液体吐出ヘッド及び画像形成装置
【課題】フィルタより下流側の共通液室内の気泡がノズル側に移動して吐出不良を生じる。
【解決手段】共通液室5は、フィルタ6により上流側のフィルタ上共通液室7と、下流側のフィルタ下共通液室8とに分割され、フィルタ下共通液室8にはフィルタ6に接して液体の流れを遮断しないリブ9が形成されており、フィルタ6は、リブ9により、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割されている。
【解決手段】共通液室5は、フィルタ6により上流側のフィルタ上共通液室7と、下流側のフィルタ下共通液室8とに分割され、フィルタ下共通液室8にはフィルタ6に接して液体の流れを遮断しないリブ9が形成されており、フィルタ6は、リブ9により、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドにあっては、微細なノズルから液滴を吐出するために、ヘッド流路内に塵や気泡が混入した場合、滴吐出特性が不安定になり、あるいは滴吐出不良が生じる。
【0004】
そこで、従来、共通液室内に異物を捕集するフィルタ部材を配置したもの(特許文献1)、ヘッド内に流入した気泡が圧力室やノズルに移動しないように気泡を溜めるもの(特許文献2ないし4)、共通液室内のフィルタ部材を通過した気泡がフィルタ部材の下流側で溜まらないようにフィルタ部材の下流側で流速を変えるもの(特許文献5)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−329301号公報
【特許文献2】特開2002−103045号公報
【特許文献3】特開2002−144550号公報
【特許文献4】特開2010−23437号公報
【特許文献5】特開2010−82893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、フィルタをノズル列幅相当にしているが、ヘッドの小型化を図る場合、ノズル列よりも広い範囲でフィルタを配置する必要がある。この場合、ノズル列よりも外側にあるフィルタ下流側の共通液室は液体の流れが遅くなる結果、気泡が抜けにくくなる。このような気泡は、流速の変化、例えば、吐出ノズル数が急激に変わった場合などに共通液室全体の流速分布が変動して、気泡が共通液室からノズルまで移動して吐出不良を発生するおそれがある。
【0007】
特許文献2ないし4に開示の構成にあっては、気泡を溜める気泡溜め部を設けているので、気泡がノズルへの流入することを抑制できるが、気泡の排出には専用の排出流路が必要となって余分な制御機構が必要になる。
【0008】
特許文献5に開示の構成にあっては、フィルタより下流側で液体の流れる方向を均一化しているが、共通液室のようにノズルがある範囲とそうでない部分での流速差が大きい場合、単に流れる方向を均一化しても気泡が溜まらないようにすることは困難である。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、共通液室内のフィルタ部材より下流側の気泡が圧力室側に移動することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルと、
前記ノズルに連なって通じる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に連なって通じる液体供給路を介して液体を共通する共通液室と、
前記共通液室に流入する液体に含まれる異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記共通液室は、前記フィルタにより上流側のフィルタ上共通液室と、下流側のフィルタ下共通液室とに分割され、
前記フィルタ下共通液室には前記フィルタに接して液体の流れを遮断しないリブが形成されており、
前記フィルタは、前記リブにより、前記圧力室への液体供給路に面する領域と前記圧力室への液体供給路に面しない領域とに分割されている
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、共通液室内のフィルタより下流側の気泡が圧力室側に移動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面説明図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面説明図である。
【図4】図1のC−C線に沿う断面説明図である。
【図5】同実施形態のフィルタ部材の平面説明図及びD−D線に沿う断面説明図である。
【図6】同じく第2共通液室部材の平面説明図及びE−E線に沿う断面説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図8】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びF−F線に沿う断面説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図10】図9のG−G線に沿う断面説明図である。
【図11】図10のH部の拡大断面説明図である。
【図12】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びI−I線に沿う断面説明図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図14】図13のJ−J線に沿う断面説明図である。
【図15】図14のK部の拡大断面説明図である。
【図16】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びL−L線に沿う断面説明図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図18】図17のM−M線に沿う断面説明図である。
【図19】図17のN−N線に沿う断面説明図である。
【図20】図17のO−O線に沿う断面説明図である。
【図21】同実施形態のフィルタ部材の平面説明図、P−P線に沿う断面説明図及びQ−Q線に沿う断面説明図である。
【図22】同じく第2共通液室部材の平面説明図及びR−R線に沿う断面説明図である。
【図23】本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図24】図23のS−S線に沿う断面説明図である。
【図25】図23のT−T線に沿う断面説明図である。
【図26】図25のU部の拡大断面説明図である。
【図27】同実施形態の振動板部材の平面説明図である。
【図28】本発明の第7実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図29】図28のV−V線に沿う断面説明図である。
【図30】図28のW−W線に沿う断面説明図である。
【図31】図30のX部の拡大断面説明図である。
【図32】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図、Y−Y線に沿う断面説明図、Z−Z線に沿う断面説明図、A1−A1線に沿う断面説明図である。
【図33】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する概略側面説明図である。
【図34】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図6を参照して説明する。図1は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図2ないし図4は図1のA−A線、B−B線、C−C線に沿う各断面説明図、図5はフィルタ部材の平面説明図及びD−D線に沿う断面説明図、図6は第2共通液室部材の平面説明図及びE−E線に沿う断面説明図である。
【0014】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板12と、流路板13と、振動板部材14とを接合している。
