液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
【課題】液体のスムーズな供給を確保しつつ、ゴミなどの異物を補足して、液体の良好な吐出性能を維持することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】ヒータボード1と天板5との間に、それらの対向間隔が比較的小さい範囲A0と、それらの対向間隔が比較的大きい範囲A2と、を形成し、範囲A2に共通液室6を形成し、かつ、その共通液室6内に複数の突起11を設ける。
【解決手段】ヒータボード1と天板5との間に、それらの対向間隔が比較的小さい範囲A0と、それらの対向間隔が比較的大きい範囲A2と、を形成し、範囲A2に共通液室6を形成し、かつ、その共通液室6内に複数の突起11を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッド、および、それを備えるインクジェット記録装置などとして、広く適用可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の液体吐出ヘッドには、一般に、液体の供給方向の上流側から吐出口に向う液流路が設けられており、その液流路には、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子が備えられている。電気熱変換体を備えた場合には、その発熱により液流路内の液体を発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口から液体を吐出することができる。
【0003】
このような液体吐出ヘッドは、液体を吐出口へ安定して供給するために、液流路の断面積が吐出口の断面積よりも大きくなっている。そのため、液体中に不純物粒子等のゴミが存在した場合には、そのゴミが液流路を通過して吐出口の近傍に達するおそれがある。吐出口近傍にゴミが達した場合には、液体を吐出する際に、その吐出方向がずれたり、吐出量が変化したりして、正常な吐出が行われなくなるおそれがある。また、吐出口がゴミによって塞がれた場合には、液体が吐出できなくなるおそれがある。また、気泡が混在した液体が液体吐出ヘッドに供給された場合には、液流路内に進入した気泡によって液体のスムーズな流れが妨げられて、吐出性能が不安定となるおそれがあった。
【0004】
特許文献1には、このようなゴミによる悪影響を回避するために、液流路における吐出エネルギー発生素子の位置よりも反吐出口側の位置に、(a),(b),(c),(d)のいずれかのフィルタ構造を備えた記録ヘッドが記載されている。(a)は、複数の開口部が曲路を形成する構造、(b)は、開口部と突起で形成される断面を有する構造、(c)は、開口部の吐出口側に凹部を有する柱を設ける構造、(d)は、複数の突起が設けられた断面を有する構造である。
【0005】
また、特許文献2には、液体の共通液室内に複数の突起を配備し、その共通液室から液流路への液体の供給方向に向かうにしたがって、隣接する突起間の最小距離を小さく設定したフィルタ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−312506号公報
【特許文献2】特開2009−190371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2のフィルタ構造における突起は、共通液室や液流路を形成する基板と天板との間に掛け渡されるように形成されているため、その突起によって流路抵抗が増大し、液体のスムーズな供給が阻害されるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、液体のスムーズな供給を確保しつつ、ゴミなどの異物を補足して、液体の良好な吐出性能を維持することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドは、基板と天板との間に、複数の吐出口に連通する複数の液流路と、前記複数の液流路に連通する共通液室と、が形成され、前記共通液室から前記液流路に供給された液体を当該液流路に対応する前記吐出口から吐出可能な液体吐出ヘッドにおいて、前記基板と前記天板との間に、前記基板と前記天板との対向間隔が第1の対向間隔である第1領域と、前記基板と前記天板との対向間隔が前記第1の対向間隔よりも大きい第2の対向間隔である第2領域と、を形成し、前記第1領域に前記複数の液流路を形成し、前記第2領域に前記共通液室を形成し、前記共通液室内に複数の突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板と天板との間の比較大きい空間に共通液室を形成して、その共通液室内に複数の突起を設けたことにより、比較的大きい共通液室内において、複数の突起が液体のスムーズな供給を損なうことなく、ゴミなどの異物を補足することができる。また、突起の先端を自由端とすることにより、液体をよりスムーズに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の液体吐出ヘッドとしての記録ヘッドを備えた記録装置の概略正面図である。
【図2】図1における記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】図2における記録ヘッドのノズル部分の一部切欠き斜視図である。
【図4】(a)は、図2の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のIVB−IVB線に沿う断面図、(c)は、(b)のIVC−IVC線に沿う拡大断面図、(d)は、(b)のIVD矢視図である。
【図5】図2における記録ヘッド内のインクの流れの説明図である。
【図6】(a)から(e)は、図2における吐出エレメントの製造工程を説明するための断面図である。
【図7】(a)から(e)は、図2における吐出エレメントの製造工程を説明するための断面図であり、それぞれ図6(a)から(e)のXII−XII線に沿う断面である。
【図8】(a)は、本発明の第2の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、(c)は、(a)のVIIIC−VIIIC線に沿う拡大断面図である。
【図9】(a)は、本発明の第3の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のIXB−IXB線に沿う断面図、(c)は、(b)のIXC矢視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態におけるノズル部分の一部切欠き斜視図である。
【図11】(a)は、図10におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【図12】(a),(b)は、突起の有無によるインクの渦の発生状況の違いを説明するための図である。
【図13】(a)は、本発明の第5の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)XIIIB−XIIIB線に沿う断面図である。
【図14】(a)から(e)は、本発明の第5の実施形態におけるインクの流れと異物の挙動の説明図である。
【図15】(a)は、本発明の第6の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)XVB−XVB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(液体吐出装置)200の内部構造の概略を示す正面図であり、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態としてのインクジェット記録ヘッド100が備えられている。記録装置200には、液体としてのインクを吐出する複数の記録ヘッド100が交換可能に備えられている。201は、それぞれの記録ヘッド100に個別に対応する回復ユニットであり、202は、インクを収納するカートリッジ形態のインクタンクであり、203は、オペレーションパネル部である。204は記録媒体の搬送部、205は、記録媒体を記録装置本体に送給する給紙部である。
【0014】
本例の記録装置200は、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置であり、記録媒体を図1中の右方から左方に連続的に搬送しつつ、記録ヘッド100の吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録することができる。本例の場合には、インクタンク201から供給されたイエロー(Y),ライトマゼンタ(LM),マゼンタ(M),ライトシアン(LC),シアン(C),ブラック(K)のインクを対応する記録ヘッド100から吐出する。これにより、カラー画像を記録することができる。回復ユニット210は、記録ヘッド100におけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理に用いられる。その回復処理としては、記録ヘッドとインクタンクとの間においてインクを循環させて、その循環経路においてインク中のゴミや気泡を除去する循環回復動作を含むことができる。さらに、画像の記録に寄与しないインクを吐出口からキャップ内に吐出する予備吐出動作、および、記録ヘッド内のインクを加圧して、それを吐出口からキャップ内に強制的に排出させる加圧回復動作などを含むことができる。さらに、吐出口からキャップ内にインクを吸引排出させる吸引回復動作、吐出口が形成される記録ヘッド100の吐出口面をワイピングするワイピング動作などを含むこともできる。
【0015】
図2は、記録ヘッド100の分解斜視図である。
【0016】
101は、記録ヘッド100の主要部をなす吐出エレメントであり、その一側面がセラミック製のベースプレート102に支持されている。吐出エレメント101には、後述するように、共通液室と、複数の吐出口と、共通液室と吐出口との間を連通する複数のインク流路(液流路)と、吐出エネルギー発生素子と、が備えられている。本例の場合、吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換体(ヒータ)が備えられている。吐出エレメント101の他側面には配線基板103が配されており、その配線基板103は、吐出エレメント101上に設けられる配線(吐出エネルギー発生素子やその駆動素子用の配線など)の電極部に対して、ワイヤボンディングにより電気的に接続される。104は、吐出エレメント101に対するインクの供給経路を形成するためのインク流路形成部材であり、配線基板103に設けた開口を通して、吐出エレメント101内に設けられる後述の共通液室に接続される。
