液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置
【課題】高周波数で駆動可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドの駆動方法は、吐出口9を備えた第一の流路10が該第一の流路10より広い第二の流路11に接続され、第二の流路に備えられた圧電素子13に所定の波形の電圧を印加して吐出口9から液滴を吐出可能な期間が繰り返される。吐出口9から液滴を吐出する吐出期間は、第二の流路11の容積を膨張させる電圧を圧電素子13に印加する第一の段階と、第二の流路11の容積を収縮させる電圧を圧電素子13に印加する第二の段階と、を含む。また、吐出期間は、第二の段階において第一の流路10内に流入した液滴が吐出口9から吐出され、かつ、第二の流路11の容積を膨張させる電圧を圧電素子13に印加する第三の段階を含む。
【解決手段】液体吐出ヘッドの駆動方法は、吐出口9を備えた第一の流路10が該第一の流路10より広い第二の流路11に接続され、第二の流路に備えられた圧電素子13に所定の波形の電圧を印加して吐出口9から液滴を吐出可能な期間が繰り返される。吐出口9から液滴を吐出する吐出期間は、第二の流路11の容積を膨張させる電圧を圧電素子13に印加する第一の段階と、第二の流路11の容積を収縮させる電圧を圧電素子13に印加する第二の段階と、を含む。また、吐出期間は、第二の段階において第一の流路10内に流入した液滴が吐出口9から吐出され、かつ、第二の流路11の容積を膨張させる電圧を圧電素子13に印加する第三の段階を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の吐出を行う液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置に搭載される液体吐出ヘッドには、圧電素子等のアクチュエータを液滴の吐出のためのエネルギの発生源とするものがある。このような液体吐出ヘッドは、多様な液滴(インク等)を吐出可能であるというメリットを有している。
【0003】
近年、液体吐出装置の用途は、POD(Print On Demand)技術を用いた商業印刷などにも及んでおり、多様化してきている。これに伴い、液体吐出ヘッドでは、商業印刷などで要求される高速印刷の実現のため、単位時間あたりの液滴の吐出回数を増加させる必要がある。そのためには、液体吐出ヘッドを高周波数で駆動する必要がある。
【0004】
一方、液体吐出ヘッドが被記録媒体に吐出する液体に水分が多く含まれると、当該被記録媒体に変形(カールやコックリングなど)が生じることがある。このような被記録媒体の変形を抑制するために、液体吐出ヘッドが吐出する液体には、水分量の少ない高粘度のものを使用することが望ましい。
【0005】
しかし、高粘度の液体は流動しにくい。したがって、高粘度の液体を用いた液体吐出ヘッドでは、その内部での液体の流動が遅くなる。そのため、液滴を吐出した後の液体吐出ヘッド内における液体の充填(リフィル)が遅くなる。
【0006】
液体吐出ヘッドを高周波数で駆動する場合、迅速な液体のリフィルが要求される。したがって、この場合に高粘度の液体を用いると液体吐出ヘッド内での液体のリフィルが十分に行われない場合がある。液体のリフィルが十分に行われないと、液体吐出ヘッドは液滴を吐出できなくなることがある。
【0007】
液体吐出ヘッド内で迅速に液体のリフィルを行うための技術が特許文献1に開示されている。この液体吐出ヘッドは、液滴が吐出される吐出口に接続された個別液室と、該個別液室に液体を供給する共通液室と、共通液室と個別液室とを連通させる連通部と、を有している。
【0008】
この液体吐出ヘッドの連通部には、3つの側壁面を有する三角柱状の複数の柱状部材が立設されている。各柱状部材は、1つの側壁面が個別液室側に向き、他の2つの側壁面により形成される稜線が共通液室側に向いている。したがって、複数の柱状部材の間隔は、個別液室側では狭く、共通液室側では広い。
【0009】
この液体吐出ヘッドでは、連通部の柱状部材が、共通液室から個別液室への液体の整流機能を果たす。したがって、共通液室から個別液室へは液体が流れやすいが、個別液室から共通液室へは液体が流れにくい。この液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルは、液体の共通液室から個別液室への流れによりなされる。したがって、この液体吐出ヘッドでは、迅速に液体のリフィルを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4061953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液体吐出装置の用途のさらなる多様化に対応するため、液体吐出ヘッドには、より粘度の高い液体への対応や、より高周波数での駆動が求められている。具体的には、たとえば液体吐出ヘッドには粘度40[cP]の液滴を周波数50[kHz]で吐出することが求められている。このような場合には、特許文献1に開示された液体吐出ヘッドでも、共通液室から個別液室への液体のリフィルを十分に行うことは困難である。
【0012】
そこで、本発明は、高周波数で駆動可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッドの駆動方法は、第一の流路の一方の端部が吐出口となり、該第一の流路の他方の端部が前記第一の流路よりも流路断面積の広い第二の流路に接続されており、該第二の流路に備えられた圧電素子に所定の波形の電圧を印加することにより前記吐出口から液滴を吐出可能な期間が繰り返され、該期間が、前記吐出口から液滴を吐出する吐出期間と、前記吐出口から液滴を吐出しない非吐出期間と、を含む液体吐出ヘッドの駆動方法において、前記吐出期間は、前記第二の流路内に、前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹状となる液体の凹型メニスカスが形成されるように、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加する第一の段階と、前記第二の流路内の液体が前記第一の流路内に流入するように、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加する第二の段階と、前記第二の段階において前記第一の流路内に流入した液体が前記吐出口から吐出され、かつ、前記第二の流路内に前記液体の凹型メニスカスが形成されるように前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する第三の段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高周波数で駆動可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る液体吐出装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図3】図2に示した液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図4】実施例1に関連する実験データを示したグラフである。
【図5】実施例1において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図6】実施例1における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図7】図2に示した液体吐出ヘッドの変形例の概略構成図である。
【図8】図2に示した液体吐出ヘッドの変形例の概略構成図である。
【図9】本発明の実施例2において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図10】実施例2における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図11】図9に示した圧電素子に印加する電圧の波形の変形例を示した図である。
【図12】本発明の実施例3に係る液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図13】実施例3において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図14】実施例3における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図15】図13に示した圧電素子に印加する電圧の波形の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
本発明の実施例1について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施例に係る液体吐出装置1の概略構成図である。液体吐出装置1では、搬送ローラー4に張架された無端ベルト状の搬送ベルト5の上に被記録媒体3が配置される。そして、液体吐出装置1は、搬送ローラー4の駆動力により搬送ベルト5を回転させて被記録媒体3を図1の矢印方向に搬送する。
【0018】
図1に示した液体吐出装置1には、4つの液体吐出ヘッド2が搭載されている。液体吐出ヘッド2は、被記録媒体3の搬送方向に並置されている。各液体吐出ヘッド2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の液体(インク)を収容したインクタンク6に接続されている。各色を吐出する液体吐出ヘッド2の位置は順不同である。各液体吐出ヘッド2と各インクタンク6との間には、インクタンク6内の液体を液体吐出ヘッド2に送るためのポンプ7が設けられている。
【0019】
各液体吐出ヘッド2が、インクタンク6から供給された各色のインクを適宜被記録媒体3に吐出することにより、液体吐出装置1は被記録媒体3にフルカラーの記録を行うことができる。
【0020】
図2は本実施例に係る液体吐出ヘッド2を部分的に示した概略構成図である。図2(a)は液体吐出ヘッド2の、被記録媒体3(図1参照)に対向配置される下面を示した図である。図2(b)は図2(a)のA−A’線に沿った液体吐出ヘッド2の断面図であり、図2(c)は図2(b)の後述する吐出口9近傍の拡大図である。
【0021】