【0015】
ノズル板12には、液滴を吐出する複数のノズル1が千鳥状に2列配列されている。このノズル板12は、例えば、ステンレス(ここでは、SUS316)を用いてプレス加工でノズル1を形成した。
【0016】
流路板13は、ノズル1に連なって通じる圧力室3を形成している。この流路板13は、例えばステンレス(ここではSUS304)を用いてプレス加工で形成し、プレスによる変形、バリは両面研磨によりほぼ平らとなるように後処理をした。
【0017】
振動板部材14は、圧力室3の一部の壁面を変位可能な振動領域14aとして形成する。また、振動板部材14には、後述するフィルタ下共通液室8に臨み、フィルタ下共通液室8と各圧力室3とを通じる液体供給路4が形成されている。この振動板部材14は、三層構造をなし、Ni電鋳で形成した。
【0018】
そして、振動板部材14の圧力室3と反対側には、第2共通液室部材15、フィルタ部材16及びこのヘッドのフレームを兼ねる第1共通液室部材17を積層接合している。
【0019】
第1共通液室部材17及び第2共通液室部材15によって各圧力室3に通じる共通液室5を形成する。フィルタ部材16には異物を捕集するフィルタ6が形成されている。
【0020】
これにより、共通液室5は、第1共通液室部材17と第2共通液室部材15との間に介在するフィルタ部材16のフィルタ6によって、フィルタ6より上流側のフィルタ上共通液室7と下流側のフィルタ下共通液室8とに分割される。
【0021】
そして、第2共通液室部材15には、フィルタ部材16のフィルタ6に接して、ノズル列端部側に対応する位置に、液体の流れを遮断しないリブ9がノズル配列方向と直交する方向(ヘッドの短手方向)に設けられている。つまり、リブ9の振動板部材14側にリブ下流路10が形成される。このリブ9により、フィルタ6は、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと、圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割される。
【0022】
また、フィルタ下共通液室8は、リブ9によって、リブ下流路10によって通じている、圧力室3への液体供給路4に面する室部分8aと、圧力室3への液体供給路4に面しない室部分8bとに分割される。
【0023】
ここで、フィルタ部材16はNiで電鋳で形成している。フィルタ6は、共通液室5の長さ及び幅とほぼ同じ範囲で配置している。そのため、フィルタ6のノズル配列方向における長さはノズル列の長さより長くなる。
【0024】
第2共通液室部材15は、前述したようにフィルタ下共通液室8とノズル列の長さより若干外側の位置にリブ9とリブ下流路10を形成している。リブ9のノズル配列方向の幅はノズル1のピッチより狭い範囲で形成され、共通液室5を横断するように、つまり、ノズル配列方向と直交する方向に設けられている。
【0025】
この第2共通液室部材15は、ステンレス(ここではSUS304)を用いて、フィルタ下共通液室8はフルエッチング(貫通)、リブ9はハーフエッチングで形成している。ハーフエッチングとすることで、エッチング量でリブ下流路10の断面積を決定することができる。なお、プレス加工でリブ下流路10を形成することもできる。
【0026】
第1共通液室部材17は、フィルタ上共通液室7を形成し、外部から液体を供給するための液体供給口部11が設けられている。液体供給口部11は、フィルタ上共通液室7の長手方向の両端にそれぞれ配置されている。また、液体供給口部11はフィルタ6の端部に配置されている。
【0027】
この第1共通液室部材17は、SUS303を切削加工して形成しているが、例えば樹脂の射出成形で形成することもできる。
【0028】
また、振動板部材14の振動領域14aの圧力室3とは反対側に圧電アクチュエータ20を配置している。圧電アクチュエータ20は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材19に例えばノズルピッチの半分のピッチで柱状の圧電素子(圧電柱)を形成した2つの圧電部材18を接合している。圧電部材18の各圧電柱は振動板部材14の振動領域14aと接合されて、図示しない配線部材を介して駆動信号が与えられる。
【0029】
なお、圧電アクチュエータ20を設けるため、フィルタ部材16及び第2共通液室部材15には、図5及び図6に示すように、圧電アクチュエータ挿入用の開口21が形成されている。また、フィルタ下共通液室8の室部分18bの壁面を形成する振動板部材14の部分は変形可能なダンパ領域27とし、また、流路板13にはダンパ領域27のフィルタ下共通液室8と反対側にダンパ室28を形成している。
【0030】
この液体吐出ヘッドでは、圧電アクチュエータ20を駆動することで振動板部材14の振動領域14aが変位することで圧力室3の液体が加圧されてノズル1から液滴が吐出される。
【0031】
この液体吐出ヘッドを組み立てるときには、まず、ノズル板12、流路板13、振動板部材14を一組で接合し、次に第2共通液室部材15とフィルタ部材16を振動板部材14に接合する。次に圧電アクチュエータ20を振動板部材14に接合する。最後に、第1共通液室部材17をフィルタ部材16に接合する。
【0032】
次に、この液体吐出ヘッドに対する液体充填時の気泡の流れについて説明する。
【0033】
第1共通液室部材17のいずれかの液体供給口部11から液体を共通液室5に充填しつつ、反対側の液体供給口部11から液体と充填時に発生した気泡を排出する。
【0034】
次に、ノズル側に液体を充填する。このとき、ノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8に気泡が入り込むと、流速が遅いために移動するのが困難となる。この場合、チョーク吸引など強力な力をかければ気泡の排出は可能ではあるが、完全になくすることは困難である。
【0035】
ここでは、フィルタ6のノズル配列方向のノズル列端部近傍にリブ9を設けているので、上述したようにノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8の室部分8bに気泡が残留しても、リブ9で気泡をトラップすることができる。気泡は、重力と反対方向に移動するため、リブ9はフィルタ6に接する側(上側)にだけ配置すれば気泡のトラップが可能になる。
【0036】
これにより、ノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8の室部分8bに残留した気泡はリブ9を超えて液体供給路4が臨む室部分8aまで侵入せず、圧力室3やノズル1まで気泡が侵入して、滴吐出不良(吐出方向の曲がりや滴吐出不能)を生じることが防止され。長期にわたり安定した滴吐出を行うことができる。
【0037】
本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図7及び図8を参照して説明する。図7は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図8は第2共通液室部材の平面説明図及びF−F線に沿う断面説明図である。
【0038】
本実施形態では、平面で見て、第2共通液室部材15のリブ9は、ノズル1に近い側のノズル配列方向の幅L1をノズル1から遠い側の幅L2よりも広く形成している。これにより、液体の流れから見ると、ノズル1に近い側はリブ9による流体抵抗が大きく、遠い側がリブ9による流体抵抗が小さくなる。
【0039】
このように構成することで、高いデューティで吐出させる(高周波駆動する)とき、ノズル列両端部から液体が引かれても、気泡がリブ9を越えることがなくなる。つまり、高周波駆動を行うことで、大量に液体を引くようになるため、気泡が移動し易くなるが、ノズル1に近い側の流体抵抗を高くすることで、気泡がリブ9を容易に越えないようにできる。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図9ないし図12を参照して説明する。図9は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図10は図9のG−G線に沿う断面説明図、図11は図10のH部の拡大断面説明図、図12は第2共通液室部材の平面説明図及びI−I線に沿う断面説明図である。
