液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
【課題】 ノイズの影響を受け難く、ノイズによる画質の低減を抑制することが可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供する。
【解決手段】 液体吐出ヘッド100は、記録素子基板1100と、記録素子基板1100が装着された装着面1200Aを有する基材1200と、記録素子基板1100に電気的に接続された電気配線基板1300と、を有する。電気配線基板1300のうちの、基材1200の装着面1200Aと隣り合う別の面の上に配される部分が、導電性を有する導電部材1600、1650によって覆われている。
【解決手段】 液体吐出ヘッド100は、記録素子基板1100と、記録素子基板1100が装着された装着面1200Aを有する基材1200と、記録素子基板1100に電気的に接続された電気配線基板1300と、を有する。電気配線基板1300のうちの、基材1200の装着面1200Aと隣り合う別の面の上に配される部分が、導電性を有する導電部材1600、1650によって覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」とも称する)は、吐出口からインクを吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を備えた記録素子基板を有している。また、記録ヘッドは、記録素子を駆動するための電源や、記録素子を駆動するための信号を、外部から記録素子基板に供給するための電気配線基板を有している。
【0003】
ここで、画質を向上させるために、記録素子の数を増やすと、記録素子基板を駆動するための信号の数が増え、電気配線基板内の配線の数が多くなる。また、記録媒体の幅と同程度の印字幅を有するフルライン型の記録ヘッド(特許文献1)は、印字幅に対応させるために、記録素子基板の数が多くなる場合があり、このような場合においても、電気配線基板内の配線の数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット記録装置に設けられる、被記録媒体を搬送するための搬送機構と、吐出されたインクが記録される被記録媒体と、の摩擦などにより発生した静電気が、電気配線基板に放電される恐れがある。このとき、記録ヘッドを駆動するための信号を供給するための信号用配線に静電気が放電されると、ノイズが発生し、所望の記録に必要な信号と異なる信号が記録素子に入力され、所望のインク吐出が行われないことで、画質の低減を招く可能性がある。
【0006】
特に、電気配線基板内の配線の数が多い構成や、インクジェット記録ヘッドが被記録媒体の搬送機構などのノイズ源に近接する構成においては、上記のノイズの影響を受ける恐れが高まる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ノイズの影響を受け難く、ノイズによる画質の低減を抑制することが可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドは、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を有する記録素子基板と、前記記録素子基板が装着された装着面を有する基材と、前記装着面と隣り合う、前記基材の、前記装着面とは別の面、の上に配される部分を有し、前記記録素子基板に電気的に接続された電気配線基板と、前記部分を覆うように設けられた、導電性を有する導電部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズの影響を受け難く、ノイズによる画質の低減を抑制することが可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用可能な記録ヘッドを説明するための図であり、(a)は記録ヘッドの外観斜視図、(b)は記録ヘッドの下面図、(c)は、記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】記録素子ユニットの分解斜視図である。
【図3】記録素子基板を説明するための図であり、(a)は記録素子基板の外観斜視図、(b)は図3(a)のA−A断面図である。
【図4】ベースプレートを説明するための図であり、(a)は記録素子基板が配置される面(装着面)を含む外観斜視図、(b)はインク流入口及び流出口が設けられた面を含む外観斜視図、(c)は記録素子基板が配置される面から見た、内部のインク流路を透過させて示した平面図である。
【図5】電気配線基板の外観斜視図である。
【図6】支持部材A、Bを示す外観斜視図である。
【図7】インク供給部材を示す外観斜視図である。
【図8】駆動回路基板ユニットを示す分解斜視図である。
【図9】記録素子ユニットと駆動回路基板ユニットとが結合された状態を示す斜視図である。
【図10】記録装置の構成を説明するための図である。
【図11】本発明を適用可能な記録ヘッドが装着された状態の記録装置を示す図であり、(a)は図9のX方向から見た平面図、(b)は図11(a)のB−B断面を含む平面図である。
【図12】図10に示す記録装置の記録部の、記録ヘッドの短手方向に関する断面模式図である。
【図13】図12に示す記録素子ユニットの断面模式図である。
【図14】図13に示す記録素子ユニットの、サイドプレート近傍の模式図であり、(a)は、サイドプレートを取り付けた状態、(b)は、サイドプレートを取り付ける前の状態を示す。
【図15】図13に示す記録素子ユニットの、吐出面近傍の断面模式図であり、(a)は、第一の実施形態、(b)は、その変形例を示す。
【図16】電気配線基板と側板が密着していない状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用可能な液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェット記録ヘッドを例に説明する。図1から図11は、記録ヘッド、及びこれが装着されるインクジェット記録装置(以下、「記録装置」と称す)の構成を説明するための図である。
【0012】
(1)記録ヘッド
本発明を適用可能な記録ヘッド100の構成を図1に示す。記録ヘッド100は、使用が想定される紙などの記録シートの最大幅に対応する範囲にわたって、吐出口を有する記録素子基板1100が配置されており、記録ヘッド100を走査せず、高速の記録が可能なフルライン型の記録ヘッド100である。
【0013】
図1(c)に示すように、記録ヘッド100は、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とからなり、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000は、互いに機械的および電気的に着脱可能に結合される。
【0014】
(記録素子ユニット)
記録素子ユニット1000の分解斜視図を図2に示す。記録素子ユニット1000は、複数の記録素子基板1100、ベースプレート1200、2つの支持部材1400、1405、2つのインク供給部材1500、電気配線基板1300、2つのサイドプレート1600、1650から構成されている。
【0015】
複数の記録素子基板1100は、基材としてのベースプレート1200の装着面1200A上に、ベースプレート1200の長手方向に関して千鳥状に精度よく配設され、装着されている。2つの支持部材1400、1405と、2つのインク供給部材1500は、ベースプレート1200の長手方向に関する両端に固定される。電気配線基板1300は、ベースプレート1200に接着固定され、電気配線基板1300の短手方向の両端は折り曲げられている。
【0016】
次に、記録素子ユニット1000の構成をより詳細に説明する。
まず、記録素子基板1100の構成を図3(a)、(b)に示す。記録素子基板1100は、シリコン基板1108と吐出口プレート1110からなる。
【0017】
シリコン基板1108の厚さは、例えば0.5〜1mm程度である。シリコン基板1108には、シリコン基板1108の長手方向に延びた長溝状のインク供給口1101が形成されている。また、インク供給口1101の両側には、インクを吐出するためのエネルギーを発生する記録素子としてのヒーターなどの電気熱変換素子1102が、それぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。電気熱変換素子1102、及び電気熱変換素子1102と電気的に接続されるアルミニウム等の電気配線(不図示)は、成膜技術により形成されている。また、記録素子基板1100の長手方向の両端部には、電気配線基板1300と電気的に接続される電極1103が設けられている。
【0018】
シリコン基板1108の上には、樹脂材料からなる吐出口プレート1110が設けられており、吐出口プレート1110には、電気熱変換素子1102に対応したインク流路1104及び吐出口1105がフォトリソグラフィー技術により形成されている。吐出口1105は、電気熱変換素子1102と対向するように設けられている。すなわち、吐出口1105は、記録素子基板1100の長手方向に沿って配設されている。電気熱変換素子1102を駆動することより気泡を発生させて、インク供給口1101から供給されたインクを吐出口1105から吐出させる。
【0019】
次に、ベースプレート1200の構成を図4(a)〜(c)に示す。ベースプレート1200は、酸化アルミニウム(Al2O3;以下、アルミナと称する)で形成されたアルミナグリーンシートを複数積層し、焼成することで形成されている。アルミナグリーンシートの厚さは、例えば0.5〜1mm程度であり、これらが積層されたベースプレート1200の厚さは10mm程度である。ベースプレート1200には、記録素子基板1100のインク供給口1101にインクを供給するインク供給スリット1210と、インクタンク(不図示)からインク供給スリット1210にインクを供給するインク流路1220が形成されている。
