説明

液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法及び画像形成装置

【課題】液体吐出に際して吐出不良となったノズルを正確かつ迅速に検知できる液体吐出ヘッド、及びこの液体吐出ヘッドを備えて吐出安定性を向上させ得る画像形成装置を提供する。
【解決手段】ノズル101と、吐出する液体を保持する個別液室102と、液体を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段103と、個別液室に供給する液体を保持する共通液室104と、共通液室から個別液室へ液体を供給する液体供給路105を有する液体吐出ヘッドにおいて、液体の流れる経路内に2つの電極部材106、107を有し、該2つの電極部材の少なくとも一方を液体供給路105の内部に配置し、2つの電極部材106、107間の電位差からノズルの吐出状態を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、プロッタを含む画像形成装置において使用される液体吐出ヘッド(記録ヘッド)、液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法及びこの不良ノズル検出方法を有する液体吐出ヘッドを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置、或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用される液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルと、吐出するための液体を保持する個別液室と、液体を吐出させるエネルギーを発生するための圧力発生源と、個別液室に供給するための液体を保持する共通液室と、共通液室から個別液室へ液体を供給するための液体供給路と、により構成され、上記圧力発生源により個別液室内に圧力を印加することによりノズルから液滴を吐出させるものである。
このような液体吐出ヘッドにおいて、インクの吐出を行なわない状態で長時間放置すると、ノズル近傍においてインクが増粘し、正常な吐出が不可能となる場合がある。
また、インクの吐出が比較的短時間の間に連続して行なわれると、それに伴って液室内において微小な気泡が生じる場合がある。この気泡が液室内に残留して成長すると、前記と同様に吐出不良となる。
気泡に関しては、前記の圧力発生源の連続駆動に由来するもの以外にも、インク供給系の供給過程で生じるものもある。また、洗浄不足等によってインク供給系において異物が混入する場合もある。これらの気泡/異物がインクの流れに従ってノズルまで達すると、前記と同様吐出不良となることは想像に難くない。
上記のように、特定のノズルチャンネルが不吐出状態になってしまうと、例えば、インクジェットプリンタ等の画像形成装置においては、記録画像上の主走査方向に白スジが発生する等の画像不良となり、画像品質上望ましくない。従って、吐出不良となったノズルが発生した場合、いち早くこれを検知し、しかるべき対応を取ることが望ましい。
【0003】
かかる吐出不良のノズル発生の検知、これに対する対応の実施に関する問題を解決するために、従来から各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
特許文献1には、レーザー発振器もしくはLED等による発光素子と、フォトダイオードもしくはフォトトランジスタ等による受光素子をノズルチャンネル数分設け、吐出される液滴の有無を光学的に検知する方法、すなわち、インク吐出の有無を光学的に検知する方法が開示されている。
特許文献2には、液体吐出ヘッドより吐出された液滴が着弾すべき位置に圧力センサーを設け、その出力信号から吐出される液滴の有無を検知する方法、すなわち、インク滴が着弾した時の衝撃を検知する方法が開示されている。
特許文献3には、液体吐出ヘッドより吐出された液滴が着弾すべき位置に感熱センサーを設け、その出力信号から吐出された液滴の有無を検知する方法、すなわち、インクの有無による温度変化を検知する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−216339公報
【特許文献2】特開2005−238683公報
【特許文献3】特許第3248969号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1による開示の技術には、1ノズル単位で精密な検出が可能であるという利点があるが、装置が大型化し、製造コストが非常に高くなってしまうという難点があった。
また、特許文献2による開示の技術には、比較的簡便な構成で検出が可能であるという利点があるが、最近では画像形成装置の高解像度化にともなう吐出液滴の小滴化により、着弾を検知するための圧力センサーも高感度な物が要求される。そのため、今後、ノズル微細化が進むほど製造コストも高くなり、この方法の難点となっている。
