説明

液体吐出装置およびその制御方法

【課題】様々な幅のターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出することができるようにする。
【解決手段】用紙への印刷を行なう際に用紙の両側端がインク受け領域52上を通過するよう位置調整機構40を制御してプラテン36の主走査方向の位置を調整し、その調整後に用紙を搬送しながら用紙への印刷を行なう。これにより、様々なサイズ(幅)の用紙の少なくとも側端に対する縁なし印刷を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体吐出装置としては、プラテン面(プラテンの上面)に、主走査方向に所定の間隔をおいてリブが形成されると共に主走査方向に延びる凹部(溝)と用紙の側端に位置すべき部分に方形の凹部とが形成されるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、縁なし印刷時には、用紙の端部を外れたインクが凹部に打ち捨てられることにより、プラテン面がインクで汚損されないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−155109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした液体吐出装置では、用紙の幅によっては用紙の側端に位置すべき部分の一部がリブ上になることがあるが、この場合でも、リブをインクで汚損することなく、少なくとも側端に対する縁なし印刷を可能にするよう望まれることがある。
【0005】
本発明の液体吐出装置およびその制御方法は、様々な幅のターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出することができるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の液体吐出装置およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
ターゲットに液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記ターゲットを搬送する搬送手段と、
前記ターゲットの搬送方向に直交する直交方向の移動を伴って複数のノズルの各々から前記ターゲットに液体を吐出する液体吐出手段と、
前記搬送手段により搬送される前記ターゲットを支持する支持部,前記液体吐出手段の各ノズルから吐出されて前記ターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部と、
前記ターゲット通過部の位置を調整する位置調整手段と、
前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御する制御手段と、
を備え、
前記液体受け部は、前記搬送方向の長さが前記液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を前記直交方向に複数含み、
前記制御手段は、前記ターゲットの側端を含む領域に前記液体吐出手段から液体を吐出する際、前記ターゲット通過部の位置が前記ターゲットの両側端が前記長領域上を通過する位置になるよう前記位置調整手段を制御し、該制御後に前記ターゲットが前記ターゲット通過部を通過しながら前記ターゲットに形成すべき画像に応じて前記液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の液体吐出装置では、ターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出する際には、ターゲット通過部の位置が、搬送手段により搬送されるターゲットを支持する支持部,搬送方向の長さが液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を直交方向に複数含み液体吐出手段の各ノズルから吐出されてターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部における長領域上をターゲットの両側端が通過する位置になるよう位置調整手段を制御し、その制御後に、ターゲットがターゲット通過部を通過しながらターゲットに形成すべき画像に応じて液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう搬送手段と液体吐出手段とを制御する。即ち、ターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出する際には、液体吐出手段から液体を吐出する際におけるターゲット通過部の位置がターゲットの両側端が長領域上を通過する位置になるようターゲット通過部の位置を調整し、調整後に、ターゲットをターゲット通過部を通過させながらターゲットに形成すべき画像に応じて液体吐出手段の各ノズルから液体を吐出するのである。これにより、ターゲットの側端を外れた液体は液体受け部に到達し支持部には付着しないから、次にターゲットに液体を吐出する際にターゲットに汚れなどを生じさせることなく、様々な幅のターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出することができる。