【0020】
本実施形態では、ベースプレート1200の材料としてアルミナを用いたが、材料はこれに限られることない。ベースプレート1200の材料は、記録素子基板1100の、ベースプレート1200と接する部材の材料の線膨張率と同程度の線膨張率を有し、且つその材料の熱伝導率と同程度、もしくは同程度以上の熱伝導率を有する材料であればよい。ベースプレート1200の材料の例としては、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などが挙げられる。
【0021】
電気配線基板1300の構成を図5に示す。電気配線基板1300は、記録装置3000(図10参照)から送られる、電気熱変換素子1102を駆動する信号を、記録素子基板1100に伝送し、また、電気熱変換素子1102を駆動する電力を記録素子基板1100に供給する部材である。電気配線基板1300は、樹脂フィルム(フィルム部材)上に配線パターンが形成されたフレキシブル配線基板である。また、電気配線基板1300は、内部に記録素子基板1100を組み込むための複数の開口部1330を有しており、複数の開口部1330の両端には、記録素子基板1100の電極1103に対応する電極端子1340が形成されている。電気配線基板1300は、ベースプレート1200の、インク供給スリット1210が形成された面に接着され、固定される。電気配線基板1300は、記録装置3000からの記録ヘッド100を駆動する電気信号を受け取るための電気信号接続部1310と、記録装置3000から電力を受け取るための電源接続部1320を有している。
【0022】
電気配線基板1300と電気熱変換素子1102とは、例えば、記録素子基板1100の電極1103と電気配線基板1300の電極端子1340とを、金ワイヤー(不図示)を用いたワイヤーボンディング技術により接合することで、電気的に接続される。そして記録素子基板1100の電極1103、電気配線基板1300の電極端子1340、及びワイヤーは、封止剤により被覆され、インクによる腐食や外的衝撃から保護される。
【0023】
支持部材A1400、支持部材B1405の構成を図6に示す。二つの支持部材1400、1405は、記録ヘッド100を記録装置3000に固定するための部材であり、ベースプレ−ト1200の長手方向の両端にそれぞれ固定される。各支持部材1400、1405には、記録ヘッド100を記録装置3000に装着した際に、記録装置3000に設けられた位置決めピン3430(図11参照)と嵌合する位置決め穴A1410、位置決め穴B1415が形成されている。二つの位置決め穴1410、1415は、記録ヘッド100の短手方向(図9に示すX方向)及び記録ヘッド100の長手方向(図9に示すY方向)に関して、記録ヘッド100を適正な位置に装着するためのものである。支持部材A1400の位置決め穴A1410は丸穴、支持部材B1405の位置決め穴B1415は長穴になっている。また、記録ヘッド100を記録装置3000に装着した際に、記録ヘッド100を支持するヘッドホルダ3400(図11参照)につきあたる、位置決め部1430が形成されている。この位置決め部1430は、記録シートと記録素子基板1100の吐出口1105が設けられた側の面との間隔を一定に保持するため部材である。
【0024】
サイドプレ−ト1600、1650の構成については、後述の第一及び第二の実施形態で説明する。
【0025】
インク供給部材1500の構成を図7に示す。インク供給部材1500は、記録装置3000側の接続ユニット3410(図11(a)参照)と接続され、記録装置3000から記録素子ユニット1000にインクを供給する部材である。インク供給部材1500は、例えば樹脂材料で形成されており、記録装置3000に接続される二つの接続部1510、ベースプレート1200に接続される二つの開口部1520が設けられている。なお、記録装置3000と記録素子ユニット1000の間で、インクを循環させるために、接続部1510及び開口部1520は、それぞれ二つずつ設けられている。また、インク供給部材1500の内部には、接続部1510と開口部1520とをつなぐインク流路(不図示)が設けられており、インク流路の途中には、インク中に混入された異物や気泡を取り除くためのフィルター(不図示)が配置されている。そして、接続部1510には、記録装置3000のインク供給パイプと接合するためのジョイントゴムが装着されており、接続部1510は、記録装置3000の接続ユニット3410に接続される。また、開口部1520がベースプレート1200の端部付近に形成されたインク流入口1230、流出口1240(図4参照)と連通するように、インク供給部材1500はベースプレート1200に対して位置決めされる。
【0026】
(駆動回路基板ユニット)
駆動回路基板ユニット2000の構成を図8に示す。図8は、カバ−2300をはずした状態を示している。
【0027】
駆動回路基板ユニット2000の内部には記録ヘッド100の吐出駆動を制御するための駆動回路基板2100が収められ固定されている。駆動回路基板2100には、記録素子ユニット1000の電気配線基板1300に設けられた電気信号接続部1310と電気的に接続される電気信号コネクタ−2110と、記録素子ユニット1000に電源供給を行う電源コネクタ−2120が配置されている。そして、駆動回路基板2100側の電源コネクタ−2120と記録素子ユニット1000の電気配線基板1300側の電源接続部1320とは、ワイヤーハーネス2130を介して電気的に接続されている。
【0028】
(2)記録素子ユニットと駆動回路基板ユニットの結合
図1に示すように、記録ヘッド100は、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とが結合されたものであり、結合は以下のようになされている。
【0029】
まず、駆動回路基板ユニット2000は、記録素子ユニット1000の、記録素子基板1100が設けられた吐出面とは反対側で、記録素子ユニット1000の長手方向に関する両端に設けられた支持部材1400、1405の上に支持され、ネジ止めされている。そして、図9に示すように駆動回路基板2100に接続されたワイヤーハ−ネス2130が、記録素子ユニット1000の電気配線基板1300に取り付けられた電源接続部1320と接続されている。記録素子ユニット1000の電源接続部1320の近傍は、サイドプレ−トB1650と一体的に形成された配線基板固定部1655に固定されている(図1(c)参照)。この配線基板固定部1655は、記録素子ユニット1000の支持部材1400、1405に固定されている。
【0030】
図1に示すように、駆動回路基板ユニット2000はカバ−2300で覆われている。また、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とが結合され、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000との間はほぼ隙間がない状態となる。
【0031】
(3)インクジェット記録装置
本発明の実施形態の記録装置3000の構成を図10に示す。記録装置3000は、長尺のフルライン型の記録ヘッド100を用いて、被記録媒体としての記録シート3200を搬送方向(図9に示すX方向)に連続搬送しながら記録を行うラインプリンタである。記録装置3000は、ロール状に巻かれた記録シート3200を保持するホルダ(不図示)、記録シート3200を所定速度でX方向へ搬送する搬送機構3300、記録シート3200に対して記録ヘッド100を用いて記録を行う記録部3100を備えている。なお、記録シート3200は連続したロールシートに限らず、カットシートであってもよい。更に、記録装置3000は、記録ヘッド100に供給するためのインクを収容するインクタンク(不図示)を備えている。記録部3100には、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド100が並列して備えられている。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四色に対応した四つの記録ヘッド100としているが、色の数や色の種類はこれに限定されない。
【0032】
記録ヘッド100が装着された状態の記録装置3000を図11に示す。記録ヘッド100の長手方向に関する両端部に設けられた接続部1510と、記録装置3000の接続ユニット3410とが接続されており、この接続された部分において、記録ヘッド100へのインクの導入、記録ヘッド100からのインクの導出が行われる。各色のインクはインクタンクからそれぞれインクチューブ3420を介して、記録ヘッド100に供給される。
【0033】
接続部1510より記録ヘッド100の長手方向に関する内側に配置された位置決め穴1410、1415(図6参照)が、ヘッドホルダ3400の位置決めピン3430と嵌合されている。また、記録ヘッド100の位置決め部1430がヘッドホルダ3400に突きあてられることにより、記録ヘッド100の記録装置3000に対する位置決めがなされている。記録ヘッド100の両端に設けられた支持部材1400、1405が、ヘッド固定ボルト1450でそれぞれ記録装置3000に固定され、保持されている。
【0034】
(第一の実施形態)
以下、本発明の要部について説明する。
インクジェット記録装置3000におけるノイズ源としては、搬送時における被記録媒体(記録シート3200)と、搬送機構3300(特に搬送ローラー3310、3320)とが、主なものとなる。具体的には、記録シート3200と搬送ローラー3310、3320との摩擦や、搬送ローラー3310、3320の軸と軸受けとの摩擦により、静電気が生じ、この静電気が電気配線基板1300の信号用の配線に放電されるとノイズが発生する恐れがある。したがって、電気配線基板1300を、これらのノイズ源から離間、もしくは遮蔽することが好ましい。