【0017】
本例におけるインクの供給経路は、記録ヘッド100とインクタンク202との間においてインクを循環可能な循環経路を形成している。すなわち、インクタンク202内のインクは、インク流路形成部材104を介して吐出エレメント101内の共通液室に移送され、その移送されたインクが共通液室から、それぞれのインク流路に分配される。また、共通液室内のインクは、インク流路形成部材104を介してインクタンク202に還流させることができる。
【0018】
図3は、吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断の斜視図である。ヒータボード(基板)1には、複数のインク流路3のそれぞれに対応する位置に、吐出エネルギー発生素子としての電気熱変換体(ヒータ)2が配置されている。ヒータ2の発熱によってインク流路3内のインクが発泡され、その発泡エネルギーを利用して、吐出口7からインクを吐出させることができる。以下においては、インク流路3と吐出口7とをまとめて「ノズル」ともいう。ヒータ2としては、チッ化タンタル等の抵抗体が用いられ、その厚さは0.01〜0.5μm、そのシート抵抗は単位正方形当たり10〜300Ωである。ヒータ2は、チッ化タンタル以外の材料、例えばホウ化ハフニウムなどで形成されたものでもよく、その厚さやシート抵抗についても特に限定されるものではない。
【0019】
ヒータ2の両端部には、通電を行うためのアルミニウム等からなる一対の電極配線(不図示)が接続されており、一方の電極配線には、通電をオン/オフするためのスイッチングトランジスタ(不図示)が接続されている。ゲート素子等を含む回路からなる制御用IC(不図示)は、記録ヘッドの外部から入力される記録信号に応じてスイッチングトランジスタを制御する。
【0020】
ヒータボード1上において、互いに隣接するヒータ2の間にはノズル側壁4が形成されている。そのノズル側壁4の上面には、厚さ2μm程度の天板接着層(図示せず)を介して、Si等で形成された天板5が配置される。これにより、ヒータボード1、ノズル側壁4、および天板接着層によって囲まれた管状のインク流路3が形成される。天板5には、異方性エッチング等の方法によって開口5Aが形成されており、この開口5Aにインク流路形成部材104が接続されることによって、共通液室6へのインクの導入等が可能となる。ヒータボード1および天板5との間には、後述する共通流路12、共通流路入口13、およびノズル入口14が形成されている。共通液室6には、複数の柱状の突起11が設けられており、それらの突起11の基端はヒータボード1に固定され、それらの先端は、天板5に接しない自由端となっている。したがって、突起11は、ヒータボード1に片持ちされている。複数の突起11は、ゴミや気泡などの異物を捕捉するためのフィルタとして機能するものであり、ノズルの配列方向と平行に並ぶように配列されている。これらの複数の突起11の配列方向は、後述するように、共通液室6から共通流路12を通してインク流路3へインクを供給する方向と交差(本例の場合は直交)する。
【0021】
ヒータボード1において、ノズルが形成される側の反対側には、記録信号をヒータ2に伝達するための電気パッド9が形成されている。その電気パッド9は、電気配線板8のパッド部9とワイヤー10により電気的に接続されている。
【0022】
以上の構成において、記録ヘッド100の外部から入力される記録信号に応じて、制御用ICがスイッチングトランジスタを駆動制御することによって、ヒータ2の通電がオン/オフされる。共通液室6から各インク流路3に供給されたインクは、ヒータ2上において加熱されて発泡する。そして、その発泡による圧力により、ヒータ2よりもインクの供給方向下流側のインクが吐出口7から吐出される。そのインクはインク滴が飛翔し、記録媒体に着弾することによりドットを形成する。
【0023】
図4は、記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。図4(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線に沿う断面図、図4(c)は、図4(b)のIVC−IVC線に沿う拡大断面図、図4(d)は、図4(b)のIVD矢視図である。
【0024】
本実施形態における突起11は円柱形状であり、前述したように、共通液室6内に配備されていて、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端11Aとされている。図4(a),(b)において、P1は、ノズル側壁4のインク供給方向上流端部の位置であり、この位置P1と吐出口7との間にノズルのインク流路3が形成されているため、以下、このノズル内の位置P1をノズル入口14ともいう。P2は、天板5がヒータボード1から離れる方向(図4(b)中の右斜め上方)に傾斜し始める位置であり、この位置P2から図4(a),(b)中の右方の範囲A2に共通液室6が形成される。位置P1は、位置P2よりも吐出口7側にずれており、それらの位置P1,P2の間の範囲A1には共通流路12が形成されている。以下、この位置P2を共通流路入口13ともいう。共通流路12は、ノズル側壁4が形成されていないため、複数のノズルに対して共通する通路である。したがって、共通液室6内に供給されたインクは、共通流路12を通ってから、複数のインク流路3のそれぞれに導入されることになる。
【0025】
天板5の内面が共通流路入口13の位置P2から図4(b)中の右斜め上方に傾斜する。言い換えれば、天板5の内面は、ノズル内におけるインク供給方向に関して共通流路入口13から離れるに従い、ヒータボード1から離れる傾斜面を有している。そのため、ヒータボード1と天板5と間において共通液室6が形成される範囲A2は、ヒータボード1と天板5と対向間隔(第2の対向間隔)が比較的大きい領域(第2領域)となる。一方、吐出口7からノズル入口14の位置P2までの範囲A0は、ヒータボード1と天板5との対向間隔(第1の対向間隔)が比較的小さい領域(第1領域)となる。
【0026】
複数の突起11は、ノズルの配列方向(図4(a)中の上下方向)に配列されている。突起11は、範囲A1の共通流路12には設置されていない。それらの突起11の配列方向と、共通液室6から共通流路12を通してインク流路3に供給されるインクの供給方向(図4(a)中の矢印X方向)と、は互いに交差(本例の場合は直交)する。共通液室6内において、互いに隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11A上の2点と、天板5の内面5B上の1点と、の計3点を通る最小の仮想円(以下、最小円という)CAの直径(第1の直径)をD1とする。その最小円CAが通る3点をそれぞれC1,C2,C3とする。したがって、直径がD1を越える変形しない仮想の球体(第1仮想球体)は、隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11Aと、天板5の内面5Bと、のすべてが変形しない構造体としたとき、これらの間を通過できない。
【0027】
図4(d)中の仮想円(以下、最大円という)CBは、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路が変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能な変形しない最大の仮想球体(第2仮想球体)の外周であり、その直径(第2の直径)をD2とする。したがって、直径がD2以下の変形しない仮想球体は、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路を変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能である。しかし、直径がD2を超える変形しない仮想球体は、その流路を通過することができない。本例の場合、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路の各部分の断面の内、吐出口7の断面が最小であり、図4(d)のように、吐出口7の上下の内面に接する円が最大円CBとなる。ここで言う、最小の断面とは、ヒータボード1と天板5との距離及びインク流路3内において隣接するノズル側壁4間の距離のうち何れか小さい方が、流路の各部分の断面のなかで一番小さいものを言う。D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0028】
共通液室6内のインクは、隣接する突起11,11間の隙間を通ってインク流路3内に流入する。また、突起11の自由端11Aが天板5の内面5Bに接することなく、それらの間に空間が形成されているため、共通液室6内のインクは、その空間も通って、インク流路3内に流入する。このように、共通液室6内のインクは、前者の隙間のみにならず、後者の空間をも通過するため、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さくして、共通液室6内のインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。したがって、後述するように異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0029】
図5は、共通液室6にゴミなどの異物が流入した場合において、共通液室6内のインクがノズル内に流入する際の異物の挙動の説明図である。
【0030】
図5のように、共通液室6内に直径D3(D3>D1)の異物15が流入した場合、その異物15は、互いに隣接する突起11,11の自由端11A,11Aと、天板5の内面5Bと、の間を通過できず、それらの間において捕捉される。したがって、その異物15は、共通流路12内への進入が阻止される。一方、直径D4(D4<D1)の異物16が混入した場合、その異物16は、共通流路入口13から吐出口7に至る流路内において引っかかることなく導入され、最終的には、インク滴17と共に外部に排出される。
