説明

液体吐出装置、液体充填方法、およびインクジェット記録装置

【課題】液体が流通する流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る液体吐出装置10は、媒体に液体を吐出する液体吐出部22と、その液体を貯留する液体貯留部17と、液体貯留部17と液体吐出部22との間を液体が流通可能に連結された第1の液体流路31とを備え、第1の液体流路31には、液体を貯留可能な中間タンク33が設けられると共に、中間タンク33と液体吐出部22との間に分岐部35が設けられ、分岐部35から分岐し、中間タンク33へ連通して液体が流通可能な第2の液体流路32をさらに備え、中間タンク33と分岐部35との間における第1の液体流路31もしくは第2の液体流路32には、液体を流通させるための流通ポンプ37が設けられ、中間タンク33には、内部の空気を抜くための第1の開閉バルブ34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体充填方法、およびインクジェット記録装置に関し、さらに詳細には、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置、該液体吐出装置の各部に液体を充填する液体充填方法、および記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液体吐出装置の例としてインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)が挙げられ、従来より種々の構成のものが知られている。例えば、被印刷対象物であるシート状の記録メディアを支持するためのプラテン、およびこのプラテンの上側にプラテンに対向させた記録ヘッドを設けた構成が知られている。記録ヘッドは、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)等の色毎に設けられており、プラテンに対向した面には多数の吐出ノズルが形成されている。当該吐出ノズルから吐出されるインクは、インクカートリッジから記録ヘッドに供給される。この構成の液体吐出装置においては、記録ヘッドを左右に往復移動させる動作と、これに対して直交する前後方向に記録メディアを相対移動させる動作とを組み合わせて行いながら、プラテンに支持された記録メディアに向けて吐出ノズルからインク(インク滴)を吐出させる制御を行い、記録メディアの表面に所望の印刷を施すようになっている。
【0003】
上記構成に例示されるインクジェットプリンタの従来例として、図12に示すように、インクジェット記録ヘッド101と、インクを貯蔵するインクタンク103とこれらを連結する第1流路109と、第1流路109の途中から分岐しインクタンク103に連結する第2流路107と、流路の分岐点とインクタンク103との間に取り付けられたポンプ104と、第1流路109へのインクを規制する手段によって構成され、制御手段である三方弁105によって第1流路へのインク流を遮断して、第2流路とインクタンク103でのインク循環を行い、インクタンク103内のインクを攪拌するインクジェットプリンタ100が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3127581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に例示されるインクジェットプリンタにおいては、空気を外部に抜くことができないため、インクの循環経路内に空気が蓄積し、当該空気が記録ヘッドに到ることによって、インクの不吐出等が生じ得るという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液体が流通する流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる液体吐出装置および液体充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
開示の液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出する前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部と前記液体吐出部との間を前記液体が流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えた液体吐出装置において、前記第1の液体流路には、前記液体を貯留可能な中間タンクが設けられると共に、該中間タンクと前記液体吐出部との間に分岐部が設けられ、前記分岐部から分岐し、前記中間タンクへ連通して前記液体が流通可能な第2の液体流路をさらに備え、前記中間タンクと前記分岐部との間における前記第1の液体流路もしくは前記第2の液体流路には、前記液体を流通させるための流通ポンプが設けられ、前記中間タンクには、前記中間タンク内の空気を抜くための第1の開閉バルブが設けられていることを特徴とする。これによれば、液体を還流させて液体内における固形物の沈降を防止できると共に、液体が流通する液体流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる。
【0009】
