインク収納部103は、供給口を除いて密閉される密閉構造とすることができる。供給口の開口部は、バネ104により生じる負圧によって、インク収納部103内に外部の空気を取り込むことがない程度に、インクのメニスカス力を発生させるように構成されている。例えば、インクのメニスカス力を発生するメッシュフィルタ等が供給口に固定されている。
【0008】
このようにフィルム102を用いてインク収納部103が形成されるインクタンク100は、例えば、スポンジ等にインクを含浸保持させて負圧を発生するインクタンクと較べて、インクの収納効率が優れている。
【0009】
また、特許文献1には、フィルム102を凸型に成形する方法が記載されている。その方法においては、先ず、平坦なシート材料(フィルム102の成形材料)をインクタンクの筐体101に溶着し、その後、シート材料を凸型に成形する。すなわち、平坦なシート材料をそのまま筐体101に溶着し、その筐体101をフィルム102の成形型として利用する。具体的には、筐体101に溶着されたシート材料を加熱し、そのシート材料と筐体101との間の空気を吸引排除することにより、筐体101の内部の凹形状に沿うようにシート材料が凸型に成形される。これにより、凸型に成形後のフィルム102を筐体101に位置決めする面倒がなく、筐体101の形状に合わせるように、シート材料から凸型のフィルム102を成形することができる。また、取り扱いが比較的困難であるフィルム102が筐体101と同一部品となるため、その取り扱いが容易となる。
【0010】
【特許文献1】特開2007−069351号
【特許文献2】米国特許6168267号明細書
【特許文献3】特開平6−226993号
【特許文献4】特開昭60−151055号
【特許文献5】特開2007−062337号
【特許文献6】特開平9−123476号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような負圧発生機構を備えるインクタンク100は、それがバネ104の伸縮方向と直交する方向(図22(a)中の矢印方向)に落下した際に、図22(b)のように、板部材105が蓋部材106に激しく衝突するおそれがある。板部材105と蓋部材106との間に存在しているフィルム102は10〜100μm程度と非常に薄いため、衝突の際の挟み込みにより、フィルム102が損傷するおそれがある。
【0012】
このような落下によって生じるおそれがあるフィルム102の損傷について、図22(a),(b)を用いて、そのメカニズムを説明する。
【0013】
インクタンク100は、落下前の図22(a)の状態を維持したまま、バネ104の伸縮方向と直交する矢印方向に落下することになる。そして図22(b)のように、インクタンク100が地面に衝突した瞬間に、インクタンク100に収納されているインクは、慣性力により重力方向に移動する。その際、インクタンク100における地面との衝突側(下側)の部分がリジットな筐体101であるため、インクはインクタンク100の衝突側に集まって、変形可能なフィルム102の方向(図22(b)の矢印方向)へ移動する。板部材105は、慣性力によって同様に衝突側に移動すると共に、フィルム102側へのインクの移動によって、衝突側の部分が図22(b)中の矢印方向に押される。そのため、板部材195の衝突側の部分と蓋部材106の内面が衝突する。このような一連の挙動は、インクタンク100の落下衝突時に、エネルギーをもったまま瞬時に行われるため、板部材105と蓋部材106は、勢いをもって激しく衝突する。この激しい衝突により、板部材105と蓋部材106との間に介在するフィルム102は、それらの間に挟み込まれて損傷するおそれがある。
【0014】
凸型のフィルム102が損傷するおそれがある箇所は、図23のように、特に、板部材105のコーナー部105Aに対応する部分102Aであることが判明した。図23は、蓋部材106を外した筐体101を図22(a)中の矢印XXII方向から見た側面図である。特許文献1および2に示されるように、板部材105は、図23のような略四角形状である場合が多い。略四角形状の板部材105と蓋部材106との衝突時に、コーナー部105Aを突き出すように板部材105が傾いて、そのコーナー部105が蓋部材106に対して点当たりする。このような点当たりの部分に応力が集中することにより、そのコーナー部105Aに対応する部分102Aにおいてフィルム102が損傷するおそれがある。
【0015】
フィルム102を損傷し難くするために、特許文献3には、板部材105にガード部材(緩衝材)を取付ける対策が提案されており、また特許文献4には、蓋部材106とフィルム102との間に緩衝材を配置する対策が提案されている。
【0016】
しかしながら、これらの対策においては、緩衝材が撓むことによって衝撃を吸収することになるため、インクタンクの落下衝撃のような高エネルギーを吸収するには、緩衝材の厚みを厚くして、その撓み代を大きく設定する必要がある。緩衝材の厚みを厚くした場合には、板部材の移動許容範囲が制限されて、インクの収納空間が減少し、インク充填量が低減するおそれがある。また緩衝材として、薄く且つ衝撃を吸収する素材は、例えばシリコーン系ゲル状素材などの特殊な材質に制限される。一般に、このようなエネルギーの高吸収性を有する素材は非常に高価であるため、それを緩衝材として用いた場合には、インクタンクの多大なコストアップを招くおそれがある。
【0017】
また、特許文献1に記載されているように筐体101などの凹型部材によって、平坦なシート材料から凸型のフィルム102を成型した場合、シート材料が凹型型材に当接していくにしたがって、順次冷えて固まっていく。シート材料は最後に凹型部材の底面に当接し、その凹型部材の底面に当接するシート材料の部分は、凸型のフィルム102の角部分に相当する。そのため、そのフィルム102の角部分は、成形時に最も伸ばされて薄くなる。そのフィルム102の角部分は、板部材105のコーナー部105Aに対応する部分102A、つまり損傷しやすい部分でもある。したがって、そのフィルム102の部分102Aはより損傷しやすくなる。
【0018】
特許文献1のように筐体101をフィルム102の成形型として利用する場合、シート材料の伸びおよび厚みは、筐体101内の凹部の深さに応じたものとなる。特許文献5には、筐体101の凹部の深さの半分の位置から、シート材量を折り返すような金型を用いて、フィルム102を凸型に成形する方法が記載されている。この方法によれば、例えば、フィルム102における折り返し部の前後の部分を伸張させることにより、それを約2倍の高さの凸型のフィルムとして用いることができる。これにより、成形時におけるシート材料の伸び量を少なくして、フィルム102が部分的に薄くなる程度を小さく抑えることができる。この結果、フィルム102の損傷を抑制することができる。
【0019】