【0031】
次に、記録ヘッド100における吐出エレメント101の製造方法について説明する(図6および図7参照)。
【0032】
図6(a)から(e)は、製造段階における吐出エレメント101を吐出口7側から見るように断面した図である。図7(a)から(e)は、それぞれ、対応する図6(a)から(e)のXII−XII線に沿う断面図であり、製造段階における吐出エレメント101をノズルの長手方向に沿って断面した図である。本実施形態では、2つの吐出エレメント101を一体的に製造する段階を経てから、図7(d)中の切断線CLに沿って切断されることにより、図7(e)のような吐出エレメント101が2つ製造され、切断線CLに沿う切断面に吐出口7が形成される。吐出エレメントの製造方法は、本例の方法に限定されるものではなく、それを単体で製造する方法であってもよい。
【0033】
まずは、図6(a)および図7(a)のように、シリコンウエハからなるヒータボード1上に、半導体製造工程において用いる製造装置と同様の装置を用いて、ホウ化ハフニウムやチッ化タンタル等からなるヒータ2を形成する。ヒータボード1には、ヒータ2を選択的に駆動するためのスイッチングトランジスタ等の半導体素子を含む駆動回路を予め作り込んでおくことができる。その後、次の工程におけるヒータボード1と感光性樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、ヒータボード1の表面を処理する。すなわち、ヒータボード1の表面を洗浄してから、紫外線−オゾン等による表面改質を行い、その後、その改質表面上に、例えばシランカップリング剤をエチルアルコールで1重量%に希釈した液をスピンコートする。
【0034】
次に、ヒータボード1の表面洗浄を行ってから、図6(b)および図7(b)のように、密着性が向上されたヒータボード1上に感光性樹脂フィルムDFをラミネートする。そして、フォトマスクを介して、ノズル側壁4および突起11として残す感光性樹脂フィルムDFの部分に、紫外線を照射する。
【0035】
次に、感光性樹脂フィルムDFをキシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液によって現像し、感光性樹脂フィルムDFの未露光部分を融解させる。これにより、図6(c)および図7(c)のように、ヒータボード1上に所望の形状のノズル側壁4と突起11が形成される。
【0036】
次に、図6(d)および図7(d)のように、ノズル側壁4の上に、感光性樹脂フィルムを材料とした天板接着層が予めラミネートされた天板5を溶着する。このとき、200℃程度のキュアを要する。
【0037】
以上の工程を経て2つの吐出エレメント101を一体的に製造した後に、図6(e)および図7(e)のように、それらの吐出エレメント101の吐出口7の突合せ面に対応する切断線CLに沿って切断する。これにより、それら2つの吐出エレメント101を分離する。例えば、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシンを用いて切断することにより、2つの吐出エレメント101を切り離す。その後、それらの切断面を平滑化するための研磨を行うことによって、吐出エレメント101が完成する。
【0038】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。本実施形態は、実施形態1に対しインク流路3の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図8(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、図8(c)は、図8(a)のVIIIC−VIIIC線に沿う拡大断面図である。
【0039】
本実施形態において、ノズル入口14からヒータ2までの間の範囲A3内に位置するノズル側壁4の部分4Aは、その幅がノズル入口14側から吐出口7側に向かって徐々に大きく設定されている。図8(c)は、部分4Aにおいて最大幅Wとなる箇所の断面図である。共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路において、隣接するノズル側壁4,4の部分4A,4A間の幅が最も小さい。したがって本例の場合、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路を変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能な変形しない仮想の最大球体の直径D2は、図8(c)のように、隣接するノズル側壁4,4の部分4A,4Aに内接する円仮想の円(以下、内接円という)CCの直径である。前述した実施形態と同様に、D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0040】
本実施形態においても前述した実施形態と同様に、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さく、異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図9(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図9(b)は、図9(a)のIXB−IXB線に沿う断面図、図9(c)は、図9(b)のIXC矢視図である。
【0042】
本実施形態における突起11は断面三角形の柱状であり、互いに隣接する突起11の間隔は、インクの供給方向(矢印X方向)の上流側から下流側に向かって小さくなるように形成されている。前述した実施形態と同様に、互いに隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11A上の2点と、天板5の内面5B上の1点と、の計3点を通る最小の仮想円(最小円)CAの直径をD1とし、その最小円CAが通る3点をそれぞれC1,C2,C3とする。また、第1の実施形態と同様に、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路の各部分の断面の内、吐出口7の断面が最小となっており、図9(c)のように、吐出口7の上下の内面に接する円が直径D2の最大円CBとなる。前述した実施形態と同様に、D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0043】
本実施形態においても前述した実施形態と同様に、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さく、異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。また、互いに隣接する突起11の間隔がインクの供給方向(矢印X方向)の上流側から下流側に向かって小さなっているため、インクをよりスムーズに供給することができる。
【0044】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態の記録ヘッドにおける吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断の斜視図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の配置が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図11(a)は、その記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図11(b)は、図11(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【0045】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起21を配備した構成となっている。突起21は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端21Aとされている。複数の突起21は、インクの供給方向(矢印X方向)に向かうにしたがって、密度が高くなるように配置されている。
【0046】
本例の突起21は、突起11と同様の円柱形状であり、突起11の列L1と平行の列L2,L3に沿うように配列されている。列L1と列L2との間の距離D11と、列L2と列L3との間の距離D12と、はD11<D12の関係にあり、列L2上に配列された突起21の間隔S1と、列L3上に配列された突起21の間隔S2と、はS1<S2の関係にある。これにより、複数の突起21は、インクの供給方向(矢印X方向)に向かうにしたがって配置密度が高くなる突起群を形成する。
【0047】
このように複数の突起21を配備することにより、その突起21が低密度の配置されたインクの供給方向の上流側の位置において、比較的大きい異物F3を捕捉することができる。また、突起21が高密度に配置されたインクの供給方向の下流側の位置においては、突起11と天板5との間にて捕捉される異物F1よりも大きくて、異物F3よりも小さく異物F2を捕捉することができる。このように、インクの供給方向の上流側に向かうにしたがって、より大きい異物を捕捉することができる。つまり、インク流路3に対するインクの流入を妨害するおそれがある大きな異物は、インク流路3からより離れた位置にて捉えることができる。このことは、異物の存在によるインクの流抵抗を小さく抑えて、インクをスムーズに供給する上において好ましい。
【0048】
図12(a),(b)は、突起21の有無によるインクの渦の発生状況の違いを説明するための図である。
【0049】
これらの図において、符号31を付した矢印はインクの流れの方向を示し、突起21がない場合には、図12(a)のように、インクの供給方向に流れるインクは、突起11や天板5に衝突した後、インク流路3内に流入する。その際、突起11や天板5に当たってからインク流路3内に入ったインクは、比較的大きな渦30を形成する。この渦30は、ノズルに対するインクのスムーズな供給を阻害し、インクの吐出に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、突起21がある場合には、図12(b)のように、インクの供給方向に流れるインクは、突起11,21や天板5に衝突してからインク流路3内に流入する。その際、インク流路3内に入ったインクによって形成される渦32は、比較的小さく抑えられる。それは、インクの流れが突起11に衝突する前に突起21に衝突して、インクの単純な流れの勢いが抑えられるからである。したがって、ノズルに対してインクをスムーズに供給して、インクの吐出状態を良好に維持することができる。
