説明

液体吐出ヘッド及び液体吐出装置

【課題】液体の吐出時に発生する飛散滴を遮断して、塗布対象以外の部位への液体付着が防止される液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】ノズル3が設けられた吐出面4を有するノズル部材1を備え、ノズルに連通する貫通孔3aを通じて供給される液体をノズルから滴状に吐出するように構成された液体吐出ヘッド。ノズル部材の吐出面との間に間隙を設けて対向配置されたスリット部材2と、スリット部材におけるノズルに対向する位置に形成され、ノズルよりも大きな寸法を有する開口部6と、間隙内の空気をノズルの横方向に吸引する吸引手段8、9とを備える。滴状の液体の吐出時にノズルから発生する不要成分である液体の飛散滴の少なくとも一部が、スリット部材の開口の周囲の部分により遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を滴状に吐出する液体吐出ノズルを有する液体吐出ヘッド、及びその液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を滴状に吐出する液体吐出装置が、近年、エレクトロニクス分野を始めとした様々な分野の製造過程に使用されている。すなわち、液体吐出ヘッドから液体材料を吐出することによって、各種のデバイス製造過程等におけるパターンの形成や均一薄膜の形成等が行われる。
【0003】
そのようなデバイス製造過程に用いられる液体材料は、記録紙に対してインク滴を吐出するインクジェット記録に用いられるインクと比較して、粘度が高い性質を有している。そのため、液体材料の吐出時には、主液滴とは別に、相対的に遅い速度で主液滴から遅れて飛翔するサテライト滴や、飛翔方向が定まらずに様々な方向へ飛翔するような浮遊液滴(ミスト)が発生し易い。このようなサテライト滴やミスト(以後、まとめて飛散滴と定義する)は、着弾精度の低下や液滴量の不安定性を招き、液体吐出ヘッドの信頼性を低下させる。
【0004】
例えば特許文献1には、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、飛散滴を効率的に吸引し得る液体吐出ヘッドが開示されている。特許文献1に開示された液体吐出ヘッドを図11に示す。図11(a)は断面図、(b)は底面図である。
【0005】
この液体吐出ヘッドは、液体材料を収容する圧力室31と、圧力室31に連通するノズル32が形成されたノズル板33と、アクチュエータ34と、ノズル板33の上面とアクチュエータ34の間に配置され圧力室31の側面を区画する弾性区画部材35とを含む。アクチュエータ34は、駆動に伴い上下方向(矢印方向)に伸縮変形する。弾性区画部材35は、アクチュエータ34の駆動に伴い弾性的に伸縮変形して、圧力室31の体積を変化させる。それにより、圧力室31内の液体材料に圧力が印加されて、ノズル32を通じて圧力室31内の液体材料が吐出される。
【0006】
アクチュエータ34の上端は、アクチュエータ保持部材36に固定されている。アクチュエータ保持部材36は、外装部材37の内部に形成され下面に開口する凹陥部37a内に固定されている。外装部材37の中央位置には供給パイプ38が配設され、その下端面は、弾性区画部材35の上面に接合されている。供給パイプ38の上端には、チューブを介して供給タンク(図示せず)が接続されている。
【0007】
外装部材37の凹陥部37aの両側にはそれぞれ、吸引通路39形成されている。各吸引通路39の下端は屈曲して、凹陥部37a内の側壁に開口している。この開口は、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引するための吸引口39aとして機能する。この吸引口39aにより、液滴の吐出方向に対して直交する方向に吸引が行われる。
【0008】
吸引口39aをノズル32開口の近傍位置に配置することによって、ノズル32を通じた液滴の吐出時には飛散滴を効率的に吸引し得ると共に、液滴の非吐出時にもノズル32面に付着した残留液滴を効率的に吸引し得る。その結果、液滴の飛び散りの防止、液滴の着弾精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られ、液体吐出ヘッドの信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−188562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来例の構成では、ノズル32より液体が吐出されるときに発生する不要な飛散滴は、吸引通路39から吸引される。しかしながら、発生する飛散滴の質量は様々であり、吸引圧力が低い場合は飛散滴の全てが吸引されることは困難である。そのため、吸引されなかった飛散滴が塗布対象物に付着する惧れがある、という問題点を有していた。また、吸引圧力が高い場合は、主液滴の塗布位置精度に悪影響を及ぼす場合がある、という問題点を有していた。
