説明

液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラム

【課題】内部吐出検査の欠点を補うことにある。
【解決手段】本発明に係る液体吐出検査装置は、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、を備え、前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルム等の各種媒体に対してインク等の液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、を有するインクジェットプリンター等の印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3794431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンターでは、ノズルが目詰まりして液滴を吐出できない場合がある(吐出不良)。これによってドット抜けが発生し、印刷画像を劣化させる原因となる。
このような吐出不良を検出するための吐出検査には、内部センサーを用いる内部吐出検査がある。この内部吐出検査では、内部センサーがヘッド内の液体状態を検出するものであるため、液体状態に異常があったとしても、実際に液体がヘッド外へ吐出されているのか否かは検知できなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部吐出検査の欠点を補うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための主たる発明は、
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、
前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、を備え、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行う液体吐出検査装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の構成例を示すブロック図である。
【図2】プリンター1の構成例を示す概略図である。
【図3】複数のヘッド31の配列を示す図である。
【図4】図4Aはヘッド31の断面図であり、図4Bはノズルの配列を示す図である。
【図5】ヘッド内検査ユニット70を説明する図である。
【図6】図6Aは、ピエゾ素子の残留振動に応じて出力される信号を示す図である。図6Bは、オペアンプの出力をコンデンサーと抵抗からなる高域通過フィルターを通過した後に出力される信号を示す図である。図6Cは、コンパレーターを通過した後に出力される信号を示す図である。
【図7】図7Aはヘッド外検査ユニット80を説明する図であり、図7Bは検出制御部87を説明するブロック図である。
【図8】図8Aは駆動信号を示す図であり、図8B及び図8Cは増幅器から出力される電圧信号を説明する図である。
【図9】ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。
【図10】図10Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図10Bは、乾燥増粘した状態を示す図である。図10Cは、紙粉がノズルに付着した状態を示す図である。
【図11】プリンター1の他の構成例を示す概略図である。
【図12】図12Aは、検査用パターンの一例を示すである。図12Bは、図12Aに示す検査用パターンを巨視的に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
即ち、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、
前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行うコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出検査装置である。
このような液体吐出検査装置によれば、内部吐出検査に用いる内部センサーの欠点を外部吐出検査に用いる外部センサーで補うことで、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0008】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記コントローラーは、
媒体に画像を印刷する印刷処理と並行して前記内部センサーの検知を行って、前記内部センサーの検知結果に基づいて前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知を行うことを決定した場合には、前記外部センサーの検知を行って、前記外部センサーの検知結果に応じて前記回復処理を行い、
装置本体に電力を供給するための電源を投入する際、または、当該電源を切断する際には、前記内部センサーの検知結果に基づくことなく前記外部センサーの検知を行って、当該外部センサーの検知結果に応じて前記回復処理を行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、印刷中と異なり、電源投入・切断の際には、外部吐出検査を確実に行うことができる。
【0009】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記コントローラーは、
前記内部センサーの検知結果により吐出不良が有ると判定された異常ノズルに対して、前記外部センサーの検知を行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、外部センサーを用いた外部吐出検査を、全ノズルに対して行う場合に比べて短時間で行うことができる。
【0010】
また、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置を準備することと、
前記コントローラーにより、前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行うことと、
を有することを特徴とする液体吐出検査方法である。
このような液体吐出検査方法によれば、内部吐出検査に用いる内部センサーの欠点を補うことで、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0011】
また、媒体に対して液体を吐出して印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、
前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行うコントローラーと、
を有することを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、内部吐出検査に用いる内部センサーの欠点を補うことで、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0012】
また、媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、内部吐出検査に用いる内部センサーの欠点を補うことで、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0013】
===第一実施形態===
<<<液体吐出検査装置について>>>
液体吐出検査装置は、印刷装置に組み込んだ状態で用いられる。また、工程内で用いる場合には専用装置として構成することもできる。以下に説明する実施形態では、印刷装置に組み込まれた液体吐出検査装置について説明する。具体的には、インクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」ともいう。)を例に挙げて説明する。この場合、プリンター1は、印刷装置の一例であり、液体吐出検査装置の一例でもある。
【0014】
<<<プリンター1の構成例について>>>
プリンター1の構成例について、図1〜図3、図4A及び図4Bを用いて説明する。図1は、プリンター1のブロック図である。図2は、プリンター1の概略図である。図3は、複数のヘッド31の配列を示す図である。図4Aは、ヘッドの断面図である。図4Bは、ノズルの配列を示す図である。
【0015】
プリンター1は、用紙、布、フィルム等の媒体に向けて、液体の一例としてのインクを吐出するものであり、コンピューターCPと通信可能に接続されている。コンピューターCPは、プリンター1に画像を印刷させるため、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信することができる。
【0016】