【0050】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図13(b)は、図13(a)のXIIIB−XIIIB線に沿う断面図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の配置が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。
【0051】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起41を配備した構成となっている。突起41は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端41Aとされている。複数の突起41は、突起11の列L1と平行の列L11に沿って、突起11と同様の間隔Eで配列されている。列L1と列L11との間の距離D21は、間隔Eよりも小さい。これは、突起11と天板5との間にて捕捉される異物F1が突起11と突起41との間に入り込まないようにするためである。本例の突起41は、突起11と同様の円柱形状となっている。
【0052】
図14(a)から(e)は、インクの吐出時におけるインクの流れと異物F1の挙動を説明するための図である。
【0053】
突起11と天板5との間に異物F1が挟まっている図14(a)の状態において、インクを吐出するためにヒータ2を発熱させることにより、図14(b)のようにインク中に気泡51が発生する。気泡51は矢印52A方向に成長し、それに伴って、インク流路3内のインクが矢印53A,54A方向に押圧される(図14(b),(C))。インク流路3内のインクは、矢印53Aに押圧されることにより吐出口7から矢印55方向に吐出される。また、インク流路3内のインクは、矢印54A方向に押圧されることによりインクの供給方向と逆の方向に押し戻され、そのインクの流れにより、突起11と天板5との間に挟まっている異物F1が図14(c)中の矢印56方向に押し出される。
【0054】
その後、ヒータ2の発熱が終了し、気泡51が矢印52B方向に収縮する(図14(d))。その際、インク流路3内のインクは矢印53B,54B方向に流れる。しかし、既に異物F1が矢印56方向に動かされているため、および、気泡51の収縮によるインクの流れの変化が異物F1に影響するまでに時間が掛かるために、異物F1は、図14(d),(e)のように移動して突起41に捕捉される。このように、突起11と天板5との間にて捕捉されている異物F1を取り除いて突起41に捕捉することにより、突起11の自由端11Aと天板5の間の空間を確保して、インクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0055】
(第6の実施形態)
図15は、本発明の第6の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図15(b)は、図15(a)のXVB−XVB線に沿う断面図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。
【0056】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起61を配備した構成となっている。突起61は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端61Aとされている。複数の突起61は、突起11の列L1と平行の列L12に沿って、突起11と同様の間隔Eで配列されている。突起61は、その自由端61Aが突起11の自由端11Aよりも図15(b)中の上方に位置するように設けられている。本例の場合、突起61は、突起11と同様の円柱形状とされ、その高さH2が突起11の高さH1よりも大きく設定されている。
【0057】
このような突起61を設置することにより、突起11と天板5との間に捕捉される異物F1よりも大きな異物F4を捉えることができる。すなわち、突起61の自由端61Aと天板5の内面5Bとの間に、異物F1よりも大きい異物F4を捕捉することができる。また、図15(a),(b)のように、インクの供給方向に沿って位置するように異物F4,F1が捕捉された場合には、隣接する突起11の間、および隣接する突起61の間を通して、共通液室6内のインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。したがって、突起61を設けなかった場合よりも異物F1,F4の捕捉位置を離して、よりスムーズにインクを供給することができる。なお、突起61として、高さが異なる2種類以上の突起を複数列配備してもよい。
【0058】
(他の実施形態)
本発明の液体吐出ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドの他、種々の液体を吐出するためのヘッドとして広く適用することができ、例えば、種々の処理液や薬剤などを吐出するためのヘッドとして用いることもできる。また、本発明の液体吐出装置は、インクジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、種々の処理液や薬剤などを処理部材に付与するための装置として、広く適用することができる。
【0059】
また、突起は、上述した実施形態のようにヒータボードに片持ちされる他、天板に片持ちされてもよい。すなわち、突起の基端をヒータボードと天板の一方に固定し、突起の先端は、ヒータボードと天板の他方に接しない自由端とすることができる。また、突起は、ヒートボードと天板との間に掛け渡すように設けてもよい。また、突起の形状は、円柱形状および三角柱形状のみに特定されず任意である。また突起の形成材料は、液流路と同じ形成材料(感光性樹脂材料など)とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒータボード(基板)
2 ヒータ
3 インク流路
4 ノズル側壁
5 天板
6 共通液室
7 吐出口
11 突起
12 共通流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッド、および、それを備えるインクジェット記録装置などとして、広く適用可能な液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の液体吐出ヘッドには、一般に、液体の供給方向の上流側から吐出口に向う液流路が設けられており、その液流路には、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子が備えられている。電気熱変換体を備えた場合には、その発熱により液流路内の液体を発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口から液体を吐出することができる。
【0003】
このような液体吐出ヘッドは、液体を吐出口へ安定して供給するために、液流路の断面積が吐出口の断面積よりも大きくなっている。そのため、液体中に不純物粒子等のゴミが存在した場合には、そのゴミが液流路を通過して吐出口の近傍に達するおそれがある。吐出口近傍にゴミが達した場合には、液体を吐出する際に、その吐出方向がずれたり、吐出量が変化したりして、正常な吐出が行われなくなるおそれがある。また、吐出口がゴミによって塞がれた場合には、液体が吐出できなくなるおそれがある。また、気泡が混在した液体が液体吐出ヘッドに供給された場合には、液流路内に進入した気泡によって液体のスムーズな流れが妨げられて、吐出性能が不安定となるおそれがあった。
【0004】
特許文献1には、このようなゴミによる悪影響を回避するために、液流路における吐出エネルギー発生素子の位置よりも反吐出口側の位置に、(a),(b),(c),(d)のいずれかのフィルタ構造を備えた記録ヘッドが記載されている。(a)は、複数の開口部が曲路を形成する構造、(b)は、開口部と突起で形成される断面を有する構造、(c)は、開口部の吐出口側に凹部を有する柱を設ける構造、(d)は、複数の突起が設けられた断面を有する構造である。
【0005】
また、特許文献2には、液体の共通液室内に複数の突起を配備し、その共通液室から液流路への液体の供給方向に向かうにしたがって、隣接する突起間の最小距離を小さく設定したフィルタ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−312506号公報
【特許文献2】特開2009−190371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2のフィルタ構造における突起は、共通液室や液流路を形成する基板と天板との間に掛け渡されるように形成されているため、その突起によって流路抵抗が増大し、液体のスムーズな供給が阻害されるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、液体のスムーズな供給を確保しつつ、ゴミなどの異物を補足して、液体の良好な吐出性能を維持することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドは、基板と天板との間に、複数の吐出口に連通する複数の液流路と、前記複数の液流路に連通する共通液室と、が形成され、前記共通液室から前記液流路に供給された液体を当該液流路に対応する前記吐出口から吐出可能な液体吐出ヘッドにおいて、前記基板と前記天板との間に、前記基板と前記天板との対向間隔が第1の対向間隔である第1領域と、前記基板と前記天板との対向間隔が前記第1の対向間隔よりも大きい第2の対向間隔である第2領域と、を形成し、前記第1領域に前記複数の液流路を形成し、前記第2領域に前記共通液室を形成し、前記共通液室内に複数の突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板と天板との間の比較大きい空間に共通液室を形成して、その共通液室内に複数の突起を設けたことにより、比較的大きい共通液室内において、複数の突起が液体のスムーズな供給を損なうことなく、ゴミなどの異物を補足することができる。また、突起の先端を自由端とすることにより、液体をよりスムーズに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の液体吐出ヘッドとしての記録ヘッドを備えた記録装置の概略正面図である。