また、本発明において、前記流通ポンプは、前記第1の液体流路に設けられており、前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第2の開閉バルブが設けられていることが好ましい。これによれば、第1の液体流路内、および第2の液体流路内における過度の圧力上昇を防止して、液体を中間タンクに還流させることが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記分岐部と前記第2の開閉バルブとが、三方分岐型圧力バルブとして一体に設けられていることが好ましい。これによれば、部品点数を削減することができ、装置の簡素化およびコストダウンが可能となる。
【0011】
開示の液体充填方法は、前記の液体吐出装置の各部に前記液体を充填する液体充填方法において、(a)前記液体貯留部から前記中間タンクに前記液体を充填するステップと、(b)前記中間タンクから前記液体吐出部へ連通する前記第1の液体流路に液体を充填するステップと、(c)前記第1の液体流路から前記分岐部を通じて前記第2の液体流路に液体を充填するステップと、(d)前記中間タンクに設けられた前記第1の開閉バルブを開いた状態にして、前記第2の液体流路から前記中間タンクに液体を充填して該中間タンク内部の空気を抜くステップと、を備えることを特徴とする。これによれば、液体を還流させて液体内における固形物の沈降を防止できると共に、液体が流通する液体流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる。
【0012】
開示のインクジェットプリンタは、記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出する前記インクを貯留するインクカートリッジと、前記インクカートリッジと前記記録ヘッドとの間を前記インクが流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えたインクジェット記録装置において、前記第1の液体流路には、前記インクを貯留可能な中間タンクが設けられると共に、該中間タンクと前記記録ヘッドとの間に分岐部が設けられ、前記分岐部から分岐し、前記中間タンクへ連通して前記インクが流通可能な第2の液体流路をさらに備え、前記中間タンクと前記分岐部との間における前記第1の液体流路もしくは前記第2の液体流路には、前記インクを流通させるための流通ポンプが設けられ、前記中間タンクには、前記中間タンク内の空気を抜くための第1の開閉バルブが設けられていることを特徴とする。これによれば、インクを還流させてインクの色材が沈降することを防止できると共に、インクが流通する液体流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる。
【発明の効果】
【0013】
開示の液体吐出装置によれば、液体が流通する液体流路内から容易に且つ確実に空気を抜くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る液体吐出装置の例を示す概略図である。
【図2】図1の液体吐出装置における液体の流路とその周辺構成の概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る液体充填方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る液体充填方法のフローチャートである。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る液体吐出装置における液体の流路とその周辺構成の概略図である。
【図11】本発明の第三の実施形態に係る液体吐出装置における液体の流路とその周辺構成の概略図である。
【図12】従来の実施形態に係る液体吐出装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。ここでは、本実施形態に係る液体吐出装置として、インクジェットプリンタの場合を例に挙げて説明を行う。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
図1に、第一の実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10の構成を示す。なお、説明の便宜上、図1において矢印方向でインクジェットプリンタ10の左右、および上下方向を示す。また、図1における紙面の前後方向をインクジェットプリンタ10の前後方向とする。以下、これらの方向を用いて説明を行う。
【0017】
インクジェットプリンタ10は、図1に示すように、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部13と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部14と、左右ボディ部13、14を繋ぐと共に中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部15とを備えて構成される。このインクジェットプリンタ10は、左ボディ部13の内部に設けられたコントロールユニット40により、各部の動作制御が行われるようになっている。
【0018】