本実施の形態に係るプリンター1は、図1に示すように、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット30と、駆動信号生成部40と、クリーニングユニット50と、ヘッド内検査ユニット70と、ヘッド外検査ユニット80と、検出器群90と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー100と、を有している。
【0017】
搬送ユニット10は、媒体(例えば、連続紙Sなど)を所定の方向(以下、「搬送方向」という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、図2に示すように、上流側ローラー12A及び下流側ローラー12Bと、ベルト14とを有する。不図示の搬送モーターが回転すると、上流側ローラー12A及び下流側ローラー12Bが回転し、ベルト14が回転する。給紙された連続紙Sは、ベルト14によって、印刷処理の実行可能な領域、つまり、ヘッドユニット30(ヘッド31)と対向する領域(以下、「印刷エリア」という)まで搬送される。ベルト14が連続紙Sを搬送することによって、連続紙Sがヘッド31に対して搬送方向に移動する。印刷エリアを通過した連続紙Sは、ベルト14によって下流側の第一検査ユニット70(スキャナー71)へ向って搬送される。なお、搬送中の連続紙Sは、ベルト14に静電吸着又はバキューム吸着されている。なお、本実施形態に係る搬送ユニット10は、ベルト14により連続紙Sを搬送するものに限定されるものではなく、ドラムにより連続紙Sを搬送するようにしてもよい。
【0018】
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット20は、ガイドレール(不図示)に沿って連続紙Sの紙幅方向へ往復移動可能に支持されたキャリッジ(不図示)と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。キャリッジは、このキャリッジモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって移動するよう構成されている。キャリッジ(ヘッド31)のガイドレールにおける位置(紙幅方向の位置)は、コントローラー100がキャリッジモーターに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。本実施形態においては、後述する回復処理が行われる際に、キャリッジが紙幅方向に移動することにより、印刷エリアに位置していたヘッド31は、そこから離れたメンテナンスエリア(回復処理の実行可能な領域)に位置することになる(図2参照)。
【0019】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット10により印刷エリアに搬送された連続紙Sに対してインクを吐出するものである。ヘッドユニット30は、搬送中の連続紙Sに対してインクを吐出することによって、連続紙Sにドットを形成し、画像を連続紙Sに印刷する。本実施形態に係るプリンター1は、ラインプリンターであり、ヘッドユニット30は紙幅分のドットを一度に形成することができる。また、ヘッドユニット30は、図3に示すように、紙幅方向に沿って千鳥列状に並んだ複数のヘッド31と、コントローラー100からのヘッド制御信号に基づいてヘッド31を制御するヘッド制御部HC(図1参照)と、を有している。
【0020】
ヘッド31は、図4Aに示すように、ケース32と、流路ユニット33と、ピエゾ素子ユニット34とを有する。ケース32は、ピエゾ素子PZTなどを収容して固定するための部材であり、例えばエポキシ樹脂等の非導電性の樹脂材によって作製される。
【0021】
流路ユニット33は、流路形成基板33aと、ノズルプレート33bと、振動板33cとを有する。流路形成基板33aにおける一方の表面にはノズルプレート33bが接合され、他方の表面には振動板33cが接合されている。流路形成基板33aには、圧力室331、インク供給路332、及び、共通インク室333となる空部や溝が形成されている。この流路形成基板33aは、例えばシリコン基板によって作製されている。ノズルプレート33bには、複数のノズルNzからなるノズル群が設けられている。このノズルプレート33bは、導電性を有する板状の部材、例えば薄手の金属板によって作製されている。また、ノズルプレート33bは、グランド線に接続されてグランド電位になっている。振動板33cにおける各圧力室331に対応する部分にはダイヤフラム部334が設けられている。このダイヤフラム部334はピエゾ素子PZTによって変形し、圧力室331の容積を変化させる。なお、振動板33cや接着層等が介在していることで、ピエゾ素子PZTとノズルプレート33bとは電気的に絶縁された状態になっている。
【0022】
ピエゾ素子ユニット34は、ピエゾ素子群341と、固定板342とを有する。ピエゾ素子群341は櫛歯状をしている。そして、櫛歯の1つ1つがピエゾ素子PZTである。各ピエゾ素子PZTの先端面は、対応するダイヤフラム部334が有する島部335に接着される。固定板342は、ピエゾ素子群341を支持するとともに、ケース32に対する取り付け部となる。ピエゾ素子PZTは、電気機械変換素子の一例であり、駆動信号COMが印加されると長手方向に伸縮し、圧力室331内の液体に圧力変化を与える。圧力室331内のインクには、圧力室331の容積の変化に起因して圧力変化が生じる。この圧力変化を利用して、ノズルNzからインク滴を吐出させることができる。なお、電気機械変換素子としてのピエゾPZTに代えて、印加される駆動信号COMに応じた気泡を発生させることによりインク滴を吐出させる構造にしてもよい。
【0023】
図4Bに示すように、ノズルプレート33bには媒体の搬送方向に沿って所定間隔(たとえば、180dpi)でN個のノズル(たとえば、#1〜#180)が並んだノズル列が複数設けられている。各ノズル列はそれぞれ異なる色のインクを吐出するものであり、このノズルプレート33bには例えば4つのノズル列が設けられている。具体的には、ブラックインクノズル列K、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M、イエローインクノズル列Yである。なお、本実施形態においては、各インク色のノズル列を夫々1列ずつ備えなくてもよく、複数列ずつ備えるようにしてもよい。ある特定のインク色だけのノズル列を備えるようにしてもよい。
【0024】
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成するためのものである。駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されると、ピエゾ素子は伸縮し、各ノズルNzに対応する圧力室331の容積が変化する。そのため、駆動信号COMは、印刷処理時、後述する内部吐出検査処理時や外部吐出検査処理時、ドット抜けするノズルNzに対して行うフラッシング処理時などに、ヘッド31に印加される。
【0025】
クリーニングユニット50は、ヘッド31のノズルNzに吐出不良が有る場合に、その吐出不良を解消させて正常状態に回復させるためのものである。このクリーニングユニット50は、キャップをヘッド31の下面(ノズル面)に密着させた状態で、不図示の吸引ポンプを動作させ、キャップの空間を負圧にすることにより、ヘッド内のインクを、ヘッド内(ノズル内)に混入した気泡と共に吸引する。これにより、ドット抜けノズルを回復させることができる。
【0026】
なお、クリーニングユニット50の構成は、これに限定されるものではない。たとえば、ヘッド31のノズル面に当接可能なワイパーを有してもよい。そして、キャリッジ(ヘッド31)がキャリッジモーターの駆動により紙幅方向に移動することにより、ワイパーの先端部がヘッド31のノズル面に当接して撓むことで、ノズル面の表面をクリーニング(拭き掃除)する。これにより、ワイピングユニット55は、ノズル面に付着した紙粉等の異物を取り除き、当該異物により目詰まりしていたノズルから正常にインクを吐出させることが可能となる。
【0027】
また、フラッシング動作を行うようにしてもよい。このフラッシング動作とは、印刷する画像とは関係のない駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、ノズルから強制的に連続してインク滴を吐出させる動作である。これにより、ヘッド内(ノズル内)のインクが増粘・乾燥して、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止することができるため、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することが可能となる。
【0028】
ヘッド内検査ユニット70は、ヘッド31の内部におけるインクの状態を検査するためのものである。すなわち、このヘッド内検査ユニット70は、後述する内部吐出検査時において、ヘッド31の内部におけるインク状態を検知する内部センサーとして機能する。なお、このヘッド内検査ユニット70の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0029】