【図2】図1における記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】図2における記録ヘッドのノズル部分の一部切欠き斜視図である。
【図4】(a)は、図2の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のIVB−IVB線に沿う断面図、(c)は、(b)のIVC−IVC線に沿う拡大断面図、(d)は、(b)のIVD矢視図である。
【図5】図2における記録ヘッド内のインクの流れの説明図である。
【図6】(a)から(e)は、図2における吐出エレメントの製造工程を説明するための断面図である。
【図7】(a)から(e)は、図2における吐出エレメントの製造工程を説明するための断面図であり、それぞれ図6(a)から(e)のXII−XII線に沿う断面である。
【図8】(a)は、本発明の第2の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、(c)は、(a)のVIIIC−VIIIC線に沿う拡大断面図である。
【図9】(a)は、本発明の第3の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のIXB−IXB線に沿う断面図、(c)は、(b)のIXC矢視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態におけるノズル部分の一部切欠き斜視図である。
【図11】(a)は、図10におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【図12】(a),(b)は、突起の有無によるインクの渦の発生状況の違いを説明するための図である。
【図13】(a)は、本発明の第5の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)XIIIB−XIIIB線に沿う断面図である。
【図14】(a)から(e)は、本発明の第5の実施形態におけるインクの流れと異物の挙動の説明図である。
【図15】(a)は、本発明の第6の実施形態におけるノズルおよび突起の部分を天板側から視た平面図、(b)は、(a)XVB−XVB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(液体吐出装置)200の内部構造の概略を示す正面図であり、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態としてのインクジェット記録ヘッド100が備えられている。記録装置200には、液体としてのインクを吐出する複数の記録ヘッド100が交換可能に備えられている。201は、それぞれの記録ヘッド100に個別に対応する回復ユニットであり、202は、インクを収納するカートリッジ形態のインクタンクであり、203は、オペレーションパネル部である。204は記録媒体の搬送部、205は、記録媒体を記録装置本体に送給する給紙部である。
【0014】
本例の記録装置200は、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置であり、記録媒体を図1中の右方から左方に連続的に搬送しつつ、記録ヘッド100の吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録することができる。本例の場合には、インクタンク201から供給されたイエロー(Y),ライトマゼンタ(LM),マゼンタ(M),ライトシアン(LC),シアン(C),ブラック(K)のインクを対応する記録ヘッド100から吐出する。これにより、カラー画像を記録することができる。回復ユニット210は、記録ヘッド100におけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理に用いられる。その回復処理としては、記録ヘッドとインクタンクとの間においてインクを循環させて、その循環経路においてインク中のゴミや気泡を除去する循環回復動作を含むことができる。さらに、画像の記録に寄与しないインクを吐出口からキャップ内に吐出する予備吐出動作、および、記録ヘッド内のインクを加圧して、それを吐出口からキャップ内に強制的に排出させる加圧回復動作などを含むことができる。さらに、吐出口からキャップ内にインクを吸引排出させる吸引回復動作、吐出口が形成される記録ヘッド100の吐出口面をワイピングするワイピング動作などを含むこともできる。
【0015】
図2は、記録ヘッド100の分解斜視図である。
【0016】
101は、記録ヘッド100の主要部をなす吐出エレメントであり、その一側面がセラミック製のベースプレート102に支持されている。吐出エレメント101には、後述するように、共通液室と、複数の吐出口と、共通液室と吐出口との間を連通する複数のインク流路(液流路)と、吐出エネルギー発生素子と、が備えられている。本例の場合、吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換体(ヒータ)が備えられている。吐出エレメント101の他側面には配線基板103が配されており、その配線基板103は、吐出エレメント101上に設けられる配線(吐出エネルギー発生素子やその駆動素子用の配線など)の電極部に対して、ワイヤボンディングにより電気的に接続される。104は、吐出エレメント101に対するインクの供給経路を形成するためのインク流路形成部材であり、配線基板103に設けた開口を通して、吐出エレメント101内に設けられる後述の共通液室に接続される。
【0017】
本例におけるインクの供給経路は、記録ヘッド100とインクタンク202との間においてインクを循環可能な循環経路を形成している。すなわち、インクタンク202内のインクは、インク流路形成部材104を介して吐出エレメント101内の共通液室に移送され、その移送されたインクが共通液室から、それぞれのインク流路に分配される。また、共通液室内のインクは、インク流路形成部材104を介してインクタンク202に還流させることができる。
【0018】
図3は、吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断の斜視図である。ヒータボード(基板)1には、複数のインク流路3のそれぞれに対応する位置に、吐出エネルギー発生素子としての電気熱変換体(ヒータ)2が配置されている。ヒータ2の発熱によってインク流路3内のインクが発泡され、その発泡エネルギーを利用して、吐出口7からインクを吐出させることができる。以下においては、インク流路3と吐出口7とをまとめて「ノズル」ともいう。ヒータ2としては、チッ化タンタル等の抵抗体が用いられ、その厚さは0.01〜0.5μm、そのシート抵抗は単位正方形当たり10〜300Ωである。ヒータ2は、チッ化タンタル以外の材料、例えばホウ化ハフニウムなどで形成されたものでもよく、その厚さやシート抵抗についても特に限定されるものではない。
【0019】
ヒータ2の両端部には、通電を行うためのアルミニウム等からなる一対の電極配線(不図示)が接続されており、一方の電極配線には、通電をオン/オフするためのスイッチングトランジスタ(不図示)が接続されている。ゲート素子等を含む回路からなる制御用IC(不図示)は、記録ヘッドの外部から入力される記録信号に応じてスイッチングトランジスタを制御する。
【0020】
ヒータボード1上において、互いに隣接するヒータ2の間にはノズル側壁4が形成されている。そのノズル側壁4の上面には、厚さ2μm程度の天板接着層(図示せず)を介して、Si等で形成された天板5が配置される。これにより、ヒータボード1、ノズル側壁4、および天板接着層によって囲まれた管状のインク流路3が形成される。天板5には、異方性エッチング等の方法によって開口5Aが形成されており、この開口5Aにインク流路形成部材104が接続されることによって、共通液室6へのインクの導入等が可能となる。ヒータボード1および天板5との間には、後述する共通流路12、共通流路入口13、およびノズル入口14が形成されている。共通液室6には、複数の柱状の突起11が設けられており、それらの突起11の基端はヒータボード1に固定され、それらの先端は、天板5に接しない自由端となっている。したがって、突起11は、ヒータボード1に片持ちされている。複数の突起11は、ゴミや気泡などの異物を捕捉するためのフィルタとして機能するものであり、ノズルの配列方向と平行に並ぶように配列されている。これらの複数の突起11の配列方向は、後述するように、共通液室6から共通流路12を通してインク流路3へインクを供給する方向と交差(本例の場合は直交)する。
【0021】
ヒータボード1において、ノズルが形成される側の反対側には、記録信号をヒータ2に伝達するための電気パッド9が形成されている。その電気パッド9は、電気配線板8のパッド部9とワイヤー10により電気的に接続されている。
【0022】
以上の構成において、記録ヘッド100の外部から入力される記録信号に応じて、制御用ICがスイッチングトランジスタを駆動制御することによって、ヒータ2の通電がオン/オフされる。共通液室6から各インク流路3に供給されたインクは、ヒータ2上において加熱されて発泡する。そして、その発泡による圧力により、ヒータ2よりもインクの供給方向下流側のインクが吐出口7から吐出される。そのインクはインク滴が飛翔し、記録媒体に着弾することによりドットを形成する。
【0023】
図4は、記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。図4(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線に沿う断面図、図4(c)は、図4(b)のIVC−IVC線に沿う拡大断面図、図4(d)は、図4(b)のIVD矢視図である。
【0024】