【0009】
こうした本発明の液体吐出装置において、前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を前記直交方向に平行移動させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、ターゲット通過部を直交方向に平行移動させてターゲット通過部の位置を調整することにより、様々な幅のターゲットに対して側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出できるようにすることができる。この場合、前記液体受け部の複数の前記長領域のいずれかは、前記直交方向の所定位置に配置されて前記搬送方向に搬送される前記ターゲットの一方の側端に対応する前記直交方向の位置に前記ターゲット通過部の前記直交方向の移動に拘わらず前記液体吐出手段から液体を吐出する際に該ターゲットの一方の側端が上方を通過するよう形成されてなる、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記ターゲット通過部は、前記液体受け部の前記長領域が前記直交方向の全ての位置に形成されてなり、前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を前記搬送方向に平行移動させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、ターゲット通過部を搬送方向に平行移動させてターゲット通過部の位置を調整することにより、様々な幅のターゲットに対して側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出できるようにすることができる。この場合、前記液体受け部の複数の前記長領域のいずれかは、前記直交方向の所定位置に配置されて前記搬送方向に搬送される前記ターゲットの一方の側端に対応する前記直交方向の位置に前記ターゲット通過部の回転に拘わらず前記液体吐出手段から液体を吐出する際に該ターゲットの一方の側端が上方を通過するよう形成されてなる、ものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の液体吐出装置において、前記ターゲット通過部は、前記搬送方向に沿って回転可能な円柱状に形成されると共に前記液体受け部の前記長領域が前記直交方向の全ての位置に形成されてなり、前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を回転させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、ターゲット通過部を回転させてターゲット通過部の位置を調整することにより、様々な幅のターゲットに対して側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出できるようにすることができる。この場合、前記液体受け部の複数の前記長領域のいずれかは、前記直交方向の所定位置に配置されて前記搬送方向に搬送される前記ターゲットの一方の側端に対応する前記直交方向の位置に前記ターゲット通過部の前記搬送方向の移動に拘わらず前記液体吐出手段から液体を吐出する際に該ターゲットの一方の側端が上方を通過するよう形成されてなる、ものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明の液体吐出装置において、前記液体受け部は、前記液体吐出手段の複数のノズルから吐出されて前記ターゲットの前記搬送方向の上端や下端を外れた液体を受け止める領域を含む、ものとすることもできる。
【0013】
本発明の液体吐出装置の制御方法は、
ターゲットを搬送する搬送手段と、前記ターゲットの搬送方向に直交する直交方向の移動を伴って複数のノズルの各々から前記ターゲットに液体を吐出する液体吐出手段と、前記搬送手段により搬送される前記ターゲットを支持する支持部,前記液体吐出手段の各ノズルから吐出されて前記ターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部と、前記ターゲット通過部の位置を調整する位置調整手段と、を備え、前記液体受け部は、前記搬送方向の長さが前記液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を前記直交方向に複数含むものである液体吐出装置の制御方法であって、
前記ターゲットの側端を含む領域に前記液体吐出手段から液体を吐出する際、前記ターゲット通過部の位置が前記ターゲットの両側端が前記長領域上を通過する位置になるよう前記位置調整手段を制御し、該制御後に前記ターゲットが前記ターゲット通過部を通過しながら前記ターゲットに形成すべき画像に応じて前記液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御するステップ、