ヘッド外検査ユニット80は、ヘッド31の外部にインクが吐出されているか否かを検査するためのものである。すなわち、このヘッド外検査ユニット80は、後述する外部吐出検査時において、ヘッド31の外部においてインクの吐出不良を検知する外部センサーとして機能する。なお、このヘッド外検査ユニット80の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0030】
コントローラー100は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー100は、図1に示すように、インターフェース部101と、CPU102と、メモリー103と、ユニット制御回路104と、を有している。インターフェース部101は、外部装置であるホストコンピューターCPとプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、メモリー103に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路104により各ユニットを制御する。
【0031】
検出器群90は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ(又はヘッド31)の移動方向の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0032】
<ヘッド内検査ユニット70について>
ここでは、ヘッド内検査ユニット70について説明する。ヘッド内検査ユニット70は、後述する内部吐出検査時にヘッド31の内部におけるインク状態を検知する内部センサーである。
【0033】
(吐出検査の原理)
図4Aに示すように、ピエゾ素子PZTに駆動信号COMが印加されると、ピエゾ素子PZTが撓んで振動板33cが振動する。ピエゾ素子PZTへの駆動信号COMの印加を止めても、振動板33cには残留振動が生じている。振動板33cが残留振動により振動すると、ピエゾ素子PZTは、振動板33cの残留振動に応じて振動し信号を出力する。よって、振動板33cに残留振動を発生させて、そのときのピエゾ素子PZTに発生する信号を検出することで、各ピエゾ素子PZTの特性(周波数特性)を求めることができる。
【0034】
具体的には、駆動信号生成部40から出力される駆動信号COMが、対応するピエゾ素子PZTに印加されると、当該ピエゾ素子PZTと接する振動板33cが振動する。その振動板33cの振動はすぐに停止せず残留振動が生じる。このため、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて振動して信号(逆起電圧)を出力する。そして、その信号がヘッド内検査ユニット70に入力される。ヘッド内検査ユニット70は、入力される信号に基づいて、そのピエゾ素子PZTの周波数特性を検出する。この処理を各ノズルに対応するピエゾ素子PZTについて順次行っていけば、各ピエゾ素子PZTの周波数特性を検出することができる。このようにして検出された周波数特性は、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)によって異なる。すなわち、残留振動の振動パターンが、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なる。
【0035】
(構成)
図5は、ヘッド内検査ユニット70の構成の説明図である。ヘッド内検査ユニット70は、増幅部701と、パルス幅検出部702とを有する。
増幅部701では、ピエゾ素子341からの信号に含まれる低周波成分をコンデンサーC1と抵抗R1からなる高域通過フィルターによって除去し、オペアンプ701aにより所定の増幅率で増幅する。次に、オペアンプ701aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させることにより、基準電圧Vrefを中心に上下に振動する信号に変換する。そして、コンパレーター701bによって基準電圧Vrefと比較し、基準電圧Vrefより高いか否かによって信号を2値化する。
【0036】
(検査時の動作)
図6Aは、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて出力する信号を示す図である。周波数特性はヘッド内のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なるため、そのインク状態それぞれに対応する固有の電圧波形(振動パターン)が出力されることになる。
図6Bは、オペアンプ701aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させた後の信号、及び基準電圧Vrefを示す図である。すなわち、これらはコンパレーター701bに入力される信号である。
図6Cは、コンパレーター701bからの出力信号を示す図である。すなわち、パルス幅検出部702に入力される信号である。
【0037】
パルス幅検出部702は、図6Cに示されるパルスが入力されると、パルスの立ち上がりでカウント値をリセットし、その後のクロック信号毎にカウント値をインクリメントし、次のパルスの立ち上がりでのカウント値をコントローラー100のCPU102に出力する。CPU102は、パルス幅検出部702の出力するカウント値に基づいて、すなわち、ヘッド内検査ユニット70から出力される検知結果に基づいて、ピエゾ素子PZTの出力する信号の周期を検出することができる。
【0038】
以上のように、ヘッド内検査ユニット70が残留振動に応じた周波数特性を有する振動パターンを出力することにより、コントローラー100は、ヘッド内のインク状態(正常であるのか、又は、ヘッド内に気泡が混入したことによる異常が生じているのか、又は、インクの増粘により異常が生じているのか、又は、紙粉等の異物がノズルNzに密着して異常が生じているのか)を特定することができるため、当該インク状態それぞれに対応する適切な回復動作を行うことができる。
【0039】
<ヘッド外検査ユニット80について>
次に、ヘッド外検査ユニット80の構成例について説明する。ヘッド外検査ユニット80は、後述する外部吐出検査時に、各ノズルから実際にインクを吐出させ、正常にインクが吐出されたか否かによって、ドット抜けする異常ノズルを検出する外部センサーである。
【0040】
(構成)
図7Aは、ヘッド外検査ユニット80の構成を説明する図であり、図7Bは、検出制御部87を説明するブロック図である。
【0041】
ヘッド外検査ユニット80は、図7Aに示すように、検出用電極513と、高圧電源ユニット81と、第1制限抵抗82と、第2制限抵抗83と、検出用コンデンサー84と、増幅器85と、平滑コンデンサー86と、検出制御部87とを有する。なお、ヘッド31のノズルプレート33bは、接地されており、ヘッド外検査ユニット80の一部としても機能する。
【0042】
後述する外部吐出検査処理時においては、図7Aに示すように、キャップ51はノズル面と所定の間隔dを空けて対向するように配置される。ヘッド31のクリーニング用に設けられたキャップ51には、保湿部材512と、ワイヤー状の検出用電極513が配設されている。このため、ノズルプレート33bと検出用電極513とが所定の間隔dを空けて対向するように配置されることになる。
【0043】
この検出用電極513は、後述する外部吐出検査処理時には600V〜1kV程度の高電位に設定される。本実施形態のインク溶媒は導電性を有する液体(例えば水)とし、保湿部材512が湿った状態で検出用電極513を高電位にすると、保湿部材512の表面も同じ電位になる。この点で、ノズルからインクが吐出される領域は広い範囲に亘って一様に帯電されるようになる。
【0044】
高圧電源ユニット81は、キャップ51内の検出用電極513を所定電位にする電源である。本実施形態の高圧電源ユニット81は、600V〜1kV程度の直流電源によって構成され、検出制御部87からの制御信号によって動作が制御される。
【0045】
第1制限抵抗82及び第2制限抵抗83は、高圧電源ユニット81の出力端子と検出用電極513との間に配置され、高圧電源ユニット81と検出用電極513との間で流れる電流を制限する。本実施形態では、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は同じ抵抗値(例えば1.6MΩ)とし、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は直列に接続する。図示するように、第1制限抵抗82の一端を高圧電源ユニット81の出力端子に接続し、他端を第2制限抵抗83の一端と接続し、第2制限抵抗83の他端を検出用電極513に接続する。
【0046】