さらに、特許文献3による開示の技術も、簡便な構成で実現可能であるが、感熱式の方法は一般的に他の手法よりも感度が低く、確実な判定を行なうためには、長い時間を掛ける必要があるという難点があった。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、液体吐出に際して吐出不良となったノズルを正確かつ迅速に検知できる液体吐出ヘッド、及びこの液体吐出ヘッドを備えて吐出安定性を向上させ得る画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出するノズルと、吐出する液体を保持する個別液室と、液体を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段と、前記個別液室に供給する液体を保持する共通液室と、該共通液室から前記個別液室へ液体を供給する液体供給路を有する液体吐出ヘッドにおいて、液体が流れる経路内に2つの電極部材を有し、該2つの電極部材の少なくとも1つの電極部材を前記液体供給路の内部に配置し、前記2つの電極部材間の電位差から前記ノズルの吐出状態を検知する液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記ノズルが不吐出の時には、前記2つの電極部材が短絡している請求項1記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記2つの電極部材のうち、前記ノズル側に配置される電極部材の弾性率をE1、液体が供給される側に配置される電極部材の弾性率をE2とすると、
E1<E2
である請求項1又は2記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
【0006】
また、請求項4に記載の発明は、前記ノズルが吐出状態にある時、前記2つの電極部材は接触せず、一方、前記ノズルが不吐出状態となり、かつ前記圧力発生手段を駆動している時に、前記液体供給路内の流れにより前記ノズル側の電極部材が変形し、前記2つの電極部材間の接触を引き起こす請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記液体吐出時の前記ノズルの流体抵抗をR1、前記液体供給路の流体抵抗をR2とすると、
R1<R2
である請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、不吐出ノズルを検知する不良ノズル検出方法を備えている請求項1乃至5のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
【0007】
また、請求項7に記載の発明は、液体を用いて用紙上に画像を形成する画像形成装置において、画像形成に使用する液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを備えている画像形成装置を特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、前記液体吐出ヘッドの前記2つの電極部材が各々のノズルチャンネル全てに配置され、検出した電位がノズル不吐出状態検知信号として前記液体吐出ヘッドを制御する中央演算装置へ送られ、前記ノズルの不吐出状態を1ノズル単位で確認可能である請求項7記載の画像形成装置を特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、液体を吐出するノズルと、吐出するための液体を保持する個別液室と、液体を吐出させるエネルギーを発生するための圧力発生手段と、個別液室に供給する為の液体を保持する共通液室と、共通液室から個別液室へ液体を供給するための液体供給路を有する液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法において、液体が流れる経路内に2つの電極部材を有し、前記液体供給路の内部に前記2つの電極部材の少なくとも1つの電極部材を配置し、前記個別液室に発生する圧力によって前記2つの電極部材の少なくとも一方を変形させ、該2つの電極部材間の電位差を検知することにより前記ノズルの吐出状態を検知する液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便な構成で吐出不良ノズルを検知できるため、吐出安定性に優れた液体吐出ヘッドを得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の液体吐出ヘッドを適用し得るインクジェット印字装置を示す概略図である。図1には画像形成装置の一例である一般的なインクジェット印字装置1を示している。
このインクジェット印字装置1の印字装置本体1Aの内部には、主走査方向に移動可能なキャリッジ11、このキャリッジ11に搭載したインクジェット記録方式の印字ヘッド(又は印字素子)12、この印字ヘッド12の直ぐ下の無端状の搬送ベルト13、印字ヘッド12へインクを供給するインク供給管(チューブ)14、図示してないインクサブタンク、インクカートリッジ等で構成されるインク供給機構部等が、それぞれ収納されている。