上ボディ部15の内部には、左右に延びたガイドレール15aが設けられており、このガイドレール15aに対してヘッドユニット20が取り付けられている。ヘッドユニット20は、ガイドレール15aに取り付けられて左右に移動自在となったキャリッジ21、およびキャリッジ21に搭載された記録ヘッド22から構成される。記録ヘッド22は、一例として、ブラックインクを吐出するブラックヘッド22K、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド22M、イエローインクを吐出するイエローヘッド22Y、シアンインクを吐出するシアンヘッド22C、およびホワイトインクを吐出するホワイトヘッド22Wから構成されており、キャリッジ21に装着される。記録ヘッド22の下面には、インクを記録メディアMに向けて下方へ吐出する複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されている。例えば、180個の吐出ノズルを前後方向に直線状に整列させて形成されたノズル列が、左右方向に8列並べられて形成される。各吐出ノズルにおけるインクの吐出制御は、コントロールユニット40から各記録ヘッド22に出力される駆動制御信号により行われる。
【0019】
中央ボディ部12の上面には、左右に延びた平板状のプラテン12aが露出して設けられ、このプラテン12aの後側に左右に延びた送りローラ(図示せず)が露出して設けられている。この送りローラは、中央ボディ部12の内部に設けられた前後駆動モータ19により回転駆動される。そのため、被印刷対象であるシート状の記録メディアMを、上ボディ部15に設けられたピンチローラ(図示せず)と送りローラとの間に挟持した状態で、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って前後駆動モータ19を駆動させることにより、記録メディアMを駆動制御量に応じた送り量で前後に送ることができるようになっている。
【0020】
右ボディ部14の上部には、カートリッジ装着部16が設けられており、このカートリッジ装着部16に対して複数のインクカートリッジ17が前後に挿入されている。この複数のインクカートリッジ17は、後述するインクの流路を介して記録ヘッド22と接続されている。そして、記録ヘッド22におけるインクの消費量に応じて、インクカートリッジ17のインクが当該インクの流路を介して記録ヘッド22へ供給されるようになっている。また、右ボディ部14の内部には、ガイドレール15aに沿ってヘッドユニット20を左右に移動させるための左右駆動モータ29が設けられている。この左右駆動モータ29を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた送り量で左右に移動させることができるようになっている。
【0021】
左ボディ部13の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等から構成された操作表示部13aが設けられている。また、左ボディ部13の内部には、メンテナンスユニット30およびコントロールユニット40が設けられている。メンテナンスユニット30は、記録ヘッド22に対して着脱可能に設けられており、当該記録ヘッド22下面形状に応じて形成されると共に上方に向けて開口したキャップ部材51(図2参照)、排出ポンプ52(図2参照)およびキャップ駆動モータ39を備えて構成される。このキャップ駆動モータ39を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた移動量で上下に移動させることができるようになっている。また、排出ポンプ52を駆動させることにより、キャップ部材51の内部に負圧を作用させることができるようになっている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る液体吐出装置において特徴的なインクの流路および周辺構成について詳しく説明する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10におけるインクの流路およびその周辺構成の概略図である。
同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、液体貯留部(ここでは、インクカートリッジ)17と液体吐出部(ここでは、記録ヘッド)22との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路31を備えている。また、第1の液体流路31の流路途中には、インクを一時的に貯留することが可能なバッファタンクとしての中間タンク33が設けられている。本実施形態においては、水頭差によってインクが流通可能なように、中間タンク33をインクカートリッジ17よりも低い位置に配設している。さらに、第1の液体流路31の流路途中であって、中間タンク33と記録ヘッド22との間には分岐部35が設けられている。
【0024】
ここで、中間タンク33には、第1の液体流路31等からインクを還流させて当該中間タンク33内に集められた空気を抜くための第1の開閉バルブ34が設けられている。さらに、本実施形態においては、第1の開閉バルブ34の下流側(中間タンク33側と逆側)に空気抜きポート38が設けられている。当該空気抜きポート38は、水頭差を利用して空気抜き作用を確実に行うために、インクカートリッジ17よりも低い位置に配設している。これによれば、中間タンク33内にインクを充填しながら内部の空気を抜くことができる(動作フローの詳細については後述する)。
【0025】
また、同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、分岐部35から分岐して中間タンク33へ連通する構成によって液体を流通させる第2の液体流路32を備えている。なお、本実施形態においては、第2の液体流路32は直接的に中間タンク33へ連通しているが、これに限定されず、間接的に中間タンク33へ連通する構成であってもよい。間接的に連通する具体例としては、第1の液体流路31の流路途中であって、インクカートリッジ17と中間タンク33との間に他の分岐部(図示せず)を設けて、第2の液体流路32を当該他の分岐部に連結して、当該他の分岐部を介して中間タンク33へと連通する構成等が考えられる。