を含むことを特徴とする。
【0014】
この本発明の液体吐出装置の制御方法では、ターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出する際には、ターゲット通過部の位置が、搬送手段により搬送されるターゲットを支持する支持部,搬送方向の長さが液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を直交方向に複数含み液体吐出手段の各ノズルから吐出されてターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部における長領域上をターゲットの両側端が通過する位置になるよう位置調整手段を制御し、その制御後に、ターゲットがターゲット通過部を通過しながらターゲットに形成すべき画像に応じて液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう搬送手段と液体吐出手段とを制御する。即ち、ターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出する際には、液体吐出手段から液体を吐出する際におけるターゲット通過部の位置がターゲットの両側端が長領域上を通過する位置になるようターゲット通過部の位置を調整し、調整後に、ターゲットをターゲット通過部を通過させながらターゲットに形成すべき画像に応じて液体吐出手段の各ノズルから液体を吐出するのである。これにより、ターゲットの側端を外れた液体は液体受け部に到達し支持部には付着しないから、次にターゲットに液体を吐出する際にターゲットに汚れなどを生じさせることなく、様々な幅のターゲットの側端を含む領域に液体吐出手段から液体を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】プラテン36および位置調整機構40の構成の概略を示す構成図。
【図3】縁なし印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】プラテン136および位置調整機構140の構成の概略を示す構成図。
【図5】プラテン236および位置調整機構240の構成の概略を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるプリンター20の構成の概略の一例を示す構成図であり、図2は、プラテン36および位置調整機構40の構成の概略を示す構成図である。なお、図1および図2では、見やすさを考慮して液体受け部52にハッチングを付した。本実施形態のプリンター20は、図1に示すように、流体としてのインクをターゲットとしての用紙Sに噴射するインク噴射機構21と、駆動モーター33により駆動されプラテン36上を図中奥から手前へと用紙Sを搬送する搬送機構31と、プラテン36を図中左右方向に平行移動させる位置調整機構40と、プリンター20全体をコントロールするコントローラー70とを備えている。
【0017】
インク噴射機構21は、キャリッジベルト32によりキャリッジ軸28に沿って左右(主走査方向(用紙Sの搬送方向に直交する直交方向))に往復動するキャリッジ22と、各色のインクに圧力をかけノズル23から流体としてのインク滴を噴射する印刷ヘッド24と、キャリッジ22に装着されて溶媒としての水に着色剤としての顔料を含有したブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色のインクを個別に収容しこの収容したインクを印刷ヘッド24へ供給するインクカートリッジ26と、を備えている。キャリッジ22は、フレーム29の右側に取り付けられたキャリッジモーター34aとフレーム29の左側に取り付けられた従動ローラー34bとの間に架設されたキャリッジベルト32がキャリッジモーター34aによって駆動されるのに伴って移動する。キャリッジ22の背面には、キャリッジ22の位置を検出するリニア式エンコーダー25が配置されており、このリニア式エンコーダー25を用いてキャリッジ22のポジションが管理可能となっている。印刷ヘッド24は、キャリッジ22の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインク滴を加圧する方式により印刷ヘッド24の下面に設けられたノズル23から各色のインクを噴射するものである。この印刷ヘッド24の下面には、ノズル23が配列した搬送方向のノズル列27が各色ごとに設けられている。印刷ヘッド24は、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。また、インクカートリッジ26は、フレーム29に装着されチューブにより印刷ヘッド24へインク等を供給するいわゆるオフキャリッジの構成としてもよい。
【0018】
搬送機構31は、プラテン36上に用紙Sを搬送する紙送りローラー35と、印刷後の用紙Sを排紙する排紙ローラー39と、紙送りローラー35や排紙ローラー39を回転させる駆動モーター33と、を備えている。
【0019】