ところで、インクタンクとして、インクの収容量が現行の2倍程度の製品が企画された場合には、インクタンクを大きくする必要がある。高さを低く抑えて小型化される記録装置に対応するためには、インクタンクの高さや奥行を拡大させることは難しい。そのため、インクタンクの幅を変えるという選択をせざるをえない。インクタンクの幅は筐体の深さ方向(図22におけるタンクの左右幅に相当)であるため、筐体の凹部は現行の2倍近い深さとする必要がある。前述したように、凹型の成形型を使用する特許文献1および特許文献5の凸型のフィルムの成形方法において、シート材料の伸び量および厚みは、筐体の凹部の深さに応じて変化し、その凹部が深ければ深いほどシート材料は薄くなってしまう。さらに、インクタンクの大容量化によって、その重量が増加するため、落下時の衝撃も増大して、フィルムの損傷が生じる可能性が高くなる。
【0020】
その対策として、例えば、特許文献5に記載の成形方法を用い、さらに、成形前のシート材料の厚みを厚くして、凸型のフィルム全体の厚みを厚くする方法が考えられる。しかし、この場合には、損傷しやすいフィルムの部分を厚くすることができるものの、その他の部分が必要以上に厚くなって、フィルムの剛性が高まってしまう。その結果、インクタンク内のインクの消費に伴うフィルムの挙動がスムーズでなくなり、インク収納部内の負圧が急激に変化したり、またインク収納部内のインクを使い切ることができなくなるおそれがある。
【0021】
また特許文献6には、フィルム102の損傷を抑制するために、板部材の角部を丸める構成が記載されている。しかし、このように板部材の角を丸めるだけでは、後述するように、凹型の成形型を用いた凸型のフィルム特有の厚み分布に対応することができない。さらに、板部材の大きさを小さくする必要があり、インクの収容効率が大幅に低下するおそれがある。
【0022】
本発明の目的は、液体の収納効率の低下や多大なコストアップを招くことなく、液体収納容器が強い衝撃を受けたときに、液体収納室を形成する可撓性のフィルムの損傷を抑制して、信頼性の高い液体収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の液体収納容器は、液体を収容可能な液体収容室を形成する筐体および可撓性のフィルムと、前記液体収納室内の液体を外部に導出するための供給口と、前記フィルムの内面に位置する板部材と、前記液体収納室内に負圧を発生させるように前記板部材を介して前記フィルムを付勢するバネ部材と、前記フィルムの外側に位置する蓋部材と、を含む液体収納容器において、前記板部材と対向する前記蓋部材の内面に設けられた凹部と、前記板部材が衝突したときに前記凹部内に弾性変形するように、前記凹部の開口に位置する緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、液体収納容器が強い衝撃を受けたときに、蓋部材に設けた凹部の内部空間を利用して緩衝部材が板部材の衝撃を吸収するため、液体の収納効率の低下を招くことなく、可撓性のフィルムの損傷を抑制することができる。また、緩衝部材として緩衝シートを用いることにより、凹部の形成位置や形状に柔軟に対応するように緩衝シートを容易に配備することができて、液体収納容器の製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、液体収納室を形成する可撓性のフィルムを凸型に成型した場合には、そのフィルムの薄肉となる部位と対向する板部材の部分に切り欠き部を設けることにより、さらに、可撓性のフィルムの損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1から図11は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの外観斜視図、図2は、そのインクタンクの分解斜視図である。
【0027】
本実施形態のインクタンクは、図1のように、筐体10と蓋部材20とを結合した外観形状となっており、内部には、後述するように液体収納部(液体収納室)としてのインク収納部が形成されている。筐体10の底部には、インク収納部内のインクを不図示の記録ヘッドに供給するためのインク供給口11が形成されている。
【0028】
インクタンクは、図2のように、筐体10、バネ部材30、板部材40、可撓性のフィルム50、緩衝シート60、蓋部材20、メニスカス形成部材70、押え板80を備える。筐体10は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂材料として形成することができる。メニスカス形成部材70は、その外周が押え部材70によって押え付けられることにより、供給口11に取り付けられている。メニスカス形成部材70は、例えば、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛細管力を有する毛管部材であり、あるいは、この毛管部材とフィルター部材とを組み合わせたものである。そのフィルター部材は、透過寸法が15〜30μm程度であり、材質は、例えば、ステンレス材料やポリプロピレン等である。メニスカス形成部材70と、筐体10内部の後述するインク収容部と、の間は、インク流路(不図示)によって連通されている。メニスカス形成部材70は、インク収納部に外部から気泡が侵入しないように、インクのメニスカスを形成する。
【0029】
筐体10は、その開口周縁部に可撓性のフィルム50を溶着することにより、インク収納部を形成する。図2は、筐体10の開口周縁部とフィルム50との溶着がなされていない状態を示す。フィルム50は、例えば、ポリプロピレンの薄膜を含むフィルム(厚み10〜100μm程度)によって形成することができる。バネ部材30が板部材40を介してフィルム50を外方に付勢することにより、インク収納部内に負圧が発生する。バネ部材30は、例えば、ステンレス材料により形成されている。筐体10の開口周縁部にはさらに蓋部材20が取り付けられ、この蓋部材20によって、外方に向かって凸形状となるフィルム50が保護される。蓋部材20には、大気連通部27が形成されており、インク収納部の外側における筐体10の内部が大気圧とされる。
【0030】
図3(a)および(b)は、図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図である。図3(a)は、インクが充填されていない組立て直後の状態を示し、図3(b)は、筐体10とフィルム50とによって形成されるインク収納部内にインク1が充填されて、使用されている状態を示す。図3(b)のようなインクタンクの使用状態において、板部材40は、バネ30の力によってフィルム50に当接する。これにより、フィルム50はインク収納部内を拡張する方向に付勢され、そのインク収納部内に負圧が生じる。インク収納部内のインクの消費に伴って、板部材40とフィルム50は、バネ30の付勢力に逆らって図3(b)中の左方へ移動する。このようなインク収納部内に収容するインク量の変化に拘わらず、そのインク収納部内の負圧はほぼ一定に保たれる。
【0031】
フィルム50は、インクの充填前においては図3(a)のような形状に維持されている。図3(b)のようにインクが充填されると、フィルム50は、インク収納部内の負圧により板部材50にと右折する部分以外は、内側(同図中の左側)に撓んで窪み部51を形成する。
【0032】