【0026】
ここで、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第2の開閉バルブ36が設けられている。
【0027】
また、第1の液体流路31の流路途中であって、中間タンク33と記録ヘッド22との間には流通ポンプ37が設けられている。当該流通ポンプ37は、第1の液体流路31内および第2の液体流路32内にインクを流通させる駆動源である(動作フローの詳細については後述する)。なお、流通ポンプ37の例として、チューブポンプ等を用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
なお、本実施形態においては、第1の液体流路31の流路途中であって、分岐部35と記録ヘッド22との間には加圧ダンパーユニット60が設けられている。一例として、加圧ダンパーユニット60は、インク内の異物を除去するためのフィルター室61、および圧力室63の圧力が一定以下になると自動的に開放する封止バルブ62を備えて構成されている。これによれば、記録ヘッド22(吐出ノズル)からインクが吐出されることによって圧力室63内の圧力が低下したとき、封止バルブ62が開放状態となるため、第1の流路31から記録ヘッド22へインクが流通して補充が行われる。
【0029】
以上、液体吐出装置の例として、インクジェットプリンタ10の構成について説明した。ここで、当該インクジェットプリンタ10内の各部に液体(インク)を充填する方法を例に挙げて、本実施形態に係る液体充填方法について図を用いて説明する。図3〜8は動作(インク充填方法)の概略を説明する説明図であり、図9はその動作フローの概略を示すフローチャートである。
【0030】
先ず、図3に示される動作を実行する。具体的には、図9に示すフローにおいて、排出ポンプ52を起動するステップを実行する(ステップS11)。これによって、記録ヘッド22の先端に密着されたキャップ部材51の内部が負圧となり、記録ヘッド22先端の吐出ノズルの内部から外部へインクを吸引する作用が生じる。なお、吸引されることにより吐出ノズルから吐出されたインクは、廃インクタンク53に貯留される。
【0031】
次いで、流通ポンプ37を起動するステップを実行する(ステップS12)。これによって、中間タンク33の内部が負圧となり、インクカートリッジ17に貯留されたインクが中間タンク33へ向かって第1の流路内31内を流通し、中間タンク33へのインク充填が開始される。
【0032】
次いで、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、中間タンク33に充填されたインクの液面が所定レベル(一例として、図3中の液面レベル1)まで達したか否かを判定するステップを実行する(ステップS13)。
【0033】
前記ステップS13における判定の結果、インクの液面が所定レベル(液面レベル1)まで達していない場合には、前述のステップS11へ移行する。
【0034】
一方、インクの液面が所定レベル(液面レベル1)まで達している場合には、以下に説明する動作(図4参照)を実行する。
【0035】
続いて、図4に示される動作について説明する。具体的には、図9に示すフローにおいて、前述のステップS13に次いで流通ポンプ37を停止するステップを実行する(ステップS21)。一例として、制御部(図示せず)は、中間タンク33に充填されたインクの液面が所定レベル(一例として、図4中の液面レベル2)まで達した場合に停止信号を送る制御とすればよい。これによって、中間タンク33内の所定レベル(液面レベル2)までインクを充填することが可能となる。
【0036】
次いで、排出ポンプ52を停止するステップを実行する(ステップS22)。これによって、記録ヘッド22先端の吐出ノズルからのインク吸引作用が停止する。
【0037】
次いで、空気抜き用バルブ(第1の開閉バルブ34)をそれまでの閉鎖状態から開放状態とするステップを実行する(ステップS23)。次いで、第1の開閉バルブ34を開放状態のまま一定時間待機するステップを実行する(ステップS24)。これによって、中間タンク33および空気抜きポート38は、インクカートリッジ17よりも低い位置に配設されているため、水頭差によってインクカートリッジ17からインクが中間タンク33内に流入し、さらに、空気抜きポート38へと流出する。このとき、中間タンク33内に存在する空気は当該インクの充填によって、空気抜きポート38方向へ押し出される。このようにして、中間タンク33内がインクで満たされ、且つ、中間タンク33内の空気を抜くことができる。
【0038】
次いで、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、空気抜きポート38からインクが流出したか否かを判定するステップを実行する(ステップS25)。
【0039】
前記ステップS25における判定の結果、空気抜きポート38からインクが流出していない場合には、前述のステップS24へ移行する。
【0040】
一方、空気抜きポート38からインクが流出した場合には、以下に説明する動作(図5参照)を実行する。
【0041】