液体吐出ヘッド2は、第一の流路10が形成された吐出口プレート8と、第二の流路11および共通液室12が形成された流路形成部材15と、を有している。吐出口プレート8は第一の流路10が第二の流路11と連通するように流路形成部材15に接着されている。第一の流路10および第二の流路11は各吐出口9ごとに設けられ、共通液室12は図2(a)に示す吐出口9の列に共通して設けられている。
【0022】
第一の流路10の、第二の流路11とは反対側の一端部は、液滴を吐出する吐出口9である。第一の流路10は、吐出口9と同径であり、吐出口プレート8の表面に垂直に形成されている。これにより、第一の流路10を通過して吐出口9から吐出される液滴は、吐出プレート8に垂直な方向に飛翔する。
【0023】
吐出口9から吐出される液滴は、被記録媒体3(図1参照)に1つのドットを形成する。吐出口9および第一の流路10の径が小さいほど、吐出口9から吐出される液滴によって被記録媒体3に形成されるドットは小さくなる。液体吐出ヘッド2は、被記録媒体3に吐出される液滴が小さいほど、被記録媒体3に高精細な画像を記録することが可能である。したがって、吐出口9および第一の流路10の径は小さいことが好ましい。具体的には、吐出口9から1〜4[pl]程度の微小な液滴を吐出するためには、吐出口9の径は10〜20[μm]程度であることが好適である。
【0024】
また、第一の流路10は、被記録媒体3に対する吐出口9からの液滴の吐出方向を定める役割を果たす。したがって、第一の流路10は、第一の流路10内の液体の流れを一方向に整流するのに十分な細さが必要である。
【0025】
本実施形態では、吐出口9の径は17[μm]であり、第一の流路10の径も17[μm]である。また、吐出口プレート8の厚さは17[μm]ある。すなわち、第一の流路10は直径が17[μm]で長さが17[μm]の円柱形状である。
【0026】
第二の流路11の流路断面積(吐出口プレート8に直交する断面の面積)は、第一の流路10の流路断面積よりも広い。そのため、第一の流路10の一端とは反対方向の他端と第二の流路11との間には屈曲した接続部14が形成される。本実施例では、接続部14における、第二の流路11の第一の流路10側の端面(吐出口プレート8の第二の流路11側の面)と、前記第一の流路の内壁面と、が成す角度θ(以下、「接続部14の角度θ」という。」は90度である。
【0027】
第二の流路11の側面には、可撓性部材16が設けられ、該可撓性部材16の第二の流路とは反対側には圧電素子13が設けられている。圧電素子13は、各吐出口9に対応する第二の流路11ごとに設けられている。
【0028】
液体吐出装置1(図1参照)は、液体吐出ヘッド2を制御するための制御部(不図示)を有し、該制御部は各圧電素子13に、液体を吐出可能な各周期ごとに所定の波形の電圧を印加して液体吐出ヘッド2を制御することができる。圧電素子13に接続される液体吐出装置1の制御部は、各圧電素子13に電圧を印加するための電極配線(不図示)を備えている。
【0029】
圧電素子13は、電圧が印加されると、可撓性部材16とともに、第二の流路11側、または第二の流路11とは反対側に撓む。圧電素子13および可撓性部材16が第二の流路11側に撓むと、第二の流路11の容積が収縮し、圧電素子13および可撓性部材16が第二の流路11とは反対側に撓むと、第二の流路11の容積が膨張する。この液体吐出ヘッド2では、圧電素子13および可撓性部材16を第二の流路11側に撓ませ、第二の流路11の容積を収縮させることにより、第二の流路11内の液体を第一の流路10を介して吐出口9から吐出する。
【0030】
第二の流路11は、吐出口プレート8の表面に垂直な方向の長さが8800[μm]である。第二の流路11は直方体状であり、幅(図2(b),図2(c)における奥行方向の長さ)が100[μm]であり、高さ(図2(b),図2(c)における上下方向の長さ)が200[μm]である。
【0031】
第二の流路11の、第一の流路10とは反対側の端部には共通液室12が連通されている。第二の流路11と共通液室12とは狭窄部17を介して接続されている。この狭窄部17の幅(図2(b),図2(c)における左右方向の長さ)は50[μm]である。
【0032】
本実施例では、吐出口9から吐出させる液体には、クリアインクを用いた。このクリアインクの成分は、EG600が66%であり、純水が33%であり、界面活性剤が1%である。また、このクリアインクでは、室温において、粘度が40×10-3[Pa・s]であり表面張力が38×10-3[N/m]である。
【0033】
図3は液体吐出ヘッド2の断面図である。図3(a)は本実施例の比較例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法の説明図であり、図3(b)は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法の説明図である。
【0034】
図3(a)および図3(b)内の破線は、液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における、外気と液体との境界面である気液界面Sの位置を示している。図3(a)では、液体が、第一の流路10内に入り込み、液体の吐出前の気液界面Sが第一の流路10に入り込んでおり、液体が吐出口9の中央部が凹状となる凹型メニスカスを形成している。図3(b)では、液体が、第一の流路10内には入っておらず、第二の流路10内で、吐出口9から第二の流路11内に向かって凹状となる凹型メニスカスを形成している。
【0035】
図3(a)および図3(b)内の破線に隣接する実線は、液体吐出ヘッド2による液滴の吐出後で、かつ、液体のリフィル前の気液界面Sの位置を示している。図3(a)および図3(b)に示す状態から液体のリフィルを行うと、気液界面Sは実線の位置から破線の位置に戻る。
【0036】
図3(a)に示した状態では、液体の吐出前における気液界面Sが第一の流路10内にあるため、第一の流路10内に液体のリフィルを行う必要がある。ところが、第一の流路10は、前述のように細く形成されており、液体が流動する際の流抵抗が高い。そのため、第二の流路11から第一の流路10への液体のリフィルを迅速に行うことは困難である。
【0037】
一方、図3(b)に示した液体吐出ヘッド2では、液体の吐出前における気液界面Sが第二の流路11内にあるため、第一の流路10ではなく第二の流路11内のみに液体のリフィルを行う。第二の流路11は、第一の流路10と比較して遥かに断面が大きいため、液体が流動する際の流抵抗は低い。そのため、共通液室12(図2(b)参照)から第二の流路11への液体のリフィルを迅速に行うことができる。
【0038】
また、第一の流路10内では、液体が図3(a)に矢印で示す方向に移動するように毛管力が作用する。一方、第二の流路11内では、液体が図3(b)に矢印で示す方向に移動するように表面張力が作用する。図3(b)の状態の気液界面Sは表面積が大きく、表面張力による気液界面Sを吐出口9の側へ復帰させる力が強い。よって、図3(a)における毛管力の作用よりも、図3(b)における表面張力の作用の方が大きい。この観点からも、液体のリフィル速度は、第一の流路10よりも第二の流路11の方が速い。
【0039】
本実施例では、図3(b)に示すように、第二の流路11内に気液界面Sが後退している状態(気液界面Sが破線の位置にある状態)で圧電素子13を駆動させる。これにより、圧電素子13が変形し、収縮した第二の流路11内の液体が瞬間的に第一の流路10を介して吐出口9から吐出する。そして、圧電素子13は、液体が吐出口9から突出するタイミングで、気液界面Sが第二の流路11内に戻るように駆動される。これにより、本実施例では、液滴が吐出口9から吐出された次の瞬間には、気液界面Sが第二の流路11内に戻っている。
【0040】
したがって、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法では、共通液室12から第二の流路11への液体のリフィルを行えばよく、第二の流路11から第一の流路10への液体のリフィルを行う必要がない。そのため、上述したように本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法では、液体吐出ヘッド2内における液体のリフィルを迅速に行うことができる。したがって、液体吐出ヘッド2は、高周波数で駆動され、単位時間あたりの液滴の吐出回数が多い場合にも、液体のリフィルを十分に行うことができる。
【0041】
図4は、本実施例に関連する実験結果を示したグラフである。本実験では、気液界面Sの最初の位置を吐出口9から約30.3[μm]の位置に設定し、この位置から、圧電素子13に電圧を印加せずに液体のリフィルを行った。横軸は時間を示している。第一の縦軸(左側の縦軸)は、吐出口9から気液界面Sまでの距離Y1を示している。各時間における距離Y1の値は、黒塗りのプロットで示されている。第二の縦軸(右側の縦軸)は、液体のリフィル速度Y2を示している。各時間における距離Y2の値は、バツ印で示されている。
【0042】
図4から、液体のリフィル速度Y2は、時間の経過とともに、急激に低下した後に一定となる。この理由について、気液界面Sが第二の流路11内にある場合と第一の流路10内にある場合とに分けて説明する。吐出口プレート8の厚さは17[μm]なので、吐出口9から17[μm]の位置(図4における破線の位置)が第一の流路10と第二の流路11との境界の位置である。
【0043】
まず、気液界面Sが第二の流路11内にある場合には、液体のリフィルが進むにつれて、気液界面Sの面積が小さくなる。気液界面Sの面積が小さくなると、リフィルの原動力となる表面張力の作用が小さくなるため、吐出口9から17[μm]の位置までは、液体のリフィル速度Y2が低下する。気液界面Sが第一の流路10内にある場合には、液体のリフィルが進むにつれて、第一の流路10内にある液体に作用する毛管力は大きく変化しない。そのため、吐出口9から17[μm]以内の位置では、液体のリフィル速度はほぼ一定して低い。
【0044】
気液界面Sの面積が最大である時点における液体のリフィル速度Y2(図4中のプロットA)と、気液界面Sが第一の流路内10に入った後におけるリフィル速度Y1(図4中のプロットB)とを比較すると、数十倍も差があることがわかる。
【0045】
以上のことから、図3(b)に示すように気液界面Sが第二の流路11内に後退している状態に保つことにより、リフィル速度が大幅に速くなることがわかった。
【0046】