本実施形態における突起11は円柱形状であり、前述したように、共通液室6内に配備されていて、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端11Aとされている。図4(a),(b)において、P1は、ノズル側壁4のインク供給方向上流端部の位置であり、この位置P1と吐出口7との間にノズルのインク流路3が形成されているため、以下、このノズル内の位置P1をノズル入口14ともいう。P2は、天板5がヒータボード1から離れる方向(図4(b)中の右斜め上方)に傾斜し始める位置であり、この位置P2から図4(a),(b)中の右方の範囲A2に共通液室6が形成される。位置P1は、位置P2よりも吐出口7側にずれており、それらの位置P1,P2の間の範囲A1には共通流路12が形成されている。以下、この位置P2を共通流路入口13ともいう。共通流路12は、ノズル側壁4が形成されていないため、複数のノズルに対して共通する通路である。したがって、共通液室6内に供給されたインクは、共通流路12を通ってから、複数のインク流路3のそれぞれに導入されることになる。
【0025】
天板5の内面が共通流路入口13の位置P2から図4(b)中の右斜め上方に傾斜する。言い換えれば、天板5の内面は、ノズル内におけるインク供給方向に関して共通流路入口13から離れるに従い、ヒータボード1から離れる傾斜面を有している。そのため、ヒータボード1と天板5と間において共通液室6が形成される範囲A2は、ヒータボード1と天板5と対向間隔(第2の対向間隔)が比較的大きい領域(第2領域)となる。一方、吐出口7からノズル入口14の位置P2までの範囲A0は、ヒータボード1と天板5との対向間隔(第1の対向間隔)が比較的小さい領域(第1領域)となる。
【0026】
複数の突起11は、ノズルの配列方向(図4(a)中の上下方向)に配列されている。突起11は、範囲A1の共通流路12には設置されていない。それらの突起11の配列方向と、共通液室6から共通流路12を通してインク流路3に供給されるインクの供給方向(図4(a)中の矢印X方向)と、は互いに交差(本例の場合は直交)する。共通液室6内において、互いに隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11A上の2点と、天板5の内面5B上の1点と、の計3点を通る最小の仮想円(以下、最小円という)CAの直径(第1の直径)をD1とする。その最小円CAが通る3点をそれぞれC1,C2,C3とする。したがって、直径がD1を越える変形しない仮想の球体(第1仮想球体)は、隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11Aと、天板5の内面5Bと、のすべてが変形しない構造体としたとき、これらの間を通過できない。
【0027】
図4(d)中の仮想円(以下、最大円という)CBは、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路が変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能な変形しない最大の仮想球体(第2仮想球体)の外周であり、その直径(第2の直径)をD2とする。したがって、直径がD2以下の変形しない仮想球体は、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路を変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能である。しかし、直径がD2を超える変形しない仮想球体は、その流路を通過することができない。本例の場合、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路の各部分の断面の内、吐出口7の断面が最小であり、図4(d)のように、吐出口7の上下の内面に接する円が最大円CBとなる。ここで言う、最小の断面とは、ヒータボード1と天板5との距離及びインク流路3内において隣接するノズル側壁4間の距離のうち何れか小さい方が、流路の各部分の断面のなかで一番小さいものを言う。D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0028】
共通液室6内のインクは、隣接する突起11,11間の隙間を通ってインク流路3内に流入する。また、突起11の自由端11Aが天板5の内面5Bに接することなく、それらの間に空間が形成されているため、共通液室6内のインクは、その空間も通って、インク流路3内に流入する。このように、共通液室6内のインクは、前者の隙間のみにならず、後者の空間をも通過するため、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さくして、共通液室6内のインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。したがって、後述するように異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0029】
図5は、共通液室6にゴミなどの異物が流入した場合において、共通液室6内のインクがノズル内に流入する際の異物の挙動の説明図である。
【0030】
図5のように、共通液室6内に直径D3(D3>D1)の異物15が流入した場合、その異物15は、互いに隣接する突起11,11の自由端11A,11Aと、天板5の内面5Bと、の間を通過できず、それらの間において捕捉される。したがって、その異物15は、共通流路12内への進入が阻止される。一方、直径D4(D4<D1)の異物16が混入した場合、その異物16は、共通流路入口13から吐出口7に至る流路内において引っかかることなく導入され、最終的には、インク滴17と共に外部に排出される。
【0031】
次に、記録ヘッド100における吐出エレメント101の製造方法について説明する(図6および図7参照)。
【0032】
図6(a)から(e)は、製造段階における吐出エレメント101を吐出口7側から見るように断面した図である。図7(a)から(e)は、それぞれ、対応する図6(a)から(e)のXII−XII線に沿う断面図であり、製造段階における吐出エレメント101をノズルの長手方向に沿って断面した図である。本実施形態では、2つの吐出エレメント101を一体的に製造する段階を経てから、図7(d)中の切断線CLに沿って切断されることにより、図7(e)のような吐出エレメント101が2つ製造され、切断線CLに沿う切断面に吐出口7が形成される。吐出エレメントの製造方法は、本例の方法に限定されるものではなく、それを単体で製造する方法であってもよい。
【0033】
まずは、図6(a)および図7(a)のように、シリコンウエハからなるヒータボード1上に、半導体製造工程において用いる製造装置と同様の装置を用いて、ホウ化ハフニウムやチッ化タンタル等からなるヒータ2を形成する。ヒータボード1には、ヒータ2を選択的に駆動するためのスイッチングトランジスタ等の半導体素子を含む駆動回路を予め作り込んでおくことができる。その後、次の工程におけるヒータボード1と感光性樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、ヒータボード1の表面を処理する。すなわち、ヒータボード1の表面を洗浄してから、紫外線−オゾン等による表面改質を行い、その後、その改質表面上に、例えばシランカップリング剤をエチルアルコールで1重量%に希釈した液をスピンコートする。
【0034】
次に、ヒータボード1の表面洗浄を行ってから、図6(b)および図7(b)のように、密着性が向上されたヒータボード1上に感光性樹脂フィルムDFをラミネートする。そして、フォトマスクを介して、ノズル側壁4および突起11として残す感光性樹脂フィルムDFの部分に、紫外線を照射する。
【0035】
次に、感光性樹脂フィルムDFをキシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液によって現像し、感光性樹脂フィルムDFの未露光部分を融解させる。これにより、図6(c)および図7(c)のように、ヒータボード1上に所望の形状のノズル側壁4と突起11が形成される。
【0036】
次に、図6(d)および図7(d)のように、ノズル側壁4の上に、感光性樹脂フィルムを材料とした天板接着層が予めラミネートされた天板5を溶着する。このとき、200℃程度のキュアを要する。
【0037】
以上の工程を経て2つの吐出エレメント101を一体的に製造した後に、図6(e)および図7(e)のように、それらの吐出エレメント101の吐出口7の突合せ面に対応する切断線CLに沿って切断する。これにより、それら2つの吐出エレメント101を分離する。例えば、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシンを用いて切断することにより、2つの吐出エレメント101を切り離す。その後、それらの切断面を平滑化するための研磨を行うことによって、吐出エレメント101が完成する。
【0038】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。本実施形態は、実施形態1に対しインク流路3の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図8(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、図8(c)は、図8(a)のVIIIC−VIIIC線に沿う拡大断面図である。
【0039】
本実施形態において、ノズル入口14からヒータ2までの間の範囲A3内に位置するノズル側壁4の部分4Aは、その幅がノズル入口14側から吐出口7側に向かって徐々に大きく設定されている。図8(c)は、部分4Aにおいて最大幅Wとなる箇所の断面図である。共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路において、隣接するノズル側壁4,4の部分4A,4A間の幅が最も小さい。したがって本例の場合、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路を変形しない構造体としたとき、この流路を通過可能な変形しない仮想の最大球体の直径D2は、図8(c)のように、隣接するノズル側壁4,4の部分4A,4Aに内接する円仮想の円(以下、内接円という)CCの直径である。前述した実施形態と同様に、D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0040】