プラテン36は、図1および図2に示すように、搬送された用紙Sを支持する支持部としてのリブ36aと、リブ36aの周囲に設けられ印刷ヘッド24から吐出されるインクを受け止めてスポンジにより吸収するインク受け領域52と、を備えている。リブ36aは、プラテン36の長手方向(主走査方向)に所定の間隔毎に所定幅で複数設けられている。インク受け領域52は、リブ36aがない部分の搬送方向の長さが印刷ヘッド24の搬送方向のノズル列27より長くなるように形成されていると共にリブ36aがない部分の主走査方向の長さが定形サイズ(例えば、ハガキサイズやB5サイズ,A4サイズなど)のうち最も大きなサイズの用紙Sの幅より長くなるよう形成されており、このインク受け領域52には、用紙Sからはみ出たインクを吸収するために、スポンジが敷き詰められている。このインク受け領域52は、主走査方向では、図2のインク受け領域52の破線の枠で示すように、主走査方向の長さ(幅)がプラテン36の主走査方向の移動範囲より長く形成されて用紙Sの右側端からはみ出たインクを受け止める側端受け領域52aと、用紙Sの左側端からはみ出たインクを受け止める複数の側端受け領域52bと、を有し、側端受け領域52a,52bは、搬送方向の長さが印刷ヘッド24の搬送方向のノズル列27の長さより長くなるよう形成されている。したがって、用紙Sの右側端が用紙Sをガイドする基準ガイド38に沿って配置された基準配置時には、プラテン36の主走査方向の位置に拘わらず、用紙Sの右側端は側端受け領域52aの上方を通過する。また、インク受け領域52は、搬送方向では、図2のインク受け領域52の二点鎖線の枠で示すように、用紙Sの上端からはみ出たインクを吸収する上端受け領域52fと、用紙Sの下端からはみ出たインクを吸収する下端受け領域52gと、を有し、上端受け領域52fや下端受け領域52gは、主走査方向の長さが定形サイズのうち最も大きなサイズの幅よりも長くなるよう形成されている。
【0020】
位置調整機構40は、回転軸43に対して偏心した溝44が設けられた溝カム42と、プラテン36に結合されて端部が溝カム43の溝44に嵌り込んでいるカムフォロア46と、を備える。この位置調整機構40は、図示しない駆動モーターの駆動による溝カム42の回転によってプラテン36とカムフォロア46とを一体で主走査方向に平行移動させるものであり、本実施形態では、リブ36aの主走査方向の幅以上の長さだけプラテン36を主走査方向に平行移動させることができるものとした。したがって、位置調整機構40によってプラテン36を主走査方向に平行移動させることにより、A4サイズ以下の幅の用紙Sの基準配置時に、用紙Sの両側端がインク受け領域52上を通過するようにすることができる。なお、位置調整機構40としては、リブ36aの主走査方向の幅以上の長さだけプラテン36を主走査方向に平行移動させる機構であればよく、例えば、端面カムや円筒溝カム,ラック・アンド・ピニオンなどを用いた機構としてもよい。
【0021】
コントローラー70は、図1に示すように、CPU72を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き込み消去可能なフラッシュROM74と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM76と、外部機器との情報のやり取りを行うインターフェイス(I/F)78と、図示しない入出力ポートとを備えている。このコントローラー70には、ユーザーがプリンター20に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字や画像が表示されるカラー液晶パネルにより構成された表示部や、各種操作を行うキーなどが配置された操作部が設けられている操作パネル79が電気的に接続されている。このコントローラー70には、リニア式エンコーダー25からのキャリッジ22のポジション信号や操作パネル79からの操作信号などが図示しない入力ポートを介して入力されるほか、ユーザーパソコン(PC)80から出力された印刷ジョブなどがI/F78を介して入力される。また、コントローラー70からは、印刷ヘッド24への制御信号や駆動モーター33への制御信号、キャリッジモーター34aへの制御信号、位置調整機構40の図示しない駆動モーターへの制御信号,操作パネル79への信号などが図示しない出力ポートを介して出力される。
【0022】
こうした本実施形態のプリンター20では、印刷設定の指定を伴ってユーザーPC80から印刷すべき画像データを受け取って用紙Sへの印刷を行なう際には、画像データを展開して展開データを作成し、駆動モーター33により紙送りローラー35や排紙ローラー39を回転させて用紙Sを搬送しながらキャリッジ22をキャリッジモーター34aにより往復動させ、同時に展開データに基づいて印刷ヘッド24の圧電素子に電圧をかけて各ノズル23から各色インクを吐出することにより、用紙S上にカラー画像を形成する。ここで、印刷設定としては、用紙Sに設定される余白の有無、すなわち縁なし印刷の実行の有無や用紙Sのサイズ、紙種などの設定が含まれている。