図5は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図6は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0047】
図5を参照しながら、図6(a)〜図6(l)に沿って、本実施4例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法について詳細に説明する。
【0048】
図5では、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の圧電素子13を駆動することにより吐出口9から液滴を一回吐出可能な各期間を、1周期目、2周期目、3周期目、と順番に呼ぶこととする。なお、説明の便宜上、本実施例では液滴を吐出する1周期目の前に0周期目があるものとする。
【0049】
図6(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2を駆動する前の状態(初期状態)を示している。この状態では、第一の流路10および第二の流路11の双方とも液体で満たされており、気液界面Sは吐出口9近傍の静定位置にある。液体吐出ヘッド2は、図5における0周期目の横軸が0[μs]のときに初期状態である。
【0050】
まず、図5に示す1周期目における液滴の吐出動作について説明する。1周期目は、液滴を吐出する吐出期間である。
【0051】
液滴を吐出する1周期目に入る前の0周期目において、初期状態から、気液界面Sを図6(a)に破線で示す位置まで移動させるために、図5に示す期間T1に、圧電素子13に負の電圧を印加してゆく。これにより、1周期目が開始する図5に示したAの時点では、図6(b)に示すように、負の電圧(第一の電圧)が印加された圧電素子13は凹型に撓み、第二の流路11が膨張し、気液界面Sが図6(a)および図6(b)に示す破線の位置まで移動している。このとき、液滴は第二の流路11内で凹型メニスカスを形成している。(第一の段階)
次に、気液界面Sを図6(c)に実線で示す位置まで移動させるために、図5に示す期間T2において、圧電素子13に正の電圧を印加してゆく。これにより、正の電圧(第二の電圧)を印加された圧電素子13は凸型に撓み、第二の流路11が収縮し、液体が第一の流路10内に流入する。そして、図5に示す期間T3に、気液界面Sが図6(c)に実線で示す位置まで移動するまで、圧電素子13に印加している正の電圧を保持する。これにより、図6(c)に示すように、液体は、吐出口9から突出し、凸型メニスカスを形成する。(第二の段階)
液滴が吐出口9から突出すると共に、気液界面Sを図6(d)に示す破線の位置に引き戻すように、図5に示す期間T4に、圧電素子13に負の値を印加する。これにより、圧電素子13は凹型に撓み、第一の流路10内の液体は第二の流路11内に引き戻される。一方、図5の期間T3に、図6(c)に示すように吐出口9から突出した液体は、その慣性力により、第二の流路11内に引き戻されることなく吐出口9から吐出される。その際、第二の流路11内に引き戻される液体と、吐出口9から吐出される液体と、の間に液体の尾引きが発生する。図5にBと示す時点では、Aと示す時点と等しい負の電圧(第三の電圧)が圧電素子13に印加されている。このとき、図6(e)に示すように、液体の尾引きが切れ、1発目の液体が吐出される。(第三の段階)
図5にBと示す時点では、気液界面Sは、図6(f)に実線で示すように、図6(a)と同様に破線で示している位置よりも第一の流路10から後退した位置にある。これは、液滴を吐出したことにより、第二の流路10内の液体が減少したことに起因する。
【0052】
図5にBと示す時点における圧電素子13に印加されている負の電圧は、図5にCと示す時点まで保持される。これにより、第二の流路11には、共通液室12(図2参照)から第二の流路11に液体がリフィルされる。そのため、図5のBと示す時点からCと示す時点までの間に、気液界面Sは図6(g)に破線で示す位置に近づいてゆく。そして、図5にCと示す時点では、気液界面Sが、図6(h)に示すように図6(a)および図6(b)に破線で示す位置まで戻っている。このとき、気液界面Sは、図5にAと示す時点と同様の状態となっている。換言すると、2周期目の開始時である図5のCに示す時点では、1周期目の開始時である図5にAと示す時点と同様に、上述の第一の段階に戻っている。
【0053】
次に、図5に示す2周期目における液滴の吐出動作について説明する。2周期目も、液滴を吐出する吐出期間である。
【0054】
本実施例では、2周期目でも液滴を吐出するため、図5における1周期目と同様の波形の電圧が圧電素子13に印加される。これに伴い、2周期目の液体の挙動を示す図6(i)〜図6(l)では、1周期目の液体の挙動を示す図6(c)〜図6(f)と同様となる。つまり、図5(h)のようにインクのリフィルによってメニスカスが吐出口の方向に移動するが、このメニスカスが第一の流路10に侵入する前に、圧電素子13に正の電圧を印加する。その後1周期目と同様に、正の電圧を保持する期間を経て、負の電圧を印加して図5のDへと移行させる。これにより、二発目の液体が吐出される。図5では、1周期目のAの時点およびBの時点が、2周期目のCの時点およびDの時点に対応する。
【0055】
3周期目以降でも、1周期目および2周期目と同様の波形の電圧が圧電素子13に印加され、三発目以降の液体が吐出される。これにより、任意の回数の液滴の吐出を繰り返すことができる。
【0056】
ここで1周期目において初期状態から0周期目で圧電素子13に負の電圧を印加せずに、圧電素子13に正の電圧を印加して吐出口9から液滴を吐出することを仮定する。この場合、吐出される一発目の液体の量は、二発目以降の液体の量よりも多くなってしまう。
【0057】
そのため、本実施例では、図5に示す初期状態にある0周期目から液滴を吐出する1周期目が開始するまでに、圧電素子13に図5のAに示す負の電圧を印加し、気液界面Sが第二の流路内11内にある状態にすることが好ましい。これにより、吐出口9から吐出される一発目の液体の量は、二発目以降の液体の量と実質的に等しくなる。
【0058】
図7は本実施例の変形例に係る液体吐出ヘッド2aの概略構成図である。液体吐出ヘッド2aは、吐出口プレート8a以外は図2に示した液体吐出ヘッド2と同様の構成を有する。図7では図2と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
液体吐出ヘッド2aの吐出口プレート8aの第二の流路11側の面は、第一の流路10に近づくほど吐出口プレート8aが薄くなるようなテーパ状に形成されている。図2における接続部14の角度は90度であったが、図7における接続部14aの角度θは90度より大きく、具体的には、接続部14aの角度θは150度である。この場合にも図5に示した波形と同様の波形の電圧を圧電素子13に印加することで繰り返し液滴を吐出することができた。
【0060】
本実施例では第一の流路の形状が円柱形状である液体吐出ヘッドについて説明したが、本実施例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法は、第一の流路の形状が円柱状でない場合にも適用可能である。たとえば、第一の流路は、図8(a)および図8(b)に示す形状の場合にも、図5に示した波形と同様の波形の電圧を圧電素子13に印加することで繰り返し液滴を吐出可能であることが確認できた。
「実施例2」
本発明の実施例2について図面を参照して説明する。
【0061】
本実施例でも、実施例1と同様の液体吐出装置1(図1参照)の液体吐出ヘッド2を用い、実施例1と同様の液体(クリアインク)を用いた。
【0062】
図9は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図10は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0063】
図9を参照しながら、図10(a)〜図10(l)に沿って、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法について詳細に説明する。
【0064】
図10(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の初期状態を示している。この状態では、第一の流路10および第二の流路11の双方とも液体で満たされており、気液界面Sは吐出口9近傍の静定位置にある。
【0065】
図9の0周期目と1周期目は図5に示した波形と同様である。したがって、本実施例の0周期目と1周期目に対応する図10(a)〜図10(f)における液体の挙動は、実施例1の図6(a)〜図6(f)と同様である。図10(g)は、1周期目の後に気液界面Sが図10中に破線で示した液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における位置に復帰した状態である。そして、実施例1と同様に2周期目で二発目の液体の吐出を行う(図10(h)〜図10(k))。図10(k)は、図9に示す2周期目の期間U2後に、気液界面Sが図10中に破線で示した液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における位置に復帰した状態を示している。
【0066】
2周期目の次の3周期目は、液滴の吐出を行わない非吐出期間である。この場合、2周期目の期間U2の次の期間U3で、期間U3の間に圧電素子13に印加する電圧をゼロにする。これにより、第二の流路11が連続吐出開始前の状態まで収縮し、気液界面Sは静定位置である吐出口9の側へ移動させられる(図10(l))。連続吐出の中断中(例えば、図9の例では3周期目)に、気液界面Sを静定位置である吐出口9へ戻すことができなくてはならない。何故ならば、気液界面Sが静定位置に戻らないまま次の吐出が始まってしまうと、気液界面Sが静定位置にある場合と初期状態が異なるため、同じように駆動しても吐出性能が異なったものとなってしまう。したがって、次の周期の吐出開始前における第二の流路11を膨張させるタイミングの直前(図9中のG)には気液界面Sは静定位置に戻っていなくてはならない。ところが、前述のように第一の流路10のリフィルには非常に時間がかかるため、自然に液体が第一の流路10に満ちるのを待ったのでは、次の吐出開始までに気液界面Sを静定位置に戻すことは困難である。しかし、本実施例においては、圧電素子13を初期状態まで戻すことにより、第二の流路11を収縮させ、それにより発生する流れによって気液界面Sを強力に吐出口9の側へ押し込むため、気液界面Sを高速に静定位置まで戻すことが可能である。