【0011】
また、ノズル表面に付着した液体が自重により目的外位置に滴下する異常塗布の現象が発生する場合がある。
【0012】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、塗布対象物への飛散滴の付着や、ノズル表面に付着した液体が自重により目的外位置に滴下する異常塗布を回避可能な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。また、そのような液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルが設けられた吐出面を有するノズル部材を備え、前記ノズルに連通する貫通孔を通じて供給される液体を前記ノズルから滴状に吐出するように構成される。上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、前記ノズル部材の前記吐出面との間に間隙を設けて対向配置されたスリット部材と、前記スリット部材における前記ノズルに対向する位置に形成され、前記ノズルよりも大きな寸法を有する開口部と、前記間隙内の空気を前記ノズルの横方向に吸引する吸引手段とを備え、前記滴状の液体の吐出時に前記ノズルから発生する不要成分である前記液体の飛散滴の少なくとも一部が、前記スリット部材の前記開口の周囲の部分により遮断されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、液体吐出時に発生する飛散滴がスリット部材によって遮断されるので、飛散滴が塗布対象物へ不要な液体として付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】実施の形態1における液体吐出ヘッドの断面図
【図1B】同液体吐出ヘッドの底面図
【図1C】同液体吐出ヘッドを分解して示した底面図
【図2】同液体吐出ヘッドのノズル部材の他の構成例を示す底面図
【図3】同液体吐出ヘッドの動作を説明するために半導体ウェハとともに示した断面図
【図4】同液体吐出ヘッドの吐出動作時における半導体ウェハに対する平面位置関係を示す下面図
【図5】同液体吐出ヘッドから半導体ウェハへの液体滴下の様子を示す断面図
【図6】同液体吐出ヘッドからの飛散滴の滴下の様子を示す断面図
【図7A】実施の形態2における液体吐出ヘッドの断面図
【図7B】同液体吐出ヘッドの底面図
【図8A】実施の形態3における液体吐出ヘッドの断面図
【図8B】同液体吐出ヘッドの底面図
【図9A】実施の形態4における液体吐出ヘッドの断面図
【図9B】同液体吐出ヘッドの底面図
【図9C】同液体吐出ヘッドのスリット部材の上面部を示す平面図
【図10A】同液体吐出ヘッドの他の構成例を示す底面図
【図10B】同液体吐出ヘッドのスリット部材の上面部を示す平面図
【図11】従来例の液体吐出ヘッドの断面図及び底面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の液体吐出ヘッドは、上記構成を基本として以下のような態様をとることができる。
【0017】
すなわち、前記吸引手段は、前記ノズルの側方に配置された吸引口を備え、前記吸引口から負圧で吸引することにより、一定量の空気の流れを発生させる構造とすることができる。このような構成により、吐出時に発生する飛散滴を一定量の空気の流れによりスリット部材の開口部から移動させ、スリット部材上に滴下させることで、塗布対象物への飛散滴付着を防止することができる。
【0018】
また、前記吐出面の外側領域の両側部に設けられ前記間隙の側部を封鎖する封鎖壁を有し、前記吸引口は、前記封鎖壁の一部を開口させて設けられ、前記ノズルに対して前記吸引口の反対側の領域における前記封鎖壁の一部を開口させて空気取入口が設けられた構成とすることができる。
【0019】
また、前記空気取入口と前記吸引口の間の空気の流れの側部を規制する一対の整流板を備え、前記整流板により一定量の乱れのない気流を発生させるように構成されることが好ましい。この構成によれば、空気の流れないデッドスペースや、空気の乱流により飛散滴が開口部を通過して塗布対象物へ付着することを防止する効果が得られる。
【0020】
前記一対の整流板の間隔は、前記空気取入口の側で前記吸引口の側よりも広くなっている構成とすることができる。
【0021】
また、前記吐出面は、前記ノズルの周囲の領域を外側の領域から突出させて設けられて、外側の領域との間に段差部が形成され、前記吐出面の外形寸法は前記スリット部材の開口部の寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、吐出時にノズル表面に残る余分な液体を、一定量の空気の流れ等により吐出面に集中させて、ノズル部材に付着した液体をスリット部材上に滴下させることで、ノズル部材表面に付着した液体が自重により目的外位置に滴下する異常塗布の発生を防止する効果が得られる。