図4(a)は板部材40の正面図、図4(b)は、図4(a)のIV−IV線に沿う断面図である。板部材40は、例えば、ポリプロピレン樹脂などの樹脂材料によって構成されており、その全域に渡って、1〜2mm程度の厚みを有している。板部材40は、薄いフィルム50と接触する部品であるため、コーナー部(角部)41A,41Bは、図4(a)のように曲面形状(R形状)とされている。コーナー部41Aは外側を向く角部であり、コーナー部41Bは内側を向く角部である。また、コーナー部41A同士を結ぶ稜線部(辺部)42A、およびコーナー部41A,41Bを結ぶ稜線部(辺部)42Bも、図4(b)のように曲面形状(R形状)とされている。これらのコーナー部および稜線部を曲面形状とすることにより、インクタンクの落下や振動によるフィルム50の損傷を抑制することができる。このように本例の板部材40は、外周縁にコーナー部41A,41Bおよび稜線部42A,42Bが形成された平面形状である。
【0033】
本実施形態における板部材40の外形は、フィルム50の形状および剛性を考慮して、略十字状となっている。すなわち板部材40は、図4(a)中における2点鎖線のような平面略四角形の板部材を基準にした場合、その板部材の四隅の部分を切り欠いたような形状となっている。図4(a)中の部分44は、その板部材の四隅を切り欠いた切り欠き部である。ここで、板部材40の略十字形状の理由の説明に先立ち、フィルム50について説明する。
【0034】
フィルム50は、インクタンクのインク消費に伴って、板部材40と共に筐体10側へ移動し、最終的には、筐体10の内部形状と同一形状となるように筐体10の内面に張り付いて、インクを使い切ることができるようにインクの収納空間を無くす。そのためフィルム50は、伸ばされたときに筐体10の内部形状とほぼ同一形状となるように形成されている。本実施形態におけるフィルム50は、筐体10の内部形状と同様に、略直方形状となっている。図5は、蓋部材20を取り外した状態のインクタンクを図3(a)中の矢印V方向から見た側面図であり、同図のように、側面視におけるフィルム50は略四角形状となっている。フィルム50の四隅におけるコーナー部52は、極めてシワが発生しやすい。また、樹脂製の平坦なシート材料によってフィルム50を凸型に成型した場合、コーナー部52は、肉薄となって剛性および強度が最も弱い箇所となる。
【0035】
板部材40を十字形状としている理由は、インクタンクの落下や振動によって、フィルム50のコーナー部52において板部材40と蓋部材20との衝突が起きないようにするためである。そのために板部材40は、フィルム50のコーナー部52を避けた形状となっている。このように、本例における板部材40の十字形状は、コーナー部52の剛性が弱いことによって生じるおそれがあるフィルム50の損傷の対策として採用されている。しかし、四隅のコーナー部52の剛性が充分にある場合には、これに限らず、図6(a),(b)のように、略四角形状の板部材40であってもよい。
【0036】
次に、図7(a)、(b)を用いて、蓋部材20について説明する。同図(a)は蓋部材20の正面図であり、同図(b)は、同図(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【0037】
蓋部材20は、筐体10の開口部周縁と略同一形状の外形を有しており、その筐体10の開口部を塞ぐように取り付けられることにより、筐体10の内側に、インク収納部(=液体収納室)が存在する空間を形成する。蓋部材20の内面22(液体収納室側の内面)には、筐体10側に突出るリブ21が形成されている。このリブ21は、板部材40の外側に位置して、その外周全域を包囲するように形成されている。リブ21が配される目的は、インク収納部内の負圧を安定化させることにある。インクタンクの落下や振動によって外力が加えられた場合、リブ21によって板部材40の移動が規定量に制限されることになり、仮にリブ21が無いと、板部材40は規定量以上に移動するおそれがある。板部材40が規定量以上に移動した場合には、板部材40が傾いて、バネ部材30の付勢力がダイレクトに板部材40に伝達されなくなって、インク収納部内の負圧が低下するおそれがある。リブ21は、板部材40が規定量以上移動することを制限するストッパーとして機能する。
【0038】
また蓋部材20の内面22には、他の領域に対して、一段低い凹部23が設けられている。図中の2点鎖線は板部材40を示す。凹部23は、板部材40のコーナー部41A(図4参照)に相当する位置に設けられており、その大きさは、板部材40がリブ21の内側の許容範囲において移動したとしても、必ず板部材40のコーナー部41Aと対向する大きさに設定されている。すなわち、板部材40の移動位置に拘わらず、図7(a)の正面図において凹部23が板部材40のコーナー部41Aを必ず網羅するように、つまり図7(a)の図面中において凹部23がコーナー部41Aを必ず含むように、凹部23の大きさが設定されている。この凹部23は、緩衝シート(緩衝部材)60と共に、板部材40の衝撃を吸収するための衝撃吸収部90を形成する。
【0039】
次に、図8(a),(b)を用いて、衝撃吸収部90を形成する緩衝シート(緩衝部材)60について説明する。この緩衝シート60は弾性を有する材料であり、本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂により構成された非常に廉価な可撓性シートである。その厚みは、後述する緩衝効果に応じて設定可能であり、本例のインクタンクの場合には0.01〜1mm程度に設定している。
【0040】
図8(a),(b)は、衝撃吸収部90を形成する緩衝シート60と、蓋部材20と、が接着された状態を示し、図8(a)中の点線は凹部23である。緩衝シート60は、リブ21の内側における蓋部材20の内面22の略全域を覆う形状であり、凹部23以外の内面22上の領域に接着されている。本実施形態においては、緩衝シート60の接着方法として熱溶着を用いている。緩衝シート60の接着箇所は、1つまたは2つの凹部23を挟むように位置する。本例の場合、その接着箇所として、7箇所の接着領域200が設定されている。このように、凹部23を挟むように接着領域200を設定することにより、緩衝シート60は、凹部23の開口を覆う部分にシワを生じることなく取付けられる。したがって、凹部23の直上の緩衝シート60に荷重が加えられた場合に、その緩衝シート60は、凹部23内に向かって弾性変形して緩衝作用を発揮する。
【0041】
また接着領域200は、緩衝シート60が凹部23内に変形したときに、それが凹部23の底面24にまでは達しないように緩衝シート60の位置を規制する。つまり、凹部23を挟むように位置する対の接着領域200間の最短距離Lの範囲において、蓋部材20の表面上の距離LAと、緩衝シート60の長さLBと、の関係がLA>LBに設定されている。距離LAは、対の接着領域200間の蓋部材20の内面に沿った最短距離であり、長さLBは、対の接着領域200間に存在する緩衝シート60の最短の長さである。これらの距離LAおよび長さLBは、いずれも対の接着領域200間の最短距離L以上である。このようなLA>LBの関係により、緩衝シート60が凹部23内に向かうように、つまり蓋部材20の内面に沿うように変形したとしても、それは凹部23の底面24までは達しない。接着領域とは、蓋部材の液体収納室側の内面上に設けられた接合部を意味している。