【0067】
本実施例では、液滴を吐出しない3周期目では、期間U4で、2周期目に引き続き、圧電素子13に電圧を印加せずに初期状態に保つ。これにより、3周期目では、液滴が吐出されない。
【0068】
3周期目の次の4周期目は、液滴の吐出を行う吐出期間である。この場合、気液界面Sが第二の流路11にある状態で4周期目を開始するため、0周期目と同様に、3周期目のGの時点で圧電素子13に負の電圧を印加し始める。これにより、1周期目と同様に4周期目でも液滴の吐出を行うことができる。
【0069】
図11は、1周期目に液滴の吐出を行い、2周期目に液滴の吐出を行わない場合の、圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図11の0周期目、1周期目、2周期目の波形は、それぞれ図9の0周期目、2周期目、3周期目の波形と同様である。したがって、図11の1周期目には液滴が吐出されるが、2周期目には液滴が吐出されない。
【0070】
上述したように、本実施例のように液体の吐出動作を行わない非吐出期間において液体吐出ヘッド2を初期状態とするにより、液体の吐出動作を行わない非吐出期間がある場合にも、良好に液体の吐出動作を繰り返すことができる。
【0071】
なお、液滴を吐出しない非吐出期間が連続する場合には、次に液体を吐出する吐出期間の直前の非吐出期間まで液体吐出ヘッド2を初期状態とし続ける。
【0072】
本実施例の液体吐出ヘッド2の駆動方法によれば、液滴の吐出を行う吐出期間と、液滴の吐出を行わない非吐出期間と、が混在する場合にも、液体吐出ヘッド2による吐出動作を良好に行うことができる。また、液滴を吐出する吐出期間が連続する場合にも、細く形成された第一の流路10ではなく第二の流路11への液体のリフィルを行えばよいため、リフィル速度が速い。したがって、液体吐出ヘッド2を高周波数で駆動することが可能である。
「実施例3」
本発明の実施例3について図面を参照して説明する。
【0073】
本実施例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法でも、実施例1と同様の液体(クリアインク)を用いた。
【0074】
図12は本発明の実施例3に係る液体吐出ヘッド2bの概略構成図である。図12(a)および図12(b)は、それぞれ図2(b)および図2(c)に対応する断面図である。
【0075】
液体吐出ヘッド2bの第一の流路10の内壁面には撥液処理が施されている。これにより、液体吐出ヘッド2bが液体の吐出動作を行う前の初期状態における気液界面Sの静定位置が第一の流路10と第二の流路11との境界近傍に保たれる。
【0076】
図13は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図14は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0077】
図13を参照しながら、図14(a)〜図14(l)に沿って、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの駆動方法について詳細に説明する。
【0078】
図14(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの初期状態を示している。この状態では、気液界面Sは第一の流路10と第二の流路11との境界近傍の静定位置にある。本実施例では、実施例2と同様に、1周期目と2周期目に液滴の吐出を行い、3周期目に液滴の吐出を行なわず、4周期目に再度液滴の吐出を行う。
【0079】
図14(b)〜図14(k)に示す液体の挙動は、実施例2に係る図10(b)〜図10(k)と同様である。図14(l)では、圧電素子13に印加する電圧をゼロとして、気液界面Sを第一の流路10と第二の流路11との境界近傍の静定位置に戻す。
【0080】
本実施例では、期間W1を2[μs]とし、電圧δ1を−5Vとした。本実施例では、期間W1を2[μs]とし、期間W2を1[μs]とし、期間W3を2[μs]とし、期間W4を5[μs]とし、W6を7[μs]とし、W7を2[μs]とした。また、電圧δ1を−5Vとし、電圧δ2を15Vとした。
【0081】
その結果、1周期目における一発目の液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.4[m/s]であった。また、2周期目における二発目の液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.8[m/s]であった。また、4周期目における三発目においては、1周期目における一発目と略同じ状態に復帰しているので、液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.4[m/s]であった。
【0082】
図15は、1周期目に液滴の吐出を行い、2周期目に液滴の吐出を行わない場合の、圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図15の0周期目、1周期目、2周期目の波形は、それぞれ図13の0周期目、2周期目、3周期目の波形と同様である。したがって、図15の1周期目には液滴が吐出されるが、2周期目には液滴が吐出されない。
【0083】
本実施例の液体吐出ヘッド2bの駆動方法によれば、液滴の吐出を行う吐出期間と、液滴の吐出を行わない非吐出期間と、が混在する場合にも、液体吐出ヘッド2bによる吐出動作を良好に行うことができる。また、粘度40[cP]の液体を用いて、液体吐出ヘッドを高周波数(46.5[kHz])で駆動する場合にも、液体吐出ヘッド2bの吐出動作を良好に行うことができた。
【0084】
また、本実施例では、一回の液体の吐出量が1.3[pl]から1.4[pl]までの範囲内に収まり、液体の吐出速度が6.2[m/s]から6.8[m/s]までの範囲内に収まった。このように、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの駆動方法によれば、安定した液滴の吐出が可能である。
【0085】
また、本実施例では、第一の流路10に撥液処理が施されているため、流抵抗の高い第一の流路10を液体が流動することが少なく、圧電素子13を低電圧で駆動することができ、液体吐出ヘッド2bが長寿命化する。
【符号の説明】
【0086】
1 液体吐出装置
2 液体吐出ヘッド
8 吐出口プレート
9 吐出口
10 第一の流路
11 第二の流路
12 共通液室
13 圧電素子
14 接続部
S 気液界面
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の吐出を行う液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置に搭載される液体吐出ヘッドには、圧電素子等のアクチュエータを液滴の吐出のためのエネルギの発生源とするものがある。このような液体吐出ヘッドは、多様な液滴(インク等)を吐出可能であるというメリットを有している。
【0003】
近年、液体吐出装置の用途は、POD(Print On Demand)技術を用いた商業印刷などにも及んでおり、多様化してきている。これに伴い、液体吐出ヘッドでは、商業印刷などで要求される高速印刷の実現のため、単位時間あたりの液滴の吐出回数を増加させる必要がある。そのためには、液体吐出ヘッドを高周波数で駆動する必要がある。
【0004】
一方、液体吐出ヘッドが被記録媒体に吐出する液体に水分が多く含まれると、当該被記録媒体に変形(カールやコックリングなど)が生じることがある。このような被記録媒体の変形を抑制するために、液体吐出ヘッドが吐出する液体には、水分量の少ない高粘度のものを使用することが望ましい。
【0005】
しかし、高粘度の液体は流動しにくい。したがって、高粘度の液体を用いた液体吐出ヘッドでは、その内部での液体の流動が遅くなる。そのため、液滴を吐出した後の液体吐出ヘッド内における液体の充填(リフィル)が遅くなる。
【0006】
液体吐出ヘッドを高周波数で駆動する場合、迅速な液体のリフィルが要求される。したがって、この場合に高粘度の液体を用いると液体吐出ヘッド内での液体のリフィルが十分に行われない場合がある。液体のリフィルが十分に行われないと、液体吐出ヘッドは液滴を吐出できなくなることがある。
【0007】
液体吐出ヘッド内で迅速に液体のリフィルを行うための技術が特許文献1に開示されている。この液体吐出ヘッドは、液滴が吐出される吐出口に接続された個別液室と、該個別液室に液体を供給する共通液室と、共通液室と個別液室とを連通させる連通部と、を有している。
【0008】
この液体吐出ヘッドの連通部には、3つの側壁面を有する三角柱状の複数の柱状部材が立設されている。各柱状部材は、1つの側壁面が個別液室側に向き、他の2つの側壁面により形成される稜線が共通液室側に向いている。したがって、複数の柱状部材の間隔は、個別液室側では狭く、共通液室側では広い。
【0009】
この液体吐出ヘッドでは、連通部の柱状部材が、共通液室から個別液室への液体の整流機能を果たす。したがって、共通液室から個別液室へは液体が流れやすいが、個別液室から共通液室へは液体が流れにくい。この液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルは、液体の共通液室から個別液室への流れによりなされる。したがって、この液体吐出ヘッドでは、迅速に液体のリフィルを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4061953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液体吐出装置の用途のさらなる多様化に対応するため、液体吐出ヘッドには、より粘度の高い液体への対応や、より高周波数での駆動が求められている。具体的には、たとえば液体吐出ヘッドには粘度40[cP]の液滴を周波数50[kHz]で吐出することが求められている。このような場合には、特許文献1に開示された液体吐出ヘッドでも、共通液室から個別液室への液体のリフィルを十分に行うことは困難である。
【0012】