【0022】
この場合において、前記吐出面が、前記ノズルからの液体吐出方向に対して傾斜している構成とすることができる。この構成によれば、吐出時に吐出面の表面に残る余分な液体が傾斜面の下端から常にスリット部材上に落下することで、吐出面の表面に付着した液体が自重により目的外位置に滴下する異常塗布を防止する効果が得られる。
【0023】
前記吸引口は、前記封鎖壁における前記スリット部材の側に偏った位置に配置された構成とすることが好ましい。この構成によれば、非吐出時に強く吸引することで、スリット部材上の液体を効果的に除去(クリーニング)する効果が得られる。
【0024】
また、前記スリット部材の開口部の周縁は、前記吐出面に対向する側に凸形状となっていることが好ましい。この構成によれば、スリット部材上に蓄積された液体が、開口部から漏れ出すことを抑制する効果が得られる。
【0025】
本発明の液体吐出装置は、上記いずれかの構成の液体吐出ヘッドと、前記貫通孔を通じて前記液体を供給し前記ノズルから滴状に吐出させる動作、及び前記吸引手段による吸引動作を制御する制御部とを備える構成とすることができる。
【0026】
この構成において、前記制御部は、前記ノズルからの前記液体の吐出を行う吐出時と比べて、前記液体の非吐出時に、前記吸引口からの吸引を強く行うことで、前記スリット部材上の液体を除去するように制御することが好ましい。
【0027】
以上のような特徴を有する本発明の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置は、特に半導体装置の製造において実用的な価値が高い。例えば、複数の半導体チップが作り込まれた半導体ウェハには、良品チップも、不良品チップも含まれるが、この内、不良品チップを電気的に絶縁するために液体樹脂を塗布する手段として、本発明の液体吐出装置を好適に用いることができる。従って以下の記載では、本発明の液体吐出ヘッド及び液体吐出装置は、半導体装置の製造に用いられる場合を例として説明される。
【0028】
(実施の形態1)
実施の形態1における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を、図1A〜図1Cに示す。図1Aは液体吐出ヘッドの断面図、図1Bはその底面図、図1Cは、同液体吐出ヘッドを分解して示した底面図である。図1Aは、図1BのA−A線に沿った断面を示す。
【0029】
この液体吐出ヘッドは、ノズル部材1と、スリット部材2とから構成されている。ノズル部材1の底面図が図1C(a)に示され、スリット部材2の底面図が図1C(b)に示される。ノズル部材1は、円形のノズル3が設けられた吐出面4を有し、ノズル3に連通する貫通孔3aを通じて供給される液体を、ノズル3から下方に向けて滴状に吐出するように構成されている。液体吐出装置を構成する際には、貫通孔3aの上端には、吐出する液体を供給する手段(図示せず)が接続される。吐出面4は、ノズル3の周囲領域を外側の領域から下方に突出させて設けられ、外側の領域との境界である周縁に段差部4aが形成されている。
【0030】
スリット部材2は、ノズル部材1の吐出面4との間に間隙5を設けて対向配置されている。スリット部材におけるノズル3に対向する位置には、ノズル3よりも大きな直径を有する円形の開口部6が形成されている。ノズル部材1の吐出面4の外形寸法は、開口部6より大きな直径を有する。なお、ノズル3、吐出面4、及び開口部6は、必ずしも円形である必要はなく、仕様に応じた形状に形成することができる。その場合でも、開口部の外形は、ノズルの外形よりも大きな寸法を有し、吐出面の外形は、開口部の外形よりも大きな寸法を有する。
【0031】
ノズル部材1における吐出面4の外側領域の両端部には、間隙5の側部を封鎖する封鎖壁7a、7bが設けられ、吐出面4の周囲に半密閉空間を形成している。封鎖壁7aの一部を開口させて、吸引口8設けられている。ノズル3を挟んで吸引口8と対向するように、封鎖壁7bの一部を開口させて空気取入口9が設けられている。なお、吸引口8と空気取入口9の配置は、このような位置関係に限定されることはないが、ノズル3に対して吸引口8の反対側の領域に空気取入口9が配置されることが望ましい。
【0032】
図1Aの構成では、吸引口8は、スリット部材2の直上に位置している。すなわち、封鎖壁7aにおけるスリット部材1の上面(吐出面4側の面)に接する位置に設けられている。このように、吸引口8は、封鎖壁7aにおけるスリット部材1の側に偏った位置に形成される。
【0033】
吸引口8には、吸引ポンプ等のような吸引装置(図示せず)が接続されて、空気取入口9とともに、ノズル3の横方向に空気を吸引する吸引手段を構成している。この吸引口8から負圧で吸引することにより、ノズル3を含む吐出面4の領域を通過する一定量の空気の流れを発生させることができる。
