液体収納装置の製造方法
【課題】液体吸収体を容器へ挿入する際にシワや容器との隙間の発生を抑制できる液体収納装置の製造方法を提供する。
【解決手段】吸収体11の断面寸法が収納空間13の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮し、圧縮された吸収体11を収納空間13に開口12を通じて挿入する際に、吸収体11の収納空間13の四隅に対応するコーナ部分21Cの圧縮を選択的に解放して復元させつつ、容器11内に挿入する。
【解決手段】吸収体11の断面寸法が収納空間13の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮し、圧縮された吸収体11を収納空間13に開口12を通じて挿入する際に、吸収体11の収納空間13の四隅に対応するコーナ部分21Cの圧縮を選択的に解放して復元させつつ、容器11内に挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置などの液体を吐出する液体吐出装置に搭載される、インクなどの液体を収納する液体収納装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの液体吐出装置には、インク等の液体を液体吐出ヘッドに供給する供給系が設けられ、この供給系の上流には液体を収納保持する液体収納装置が着脱自在に接続される。液体収納装置としては、容器と、この容器内に挿入された液体を吸収保持するための毛管力を有するスポンジ等の液体吸収保持部材とを有するものが知られている。このような液体収納装置の容器に液体を注入する際、液体吸収部材表面にシワが存在する場合や、容器の内壁と液体吸収部材との間に隙間が存在する場合には、液体の一部が液体吸収部材に吸収保持されずに、シワや隙間に溜まる可能性がある。このようなシワや隙間に溜まったインクは、使用されることなく残存してしまう可能性がある。また、
液体吸収部材に吸収保持されない液体は、液体収納装置の物流時の姿勢や環境変化によっては、容器から漏れ出す可能性がある。そのため、液体吸収部材が容器に挿入された状態において、シワや隙間が極力発生しないことが望ましい。
【0003】
特許文献1は、シワや隙間の発生を抑制しつつ、液体吸収保持部材を容器に挿入する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、液体吸収保持部材のシワや隙間の抑制が十分でなく、シワや隙間をさらに抑制することへの要請が存在する。
【0006】
本発明は上述の技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、液体吸収体を容器へ挿入する際にシワや容器との隙間の発生を抑制できる液体収納装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体収納装置の製造方法は、液体吐出装置における液体の供給に用いられる液体収納装置の製造方法であって、前記液体収納装置は、液体を吸収保持する吸収体と、
前記吸収体を収納しかつ断面が四角形状を有する収納空間と、吸収体に保持された液体を外部に供給する供給部と、当該収納空間へ前記吸収体を挿入するための開閉可能な開口とを備える容器と、有し、前記吸収体の断面寸法が前記収納空間の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮する工程と、圧縮された前記吸収体を吸収体収納空間に前記開口を通じて挿入する工程と、を有し、前記挿入工程は、前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収体の収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ容器の開口を通じて挿入することで、吸収体へのシワの発生を抑制するとともに吸収体を収納空間の四隅に確実に合致させながら挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収納装置の分解斜視図。
【図2】図1の液体収納装置の断面図。
【図3】液体吸収部材の斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る液体吸収部材の挿入装置の一例の概略図。
【図5】ガイドプレートの構造を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る液体収納装置の製造方法の各工程を示す模式図。
【図7】シワや容器の四隅との間に隙間が発生していない液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図8】シワの発生した液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図9】容器の四隅との間に隙間が発生した液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図10】表1を図示したグラフ。
【図11】表2を図示したグラフ。
【図12】ガイドプレートに切り欠きがない場合の液体吸収部材の容器への挿入工程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(液体収納装置の構成)
図1に本発明の一実施形態に係る液体収納装置の分解斜視図を示し、図2に図1の液体収納装置の断面図を示す。この液体収納装置1は、例えば、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に着脱自在に搭載される。液体収納装置1は、液体を吸収保持する吸収体としての液体吸収部材21、液体吸収部材21を収納する容器11および蓋41を有する。容器11は、断面が四角形状を有する収納空間13、底部に形成された図示しない供給口や液体吐出ヘッドを有する液体吸収部材21に保持された液体を外部に供給する供給部14と、上端部に形成された収納空間13へ液体吸収部材21を挿入するための開口12とを備える。開口12は、蓋41が溶着(振動溶着)されることにより閉鎖される。なお、液体収納装置11の底部とは、液体収納装置11の使用状態、すなわち、液体吐出装置に装着した状態(供給部14を下にした場合)における底部を示す。
【0011】
(液体吸収部材)