そこで、本発明は、高周波数で駆動可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッドの駆動方法は、第一の流路の一方の端部が吐出口となり、該第一の流路の他方の端部が前記第一の流路よりも流路断面積の広い第二の流路に接続されており、該第二の流路に備えられた圧電素子に所定の波形の電圧を印加することにより前記吐出口から液滴を吐出可能な期間が繰り返され、該期間が、前記吐出口から液滴を吐出する吐出期間と、前記吐出口から液滴を吐出しない非吐出期間と、を含む液体吐出ヘッドの駆動方法において、前記吐出期間は、前記第二の流路内に、前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹状となる液体の凹型メニスカスが形成されるように、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加する第一の段階と、前記第二の流路内の液体が前記第一の流路内に流入するように、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加する第二の段階と、前記第二の段階において前記第一の流路内に流入した液体が前記吐出口から吐出され、かつ、前記第二の流路内に前記液体の凹型メニスカスが形成されるように前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する第三の段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高周波数で駆動可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る液体吐出装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図3】図2に示した液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図4】実施例1に関連する実験データを示したグラフである。
【図5】実施例1において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図6】実施例1における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図7】図2に示した液体吐出ヘッドの変形例の概略構成図である。
【図8】図2に示した液体吐出ヘッドの変形例の概略構成図である。
【図9】本発明の実施例2において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図10】実施例2における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図11】図9に示した圧電素子に印加する電圧の波形の変形例を示した図である。
【図12】本発明の実施例3に係る液体吐出ヘッドの概略構成図である。
【図13】実施例3において圧電素子に印加する電圧の波形を示した図である。
【図14】実施例3における液体吐出ヘッドの動作を示した図である。
【図15】図13に示した圧電素子に印加する電圧の波形の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
本発明の実施例1について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施例に係る液体吐出装置1の概略構成図である。液体吐出装置1では、搬送ローラー4に張架された無端ベルト状の搬送ベルト5の上に被記録媒体3が配置される。そして、液体吐出装置1は、搬送ローラー4の駆動力により搬送ベルト5を回転させて被記録媒体3を図1の矢印方向に搬送する。
【0018】
図1に示した液体吐出装置1には、4つの液体吐出ヘッド2が搭載されている。液体吐出ヘッド2は、被記録媒体3の搬送方向に並置されている。各液体吐出ヘッド2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の液体(インク)を収容したインクタンク6に接続されている。各色を吐出する液体吐出ヘッド2の位置は順不同である。各液体吐出ヘッド2と各インクタンク6との間には、インクタンク6内の液体を液体吐出ヘッド2に送るためのポンプ7が設けられている。
【0019】
各液体吐出ヘッド2が、インクタンク6から供給された各色のインクを適宜被記録媒体3に吐出することにより、液体吐出装置1は被記録媒体3にフルカラーの記録を行うことができる。
【0020】
図2は本実施例に係る液体吐出ヘッド2を部分的に示した概略構成図である。図2(a)は液体吐出ヘッド2の、被記録媒体3(図1参照)に対向配置される下面を示した図である。図2(b)は図2(a)のA−A’線に沿った液体吐出ヘッド2の断面図であり、図2(c)は図2(b)の後述する吐出口9近傍の拡大図である。
【0021】
液体吐出ヘッド2は、第一の流路10が形成された吐出口プレート8と、第二の流路11および共通液室12が形成された流路形成部材15と、を有している。吐出口プレート8は第一の流路10が第二の流路11と連通するように流路形成部材15に接着されている。第一の流路10および第二の流路11は各吐出口9ごとに設けられ、共通液室12は図2(a)に示す吐出口9の列に共通して設けられている。
【0022】
第一の流路10の、第二の流路11とは反対側の一端部は、液滴を吐出する吐出口9である。第一の流路10は、吐出口9と同径であり、吐出口プレート8の表面に垂直に形成されている。これにより、第一の流路10を通過して吐出口9から吐出される液滴は、吐出プレート8に垂直な方向に飛翔する。
【0023】
吐出口9から吐出される液滴は、被記録媒体3(図1参照)に1つのドットを形成する。吐出口9および第一の流路10の径が小さいほど、吐出口9から吐出される液滴によって被記録媒体3に形成されるドットは小さくなる。液体吐出ヘッド2は、被記録媒体3に吐出される液滴が小さいほど、被記録媒体3に高精細な画像を記録することが可能である。したがって、吐出口9および第一の流路10の径は小さいことが好ましい。具体的には、吐出口9から1〜4[pl]程度の微小な液滴を吐出するためには、吐出口9の径は10〜20[μm]程度であることが好適である。
【0024】
また、第一の流路10は、被記録媒体3に対する吐出口9からの液滴の吐出方向を定める役割を果たす。したがって、第一の流路10は、第一の流路10内の液体の流れを一方向に整流するのに十分な細さが必要である。
【0025】
本実施形態では、吐出口9の径は17[μm]であり、第一の流路10の径も17[μm]である。また、吐出口プレート8の厚さは17[μm]ある。すなわち、第一の流路10は直径が17[μm]で長さが17[μm]の円柱形状である。
【0026】
第二の流路11の流路断面積(吐出口プレート8に直交する断面の面積)は、第一の流路10の流路断面積よりも広い。そのため、第一の流路10の一端とは反対方向の他端と第二の流路11との間には屈曲した接続部14が形成される。本実施例では、接続部14における、第二の流路11の第一の流路10側の端面(吐出口プレート8の第二の流路11側の面)と、前記第一の流路の内壁面と、が成す角度θ(以下、「接続部14の角度θ」という。」は90度である。
【0027】
第二の流路11の側面には、可撓性部材16が設けられ、該可撓性部材16の第二の流路とは反対側には圧電素子13が設けられている。圧電素子13は、各吐出口9に対応する第二の流路11ごとに設けられている。
【0028】
液体吐出装置1(図1参照)は、液体吐出ヘッド2を制御するための制御部(不図示)を有し、該制御部は各圧電素子13に、液体を吐出可能な各周期ごとに所定の波形の電圧を印加して液体吐出ヘッド2を制御することができる。圧電素子13に接続される液体吐出装置1の制御部は、各圧電素子13に電圧を印加するための電極配線(不図示)を備えている。
【0029】
圧電素子13は、電圧が印加されると、可撓性部材16とともに、第二の流路11側、または第二の流路11とは反対側に撓む。圧電素子13および可撓性部材16が第二の流路11側に撓むと、第二の流路11の容積が収縮し、圧電素子13および可撓性部材16が第二の流路11とは反対側に撓むと、第二の流路11の容積が膨張する。この液体吐出ヘッド2では、圧電素子13および可撓性部材16を第二の流路11側に撓ませ、第二の流路11の容積を収縮させることにより、第二の流路11内の液体を第一の流路10を介して吐出口9から吐出する。
【0030】
第二の流路11は、吐出口プレート8の表面に垂直な方向の長さが8800[μm]である。第二の流路11は直方体状であり、幅(図2(b),図2(c)における奥行方向の長さ)が100[μm]であり、高さ(図2(b),図2(c)における上下方向の長さ)が200[μm]である。
【0031】
第二の流路11の、第一の流路10とは反対側の端部には共通液室12が連通されている。第二の流路11と共通液室12とは狭窄部17を介して接続されている。この狭窄部17の幅(図2(b),図2(c)における左右方向の長さ)は50[μm]である。
【0032】
本実施例では、吐出口9から吐出させる液体には、クリアインクを用いた。このクリアインクの成分は、EG600が66%であり、純水が33%であり、界面活性剤が1%である。また、このクリアインクでは、室温において、粘度が40×10-3[Pa・s]であり表面張力が38×10-3[N/m]である。
【0033】
図3は液体吐出ヘッド2の断面図である。図3(a)は本実施例の比較例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法の説明図であり、図3(b)は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法の説明図である。
【0034】
図3(a)および図3(b)内の破線は、液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における、外気と液体との境界面である気液界面Sの位置を示している。図3(a)では、液体が、第一の流路10内に入り込み、液体の吐出前の気液界面Sが第一の流路10に入り込んでおり、液体が吐出口9の中央部が凹状となる凹型メニスカスを形成している。図3(b)では、液体が、第一の流路10内には入っておらず、第二の流路10内で、吐出口9から第二の流路11内に向かって凹状となる凹型メニスカスを形成している。
【0035】
図3(a)および図3(b)内の破線に隣接する実線は、液体吐出ヘッド2による液滴の吐出後で、かつ、液体のリフィル前の気液界面Sの位置を示している。図3(a)および図3(b)に示す状態から液体のリフィルを行うと、気液界面Sは実線の位置から破線の位置に戻る。