検出用コンデンサー84は、検出用電極513の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極513に接続され、他方の導体が増幅器85に接続されている。この間に検出用コンデンサー84を介在させることで、検出用電極513のバイアス成分(直流成分)を除くことができ、信号の扱いを容易にすることができる。本実施形態では、検出用コンデンサー84を容量が4700pFとする。
【0047】
増幅器85は、検出用コンデンサー84の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。本実施形態の増幅器85は増幅率が4000倍のものによって構成されている。これにより、電位の変化成分を2〜3V程度の変化幅を持った電圧信号として取得できる。これらの検出用コンデンサー84及び増幅器85の組は検出部の一種に相当し、インク滴の吐出によって生じた検出用電極513に生じた電気的な変化を検出する。
【0048】
平滑コンデンサー86は、電位の急激な変化を抑制する。本実施形態の平滑コンデンサー86は一端が第1制限抵抗82と第2制限抵抗83とを接続する信号線に接続され、他端がグランドに接続されている。そして、その容量は0.1μFである。
【0049】
検出制御部87は、ヘッド外検査ユニット80の制御を行う。この検出制御部87は、図7Bに示すように、レジスタ群87a、AD変換部87b、電圧比較部87c、及び、制御信号出力部87dを有する。レジスタ群87aは、複数のレジスタによって構成されている。各レジスタには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される。AD変換部87bは、増幅器85から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値)をデジタル値に変換する。電圧比較部87cは、増幅後の電圧信号に基づく振幅値の大きさを電圧閾値と比較する。制御信号出力部87dは、高圧電源ユニット51の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0050】
(吐出検査の原理)
ノズルプレート33bのノズルからインクが吐出されると、検出用電極513の電位が変化し、この電位変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85が検出し、検出信号が検出制御部87に出力される。異常ノズルからインクを吐出させようとしても、インクがヘッド31の外部へ吐出されないため、検出用電極513の電位は変化せず、検出信号に電圧変化は現れないことになる。
【0051】
具体的には、ノズルプレート33bをグランド電位に設定し、キャップ51に配置された検出用電極513を600V〜1kV程度の高い電位に設定する。ノズルプレート33bがグランド電位に設定されているため、ノズルから吐出されるインク滴もグランド電位になる。ノズルプレート33bと検出用電極513とを、所定間隔d(図7Aを参照)を空けた状態で対向させ、検出対象のノズルからインク滴を吐出させる。インク滴が吐出されると、これに起因して検出用電極513側に生じた電気的な変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85を介して検出制御部87が電圧信号SGとして取得する。そして、検出制御部87は、電圧信号SGにおける振幅値(電位変化)に基づいて、検出対象のノズルからインク滴が正常に吐出されたか否かを判断する。
【0052】
すなわち、図7Aに示すように、ノズルプレート33bと検出用電極513とを所定間隔dを空けて配置したことにより、これらの部材が恰もコンデンサーの様に振る舞う構成ができる。一般的に、コンデンサーを構成する2個の導体の間隔dが変化すると、コンデンサーに蓄えられる電荷Qが変化することが知られている。グランド電位のノズルプレート33bから高電位の検出用電極513に向ってインクが吐出されると、グランド電位のインク滴と検出用電極513との間隔dが変化し、コンデンサーの2個の導体の間隔dが変化したときのように、検出用電極513に蓄えられる電荷Qが変化する(コンデンサーの静電容量が変化する)。そして、コンデンサーにおける静電容量が小さくなると、ノズルプレート33bと検出用電極513との間で蓄えることのできる電荷の量が減少することになるため、余剰の電荷が検出用電極513から各制限抵抗82、83を通って高圧電源ユニット81側へ移動する。すなわち、高圧電源ユニット81へ向けて電流が流れる。一方、静電容量が増えたり、減少した静電容量が戻ったりすると、電荷が高圧電源ユニット81から各制限抵抗82、83を通って検出用電極613側へ移動する。すなわち、検出用電極613へ向けて電流が流れる。このような電流(便宜上、吐出検査用電流Ifともいう)が流れることにより、検出用電極513の電位が変化する。検出用電極513の電位の変化は、検出用コンデンサー84における他方の導体(増幅器85側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴が吐出されたか否かを判定できる。
【0053】
(検査時の動作)
図8Aは、吐出検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図であり、図8Bは、図8Aの駆動信号COMによってノズルからインクが吐出された場合に増幅器55から出力される電圧信号SGを説明する図であり、図8Cは、複数のノズル(#1〜#10)の吐出検査結果である電圧信号SGを示す図である。駆動信号COMは、図8Aに示すように、繰り返し期間Tの前半期間TAにノズルからインクを吐出するための複数の駆動波形W(例えば24個)を有し、後半期間TBでは中間電位で一定の電位が保たれる。駆動信号生成部40は、複数の駆動波形W(24個の駆動波形)を繰り返し期間T毎に繰り返し生成する。この繰り返し期間Tが1つのノズルの検査に要する時間に相当する。
【0054】
まず、検査対象の中の或るノズルに対応するピエゾ素子に、繰り返し期間Tに亘って駆動信号COMを印加する。そうすると、前半期間TAにて吐出検査対象のノズルからインク滴が連続的に吐出される(例えば24ショット打たれる)。これにより、検出用電極513の電位が変化し、増幅器85は、その電位変化を図8Bに示す電圧信号SG(サインカーブ)として検出制御部87に出力する。なお、1ショット分のインク滴による電圧信号SGの振幅が小さいため、ノズルからインク滴を連続的に吐出させることで、検査に十分な振幅である電圧信号SGが得られるようにした。
【0055】
そして、検出制御部87は、検査対象のノズルの検査期間(T)の電圧信号SGから最大振幅Vmax(最高電圧VHと最低電圧VLの差)を算出し、最大振幅Vmaxと所定の閾値THとを比較する。駆動信号COMに応じて検査対象のノズルからインクが吐出されれば、検出用電極513の電位が変化し、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値THよりも大きくなる。一方、目詰まり等により、検査対象のノズルからインクが吐出されなかったり、吐出されるインク量が少なかったりすると、検出用電極513の電位が変化しなかったり、電位変化が小さかったりするため、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値TH以下となる。
【0056】
或るノズルに対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加した後は、次の検査対象ノズルに対応するピエゾ素子に繰り返し期間Tに亘って駆動信号COMを印加するというように、検査対象の1ノズルごとに、繰り返し期間Tに亘って、そのノズルに対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加する。その結果、検出制御部87は、図8Cに示すように、繰り返し期間Tごとに、サインカーブの電位変化が発生する電圧信号SGを取得できる。
【0057】
例えば、図8Cの結果では、ノズル#5の検査期間に対応する電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値THよりも小さいため、検出制御部57はノズル#5がドット抜けノズル(異常ノズル)であると判断する。他のノズル(#1〜#4・#6〜#10)の各検査期間に対応する電圧信号SGの最大振幅Vmaxは閾値TH以上であるため、検出制御部87は他のノズルは正常なノズルであると判断する。
【0058】
<<<プリンター1の動作例について>>>
<全体的な動作について>
ここでは、プリンター1の全体的な動作について説明する。本実施形態に係るプリンター1では、コントローラー100が、メモリー103に格納されたコンピュータープログラムに従って、制御対象(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、駆動信号生成部40、クリーニングユニット50、ヘッド内検査ユニット70、ヘッド外検査ユニット80)を制御して、各処理を行う。従って、このコンピュータープログラムは、これらの処理を実行するため、制御対象を制御するためのコードを有する。