なお、本実施形態では、ユーザーPC80は、ユーザーにより縁なし印刷が選択されると、画像データを用紙Sに縁(余白)が生じないように用紙Sのサイズよりも大きな画像データに加工してプリンター20に送信するものとした。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に、縁なし印刷の実行が指示された際の動作について説明する。図3は、本実施形態のコントローラー70により実行される縁なし印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンを実行するプログラムは、フラッシュROM74に記憶され、ユーザーPC80から縁なし指定の印刷ジョブの指令を受信したときにコントローラー70のCPU72により実行される。この印刷ジョブには、印刷すべき画像データのほか、指定された用紙Sのサイズ情報や紙種などの設定情報が含まれる。以下、説明の都合上、設定情報として、用紙Sの上端(搬送方向の先端)および下端(搬送方向の後端)について余白が設定されると共に左側端および右側端について余白なし(余白0mm)が設定されたときについて説明する。なお、用紙Sの右側端が基準ガイド38に沿って配置された基準配置時とする。
【0024】
縁なし印刷処理ルーチンが実行されると、コントローラー70のCPU72は、まず、ユーザーPC80からの設定情報のうち用紙Sのサイズ情報を入力すると共に(ステップS100)、入力した用紙Sのサイズに基づいて、用紙Sの側端の延長線とリブ36aとが重ならないようにプラテン36の位置が調整されるよう位置調整機構40を制御する(ステップS110)。このステップS100,S110の処理は、印刷を行なう際に用紙Sの左側端が側端受け領域52b上を通過するように、必要に応じて位置調整機構40の図示しない駆動モーターを駆動してプラテン36を主走査方向に平行移動させる処理である。なお、この処理によりプラテン36を主走査方向に平行移動させたとしても、用紙Sの右側端は印刷を行なう際に側端受け領域52a上を通過する。
【0025】
こうしてプラテン36の主走査方向の位置を調整すると、用紙Sへの印刷を行ない(ステップS120)、印刷すべき次の画像データがあるか否かを判定し(ステップS130)、画像データが存在すると判定されたときにはステップS100に戻ってステップS100〜S130の処理を繰り返し、画像データが存在しないと判定されたときにはこれで本ルーチンを終了する。ここで、用紙Sへの印刷は、具体的には、画像データを展開して展開データを作成し、紙送りローラー35や排紙ローラー39により用紙Sが搬送方向に搬送されるよう駆動モーター33を制御すると共に主走査方向の往復動を伴って印刷ヘッド24の各ノズル23から展開データに基づいてインク滴が吐出されるようキャリッジモーター34aと印刷ヘッド24とを制御することにより行なうことができる。本実施形態では、用紙Sの上端および下端について余白が設定されると共に用紙Sの側端について余白なしが設定されたときを考えているから、用紙Sの側端を外れたインクは側端受け領域52a,52bのスポンジにより吸収される。このように印刷を行なうことにより、印刷ヘッド24の各ノズル23から吐出されて用紙Sを外れたインクはリブ36aには付着せずインク受け領域52のスポンジによって吸収されるから、次に印刷する用紙Sに用紙汚れなどを生じさせることなく、様々なサイズ(幅)の用紙Sについて少なくとも側端に対する縁なし印刷を行なうことができる。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の搬送機構31が本発明の搬送手段に相当し、印刷ヘッド24が液体吐出手段に相当し、インク受け領域52やリブ36aを有するプラテン36がターゲット通過部に相当し、位置調整機構40が位置調整手段に相当し、コントローラー70が制御手段に相当する。なお、本実施形態では、液体吐出装置としてのプリンター20の動作を説明することにより、本発明の液体吐出装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0027】
以上説明した実施例のプリンター20によれば、用紙Sの両側端がインク受け領域52上を通過するよう位置調整機構40を制御してプラテン36の主走査方向の位置を調整し、その調整後に用紙Sを搬送しながら用紙Sへの印刷を行なうから、様々なサイズ(幅)の用紙Sの少なくとも側端に対する縁なし印刷を行なうことができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
上述した実施形態では、用紙Sの上端および下端について余白が設定されると共に用紙Sの側端について余白なしが設定されたときについて説明したが、用紙Sの側端だけでなく上端および下端についても余白なしが設定されているときには、用紙Sの上端や下端についても本実施形態と同様に印刷を行なえばよい。この場合、用紙Sの上端を印刷する際には、用紙Sの上端や側端を外れたインクは側端受け領域52a,52bや上端受け領域52fのスポンジにより吸収され、用紙Sの下端を印刷する際には、用紙Sの下端や側端を外れたインクは側端受け領域52a,52bや下端受け領域52gのスポンジにより吸収される。