【0036】
図3(a)に示した状態では、液体の吐出前における気液界面Sが第一の流路10内にあるため、第一の流路10内に液体のリフィルを行う必要がある。ところが、第一の流路10は、前述のように細く形成されており、液体が流動する際の流抵抗が高い。そのため、第二の流路11から第一の流路10への液体のリフィルを迅速に行うことは困難である。
【0037】
一方、図3(b)に示した液体吐出ヘッド2では、液体の吐出前における気液界面Sが第二の流路11内にあるため、第一の流路10ではなく第二の流路11内のみに液体のリフィルを行う。第二の流路11は、第一の流路10と比較して遥かに断面が大きいため、液体が流動する際の流抵抗は低い。そのため、共通液室12(図2(b)参照)から第二の流路11への液体のリフィルを迅速に行うことができる。
【0038】
また、第一の流路10内では、液体が図3(a)に矢印で示す方向に移動するように毛管力が作用する。一方、第二の流路11内では、液体が図3(b)に矢印で示す方向に移動するように表面張力が作用する。図3(b)の状態の気液界面Sは表面積が大きく、表面張力による気液界面Sを吐出口9の側へ復帰させる力が強い。よって、図3(a)における毛管力の作用よりも、図3(b)における表面張力の作用の方が大きい。この観点からも、液体のリフィル速度は、第一の流路10よりも第二の流路11の方が速い。
【0039】
本実施例では、図3(b)に示すように、第二の流路11内に気液界面Sが後退している状態(気液界面Sが破線の位置にある状態)で圧電素子13を駆動させる。これにより、圧電素子13が変形し、収縮した第二の流路11内の液体が瞬間的に第一の流路10を介して吐出口9から吐出する。そして、圧電素子13は、液体が吐出口9から突出するタイミングで、気液界面Sが第二の流路11内に戻るように駆動される。これにより、本実施例では、液滴が吐出口9から吐出された次の瞬間には、気液界面Sが第二の流路11内に戻っている。
【0040】
したがって、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法では、共通液室12から第二の流路11への液体のリフィルを行えばよく、第二の流路11から第一の流路10への液体のリフィルを行う必要がない。そのため、上述したように本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法では、液体吐出ヘッド2内における液体のリフィルを迅速に行うことができる。したがって、液体吐出ヘッド2は、高周波数で駆動され、単位時間あたりの液滴の吐出回数が多い場合にも、液体のリフィルを十分に行うことができる。
【0041】
図4は、本実施例に関連する実験結果を示したグラフである。本実験では、気液界面Sの最初の位置を吐出口9から約30.3[μm]の位置に設定し、この位置から、圧電素子13に電圧を印加せずに液体のリフィルを行った。横軸は時間を示している。第一の縦軸(左側の縦軸)は、吐出口9から気液界面Sまでの距離Y1を示している。各時間における距離Y1の値は、黒塗りのプロットで示されている。第二の縦軸(右側の縦軸)は、液体のリフィル速度Y2を示している。各時間における距離Y2の値は、バツ印で示されている。
【0042】
図4から、液体のリフィル速度Y2は、時間の経過とともに、急激に低下した後に一定となる。この理由について、気液界面Sが第二の流路11内にある場合と第一の流路10内にある場合とに分けて説明する。吐出口プレート8の厚さは17[μm]なので、吐出口9から17[μm]の位置(図4における破線の位置)が第一の流路10と第二の流路11との境界の位置である。
【0043】
まず、気液界面Sが第二の流路11内にある場合には、液体のリフィルが進むにつれて、気液界面Sの面積が小さくなる。気液界面Sの面積が小さくなると、リフィルの原動力となる表面張力の作用が小さくなるため、吐出口9から17[μm]の位置までは、液体のリフィル速度Y2が低下する。気液界面Sが第一の流路10内にある場合には、液体のリフィルが進むにつれて、第一の流路10内にある液体に作用する毛管力は大きく変化しない。そのため、吐出口9から17[μm]以内の位置では、液体のリフィル速度はほぼ一定して低い。
【0044】
気液界面Sの面積が最大である時点における液体のリフィル速度Y2(図4中のプロットA)と、気液界面Sが第一の流路内10に入った後におけるリフィル速度Y1(図4中のプロットB)とを比較すると、数十倍も差があることがわかる。
【0045】
以上のことから、図3(b)に示すように気液界面Sが第二の流路11内に後退している状態に保つことにより、リフィル速度が大幅に速くなることがわかった。
【0046】
図5は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図6は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0047】
図5を参照しながら、図6(a)〜図6(l)に沿って、本実施4例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法について詳細に説明する。
【0048】
図5では、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の圧電素子13を駆動することにより吐出口9から液滴を一回吐出可能な各期間を、1周期目、2周期目、3周期目、と順番に呼ぶこととする。なお、説明の便宜上、本実施例では液滴を吐出する1周期目の前に0周期目があるものとする。
【0049】
図6(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2を駆動する前の状態(初期状態)を示している。この状態では、第一の流路10および第二の流路11の双方とも液体で満たされており、気液界面Sは吐出口9近傍の静定位置にある。液体吐出ヘッド2は、図5における0周期目の横軸が0[μs]のときに初期状態である。
【0050】
まず、図5に示す1周期目における液滴の吐出動作について説明する。1周期目は、液滴を吐出する吐出期間である。
【0051】
液滴を吐出する1周期目に入る前の0周期目において、初期状態から、気液界面Sを図6(a)に破線で示す位置まで移動させるために、図5に示す期間T1に、圧電素子13に負の電圧を印加してゆく。これにより、1周期目が開始する図5に示したAの時点では、図6(b)に示すように、負の電圧(第一の電圧)が印加された圧電素子13は凹型に撓み、第二の流路11が膨張し、気液界面Sが図6(a)および図6(b)に示す破線の位置まで移動している。このとき、液滴は第二の流路11内で凹型メニスカスを形成している。(第一の段階)
次に、気液界面Sを図6(c)に実線で示す位置まで移動させるために、図5に示す期間T2において、圧電素子13に正の電圧を印加してゆく。これにより、正の電圧(第二の電圧)を印加された圧電素子13は凸型に撓み、第二の流路11が収縮し、液体が第一の流路10内に流入する。そして、図5に示す期間T3に、気液界面Sが図6(c)に実線で示す位置まで移動するまで、圧電素子13に印加している正の電圧を保持する。これにより、図6(c)に示すように、液体は、吐出口9から突出し、凸型メニスカスを形成する。(第二の段階)
液滴が吐出口9から突出すると共に、気液界面Sを図6(d)に示す破線の位置に引き戻すように、図5に示す期間T4に、圧電素子13に負の値を印加する。これにより、圧電素子13は凹型に撓み、第一の流路10内の液体は第二の流路11内に引き戻される。一方、図5の期間T3に、図6(c)に示すように吐出口9から突出した液体は、その慣性力により、第二の流路11内に引き戻されることなく吐出口9から吐出される。その際、第二の流路11内に引き戻される液体と、吐出口9から吐出される液体と、の間に液体の尾引きが発生する。図5にBと示す時点では、Aと示す時点と等しい負の電圧(第三の電圧)が圧電素子13に印加されている。このとき、図6(e)に示すように、液体の尾引きが切れ、1発目の液体が吐出される。(第三の段階)
図5にBと示す時点では、気液界面Sは、図6(f)に実線で示すように、図6(a)と同様に破線で示している位置よりも第一の流路10から後退した位置にある。これは、液滴を吐出したことにより、第二の流路10内の液体が減少したことに起因する。
【0052】
図5にBと示す時点における圧電素子13に印加されている負の電圧は、図5にCと示す時点まで保持される。これにより、第二の流路11には、共通液室12(図2参照)から第二の流路11に液体がリフィルされる。そのため、図5のBと示す時点からCと示す時点までの間に、気液界面Sは図6(g)に破線で示す位置に近づいてゆく。そして、図5にCと示す時点では、気液界面Sが、図6(h)に示すように図6(a)および図6(b)に破線で示す位置まで戻っている。このとき、気液界面Sは、図5にAと示す時点と同様の状態となっている。換言すると、2周期目の開始時である図5のCに示す時点では、1周期目の開始時である図5にAと示す時点と同様に、上述の第一の段階に戻っている。
【0053】
次に、図5に示す2周期目における液滴の吐出動作について説明する。2周期目も、液滴を吐出する吐出期間である。
【0054】
本実施例では、2周期目でも液滴を吐出するため、図5における1周期目と同様の波形の電圧が圧電素子13に印加される。これに伴い、2周期目の液体の挙動を示す図6(i)〜図6(l)では、1周期目の液体の挙動を示す図6(c)〜図6(f)と同様となる。つまり、図5(h)のようにインクのリフィルによってメニスカスが吐出口の方向に移動するが、このメニスカスが第一の流路10に侵入する前に、圧電素子13に正の電圧を印加する。その後1周期目と同様に、正の電圧を保持する期間を経て、負の電圧を印加して図5のDへと移行させる。これにより、二発目の液体が吐出される。図5では、1周期目のAの時点およびBの時点が、2周期目のCの時点およびDの時点に対応する。
【0055】
3周期目以降でも、1周期目および2周期目と同様の波形の電圧が圧電素子13に印加され、三発目以降の液体が吐出される。これにより、任意の回数の液滴の吐出を繰り返すことができる。
【0056】
ここで1周期目において初期状態から0周期目で圧電素子13に負の電圧を印加せずに、圧電素子13に正の電圧を印加して吐出口9から液滴を吐出することを仮定する。この場合、吐出される一発目の液体の量は、二発目以降の液体の量よりも多くなってしまう。
【0057】