印字装置本体1Aの下方部には、用紙Pを積載する用紙積載部16があり、装置前面には排紙トレイ27が設けられている。さらに、図1に示すように、このインクジェット印字装置1には、高電圧電源17、帯電ローラ18、ベルト搬送ローラ23、テンションローラ24、除電ブラシ25等が配設されている。
かかるインクジェット印字装置1の印字工程において、用紙積載部16に積載された多数枚の用紙から1枚の用紙Pが給紙コロ19及び用紙分離パッド20で分離され、搬送ガイド21で案内されながら移送される。この用紙Pは、先端コロ22を介して、循環走行する搬送ベルト13上に給送される。
この搬送ベルト13上では、印字ヘッド12のノズルからのインク液滴が用紙Pに着弾することにより、所望の印字(画像形成)が行われる。印字後の用紙Pは用紙ガイド26を通って排紙トレイ27上に排出される。なお、インクを加圧してインク液滴を形成するために、この印字ヘッド12では、圧電素子等の電気機械変換素子で液室壁面を形成し、振動板を介してインクを加圧するようにしている。
【0010】
図2は本発明に係る液体吐出ヘッドを示す概略断面図である。液体を吐出する記録ヘッド(印字ヘッド)12のノズルプレート100に形成されたノズル(ノズル孔)101は個別液室102に連通しており、この個別液室102には下には圧力発生源103が設置されている。この圧力発生源103に駆動パルスが印加されると個別液室102内部の圧力が上がり、ノズル101より液滴が吐出される。
この時、個別液室102と、この個別液室102に液体を供給するための共通液室104との間に一部流体抵抗が高い領域、具体的には、図1において個別液室102と共通液室104との間の通路高さの低い領域105を形成することにより、圧力発生源103からの駆動力を効率良く液体吐出に利用できるようになっている。
換言すると、正常吐出時のノズルの流体抵抗をR1、流路領域105の流体抵抗をR2とすると、R1<R2が成立する。この構成を基本構成として、ノズル部がノズルチャンネル数分紙面の奥行き方向に並んでいる。かかる構成とすれば、ノズル100の吐出状態をソフトウェアで管理することが可能となるため、吐出安定性に優れた液体吐出ヘッドを得ることができる。
なお、圧力発生源103は、電歪素子に電圧を印加して電歪素子を変形させることでインクを吐出する、いわゆるピエゾ(圧電)方式であっても良いし、電熱変換素子に電流を流すことで発熱させて、発熱によりインクを発泡させることでインクを吐出する、いわゆるサーマル方式であっても良い。
本発明で用いることができるインクジェットヘッドは、インク流路から吐出口にかけての形状が直線的であるエッジシューター方式であっても良いし、インク流路の向きと吐出口の向きが異なるサイドシューター方式であっても良い。
【0011】
図3はエッジシューター方式の印字ヘッドの例を示す概略図である。図3の記録(印字)ヘッドは、吐出エネルギー発生体7(吐出エネルギー発生体7に吐出信号を印加する電極及び吐出エネルギー発生体7に必要に応じて設けられる保護層などは省略してある)を有する基板2に、流路4の側壁及びオリフィス5を構成する壁材2及び流路4の覆いを構成する天板3を積層した構成を有する。
液体を吐出するこの記録ヘッド(印字ヘッド)12においては、インクが貯えられている液室(図示せず)から流路4にインクが充填された状態で、図示してない電極を介して記録信号を吐出エネルギー発生体7に印加すると、この吐出エネルギー発生体7から発生した吐出エネルギーが流路4内のインクに吐出エネルギー発生体7上方(吐出エネルギー作用部14b)で作用し、その結果インクがオリフィス5から液滴として吐出される。吐出されたインク滴はオリフィス5前方に送り込まれた紙などの被記録材に付着される。
図3に示したようなエッジシューター方式の記録ヘッドにおいては、各部分の精度の良い微細化やオリフィスのマルチ化、あるいは小型化が極めて容易であり、また量産性に富むという利点を有する。その一方で、インク滴吐出の際の応答周波数やインク滴の飛行速度に限界がある。
また、電熱変換素子が発熱することでインク中に気泡が発生するが、この気泡が温度低下により収縮し、吐出エネルギー発生体7近辺で消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体7が徐々に破壊される。この現象は、いわゆるキャビテーション現象と呼ばれ、エッジシューター方式において顕著である。そのため、エッジシューター方式の記録ヘッドは寿命が比較的短い。
【0012】
図4はサイドシューター方式の記録ヘッドの例を示す概略図である。図4において、この記録ヘッド(印字ヘッド)12は、天板3にオリフィス5を設け、一点鎖線14cで示されるように流路4内の吐出エネルギー作用部へのインクの流れ方向とオリフィス5の開口中心軸とを直角となした構成を有する。
このような構成とすることによって、吐出エネルギー発生体7からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、また、インクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有し、吐出エネルギー発生体7に発熱素子を用いた場合にとくに効果的である。