【0030】
上述した実施形態では、図2に例示したように、プラテン36とプラテン36を主走査方向に平行移動させる位置調整機構40と、を備えるものとしたが、図4に例示するように、円柱状に形成されたプラテン136とプラテン136を搬送方向に沿って回転させる位置調整機構140(例えば、駆動モータなど)と、を備えるものとしてもよいし、図5に例示するように、プラテン236と、プラテン236を搬送方向に平行移動させる位置調整機構240(例えば、位置調整機構40と同様の構成など)と、を備えるものとしてもよい。図4の例では、プラテン136は、リブ136aとインク受け領域152とを備え、インク受け領域152は、主走査方向では、図中破線の枠で示すように、基準配置時の用紙Sの右側端がその上方を通過するよう全周に亘って形成されて用紙Sの右側端をはみ出たインクを受け止める側端受け領域152aと、その側端受け領域152a外の主走査方向の全ての位置で搬送方向の長さが印刷ヘッド24の搬送方向のノズル列27よりも長くなるよう形成されて用紙Sの左側端を外れたインクを受け止める側端受け領域152bと、を有し、搬送方向では、図中二点鎖線の枠で示すように、主走査方向の長さが定形サイズ(例えば、ハガキサイズやB5サイズ,A4サイズなど)のうち最も大きなサイズの幅よりも長くなるよう形成されて用紙Sの上端や下端をはみ出たインクを受け止める上下端受け領域152fを有する。この場合、印刷を行なう際に用紙Sの両側端が側端受け領域152a,152b上を通過するよう用紙Sの幅に基づいて位置調整機構40を制御してプラテン36を回転させ、その後に、用紙Sへの印刷を行なうことにより、様々なサイズ(幅)の用紙Sについて少なくとも側端に対する縁なし印刷を行なうことができる。なお、用紙Sの側端だけでなく上端や下端についても縁なし印刷を行なう場合には、印刷を行なう際に用紙Sの両側端が側端受け領域152a,152b上を通過すると共に印刷ヘッド24の少なくとも一部の主走査方向のノズル列の各ノズル23から吐出された液体を上下端受け領域152fで受け止めることができるよう位置調整機構140を制御してプラテン136を回転させればよい。また、図5の例では、プラテン236は、リブ236aとインク受け領域252とを備え、インク受け領域252は、主走査方向では、図中破線の枠で示したように、搬送方向の長さがプラテン236の搬送方向の移動範囲より長くなるよう形成されて用紙Sの右側端を外れたインクを吸収する側端受け領域252aと、側端受け領域252a外の主走査方向の全ての位置で搬送方向の長さが印刷ヘッド24の搬送方向のノズル列27よりも長くなるよう形成されて用紙Sの左側端を外れたインクを吸収する側端受け領域252bと、を有し、搬送方向では、図中二点鎖線の枠で示したように、主走査方向の長さが定形サイズのうち最も大きなサイズの幅よりも長くなるよう形成されて用紙Sの上端や下端をはみ出たインクを受け止める上下端受け領域252fを有する。この場合、印刷を行なう際に用紙Sの両側端が側端受け領域252a,252b上を通過するよう用紙Sの幅に基づいて位置調整機構40を制御してプラテン36を搬送方向に平行移動させ、その後に、用紙Sへの印刷を行なうことにより、様々なサイズ(幅)の用紙Sについて少なくとも側端に対する縁なし印刷を行なうことができる。なお、用紙Sの側端だけでなく上端や下端についても縁なし印刷を行なう場合には、印刷を行なう際に用紙Sの両側端が側端受け領域252a,252b上を通過すると共に印刷ヘッド24の少なくとも一部の主走査方向のノズル列の各ノズル23から吐出された液体を上下端受け領域252fで受け止めることができるよう位置調整機構240を制御してプラテン236を移動させればよい。
【0031】
上述した実施形態では、用紙Sの右側端が用紙Sをガイドする基準ガイド38に沿って配置された基準配置時に用紙Sのサイズ情報に基づいてプラテン36の位置を調整して用紙Sへの縁なし印刷を行なう場合について説明したが、用紙Sの側端を検出する図示しない側端検出センサ(例えば、発光ダイオードなどの発光部と、フォトトランジスタなどの受光部と、により構成された光学センサなど)による検出値に基づいて用紙Sの右側端および左側端の主走査方向の位置を検出する場合、検出した用紙Sの右側端および左側端に基づいて、用紙Sへの印刷を行なう際に用紙Sの両側端が側端受け領域52a,52b上を通過するようにプラテン36の位置を調整してから用紙Sへの印刷を行なえばよい。
【0032】
上述した実施形態では、インク受け領域52の主走査方向の長さは、定形サイズのうち最も大きなA4サイズの幅よりも長くなるよう形成されているものとしたが、定形サイズのうち最も大きなサイズはA4サイズに限られず、A0サイズや半切サイズ,A3サイズなどとしてもよい。即ち、インク受け領域52の主走査方向の長さは、A0サイズや半切サイズ,A3サイズなどのいずれかの幅よりも長く形成されているものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、本発明の流体吐出装置をプリンター20に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよいし、流体として吐出可能な固体を吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体を吐出する粉体吐出式記録装置としてもよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