【0041】
本実施形態では、前記第2実施形態において、複数の液体供給路4の内、ノズル配列方向両端部の液体供給路4は、リブ9に対向する位置に設けることで、ノズル配列方向両端部の液体供給路4をリブ下流路10に開口させている。
【0042】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bに溜まった気泡を排出するとき、ノズル配列方向両端部のノズル2のみから気泡を排出させることができ、気泡回収ないし排出が容易になる。
【0043】
つまり、このような構成でない場合、リブ9を越えた気泡がまたフィルタ6側に接する側に移動してしまうと、フィルタ6でトラップされてしまって排出が困難になる。本実施形態のように、気泡が溜りリブ9を越えた場合でもリブ下流路10の狭い部分で気泡を回収することで、気泡がフィルタ6の領域6aに移動するまえに気泡を排出できるので、気泡排出工程の信頼性が向上する。このノズル配列方向両端部のノズルは、液体吐出を行わないダミーノズルとしてもよい。
【0044】
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図13ないし図16を参照して説明する。図13は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図14は図13のJ−J線に沿う断面説明図、図15は図14のK部の拡大断面説明図、図16は第2共通液室部材の平面説明図及びL−L線に沿う断面説明図である。
【0045】
本実施形態では、前記第3実施形態において、ノズル配列両端部のノズル1に通じる液体供給路4aは、ノズル配列方向と直交する方向の長さを、他の液体供給路4のノズル配列方向と直交する方向の長さよりも長く形成している。ここでは、ノズル配列両端部の液体供給路4aのノズル配列方向と直交する方向の長さを、リブ下流路10のノズル配列方向と直交する方向の幅分(共通液室のノズル配列方向直交する幅と同じ)としている。
【0046】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからリブ下流路10を通る気泡を確実に排出することができる。
【0047】
次に、本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図17ないし図22を参照して説明する。図17は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図18ないし図20は図17のM−M線、N−N線、O−O線に沿う各断面説明図、図21はフィルタ部材の平面説明図、P−P線に沿う断面説明図及びQ−Q線に沿う断面説明図、図22は第2共通液室部材の平面説明図及びR−R線に沿う断面説明図である。
【0048】
本実施形態では、ノズル板12のノズル列両端部のノズルは画像形成に使用しないダミーノズル2aとしている。ここでは、ダミーノズル2a及びダミーノズル2aが通じるダミー圧力室3aは、画像形成に使用するノズル1及び圧力室3と寸法を異ならせて、気泡を排出し易い形状としている。また、ダミー圧力室3aに通じる液体供給路4もダミー液体供給路4bとなる。
【0049】
また、第2共通液室部材15には、フィルタ部材16のフィルタ6に接して、ノズル配列方向と直交する方向で液体供給路4よりも外側に、液体の流れを遮断しないリブ9がノズル配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って設けられている。つまり、リブ9の振動板部材14側にリブ下流路10が形成される。このリブ9により、フィルタ6は、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと、圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割される。
【0050】
また、フィルタ下共通液室8は、リブ9によって、リブ下流路10によって通じている、圧力室3への液体供給路4に面する室部分8aと、圧力室3への液体供給路4に面しない室部分8bとに分割される。
【0051】
なお、本実施形態では、フィルタ部材16で変形可能なダンパ領域27を形成し、第2共通液室部材15でダンパ室28を形成している。
【0052】
本実施形態における液体充填時の気泡の流れについて説明する。
【0053】
第1共通液室部材17のいずれかの液体供給口部11から液体を共通液室5に充填しつつ、反対側の液体供給口部11から液体と充填時に発生した気泡を排出する。
【0054】
次に、ノズル側にインクを充填する。気泡は液体供給口部11の上流から加圧したり、ノズル2側から吸引したりすることで、ノズル2を介して排出することができる。この加圧或いは吸引によって、リブ9を乗り越えて気泡がノズル2側にも移動することができる。
【0055】
ところで、気泡は充填時だけではなく、予期せぬ動作によりノズル2側からヘッド内に吸い込まれることがある。このとき、きちんとした気泡排出動作を行なえば、排出は可能であるが、なんらかの原因で印刷途中に気泡が入り込んだ場合、ノズル2側に気泡が移動することを防ぐ必要がある。
【0056】
本実施形態では、フィルタ下共通液室8を液体供給路4に近い側(室部分8a)と遠い側(室部分8b)の2つに分けており、液体供給路4に近い室部分8aでは液体の流速が稼げるので、気泡が圧力室3を経由してノズル2から排出される。一方、液体供給路4から遠い室部分8bでは流速が遅くなるために気泡の排出が困難である。
【0057】
そこで、リブ9を設けることで、液体供給路4から遠い室部分8bが液体供給路4から近い室部分8aに簡単に移動できないようにしている。
【0058】
これによって、通常の印字状態では抜けきらなかった気泡が残留していたとしてもリブ9にトラップされ、液体供給路4から圧力室3内に気泡が侵入することを防止できる。
【0059】
また、溜まった気泡の排出について、ノズル列両端にダミーノズル2a、ダミー圧力室3a、ダミー液体供給路4b(これらを併せて「ダミーチャンネル」という。)を設けているので、ダミーチャンネルから排出することが可能である。この場合は、ダミーチャンネルについては吸引力を強くすることが好ましい。
【0060】
次に、本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図23ないし図27を参照して説明する。図23は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図24及び図25は図23のS−S線、T−T線に沿う各断面説明図、図26は図25のU部の拡大断面説明図、図27は振動板部材の平面説明図である。
【0061】
本実施形態では、振動板部材14に、ダミー液体供給路4bをフィルタが液体供給路に面しない領域6b、即ちフィルタ下共通液室8の内の室部分8bに臨む位置まで延長する誘い込み部24を形成している。
【0062】
この誘い込み部24は、本実施形態では、振動板部材14を第1層14Aないし第3層14Cの三層構造とし、振動領域14aは第1層14Aで形成し、誘い込み部24はパターニングにより第2、第3層14B、14Cで第1層14Aを囲むことで溝部として形成している。
【0063】
つまり、前述した液体充填及び気泡排出を行うとき、フィルタ下共通液室8の室部分8bに残る気泡を、リブ9を越えてノズル2から排出させるためには、抵抗が大きく、加圧力或いは吸引力を大きくする必要がある。
【0064】