【0034】
なお、封鎖壁7a、7bは、図2に示す封鎖壁7のように、吐出面4の外側領域の全周縁に亘る範囲に設けられた構成とすることもできる。これにより、ノズル3の周囲に、より密閉度の高い半密閉空間を形成して、吸引口8からの吸引による空気の流れを安定させることができる。
【0035】
以下に、上記構成の液体吐出ヘッドの動作について説明する。以下の説明は、上述のように、半導体装置の製造工程において不良品チップを電気的に絶縁するために液体樹脂を塗布する場合を、適用対象例としたものである。
【0036】
図3は、動作を説明するために、液体吐出ヘッドを半導体ウェハとともに示した断面図である。図3に示すように、液体吐出ヘッドのスリット部材2の下方に、台座10を配置し、台座10上に半導体ウェハ11を載置する。半導体ウェハ11には複数の半導体チップが作り込まれているが、複数の半導体チップには、不良品チップ12及び良品チップ13が含まれる。ここで、不良品チップ12及び良品チップ13の判断、は既に検査装置等により判別されているものとする。
【0037】
次に、図4に示すように、液体吐出ヘッドを、ノズル3が不良品チップ12の直上に位置するように移動させる。図4は、液体吐出ヘッドの半導体ウェハ11に対する平面位置関係を示す下面図である。
【0038】
次に、図5に示すように、貫通孔3aを経由して液体14を供給し、ノズル3より不良品チップ12に向けて液体14を滴下する。図5は、半導体ウェハ11への液体滴下の様子を示す断面図である。液体滴下のメカニズムとしては、ノズル3より押し出された液体14に、くびれが発生・成長することで液滴14aとして分離し滴下することによる。液滴14aは、スリット部材2に設けられた開口部6を通って、図6に示すように塗布対象物(この場合は不良品チップ12)に付着し、塗布膜14bを形成する。なお、液体滴下の動作とともに、吸引により空気取入口9から吸引口8に向かって一定の方向の弱い空気流を発生させる。弱い空気流は、正常な液滴14aの質量に対しては、実質的な作用を及ぼさない程度の速さに設定される。
【0039】
図6には、液滴14aの滴下に伴う、液体吐出ヘッドからの飛散滴15の滴下の様子が示される。上述のとおり、空気取入口9から吸引口8に向かって一定の方向の弱い空気流を発生させているので、液滴14aの滴下と同時に発生する飛散滴15は、空気流によって移動軌跡を曲げられてスリット部材2上に付着して、液溜り15aを形成する。また、吐出時にくびれにより分離した液体のうち、吐出面4に残留した残留液体16は、空気流により吸引口8の側に偏倚して段差部4aに集まり、自重によりスリット部材2上に滴下する。
【0040】
以上のように、本実施の形態は、ノズル部材1の吐出面4との間に間隙5を設けてスリット部材2が対向配置され、スリット部材2におけるノズル3に対向する位置にノズル3よりも大きな寸法を有する開口部6が形成され、ノズル部材1に吸引口8と空気取入口9を設けて、間隙5内の空気をノズル3の横方向に吸引する吸引手段が構成されたことを特徴とする。ノズル3の領域を通過する一定方向の空気の流れをつくることで、飛散滴の移動軌跡をずらしてスリット部材2により遮断することで、飛散が除去され、塗布対象以外の部位への液体付着を防止できる。
【0041】
液滴14aの滴下後の非吐出時には、吸気口8から、吐出中の弱い吸引に比べてより強い吸引を行う。上述のとおり、吸気口8はスリット部材2の直上に段差なく配置されているので、非吐出時に吸気口8から強く吸引を行うことで、飛散滴15や、残留液体16からの自重による滴下によって蓄積された液体を、吸引・クリーニングすることができる。このように、スリット部材2上に溜まった不要液体のクリーニングのために、吐出時の弱い空気流と比べて十分に強い空気流を発生させるが、非吐出時であるため、液滴14aの滴下に対する影響はない。
【0042】
以上のようにして、液体14が、塗布対象物の目的外位置(この場合は例えば、良品チップ13)に滴下する異常塗布を防止できる。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態2における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を、図7A、図7Bに示す。図7Aは液体吐出ヘッドの断面図、図7Bはその底面図である。図7Aは、図7BのB−B線に沿った断面を示す。この液体吐出ヘッドの基本的な構成は、図1A、1Bに示した実施の形態1の場合と同様であり、同様の構成要素については、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0044】