【0035】
しかし、特に記録装置3000がラインプリンタの場合、ラインプリンタは複数の色に対応した記録ヘッド100を有しており、この記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設けると、電気配線基板1300はノイズ源に近接されることになる。
【0036】
記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設ける理由としては、以下のような理由が挙げられる。
〔1〕記録ヘッド100が色毎複数、被記録媒体の搬送方向に並設されるため、搬送方向に関する記録部3100(図10)全体の幅が広くなり、コックリング(被記録媒体が波打つ現象)の恐れが高まるため。
〔2〕特に、被記録媒体としてロール紙を使用する場合、用紙にカール癖がついているため、コックリングの影響が顕著になる恐れがあるため。
〔3〕ラインプリンタの場合、シリアルプリンタに比べ、被記録媒体に短時間に大量のインクが付着するため、その水分によりコックリングが起こる可能性が高まるため。
【0037】
また、〔3〕のコックリングの影響を考慮すると、短時間で記録する方が望ましいために、記録ヘッド100同士の間隔を極力狭くして配置することが好ましい。更に、記録ヘッド100同士の間隔を狭くすることで、記録装置3000を小型化することも可能である。
【0038】
上述のように、ラインプリンタの記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320が設けられる構成では、ノイズ源と電気配線基板1300が近接する構成となる事がわかる。
【0039】
本発明者らは、このノイズ対策として、電気配線基板1300をシールド部材によって覆う構成で対応しようと考えた。シールド部材を設けることで、ノイズ発生の原因となる静電気をシールド部材内で分散させることができる。これにより、電気配線基板1300に静電気が放電してノイズが発生する恐れを低減し、また、ノイズ発生による画質の低減の恐れを抑制することが可能である。
【0040】
しかし、記録素子ユニット1000の記録素子基板1100が配される面である吐出面側にシールド部材を設けると、吐出面と被記録媒体との距離(以降、「紙間距離」と称す)を広げる可能性がある。被記録媒体に対するインクの着弾精度を低減させないためには、紙間距離を広げない方が好ましい。そのため、本実施形態においては、吐出面側を除く、記録ヘッド100の側面に配される電気配線基板1300をシールド部材としてのサイドプレートA1600、サイドプレートB1650で覆う構成とした。
【0041】
以下、図12〜図16を用いて、本実施形態の要部を詳述する。
図12は、図10に示す記録装置3000の記録部3100周辺の、記録ヘッド100の短手方向に関する断面模式図である。図13は、図12に示す記録素子ユニット1000の断面模式図である。図14(a)は、図13に示す記録素子ユニット1000の、サイドプレート1650近傍の模式図であり、記録素子ユニット1000の短手方向に関する断面図を示している。図14(b)は、図14(a)に対応する、サイドプレート1650を取り付ける前の状態の記録素子ユニット1000を示す分解図を示している。
【0042】
本実施形態の記録装置3000の記録部3100は、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド100を備えている。図12に示すように、記録シート3200の搬送方向に関する記録ヘッド100(記録素子ユニット1000)の前後には第一の搬送ローラー3310と第二の搬送ローラー3320が配置されている。二つの搬送ローラー3310、3320によって、記録シート3200が挟まれており、第一の搬送ローラー3310と第二の搬送ローラー3320は、回転することで記録シート3200に搬送力を与えている。更に、二つの搬送ローラー3310、3320は、記録シート3200のコックリングを抑えて記録ヘッド100の記録素子基板1100との間で一定の間隔を保つ役割を有している。
【0043】
上述したように、本実施形態では、記録素子ユニット1000の構成部材である二つのサイドプレ−ト1600、1650を導電性を有する材料とし、フレキシブル配線基板である電気配線基板1300のシールド部材(導電部材)として用いている。図2を用いて、サイドプレートA1600、サイドプレートB1650の構成を説明する。二つのサイドプレート1600、1650は、記録ヘッド100の長手方向に関する側面を覆う薄い板状の部材である。サイドプレートA1600は、棒状のベースバーA1601に板状の側板1610が溶接されたものである。サイドプレートB1650は、電気配線基板1300の電源接続部1320の周囲を固定するための板状の配線基板固定部1655が一体的に形成された棒状のベースバ−B1651に、板状の側板1610が溶接されたものである。
【0044】
図13に示すように、二つのサイドプレート1600、1650は、電気配線基板1300の、記録素子ユニット1000の長手方向の側面上に配される部分の表面を覆うように設けられ、二つの支持部材1400、1405に固定される。
【0045】
二つのサイドプレート1600、1650を構成する側板1610及びベースバー1601、1651を、導電性を有する材料で形成し、サイドプレート1600、1650全体として導電性を有する構成とした。本実施形態では、導電率が比較的高く、インクによって腐食されにくく、形状自由度があり安価、剛性が高く、経時劣化しにくい、などの理由から、サイドプレート1600、1650を構成する部材をいずれもSUS材料を用いて形成している。なお、本実施形態においては、電気配線基板1300に静電気が放電される恐れを低減できればよいので、サイドプレート1600、1650の材料として、電気配線基板1300を構成するフィルムよりも電気伝導率が高い部材を用いればよい。導電性を有する材料であれば、板状の側板1610、棒状のベースバー1601、1651を異なる材料で構成しても良く、両部材が電気的に導通する構成であれば、ネジ留めなど異なる手段で、両部材を接合しても良い。さらに、側板1610とベ−スバ−1601、1651を一体的に一つの部材で形成してもよい。
【0046】
このように、本実施形態においては、記録素子ユニット1000の長手方向に関する側面上に設けられた電気配線基板1300を、サイドプレート1600、1650で覆う構成としている。これにより、ノイズ発生の原因となる静電気をサイドプレート1600、1650内で分散させることができ、電気配線基板1300に静電気が放電してノイズが発生する恐れを低減し、また、ノイズ発生による画質の低減の恐れを抑制することが可能である。
【0047】
記録ヘッド100側に設けられる搬送ローラー3310からの静電気放電の恐れを抑制するためには、サイドプレート1600、1650は、少なくとも搬送ローラー3310と対向する高さまで設けられていればよい。なお、静電気の電荷を分散させる観点からは、サイドプレート1600、1650の面積は大きいほど望ましい。
【0048】
図12に示すように、本実施形においては、記録素子ユニット1000の吐出面側の端部付近にノイズ源となる搬送ローラー3310が設けられている。そのため、記録素子ユニット1000の吐出面側にシールド部材が設けられておらず、更にサイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との間に隙間があると、この隙間から電荷が侵入する恐れがある。すなわち、図16に示すように、記録シート3200や第二の搬送ローラー3320の側に、電気配線基板1300と側板1610との隙間Cがあると、静電気の電荷Nが電気配線基板1300に放電され、ノイズが発生する恐れがあるためである。
【0049】
そのため、図14(a)の破線で囲う領域Aに示すように、記録素子ユニット1000の吐出面側の端部近傍では、側板1610と電気配線基板1300とが密着した状態である方が望ましい。本実施形態では、サイドプレート1600、1650として板バネ部材(弾性部材)を用いている。ベースプレート1200の長手方向に関する側面上で、側板1610の弾性力により側板1610が電気配線基板1300を押さえる方向に付勢することで、両者が密着している。これにより、サイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との隙間から電荷が侵入する恐れを低減でき、サイドプレート1600、1650と電気配線基板との間に隙間がある場合よりも、ノイズの影響を低減することができる。
【0050】
なお、サイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との間に間隙を設けないための構成は、上述の、サイドプレート1600、1650として板バネ部材を用いた構成に限定されない。サイドプレート1600、1650と電気配線基板1300とを接着剤を用いて接着する構成であってもよい。しかし、接着剤を用いるよりも、製造工程が容易で、接着剤のように記録ヘッド100の短手方向に関する幅が大きくなる恐れもないため、板バネ部材を用いることがより望ましい。
【0051】
また、図13、14に示すように、サイドプレート1600、1650は、ネジ1700で、支持部材1400、1405に固定されている。サイドプレート1600、1650を、ベースプレート1200に対してネジ固定する構成であると、隣接する記録ヘッド100の方向に、ネジが突出してしまう。そこで、ネジ1700が、ベースプレート1200の短手方向に関する幅内に収まるように、支持部材1400、1405の一部を窪ませる構成としている(図14(a)参照)。このような構成とすることで、記録ヘッド100の短手方向に関する幅が大きくなる恐れを低減することが可能である。