図3に液体吸収部材21の斜視図を示す。液体吸収部材21は、液体を液体収納装置11内に吸収保持するための部材であり、複数の繊維シートが積層され熱融着された構造を有する。液体吸収部材21は、繊維シートが繊維シート積層方向Xに積層され熱融着されており、直方体形状(断面形状が四角形状)を有する。すなわち、図1に示すように、液体吸収部材21は、繊維シートの積層面が容器11の底面に対して略垂直な方向を向くように、容器11内に収容され、積層方向と挿入方向とは異なる。なお、以下の説明において、形式的に繊維シート積層方向をX方向として、繊維シートの短辺に沿った方向をZ方向、長辺に沿った方向をY方向と示す。
【0012】
繊維シートの材料としては、毛管力により液体を保持できる材料が好ましい。なお、毛管力は液体に対する濡れ性、内部に存在する空孔の大きさや空孔の割合により規定される。また、圧縮された液体吸収部材21を容器11内に挿入する際、挿入後圧縮を解放することにより形状が復元するように、圧縮復元性を有する材料が好ましい。これらの条件を満たす材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維、ウレタンフォーム、ポリエステルフェルト繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。液体吸収部材21の作製方法としては、まず、綿状の繊維材料を解きほぐした後、ローラーでシート状にする。その後、シートを積層し厚さを整えながら加熱して繊維を熱融着する。積層し熱融着したシート状の繊維を所定の大きさとなるように型抜きし、液体吸収部材21を得る。なお繊維シートの厚さ、積層数は特に限定されず、繊維材料、用いる液体の種類等により適宜選択することができる。
【0013】
(液体吸収部材挿入装置の構成)
図4に、液体吸収部材21を容器11内に挿入する挿入装置の一例の概略図を示す。この挿入装置は、対向する一対の第1のガイドプレート51A,51Bと、対向する一対の第2のガイドプレート52A,52Bと、を有する。第1のガイドプレート51Aおよびこれに隣接する第2のガイドプレート52Aは、治具80に固定されて保持部材61により保持されている。第1のガイドプレート51Bは、保持部材63により保持され、この保持部材63には図示しないエアシリンダのロッド73が連結されている。第2のガイドプレート52Bは、保持部材62により保持され、この保持部材62には図示しないエアシリンダのロッド72が連結されている。また、治具80の下方には、ステージ81が設けられ、このステージ81上に容器11が設置される。
【0014】
第1のガイドプレート51A,51Bは、液体吸収部材21の互いに対向する一対の短辺側の側面(第1の側面)の各々を全面的に押圧可能な押圧面51Ap,51Bpをそれぞれ有する。第2のガイドプレート52A,52Bは、液体吸収部材21の互いに対向する一対の長辺側の側面(第2の側面)の各々を全面的に押圧可能な押圧面52Ap,52Bpをそれぞれ有する。また、図5(a)、(b)に示すように、第1のガイドプレート51A,51B、および、第2のガイドプレート52A,52Bは、後述する液体吸収部材21の容器11への挿入方向の先端部51Fおよび52Fの両側には、切り欠き部51C,52Cがそれぞれ形成されている。
【0015】
この挿入装置は、各エアシリンダのロッド72,73を延ばして、保持部材62、63を液体吸収部材21に対して前進させることにより、液体吸収部材21の4つの側面を押圧面51Ap,51Bp,52Ap,52Bpで押圧し、断面形状の寸法を圧縮することができるように構成されている。また、この挿入装置は、図示しないが、ステージ81上の容器11に圧縮された液体吸収部材21を上から押圧する押圧部材を備え、この押圧部材も、図示しないエアシリンダにより駆動される。
【0016】
次に本実施形態の液体収納装置の製造方法における液体吸収部材の圧縮、挿入工程について図6を参照して説明する。図6(a)は液体吸収部材21の圧縮前の上面図、図6(b)はX方向への圧縮時の上面図、図6(c)はY方向23への圧縮時の上面図を示す。また、図6(d)は容器への挿入時のY方向に沿った断面図、図6(e)は容器への挿入時のX方向に沿った断面図、図6(f)は容器11への挿入時の斜視図を示す。また、図6(g)は容器11への挿入時における液体吸収部材21の上面図を示す。
【0017】
まず、図6(a)に示すように、液体吸収部材21を、第1のガイドプレート51A,51Bの間、および、第2のガイドプレート52A,52Bの間に配置する。なお、このとき、液体吸収部材21は下方に落下しないように図示しない治具により保持されている。次に、図6(b)に示すように、保持部材62をX方向に全身させ、液体吸収部材21のX方向の寸法を圧縮させる。次に、図6(c)に示すように、保持部材63をY方向に前進させ、液体吸収部材21をY方向において圧縮する。なお、圧縮後の液体吸収部材21のXおよびY方向の寸法は、容器11の断面寸法よりも小さくなっており、それぞれ、第1のガイドプレート51A,51Bの間隔、および、第2のガイドプレート52A,52Bの間隔により規定される。この状態で、液体吸収部材21は、第1のガイドプレート51A,51Bおよび第2のガイドプレート52A,52Bにより保持され、上記した治具で保持しないでも、落下しない。
【0018】
次いで、図6(d)ないし(f)に示すように、保持部材62,63および80の全体を液体吸収部材21の容器11へ挿入する挿入方向に下降させる。そして、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bの先端部51F,52Fの一部を、容器11の開口13を通じて収納空間13内に挿入する。このとき、図6(f)に示すように、容器11と各ガイドプレートとの間には、容器11の四隅に切り欠き部51Cおよび52Cによる開口が形成される。
【0019】