本実施の形態の液体吐出ヘッドでは、実施の形態1におけるノズル部材1とは異なる態様のノズル部材17が用いられ、ノズル3からの液体吐出方向に対して傾斜した傾斜吐出面18が設けられていることを特徴とする。傾斜吐出面18の周縁には段差部18aが形成されており、段差部18aの寸法はスリット部材2の開口部4の外形よりも大きい。傾斜吐出面18の傾斜は、空気取入口9から吸引口8に向かって降下するように、従って、吸引口8の側で、傾斜吐出面18と段差部18aの側面が成す角が鋭角になるように形成されている。
【0045】
この液体吐出ヘッドによる作用は、次のとおりである。すなわち、吐出時にくびれにより分離した液体のうち、傾斜吐出面18に残った液体は、吸引口8からの吸引によって傾斜吐出面18の鋭角部に集まり易く、自重によりスリット部材2上に滴下する。このような構成を有することによって、実施の形態1と比較して、飛散滴15を塗布対象物の目的外位置に誘導する効果が向上し、結果として塗布対象物への異常塗布をより確実に防止することができる。
【0046】
(実施の形態3)
実施の形態3における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を、図8A、図8Bに示す。図8Aは液体吐出ヘッドの断面図、図8Bはその底面図である。図8Aは、図8BのC−C線に沿った断面を示す。この液体吐出ヘッドの基本的な構成は、図1A、1Bに示した実施の形態1の場合と同様であり、同様の構成要素については、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0047】
本実施の形態の液体吐出ヘッドは、スリット部材19の開口部20の周縁部が吐出面4に対向する側に突出して、凸形状周縁部20aとなっていることを特徴とする。吐出面4の周縁の段差部4aの寸法は、凸形状周縁部20aの外形よりも大きい。
【0048】
この液体吐出ヘッドによる作用は、次のとおりである。すなわち、スリット部材19の表面には、前述のとおり飛散滴15や吐出面4に残った液体が滴下するため、液体が蓄積する。これに対して本実施の形態では、凸形状周縁部20aが吐出面4の向きに凸形状に形成されていることで、液体の蓄積量を多くでき、吸気口8からの強い吸気によるクリーニングの回数を削減できる。
【0049】
また、スリット部材19上(図8Aに示されるスリット部材19の右辺)に滴下した飛散滴が、仮に開口部20の方向に逆流することがあっても、凸形状周縁部20aが返りの役割を果たすことにより、塗布対象物への異常塗布を効果的に防止することができる。
【0050】
(実施の形態4)
実施の形態4における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を、図9A〜図9Cに示す。図9Aは液体吐出ヘッドの断面図、図9Bはその底面図である。図9Aは、図9BのD−D線に沿った断面を示す。また、図9Cは、スリット部材2の上面部を示す平面図である。この液体吐出ヘッドの基本的な構成は、図1A、1Bに示した実施の形態1の場合と同様であり、同様の構成要素については、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0051】
ノズル部材21における吐出面4の外側領域の両側端縁には、実施の形態1と同様、間隙5の側部を封鎖する封鎖壁22a、22bが形成され、各々、吸引口23及び空気取入口24が設けられている。本実施の形態の液体吐出ヘッドの特徴は、吸引口23及び空気取入口24の間の空気の流れの両側部を規制する一対の整流板25が設けられていることである。整流板25は、図9A、9Cに示すように、スリット部材2の上に配置されている。また、一対の整流板25の間隔は、空気取入口24の側が吸引口23の側よりも広くなっている。この整流板25により、一定量の乱れのない気流を発生させることができる。
【0052】
なお、図9Bでは、空気取入口24は吸引口23よりも開口サイズが大きく設定されているが、同一サイズであってもよい。
【0053】
また、整流板25は、例えば、図10A、10Bに示す整流板26ように、空気取入口9と吸引口8とを直線的に連結する衝立形状、すなわち、一対の整流板26が平行であってもよい。この場合も、図9Bに示したように、空気取入口9の方が、吸引口8よりも開口サイズが大きくなった形態を採用してもよい。
【0054】
整流板25、あるいは整流板26を配置して、空気の流れのデッドスペースを排除することで、より空気の流れを安定させることができる。また、より弱い空気の流れで、飛散滴をスリット部材2に付着させることができる。空気の流れを弱くすることで、本来の塗布対象物(この場合は良品ウェハ13)への塗布位置精度も向上できる。また、空気の流れの影響を受けやすい微量の吐出も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、塗布対象に付着してはならない液体を効率的に除去することができ、液体吐出装置の信頼性を向上させることができる。従って、例えば半導体デバイスのパッケージ用接着材の塗布や検査工程の絶縁処理など、各種デバイスの製造が関連するエレクトロニクス分野・オプトエレクトニクス分野などの各種の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0056】