【0052】
更に、ベースプレート1200の短手方向に関する幅内に、支持部材1400、1405が収まるように、支持部材1400、1405の幅寸法を設定している。これにより、ベースプレート1200の長手方向に関する側面の領域A内(図14(a)参照)で、電気配線基板1300と側板1610とを確実に密着させることができる。
【0053】
また、記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設けた構成であると、記録シート3200と搬送ローラー3310、3320との摩擦により、記録シート3200の搬送方向の下流ほど、記録シート3200の帯電量が増加する恐れがある。しかし、本実施形態においては、サイドプレート1600、1650を設けており、摩擦により生じた静電気は、記録素子基板1100や電気配線基板1300よりもサイドプレート1600、1650に放電されやすい。そのため、記録シート3200の搬送の途中で、記録シート3200に蓄積された静電気を、サイドプレート1600、1650に放電させることにより、電気配線基板1300や記録素子基板1100に直接電荷が放電される恐れを低減することができる。
【0054】
なお、記録シート3200に帯電された電荷が記録素子基板1100に放電される恐れを抑制するためには、記録シート3200の搬送方向に関する記録ヘッド100の上流側の側面上に配される電気配線基板1300を覆うように、サイドプレートを設ければよい。この位置に導電性のサイドプレートを配することで、記録シート3200が、搬送ローラー3310、3320と摩擦接触された直後、且つ、記録素子基板1100と対向する位置に搬送される前に、記録シート3200がサイドプレートの近傍を通過するためである。
【0055】
また、本実施形態のような、フルライン型の記録ヘッド100を用いたラインプリンタにおいては、記録ヘッド100は固定されており、また、使用する記録シート3200として専用のシートを採用する場合が多い。そのシート厚さは一定であるため、記録ヘッド100とシートとの干渉が起きにくく、記録シート3200へのインクの着弾精度を向上させるために、記録ヘッド100と記録シート3200との紙間距離を小さくする(例えば0.8mm程度)ことができる。紙間距離を小さくすると、記録ヘッド100は、ノイズ源となる搬送ローラー3320や記録シート3200に近接することになるため、記録ヘッド100に対するノイズの影響がより大きくなる恐れがある。そのため、このような場合においては、本実施形態のように、サイドプレート1600、1650で記録素子ユニット1000の長手方向の側面を覆う構成が更に有効となる。
【0056】
更に、フルライン型の記録ヘッドにおいては、シリアル型の記録ヘッドと比較して、多数の電気熱変換素子1102を同時に駆動させるために、より速いデータ転送速度が求められる。データ転送速度が速くなると、記録ヘッド100の電気配線基板1300から発生する放射ノイズは増加するため、放射ノイズによって隣接する記録ヘッド100に誤動作が生じる恐れがある。このような隣接する記録ヘッド100からの放射ノイズに対しても、サイドプレート1600、1650を設けたことによりシールド効果を得ることができ、隣接する記録ヘッド100の誤動作の恐れを低減することができる。
【0057】
本実施形態では、図15(a)に示すように、サイドプレートの側板1610が記録素子ユニット1000の吐出面側の際まで覆う構成となっている。このような構成とすることで、記録シート3200や搬送ローラー3310、3320に帯電した電荷が、電気配線基板1300に直接放電される恐れをより低減することができる。また、紙間距離に影響を与えない範囲であれば、図15(b)に示す構成を採用することもできる。すなわち、側板1610を電気配線基板1300に沿って折り曲げることで、記録素子ユニット1000の記録素子基板1100が実装された吐出面にも側板1610を配置する構成である。この場合、紙間距離が広がらないように、側板1610と記録素子基板1100の吐出面の高さを揃える、もしくは、吐出面よりもベースプレート1200側に所定の間隔Dを確保して側板1610を配置することが望ましい。
【0058】
なお、本実施形態では、電気配線基板1300は記録素子ユニット1000の長手方向に関する両側面上に沿って折り曲げられている。しかし、電気配線基板1300が片方の側面上に折り曲げられている構成であってもよい。
【0059】
(第二の実施形態)
本実施形態では、サイドプレート1600、1650が、記録装置3000のアースと電気的に導通する構成としている。以下、その詳細について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については記載を省く。
【0060】
本実施形態の記録ヘッド100は、支持部材1400、1405を導電性を有する材料から形成し、支持部材1400、1405と、第一の実施形態で示したサイドプレ−ト1600、1650とが電気的に導通されるように、両部材を接合したものである。導電性を有する材料としてはさまざまな種類の材料が使用できるが、導電率が比較的高く、形状自由度があり安価、剛性が高く軽量であることなどから、本実施形態の支持部材1400、1405の材料としては、アルミニウム材料を用いた。また、支持部材1400、1405と、サイドプレート1600、1650とをネジ留めすることにより接合しており、両部材が互いに電気的に導通される構成としている。支持部材1400、1405は、導電性を有する材料であれば異なる材料を選択しても良く、また、サイドプレート1600、1650と電気的に導通する限り、ネジ止め以外の手段で接合しても良い。
【0061】
さらに、本実施形態では、支持部材1400、1405と、記録装置3000のアースとが電気的に導通された構成となっている。すなわち、支持部材1400、1405に設けられた位置決め部1430と記録装置3000のヘッドホルダ3400(共に図11参照)を導電性を有する金属材料で形成し、ヘッドホルダ3400を記録装置3000のア−スに導通させている。これにより、記録ヘッド100をヘッドホルダ3400に装着することによって、図10の矢印Eで示した経路に沿って、サイドプレ−ト1600、1650は記録装置3000のア−スと電気的に導通され、接地されている。
【0062】
このように本実施形態は、サイドプレート1600、1650が記録装置3000のアースに電気的に導通された構成である。そのため、搬送ローラー3310、3320や記録シート3200に帯電した電荷が、サイドプレート1600、1650に放電されると、サイドプレート1600、1650から支持部材1400、1405を介して記録装置3000のアースに逃げる。したがって、記録ヘッド100への静電気放電によるノイズの発生の恐れをより低減することができる。
【0063】
なお、上述の実施形態は、フルライン型の記録ヘッド100が搭載されるラインプリンタを用いて説明したが、本発明の構成は、ラインプリンタに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
100 インクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
1100 記録素子基板
1102 電気熱変換素子(記録素子)
1200 ベースプレート(基材)
1200A 装着面
1300 電気配線基板
1600 サイドプレートA(導電部材)
1650 サイドプレートB(導電部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」とも称する)は、吐出口からインクを吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を備えた記録素子基板を有している。また、記録ヘッドは、記録素子を駆動するための電源や、記録素子を駆動するための信号を、外部から記録素子基板に供給するための電気配線基板を有している。
【0003】
ここで、画質を向上させるために、記録素子の数を増やすと、記録素子基板を駆動するための信号の数が増え、電気配線基板内の配線の数が多くなる。また、記録媒体の幅と同程度の印字幅を有するフルライン型の記録ヘッド(特許文献1)は、印字幅に対応させるために、記録素子基板の数が多くなる場合があり、このような場合においても、電気配線基板内の配線の数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット記録装置に設けられる、被記録媒体を搬送するための搬送機構と、吐出されたインクが記録される被記録媒体と、の摩擦などにより発生した静電気が、電気配線基板に放電される恐れがある。このとき、記録ヘッドを駆動するための信号を供給するための信号用配線に静電気が放電されると、ノイズが発生し、所望の記録に必要な信号と異なる信号が記録素子に入力され、所望のインク吐出が行われないことで、画質の低減を招く可能性がある。
【0006】
特に、電気配線基板内の配線の数が多い構成や、インクジェット記録ヘッドが被記録媒体の搬送機構などのノイズ源に近接する構成においては、上記のノイズの影響を受ける恐れが高まる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ノイズの影響を受け難く、ノイズによる画質の低減を抑制することが可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドは、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を有する記録素子基板と、前記記録素子基板が装着された装着面を有する基材と、前記装着面と隣り合う、前記基材の、前記装着面とは別の面、の上に配される部分を有し、前記記録素子基板に電気的に接続された電気配線基板と、前記部分を覆うように設けられた、導電性を有する導電部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズの影響を受け難く、ノイズによる画質の低減を抑制することが可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用可能な記録ヘッドを説明するための図であり、(a)は記録ヘッドの外観斜視図、(b)は記録ヘッドの下面図、(c)は、記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】記録素子ユニットの分解斜視図である。