また、エッジシューターにおいて問題となる気泡が消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体7を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象はサイドシューターであれば回避することができる。つまり、サイドシューターにおいて気泡が成長し、その気泡がオリフィス5に達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらない。そのため、記録ヘッドの寿命が長いという長所を有する。
【0013】
図5は液体吐出ヘッドの電極に付加した回路を示す概略断面図である。本発明に係る液体を吐出する記録ヘッド(印字ヘッド)12は、高流体抵抗領域105の内部に2枚の電極106、107を有することを特徴とする。この2枚の電極106、107は、電極材料そのものからなっても良いし、電極材料を付与した部材であっても良い。記録ヘッド12の全体的な構成は図2の構成と同じであるので、ここでは図2と同一部分に同一符号を付してここで必要以外の説明は省略する。
ノズル101に近い側の電極106は剛性が低く作られており、流路105の流れに従って容易に曲がるようになっている。また、共通液室104に近い側の電極107は剛性が高く作られており、流路105内に流れが発生しても電極106より変形し難い。換言すると、電極106の弾性率をE1とし、電極107の弾性率をE2とした時、E1<E2が成立する。
これらの電極106、107には、図5に示すような回路が付加されており、電極106と電極107とが非接触状態にある場合には電位検出部108の電位はゼロとなり、短絡状態にある場合には電源電圧Vdが検出される。従って、簡便な構成で吐出不良ノズルを検知できるため、吐出安定性に優れた液体吐出ヘッドを得ることができる。
要するに、液体の流れによって電極106は変形することにより電極107に近づき、所定以上変形した時に電極107と接触(電気的に接続)するように構成されている。
再び図2を参照して、今、ノズル(ノズル孔)101が正常な状態にある場合を考える。圧力発生源103に駆動パルスが印加され、個別液室102の内圧が高まると、共通液室104から流路105、個別液室102及びノズル101へと流れが発生する。
しかし、前述の通り流路105の流体抵抗と較べてノズル101の流体抵抗が低く設計されているため、大部分の液体はノズル101を通じて外部へ吐出され、流路105を介して共通液室104へは戻らないようになっている。
【0014】
図6は電極間距離と、流れ方向の関係を示す概略断面図である。図7は電極先端部の動きをグラフとともに示す概略断面図である。図6及び図7において、記録ヘッド12の全体的な構成は図2の構成と同じであるので、ここでは図2と同一部分に同一符号を付してここで必要以外の説明は省略する。
図6に示すように電極106、電極107間の距離をdとして、共通液室104側を正の方向、ノズル101側を負の方向に取っている。図7では、このグラフは横軸が時間、縦軸は電極106先端部の流れ方向における変位である。
図7におけるAの状態はノズル101より液体を吐出している時の状態である。個別液室102において発生した圧力は、前記の流体抵抗の関係から、ほぼノズル101側への流れとなり液滴が吐出される。一方、流路105には僅かな流れが生じるが、電極106と電極107を当接させるに至るものではない。
図7におけるBの状態は液体が吐出された後のリフィル(充填)の状態である。吐出した液体の体積分が共通液室104より流路105を介して個別液室102に移動するため、流路105内部に負の方向の流れが生じる。この時の電極106の変位は電極107とは逆の方向であるため、電極106と電極107が当接しないことは言うまでもない。
【0015】
図8は図7の場合と異なる電極先端部の動きをグラフとともに示す概略断面図である。図8において、記録ヘッド12の全体的な構成は図2の構成と同じであるので、ここでは図2と同一部分に同一符号を付してここで必要以外の説明は省略する。
次に、何らかの原因によりノズル101が不吐出状態にある場合を考える。図2及び図8を参照して説明する。圧力発生源103に駆動パルスが印加され、個別液室102の内圧が高まると、ノズル101は不吐出状態にあるため流れは全て流路105へと向かうこととなる。
この時の電極106先端部の動きは図8のようになる。図8におけるCの状態では、ノズル101が閉じているため流路105にはノズルが正常状態にある場合と比較してかなり大きい流れが発生し、電極106と電極107が当接し、電位検出部108にVdの電位が発生する(図5)。
電位検出部108に発生するこの電位が、当該ノズルが吐出不良となっていることを指し示す信号となる。従って、簡便な構成で吐出不良ノズルを検知できるため、吐出安定性に優れた液体吐出ヘッドを得ることができる。