1、17、21 ノズル部材
2、19 スリット部材
3、32 ノズル
3a 貫通孔
4 吐出面
4a、18a 段差部
5 間隙
6 開口部
7、7a、7b、22a、22b 封鎖壁
8、23 吸引口
9、24 空気取入口
10 台座
11 半導体ウェハ
12 不良品チップ
13 良品チップ
14 液体
14a 液滴
14b 塗布膜
15 飛散滴
15a 液溜り
16 液体残留部
18 傾斜吐出面
20 開口部
20a 凸形状周縁部
25、26 整流板
31 圧力室
33 ノズル板
34 アクチュエータ
35 弾性区画部材
36 アクチュエータ保持部材
37 外装部材
37a 凹陥部
38 供給パイプ
39 吸引通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが設けられた吐出面を有するノズル部材を備え、前記ノズルに連通する貫通孔を通じて供給される液体を前記ノズルから滴状に吐出するように構成された液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル部材の前記吐出面との間に間隙を設けて対向配置されたスリット部材と、
前記スリット部材における前記ノズルに対向する位置に形成され、前記ノズルよりも大きな寸法を有する開口部と、
前記間隙内の空気を前記ノズルの横方向に吸引する吸引手段とを備え、
前記滴状の液体の吐出時に前記ノズルから発生する不要成分である前記液体の飛散滴の少なくとも一部が、前記スリット部材の前記開口の周囲の部分により遮断されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記ノズルの側方に配置された吸引口を備え、前記吸引口から負圧で吸引することにより、一定量の空気の流れを発生させる構造を有する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記吐出面の外側領域の両側部に設けられ前記間隙の側部を封鎖する封鎖壁を有し、
前記吸引口は、前記封鎖壁の一部を開口させて設けられ、
前記ノズルに対して前記吸引口の反対側の領域における前記封鎖壁の一部を開口させて空気取入口が設けられた請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記空気取入口と前記吸引口の間の空気の流れの側部を規制する一対の整流板を備え、
前記整流板により一定量の乱れのない気流を発生させるように構成された請求項2または3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記一対の整流板の間隔は、前記空気取入口の側で前記吸引口の側よりも広くなっている請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記吐出面は、前記ノズルの周囲の領域を外側の領域から突出させて設けられて、外側の領域との間に段差部が形成され、前記吐出面の外形寸法は前記スリット部材の開口部の寸法よりも大きく設定された請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記吐出面が、前記ノズルからの液体吐出方向に対して傾斜している請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記吸引口は、前記封鎖壁における前記スリット部材の側に偏った位置に配置されている請求項3から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記スリット部材の開口部の周縁は、前記吐出面に対向する側に凸形状となっている請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記貫通孔を通じて前記液体を供給し前記ノズルから滴状に吐出させる動作、及び前記吸引手段による吸引動作を制御する制御部とを備えた液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ノズルからの前記液体の吐出を行う吐出時と比べて、前記液体の非吐出時に、前記吸引口からの吸引を強く行うことで、前記スリット部材上の液体を除去するように制御する請求項10に記載の液体吐出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−232450(P2012−232450A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101475(P2011−101475)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】