そのため、本実施例では、図5に示す初期状態にある0周期目から液滴を吐出する1周期目が開始するまでに、圧電素子13に図5のAに示す負の電圧を印加し、気液界面Sが第二の流路内11内にある状態にすることが好ましい。これにより、吐出口9から吐出される一発目の液体の量は、二発目以降の液体の量と実質的に等しくなる。
【0058】
図7は本実施例の変形例に係る液体吐出ヘッド2aの概略構成図である。液体吐出ヘッド2aは、吐出口プレート8a以外は図2に示した液体吐出ヘッド2と同様の構成を有する。図7では図2と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
液体吐出ヘッド2aの吐出口プレート8aの第二の流路11側の面は、第一の流路10に近づくほど吐出口プレート8aが薄くなるようなテーパ状に形成されている。図2における接続部14の角度は90度であったが、図7における接続部14aの角度θは90度より大きく、具体的には、接続部14aの角度θは150度である。この場合にも図5に示した波形と同様の波形の電圧を圧電素子13に印加することで繰り返し液滴を吐出することができた。
【0060】
本実施例では第一の流路の形状が円柱形状である液体吐出ヘッドについて説明したが、本実施例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法は、第一の流路の形状が円柱状でない場合にも適用可能である。たとえば、第一の流路は、図8(a)および図8(b)に示す形状の場合にも、図5に示した波形と同様の波形の電圧を圧電素子13に印加することで繰り返し液滴を吐出可能であることが確認できた。
「実施例2」
本発明の実施例2について図面を参照して説明する。
【0061】
本実施例でも、実施例1と同様の液体吐出装置1(図1参照)の液体吐出ヘッド2を用い、実施例1と同様の液体(クリアインク)を用いた。
【0062】
図9は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図10は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0063】
図9を参照しながら、図10(a)〜図10(l)に沿って、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法について詳細に説明する。
【0064】
図10(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2の初期状態を示している。この状態では、第一の流路10および第二の流路11の双方とも液体で満たされており、気液界面Sは吐出口9近傍の静定位置にある。
【0065】
図9の0周期目と1周期目は図5に示した波形と同様である。したがって、本実施例の0周期目と1周期目に対応する図10(a)〜図10(f)における液体の挙動は、実施例1の図6(a)〜図6(f)と同様である。図10(g)は、1周期目の後に気液界面Sが図10中に破線で示した液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における位置に復帰した状態である。そして、実施例1と同様に2周期目で二発目の液体の吐出を行う(図10(h)〜図10(k))。図10(k)は、図9に示す2周期目の期間U2後に、気液界面Sが図10中に破線で示した液体吐出ヘッド2による液体の吐出前における位置に復帰した状態を示している。
【0066】
2周期目の次の3周期目は、液滴の吐出を行わない非吐出期間である。この場合、2周期目の期間U2の次の期間U3で、期間U3の間に圧電素子13に印加する電圧をゼロにする。これにより、第二の流路11が連続吐出開始前の状態まで収縮し、気液界面Sは静定位置である吐出口9の側へ移動させられる(図10(l))。連続吐出の中断中(例えば、図9の例では3周期目)に、気液界面Sを静定位置である吐出口9へ戻すことができなくてはならない。何故ならば、気液界面Sが静定位置に戻らないまま次の吐出が始まってしまうと、気液界面Sが静定位置にある場合と初期状態が異なるため、同じように駆動しても吐出性能が異なったものとなってしまう。したがって、次の周期の吐出開始前における第二の流路11を膨張させるタイミングの直前(図9中のG)には気液界面Sは静定位置に戻っていなくてはならない。ところが、前述のように第一の流路10のリフィルには非常に時間がかかるため、自然に液体が第一の流路10に満ちるのを待ったのでは、次の吐出開始までに気液界面Sを静定位置に戻すことは困難である。しかし、本実施例においては、圧電素子13を初期状態まで戻すことにより、第二の流路11を収縮させ、それにより発生する流れによって気液界面Sを強力に吐出口9の側へ押し込むため、気液界面Sを高速に静定位置まで戻すことが可能である。
【0067】
本実施例では、液滴を吐出しない3周期目では、期間U4で、2周期目に引き続き、圧電素子13に電圧を印加せずに初期状態に保つ。これにより、3周期目では、液滴が吐出されない。
【0068】
3周期目の次の4周期目は、液滴の吐出を行う吐出期間である。この場合、気液界面Sが第二の流路11にある状態で4周期目を開始するため、0周期目と同様に、3周期目のGの時点で圧電素子13に負の電圧を印加し始める。これにより、1周期目と同様に4周期目でも液滴の吐出を行うことができる。
【0069】
図11は、1周期目に液滴の吐出を行い、2周期目に液滴の吐出を行わない場合の、圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図11の0周期目、1周期目、2周期目の波形は、それぞれ図9の0周期目、2周期目、3周期目の波形と同様である。したがって、図11の1周期目には液滴が吐出されるが、2周期目には液滴が吐出されない。
【0070】
上述したように、本実施例のように液体の吐出動作を行わない非吐出期間において液体吐出ヘッド2を初期状態とするにより、液体の吐出動作を行わない非吐出期間がある場合にも、良好に液体の吐出動作を繰り返すことができる。
【0071】
なお、液滴を吐出しない非吐出期間が連続する場合には、次に液体を吐出する吐出期間の直前の非吐出期間まで液体吐出ヘッド2を初期状態とし続ける。
【0072】
本実施例の液体吐出ヘッド2の駆動方法によれば、液滴の吐出を行う吐出期間と、液滴の吐出を行わない非吐出期間と、が混在する場合にも、液体吐出ヘッド2による吐出動作を良好に行うことができる。また、液滴を吐出する吐出期間が連続する場合にも、細く形成された第一の流路10ではなく第二の流路11への液体のリフィルを行えばよいため、リフィル速度が速い。したがって、液体吐出ヘッド2を高周波数で駆動することが可能である。
「実施例3」
本発明の実施例3について図面を参照して説明する。
【0073】
本実施例に係る液体吐出ヘッドの駆動方法でも、実施例1と同様の液体(クリアインク)を用いた。
【0074】
図12は本発明の実施例3に係る液体吐出ヘッド2bの概略構成図である。図12(a)および図12(b)は、それぞれ図2(b)および図2(c)に対応する断面図である。
【0075】
液体吐出ヘッド2bの第一の流路10の内壁面には撥液処理が施されている。これにより、液体吐出ヘッド2bが液体の吐出動作を行う前の初期状態における気液界面Sの静定位置が第一の流路10と第二の流路11との境界近傍に保たれる。
【0076】
図13は、本実施例において圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図14は本実施例に係る液体吐出ヘッド2の駆動方法における液体の挙動を示した図である。
【0077】
図13を参照しながら、図14(a)〜図14(l)に沿って、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの駆動方法について詳細に説明する。
【0078】
図14(a)は、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの初期状態を示している。この状態では、気液界面Sは第一の流路10と第二の流路11との境界近傍の静定位置にある。本実施例では、実施例2と同様に、1周期目と2周期目に液滴の吐出を行い、3周期目に液滴の吐出を行なわず、4周期目に再度液滴の吐出を行う。
【0079】
図14(b)〜図14(k)に示す液体の挙動は、実施例2に係る図10(b)〜図10(k)と同様である。図14(l)では、圧電素子13に印加する電圧をゼロとして、気液界面Sを第一の流路10と第二の流路11との境界近傍の静定位置に戻す。
【0080】
本実施例では、期間W1を2[μs]とし、電圧δ1を−5Vとした。本実施例では、期間W1を2[μs]とし、期間W2を1[μs]とし、期間W3を2[μs]とし、期間W4を5[μs]とし、W6を7[μs]とし、W7を2[μs]とした。また、電圧δ1を−5Vとし、電圧δ2を15Vとした。
【0081】
その結果、1周期目における一発目の液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.4[m/s]であった。また、2周期目における二発目の液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.8[m/s]であった。また、4周期目における三発目においては、1周期目における一発目と略同じ状態に復帰しているので、液体の吐出量は1.4[pl]であり、液体の吐出速度は6.4[m/s]であった。
【0082】
図15は、1周期目に液滴の吐出を行い、2周期目に液滴の吐出を行わない場合の、圧電素子13に印加する電圧の波形を示したグラフである。図15の0周期目、1周期目、2周期目の波形は、それぞれ図13の0周期目、2周期目、3周期目の波形と同様である。したがって、図15の1周期目には液滴が吐出されるが、2周期目には液滴が吐出されない。
【0083】
本実施例の液体吐出ヘッド2bの駆動方法によれば、液滴の吐出を行う吐出期間と、液滴の吐出を行わない非吐出期間と、が混在する場合にも、液体吐出ヘッド2bによる吐出動作を良好に行うことができる。また、粘度40[cP]の液体を用いて、液体吐出ヘッドを高周波数(46.5[kHz])で駆動する場合にも、液体吐出ヘッド2bの吐出動作を良好に行うことができた。
【0084】
また、本実施例では、一回の液体の吐出量が1.3[pl]から1.4[pl]までの範囲内に収まり、液体の吐出速度が6.2[m/s]から6.8[m/s]までの範囲内に収まった。このように、本実施例に係る液体吐出ヘッド2bの駆動方法によれば、安定した液滴の吐出が可能である。