【図3】記録素子基板を説明するための図であり、(a)は記録素子基板の外観斜視図、(b)は図3(a)のA−A断面図である。
【図4】ベースプレートを説明するための図であり、(a)は記録素子基板が配置される面(装着面)を含む外観斜視図、(b)はインク流入口及び流出口が設けられた面を含む外観斜視図、(c)は記録素子基板が配置される面から見た、内部のインク流路を透過させて示した平面図である。
【図5】電気配線基板の外観斜視図である。
【図6】支持部材A、Bを示す外観斜視図である。
【図7】インク供給部材を示す外観斜視図である。
【図8】駆動回路基板ユニットを示す分解斜視図である。
【図9】記録素子ユニットと駆動回路基板ユニットとが結合された状態を示す斜視図である。
【図10】記録装置の構成を説明するための図である。
【図11】本発明を適用可能な記録ヘッドが装着された状態の記録装置を示す図であり、(a)は図9のX方向から見た平面図、(b)は図11(a)のB−B断面を含む平面図である。
【図12】図10に示す記録装置の記録部の、記録ヘッドの短手方向に関する断面模式図である。
【図13】図12に示す記録素子ユニットの断面模式図である。
【図14】図13に示す記録素子ユニットの、サイドプレート近傍の模式図であり、(a)は、サイドプレートを取り付けた状態、(b)は、サイドプレートを取り付ける前の状態を示す。
【図15】図13に示す記録素子ユニットの、吐出面近傍の断面模式図であり、(a)は、第一の実施形態、(b)は、その変形例を示す。
【図16】電気配線基板と側板が密着していない状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用可能な液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェット記録ヘッドを例に説明する。図1から図11は、記録ヘッド、及びこれが装着されるインクジェット記録装置(以下、「記録装置」と称す)の構成を説明するための図である。
【0012】
(1)記録ヘッド
本発明を適用可能な記録ヘッド100の構成を図1に示す。記録ヘッド100は、使用が想定される紙などの記録シートの最大幅に対応する範囲にわたって、吐出口を有する記録素子基板1100が配置されており、記録ヘッド100を走査せず、高速の記録が可能なフルライン型の記録ヘッド100である。
【0013】
図1(c)に示すように、記録ヘッド100は、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とからなり、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000は、互いに機械的および電気的に着脱可能に結合される。
【0014】
(記録素子ユニット)
記録素子ユニット1000の分解斜視図を図2に示す。記録素子ユニット1000は、複数の記録素子基板1100、ベースプレート1200、2つの支持部材1400、1405、2つのインク供給部材1500、電気配線基板1300、2つのサイドプレート1600、1650から構成されている。
【0015】
複数の記録素子基板1100は、基材としてのベースプレート1200の装着面1200A上に、ベースプレート1200の長手方向に関して千鳥状に精度よく配設され、装着されている。2つの支持部材1400、1405と、2つのインク供給部材1500は、ベースプレート1200の長手方向に関する両端に固定される。電気配線基板1300は、ベースプレート1200に接着固定され、電気配線基板1300の短手方向の両端は折り曲げられている。
【0016】
次に、記録素子ユニット1000の構成をより詳細に説明する。
まず、記録素子基板1100の構成を図3(a)、(b)に示す。記録素子基板1100は、シリコン基板1108と吐出口プレート1110からなる。
【0017】
シリコン基板1108の厚さは、例えば0.5〜1mm程度である。シリコン基板1108には、シリコン基板1108の長手方向に延びた長溝状のインク供給口1101が形成されている。また、インク供給口1101の両側には、インクを吐出するためのエネルギーを発生する記録素子としてのヒーターなどの電気熱変換素子1102が、それぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。電気熱変換素子1102、及び電気熱変換素子1102と電気的に接続されるアルミニウム等の電気配線(不図示)は、成膜技術により形成されている。また、記録素子基板1100の長手方向の両端部には、電気配線基板1300と電気的に接続される電極1103が設けられている。
【0018】
シリコン基板1108の上には、樹脂材料からなる吐出口プレート1110が設けられており、吐出口プレート1110には、電気熱変換素子1102に対応したインク流路1104及び吐出口1105がフォトリソグラフィー技術により形成されている。吐出口1105は、電気熱変換素子1102と対向するように設けられている。すなわち、吐出口1105は、記録素子基板1100の長手方向に沿って配設されている。電気熱変換素子1102を駆動することより気泡を発生させて、インク供給口1101から供給されたインクを吐出口1105から吐出させる。
【0019】
次に、ベースプレート1200の構成を図4(a)〜(c)に示す。ベースプレート1200は、酸化アルミニウム(Al2O3;以下、アルミナと称する)で形成されたアルミナグリーンシートを複数積層し、焼成することで形成されている。アルミナグリーンシートの厚さは、例えば0.5〜1mm程度であり、これらが積層されたベースプレート1200の厚さは10mm程度である。ベースプレート1200には、記録素子基板1100のインク供給口1101にインクを供給するインク供給スリット1210と、インクタンク(不図示)からインク供給スリット1210にインクを供給するインク流路1220が形成されている。
【0020】
本実施形態では、ベースプレート1200の材料としてアルミナを用いたが、材料はこれに限られることない。ベースプレート1200の材料は、記録素子基板1100の、ベースプレート1200と接する部材の材料の線膨張率と同程度の線膨張率を有し、且つその材料の熱伝導率と同程度、もしくは同程度以上の熱伝導率を有する材料であればよい。ベースプレート1200の材料の例としては、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などが挙げられる。
【0021】
電気配線基板1300の構成を図5に示す。電気配線基板1300は、記録装置3000(図10参照)から送られる、電気熱変換素子1102を駆動する信号を、記録素子基板1100に伝送し、また、電気熱変換素子1102を駆動する電力を記録素子基板1100に供給する部材である。電気配線基板1300は、樹脂フィルム(フィルム部材)上に配線パターンが形成されたフレキシブル配線基板である。また、電気配線基板1300は、内部に記録素子基板1100を組み込むための複数の開口部1330を有しており、複数の開口部1330の両端には、記録素子基板1100の電極1103に対応する電極端子1340が形成されている。電気配線基板1300は、ベースプレート1200の、インク供給スリット1210が形成された面に接着され、固定される。電気配線基板1300は、記録装置3000からの記録ヘッド100を駆動する電気信号を受け取るための電気信号接続部1310と、記録装置3000から電力を受け取るための電源接続部1320を有している。
【0022】
電気配線基板1300と電気熱変換素子1102とは、例えば、記録素子基板1100の電極1103と電気配線基板1300の電極端子1340とを、金ワイヤー(不図示)を用いたワイヤーボンディング技術により接合することで、電気的に接続される。そして記録素子基板1100の電極1103、電気配線基板1300の電極端子1340、及びワイヤーは、封止剤により被覆され、インクによる腐食や外的衝撃から保護される。
【0023】
支持部材A1400、支持部材B1405の構成を図6に示す。二つの支持部材1400、1405は、記録ヘッド100を記録装置3000に固定するための部材であり、ベースプレ−ト1200の長手方向の両端にそれぞれ固定される。各支持部材1400、1405には、記録ヘッド100を記録装置3000に装着した際に、記録装置3000に設けられた位置決めピン3430(図11参照)と嵌合する位置決め穴A1410、位置決め穴B1415が形成されている。二つの位置決め穴1410、1415は、記録ヘッド100の短手方向(図9に示すX方向)及び記録ヘッド100の長手方向(図9に示すY方向)に関して、記録ヘッド100を適正な位置に装着するためのものである。支持部材A1400の位置決め穴A1410は丸穴、支持部材B1405の位置決め穴B1415は長穴になっている。また、記録ヘッド100を記録装置3000に装着した際に、記録ヘッド100を支持するヘッドホルダ3400(図11参照)につきあたる、位置決め部1430が形成されている。この位置決め部1430は、記録シートと記録素子基板1100の吐出口1105が設けられた側の面との間隔を一定に保持するため部材である。