なお、図8におけるDの状態は個別液室102の圧力が元に戻ることにより、逆流した液体の体積分が共通液室104より流路105を介して個別液室102に移動している状態である。図7のBの状態と同じく、電極106の変位は電極107とは逆の方向であるため、電極106と電極107が当接しない。
電位検出部108により検出した電位は、例えば、記憶素子等でラッチし、液体吐出ヘッド12を制御するCPU(中央演算装置)からいつでもアクセス可能な状態にしておくことが望ましい。
そうすることにより不吐出状態を検知した場合に、ファームウェア等から自動的に復帰処理を試みることも可能となる。以上の仕組みを液体吐出ヘッドに組み込むことにより、ノズル1チャンネル単位で吐出不良状態を検知することが可能となる。
【0016】
図9は本発明による液体吐出ヘッドの第1の実施の形態の主要構成を示す概略図断面である。ノズルプレート100に形成されたノズル(ノズル孔)101は個別液室102に連通しており、この個別液室202には圧力発生源として圧電素子203が設置されている。この圧電素子203には図示してない駆動回路が接続されており、任意の駆動波形を印加できるようになっている。
個別液室102と、この個別液室102に液体を供給するための共通液室104との間には意図的に流路を狭めた高流体抵抗領域105が形成されている。この高流体抵抗領域105によって圧電素子203からの駆動力を効率良く液体吐出に利用できるようになっている。
高流体抵抗領域105内部には、ノズル101側の電極106と共通液室104側の電極107が設置されている。電極106は薄い樹脂部材に貼り付けられており、高流体抵抗領域105の流れにより容易に弾性変形するようになっている。電極107は銅板で形成されており、流れに対する変位量はごく僅かである。
このように圧電(ピエゾ)方式を用いる場合、圧電(ピエゾ)素子を圧縮したり解放したり、圧電素子203の変形量を調整したりしてそれらの駆動波形を調整することで、様々な大きさのインク滴を吐出させることができる。そのため、階調性が良好な画像を形成するのに有利である。
【0017】
図10は液体吐出ヘッドの電極に付加した回路を示す概略断面図である。電極106と電極107には、図10に示すような電位検出部108が接続されており、電極106と電極107が当接すると電位Vdを検出することが可能である。
図10は圧力発生源として圧電素子203が設置されている場合として示しただけで、圧力発生源が圧電素子203である以外は図5と同じであるので、図5と同一部分には同一符号を付してここで必要以外の説明は省略する。このように、電極106、電極107及び電位検出部108からなる構造が紙面奥行き方向にノズルチャンネル数分配列されている。
図11は電位コントロール回路を示す回路図である。上述したように、ノズルチャンネル数分配列された電極106、電極107及び電位検出部108からなる構造はノズルチャンネル数分配列されている。ここでは、ノズルチャンネル数は192とした。
この192チャンネル数分の検出電位Vd(0,1,2...190,192)は、図11に示すようにコントロール回路109を介して内部バス110に乗せられる。検出電位Vdから、ROM112に格納された処理手順により、RAM113、他の論理回路114からの情報に基づき、CPU111による演算処理によってノズルダウン箇所を割り出すことができる。
以上の構成を含む液体を吐出する記録ヘッド12を形成し、記録ヘッドであるこの液体吐出ヘッド12の稼動において意図的にノズル101をダウンさせてみたところ、ノズルダウン箇所を正確に検知することが可能であった。
【0018】
図12は本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態の主要構成を示す概略断面図である。ノズルプレート100に形成されたノズル(ノズル孔)101は個別液室102に連通しており、個別液室102には圧力発生源として発熱抵抗体103が設置されている。この発熱抵抗体103には図示してない駆動回路が接続されており、電圧の印加により発熱し、個別液室内に泡を形成し、液体を吐出せしめるものとなっている。
発熱抵抗体103を用いるサーマル方式は、ノズル101の高集積化が容易であるため、多ノズルヘッドの作製に向いている。そのため、解像度が高い画像を高速で印刷するのに有利である。
この第2の実施の形態のその他の構造は第1の実施の形態の構造と概ね同等で、すなわち、高流体抵抗領域105内部には、ノズル101側の電極106と共通液室104側の電極107を含んで液体吐出ヘッドを形成した。
このように形成した液体吐出ヘッド12を稼動させて意図的にノズル101をダウンさせみたところ、ノズルダウン箇所を正確に検出することが可能であった。従って、プリンタ、プロッタ等の画像形成装置にこの液体吐出ヘッドを搭載すれば、安定性の高い高品質な画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドを適用し得るインクジェット印字装置を示す概略図である。
【図2】本発明に係る液体吐出ヘッドを示す概略断面図である。