次いで、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bの先端部51F,52Fを容器11内に挿入した状態で、図示しない上下方向に可動する挿入部材を用いて液体吸収部材21の上面を、図6(f)のP方向に押圧する。これにより、圧縮された液体吸収部材21は、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bによりガイドされながら、容器11に向けて移動する。そして、液体吸収部材21が切り欠き部51Cおよび52Cによる開口に達すると、図6(g)に示すように、液体吸収部材21の容器11の収納空間13の四隅にそれぞれ対応するコーナ部分21Cの圧縮が選択的に解放され、コーナ部分21Cの形状が復元する。これにより、液体吸収部材21のコーナ部分21Cは、切り欠き部51Cおよび52Cによる開口を通じて外部にはみ出す。このはみ出したコーナ部分21Cは、形状が復元されているので、容器11の四隅の内壁を擦りながら挿入される。すなわち、はみ出したコーナ部分21Cは、容器11の四隅の内壁によりガイドされながら、容器11内に挿入されていく。一方、液体吸収部材21のガイドプレートの切り欠き部51Cおよび52Cを通過しない側面は、ガイドプレートの先端部51F、52Fを通過すると、圧縮が解放されて形状が復元し、形状が復元した状態で容器11内に挿入されていく。このように、コーナ部分21Cの圧縮を他の部分より先に選択的に解放して、当該コーナ部分21Cに集中する応力を逃がすことにより、容器11の四隅にコーナ部分21Cを正確に合致させ、かつ、コーナ部分21C以外におけるシワの発生を抑制できる。
【0020】
ここで、切り欠き部を備えていない、一対の対向するガイドプレート151と一対の対向するガイドプレート152を用いて液体吸収部材21を圧縮した場合を図12に示す。図12(a)に示すように、ガイドプレート151,152の先端部151F,152Fを容器11内に挿入した状態で、液体吸収部材21をP方向に移動させたとしても、図12(b)に示すように、コーナ部21Cはガイドプレート151,152からはみ出さない。このため、コーナ部21Cに応力が作用した状態で、液体吸収部材21が容器11内に挿入されるので、応力により、コーナ部21Cが容器11の四隅に合致せず、また、液体吸収部材21の側面にシワが生じやすい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例において液体収納装置1の具体的な構成と、液体吸収部材の圧縮、挿入工程について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
本実施例で使用した容器11の内寸は、縦50×横25×高さ30[mm]である。液体吸収部材21の寸法は、縦(Y)50×横(X)30×高さ(Z)30[mm]であり、本実施例ではポリプロピレン(PP)繊維を積層し熱融着したものを使用した。液体吸収部材21は、X方向およびY方向に圧縮されて容器11に挿入される。
[検討1]圧縮された液体吸収部材21に対して、図5に示した第1および第2のガイドプレート51,52の全幅L1に対する先端部51F、52Fの幅L2の割合を、変化させた。具体的には、面積の大きい第2のガイドプレート52は71.1[%]〜100[%]まで変化させ、面積の小さい第2のガイドプレート51は51.2[%]〜100[%]まで変化させて容器11に挿入した例を表1に示す。液体吸収部材21の挿入を終了した状態で、シワや容器11の四隅との隙間の発生の有無を確認した。
なお、図5に示した切り欠き部51C,52Cの寸法L3は、液体吸収部材21のX方向の寸法に対する割合を13.3[%](切り欠き部51C,52Cの寸法L3を4.0[mm])とした。シワや隙間の発生有無の確認方法として、容器11に透明部材を用いる場合は、液体吸収部材21を挿入後に容器11の側面からシワや隙間の有無を確認することができる。また、シワや隙間が発生している液体吸収部材21に所定量の液体(インク)を注入すると、シワや隙間から液体(インク)が液体吸収部材の上面に這い上がろうとするため、液体の注入状態に差が生じる。そのため、着色された容器の場合にシワや隙間の発生有無を確認する方法として、液体(インク)注入された容器11をX線CTで撮影し、液体注入状態を観察することで、シワや隙間の有無を確認できる。本実施例では、透明部材により成形された容器を用い、側面から観察することで、シワや隙間の有無を確認した。図7(a)は、容器11に液体吸収部材21をシワや隙間無く挿入した状態を上面から見た模式図である。図7(b)は、図7(a)の状態の液体吸収部材を、透明部材の容器越しに見た模式図である。図8(a)はシワ71が発生した状態を上面から、図8(b)は透明部材の容器越しに液体吸収部材を見た模式図である。図9(a)は容器11の四隅に隙間72が発生した状態を上面から、図9(b)は透明部材の容器11越しに液体吸収部材21を見た模式図である。
【0022】
表1、および、表1をグラフ化したものである図10より、面積の相対的に小さい第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合が、51.2[%](先端部寸法11.0[mm])の場合、挿入後にシワが発生した。これは、ガイドプレートの先端部寸法を小さくするにしたがって、液体吸収部材21のはみ出し量が増加し、挿入時に液体吸収部材21の四隅が容器11に当たる量が増えすぎることで、挿入時にはみ出した部分21Cに応力が集中し、シワ発生に繋がったためと考えられる。
【0023】
また、面積の相対的に大きい第2のガイドプレート52の先端部の寸法の割合が100[%]の場合、容器11の四隅との間に隙間が発生した。これは、面積の相対的に小さいガイドプレート51側は、液体吸収部材21がはみ出して擦りながら挿入できているが、面積の相対的に大きいガイドプレート52側は全くはみ出していないため、容器11の四隅の壁面に触れないためと考えられる。また、面積の小さい第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合が100[%]場合においても、容器11の四隅との間に隙間が発生した。これは、第2のガイドプレート52側は、液体吸収部材21がはみ出して擦りながら挿入できているが、第1のガイドプレート51側は全くはみ出していないため、容器11と接触しないためと考えられる。
【0024】
さらに、第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合と、第2のガイドプレート52の先端部の割合との間に、20[%]以上差がある場合においても、隙間が発生した。これは、隣接するガイドプレート間に先端部の寸法の割合の差が大きいため、液体吸収部材21のはみ出し方に大きな差が生じ、挿入時に容器11の四隅を擦る量に偏りを生じたためと考えられる。
【0025】