そこで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからダミー液体供給路4bに通じる誘い込み部24を設けることで、フィルタ下共通液室8の室部分8b内の気泡は誘い込み部24からダミー液体供給路4bに移動しやすくなる。これにより、ダミーノズル2aから気泡を排出するときの加圧力や吸引出力を抑えることができる。なお、ダミーノズル2aの寸法を気泡を排出し易い寸法(例えばノズル径を大きくする)とすることで、より排出が容易となる。
【0065】
次に、本発明の第7実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図28ないし図32を参照して説明する。図28は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図29及び図30は図28のV−V線、W−W線に沿う各断面説明図、図31は図30のX部の拡大断面説明図、図32は第2共通液室部材の平面説明図、Y−Y線に沿う断面説明図、Z−Z線に沿う断面説明図、A1−A1線に沿う断面説明図である。
【0066】
本実施形態では、前記第6実施形態において、第2共通液室部材15側にも、前記誘い込み部24に対向する部分ではリブ9を形成しないことで、誘い込み部29を設けている。言い換えれば、リブ9側には、ノズル配列方向に沿う方向でダミー液体供給路4bと位置を同じくして、ノズル配列方向と直交する方向に溝部で形成される誘い込み部29を設けている。この場合の誘い込み部29は例えばプレス加工で形成できる。
【0067】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからダミー液体供給路4bへは、リブ9のない部分(誘い込み部29)を通じて気泡が移動でき、フィルタ下共通液室8の室部分8b内の気泡はダミー液体供給路4bに一層移動しやすくなる。これにより、ダミーノズル2aから気泡を排出するときの加圧力や吸引出力を抑えることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、流路部材を構成している個別流路の壁面を形成する壁面部材が振動板部材である圧電型ヘッドで説明しているが、発熱抵抗体を設けた基板を壁面部材とするサーマル型ヘッドでも、その他静電型ヘッドであっても、同様に本発明を適用することができる。
【0069】
また、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化することでヘッド一体型液体カートリッジ(カートリッジ一体型ヘッド)を得ることができる。
【0070】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図33及び図34を参照して説明する。なお、図33は同装置の機構部の側面説明図、図34は同機構部の要部平面説明図である。
【0071】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0072】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0073】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0074】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0075】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0076】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0077】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0078】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0079】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0080】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0081】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0082】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0083】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0084】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0085】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0086】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0087】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0088】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0089】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0090】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0091】
2 ノズル
3 圧力室
4 液体供給路
5 共通液室
6 フィルタ
7 フィルタ上共通液室
8 フィルタ下共通液室
9 リブ
10 リブ下流路
12 ノズル板
13 流路板
14 振動板部材
15 第2共通液室部材
16 フィルタ部材
17 第1共通液室部材
20 圧電アクチュエータ
24、29 誘い込み部
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドにあっては、微細なノズルから液滴を吐出するために、ヘッド流路内に塵や気泡が混入した場合、滴吐出特性が不安定になり、あるいは滴吐出不良が生じる。
【0004】
そこで、従来、共通液室内に異物を捕集するフィルタ部材を配置したもの(特許文献1)、ヘッド内に流入した気泡が圧力室やノズルに移動しないように気泡を溜めるもの(特許文献2ないし4)、共通液室内のフィルタ部材を通過した気泡がフィルタ部材の下流側で溜まらないようにフィルタ部材の下流側で流速を変えるもの(特許文献5)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−329301号公報
【特許文献2】特開2002−103045号公報
【特許文献3】特開2002−144550号公報
【特許文献4】特開2010−23437号公報
【特許文献5】特開2010−82893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、フィルタをノズル列幅相当にしているが、ヘッドの小型化を図る場合、ノズル列よりも広い範囲でフィルタを配置する必要がある。この場合、ノズル列よりも外側にあるフィルタ下流側の共通液室は液体の流れが遅くなる結果、気泡が抜けにくくなる。このような気泡は、流速の変化、例えば、吐出ノズル数が急激に変わった場合などに共通液室全体の流速分布が変動して、気泡が共通液室からノズルまで移動して吐出不良を発生するおそれがある。
【0007】
特許文献2ないし4に開示の構成にあっては、気泡を溜める気泡溜め部を設けているので、気泡がノズルへの流入することを抑制できるが、気泡の排出には専用の排出流路が必要となって余分な制御機構が必要になる。
【0008】
特許文献5に開示の構成にあっては、フィルタより下流側で液体の流れる方向を均一化しているが、共通液室のようにノズルがある範囲とそうでない部分での流速差が大きい場合、単に流れる方向を均一化しても気泡が溜まらないようにすることは困難である。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、共通液室内のフィルタ部材より下流側の気泡が圧力室側に移動することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルと、