【0042】
図8(a)におけるLは、同図中左上側に位置する対の接着領域200間を結ぶ最短距離であり、この最短距離の範囲内には、2つの凹部23が存在する。つまり、それらの接着領域200は2つの凹部23を挟むように位置している。また、図8(a)中の中央下側の接着領域200と同図中右下側の接着領域200は、1つの凹部23を挟むように位置し、同様に、図8(a)中の中央下側の接着領域200と同図中左下側の接着領域200は、1つの凹部23を挟むように位置する。いずれの場合においても、LA>LBの関係により、緩衝シート60が凹部23の底面24にまでは達しないように、その変形が規制される。対の接着領域200は、少なくとも1つの凹部23を挟むように位置すればよい。
【0043】
また、LA>LBの関係は、緩衝シート60の弾性変形を考慮して設定する。すなわち、緩衝シート60が弾性変形を伴って凹部23内に向かって変形しても底面24までは達しないように、緩衝シート60の材質により緩衝シート60自体の剛性が弾性変形しやすい程、距離LAと長さLBの差を大きく設定する。また、緩衝シート60が弾性変形によって緩衝作用を発揮できる限りにおいては、長さLBが対の接着領域200間の最短距離Lと同じであってもよい。
【0044】
接着領域200は、緩衝シート60の位置を規制するための接合部であればよく、溶着以外に、緩衝シートを蓋部材に挟持させるなどの方法によって緩衝シート60の位置を規制するものであってもよい。要は、凹部23を挟んで位置するように対を成して、その対の接合部間を結ぶ蓋部材20の内面に沿った最短距離LAと、その対の接合部間に存在する緩衝シート60の最短の長さLBと、の関係がLA>LBであればよい。
【0045】
緩衝シート60が最も撓む箇所は、凹部23の中央部と対向する部分である。緩衝シート60の撓み量は、凹部23の中央部と対向する部分から、凹部23の縁部と対向する部分に向かうにつれて減少する。本例の凹部23は、擂鉢状の形状によってその機能は果たす。凹部23を擂鉢状とした場合には、その凹部の内容積を小さく設定し、蓋部材20の強度低下を最小限に抑えて、外力が加わった際の蓋部材20の変形量を小さく止めることができる。しかしながら、蓋部材20の強度が十分にある場合などにおいて、凹部23の形状は、その限りではない。このように蓋部材20の凹部23と緩衝シート60とを組み合わせることにより、凹部23と、それに対向する緩衝シート60の部分と、によって衝撃吸収部90が形成される。
【0046】
図9(a),(b)は、インクタンクの落下状態における板部材40と衝撃吸収部90との関係の説明図である。同図(a)は、物流時におけるインクタンクの落下前の状態を示す断面図であり、同図(b)は、インクタンクが落下して地面に衝突した状態を示す断面図である。これらの図9(a),(b)は、いずれも図1中のIII−III線に沿う断面図である。
【0047】
図9(a)のような物流時のインクタンクは、インクの充填後、インクが全く消費されていない状態である。この状態において、板部材40は、蓋部材20のリブ21の内側に位置しており、蓋部材20の内面22とはクリアランス300をおいて配されている。板部材40と内面22との間のクリアランス300は、外力により蓋部材20が変形したとしても、それが板部材40に当接しないように設定されている。仮に、外力により蓋部材20が板部材40を押圧してしまうと、インク収納部を収縮させて、その内部の負圧が変化するおそれがある。このような負圧の変化を抑制するために、板部材40と蓋部材20との間には一定のクリアランス300が設定されている。
【0048】
このようなインクタンクがバネ部材30の伸縮方向と直交する方向(図9(a)中の矢印方向)に落下して、それが地面に衝突した場合には、図9(b)のように、インク収納部内に収納されているインク1は、慣性力によりさらに重力方向に移動することになる。その際、インクを収納しているフィルム50が柔らかくて変形自在であるため、インク1は、インクタンクの地面との衝突側(図9(b)中の下側)に集まり、フィルム50側にも移動する。板部材40も同様に、慣性力により地面との衝突側に移動する。板部材40は、さらに、フィルム50側へのインク1の移動により、図9(b)のように、地面との衝突側が蓋部材20側に移動するように傾くことになる。このような一連の動作は、インクタンクが落下した瞬間に起こる瞬時の挙動であるため、板部材40は、落下による高エネルギーを持ったまま、瞬時に且つ極めて激しく蓋部材20と衝突することになる。
【0049】
次に、図10(a),(b)を用いて、インクタンクの落下姿勢および板部材の挙動についてさらに詳細に説明する。同図(a)は、インクタンクの落下姿勢を説明するための斜視図である。同図(b)は、インクタンクが落下した瞬間における板部材40の挙動を説明するために、蓋部材40およびフィルム50を取り外し、かつ筐体10を一部切り欠いた斜視図である。
【0050】
インクタンクは、その平らな外面から落下する場合もあるが、ほとんどの場合は、図10(a)に示すように、若干傾いて角部から落下する。すなわち、略直方形状のインクタンクは、その8つ角部の内、いずれかの角部が最初に地面に衝突するように落下する場合がほとんどである。例えば、図10(a)中の角部Fが地面に衝突した場合、同図(b)に示されるように、板部材40は、インクタンクの角部Fに近いコーナー部G,Hを下方に突き出すように傾いた状態になる。このようにインクタンクが落下した場合には、ほとんど板部材40のコーナー部41Aが最初に蓋部材20の内面22に当たることになる。
【0051】
図11は、蓋部材20の内面22に位置する衝撃吸収部90に、板部材40が衝突した状態を説明するための要部の断面拡大図である。
【0052】
板部材40の位置は、蓋部材20のリブ21により制限されている。前述したように、このような規制範囲内のいかなる位置に板部材40が存在しても、そのコーナー部41Aは、緩衝シート60を介して蓋部材20の凹部23と対向する。つまり、コーナー部41Aは、常に、衝撃吸収部90と対向する位置にある。つまり、板部材40のコーナー部41Aは、必ず衝撃吸収部90に当接することになり、蓋部材20の内面22の他の領域には当接しない。板部材40のコーナー部41Aが衝撃吸収部90に当たると、まず、緩衝シート60の衝撃吸収部90およびその周辺部分が撓むことにより、インクタンクの落下による板部材40の衝撃エネルギーを吸収し始める。そして、緩衝シート60が更に撓むことにより、最終的には、板部材40の衝撃エネルギーを全て吸収して、板部材40の蓋部材20側への移動を食い止める。接着領域200によって緩衝シート60の移動量は制限され、緩衝シートの位置が規制される。よって、緩衝シート60が最も大きく撓んだ状態においても、緩衝シート60、フィルム50、および板部材40は、凹部の底面24にまで到達することはない。
【0053】