その他の領域においては、シワや隙間の発生は見られなかった。これは、先端部の寸法を短くすることで、液体吸収部材21のコーナ部21Cが十分にはみ出し、また、隣接するガイドプレート同士の液体吸収部材21のはみ出し量に差が少なく、容器11の四隅の内壁を大きな偏り無く挿入することができるためである。また、はみ出すことで一時的に応力が分散するため、シワ発生を抑制することができるためである。
【0026】
つまり、液体吸収部材の挿入時におけるシワや容器四隅との隙間の発生抑制のためには、ガイドプレートの先端部の寸法が短い方が良く、隣接するガイドプレート同士において、先端部寸法の割合の差は少ない方が良い。
【0027】
【表1】
【0028】
×:シワ発生 ▲:タンク四隅に隙間発生 ○:シワ/隙間無し
[検討2]検討2では、液体吸収部材21の挿入時のはみ出し量に影響する、容器11の寸法とガイドプレートの切り欠き部の寸法の範囲の検討を行う。
【0029】
検討1のように、ガイドプレートの先端部の寸法を変更すると共に、容器11の寸法とガイドプレートの切り欠き部の寸法L3の割合(切り欠き部の寸法L3を、液体吸収部材21のX方向の寸法で割った値)を0[%]〜33.3[%]まで変化させ、挿入した際のシワまたは隙間の発生の有無を確認した。なお、圧縮された液体吸収部材21に対して、ガイドプレート51,52の先端部51F、52Fの寸法の割合(先端部の寸法L2を液体吸収部材の圧縮された際の寸法で割った値)を、第2のガイドプレート52は79.4[%](先端部の寸法38.5[mm])、第1のガイドプレート51は69.8[%](先端部の寸法15.0[mm])とした。
【0030】
シワまたは隙間の発生の有無の結果を表2と表2のグラフを図11に示す。なお、シワや隙間の発生有無の確認方法は、検討1と同様の方法で確認した。容器11に挿入した際にシワや四隅の隙間を発生させないためには、ガイドプレートの切り欠き部の寸法L3を、液体吸収部材21の上下方向(Z方向)の寸法の6.7[%]以上26.7[%]以下(2.0[mm]以上8.0[mm]以下)であることが望ましい。
【0031】
一方、ガイドプレートの切り欠き部寸法L3を0[%](0[mm])では、容器に挿入した際に四隅に隙間が発生してしまう。これは、液体吸収部材21が挿入直前にはみ出すことが無く、四隅の内壁を擦りながら挿入することができないためである。さらにガイドプレートの切り欠き部の寸法L3を33.3[%]以上(10.0[mm]以上)でも、容器11に挿入した際にシワが発生してしまう。これは、液体吸収部材11のはみ出し量が多くなり、挿入時に容器11の内壁に当たる量が増えて、はみ出したコーナ部分21Cに一時的に応力が集中し、シワ発生に繋がるためであると考えられる。
【0032】
【表2】
【0033】
×:シワ発生 ▲:タンク四隅に隙間発生 ○:シワ/隙間無し
以上、液体吸収部材21の圧縮寸法に対するガイド寸法の割合を、第2のガイドプレート52は71.1[%]以上93.8[%]以下(ガイド寸法34.5[mm]以上45.5[mm]以下)にし、第1のガイドプレート51は60.5[%]以上88.4[%]以下(ガイド寸法13.0[mm]以上19.0[mm]以下)にし、更に、寸法の割合の差を20[%]以内にし、液体吸収部材21の上下方向(Z方向)の寸法に対するガイドプレートの切り欠き部の寸法L3の割合を6.7[%]以上26.7[%]以下(切り欠き部寸法2.0[mm]以上4.0[mm]以下)にすることで、容器11への挿入時におけるシワ発生や該容器の四隅との間の隙間発生を抑制することができる。なお、シワや容器の四隅との隙間の発生を防止するのに有効なガイドプレートの先端部の寸法L2の割合や切り欠き部の寸法L3の割合の好ましい範囲は、液体吸収部材21を構成する繊維シートの材料により変動する。したがって、材料によっては表1や表2に示すシワ/隙間無しの領域が拡大する場合もある。
【0034】
なお、上記実施形態では、切り欠き部の各辺が互いに直角になるように形成したが、これに限定されるわけではなく、切り欠き部の形状を任意に変更できる。
【0035】
また、上記実施形態では、切り欠き部を備えてガイドプレートを用いる場合を例に挙げたが、これに限定されるわけではなく、吸収体の収納空間の四隅に対応するコーナ部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ容器内に吸収体を挿入できる構造であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1…液体収納装置
11…容器
51,51A,51B…第1のガイドプレート
51F…先端部
51C…切り欠き部
52,52A,52B…第2のガイドプレート
52F…先端部
52C…切り欠き部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置などの液体を吐出する液体吐出装置に搭載される、インクなどの液体を収納する液体収納装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの液体吐出装置には、インク等の液体を液体吐出ヘッドに供給する供給系が設けられ、この供給系の上流には液体を収納保持する液体収納装置が着脱自在に接続される。液体収納装置としては、容器と、この容器内に挿入された液体を吸収保持するための毛管力を有するスポンジ等の液体吸収保持部材とを有するものが知られている。このような液体収納装置の容器に液体を注入する際、液体吸収部材表面にシワが存在する場合や、容器の内壁と液体吸収部材との間に隙間が存在する場合には、液体の一部が液体吸収部材に吸収保持されずに、シワや隙間に溜まる可能性がある。このようなシワや隙間に溜まったインクは、使用されることなく残存してしまう可能性がある。また、
液体吸収部材に吸収保持されない液体は、液体収納装置の物流時の姿勢や環境変化によっては、容器から漏れ出す可能性がある。そのため、液体吸収部材が容器に挿入された状態において、シワや隙間が極力発生しないことが望ましい。
【0003】
特許文献1は、シワや隙間の発生を抑制しつつ、液体吸収保持部材を容器に挿入する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、液体吸収保持部材のシワや隙間の抑制が十分でなく、シワや隙間をさらに抑制することへの要請が存在する。
【0006】