続いて、図5に示される動作について説明する。具体的には、図9に示すフローにおいて、前述のステップS25に次いで空気抜き用バルブ(第1の開閉バルブ34)をそれまでの開放状態から閉鎖状態とするステップを実行する(ステップS31)。これによって、インクカートリッジ17から中間タンク33を経由して空気抜きポート38から流出するインクの流通が停止する。
【0042】
次いで、排出ポンプ52を起動するステップを実行する(ステップS32)。これによって、記録ヘッド22の先端に密着されたキャップ部材51の内部が負圧となり、記録ヘッド22先端の吐出ノズルの内部から外部へインクを吸引する作用が生じる。
【0043】
次いで、流通ポンプ37を起動するステップを実行する(ステップS33)。これによって、中間タンク33に貯留されたインクが記録ヘッド22へ向かって第1の流路内31内を流通する。このとき前記ステップS32における排出ポンプ52の作用も加わって、記録ヘッド22にインクが充填され、且つ、記録ヘッド22先端の吐出ノズル(図示せず)からインクが流出する。
【0044】
次いで、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、記録ヘッド22にインクが充填されたか否かを判定するステップを実行する(ステップS34)。
【0045】
前記ステップS34における判定の結果、記録ヘッド22にインクが充填されていない場合には、前述のステップS32へ移行する。
【0046】
一方、記録ヘッド22にインクが充填された場合には、以下に説明する動作(図6参照)を実行する。
【0047】
続いて、図6に示される動作について説明する。具体的には、図9に示すフローにおいて、前述のステップS34に次いで排出ポンプ52を停止するステップを実行する(ステップS41)。これによって、記録ヘッド22先端の吐出ノズルからのインク吸引作用が停止する。
【0048】
次いで、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、分岐部から分岐して中間タンク33に連通する第2の流路32に設けられた圧力開放バルブ(第2の開閉バルブ36)が所定圧力に達することによって開放されたか否かを判定するステップを実行する(ステップS42)。これは、排出ポンプ52が停止した状態で、流通ポンプ37が稼働することによって第1の流路31内および第2の流路32内の圧力が上昇するためである。なお、このとき封止バルブ62は圧力室63の圧力が低下していないために閉鎖状態となっている。
【0049】
前記ステップS42における判定の結果、第2の開閉バルブ36が開放されていない場合には、前述のステップS41へ移行する。
【0050】
一方、第2の開閉バルブ36が開放された場合には、インクが第1の流路内31から分岐部34を経由して中間タンク33へ向かって第2の流路内32内を流通する。したがって、中間タンク33から流出したインクが、再度、中間タンク33へ流入することとなり、インクの還流作用が生じる。これによって、インクに含まれる色材の沈降を防止することができ、且つ、インクが流通する流路内の空気を集めて中間タンク33内へ集約することができる。このとき、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、中間タンク33に充填されたインクの液面が所定レベル(一例として、図6中の液面レベル1)以上であるか否かを判定するステップを実行する(ステップS43)。
【0051】
前記ステップS13における判定の結果、インクの液面が所定レベル(液面レベル1)以上でない場合には、流通ポンプ37を停止するステップ(ステップS44)を実行した後、前述のステップS23へ移行する。
【0052】
一方、インクの液面が所定レベル(液面レベル1)以上である場合には、以下に説明する動作(図7参照)を実行する。
【0053】
続いて、図7に示される動作について説明する。具体的には、図9に示すフローにおいて、前述のステップS43に次いで流通ポンプ37を停止するステップを実行する(ステップS51)。
【0054】
次いで、空気抜き用バルブ(第1の開閉バルブ34)を閉鎖状態から開放状態とするステップを実行する(ステップS52)。次いで、第1の開閉バルブ34を開放状態のまま一定時間待機するステップを実行する(ステップS53)。これによって、中間タンク33および空気抜きポート38は、インクカートリッジ17よりも低い位置に配設されているため、水頭差によってインクカートリッジ17からインクが中間タンク33内に流入し、さらに、空気抜きポート38へと流出する。このとき、中間タンク33内には、前述のインクの還流作用によってインクの流路内から集約された空気が蓄積している。当該空気はインクが当該中間タンク33に充填されることによって、空気抜きポート38方向へ押し出される。このようにして、中間タンク33内がインクで満たされ、且つ、中間タンク33内の空気を容易に、しかも確実に抜くことができる。その結果、インクの流路内に空気が残留してインク不吐出等の原因となることが防止でき、安定したインク吐出が可能となる。
【0055】
次いで、コントロールユニット40の制御部(図示せず)は、中間タンク33に充填されたインクの液面が所定レベル(一例として、図7中の液面レベル2)以上であるか否かを判定すると共に、空気抜きポート38からインクが流出したか否かを判定するステップを実行する(ステップS54)。
【0056】
前記ステップS54における判定の結果、インクの液面が所定レベル(液面レベル2)以上でない場合、もしくは、空気抜きポート38からインクが流出していない場合、または、その両方である場合には、前述のステップS53へ移行する。