本実施形態においても前述した実施形態と同様に、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さく、異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと突起11の部分の説明図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図9(a)は、ノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図9(b)は、図9(a)のIXB−IXB線に沿う断面図、図9(c)は、図9(b)のIXC矢視図である。
【0042】
本実施形態における突起11は断面三角形の柱状であり、互いに隣接する突起11の間隔は、インクの供給方向(矢印X方向)の上流側から下流側に向かって小さくなるように形成されている。前述した実施形態と同様に、互いに隣接する2つの突起11,11の自由端11A,11A上の2点と、天板5の内面5B上の1点と、の計3点を通る最小の仮想円(最小円)CAの直径をD1とし、その最小円CAが通る3点をそれぞれC1,C2,C3とする。また、第1の実施形態と同様に、共通流路入口13から吐出口7に至るまでの間の流路の各部分の断面の内、吐出口7の断面が最小となっており、図9(c)のように、吐出口7の上下の内面に接する円が直径D2の最大円CBとなる。前述した実施形態と同様に、D1とD2は、D1<D2の関係となっている。また、互いに隣接する突起11,11の間隔Eは、E<D2の関係となっている。本例において、D1とEはE<D1の関係となっている。それらD1とEの関係はE=D1であってもよい。
【0043】
本実施形態においても前述した実施形態と同様に、共通液室6から共通通路12に流入するインクの流抵抗を小さく、異物15が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。また、互いに隣接する突起11の間隔がインクの供給方向(矢印X方向)の上流側から下流側に向かって小さなっているため、インクをよりスムーズに供給することができる。
【0044】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態の記録ヘッドにおける吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断の斜視図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の配置が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。図11(a)は、その記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図11(b)は、図11(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【0045】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起21を配備した構成となっている。突起21は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端21Aとされている。複数の突起21は、インクの供給方向(矢印X方向)に向かうにしたがって、密度が高くなるように配置されている。
【0046】
本例の突起21は、突起11と同様の円柱形状であり、突起11の列L1と平行の列L2,L3に沿うように配列されている。列L1と列L2との間の距離D11と、列L2と列L3との間の距離D12と、はD11<D12の関係にあり、列L2上に配列された突起21の間隔S1と、列L3上に配列された突起21の間隔S2と、はS1<S2の関係にある。これにより、複数の突起21は、インクの供給方向(矢印X方向)に向かうにしたがって配置密度が高くなる突起群を形成する。
【0047】
このように複数の突起21を配備することにより、その突起21が低密度の配置されたインクの供給方向の上流側の位置において、比較的大きい異物F3を捕捉することができる。また、突起21が高密度に配置されたインクの供給方向の下流側の位置においては、突起11と天板5との間にて捕捉される異物F1よりも大きくて、異物F3よりも小さく異物F2を捕捉することができる。このように、インクの供給方向の上流側に向かうにしたがって、より大きい異物を捕捉することができる。つまり、インク流路3に対するインクの流入を妨害するおそれがある大きな異物は、インク流路3からより離れた位置にて捉えることができる。このことは、異物の存在によるインクの流抵抗を小さく抑えて、インクをスムーズに供給する上において好ましい。
【0048】
図12(a),(b)は、突起21の有無によるインクの渦の発生状況の違いを説明するための図である。
【0049】
これらの図において、符号31を付した矢印はインクの流れの方向を示し、突起21がない場合には、図12(a)のように、インクの供給方向に流れるインクは、突起11や天板5に衝突した後、インク流路3内に流入する。その際、突起11や天板5に当たってからインク流路3内に入ったインクは、比較的大きな渦30を形成する。この渦30は、ノズルに対するインクのスムーズな供給を阻害し、インクの吐出に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、突起21がある場合には、図12(b)のように、インクの供給方向に流れるインクは、突起11,21や天板5に衝突してからインク流路3内に流入する。その際、インク流路3内に入ったインクによって形成される渦32は、比較的小さく抑えられる。それは、インクの流れが突起11に衝突する前に突起21に衝突して、インクの単純な流れの勢いが抑えられるからである。したがって、ノズルに対してインクをスムーズに供給して、インクの吐出状態を良好に維持することができる。
【0050】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図13(b)は、図13(a)のXIIIB−XIIIB線に沿う断面図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の配置が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。
【0051】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起41を配備した構成となっている。突起41は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端41Aとされている。複数の突起41は、突起11の列L1と平行の列L11に沿って、突起11と同様の間隔Eで配列されている。列L1と列L11との間の距離D21は、間隔Eよりも小さい。これは、突起11と天板5との間にて捕捉される異物F1が突起11と突起41との間に入り込まないようにするためである。本例の突起41は、突起11と同様の円柱形状となっている。
【0052】
図14(a)から(e)は、インクの吐出時におけるインクの流れと異物F1の挙動を説明するための図である。
【0053】
突起11と天板5との間に異物F1が挟まっている図14(a)の状態において、インクを吐出するためにヒータ2を発熱させることにより、図14(b)のようにインク中に気泡51が発生する。気泡51は矢印52A方向に成長し、それに伴って、インク流路3内のインクが矢印53A,54A方向に押圧される(図14(b),(C))。インク流路3内のインクは、矢印53Aに押圧されることにより吐出口7から矢印55方向に吐出される。また、インク流路3内のインクは、矢印54A方向に押圧されることによりインクの供給方向と逆の方向に押し戻され、そのインクの流れにより、突起11と天板5との間に挟まっている異物F1が図14(c)中の矢印56方向に押し出される。
【0054】
その後、ヒータ2の発熱が終了し、気泡51が矢印52B方向に収縮する(図14(d))。その際、インク流路3内のインクは矢印53B,54B方向に流れる。しかし、既に異物F1が矢印56方向に動かされているため、および、気泡51の収縮によるインクの流れの変化が異物F1に影響するまでに時間が掛かるために、異物F1は、図14(d),(e)のように移動して突起41に捕捉される。このように、突起11と天板5との間にて捕捉されている異物F1を取り除いて突起41に捕捉することにより、突起11の自由端11Aと天板5の間の空間を確保して、インクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0055】
(第6の実施形態)
図15は、本発明の第6の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルおよび突起11の部分を天板5側から視た平面図、図15(b)は、図15(a)のXVB−XVB線に沿う断面図である。本実施形態は、実施形態1に対し突起部11の形状が違うが、その他の構成については同じであり説明は省略する。
【0056】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に対して、複数の突起61を配備した構成となっている。突起61は、突起11よりもインクの供給方向の上流側の位置するように共通液室6内に配備されており、突起11と同様に、一端がヒータボード1上に設置され、かつ他端が自由端61Aとされている。複数の突起61は、突起11の列L1と平行の列L12に沿って、突起11と同様の間隔Eで配列されている。突起61は、その自由端61Aが突起11の自由端11Aよりも図15(b)中の上方に位置するように設けられている。本例の場合、突起61は、突起11と同様の円柱形状とされ、その高さH2が突起11の高さH1よりも大きく設定されている。
【0057】