本発明は上述の技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、液体吸収体を容器へ挿入する際にシワや容器との隙間の発生を抑制できる液体収納装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体収納装置の製造方法は、液体吐出装置における液体の供給に用いられる液体収納装置の製造方法であって、前記液体収納装置は、液体を吸収保持する吸収体と、
前記吸収体を収納しかつ断面が四角形状を有する収納空間と、吸収体に保持された液体を外部に供給する供給部と、当該収納空間へ前記吸収体を挿入するための開閉可能な開口とを備える容器と、有し、前記吸収体の断面寸法が前記収納空間の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮する工程と、圧縮された前記吸収体を吸収体収納空間に前記開口を通じて挿入する工程と、を有し、前記挿入工程は、前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収体の収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ容器の開口を通じて挿入することで、吸収体へのシワの発生を抑制するとともに吸収体を収納空間の四隅に確実に合致させながら挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収納装置の分解斜視図。
【図2】図1の液体収納装置の断面図。
【図3】液体吸収部材の斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る液体吸収部材の挿入装置の一例の概略図。
【図5】ガイドプレートの構造を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る液体収納装置の製造方法の各工程を示す模式図。
【図7】シワや容器の四隅との間に隙間が発生していない液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図8】シワの発生した液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図9】容器の四隅との間に隙間が発生した液体吸収部材を、透明な容器の上面及び側面から観察した模式図である。
【図10】表1を図示したグラフ。
【図11】表2を図示したグラフ。
【図12】ガイドプレートに切り欠きがない場合の液体吸収部材の容器への挿入工程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(液体収納装置の構成)
図1に本発明の一実施形態に係る液体収納装置の分解斜視図を示し、図2に図1の液体収納装置の断面図を示す。この液体収納装置1は、例えば、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に着脱自在に搭載される。液体収納装置1は、液体を吸収保持する吸収体としての液体吸収部材21、液体吸収部材21を収納する容器11および蓋41を有する。容器11は、断面が四角形状を有する収納空間13、底部に形成された図示しない供給口や液体吐出ヘッドを有する液体吸収部材21に保持された液体を外部に供給する供給部14と、上端部に形成された収納空間13へ液体吸収部材21を挿入するための開口12とを備える。開口12は、蓋41が溶着(振動溶着)されることにより閉鎖される。なお、液体収納装置11の底部とは、液体収納装置11の使用状態、すなわち、液体吐出装置に装着した状態(供給部14を下にした場合)における底部を示す。
【0011】
(液体吸収部材)
図3に液体吸収部材21の斜視図を示す。液体吸収部材21は、液体を液体収納装置11内に吸収保持するための部材であり、複数の繊維シートが積層され熱融着された構造を有する。液体吸収部材21は、繊維シートが繊維シート積層方向Xに積層され熱融着されており、直方体形状(断面形状が四角形状)を有する。すなわち、図1に示すように、液体吸収部材21は、繊維シートの積層面が容器11の底面に対して略垂直な方向を向くように、容器11内に収容され、積層方向と挿入方向とは異なる。なお、以下の説明において、形式的に繊維シート積層方向をX方向として、繊維シートの短辺に沿った方向をZ方向、長辺に沿った方向をY方向と示す。
【0012】
繊維シートの材料としては、毛管力により液体を保持できる材料が好ましい。なお、毛管力は液体に対する濡れ性、内部に存在する空孔の大きさや空孔の割合により規定される。また、圧縮された液体吸収部材21を容器11内に挿入する際、挿入後圧縮を解放することにより形状が復元するように、圧縮復元性を有する材料が好ましい。これらの条件を満たす材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維、ウレタンフォーム、ポリエステルフェルト繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。液体吸収部材21の作製方法としては、まず、綿状の繊維材料を解きほぐした後、ローラーでシート状にする。その後、シートを積層し厚さを整えながら加熱して繊維を熱融着する。積層し熱融着したシート状の繊維を所定の大きさとなるように型抜きし、液体吸収部材21を得る。なお繊維シートの厚さ、積層数は特に限定されず、繊維材料、用いる液体の種類等により適宜選択することができる。
【0013】
(液体吸収部材挿入装置の構成)
図4に、液体吸収部材21を容器11内に挿入する挿入装置の一例の概略図を示す。この挿入装置は、対向する一対の第1のガイドプレート51A,51Bと、対向する一対の第2のガイドプレート52A,52Bと、を有する。第1のガイドプレート51Aおよびこれに隣接する第2のガイドプレート52Aは、治具80に固定されて保持部材61により保持されている。第1のガイドプレート51Bは、保持部材63により保持され、この保持部材63には図示しないエアシリンダのロッド73が連結されている。第2のガイドプレート52Bは、保持部材62により保持され、この保持部材62には図示しないエアシリンダのロッド72が連結されている。また、治具80の下方には、ステージ81が設けられ、このステージ81上に容器11が設置される。
【0014】