したがって、フィルム50は直接リジットな蓋部材20に当たることがなく、板部材40と蓋部材20との間におけるフィルム50の挟み込みは発生せず、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るインクタンクの構成を図12に基づいて説明する。図12は、衝撃緩衝部90を形成する蓋部材20および緩衝シート60の正面図である。
【0055】
本実施形態のインクタンクは、例えインクタンクが平らな外面から落下したとしても、フィルム50の損傷を抑制できる構成となっている。つまり、フィルム50の剛性が低くて、板部材40のコーナー部41Aだけでなく、その稜線部42Aが蓋部材20の内面22と衝突しても、フィルム50が損傷しやすい場合であっても、その損傷を抑制することができる。
【0056】
本実施形態における蓋部材20の凹部23は、前述した第1の実施形態の場合と比較して幅広く設けられている。つまり、板部材40がリブ21の内側の許容範囲において移動したとしても、必ず板部材40のコーナー部41Aおよび稜線部42Aと対向するように、凹部23の大きさが設定されている。すなわち、板部材40の移動位置に拘わらず、図12の正面図において、凹部23が板部材40のコーナー部41Aおよび稜線部42Aを必ず網羅するように、つまり図12の図面中において凹部23がコーナー部41Aおよび稜線部42Aを必ず含むように設定されている。この凹部23と緩衝シート60とにより、前述した実施形態と同様に、板部材40の衝撃を吸収するための衝撃吸収部90が形成される。
【0057】
このような構成により、板部材40の稜線部42Aが蓋部材20の内面22に衝突しても、その衝撃を必ず衝撃吸収部90によって吸収することができるため、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0058】
図13(a),(b)は、前述した図6のような略四角形状の板部材40を備えた場合の構成例であり、図13(a)に、衝撃吸収部90を形成する蓋部材20の凹部23と緩衝シート60を示す。
【0059】
本例における凹部23は、リブ21のすぐ内側に、全周に渡ってリブ21と相似形状となるように環状に形成されている。そのため、前述した図8(a)および図12のように、板部材40の周縁に沿う方向から凹部23を挟むように接着領域200を設定することはできない。そこで本例においては、緩衝シート60を図12のものよりも相似状に若干大きくし、環状の凹部23の内側と外側の位置に接着領域200を設定する。これにより対の接着領域は、凹部23を内側と外側の方向から挟むことができる。凹部23の内側の接着領域200は、蓋部材20の内面22に位置し、凹部23の外側の接着領域200は、リブ21の面(リブ面)25に位置する。図13(b)中に矢印は、接着領域200における緩衝シート60の接着方向を示す。本例の場合、接着領域200は、略四角枠形状の凹部23の短辺部分に対して2組設定し、その長辺部分に対しては3組設定している。このように、一対の接着領域200を略四角枠形状の凹部23の一つの辺部分に対して複数組設定することができる。
【0060】
このように接着領域200によって緩衝シート60の位置を規制することにより、それが撓んだときに凹部23の底面24に当たることを防止して、板部材40の衝突時における衝撃を吸収することができる。よって本構成であっても本発明の効果を発揮して、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るインクタンクの構成を図14(a),(b)および図15を用いて説明する。図14(a)は、本実施形態の衝撃吸収部90を形成する蓋部材20の凹部23および緩衝シート60を示す正面図であり、同図(b)は、同図(a)中のXIV−XIV線に沿う断面図である。図15は、図1中のIII−III線と同様の線に沿う本実施形態のインクタンクの断面図である。
【0062】
前述したように、インクタンクが落下して地面に衝突した際、板部材40は重力方向に移動しながら、その落下衝突側を蓋部材20寄りに移動させるように傾く。その際、板部材40は、最初に蓋部材20の内面22に衝突するのではなく、蓋部材20のリブ21に衝突する場合がある。この場合、フィルム50は、リジットな板部材40とリブ21との間に挟まれて、損傷するおそれがある。本実施形態においては、このように板部材40がリブ21に衝突した場合にも、フィルム50の損傷を抑制する。
【0063】
本実施形態における板部材40の形状は、前述した図6と同様の略四角形状である。勿論、その板部材49は、前述したような十字形状であってもよい。本実施形態の蓋部材20におけるリブ21の形状は、前述した実施形態の図13(a),(b)におけるリブ21と異なる。すなわち本実施形態のリブ21において、4つのコーナー部は、前述した図13(a),(b)のリブ21と同様に比較的厚く形成されているものの、その他の部分は、内周面が距離dだけ後退することにより比較的薄く形成されている。つまり平面四角枠形状のリブ21は、4つのコーナー部に対して、4つの辺部分の内周面(内側壁面)が距離dだけへこみ、それらの辺部分の根元が細くなっている。このようにへこんだ部分は、前述した実施形態における凹部23に相当する。
【0064】
緩衝シート60の形状は、蓋部材20の内面22形状に対応し、リブ21の全ての頂上部26を覆う大きさに設定されている。接着領域200は、凹部23を挟むように、蓋部材20の内面22とリブ21に設定されている。本例の場合、リブ21側の接着領域200は、頂上部26に位置する。前述した実施形態と同様に、凹部23と緩衝シート60によって衝撃吸収部90が形成される。
【0065】
このような構成により、図15に示すように、蓋部材20のリブ21に衝撃吸収部90を設けることができる。この結果、蓋部材20のリブ21と板部材40との衝突が発生したとしても、フィルム50の損傷を抑制することができる。
【0066】
(可撓性フィルム50の成形方法)
ここで本発明の液体収納容器における可撓性フィルム50(以下凸型シートと記載)について更に詳細に説明する。凸型シートは各実施例に共通するものである。
【0067】
本発明の凸型シート50は、その中央部分が平板状の板部材40によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。この凸型シート50は、後述する成形方法によって、折り返し部を有する凸型に成形され、その断面形状はほぼ台形となっている。その凸型シート50は、バネ部材30の付勢方向に向かって突出する凸型に成型される。インクタンクの物流時の振動や落下などの衝撃によって、板部材40と凸型シート50との間にずれが生じることを防止するために、それらの中心部付近は互いに固定されている。本例の場合、板部材40と凸型シート50は樹脂材料により形成されており、それらは熱により溶着されている。そのため、凸型シート50の板部材40と接触する側は、板部材40と同じ材質であることが望ましく、本例では、ポリプロピレンによって形成されている。筐体10の開口周縁部に蓋部材20が取り付けられることにより、凸型シート50が保護される。蓋部材20には大気連通部27が形成されており、これにより、筐体10内におけるインク収容部の外側を大気圧としている。