【0059】
具体的には、コントローラー100は、印刷処理及びドット抜け検査処理を行う。具体的には、コントローラー100は、印刷命令の受信、給紙動作、ドット形成動作、搬送動作、印刷終了判断、内部吐出検査処理、外部吐出検査処理、回復動作を行う。以下、各処理について、簡単に説明する。
【0060】
印刷命令の受信は、コンピューターCPからの印刷命令を受信する処理である。この処理において、コントローラー100はインターフェース部101を介して印刷命令を受信する。
【0061】
給紙動作は、印刷対象となる連続紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。この動作において、コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、連続紙Sを移動させる。
【0062】
ドット形成動作は、連続紙Sにドットを形成するための動作である。この動作において、コントローラー100は、ヘッド31に対して制御信号を出力する。このとき、駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されることにより、ノズルNzからインクが吐出される。これにより、ヘッド31のノズルNzから断続的にインクがされ、連続紙Sにドットが形成される。
【0063】
搬送動作は、連続紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置に、ドットを形成することができる。
【0064】
印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。コントローラー100は、印刷対象となっている連続紙Sに対する印刷データの有無に基づき印刷終了判断を行う。
【0065】
ドット抜け検査動作は、吐出不良(ドット抜け)の有無を検査する動作である。コントローラー100は、印刷処理と並行してヘッド内検査ユニット70を用いた内部吐出検査処理を行い、内部吐出検査処理の検知結果から吐出不良があった場合にヘッド外検査ユニット80を用いた外部吐出検査処理を行う。そして、コントローラー100は、外部吐出検査処理の検知結果に応じて回復動作を行う。なお、このドット抜け検査動作については、追って詳述する。
【0066】
回復動作は、吐出不良の状態にあるヘッド31を、インクを正常に吐出できる状態に回復させる動作である。コントローラー100は、クリーニングユニット50を作動させることにより、吐出不良の状態にあるヘッド31に対して、フラッシング動作、インク吸引動作、ワイピング動作等の回復処理を行う。
【0067】
<ドット抜け検出動作について>
次に、ドット抜け検査動作について、図9、図10A乃至図10Cを用いて説明する。図9は、ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。図10Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図10Bは、インクが増粘・乾燥した状態を示す図である。図10Cは、紙粉等の異物がノズルに付着した状態を示す図である。
【0068】
図9に示すように、先ず、コントローラー100は、ヘッド31を印刷エリアに位置させた状態で(図2参照)、印刷処理と並行して内部吐出検査処理を行う(S101)。
【0069】
この内部吐出検査処理では、ヘッド内検査ユニット70の検知結果を取得することにより、ヘッド内のインク状態が正常であるのか又は異常であるのかがノズル毎に検査される。そして、この内部吐出検査により、ヘッド内検査ユニット70の検知結果として、インクの状態が正常であること、気泡混入により異常が生じていること(図10A参照)、インクの増粘・乾燥により異常が生じていること(図10B参照)、紙粉等の異物がノズルNzに付着することにより異常が生じていること(図10C参照)、のいずれかの結果を、コントローラー100は取得することができる。すなわち、コントローラー100は、ヘッド内のインク状態(吐出不良の原因)と、当該インク状態から吐出不良があるものと推定される異常ノズルを特定することができる。
【0070】
次いで、コントローラー100は、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に基づいて、インク状態に異常が有る異常ノズルの有無を判定し(S102)、異常ノズルが無いと判定した場合(S102:NO)、ヘッド31は正常状態にあるため、そのまま処理を終了し、異常ノズルが有ると判定した場合には(S102:YES)、印刷処理を中断させて、外部吐出検査処理を行う(S103)。この際、コントローラー100は、キャリッジユニット20を作動させることによってヘッドユニット30を印刷エリアからメンテナンスエリアへ移動させ、その後に外部吐出検査処理を行う。そのため、この外部吐出検査を行う場合には、連続紙Sに印刷画像を形成しながら行う内部吐出検査に比べて、画像形成時間と異なる吐出検査のための時間を別途費やすことになる。したがって、まず先に内部吐出検査を行って異常ノズルが検出された場合に外部吐出検査へ移行することで、多くの時間が必要な外部吐出検査を行う頻度を減らすことができるため、効率的にドット抜け検査を行うことができる。
【0071】
この外部吐出検査処理では、ヘッド外検査ユニット80の検知結果を取得することにより、ヘッド31の外部にインク滴が吐出されないことに起因する吐出不良(ドット抜け)の有無が検査される。そして、この外部吐出検査により、ヘッド外検査ユニット80の検知結果として、ヘッド外に向けてインク滴が正常に吐出されていること(ドット抜けなし)、ヘッド外に向けてインク滴が正常に吐出されていないこと(ドット抜けあり)、のいずれかの結果を、コントローラー100は取得することができる。
【0072】
本実施形態では、先に行った内部吐出検査処理において異常ノズルとして特定されたノズルに対し、外部吐出検査処理が行われる。このため、必要最低限のノズルに対して検査処理が行われることになり、駆動信号生成部40が生成する駆動信号COM等の情報量を少なくすることができるため、全ノズルに対して検査処理を行う場合に比べて短時間で吐出検査を行うことが可能となる。
【0073】
次いで、コントローラー100は、ヘッド外検査ユニット80の検知結果に基づいて、吐出不良の有る異常ノズルの有無を判定し(S104)、異常ノズルが無いと判定した場合は(S104:NO)、ヘッド31内のインク状態に異常があるものの、連続紙Sに対して実際にインク滴が吐出されることにより正常に印刷が行われていることになるため、回復処理を行うことなくそのまま処理を終了し、印刷処理を再開させる。
【0074】
一方で、コントローラー100は、異常ノズルが有ると判定した場合には(S104:YES)、異常ノズルを正常ノズルに回復させるための回復処理を行う(S105)。
【0075】
この回復処理は、ヘッドユニット30がメンテナンスエリアに位置する際に行われるため、外部吐出検査の結果により異常ノズルが検出されたときには、直ちに回復処理を行うことができる。その後、コントローラー100は、回復処理が完了すると、ヘッドユニット30をメンテナンスエリアから印刷エリアへ移動させて、印刷処理を再開させる。
【0076】
以上のように、本実施形態においては、印刷処理を行いながらドット抜け検出動作を行うものであるが、これに加えて、印刷処理が終了した後であっても、ドット抜け検出動作を行うことができる。
【0077】
たとえば、プリンター本体の電源を切断する前に、ドット抜け検出動作を行うことも可能である。また、電源投入した直後で、印刷処理を開始する前に、ドット抜け検出動作を行うことも可能である。
【0078】
そして、この場合におけるドット抜け検出動作は、内部吐出検査処理の検知結果に基づくことなく外部吐出検査処理を行って、この外部吐出検査処理の検知結果に応じて回復処理を行うようにする。これは、上述したように、内部吐出検査処理の検知結果によりインク状態に異常があった場合にのみ、外部吐出検査処理を開始させるように制御すると、たとえば、電源投入・切断の際など、実際の印刷画像にドット抜けがない状態を確保したい場合(印刷画質を維持したい場合)、内部吐出検査では印刷画像のドット抜けを検出することができないために外部吐出検査を行う必要があるにも関わらず、直ちに外部吐出検査処理を開始することができなくなってしまうからである。
【0079】
また、このように電源投入・電源切断の際にドット抜け検査を行うことには、以下のようなメリットがある。たとえば、印刷処理終了後、吐出不良の有る異常ノズルが存在するにも関わらず、クリーニングを行わずに電源切断すれば、異常ノズルの異常状態はそのまま維持されることになる。そうすると、その後にプリンター1の電源を投入して改めて印刷処理を開始すれば、印刷開始時から不良印刷物を作成することになってしまう。これに対し、電源投入・電源切断の際にもドット抜け検査を行うことで、最初から不良印刷物を作成することなく、速やかに印刷処理を開始することが可能となる。