【0057】
一方、インクの液面が所定レベル(液面レベル2)以上であり、且つ、空気抜きポート38からインクが流出した場合には、以下に説明する動作(図8参照)を実行する。
【0058】
続いて、図8に示される動作について説明する。具体的には、図9に示すフローにおいて、前述のステップS54に次いで空気抜き用バルブ(第1の開閉バルブ34)をそれまでの開放状態から閉鎖状態とするステップを実行する(ステップS61)。これによって、インクカートリッジ17から中間タンク33を経由し、空気抜きポート38から流出するインクの流通が停止する。
【0059】
次いで、流通ポンプ37を起動するステップを実行する(ステップS62)。これによって、中間タンク33に貯留されたインクが記録ヘッド22へ向かって第1の流路内31内を流通する。このようにして、記録ヘッド22にインクが充填されて、インクを吐出させるための準備が整う。なお、メンテナンスユニット30が、記録ヘッド22から取り外された状態で、記録ヘッド22(吐出ノズル)からインクを吐出して記録メディアに記録を行うことが可能となる。
【0060】
(第二の実施形態)
続いて、第二の実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10について説明する。なお、基本構成は図1に示す通りであり、繰り返しの説明を省略する。
【0061】
ここで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10におけるインクの流路およびその周辺構成の概略図を図10に示す。
本実施形態における基本的な構成および作用効果は前述の第一の実施形態と同様であるが、本実施形態に特徴的な構成として、分岐部35と、圧力開放バルブ(第2の開閉バルブ36)とが、三方分岐型圧力バルブがとして一体に設けられている。
【0062】
この構成によれば、部品点数を削減することができるため、装置の簡素化およびコストダウンが可能となる。
なお、本実施形態の構成が用いられた場合のインク充填方法は前記と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
(第三の実施形態)
続いて、第三の実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10について説明する。なお、基本構成は図1に示す通りであり、繰り返しの説明を省略する。
【0064】
ここで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10におけるインクの流路およびその周辺構成の概略図を図11に示す。
本実施形態における基本的な構成および作用効果は前述の第一の実施形態と同様であるが、本実施形態に特徴的な構成として、第2の液体流路32の流路途中であって、分岐部35と中間タンク33との間に流通ポンプ37が設けられている。
【0065】
この構成によれば、第2の液体流路32流路途中における圧力開放バルブが省略できるため、装置の簡素化およびコストダウンが可能となる。
なお、本実施形態の構成が用いられた場合のインク充填方法は前記と同様であるが、圧力開放バルブの操作が不要となる点、および水頭差を利用してインクを記録ヘッド22に充填する点において相違する。
【0066】
以上説明した通り、開示の液体吐出装置によれば、液体流路内の空気を容易に且つ確実に取り除くことができる。その結果、液体流路内の残留空気に起因する液体吐出部での液体不吐出を防止して、安定した液体吐出が可能となる。特に、本実施形態によれば、以下の特徴的な作用効果が奏される。
【0067】
インクジェットプリンタ10は、記録メディアMにインクを吐出する記録ヘッド22と、記録ヘッド22から吐出するインクを貯留するインクカートリッジ17と、インクカートリッジ17と記録ヘッド22との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路31と、を備えたインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)において、第1の液体流路31には、インクを貯留可能な中間タンク33が設けられると共に、中間タンク33と記録ヘッド22との間に分岐部35が設けられ、分岐部35から分岐し、中間タンク33へ連通してインクが流通可能な第2の液体流路32をさらに備え、中間タンク33と分岐部35との間における第1の液体流路31もしくは第2の液体流路32には、インクを流通させるための流通ポンプ37が設けられ、中間タンク33には、中間タンク33内の空気を抜くための第1の開閉バルブ34が設けられていることを特徴とする。これによれば、インクを還流させてインクの色材が沈降することを防止できると共に、インクが流通する第1の液体流路31および第2の液体流路32内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる。
【0068】
また、流通ポンプ37は、第1の液体流路31に設けられており、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第2の開閉バルブ36が設けられている。これによれば、第1の液体流路31内、および第2の液体流路32内における過度の圧力上昇を防止して、インクを中間タンク33に還流させることが可能となる。
【0069】
また、分岐部35と第2の開閉バルブ36とが、三方分岐型圧力バルブとして一体に設けられている。これによれば、部品点数を削減することができ、インクジェットプリンタ10の簡素化およびコストダウンが可能となる。