【図3】エッジシューター方式の印字ヘッドの例を示す概略図である。
【図4】サイドシューター方式の記録ヘッドの例を示す概略図である。
【図5】液体吐出ヘッドの電極に付加した回路を示す概略断面図である。
【図6】電極間距離と、流れ方向の関係を示す概略断面図である。
【図7】電極先端部の動きをグラフとともに示す概略断面図である。
【図8】図7の場合と異なる電極先端部の動きをグラフとともに示す概略断面図である。
【図9】本発明による液体吐出ヘッドの第1の実施の形態の主要構成を示す概略断面図である。
【図10】液体吐出ヘッドの電極に付加した回路を示す概略断面図である。
【図11】電位コントロール回路を示す回路図である。
【図12】本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態の主要構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 画像形成装置
12 液体吐出ヘッド
101 ノズル(ノズル孔)
102 個別液室
103 圧力発生手段
104 共通液室
105 液体供給路(流路)
106 電極部材
107 電極部材
108 電位検出部
109 コントロール回路
203 圧力発生手段(圧電素子)
303 圧力発生手段(発熱抵抗体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、吐出する液体を保持する個別液室と、液体を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段と、前記個別液室に供給する液体を保持する共通液室と、該共通液室から前記個別液室へ液体を供給する液体供給路を有する液体吐出ヘッドにおいて、
液体が流れる経路内に2つの電極部材を有し、該2つの電極部材の少なくとも1つの電極部材を前記液体供給路の内部に配置し、前記2つの電極部材間の電位差から前記ノズルの吐出状態を検知することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルが不吐出の時には、前記2つの電極部材が短絡していることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記2つの電極部材のうち、前記ノズル側に配置される電極部材の弾性率をE1、液体が供給される側に配置される電極部材の弾性率をE2とすると、
E1<E2
であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルが吐出状態にある時、前記2つの電極部材は接触せず、一方、前記ノズルが不吐出状態となり、かつ前記圧力発生手段を駆動している時に、前記液体供給路内の流れにより前記ノズル側の電極部材が変形し、前記2つの電極部材間の接触を引き起こすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記液体吐出時の前記ノズルの流体抵抗をR1、前記液体供給路の流体抵抗をR2とすると、
R1<R2
であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
不吐出ノズルを検知する不良ノズル検出方法を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体を用いて用紙上に画像を形成する画像形成装置において、画像形成に使用する液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドの前記2つの電極部材が各々のノズルチャンネル全てに配置され、検出した電位がノズル不吐出状態検知信号として前記液体吐出ヘッドを制御する中央演算装置へ送られ、前記ノズルの不吐出状態を1ノズル単位で確認可能であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
液体を吐出するノズルと、吐出するための液体を保持する個別液室と、液体を吐出させるエネルギーを発生するための圧力発生手段と、個別液室に供給する為の液体を保持する共通液室と、共通液室から個別液室へ液体を供給するための液体供給路を有する液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法において、
液体が流れる経路内に2つの電極部材を有し、前記液体供給路の内部に前記2つの電極部材の少なくとも1つの電極部材を配置し、前記個別液室に発生する圧力によって前記2つの電極部材の少なくとも一方を変形させ、該2つの電極部材間の電位差を検知することにより前記ノズルの吐出状態を検知することを特徴とする液体吐出ヘッドの不良ノズル検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−755(P2010−755A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163380(P2008−163380)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】