第1のガイドプレート51A,51Bは、液体吸収部材21の互いに対向する一対の短辺側の側面(第1の側面)の各々を全面的に押圧可能な押圧面51Ap,51Bpをそれぞれ有する。第2のガイドプレート52A,52Bは、液体吸収部材21の互いに対向する一対の長辺側の側面(第2の側面)の各々を全面的に押圧可能な押圧面52Ap,52Bpをそれぞれ有する。また、図5(a)、(b)に示すように、第1のガイドプレート51A,51B、および、第2のガイドプレート52A,52Bは、後述する液体吸収部材21の容器11への挿入方向の先端部51Fおよび52Fの両側には、切り欠き部51C,52Cがそれぞれ形成されている。
【0015】
この挿入装置は、各エアシリンダのロッド72,73を延ばして、保持部材62、63を液体吸収部材21に対して前進させることにより、液体吸収部材21の4つの側面を押圧面51Ap,51Bp,52Ap,52Bpで押圧し、断面形状の寸法を圧縮することができるように構成されている。また、この挿入装置は、図示しないが、ステージ81上の容器11に圧縮された液体吸収部材21を上から押圧する押圧部材を備え、この押圧部材も、図示しないエアシリンダにより駆動される。
【0016】
次に本実施形態の液体収納装置の製造方法における液体吸収部材の圧縮、挿入工程について図6を参照して説明する。図6(a)は液体吸収部材21の圧縮前の上面図、図6(b)はX方向への圧縮時の上面図、図6(c)はY方向23への圧縮時の上面図を示す。また、図6(d)は容器への挿入時のY方向に沿った断面図、図6(e)は容器への挿入時のX方向に沿った断面図、図6(f)は容器11への挿入時の斜視図を示す。また、図6(g)は容器11への挿入時における液体吸収部材21の上面図を示す。
【0017】
まず、図6(a)に示すように、液体吸収部材21を、第1のガイドプレート51A,51Bの間、および、第2のガイドプレート52A,52Bの間に配置する。なお、このとき、液体吸収部材21は下方に落下しないように図示しない治具により保持されている。次に、図6(b)に示すように、保持部材62をX方向に全身させ、液体吸収部材21のX方向の寸法を圧縮させる。次に、図6(c)に示すように、保持部材63をY方向に前進させ、液体吸収部材21をY方向において圧縮する。なお、圧縮後の液体吸収部材21のXおよびY方向の寸法は、容器11の断面寸法よりも小さくなっており、それぞれ、第1のガイドプレート51A,51Bの間隔、および、第2のガイドプレート52A,52Bの間隔により規定される。この状態で、液体吸収部材21は、第1のガイドプレート51A,51Bおよび第2のガイドプレート52A,52Bにより保持され、上記した治具で保持しないでも、落下しない。
【0018】
次いで、図6(d)ないし(f)に示すように、保持部材62,63および80の全体を液体吸収部材21の容器11へ挿入する挿入方向に下降させる。そして、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bの先端部51F,52Fの一部を、容器11の開口13を通じて収納空間13内に挿入する。このとき、図6(f)に示すように、容器11と各ガイドプレートとの間には、容器11の四隅に切り欠き部51Cおよび52Cによる開口が形成される。
【0019】
次いで、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bの先端部51F,52Fを容器11内に挿入した状態で、図示しない上下方向に可動する挿入部材を用いて液体吸収部材21の上面を、図6(f)のP方向に押圧する。これにより、圧縮された液体吸収部材21は、ガイドプレート51A,51B,52A,52Bによりガイドされながら、容器11に向けて移動する。そして、液体吸収部材21が切り欠き部51Cおよび52Cによる開口に達すると、図6(g)に示すように、液体吸収部材21の容器11の収納空間13の四隅にそれぞれ対応するコーナ部分21Cの圧縮が選択的に解放され、コーナ部分21Cの形状が復元する。これにより、液体吸収部材21のコーナ部分21Cは、切り欠き部51Cおよび52Cによる開口を通じて外部にはみ出す。このはみ出したコーナ部分21Cは、形状が復元されているので、容器11の四隅の内壁を擦りながら挿入される。すなわち、はみ出したコーナ部分21Cは、容器11の四隅の内壁によりガイドされながら、容器11内に挿入されていく。一方、液体吸収部材21のガイドプレートの切り欠き部51Cおよび52Cを通過しない側面は、ガイドプレートの先端部51F、52Fを通過すると、圧縮が解放されて形状が復元し、形状が復元した状態で容器11内に挿入されていく。このように、コーナ部分21Cの圧縮を他の部分より先に選択的に解放して、当該コーナ部分21Cに集中する応力を逃がすことにより、容器11の四隅にコーナ部分21Cを正確に合致させ、かつ、コーナ部分21C以外におけるシワの発生を抑制できる。
【0020】
ここで、切り欠き部を備えていない、一対の対向するガイドプレート151と一対の対向するガイドプレート152を用いて液体吸収部材21を圧縮した場合を図12に示す。図12(a)に示すように、ガイドプレート151,152の先端部151F,152Fを容器11内に挿入した状態で、液体吸収部材21をP方向に移動させたとしても、図12(b)に示すように、コーナ部21Cはガイドプレート151,152からはみ出さない。このため、コーナ部21Cに応力が作用した状態で、液体吸収部材21が容器11内に挿入されるので、応力により、コーナ部21Cが容器11の四隅に合致せず、また、液体吸収部材21の側面にシワが生じやすい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例において液体収納装置1の具体的な構成と、液体吸収部材の圧縮、挿入工程について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
本実施例で使用した容器11の内寸は、縦50×横25×高さ30[mm]である。液体吸収部材21の寸法は、縦(Y)50×横(X)30×高さ(Z)30[mm]であり、本実施例ではポリプロピレン(PP)繊維を積層し熱融着したものを使用した。液体吸収部材21は、X方向およびY方向に圧縮されて容器11に挿入される。