【0024】
サイドプレ−ト1600、1650の構成については、後述の第一及び第二の実施形態で説明する。
【0025】
インク供給部材1500の構成を図7に示す。インク供給部材1500は、記録装置3000側の接続ユニット3410(図11(a)参照)と接続され、記録装置3000から記録素子ユニット1000にインクを供給する部材である。インク供給部材1500は、例えば樹脂材料で形成されており、記録装置3000に接続される二つの接続部1510、ベースプレート1200に接続される二つの開口部1520が設けられている。なお、記録装置3000と記録素子ユニット1000の間で、インクを循環させるために、接続部1510及び開口部1520は、それぞれ二つずつ設けられている。また、インク供給部材1500の内部には、接続部1510と開口部1520とをつなぐインク流路(不図示)が設けられており、インク流路の途中には、インク中に混入された異物や気泡を取り除くためのフィルター(不図示)が配置されている。そして、接続部1510には、記録装置3000のインク供給パイプと接合するためのジョイントゴムが装着されており、接続部1510は、記録装置3000の接続ユニット3410に接続される。また、開口部1520がベースプレート1200の端部付近に形成されたインク流入口1230、流出口1240(図4参照)と連通するように、インク供給部材1500はベースプレート1200に対して位置決めされる。
【0026】
(駆動回路基板ユニット)
駆動回路基板ユニット2000の構成を図8に示す。図8は、カバ−2300をはずした状態を示している。
【0027】
駆動回路基板ユニット2000の内部には記録ヘッド100の吐出駆動を制御するための駆動回路基板2100が収められ固定されている。駆動回路基板2100には、記録素子ユニット1000の電気配線基板1300に設けられた電気信号接続部1310と電気的に接続される電気信号コネクタ−2110と、記録素子ユニット1000に電源供給を行う電源コネクタ−2120が配置されている。そして、駆動回路基板2100側の電源コネクタ−2120と記録素子ユニット1000の電気配線基板1300側の電源接続部1320とは、ワイヤーハーネス2130を介して電気的に接続されている。
【0028】
(2)記録素子ユニットと駆動回路基板ユニットの結合
図1に示すように、記録ヘッド100は、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とが結合されたものであり、結合は以下のようになされている。
【0029】
まず、駆動回路基板ユニット2000は、記録素子ユニット1000の、記録素子基板1100が設けられた吐出面とは反対側で、記録素子ユニット1000の長手方向に関する両端に設けられた支持部材1400、1405の上に支持され、ネジ止めされている。そして、図9に示すように駆動回路基板2100に接続されたワイヤーハ−ネス2130が、記録素子ユニット1000の電気配線基板1300に取り付けられた電源接続部1320と接続されている。記録素子ユニット1000の電源接続部1320の近傍は、サイドプレ−トB1650と一体的に形成された配線基板固定部1655に固定されている(図1(c)参照)。この配線基板固定部1655は、記録素子ユニット1000の支持部材1400、1405に固定されている。
【0030】
図1に示すように、駆動回路基板ユニット2000はカバ−2300で覆われている。また、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000とが結合され、記録素子ユニット1000と駆動回路基板ユニット2000との間はほぼ隙間がない状態となる。
【0031】
(3)インクジェット記録装置
本発明の実施形態の記録装置3000の構成を図10に示す。記録装置3000は、長尺のフルライン型の記録ヘッド100を用いて、被記録媒体としての記録シート3200を搬送方向(図9に示すX方向)に連続搬送しながら記録を行うラインプリンタである。記録装置3000は、ロール状に巻かれた記録シート3200を保持するホルダ(不図示)、記録シート3200を所定速度でX方向へ搬送する搬送機構3300、記録シート3200に対して記録ヘッド100を用いて記録を行う記録部3100を備えている。なお、記録シート3200は連続したロールシートに限らず、カットシートであってもよい。更に、記録装置3000は、記録ヘッド100に供給するためのインクを収容するインクタンク(不図示)を備えている。記録部3100には、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド100が並列して備えられている。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四色に対応した四つの記録ヘッド100としているが、色の数や色の種類はこれに限定されない。
【0032】
記録ヘッド100が装着された状態の記録装置3000を図11に示す。記録ヘッド100の長手方向に関する両端部に設けられた接続部1510と、記録装置3000の接続ユニット3410とが接続されており、この接続された部分において、記録ヘッド100へのインクの導入、記録ヘッド100からのインクの導出が行われる。各色のインクはインクタンクからそれぞれインクチューブ3420を介して、記録ヘッド100に供給される。
【0033】
接続部1510より記録ヘッド100の長手方向に関する内側に配置された位置決め穴1410、1415(図6参照)が、ヘッドホルダ3400の位置決めピン3430と嵌合されている。また、記録ヘッド100の位置決め部1430がヘッドホルダ3400に突きあてられることにより、記録ヘッド100の記録装置3000に対する位置決めがなされている。記録ヘッド100の両端に設けられた支持部材1400、1405が、ヘッド固定ボルト1450でそれぞれ記録装置3000に固定され、保持されている。
【0034】
(第一の実施形態)
以下、本発明の要部について説明する。
インクジェット記録装置3000におけるノイズ源としては、搬送時における被記録媒体(記録シート3200)と、搬送機構3300(特に搬送ローラー3310、3320)とが、主なものとなる。具体的には、記録シート3200と搬送ローラー3310、3320との摩擦や、搬送ローラー3310、3320の軸と軸受けとの摩擦により、静電気が生じ、この静電気が電気配線基板1300の信号用の配線に放電されるとノイズが発生する恐れがある。したがって、電気配線基板1300を、これらのノイズ源から離間、もしくは遮蔽することが好ましい。
【0035】
しかし、特に記録装置3000がラインプリンタの場合、ラインプリンタは複数の色に対応した記録ヘッド100を有しており、この記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設けると、電気配線基板1300はノイズ源に近接されることになる。
【0036】
記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設ける理由としては、以下のような理由が挙げられる。
〔1〕記録ヘッド100が色毎複数、被記録媒体の搬送方向に並設されるため、搬送方向に関する記録部3100(図10)全体の幅が広くなり、コックリング(被記録媒体が波打つ現象)の恐れが高まるため。
〔2〕特に、被記録媒体としてロール紙を使用する場合、用紙にカール癖がついているため、コックリングの影響が顕著になる恐れがあるため。
〔3〕ラインプリンタの場合、シリアルプリンタに比べ、被記録媒体に短時間に大量のインクが付着するため、その水分によりコックリングが起こる可能性が高まるため。
【0037】
また、〔3〕のコックリングの影響を考慮すると、短時間で記録する方が望ましいために、記録ヘッド100同士の間隔を極力狭くして配置することが好ましい。更に、記録ヘッド100同士の間隔を狭くすることで、記録装置3000を小型化することも可能である。
【0038】
上述のように、ラインプリンタの記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320が設けられる構成では、ノイズ源と電気配線基板1300が近接する構成となる事がわかる。
【0039】
本発明者らは、このノイズ対策として、電気配線基板1300をシールド部材によって覆う構成で対応しようと考えた。シールド部材を設けることで、ノイズ発生の原因となる静電気をシールド部材内で分散させることができる。これにより、電気配線基板1300に静電気が放電してノイズが発生する恐れを低減し、また、ノイズ発生による画質の低減の恐れを抑制することが可能である。
【0040】
しかし、記録素子ユニット1000の記録素子基板1100が配される面である吐出面側にシールド部材を設けると、吐出面と被記録媒体との距離(以降、「紙間距離」と称す)を広げる可能性がある。被記録媒体に対するインクの着弾精度を低減させないためには、紙間距離を広げない方が好ましい。そのため、本実施形態においては、吐出面側を除く、記録ヘッド100の側面に配される電気配線基板1300をシールド部材としてのサイドプレートA1600、サイドプレートB1650で覆う構成とした。
【0041】
以下、図12〜図16を用いて、本実施形態の要部を詳述する。
図12は、図10に示す記録装置3000の記録部3100周辺の、記録ヘッド100の短手方向に関する断面模式図である。図13は、図12に示す記録素子ユニット1000の断面模式図である。図14(a)は、図13に示す記録素子ユニット1000の、サイドプレート1650近傍の模式図であり、記録素子ユニット1000の短手方向に関する断面図を示している。図14(b)は、図14(a)に対応する、サイドプレート1650を取り付ける前の状態の記録素子ユニット1000を示す分解図を示している。
【0042】