前記ノズルに連なって通じる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に連なって通じる液体供給路を介して液体を共通する共通液室と、
前記共通液室に流入する液体に含まれる異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記共通液室は、前記フィルタにより上流側のフィルタ上共通液室と、下流側のフィルタ下共通液室とに分割され、
前記フィルタ下共通液室には前記フィルタに接して液体の流れを遮断しないリブが形成されており、
前記フィルタは、前記リブにより、前記圧力室への液体供給路に面する領域と前記圧力室への液体供給路に面しない領域とに分割されている
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、共通液室内のフィルタより下流側の気泡が圧力室側に移動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面説明図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面説明図である。
【図4】図1のC−C線に沿う断面説明図である。
【図5】同実施形態のフィルタ部材の平面説明図及びD−D線に沿う断面説明図である。
【図6】同じく第2共通液室部材の平面説明図及びE−E線に沿う断面説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図8】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びF−F線に沿う断面説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図10】図9のG−G線に沿う断面説明図である。
【図11】図10のH部の拡大断面説明図である。
【図12】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びI−I線に沿う断面説明図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図14】図13のJ−J線に沿う断面説明図である。
【図15】図14のK部の拡大断面説明図である。
【図16】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図及びL−L線に沿う断面説明図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図18】図17のM−M線に沿う断面説明図である。
【図19】図17のN−N線に沿う断面説明図である。
【図20】図17のO−O線に沿う断面説明図である。
【図21】同実施形態のフィルタ部材の平面説明図、P−P線に沿う断面説明図及びQ−Q線に沿う断面説明図である。
【図22】同じく第2共通液室部材の平面説明図及びR−R線に沿う断面説明図である。
【図23】本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図24】図23のS−S線に沿う断面説明図である。
【図25】図23のT−T線に沿う断面説明図である。
【図26】図25のU部の拡大断面説明図である。
【図27】同実施形態の振動板部材の平面説明図である。
【図28】本発明の第7実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【図29】図28のV−V線に沿う断面説明図である。
【図30】図28のW−W線に沿う断面説明図である。
【図31】図30のX部の拡大断面説明図である。
【図32】同実施形態の第2共通液室部材の平面説明図、Y−Y線に沿う断面説明図、Z−Z線に沿う断面説明図、A1−A1線に沿う断面説明図である。
【図33】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する概略側面説明図である。
【図34】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図6を参照して説明する。図1は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図2ないし図4は図1のA−A線、B−B線、C−C線に沿う各断面説明図、図5はフィルタ部材の平面説明図及びD−D線に沿う断面説明図、図6は第2共通液室部材の平面説明図及びE−E線に沿う断面説明図である。
【0014】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板12と、流路板13と、振動板部材14とを接合している。
【0015】
ノズル板12には、液滴を吐出する複数のノズル1が千鳥状に2列配列されている。このノズル板12は、例えば、ステンレス(ここでは、SUS316)を用いてプレス加工でノズル1を形成した。
【0016】
流路板13は、ノズル1に連なって通じる圧力室3を形成している。この流路板13は、例えばステンレス(ここではSUS304)を用いてプレス加工で形成し、プレスによる変形、バリは両面研磨によりほぼ平らとなるように後処理をした。
【0017】
振動板部材14は、圧力室3の一部の壁面を変位可能な振動領域14aとして形成する。また、振動板部材14には、後述するフィルタ下共通液室8に臨み、フィルタ下共通液室8と各圧力室3とを通じる液体供給路4が形成されている。この振動板部材14は、三層構造をなし、Ni電鋳で形成した。
【0018】
そして、振動板部材14の圧力室3と反対側には、第2共通液室部材15、フィルタ部材16及びこのヘッドのフレームを兼ねる第1共通液室部材17を積層接合している。
【0019】
第1共通液室部材17及び第2共通液室部材15によって各圧力室3に通じる共通液室5を形成する。フィルタ部材16には異物を捕集するフィルタ6が形成されている。
【0020】
これにより、共通液室5は、第1共通液室部材17と第2共通液室部材15との間に介在するフィルタ部材16のフィルタ6によって、フィルタ6より上流側のフィルタ上共通液室7と下流側のフィルタ下共通液室8とに分割される。
【0021】
そして、第2共通液室部材15には、フィルタ部材16のフィルタ6に接して、ノズル列端部側に対応する位置に、液体の流れを遮断しないリブ9がノズル配列方向と直交する方向(ヘッドの短手方向)に設けられている。つまり、リブ9の振動板部材14側にリブ下流路10が形成される。このリブ9により、フィルタ6は、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと、圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割される。
【0022】
また、フィルタ下共通液室8は、リブ9によって、リブ下流路10によって通じている、圧力室3への液体供給路4に面する室部分8aと、圧力室3への液体供給路4に面しない室部分8bとに分割される。
【0023】
ここで、フィルタ部材16はNiで電鋳で形成している。フィルタ6は、共通液室5の長さ及び幅とほぼ同じ範囲で配置している。そのため、フィルタ6のノズル配列方向における長さはノズル列の長さより長くなる。
【0024】
第2共通液室部材15は、前述したようにフィルタ下共通液室8とノズル列の長さより若干外側の位置にリブ9とリブ下流路10を形成している。リブ9のノズル配列方向の幅はノズル1のピッチより狭い範囲で形成され、共通液室5を横断するように、つまり、ノズル配列方向と直交する方向に設けられている。
【0025】
この第2共通液室部材15は、ステンレス(ここではSUS304)を用いて、フィルタ下共通液室8はフルエッチング(貫通)、リブ9はハーフエッチングで形成している。ハーフエッチングとすることで、エッチング量でリブ下流路10の断面積を決定することができる。なお、プレス加工でリブ下流路10を形成することもできる。