[検討1]圧縮された液体吸収部材21に対して、図5に示した第1および第2のガイドプレート51,52の全幅L1に対する先端部51F、52Fの幅L2の割合を、変化させた。具体的には、面積の大きい第2のガイドプレート52は71.1[%]〜100[%]まで変化させ、面積の小さい第2のガイドプレート51は51.2[%]〜100[%]まで変化させて容器11に挿入した例を表1に示す。液体吸収部材21の挿入を終了した状態で、シワや容器11の四隅との隙間の発生の有無を確認した。
なお、図5に示した切り欠き部51C,52Cの寸法L3は、液体吸収部材21のX方向の寸法に対する割合を13.3[%](切り欠き部51C,52Cの寸法L3を4.0[mm])とした。シワや隙間の発生有無の確認方法として、容器11に透明部材を用いる場合は、液体吸収部材21を挿入後に容器11の側面からシワや隙間の有無を確認することができる。また、シワや隙間が発生している液体吸収部材21に所定量の液体(インク)を注入すると、シワや隙間から液体(インク)が液体吸収部材の上面に這い上がろうとするため、液体の注入状態に差が生じる。そのため、着色された容器の場合にシワや隙間の発生有無を確認する方法として、液体(インク)注入された容器11をX線CTで撮影し、液体注入状態を観察することで、シワや隙間の有無を確認できる。本実施例では、透明部材により成形された容器を用い、側面から観察することで、シワや隙間の有無を確認した。図7(a)は、容器11に液体吸収部材21をシワや隙間無く挿入した状態を上面から見た模式図である。図7(b)は、図7(a)の状態の液体吸収部材を、透明部材の容器越しに見た模式図である。図8(a)はシワ71が発生した状態を上面から、図8(b)は透明部材の容器越しに液体吸収部材を見た模式図である。図9(a)は容器11の四隅に隙間72が発生した状態を上面から、図9(b)は透明部材の容器11越しに液体吸収部材21を見た模式図である。
【0022】
表1、および、表1をグラフ化したものである図10より、面積の相対的に小さい第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合が、51.2[%](先端部寸法11.0[mm])の場合、挿入後にシワが発生した。これは、ガイドプレートの先端部寸法を小さくするにしたがって、液体吸収部材21のはみ出し量が増加し、挿入時に液体吸収部材21の四隅が容器11に当たる量が増えすぎることで、挿入時にはみ出した部分21Cに応力が集中し、シワ発生に繋がったためと考えられる。
【0023】
また、面積の相対的に大きい第2のガイドプレート52の先端部の寸法の割合が100[%]の場合、容器11の四隅との間に隙間が発生した。これは、面積の相対的に小さいガイドプレート51側は、液体吸収部材21がはみ出して擦りながら挿入できているが、面積の相対的に大きいガイドプレート52側は全くはみ出していないため、容器11の四隅の壁面に触れないためと考えられる。また、面積の小さい第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合が100[%]場合においても、容器11の四隅との間に隙間が発生した。これは、第2のガイドプレート52側は、液体吸収部材21がはみ出して擦りながら挿入できているが、第1のガイドプレート51側は全くはみ出していないため、容器11と接触しないためと考えられる。
【0024】
さらに、第1のガイドプレート51の先端部の寸法の割合と、第2のガイドプレート52の先端部の割合との間に、20[%]以上差がある場合においても、隙間が発生した。これは、隣接するガイドプレート間に先端部の寸法の割合の差が大きいため、液体吸収部材21のはみ出し方に大きな差が生じ、挿入時に容器11の四隅を擦る量に偏りを生じたためと考えられる。
【0025】
その他の領域においては、シワや隙間の発生は見られなかった。これは、先端部の寸法を短くすることで、液体吸収部材21のコーナ部21Cが十分にはみ出し、また、隣接するガイドプレート同士の液体吸収部材21のはみ出し量に差が少なく、容器11の四隅の内壁を大きな偏り無く挿入することができるためである。また、はみ出すことで一時的に応力が分散するため、シワ発生を抑制することができるためである。
【0026】
つまり、液体吸収部材の挿入時におけるシワや容器四隅との隙間の発生抑制のためには、ガイドプレートの先端部の寸法が短い方が良く、隣接するガイドプレート同士において、先端部寸法の割合の差は少ない方が良い。
【0027】
【表1】
【0028】
×:シワ発生 ▲:タンク四隅に隙間発生 ○:シワ/隙間無し
[検討2]検討2では、液体吸収部材21の挿入時のはみ出し量に影響する、容器11の寸法とガイドプレートの切り欠き部の寸法の範囲の検討を行う。
【0029】
検討1のように、ガイドプレートの先端部の寸法を変更すると共に、容器11の寸法とガイドプレートの切り欠き部の寸法L3の割合(切り欠き部の寸法L3を、液体吸収部材21のX方向の寸法で割った値)を0[%]〜33.3[%]まで変化させ、挿入した際のシワまたは隙間の発生の有無を確認した。なお、圧縮された液体吸収部材21に対して、ガイドプレート51,52の先端部51F、52Fの寸法の割合(先端部の寸法L2を液体吸収部材の圧縮された際の寸法で割った値)を、第2のガイドプレート52は79.4[%](先端部の寸法38.5[mm])、第1のガイドプレート51は69.8[%](先端部の寸法15.0[mm])とした。
【0030】
シワまたは隙間の発生の有無の結果を表2と表2のグラフを図11に示す。なお、シワや隙間の発生有無の確認方法は、検討1と同様の方法で確認した。容器11に挿入した際にシワや四隅の隙間を発生させないためには、ガイドプレートの切り欠き部の寸法L3を、液体吸収部材21の上下方向(Z方向)の寸法の6.7[%]以上26.7[%]以下(2.0[mm]以上8.0[mm]以下)であることが望ましい。
【0031】
一方、ガイドプレートの切り欠き部寸法L3を0[%](0[mm])では、容器に挿入した際に四隅に隙間が発生してしまう。これは、液体吸収部材21が挿入直前にはみ出すことが無く、四隅の内壁を擦りながら挿入することができないためである。さらにガイドプレートの切り欠き部の寸法L3を33.3[%]以上(10.0[mm]以上)でも、容器11に挿入した際にシワが発生してしまう。これは、液体吸収部材11のはみ出し量が多くなり、挿入時に容器11の内壁に当たる量が増えて、はみ出したコーナ部分21Cに一時的に応力が集中し、シワ発生に繋がるためであると考えられる。
【0032】