本実施形態の記録装置3000の記録部3100は、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド100を備えている。図12に示すように、記録シート3200の搬送方向に関する記録ヘッド100(記録素子ユニット1000)の前後には第一の搬送ローラー3310と第二の搬送ローラー3320が配置されている。二つの搬送ローラー3310、3320によって、記録シート3200が挟まれており、第一の搬送ローラー3310と第二の搬送ローラー3320は、回転することで記録シート3200に搬送力を与えている。更に、二つの搬送ローラー3310、3320は、記録シート3200のコックリングを抑えて記録ヘッド100の記録素子基板1100との間で一定の間隔を保つ役割を有している。
【0043】
上述したように、本実施形態では、記録素子ユニット1000の構成部材である二つのサイドプレ−ト1600、1650を導電性を有する材料とし、フレキシブル配線基板である電気配線基板1300のシールド部材(導電部材)として用いている。図2を用いて、サイドプレートA1600、サイドプレートB1650の構成を説明する。二つのサイドプレート1600、1650は、記録ヘッド100の長手方向に関する側面を覆う薄い板状の部材である。サイドプレートA1600は、棒状のベースバーA1601に板状の側板1610が溶接されたものである。サイドプレートB1650は、電気配線基板1300の電源接続部1320の周囲を固定するための板状の配線基板固定部1655が一体的に形成された棒状のベースバ−B1651に、板状の側板1610が溶接されたものである。
【0044】
図13に示すように、二つのサイドプレート1600、1650は、電気配線基板1300の、記録素子ユニット1000の長手方向の側面上に配される部分の表面を覆うように設けられ、二つの支持部材1400、1405に固定される。
【0045】
二つのサイドプレート1600、1650を構成する側板1610及びベースバー1601、1651を、導電性を有する材料で形成し、サイドプレート1600、1650全体として導電性を有する構成とした。本実施形態では、導電率が比較的高く、インクによって腐食されにくく、形状自由度があり安価、剛性が高く、経時劣化しにくい、などの理由から、サイドプレート1600、1650を構成する部材をいずれもSUS材料を用いて形成している。なお、本実施形態においては、電気配線基板1300に静電気が放電される恐れを低減できればよいので、サイドプレート1600、1650の材料として、電気配線基板1300を構成するフィルムよりも電気伝導率が高い部材を用いればよい。導電性を有する材料であれば、板状の側板1610、棒状のベースバー1601、1651を異なる材料で構成しても良く、両部材が電気的に導通する構成であれば、ネジ留めなど異なる手段で、両部材を接合しても良い。さらに、側板1610とベ−スバ−1601、1651を一体的に一つの部材で形成してもよい。
【0046】
このように、本実施形態においては、記録素子ユニット1000の長手方向に関する側面上に設けられた電気配線基板1300を、サイドプレート1600、1650で覆う構成としている。これにより、ノイズ発生の原因となる静電気をサイドプレート1600、1650内で分散させることができ、電気配線基板1300に静電気が放電してノイズが発生する恐れを低減し、また、ノイズ発生による画質の低減の恐れを抑制することが可能である。
【0047】
記録ヘッド100側に設けられる搬送ローラー3310からの静電気放電の恐れを抑制するためには、サイドプレート1600、1650は、少なくとも搬送ローラー3310と対向する高さまで設けられていればよい。なお、静電気の電荷を分散させる観点からは、サイドプレート1600、1650の面積は大きいほど望ましい。
【0048】
図12に示すように、本実施形においては、記録素子ユニット1000の吐出面側の端部付近にノイズ源となる搬送ローラー3310が設けられている。そのため、記録素子ユニット1000の吐出面側にシールド部材が設けられておらず、更にサイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との間に隙間があると、この隙間から電荷が侵入する恐れがある。すなわち、図16に示すように、記録シート3200や第二の搬送ローラー3320の側に、電気配線基板1300と側板1610との隙間Cがあると、静電気の電荷Nが電気配線基板1300に放電され、ノイズが発生する恐れがあるためである。
【0049】
そのため、図14(a)の破線で囲う領域Aに示すように、記録素子ユニット1000の吐出面側の端部近傍では、側板1610と電気配線基板1300とが密着した状態である方が望ましい。本実施形態では、サイドプレート1600、1650として板バネ部材(弾性部材)を用いている。ベースプレート1200の長手方向に関する側面上で、側板1610の弾性力により側板1610が電気配線基板1300を押さえる方向に付勢することで、両者が密着している。これにより、サイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との隙間から電荷が侵入する恐れを低減でき、サイドプレート1600、1650と電気配線基板との間に隙間がある場合よりも、ノイズの影響を低減することができる。
【0050】
なお、サイドプレート1600、1650の吐出面側の端部と電気配線基板1300との間に間隙を設けないための構成は、上述の、サイドプレート1600、1650として板バネ部材を用いた構成に限定されない。サイドプレート1600、1650と電気配線基板1300とを接着剤を用いて接着する構成であってもよい。しかし、接着剤を用いるよりも、製造工程が容易で、接着剤のように記録ヘッド100の短手方向に関する幅が大きくなる恐れもないため、板バネ部材を用いることがより望ましい。
【0051】
また、図13、14に示すように、サイドプレート1600、1650は、ネジ1700で、支持部材1400、1405に固定されている。サイドプレート1600、1650を、ベースプレート1200に対してネジ固定する構成であると、隣接する記録ヘッド100の方向に、ネジが突出してしまう。そこで、ネジ1700が、ベースプレート1200の短手方向に関する幅内に収まるように、支持部材1400、1405の一部を窪ませる構成としている(図14(a)参照)。このような構成とすることで、記録ヘッド100の短手方向に関する幅が大きくなる恐れを低減することが可能である。
【0052】
更に、ベースプレート1200の短手方向に関する幅内に、支持部材1400、1405が収まるように、支持部材1400、1405の幅寸法を設定している。これにより、ベースプレート1200の長手方向に関する側面の領域A内(図14(a)参照)で、電気配線基板1300と側板1610とを確実に密着させることができる。
【0053】
また、記録ヘッド100間に搬送ローラー3310、3320を設けた構成であると、記録シート3200と搬送ローラー3310、3320との摩擦により、記録シート3200の搬送方向の下流ほど、記録シート3200の帯電量が増加する恐れがある。しかし、本実施形態においては、サイドプレート1600、1650を設けており、摩擦により生じた静電気は、記録素子基板1100や電気配線基板1300よりもサイドプレート1600、1650に放電されやすい。そのため、記録シート3200の搬送の途中で、記録シート3200に蓄積された静電気を、サイドプレート1600、1650に放電させることにより、電気配線基板1300や記録素子基板1100に直接電荷が放電される恐れを低減することができる。
【0054】
なお、記録シート3200に帯電された電荷が記録素子基板1100に放電される恐れを抑制するためには、記録シート3200の搬送方向に関する記録ヘッド100の上流側の側面上に配される電気配線基板1300を覆うように、サイドプレートを設ければよい。この位置に導電性のサイドプレートを配することで、記録シート3200が、搬送ローラー3310、3320と摩擦接触された直後、且つ、記録素子基板1100と対向する位置に搬送される前に、記録シート3200がサイドプレートの近傍を通過するためである。
【0055】
また、本実施形態のような、フルライン型の記録ヘッド100を用いたラインプリンタにおいては、記録ヘッド100は固定されており、また、使用する記録シート3200として専用のシートを採用する場合が多い。そのシート厚さは一定であるため、記録ヘッド100とシートとの干渉が起きにくく、記録シート3200へのインクの着弾精度を向上させるために、記録ヘッド100と記録シート3200との紙間距離を小さくする(例えば0.8mm程度)ことができる。紙間距離を小さくすると、記録ヘッド100は、ノイズ源となる搬送ローラー3320や記録シート3200に近接することになるため、記録ヘッド100に対するノイズの影響がより大きくなる恐れがある。そのため、このような場合においては、本実施形態のように、サイドプレート1600、1650で記録素子ユニット1000の長手方向の側面を覆う構成が更に有効となる。
【0056】
更に、フルライン型の記録ヘッドにおいては、シリアル型の記録ヘッドと比較して、多数の電気熱変換素子1102を同時に駆動させるために、より速いデータ転送速度が求められる。データ転送速度が速くなると、記録ヘッド100の電気配線基板1300から発生する放射ノイズは増加するため、放射ノイズによって隣接する記録ヘッド100に誤動作が生じる恐れがある。このような隣接する記録ヘッド100からの放射ノイズに対しても、サイドプレート1600、1650を設けたことによりシールド効果を得ることができ、隣接する記録ヘッド100の誤動作の恐れを低減することができる。
【0057】