【0026】
第1共通液室部材17は、フィルタ上共通液室7を形成し、外部から液体を供給するための液体供給口部11が設けられている。液体供給口部11は、フィルタ上共通液室7の長手方向の両端にそれぞれ配置されている。また、液体供給口部11はフィルタ6の端部に配置されている。
【0027】
この第1共通液室部材17は、SUS303を切削加工して形成しているが、例えば樹脂の射出成形で形成することもできる。
【0028】
また、振動板部材14の振動領域14aの圧力室3とは反対側に圧電アクチュエータ20を配置している。圧電アクチュエータ20は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材19に例えばノズルピッチの半分のピッチで柱状の圧電素子(圧電柱)を形成した2つの圧電部材18を接合している。圧電部材18の各圧電柱は振動板部材14の振動領域14aと接合されて、図示しない配線部材を介して駆動信号が与えられる。
【0029】
なお、圧電アクチュエータ20を設けるため、フィルタ部材16及び第2共通液室部材15には、図5及び図6に示すように、圧電アクチュエータ挿入用の開口21が形成されている。また、フィルタ下共通液室8の室部分18bの壁面を形成する振動板部材14の部分は変形可能なダンパ領域27とし、また、流路板13にはダンパ領域27のフィルタ下共通液室8と反対側にダンパ室28を形成している。
【0030】
この液体吐出ヘッドでは、圧電アクチュエータ20を駆動することで振動板部材14の振動領域14aが変位することで圧力室3の液体が加圧されてノズル1から液滴が吐出される。
【0031】
この液体吐出ヘッドを組み立てるときには、まず、ノズル板12、流路板13、振動板部材14を一組で接合し、次に第2共通液室部材15とフィルタ部材16を振動板部材14に接合する。次に圧電アクチュエータ20を振動板部材14に接合する。最後に、第1共通液室部材17をフィルタ部材16に接合する。
【0032】
次に、この液体吐出ヘッドに対する液体充填時の気泡の流れについて説明する。
【0033】
第1共通液室部材17のいずれかの液体供給口部11から液体を共通液室5に充填しつつ、反対側の液体供給口部11から液体と充填時に発生した気泡を排出する。
【0034】
次に、ノズル側に液体を充填する。このとき、ノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8に気泡が入り込むと、流速が遅いために移動するのが困難となる。この場合、チョーク吸引など強力な力をかければ気泡の排出は可能ではあるが、完全になくすることは困難である。
【0035】
ここでは、フィルタ6のノズル配列方向のノズル列端部近傍にリブ9を設けているので、上述したようにノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8の室部分8bに気泡が残留しても、リブ9で気泡をトラップすることができる。気泡は、重力と反対方向に移動するため、リブ9はフィルタ6に接する側(上側)にだけ配置すれば気泡のトラップが可能になる。
【0036】
これにより、ノズル配列方向でノズル列よりも外側に位置するフィルタ下共通液室8の室部分8bに残留した気泡はリブ9を超えて液体供給路4が臨む室部分8aまで侵入せず、圧力室3やノズル1まで気泡が侵入して、滴吐出不良(吐出方向の曲がりや滴吐出不能)を生じることが防止され。長期にわたり安定した滴吐出を行うことができる。
【0037】
本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図7及び図8を参照して説明する。図7は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図8は第2共通液室部材の平面説明図及びF−F線に沿う断面説明図である。
【0038】
本実施形態では、平面で見て、第2共通液室部材15のリブ9は、ノズル1に近い側のノズル配列方向の幅L1をノズル1から遠い側の幅L2よりも広く形成している。これにより、液体の流れから見ると、ノズル1に近い側はリブ9による流体抵抗が大きく、遠い側がリブ9による流体抵抗が小さくなる。
【0039】
このように構成することで、高いデューティで吐出させる(高周波駆動する)とき、ノズル列両端部から液体が引かれても、気泡がリブ9を越えることがなくなる。つまり、高周波駆動を行うことで、大量に液体を引くようになるため、気泡が移動し易くなるが、ノズル1に近い側の流体抵抗を高くすることで、気泡がリブ9を容易に越えないようにできる。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図9ないし図12を参照して説明する。図9は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図10は図9のG−G線に沿う断面説明図、図11は図10のH部の拡大断面説明図、図12は第2共通液室部材の平面説明図及びI−I線に沿う断面説明図である。
【0041】
本実施形態では、前記第2実施形態において、複数の液体供給路4の内、ノズル配列方向両端部の液体供給路4は、リブ9に対向する位置に設けることで、ノズル配列方向両端部の液体供給路4をリブ下流路10に開口させている。
【0042】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bに溜まった気泡を排出するとき、ノズル配列方向両端部のノズル2のみから気泡を排出させることができ、気泡回収ないし排出が容易になる。
【0043】
つまり、このような構成でない場合、リブ9を越えた気泡がまたフィルタ6側に接する側に移動してしまうと、フィルタ6でトラップされてしまって排出が困難になる。本実施形態のように、気泡が溜りリブ9を越えた場合でもリブ下流路10の狭い部分で気泡を回収することで、気泡がフィルタ6の領域6aに移動するまえに気泡を排出できるので、気泡排出工程の信頼性が向上する。このノズル配列方向両端部のノズルは、液体吐出を行わないダミーノズルとしてもよい。
【0044】
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図13ないし図16を参照して説明する。図13は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図14は図13のJ−J線に沿う断面説明図、図15は図14のK部の拡大断面説明図、図16は第2共通液室部材の平面説明図及びL−L線に沿う断面説明図である。
【0045】
本実施形態では、前記第3実施形態において、ノズル配列両端部のノズル1に通じる液体供給路4aは、ノズル配列方向と直交する方向の長さを、他の液体供給路4のノズル配列方向と直交する方向の長さよりも長く形成している。ここでは、ノズル配列両端部の液体供給路4aのノズル配列方向と直交する方向の長さを、リブ下流路10のノズル配列方向と直交する方向の幅分(共通液室のノズル配列方向直交する幅と同じ)としている。
【0046】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからリブ下流路10を通る気泡を確実に排出することができる。
【0047】
次に、本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図17ないし図22を参照して説明する。図17は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図18ないし図20は図17のM−M線、N−N線、O−O線に沿う各断面説明図、図21はフィルタ部材の平面説明図、P−P線に沿う断面説明図及びQ−Q線に沿う断面説明図、図22は第2共通液室部材の平面説明図及びR−R線に沿う断面説明図である。
【0048】