【0068】
図16から図18を用いて、凸型シート50の成形方法および成形後の厚みの分布について説明する。
【0069】
図16(a)は、凸型シート50を成形するための金型(成形型)110の斜視図、図16(b)は、その金型110の図16(a)中のXVI−XVI線に沿う断面図である。図17は、凸型シート50の成形時の状況を示し、図218は、成形後の凸型シート50の厚み分布を示す。
【0070】
金型110には、図16(a)のように、凸部111が環状に設けられている。凸部111の根元部分における内周側と外周側には、その全周に渡って点在するように、真空引きするための複数のポート112が形成されている。図17において50Aは、凸型シート50を成形材料としての平坦なシート素材である。凸型シート50の成形に際しては、まず、図17中の2点鎖線のように、樹脂製のシート素材(シート材料)50Aの周囲を固定治具120により固定して、そのシート素材50Aにおける凸型シート50の成形部分を平面状とする。その後、充分に加熱されたシート素材50Aに、金型110の外周稜線部113がシート素材50Aに接するまで下降させる。そして、金型110のポート112から真空引きすることにより、シート素材50Aを金型110の成形面に密着させて、シート素材50Aを凸状に成形する。
【0071】
図18は、このような成形方法によって成形された凸型シート50に関して、板部材40と当接する面の厚み分布を模式的に表した図である。厚みの分布は、成形前のシート素材50Aの厚み、および金型110の凸部111の高さなど寸法によって異なる。本例の凸型シート50は、T1の領域の厚みが51μm以上、T2の領域の厚みが40〜50μm、T3の領域の厚みが40μm未満となっている。
【0072】
図19は、このように成形された凸型シート50と板部材40との位置関係を表している。板部材40が位置する凸型シート50の内面は、平面四角形であり、板部材40は、前述した実施形態における図4(a),(b)と同様の十字状である。つまり、その板部材40は、平面略長方形の平板の四隅を切り欠いたような形状となっており、その切り欠き部によって、内側を向く角部41Bが形成されている。前述したように、インクタンクが落下した衝撃によって、板部材40と蓋部材20との間に凸型シート50が挟み込まれた場合には、凸型シート50が損傷するおそれがある。図19中の破線Taは、そのような場合に凸型シート50が損傷するおそれがある厚み部分と、そのおそれがない厚み部分と、の間の境界線、つまり損傷するおそれがあるかないかの厚みの閾値の境界線である。破線Taの内側は、インクタンクの落下時に板部材40と蓋部材20との間に挟み込まれても損傷するおそれの領域であり、一方、破線Taの外側は、損傷するおそれがある領域である。破線Ta上における厚み、つまり損傷するおそれがあるかないかの厚みの閾値は、インクタンクの構成や重量などによって変わるため、実際に落下試験を行って決定する。本例の場合、その厚みの閾値は40μmであったため、破線Taは、前述した図18中の領域T2と領域T3との間に位置する。
【0073】
図20(a),(b)は、このような厚み分布を持つ凸型シート50と、角部を丸めた長方形の板部材130と、の位置関係を表している。図20(a)のような板部材130は、その角部を可能な限り大きく丸めても、その一部が破線Taの外側、つまり厚み閾値よりも薄い領域にはみ出してしまう。そのため、インクタンクの落下によって凸型シート50が損傷するおそれがある。板部材130を破線Taの内側に収めるためには、図20(b)のように、板部材130の長さL1(またはL2)を大幅に小さくする必要がある。
【0074】
図21は、図20(b)のように板部材130の長さを短くした場合の弊害を説明するための断面図である。図21において、実線の板部材130は図20(b)中の板部材であり、点線の板部材130は図20(a)中の板部材である。図21中の実線の板部材130のように、その長さL1を大幅に小さくした場合、その板部材130の支えを失った凸型シート50の部分は、インク収納R内の負圧によってインク収納部R内へ引き込まれる。そのため、インク1がインク収納部R内の中心部方向へ移動して、板部材130を矢印C方向へ押し上げてしまう。その結果、板部材130に追従するバネ部材30も矢印C方向へ伸びてしまい、その分、インク収納部R内の負圧が低下するおそれがある。さらに、インク1を使い切るようにインク収納部Rを収縮させることが難しく、インク残量がなくなるまでインク1を使い切ることが難しくなる。このように、板部材130の長さを短くした場合には数々の弊害が生じるために、インクタンクの製品設計の大幅な見直しが必要となる。
【0075】
一方、本実施形態の板部材40は、図19のように角に切り欠き部が形成された形状であり、その切り欠き部を図18のような凸型シート50の厚み分布に合わせて形成することにより、板部材40を点線Taの内側に収めることができる。つまり、板部材40の長さを短くすることなく、破線Ta上の厚みの閾値よりも厚い凸型シート50の領域内に、板部材40を位置させることができる。このように、板部材40に切り欠き部を設けることにより、板部材40の長さを短く変更した場合の弊害を招くことなく、凸型シート50の損傷を抑制することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態においては、板部材の角部に切り欠き部を設けることにより、インクタンクの大幅な設計変更や、凸型シートの損傷を抑制するための特別な保護シート等の部材を追加することなく、凸型シートの損傷を抑制することができる。また、インクの収容量が大きいインクタンクにおいても、その落下等の衝撃による凸型シートの損傷を抑制して、高い信頼性を確保することができる。また凸型シートは、板部材の切り欠き部に対応する部分の厚みが従来と同様に薄くてもよく、インクを使い切るようにインク収納部Rを収縮させて、インクの使い切り性のよいインクタンクを提供することができる。
【0077】
(他の実施形態)
筐体および可撓性のフィルムは、インクなどの液体を収容可能な液体収容室を形成することができればよく、また供給口は、その液体収納室内の液体を外部に導出することができればよく、それらの形態は前述した実施形態のみに特定されない。またバネ部材は、インク収納部内に負圧を発生するように、可撓性のフィルムを付勢することができればよく、その形状や配備位置は、上述した実施形態のみに特定されない。例えば、上述した実施形態にようにバネ部材をインク収納部内に配備する他、それをインク収納部の外に配備してもよい。
【0078】
また、蓋部材に設ける凹部は、前述した第1および第2の実施形態のようにリブの内側に位置する蓋部材の内面のみ、または前述した第3の実施形態のようにリブの内側壁面のみに特定されない。例えば、それらの両方の面に凹部を設けてもよい。要は、板部材の衝突時に、その板部材の一部(角部や辺部など)が移動する方向に凹部が位置すればよく、その凹部の形状や数は上述した実施形態に特定されない。また、リブは必ずしも環状である必要はなく、板部材の周囲を包囲する位置に点在するものであってもよい。