【0080】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、媒体に対してインクを吐出して印刷を行うヘッド31と、ヘッド31の内部においてインク状態を検知するヘッド内検査ユニット70と、ヘッド31の外部においてインクの吐出不良を検知するヘッド内検査ユニット70と、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に基づいて、ヘッド内検査ユニット70の検知を行うか否かを決定し、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に応じて、ヘッド31によるインクの吐出を回復させる回復処理を行うコントローラー100と、を備えている。
【0081】
インクカートリッジからヘッドへインクを充填する際に気泡が混入したり、長時間ノズルNzからインク(液体)が吐出されないことによりインクが増粘・乾燥したり、ノズルNzに紙粉などの異物が付着したりすると、ノズルNzが目詰まりすることがある。このようにノズルNzが目詰まりすると、ノズルNzからインクが吐出されるべき時にインクが吐出されず、ドット抜けが発生する(吐出不良)。ドット抜けとは、本来ノズルNzからインクが吐出されてドットが形成されるべき所にドットが形成されない現象をいう。ドット抜けが発生すると画質劣化の原因となる。上述したとおり、ドット抜けを検出するための吐出検査の1つとして、内部センサーを用いた内部吐出検査がある。この内部吐出検査では、内部センサーがヘッド内のインク状態を検出するものであるため、インク状態に異常があったとしても、実際にインク滴がヘッド外へ吐出されているのか否かは検知できなかった。そこで、本実施形態では、内部吐出検査の欠点を補うべく、外部センサーを用いた外部吐出検査を行うようにした。このため、内部吐出検査の検出結果によりインク状態に異常があると判定されたときに外部吐出検査を行うことで、実際にインク滴がヘッド外に吐出されることによりドット抜けを生じさせることなく印刷画像が形成されているか否かを特定できようになり、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態に係るドット抜け検査処理においては、先に内部吐出検査を行ってから外部吐出検査を行うようにした。これによって以下の点が有効となる。たとえば、仮に、先に外部吐出検査を行ったとすると、実際に印刷画像にドット抜けが生じているかを直ちに検出することができるものの、印刷処理と並行して行われないため(印刷を中断し、ヘッドユニット30を印刷エリアからメンテナンスエリアへ移動させて行うため)、印刷画像を形成しながら行う内部吐出検査に比べて、画像形成時間とは異なる吐出検査用の時間を別途費やすことになる。これに対し、本実施形態では、内部吐出検査を行って、吐出不良の有る異常ノズルを推定し、その後に外部吐出検査に移行して、印字時間とは異なる時間を使って吐出不良の有無をチェックすることにより、実際に印刷画質に影響を与えているおそれのある異常ノズルを特定することとした。これにより、検査のために別途時間が必要な外部吐出検査の頻度を減らすことができるため、効率的にドット抜け検査を行うことができる。
【0083】
また、コントローラー100は、連続紙Sに画像を印刷する印刷処理と並行して内部吐出検査処理を行って、内部吐出検査の検知結果に基づいて外部吐出検査処理を行うか否かを決定し、行うことを決定した場合には、外部吐出検査処理を行って、外部吐出検査の検知結果に応じて回復処理を行い、かつ、装置本体に電力を供給するための電源を投入する際、または、当該電源を切断する際には、内部吐出検査の検知結果に基づくことなく外部吐出検査処理を行って、外部吐出検査の検知結果に応じて回復処理を行うこととした。このように、印刷中と異なり、電源投入・切断の際には、外部吐出検査を確実に行うことができるため、吐出不良が実際に印刷画質に影響を与えているか否かを検出することができる。
【0084】
また、コントローラー100は、ヘッド内検査ユニット70(内部センサー)を用いた内部吐出検査の検知結果により吐出不良が有ると判定された異常ノズルに対して、ヘッド外検査ユニット80(外部センサー)を用いた外部吐出検査を行うこととした。これにより、外部センサーを用いた外部吐出検査を、全ノズルに対して行う場合に比べて短時間で行うことが可能となる。
【0085】
===第二実施形態===
第二実施形態に係るプリンター1は、上述した第一実施形態に係るプリンター1と同様に、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット30と、駆動信号生成部40と、クリーニングユニット50と、ヘッド内検査ユニット70と、ヘッド外検査ユニット80と、検出器群90と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー100と、を有している。
【0086】
しかしながら、第二実施形態に係るプリンター1においては、ヘッド外検査ユニット80の構成が、第一実施形態に係る液体吐出装置1のものと異なる。また、第二実施形態に係るプリンター1におけるドット抜け検査動作も、第一実施形態に係るプリンター1のものと異なる。
【0087】
従って、以下では、第一実施形態とは異なる構成のヘッド外検査ユニット80、及び、第一実施形態とは異なるドット抜け検査動作について、具体的に説明する。
【0088】
<ヘッド外検査ユニット80について>
上述した第一実施形態においては、ヘッド外検査ユニット80(外部センサー)の一例として、帯電させたインク滴をノズルから検出用の電極に向けて吐出させ、この電極に生じる電気的な変化を検知するもの(図7A及び図7B参照)を挙げて説明した。
【0089】
これに対して、第二実施形態においては、スキャナー等の読取装置を外部センサーとして用い、連続紙Sの空きスペースに印刷画像と重ならないように検出用パターンを印刷して、この検出用パターンをスキャナーで読み取ることにより、吐出不良を検出するようにした。以下、具体的に説明する。
【0090】
(構成)
図11は、プリンター1の他の構成例を示す概略図である。ヘッド外検査ユニット80は、ヘッドユニット30(ヘッド31)よりも搬送方向の下流側の位置に設けられ、連続紙Sの紙幅分の印刷画像を一度に読み取ることができるスキャナー81を有している。このスキャナー81は、連続紙Sに対して照明光を照射する光源部と、連続紙Sで反射した反射光を受光する感光部とを有しており、プリンター1が印刷した印刷画像を色毎に読み取ることができる。光源部は、複数の白色LEDが配置された基板を有している。感光部は、CCDなどのイメージセンサーと、反射光をイメージセンサーに集めるためのレンズとを有しており、受光した反射光の強度に応じた大きさの電圧を出力する。
【0091】
(検出用パターンの概要)
図12Aは、異常ノズルを検出するための検出用パターンを示す図である。ここでは、ブラックノズル列(K)311によって形成する検出用パターンを示す。また、ヘッドユニット30では図4Aに示すようにヘッド31が千鳥状に配置されているが、以下では説明のため、図12Aのようにヘッドユニット30の下面にてノズルを紙幅方向に1列に並べて示す。また、ヘッドユニット30が有するノズルの数を減らし、紙幅方向の左側のノズルから順に若い番号を付す。
【0092】
ヘッドユニット30の下を搬送される連続紙Sに対して、偶数番号のノズルからインクを吐出させ、その後、奇数番号のノズルからインクを吐出させることによって、1つのノズル列に対応する検査用パターンを形成する。そのため、検査用パターンは搬送方向に沿うドット列から構成される。ここでは、たとえば、1つのドット列が100個のドットから構成されるとする。そして、紙幅方向に並ぶ1個おきのノズルにてドット列を形成させるため、紙幅方向に所定間隔(たとえば、360dpi)で並んだドット列群(点線にて囲まれた領域)が、搬送方向に2つ並んで形成される。この1つのドット列群を「不良検出用パターン」と呼ぶ。また、本実施形態では紙幅方向に並ぶ1個おきのノズルにて不良検出用パターンを形成し、1つのノズル列に対して2つの不良検出用パターンが形成される。そのため、ブラックノズル列(K)311に形成された2つの不良検出用パターンを区別するために、例えば「ブラックの偶数ノズル不良検出用パターン」「ブラックの奇数ノズル不良検出用パターン」と呼ぶ。
【0093】
図12Bは、ブラックノズル列(K)311によって形成された不良検出用パターンを巨視的に見た図である。図12Aでは、説明のためにドット列を拡大して描いているが、多数の微小なドット列から構成される不良検出用パターンを巨視的に見ると、図12Bに示すように黒い帯状のパターンとして視認される。図中ではノズル#iとノズル#jを異常ノズルとし、異常ノズル#i、#jがドット列を形成すべき連続紙S上の領域にはドット列が形成されず、黒い不良検出用パターンにおいて白い筋(連続紙Sの地色)が現れる。