本実施形態では、図15(a)に示すように、サイドプレートの側板1610が記録素子ユニット1000の吐出面側の際まで覆う構成となっている。このような構成とすることで、記録シート3200や搬送ローラー3310、3320に帯電した電荷が、電気配線基板1300に直接放電される恐れをより低減することができる。また、紙間距離に影響を与えない範囲であれば、図15(b)に示す構成を採用することもできる。すなわち、側板1610を電気配線基板1300に沿って折り曲げることで、記録素子ユニット1000の記録素子基板1100が実装された吐出面にも側板1610を配置する構成である。この場合、紙間距離が広がらないように、側板1610と記録素子基板1100の吐出面の高さを揃える、もしくは、吐出面よりもベースプレート1200側に所定の間隔Dを確保して側板1610を配置することが望ましい。
【0058】
なお、本実施形態では、電気配線基板1300は記録素子ユニット1000の長手方向に関する両側面上に沿って折り曲げられている。しかし、電気配線基板1300が片方の側面上に折り曲げられている構成であってもよい。
【0059】
(第二の実施形態)
本実施形態では、サイドプレート1600、1650が、記録装置3000のアースと電気的に導通する構成としている。以下、その詳細について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については記載を省く。
【0060】
本実施形態の記録ヘッド100は、支持部材1400、1405を導電性を有する材料から形成し、支持部材1400、1405と、第一の実施形態で示したサイドプレ−ト1600、1650とが電気的に導通されるように、両部材を接合したものである。導電性を有する材料としてはさまざまな種類の材料が使用できるが、導電率が比較的高く、形状自由度があり安価、剛性が高く軽量であることなどから、本実施形態の支持部材1400、1405の材料としては、アルミニウム材料を用いた。また、支持部材1400、1405と、サイドプレート1600、1650とをネジ留めすることにより接合しており、両部材が互いに電気的に導通される構成としている。支持部材1400、1405は、導電性を有する材料であれば異なる材料を選択しても良く、また、サイドプレート1600、1650と電気的に導通する限り、ネジ止め以外の手段で接合しても良い。
【0061】
さらに、本実施形態では、支持部材1400、1405と、記録装置3000のアースとが電気的に導通された構成となっている。すなわち、支持部材1400、1405に設けられた位置決め部1430と記録装置3000のヘッドホルダ3400(共に図11参照)を導電性を有する金属材料で形成し、ヘッドホルダ3400を記録装置3000のア−スに導通させている。これにより、記録ヘッド100をヘッドホルダ3400に装着することによって、図10の矢印Eで示した経路に沿って、サイドプレ−ト1600、1650は記録装置3000のア−スと電気的に導通され、接地されている。
【0062】
このように本実施形態は、サイドプレート1600、1650が記録装置3000のアースに電気的に導通された構成である。そのため、搬送ローラー3310、3320や記録シート3200に帯電した電荷が、サイドプレート1600、1650に放電されると、サイドプレート1600、1650から支持部材1400、1405を介して記録装置3000のアースに逃げる。したがって、記録ヘッド100への静電気放電によるノイズの発生の恐れをより低減することができる。
【0063】
なお、上述の実施形態は、フルライン型の記録ヘッド100が搭載されるラインプリンタを用いて説明したが、本発明の構成は、ラインプリンタに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
100 インクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
1100 記録素子基板
1102 電気熱変換素子(記録素子)
1200 ベースプレート(基材)
1200A 装着面
1300 電気配線基板
1600 サイドプレートA(導電部材)
1650 サイドプレートB(導電部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を有する記録素子基板と、
前記記録素子基板が装着された装着面を有する基材と、
前記装着面と隣り合う、前記基材の、前記装着面とは別の面、の上に配される部分を有し、前記記録素子基板に電気的に接続された電気配線基板と、
前記部分を覆うように設けられた、導電性を有する導電部材と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドは、前記導電部材とは別の、導電性を有する導電部材を有し、前記導電部材は、前記別の導電部材を介して接地されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記別の導電部材は、前記基材を支持する支持部材であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記部分は、前記別の面の、前記装着面と隣り合う端部、まで配されており、前記端部の近傍において、前記部分と前記導電部材とが密着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記導電部材は、弾性を有する弾性部材であり、前記導電部材の弾性力により該導電部材が前記部分を前記基材に対して付勢することで、前記端部の近傍において、前記部分と前記導電部材とが密着されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記電気配線基板は、配線と、該配線を覆うフィルム部材と、を有しており、
前記導電部材は、前記フィルム部材よりも高い電気伝導率を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記電気配線基板は、前記記録素子基板に、前記記録素子を駆動する信号を伝送するための配線を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドが複数並列して装着される液体吐出装置であって、
前記導電部材に対向するように配された、前記液体吐出ヘッドから吐出された液体を受ける被記録媒体を搬送するための搬送機構、を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、隣接する前記液体吐出ヘッドの間に設けられており、
前記搬送機構によって被記録媒体が搬送される方向に関する前記液体吐出ヘッドの少なくとも上流側に、前記導電部材によって覆われた前記部分が配されていることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項1】
吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子を有する記録素子基板と、
前記記録素子基板が装着された装着面を有する基材と、
前記装着面と隣り合う、前記基材の、前記装着面とは別の面、の上に配される部分を有し、前記記録素子基板に電気的に接続された電気配線基板と、
前記部分を覆うように設けられた、導電性を有する導電部材と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドは、前記導電部材とは別の、導電性を有する導電部材を有し、前記導電部材は、前記別の導電部材を介して接地されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記別の導電部材は、前記基材を支持する支持部材であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記部分は、前記別の面の、前記装着面と隣り合う端部、まで配されており、前記端部の近傍において、前記部分と前記導電部材とが密着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記導電部材は、弾性を有する弾性部材であり、前記導電部材の弾性力により該導電部材が前記部分を前記基材に対して付勢することで、前記端部の近傍において、前記部分と前記導電部材とが密着されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記電気配線基板は、配線と、該配線を覆うフィルム部材と、を有しており、
前記導電部材は、前記フィルム部材よりも高い電気伝導率を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記電気配線基板は、前記記録素子基板に、前記記録素子を駆動する信号を伝送するための配線を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドが複数並列して装着される液体吐出装置であって、
前記導電部材に対向するように配された、前記液体吐出ヘッドから吐出された液体を受ける被記録媒体を搬送するための搬送機構、を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、隣接する前記液体吐出ヘッドの間に設けられており、
前記搬送機構によって被記録媒体が搬送される方向に関する前記液体吐出ヘッドの少なくとも上流側に、前記導電部材によって覆われた前記部分が配されていることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図1】
【公開番号】特開2011−240519(P2011−240519A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112363(P2010−112363)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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