本実施形態では、ノズル板12のノズル列両端部のノズルは画像形成に使用しないダミーノズル2aとしている。ここでは、ダミーノズル2a及びダミーノズル2aが通じるダミー圧力室3aは、画像形成に使用するノズル1及び圧力室3と寸法を異ならせて、気泡を排出し易い形状としている。また、ダミー圧力室3aに通じる液体供給路4もダミー液体供給路4bとなる。
【0049】
また、第2共通液室部材15には、フィルタ部材16のフィルタ6に接して、ノズル配列方向と直交する方向で液体供給路4よりも外側に、液体の流れを遮断しないリブ9がノズル配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って設けられている。つまり、リブ9の振動板部材14側にリブ下流路10が形成される。このリブ9により、フィルタ6は、圧力室3への液体供給路4に面する領域6aと、圧力室3への液体供給路4に面しない領域6bとに分割される。
【0050】
また、フィルタ下共通液室8は、リブ9によって、リブ下流路10によって通じている、圧力室3への液体供給路4に面する室部分8aと、圧力室3への液体供給路4に面しない室部分8bとに分割される。
【0051】
なお、本実施形態では、フィルタ部材16で変形可能なダンパ領域27を形成し、第2共通液室部材15でダンパ室28を形成している。
【0052】
本実施形態における液体充填時の気泡の流れについて説明する。
【0053】
第1共通液室部材17のいずれかの液体供給口部11から液体を共通液室5に充填しつつ、反対側の液体供給口部11から液体と充填時に発生した気泡を排出する。
【0054】
次に、ノズル側にインクを充填する。気泡は液体供給口部11の上流から加圧したり、ノズル2側から吸引したりすることで、ノズル2を介して排出することができる。この加圧或いは吸引によって、リブ9を乗り越えて気泡がノズル2側にも移動することができる。
【0055】
ところで、気泡は充填時だけではなく、予期せぬ動作によりノズル2側からヘッド内に吸い込まれることがある。このとき、きちんとした気泡排出動作を行なえば、排出は可能であるが、なんらかの原因で印刷途中に気泡が入り込んだ場合、ノズル2側に気泡が移動することを防ぐ必要がある。
【0056】
本実施形態では、フィルタ下共通液室8を液体供給路4に近い側(室部分8a)と遠い側(室部分8b)の2つに分けており、液体供給路4に近い室部分8aでは液体の流速が稼げるので、気泡が圧力室3を経由してノズル2から排出される。一方、液体供給路4から遠い室部分8bでは流速が遅くなるために気泡の排出が困難である。
【0057】
そこで、リブ9を設けることで、液体供給路4から遠い室部分8bが液体供給路4から近い室部分8aに簡単に移動できないようにしている。
【0058】
これによって、通常の印字状態では抜けきらなかった気泡が残留していたとしてもリブ9にトラップされ、液体供給路4から圧力室3内に気泡が侵入することを防止できる。
【0059】
また、溜まった気泡の排出について、ノズル列両端にダミーノズル2a、ダミー圧力室3a、ダミー液体供給路4b(これらを併せて「ダミーチャンネル」という。)を設けているので、ダミーチャンネルから排出することが可能である。この場合は、ダミーチャンネルについては吸引力を強くすることが好ましい。
【0060】
次に、本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図23ないし図27を参照して説明する。図23は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図24及び図25は図23のS−S線、T−T線に沿う各断面説明図、図26は図25のU部の拡大断面説明図、図27は振動板部材の平面説明図である。
【0061】
本実施形態では、振動板部材14に、ダミー液体供給路4bをフィルタが液体供給路に面しない領域6b、即ちフィルタ下共通液室8の内の室部分8bに臨む位置まで延長する誘い込み部24を形成している。
【0062】
この誘い込み部24は、本実施形態では、振動板部材14を第1層14Aないし第3層14Cの三層構造とし、振動領域14aは第1層14Aで形成し、誘い込み部24はパターニングにより第2、第3層14B、14Cで第1層14Aを囲むことで溝部として形成している。
【0063】
つまり、前述した液体充填及び気泡排出を行うとき、フィルタ下共通液室8の室部分8bに残る気泡を、リブ9を越えてノズル2から排出させるためには、抵抗が大きく、加圧力或いは吸引力を大きくする必要がある。
【0064】
そこで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからダミー液体供給路4bに通じる誘い込み部24を設けることで、フィルタ下共通液室8の室部分8b内の気泡は誘い込み部24からダミー液体供給路4bに移動しやすくなる。これにより、ダミーノズル2aから気泡を排出するときの加圧力や吸引出力を抑えることができる。なお、ダミーノズル2aの寸法を気泡を排出し易い寸法(例えばノズル径を大きくする)とすることで、より排出が容易となる。
【0065】
次に、本発明の第7実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図28ないし図32を参照して説明する。図28は同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、図29及び図30は図28のV−V線、W−W線に沿う各断面説明図、図31は図30のX部の拡大断面説明図、図32は第2共通液室部材の平面説明図、Y−Y線に沿う断面説明図、Z−Z線に沿う断面説明図、A1−A1線に沿う断面説明図である。
【0066】
本実施形態では、前記第6実施形態において、第2共通液室部材15側にも、前記誘い込み部24に対向する部分ではリブ9を形成しないことで、誘い込み部29を設けている。言い換えれば、リブ9側には、ノズル配列方向に沿う方向でダミー液体供給路4bと位置を同じくして、ノズル配列方向と直交する方向に溝部で形成される誘い込み部29を設けている。この場合の誘い込み部29は例えばプレス加工で形成できる。
【0067】
このように構成することで、フィルタ下共通液室8の室部分8bからダミー液体供給路4bへは、リブ9のない部分(誘い込み部29)を通じて気泡が移動でき、フィルタ下共通液室8の室部分8b内の気泡はダミー液体供給路4bに一層移動しやすくなる。これにより、ダミーノズル2aから気泡を排出するときの加圧力や吸引出力を抑えることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、流路部材を構成している個別流路の壁面を形成する壁面部材が振動板部材である圧電型ヘッドで説明しているが、発熱抵抗体を設けた基板を壁面部材とするサーマル型ヘッドでも、その他静電型ヘッドであっても、同様に本発明を適用することができる。
【0069】
また、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化することでヘッド一体型液体カートリッジ(カートリッジ一体型ヘッド)を得ることができる。
【0070】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図33及び図34を参照して説明する。なお、図33は同装置の機構部の側面説明図、図34は同機構部の要部平面説明図である。