【0094】
つまり、本実施形態では、不良検出用パターンを形成させるための印刷データに基づいて、コントローラー100が、各ノズル列にドット列を形成させて、不良検出用パターンを形成させる。そして、正しくドット列を形成できなかったノズルを異常ノズルとして検出する。そのために、連続紙Sに形成された不良検出用パターンをヘッドユニット30の下流側に位置する外部検査ユニット80(スキャナー81)に読み取らせる。そして、コントローラー100が、外部検査ユニット80(スキャナー81)の読取結果に基づいて、図12Bに示すような白筋が発生していないかを判定し、異常ノズルの有無と、異常ノズルの位置(ノズル番号)を検出する(詳細は後述する)。なお、スキャナー81は紙幅方向に並ぶノズル列長さ以上のラインセンサーであり、スキャナー81が紙幅方向の読取解像度がドット列間隔360dpi以上であるとする。
【0095】
このように、本実施形態では、各ノズルに搬送方向に沿ったドット列を形成させることによって、不良検出用パターンを形成させる。そして、適切にドット列が形成されなかった連続紙S上の領域に対応するノズルを異常ノズルとして検出する。
【0096】
また、本実施形態では、1つの不良検出用パターンを紙幅方向の1個おきのノズルに形成させている。これは、ノズルピッチは微小(ここでは720dpi)であるからである。仮に、奇数ノズルによるドット列と偶数ノズルによるドット列を紙幅方向に並べて、ドット列間隔がノズルピッチ(720dpi)である不良検出用パターンを形成したとすると、隣接するノズルにて形成されるドット列が重複してしまうおそれがある。また、テストパターンを印刷する用紙(媒体)によっては、インクが滲みやすく、ドット列が重複してしまうおそれがある。そうすると、例えば、ある異常ノズルがドット列を形成すべき領域に、その異常ノズルと隣接するノズルにて形成されたドット列の一部が形成されて、その異常ノズルが正常にドット列を形成したものと誤って判定してしまう。
【0097】
そこで、本実施形態では、紙幅方向に並ぶノズル列の1個おきのノズルにてドット列を形成させて、隣接するノズルのドット列を搬送方向にずらして不良検出用パターンを形成させる。すなわち、奇数番号ノズルによる不良検出用パターンと偶数番号ノズルによる不良検出用パターンを別々に形成する。そうすることで、隣接するノズルによって形成されるドット列の影響を受けてしまうことを抑止でき、不良ノズルの検出をより正確に行うことができるようになる。なお、1個おきのノズルにて異なる不良検出用パターンを形成させる場合に限られず、例えば、ノズルピッチが更に狭いヘッドユニット30では、2個おき、3個おきのノズルに、異なる検出用パターンを形成させるようにしてもよい。これにより、異常ノズルの検出を正確に行うことができるようになる。
【0098】
また、紙幅方向に並ぶ交互のノズルごとに不良検出用パターンを形成させて、ドット列の紙幅方向の間隔を広くすることで、スキャナー81が不良検出用パターンを読み取る際の紙幅方向の解像度を低くすることができる。そのため、高性能なスキャナーを設ける必要がなくなり、コストを抑えることができる。
【0099】
(検査時の動作)
先ず、コントローラー100は、印刷データに基づいて、連続紙Sの空き領域に不良検出用パターンを印刷する。たとえば、印刷画像と重ならない余白部分に不良検出用パターンを印刷する。次いで、コントローラー100は、搬送ユニット10により搬送方向の上流側から下流側へ搬送された不良検出用パターンをスキャナー81に読み取らせ、読取データを取得する。次いで、コントローラー100は、不良検出用パターンの読取データと基準データ(印刷データから生成されたデータ)とを比較することによって吐出不良の有無を判定すると共に、吐出不良の有る異常ノズルを特定する。
【0100】
<ドット抜け検出動作について>
次に、ドット抜け検査動作について、図9、図10A乃至図10Cを用いて説明する。なお、以下において、かかる検査動作を簡略して説明する部分もあるが、詳細は上述した第一実施形態と同じである。
【0101】
図9に示すように、先ず、コントローラー100は、ヘッド31を印刷エリアに位置させた状態で(図2参照)、印刷処理と並行して内部吐出検査処理を行う(S101)。
【0102】
次いで、コントローラー100は、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に基づいて、インク状態に異常が有る異常ノズルの有無を判定し(S102)、異常ノズルが無いと判定した場合(S102:NO)、ヘッド31は正常状態にあるため、そのまま処理を終了し、異常ノズルが有ると判定した場合には(S102:YES)、印刷処理を中断させて、外部吐出検査処理を行う(S103)。この際、コントローラー100は、ヘッドユニット30を作動させて、連続紙Sに印刷画像の形成する印刷処理を中断し、連続紙Sの空き領域に検出用パターンを形成する。よって、この外部吐出検査を行う場合には、検出用パターンを連続紙Sの空きスペースに形成する必要があるため、印刷画像の形成と並行して行う内部吐出検査に比べて、吐出検査のために別途時間を費やすことになる。そのため、まず先に内部吐出検査を行って異常ノズルが検出された場合に外部吐出検査へ移行することで、検査のために別途時間が必要な外部吐出検査を行う頻度を減らすことができるため、効率的にドット抜け検査を行うことができる。そして、本実施形態では、先に行った内部吐出検査処理で特定された異常ノズルに対し、外部吐出検査処理が行われる。
【0103】
次いで、コントローラー100は、ヘッド外検査ユニット80の検知結果に基づいて、吐出不良の有る異常ノズルの有無を判定し(S104)、異常ノズルが無いと判定した場合は(S104:NO)、ヘッド31内のインク状態に異常があるものの、連続紙Sに印刷された印刷画像に対して実際には悪影響を及ぼすことなく(ドット抜けのあるドット不良箇所を生じさせることなく)正常に印刷が行われていることになる。このため、回復処理を行わずにそのまま処理を終了し、印刷処理を再開させる。
【0104】
一方で、コントローラー100は、異常ノズルが有ると判定した場合には(S104:YES)、ドット抜けを生じさせた異常ノズルを正常ノズルに回復させるための回復処理を行う(S105)。この際、コントローラー100は、キャリッジユニット20を作動させることによってヘッドユニット30を印刷エリアからメンテナンスエリアへ移動させた後に、回復処理を行う。
【0105】
その後、コントローラー100は、回復処理が完了すると、ヘッドユニット30をメンテナンスエリアから印刷エリアへ移動させて、印刷処理を再開させる。
【0106】
以上のように、本実施形態においては、印刷処理を行いながらドット抜け検出動作を行うものであるが、これに加えて、印刷処理が終了した後であっても、ドット抜け検出動作を行うことができる。たとえば、プリンター本体の電源を切断する前に、ドット抜け検出動作を行うことも可能である。また、電源投入した直後で、印刷処理を開始する前に、ドット抜け検出動作を行うことも可能である。この点については、上述した第一実施形態と同様である。
【0107】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、媒体に対してインクを吐出して印刷を行うヘッド31と、ヘッド31の内部においてインク状態を検知するヘッド内検査ユニット70と、ヘッド31の外部においてインクの吐出不良を検知するヘッド内検査ユニット70と、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に基づいて、ヘッド内検査ユニット70の検知を行うか否かを決定し、ヘッド内検査ユニット70の検知結果に応じて、ヘッド31によるインクの吐出を回復させる回復処理を行うコントローラー100と、を備えている。このため、内部吐出検査の検出結果によりインク状態に異常があると判定されたときに外部吐出検査を行うことで、実際に印刷画質に悪影響を及ぼしているのか否かを特定することができようになり、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0108】
また、先に内部吐出検査を行ってから外部吐出検査を行うことによって、以下の点が有効となる。たとえば、仮に、先に外部吐出検査を行ったとすると、実際に印刷画像にドット抜けが生じているかを直ちに検出することができるものの、検出用パターンを印刷画像と重ならないように連続紙Sの空き領域に形成する必要があるため、印刷画像を形成しながら行う内部吐出検査に比べて、その画像形成時間とは異なる吐出検査用の時間を別途費やすことになる。これに対し、本実施形態では、内部吐出検査を行って、吐出不良の有る異常ノズルを推定し、その後に外部吐出検査に移行して、ドット抜けの有無をチェックすることにより、実際に印刷画質に影響を与えている異常ノズルを特定することとした。これにより、検査のために別途時間が必要な外部吐出検査の頻度を減らすことができるため、効率的にドット抜け検査を行うことができる。