【表2】
【0033】
×:シワ発生 ▲:タンク四隅に隙間発生 ○:シワ/隙間無し
以上、液体吸収部材21の圧縮寸法に対するガイド寸法の割合を、第2のガイドプレート52は71.1[%]以上93.8[%]以下(ガイド寸法34.5[mm]以上45.5[mm]以下)にし、第1のガイドプレート51は60.5[%]以上88.4[%]以下(ガイド寸法13.0[mm]以上19.0[mm]以下)にし、更に、寸法の割合の差を20[%]以内にし、液体吸収部材21の上下方向(Z方向)の寸法に対するガイドプレートの切り欠き部の寸法L3の割合を6.7[%]以上26.7[%]以下(切り欠き部寸法2.0[mm]以上4.0[mm]以下)にすることで、容器11への挿入時におけるシワ発生や該容器の四隅との間の隙間発生を抑制することができる。なお、シワや容器の四隅との隙間の発生を防止するのに有効なガイドプレートの先端部の寸法L2の割合や切り欠き部の寸法L3の割合の好ましい範囲は、液体吸収部材21を構成する繊維シートの材料により変動する。したがって、材料によっては表1や表2に示すシワ/隙間無しの領域が拡大する場合もある。
【0034】
なお、上記実施形態では、切り欠き部の各辺が互いに直角になるように形成したが、これに限定されるわけではなく、切り欠き部の形状を任意に変更できる。
【0035】
また、上記実施形態では、切り欠き部を備えてガイドプレートを用いる場合を例に挙げたが、これに限定されるわけではなく、吸収体の収納空間の四隅に対応するコーナ部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ容器内に吸収体を挿入できる構造であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1…液体収納装置
11…容器
51,51A,51B…第1のガイドプレート
51F…先端部
51C…切り欠き部
52,52A,52B…第2のガイドプレート
52F…先端部
52C…切り欠き部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置における液体の供給に用いられる液体収納装置の製造方法であって、
前記液体収納装置は、液体を吸収保持する吸収体と、
前記吸収体を収納しかつ断面が四角形状を有する収納空間と、吸収体に保持された液体を外部に供給する供給部と、当該収納空間へ前記吸収体を挿入するための開口とを備える容器と、有し、
前記吸収体の断面寸法が前記収納空間の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮する工程と、
圧縮された前記吸収体を前記収納空間に前記開口を通じて挿入する工程と、を有し
前記挿入工程は、前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入することを含む液体収納装置の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程は、前記吸収体の互いに対向する一対の第1の側面の各々を押圧可能な押圧面をそれぞれ有する一対の第1のガイドプレートと、前記吸収体の互いに対向する一対の第2の側面の各々を押圧可能な押圧面をそれぞれ有する一対の第2のガイドプレートとを用いて前記吸収体を圧縮し、
前記挿入工程は、第1および第2のガイドプレートの前記吸収体の挿入方向における先端部を前記開口を通じて前記容器内に挿入した状態で、当該吸収体を当該第1および第2のガイドプレートによりガイドしつつ前記容器内に移動させて挿入するとともに、前記各ガイドプレートの先端部の両側に形成した切り欠き部により、前記収納空間に向けて移動する前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入する、ことを特徴とする請求項1に記載の液体収納装置の製造方法。
【請求項3】
前記吸収体は、複数の繊維シートを積層し熱融着された構造を有するとともに、前記複数の繊維シートの積層方向と前記挿入方向とは異なる、請求項2に記載の液体収納装置の製造方法。
【請求項1】
液体吐出装置における液体の供給に用いられる液体収納装置の製造方法であって、
前記液体収納装置は、液体を吸収保持する吸収体と、
前記吸収体を収納しかつ断面が四角形状を有する収納空間と、吸収体に保持された液体を外部に供給する供給部と、当該収納空間へ前記吸収体を挿入するための開口とを備える容器と、有し、
前記吸収体の断面寸法が前記収納空間の断面寸法より小さい寸法となるように圧縮する工程と、
圧縮された前記吸収体を前記収納空間に前記開口を通じて挿入する工程と、を有し
前記挿入工程は、前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入することを含む液体収納装置の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程は、前記吸収体の互いに対向する一対の第1の側面の各々を押圧可能な押圧面をそれぞれ有する一対の第1のガイドプレートと、前記吸収体の互いに対向する一対の第2の側面の各々を押圧可能な押圧面をそれぞれ有する一対の第2のガイドプレートとを用いて前記吸収体を圧縮し、
前記挿入工程は、第1および第2のガイドプレートの前記吸収体の挿入方向における先端部を前記開口を通じて前記容器内に挿入した状態で、当該吸収体を当該第1および第2のガイドプレートによりガイドしつつ前記容器内に移動させて挿入するとともに、前記各ガイドプレートの先端部の両側に形成した切り欠き部により、前記収納空間に向けて移動する前記吸収体の前記収納空間の四隅に対応する部分の圧縮を選択的に解放して復元させつつ、前記容器内に挿入する、ことを特徴とする請求項1に記載の液体収納装置の製造方法。
【請求項3】
前記吸収体は、複数の繊維シートを積層し熱融着された構造を有するとともに、前記複数の繊維シートの積層方向と前記挿入方向とは異なる、請求項2に記載の液体収納装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−187753(P2012−187753A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51471(P2011−51471)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]