【0071】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0072】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0073】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0074】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0075】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0076】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0077】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0078】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0079】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0080】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0081】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0082】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0083】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0084】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0085】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0086】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0087】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0088】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0089】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0090】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0091】
2 ノズル
3 圧力室
4 液体供給路
5 共通液室
6 フィルタ
7 フィルタ上共通液室
8 フィルタ下共通液室
9 リブ
10 リブ下流路
12 ノズル板
13 流路板
14 振動板部材
15 第2共通液室部材
16 フィルタ部材
17 第1共通液室部材
20 圧電アクチュエータ
24、29 誘い込み部
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルと、
前記ノズルに連なって通じる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に連なって通じる液体供給路を介して液体を共通する共通液室と、
前記共通液室に流入する液体に含まれる異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記共通液室は、前記フィルタにより上流側のフィルタ上共通液室と、下流側のフィルタ下共通液室とに分割され、
前記フィルタ下共通液室には前記フィルタに接して液体の流れを遮断しないリブが形成されており、
前記フィルタは、前記リブにより、前記圧力室への液体供給路に面する領域と前記圧力室への液体供給路に面しない領域とに分割されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記リブは、ノズル配列方向と直交する方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記リブは、平面で見て、前記ノズルに近い側のノズル配列方向の幅が前記ノズルに遠い側のノズル配列方向の幅よりも広く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液体供給路の内のノズル配列方向両端部の液体供給路は、前記リブに対向していることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル配列方向両端部の液体供給路のノズル配列方向と直交する方向の長さが他の液体供給路のノズル配列方向と直交する方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記リブは、ノズル配列方向に沿う方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
ノズル配列方向両端部のノズルは、画像形成に寄与しないダミーノズルであることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ダミーノズルに対応する前記液体供給路を前記フィルタが液体供給路に面しない領域まで延長する誘い込み部を有することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記リブは、ノズル配列方向で前記ダミーノズルに対応する部分にはノズル配列方向と直交する方向に溝部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルと、
前記ノズルに連なって通じる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に連なって通じる液体供給路を介して液体を共通する共通液室と、
前記共通液室に流入する液体に含まれる異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記共通液室は、前記フィルタにより上流側のフィルタ上共通液室と、下流側のフィルタ下共通液室とに分割され、
前記フィルタ下共通液室には前記フィルタに接して液体の流れを遮断しないリブが形成されており、
前記フィルタは、前記リブにより、前記圧力室への液体供給路に面する領域と前記圧力室への液体供給路に面しない領域とに分割されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記リブは、ノズル配列方向と直交する方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記リブは、平面で見て、前記ノズルに近い側のノズル配列方向の幅が前記ノズルに遠い側のノズル配列方向の幅よりも広く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液体供給路の内のノズル配列方向両端部の液体供給路は、前記リブに対向していることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル配列方向両端部の液体供給路のノズル配列方向と直交する方向の長さが他の液体供給路のノズル配列方向と直交する方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記リブは、ノズル配列方向に沿う方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
ノズル配列方向両端部のノズルは、画像形成に寄与しないダミーノズルであることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ダミーノズルに対応する前記液体供給路を前記フィルタが液体供給路に面しない領域まで延長する誘い込み部を有することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記リブは、ノズル配列方向で前記ダミーノズルに対応する部分にはノズル配列方向と直交する方向に溝部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2013−63552(P2013−63552A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202911(P2011−202911)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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