20 プリンター、21 インク噴射機構、22 キャリッジ、23 ノズル、24 印刷ヘッド、25 リニア式エンコーダー、26 インクカートリッジ、27 ノズル列、28 キャリッジ軸、29 フレーム、31 搬送機構、32 キャリッジベルト、33 駆動モーター、34a キャリッジモーター、34b 従動ローラー、35 紙送りローラー、36,136,236 プラテン、36a,136a,236a リブ、38 基準ガイド、39 排紙ローラー、40,140,240 位置調整機構、52 インク受け領域、52a,52b,152a,152b,252a,252b 側端受け領域、52f 上端受け領域、52g 下端受け領域、152f,252f 上下端受け領域、70 コントローラー、72 CPU、74 フラッシュROM、76 RAM、78 インターフェイス、79 操作パネル、80 ユーザーPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記ターゲットを搬送する搬送手段と、
前記ターゲットの搬送方向に直交する直交方向の移動を伴って複数のノズルの各々から前記ターゲットに液体を吐出する液体吐出手段と、
前記搬送手段により搬送される前記ターゲットを支持する支持部,前記液体吐出手段の各ノズルから吐出されて前記ターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部と、
前記ターゲット通過部の位置を調整する位置調整手段と、
前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御する制御手段と、
を備え、
前記液体受け部は、前記搬送方向の長さが前記液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を前記直交方向に複数含み、
前記制御手段は、前記ターゲットの側端を含む領域に前記液体吐出手段から液体を吐出する際、前記ターゲット通過部の位置が前記ターゲットの両側端が前記長領域上を通過する位置になるよう前記位置調整手段を制御し、該制御後に前記ターゲットが前記ターゲット通過部を通過しながら前記ターゲットに形成すべき画像に応じて前記液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を前記直交方向に平行移動させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記ターゲット通過部は、前記液体受け部の前記長領域が前記直交方向の全ての位置に形成されてなり、
前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を前記搬送方向に平行移動させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記ターゲット通過部は、前記搬送方向に沿って回転可能な円柱状に形成されると共に前記液体受け部の前記長領域が前記直交方向の全ての位置に形成されてなり、
前記位置調整手段は、前記ターゲット通過部を回転させることにより該ターゲット通過部の位置を調整する手段である、
液体吐出装置。
【請求項5】
ターゲットを搬送する搬送手段と、前記ターゲットの搬送方向に直交する直交方向の移動を伴って複数のノズルの各々から前記ターゲットに液体を吐出する液体吐出手段と、前記搬送手段により搬送される前記ターゲットを支持する支持部,前記液体吐出手段の各ノズルから吐出されて前記ターゲットを外れた液体を受け止める液体受け部,を有するターゲット通過部と、前記ターゲット通過部の位置を調整する位置調整手段と、を備え、前記液体受け部は、前記搬送方向の長さが前記液体吐出手段の搬送方向のノズル列の長さより長く形成された領域である長領域を前記直交方向に複数含むものである液体吐出装置の制御方法であって、
前記ターゲットの側端を含む領域に前記液体吐出手段から液体を吐出する際、前記ターゲット通過部の位置が前記ターゲットの両側端が前記長領域上を通過する位置になるよう前記位置調整手段を制御し、該制御後に前記ターゲットが前記ターゲット通過部を通過しながら前記ターゲットに形成すべき画像に応じて前記液体吐出手段の各ノズルから液体が吐出されるよう前記搬送手段と前記液体吐出手段とを制御するステップ、
を含むことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−240954(P2010−240954A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91248(P2009−91248)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】