【0070】
インクジェットプリンタ10の各部にインクを充填するインク充填方法は、(a)インクカートリッジ17から中間タンク33にインクを充填するステップと、(b)中間タンク33から記録ヘッド22へ連通する第1の液体流路31にインクを充填するステップと、(c)第1の液体流路31から分岐部35を通じて第2の液体流路32にインクを充填するステップと、(d)中間タンク33に設けられた第1の開閉バルブ34を開いた状態にして、第2の液体流路32から中間タンク33にインクを充填して中間タンク33内部の空気を抜くステップと、を備える。これによれば、インクを還流させてインクの色材が沈降することを防止できると共に、インクが流通する第1の液体流路31および第2の液体流路32内から容易に且つ確実に空気を抜くことができる。
【0071】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に、液体吐出装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、その他の装置に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 液体吐出装置
12 中央ボディ部
13 左ボディ部
14 右ボディ部
15 上ボディ部
16 カートリッジ装着部
17 インクカートリッジ
20 ヘッドユニット
21 キャリッジ
22 記録ヘッド
30 メンテナンスユニット
31 第1の液体流路
32 第2の液体流路
33 中間タンク
34 第1の開閉バルブ
35 分岐部
36 第2の開閉バルブ
37 流通ポンプ
38 空気抜きポート
40 コントロールユニット
52 排出ポンプ
60 加圧ダンパーユニット
M 記録メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出する前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部と前記液体吐出部との間を前記液体が流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えた液体吐出装置において、
前記第1の液体流路には、前記液体を貯留可能な中間タンクが設けられると共に、該中間タンクと前記液体吐出部との間に分岐部が設けられ、
前記分岐部から分岐し、前記中間タンクへ連通して前記液体が流通可能な第2の液体流路をさらに備え、
前記中間タンクと前記分岐部との間における前記第1の液体流路もしくは前記第2の液体流路には、前記液体を流通させるための流通ポンプが設けられ、
前記中間タンクには、前記中間タンク内の空気を抜くための第1の開閉バルブが設けられていること
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記流通ポンプは、前記第1の液体流路に設けられており、
前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第2の開閉バルブが設けられていること
を特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記分岐部と前記第2の開閉バルブとが、三方分岐型圧力バルブとして一体に設けられていること
を特徴とする請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置の各部に前記液体を充填する液体充填方法において、
(a)前記液体貯留部から前記中間タンクに前記液体を充填するステップと、
(b)前記中間タンクから前記液体吐出部へ連通する前記第1の液体流路に液体を充填するステップと、
(c)前記第1の液体流路から前記分岐部を通じて前記第2の液体流路に液体を充填するステップと、
(d)前記中間タンクに設けられた前記第1の開閉バルブを開いた状態にして、前記第2の液体流路から前記中間タンクに液体を充填して該中間タンク内部の空気を抜くステップと、
を備えることを特徴とする液体充填方法。
【請求項5】
記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出する前記インクを貯留するインクカートリッジと、前記インクカートリッジと前記記録ヘッドとの間を前記インクが流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えたインクジェット記録装置において、
前記第1の液体流路には、前記インクを貯留可能な中間タンクが設けられると共に、該中間タンクと前記記録ヘッドとの間に分岐部が設けられ、
前記分岐部から分岐し、前記中間タンクへ連通して前記インクが流通可能な第2の液体流路をさらに備え、
前記中間タンクと前記分岐部との間における前記第1の液体流路もしくは前記第2の液体流路には、前記インクを流通させるための流通ポンプが設けられ、
前記中間タンクには、前記中間タンク内の空気を抜くための第1の開閉バルブが設けられていること
を特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−236335(P2012−236335A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106882(P2011−106882)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】