【0085】
また、本実施例では、第一の流路10に撥液処理が施されているため、流抵抗の高い第一の流路10を液体が流動することが少なく、圧電素子13を低電圧で駆動することができ、液体吐出ヘッド2bが長寿命化する。
【符号の説明】
【0086】
1 液体吐出装置
2 液体吐出ヘッド
8 吐出口プレート
9 吐出口
10 第一の流路
11 第二の流路
12 共通液室
13 圧電素子
14 接続部
S 気液界面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の流路の一方の端部が吐出口となり、該第一の流路の他方の端部が前記第一の流路よりも流路断面積の広い第二の流路に接続されており、該第二の流路に対応して備えられた圧電素子に所定の波形の電圧を印加することにより前記吐出口から液滴を吐出可能な期間が繰り返され、該期間が、前記吐出口から液滴を吐出する吐出期間と、前記吐出口から液滴を吐出しない非吐出期間と、を含む液体吐出ヘッドの駆動方法において、
前記吐出期間は、
前記第二の流路内に、前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹状となる凹型メニスカスが形成されるように、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加する第一の段階と、
前記第二の流路内の液体が前記第一の流路内に流入するように、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加する第二の段階と、
前記第二の段階において前記第一の流路内に流入した液体が前記吐出口から吐出され、かつ、前記第二の流路内に前記液体の凹型メニスカスが形成されるように前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する第三の段階と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記第三の段階では、前記第二の段階において液体が前記吐出口から突出する時点で前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する、請求項1に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項3】
次の前記期間が前記吐出期間である前記吐出期間では、
前記第三の段階の後に、前記第二の流路への液体のリフィルを行うことにより次の前記期間の前記第一の段階となる、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項4】
次の前記期間が前記非吐出期間である前記吐出期間では、
前記第三の段階の後に、前記圧電素子に電圧を印加しない初期状態に戻してから、次の前記期間までの間、前記初期状態が保持される、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項5】
次の前記期間が前記吐出期間である前記非吐出期間では、
次の前記期間までに、前記第一の電圧を前記圧電素子に印加することにより次の前記期間の第一の段階となる、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項6】
次の前記期間が前記非吐出期間である前記非吐出期間では、
前記初期状態が保持される、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項7】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出する液体吐出装置であって、
請求項1から6のいずれか1項に記載の駆動方法で前記液体吐出ヘッドを制御する制御部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記第一の流路の内壁面に撥液処理が施されている、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口と、一端が前記吐出口に連通する第一の流路と、前記第一の流路の一端と反対方向の他端と連通し前記第一の流路よりも流路断面積の大きい第二の流路と、前記第二の流路に対応して設けられ、所定の波形の電圧を印加することにより前記第二の流路の容積を変化させ前記吐出口から液滴を吐出可能な圧電素子と、を備える液体吐出ヘッドの駆動方法であって、
前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹となる液体のメニスカスが前記第一の流路内に形成された状態で、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加し、前記メニスカスを前記第二の流路内に移動させる第一の段階と、
前記第一の流路に向かう方向に移動する前記第二の流路内のメニスカスが、前記第二の流路内に位置する状態で、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加し、液体を前記第一の流路内に移動させる第二の段階と、
前記第一の流路内の液体が前記吐出口から突出した後に、前記第二の流路を膨張させる第三の電圧を前記圧電素子に印加し、前記吐出口から液体を吐出させる第三の段階と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項1】
第一の流路の一方の端部が吐出口となり、該第一の流路の他方の端部が前記第一の流路よりも流路断面積の広い第二の流路に接続されており、該第二の流路に対応して備えられた圧電素子に所定の波形の電圧を印加することにより前記吐出口から液滴を吐出可能な期間が繰り返され、該期間が、前記吐出口から液滴を吐出する吐出期間と、前記吐出口から液滴を吐出しない非吐出期間と、を含む液体吐出ヘッドの駆動方法において、
前記吐出期間は、
前記第二の流路内に、前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹状となる凹型メニスカスが形成されるように、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加する第一の段階と、
前記第二の流路内の液体が前記第一の流路内に流入するように、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加する第二の段階と、
前記第二の段階において前記第一の流路内に流入した液体が前記吐出口から吐出され、かつ、前記第二の流路内に前記液体の凹型メニスカスが形成されるように前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する第三の段階と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記第三の段階では、前記第二の段階において液体が前記吐出口から突出する時点で前記第一の電圧を前記圧電素子に印加する、請求項1に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項3】
次の前記期間が前記吐出期間である前記吐出期間では、
前記第三の段階の後に、前記第二の流路への液体のリフィルを行うことにより次の前記期間の前記第一の段階となる、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項4】
次の前記期間が前記非吐出期間である前記吐出期間では、
前記第三の段階の後に、前記圧電素子に電圧を印加しない初期状態に戻してから、次の前記期間までの間、前記初期状態が保持される、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項5】
次の前記期間が前記吐出期間である前記非吐出期間では、
次の前記期間までに、前記第一の電圧を前記圧電素子に印加することにより次の前記期間の第一の段階となる、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項6】
次の前記期間が前記非吐出期間である前記非吐出期間では、
前記初期状態が保持される、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項7】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出する液体吐出装置であって、
請求項1から6のいずれか1項に記載の駆動方法で前記液体吐出ヘッドを制御する制御部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記第一の流路の内壁面に撥液処理が施されている、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口と、一端が前記吐出口に連通する第一の流路と、前記第一の流路の一端と反対方向の他端と連通し前記第一の流路よりも流路断面積の大きい第二の流路と、前記第二の流路に対応して設けられ、所定の波形の電圧を印加することにより前記第二の流路の容積を変化させ前記吐出口から液滴を吐出可能な圧電素子と、を備える液体吐出ヘッドの駆動方法であって、
前記吐出口から前記第二の流路内に向かって凹となる液体のメニスカスが前記第一の流路内に形成された状態で、前記第二の流路の容積を膨張させる第一の電圧を前記圧電素子に印加し、前記メニスカスを前記第二の流路内に移動させる第一の段階と、
前記第一の流路に向かう方向に移動する前記第二の流路内のメニスカスが、前記第二の流路内に位置する状態で、前記第二の流路の容積を収縮させる第二の電圧を前記圧電素子に印加し、液体を前記第一の流路内に移動させる第二の段階と、
前記第一の流路内の液体が前記吐出口から突出した後に、前記第二の流路を膨張させる第三の電圧を前記圧電素子に印加し、前記吐出口から液体を吐出させる第三の段階と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−232574(P2012−232574A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87361(P2012−87361)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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