【0109】
また、コントローラー100は、連続紙Sに画像を印刷する印刷処理と並行してヘッド内検査ユニット70(内部センサー)を用いた内部吐出検査を行って、内部吐出検査の検知結果に基づいてヘッド外検査ユニット80(外部センサー)を用いた外部吐出検査を行うか否かを決定し、行うことを決定した場合には、外部吐出検査を行って、外部吐出検査の検知結果に応じて回復処理を行い、かつ、装置本体に電力を供給するための電源を投入する際、または、当該電源を切断する際には、内部吐出検査の検知結果に基づくことなく外部吐出検査を行って、外部吐出検査の検知結果に応じて回復処理を行うこととした。このように、印刷中と異なり、電源投入・切断の際には、外部吐出検査を確実に行うことができるため、吐出不良が実際に印刷画質に影響を与えているか否かを検出することができる。
【0110】
また、コントローラー100は、ヘッド内検査ユニット70(内部センサー)を用いた内部吐出検査の検知結果により吐出不良が有ると判定された異常ノズルに対して、ヘッド外検査ユニット80(外部センサー)を用いた外部吐出検査を行うこととした。これにより、外部センサーを用いた外部吐出検査を、全ノズルに対して行う場合に比べて短時間で行うことが可能となる。
【0111】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置(液体吐出検査装置)について記載されているが、液体吐出検査方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0112】
<印刷装置>
上記の実施形態においては、印刷装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する印刷装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する印刷装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する印刷装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する印刷装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する印刷装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する印刷装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する印刷装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0113】
また、上記の実施形態においては、印刷装置としてラインプリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、シリアルプリンターに適用してもよい。
【0114】
<内部センサー>
上記の実施形態においては、ヘッド内検査ユニット70(内部センサー)の一例として、ピエゾ素子等のアクチュエーターが振動板を振動させ、この振動板に生じる残留振動の周波数特性(振動パターン)の変化を検知するもの(図5及び図6)を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、振動板に限らず、ピエゾ素子等のアクチュエーター自体の振動から残留振動の周波数特性の変化を検知してもよい。
【0115】
<外部センサー>
上記の実施形態においては、ヘッド外検査ユニット80(外部センサー)の一例として、帯電させたインク滴をノズルから検出用の電極に向けて吐出させ、この電極に生じる電気的な変化を検知するもの(図7A及び図7B参照)を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、光源と光学センサーを有する検出器を第二センサーとして用いてもよい。具体的には、かかる検出器は、ノズルからヘッド外に吐出されたインク滴が、光源と光学センサーとの間を通過し、光源と光学センサーとの間の光を遮断したこと、を検出する。そして、インク滴が光を遮断した場合には、インクが正常に吐出されたものと判断され、インク滴が光を遮断しなかった場合には、吐出不良(ドット抜け)と判定される。そして、この判定をノズルそれぞれに対して行う。
【0116】
<回復処理>
上記の実施形態においては、回復処理の一例として、インク吸引処理、ワイピング処理、フラッシング処理を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、ドット抜け検査の結果により特定された異常ノズルに対してクリーニングを行うのではなく、異常ノズルの周囲に存在する正常ノズルから、色の濃いインクを吐出させたり、増量したインクを吐出させたりして、連続紙S上のドット不良箇所を補完する処理を行っても良い。
【符号の説明】
【0117】
1 プリンター、 10 搬送ユニット、
12A 上流側ローラー、 12B 下流側ローラー、
14 ベルト、 20 キャリッジユニット、
30 ヘッドユニット、 31 ヘッド、
32 ケース、 33 流路ユニット、
33a 流路形成基板、 33b ノズルプレート、
331 圧力室、 332 インク供給路、
333 共通インク室、 334 ダイヤフラム部、
335 島部、 34 ピエゾ素子ユニット、
341 ピエゾ素子群、 342 固定板、
40 駆動信号生成部、 50 クリーニングユニット、
51 キャップ、70 ヘッド内検査ユニット、
701 増幅部、 701a オペアンプ、
701b コンパレーター、 702 パルス幅検出部、
80 ヘッド外検査ユニット、 81 高電圧ユニット、
82 第一制限抵抗、 83 第二制限抵抗、
84 検出用コンデンサー、 85 増幅器、
86 平滑コンデンサー、 87 検出制御部、
90 検出器群、 100 コントローラー、
CP コンピューター、 Nz ノズル、 PZT ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、
前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、を備え、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行う液体吐出検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出検査装置であって、
媒体に画像を印刷する印刷処理と並行して前記内部センサーの検知を行って、前記内部センサーの検知結果に基づいて前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、
前記外部センサーの検知を行うことを決定した場合には、前記外部センサーの検知を行って、前記外部センサーの検知結果に応じて前記回復処理を行い、
装置本体に電力を供給するための電源を投入する際、または、当該電源を切断する際には、前記内部センサーの検知結果に基づくことなく前記外部センサーの検知を行って、当該外部センサーの検知結果に応じて前記回復処理を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出検査装置であって、
前記内部センサーの検知結果により吐出不良が有ると判定された異常ノズルに対して、前記外部センサーの検知を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項4】
媒体に対して液体を吐出して印刷を行うヘッドと、
請求項1乃至3に記載の液体吐出検査装置と、を備える印刷装置。
【請求項5】
液体吐出検査装置を用いる液体吐出検査方法であって、
前記液体吐出検査装置は、
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、コントローラーと、を有し、
前記コントローラーにより、前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を行うことと、
を有することを特徴とする液体吐出検査方法。
【請求項6】
媒体に対して液体を吐出するヘッドの内部において液体状態を検知する内部センサーと、前記ヘッドの外部において液体の吐出不良を検知する外部センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記内部センサーの検知結果に基づいて、前記外部センサーの検知を行うか否かを決定し、前記外部センサーの検知結果に応じて、前記ヘッドによる液体の吐出を回復させる回復処理を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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