このような突起61を設置することにより、突起11と天板5との間に捕捉される異物F1よりも大きな異物F4を捉えることができる。すなわち、突起61の自由端61Aと天板5の内面5Bとの間に、異物F1よりも大きい異物F4を捕捉することができる。また、図15(a),(b)のように、インクの供給方向に沿って位置するように異物F4,F1が捕捉された場合には、隣接する突起11の間、および隣接する突起61の間を通して、共通液室6内のインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。したがって、突起61を設けなかった場合よりも異物F1,F4の捕捉位置を離して、よりスムーズにインクを供給することができる。なお、突起61として、高さが異なる2種類以上の突起を複数列配備してもよい。
【0058】
(他の実施形態)
本発明の液体吐出ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドの他、種々の液体を吐出するためのヘッドとして広く適用することができ、例えば、種々の処理液や薬剤などを吐出するためのヘッドとして用いることもできる。また、本発明の液体吐出装置は、インクジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、種々の処理液や薬剤などを処理部材に付与するための装置として、広く適用することができる。
【0059】
また、突起は、上述した実施形態のようにヒータボードに片持ちされる他、天板に片持ちされてもよい。すなわち、突起の基端をヒータボードと天板の一方に固定し、突起の先端は、ヒータボードと天板の他方に接しない自由端とすることができる。また、突起は、ヒートボードと天板との間に掛け渡すように設けてもよい。また、突起の形状は、円柱形状および三角柱形状のみに特定されず任意である。また突起の形成材料は、液流路と同じ形成材料(感光性樹脂材料など)とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒータボード(基板)
2 ヒータ
3 インク流路
4 ノズル側壁
5 天板
6 共通液室
7 吐出口
11 突起
12 共通流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と天板との間に、複数の吐出口に連通する複数の液流路と、前記複数の液流路に連通する共通液室と、が形成され、前記共通液室から前記液流路に供給された液体を当該液流路に対応する前記吐出口から吐出可能な液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板と前記天板との間に、前記基板と前記天板との対向間隔が第1の対向間隔である第1領域と、前記基板と前記天板との対向間隔が前記第1の対向間隔よりも大きい第2の対向間隔である第2領域と、を形成し、
前記第1領域に前記複数の液流路を形成し、
前記第2領域に前記共通液室を形成し、
前記共通液室内に複数の突起を設けたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記突起の基端は、前記基板と前記天板の一方に固定され、
前記突起の先端は、前記基板と前記天板の他方に接しない自由端である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の突起は、前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向と交差する方向に配列することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1領域に、前記基板と前記天板との間に位置して前記複数の液流路を形成する複数の側壁を設け、
前記第1領域に、前記複数の液流路と前記共通液室との間を連通する共通流路を形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記突起の自由端と、前記基板と前記天板の他方と、の間を通過可能な最大の第1仮想球体の第1の直径は、前記共通流路から前記液流路を通って前記吐出口に至るまでの間を通過可能の最大の第2仮想球体の第2の直径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1の直径は、互いに隣接する2つの前記突起の前記自由端の上の2点と、前記基板と前記天板の他方の上の1点と、の計3点に接する最小の仮想円の直径である
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
互いに隣接する前記突起の間隔は、前記第2の直径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向の上流側から下流側に向かうにしたがって、前記複数の突起の配置密度を高くすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の突起は、高さがことなる突起を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記複数の突起は、円柱形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記突起の形状は、互いに隣接する前記突起の間隔を前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向の上流側から下流側に向かうにしたがって小さくする形状である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記突起の形成材料は、前記液流路の形成材料と同じであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記突起および前記液流路の形成材料は、感光性樹脂材料であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体を処理部材に付与する液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1から13のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項1】
基板と天板との間に、複数の吐出口に連通する複数の液流路と、前記複数の液流路に連通する共通液室と、が形成され、前記共通液室から前記液流路に供給された液体を当該液流路に対応する前記吐出口から吐出可能な液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板と前記天板との間に、前記基板と前記天板との対向間隔が第1の対向間隔である第1領域と、前記基板と前記天板との対向間隔が前記第1の対向間隔よりも大きい第2の対向間隔である第2領域と、を形成し、
前記第1領域に前記複数の液流路を形成し、
前記第2領域に前記共通液室を形成し、
前記共通液室内に複数の突起を設けたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記突起の基端は、前記基板と前記天板の一方に固定され、
前記突起の先端は、前記基板と前記天板の他方に接しない自由端である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の突起は、前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向と交差する方向に配列することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1領域に、前記基板と前記天板との間に位置して前記複数の液流路を形成する複数の側壁を設け、
前記第1領域に、前記複数の液流路と前記共通液室との間を連通する共通流路を形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記突起の自由端と、前記基板と前記天板の他方と、の間を通過可能な最大の第1仮想球体の第1の直径は、前記共通流路から前記液流路を通って前記吐出口に至るまでの間を通過可能の最大の第2仮想球体の第2の直径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1の直径は、互いに隣接する2つの前記突起の前記自由端の上の2点と、前記基板と前記天板の他方の上の1点と、の計3点に接する最小の仮想円の直径である
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
互いに隣接する前記突起の間隔は、前記第2の直径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向の上流側から下流側に向かうにしたがって、前記複数の突起の配置密度を高くすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の突起は、高さがことなる突起を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記複数の突起は、円柱形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記突起の形状は、互いに隣接する前記突起の間隔を前記共通液室から前記液流路への液体の供給方向の上流側から下流側に向かうにしたがって小さくする形状である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記突起の形成材料は、前記液流路の形成材料と同じであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記突起および前記液流路の形成材料は、感光性樹脂材料であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体を処理部材に付与する液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1から13のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−255511(P2011−255511A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129173(P2010−129173)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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