【0079】
また、フィルムや緩衝シートなどの形状として、平面四角形や十字形などは、略平面四角形や略十字形であればよく、角部が丸くなっていたり、部分的に直線部や曲線部が含まれていてもよい。要は、実質的に四角形や十字形であればよい。また、本発明の液体収納容器をインクジェット記録装置に用いられるインクタンクに適用した場合には、そのインクタンクと、インクジェット記録ヘッドと、を結合したインクジェットカートリックを構成することもできる。そのインクジェット記録ヘッドは、インクタンクから供給されたインクを吐出可能な記録ヘッドであり、インクを吐出するための吐出エネルギー発生手段としては、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。
【0080】
また、凹部の開口に位置する緩衝部材としては、上述したような弾性の緩衝シート以外の部材を用いることができる。要は、凹部の開口に位置し、板部材が衝突したときに、凹部内に向かって弾性変形して緩衝作用を発揮できる部材であればよい。また、緩衝部材の凹部の開口をほぼ密閉することにより、凹部内の空気をエアクッションとして利用することもできる。
【0081】
また本発明は、インク以外の種々の液体を収容するための液体収納容器として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの外観斜視図である。
【図2】図1のインクタンクの分解斜視図である。
【図3】(a)は、インクが満たされていない状態における図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図、(b)は、インクが満たされている状態における図1のインクタンクのIII−III線に沿う断面図である。
【図4】(a)は、図2のインクタンクにおける板部材の正面図、(b)は、同図(a)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2のインクタンクにおける板部材と筐体との位置関係を説明するための要部の正面図である。
【図6】(a)は、板部材の他の例を説明するための正面図、(b)は、同図(a)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(a)は、図2における板部材と蓋部材との関係を説明するための要部の正面図であり、(b)は、同図(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】(a)は、図2における蓋部材と緩衝シートとの位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】(a)は、図2のインクタンクの物流時における断面図、(b)は、そのインクタンクの落下時における断面図である。
【図10】(a)は、図2のインクタンクの落下姿勢を説明するための斜視図、(b)は、そのインクタンクが落下した瞬間を説明するための要部の概略斜視図である。
【図11】図9(b)のXI円部の拡大図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における蓋部材、緩衝シート、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図である。
【図13】(a)は、板部材の他の例と、それに対応する蓋部材および緩衝シートと、の位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】(a)は、本発明の第3の実施形態における蓋部材、緩衝シート、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図、(b)は、同図(a)のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】図14のインクタンクの断面図である。
【0083】
【図16】(a)は、本発明の凸型シートを成形するための金型の斜視図、(b)は、同図(a)のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】本発明における凸型シートの成形方法を説明するための要部の断面図である。
【図18】本発明における凸型シートの厚み分布を説明するための模式図である
【図19】本発明における凸型シートと板部材との位置関係を説明するための正面図である。
【図20】(a)は、一般的な板部材と凸型シートとの位置関係を説明するための正面図、(b)は、一般的な他の板部材と凸型シートとの位置関係を説明するための正面図である。
【図21】図20(b)の板部材を備えたインクタンクの断面図である。
【図22】(a)は、従来のインクタンクにおける落下前の状態を説明するための断面図、(b)は、そのインクタンクが地面に衝突した状態を説明するための断面図である。
【図23】図22のインクタンクにおける筐体、フィルム、および板部材の位置関係を説明するための要部の正面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 インク
10 筐体
20 蓋部材
21 リブ
23 凹部
30 バネ部材
40 板部材
41A,41B コーナー部
42A,42B 稜線部
50 フィルム
52 コーナー部
60 緩衝シート
90 衝撃吸収部
200 接着領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な液体収容室を形成する筐体および可撓性のフィルムと、前記液体収納室内の液体を外部に導出するための供給口と、前記フィルムの内面に位置する板部材と、前記液体収納室内に負圧を発生させるように前記板部材を介して前記フィルムを付勢するバネ部材と、前記フィルムの外側に位置する蓋部材と、を含む液体収納容器において、
前記板部材と対向する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に設けられた凹部と、
前記板部材が衝突したときに前記凹部内に弾性変形するように、前記凹部の開口に位置する緩衝部材と、
を備えることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記凹部の底面までは変形しないことを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記凹部の開口を覆う緩衝シートであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記緩衝シートは、前記凹部を挟む対の箇所において前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に接合されることを特徴とする請求項3に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記板部材と対向する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に、前記板部材の位置を規制するように当該板部材の外側に位置するリブを設けることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記リブは、前記板部材の周囲を包囲する位置に設けられ、
前記凹部は、該リブの内側に位置する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面、および前記リブの内側壁面の内、少なくとも一方に設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記板部材は、外周縁に外側を向く角部が形成された平面形状であり、
前記蓋部材に設けられた前記凹部は、前記板部材の衝突時に前記角部が移動する方向に位置する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記板部材は、外周縁に辺部が形成された平面形状であり、
前記蓋部材に設けられた前記凹部は、前記板部材の衝突時に前記辺部が移動する方向に位置する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記フィルムは、樹脂製の平坦なシート素材を材料として、前記バネ部材の付勢方向に向かって突出する凸型に成型され、
前記板部材は、前記フィルムの前記突出する部分の内面に位置し、かつ前記成型により薄肉となる前記フィルムの部位と対向する部分に切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記フィルムは、前記フィルムの前記突出する部分の内面が平面四角形となるように、樹脂製のシート材料から凸型に成型され、
前記板部材は、前記平面四角形の前記内面の角部と対向する部分に前記切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の液体収納容器。
【請求項11】
前記緩衝部材は、前記蓋部材の前記液体収納室側の内面上に設けられた接合部によって位置が規制される緩衝シートであり、
前記接合部は、前記凹部を挟んで位置するように対を成し、
前記対の接合部間を結ぶ前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に沿った最短距離LAと、前記対の接合部間に存在する前記緩衝シートの最短の長さLBと、の関係は、LA>LBであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項1】
液体を収容可能な液体収容室を形成する筐体および可撓性のフィルムと、前記液体収納室内の液体を外部に導出するための供給口と、前記フィルムの内面に位置する板部材と、前記液体収納室内に負圧を発生させるように前記板部材を介して前記フィルムを付勢するバネ部材と、前記フィルムの外側に位置する蓋部材と、を含む液体収納容器において、
前記板部材と対向する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に設けられた凹部と、
前記板部材が衝突したときに前記凹部内に弾性変形するように、前記凹部の開口に位置する緩衝部材と、
を備えることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記凹部の底面までは変形しないことを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記凹部の開口を覆う緩衝シートであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記緩衝シートは、前記凹部を挟む対の箇所において前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に接合されることを特徴とする請求項3に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記板部材と対向する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に、前記板部材の位置を規制するように当該板部材の外側に位置するリブを設けることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記リブは、前記板部材の周囲を包囲する位置に設けられ、
前記凹部は、該リブの内側に位置する前記蓋部材の前記液体収納室側の内面、および前記リブの内側壁面の内、少なくとも一方に設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記板部材は、外周縁に外側を向く角部が形成された平面形状であり、
前記蓋部材に設けられた前記凹部は、前記板部材の衝突時に前記角部が移動する方向に位置する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記板部材は、外周縁に辺部が形成された平面形状であり、
前記蓋部材に設けられた前記凹部は、前記板部材の衝突時に前記辺部が移動する方向に位置する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記フィルムは、樹脂製の平坦なシート素材を材料として、前記バネ部材の付勢方向に向かって突出する凸型に成型され、
前記板部材は、前記フィルムの前記突出する部分の内面に位置し、かつ前記成型により薄肉となる前記フィルムの部位と対向する部分に切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記フィルムは、前記フィルムの前記突出する部分の内面が平面四角形となるように、樹脂製のシート材料から凸型に成型され、
前記板部材は、前記平面四角形の前記内面の角部と対向する部分に前記切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の液体収納容器。
【請求項11】
前記緩衝部材は、前記蓋部材の前記液体収納室側の内面上に設けられた接合部によって位置が規制される緩衝シートであり、
前記接合部は、前記凹部を挟んで位置するように対を成し、
前記対の接合部間を結ぶ前記蓋部材の前記液体収納室側の内面に沿った最短距離LAと、前記対の接合部間に存在する前記緩衝シートの最短の長さLBと、の関係は、LA>LBであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の液体収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−166251(P2009−166251A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3496(P2008−3496)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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