説明

液体吐出装置及び液体吐出方法

【課題】硬化性の悪い液体を適切に仮硬化させること。
【解決手段】媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルが並ぶノズル列と交差する方向に媒体を搬送させつつ、この媒体にインクを吐出させて印刷を行うラインプリンタが使用されている。このようなラインプリンタでは、印刷速度が速い。そのため、紫外線硬化型のインクを用い、インクを仮硬化させつつ印刷を行って、異なるインク間に生ずるブリード(滲み)の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−265285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、異なる種類のインクが重なって媒体に着弾する場合において、両者の粘度が異なりすぎると、一方のインクが他方のインクに流れ込み、この場合でもブリードが発生する。
ところで、紫外線硬化型のインクなどの液体は、含まれる顔料の色によって仮硬化しやすい場合と仮硬化しにくい場合がある。例えば、ブラックインクなどでは、ブラックの顔料が紫外線を多く吸収してしまうため、硬化成分に紫外線が吸収されず、仮硬化しにくい。よって、異なる種類のインクが重なる場合であっても、両者の粘度を均一にできるように、硬化性の悪い液体を適切に仮硬化させることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、硬化性の悪い液体を適切に仮硬化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、
前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、
前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、
前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部を制御する制御部と、
を備える液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるプリンタ1の概略側面図である。
【図2】本実施形態におけるプリンタ1のブロック図である。
【図3】図3Aは、ヘッド412におけるノズルの配置を説明する図であり、図3Bは、ヘッドアセンブリ411の構成を説明する図であり、図3Cは、ブラックヘッドユニット41Kの構成を説明する図である。
【図4】ヘッドの構造を説明する図である。
【図5】駆動信号生成回路70によって生成される駆動信号COMの例を説明する図である。
【図6】インクの加熱過程の説明図である。
【図7】仮硬化ユニットにおけるLEDアセンブリユニットの説明図である。
【図8】本硬化用光源ユニット91の側面図である。
【図9】本実施形態における印刷処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、
前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、
前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、
前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部を制御する制御部と、
を備える液体吐出装置。
このようにすることで、硬化性の悪い液体を適切に仮硬化させることができる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記第1の液体及び前記第2の液体は紫外線硬化型のインクであり、前記LEDは紫外線を照射することが望ましい。
このようにすることによって、媒体が連続的に搬送され、高速で画像が形成される状況下においても、適切に第1の液体と第2の液体を仮硬化させて、ブリードを抑制した画像形成をすることができる。
【0012】
前記第1の液体はブラックインクであり、
前記第2の液体はカラーインクであり、
前記第1の液体と前記第2の液体とが吐出されると共に、前記第1照射部のLEDと前記第2照射部のLEDとが点灯される第1モードと、
前記第1の液体が吐出される一方、前記第2の液体が吐出されず、前記第1照射部のLEDが点灯され、前記第2照射部のLEDが点灯されない第2モードと、
前記第1の液体が吐出される一方、前記第2の液体が吐出されず、前記第1照射部のLEDと前記第2照射部のLEDが点灯される第3モードと、
を有するように制御されることが望ましい。
このようにすることによって、第1の液体及び第2の液体の吐出の有無に対応して、複数の照射モードを提供することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記第2ノズル列における液体の吐出量を求め、該吐出量に基づいて前記第2照射部における前記LEDの点灯を制御することとしてもよい。
このようにすることによって、第2ノズル列における液体の吐出量に応じた量の光を照射することができる。
【0014】
また、前記搬送方向において前記第2照射部の下流側に配置され、前記媒体における液体を仮硬化させるためのLEDを有する第3照射部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に、前記第2照射部におけるLEDを前記第3照射部におけるLEDよりも優先的に点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部と前記第3照射部とを制御することが望ましい。
このようにすることによって、硬化しにくい液体が第1ノズル列から吐出される場合であっても、第3照射部よりも第1ノズル列に近い第2照射部から優先的にLEDを点灯させて、第1の液体をより効率的に仮硬化させることができる。
【0015】
また、前記第3照射部よりも搬送方向の下流側に、前記第1の液体と前記第2の液体を本硬化させるための第4照射部を備えることが望ましい。また、前記第4照射部は、メタルハライドランプを含むことが望ましい。
このようにすることによって、仮硬化された第1の液体と第2の液体とを本硬化させることができる。
【0016】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、
前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、
前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、
前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、
を備える液体吐出装置において、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出する一方、前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出するか否かを判定することと、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させることと、
を含む液体吐出方法。
このようにすることで、硬化性の悪い液体を適切に仮硬化させることができる。
【0017】
===実施形態===
図1は、本実施形態におけるプリンタ1の概略側面図である。図2は、本実施形態におけるプリンタ1のブロック図である。以下、これらの図を参照しつつ、プリンタ1の構成について説明を行う。
【0018】
図2には、プリンタ1とコンピュータ110が示されている。プリンタ1は、用紙搬送ユニット10とインク加熱ユニット30とヘッドユニット40と検出器群50とコントローラ60と駆動信号生成回路70と仮硬化ユニット80と本硬化ユニット90を備える。
【0019】
用紙搬送ユニット10は、ドラム11と、第1ローラ12、第2ローラ13、及び、第3ローラ14を含む。用紙搬送ユニット10は、用紙Sを図における上流側から下流側へ搬送する機能を有する。用紙Sは、上流側から不図示の給紙ロールから供給され、下流側の不図示の巻き取りローラによって巻き取られる。用紙Sは巻き取りローラによって巻き取られることにより、少なくとも第1ローラ12から第3ローラ14までの間において所定の張力を有し、ドラム11に密着するように搬送される。
【0020】
インク加熱ユニット30は、ブラックインクを加熱するブラックインク加熱装置31Kと、イエローインクを加熱するイエローインク加熱装置31Yと、マゼンタインク加熱装置31Mと、シアンインク加熱装置31Cとを含む。それぞれのインク加熱装置31は、粘度の低いインクを加熱して、ヘッドユニット41からインクを吐出させやすくして安定した画像形成を行わせることに寄与する。インク加熱装置31の構成については後述する。
【0021】
ヘッドユニット40は、後述するように、ブラックヘッドユニット41K、イエローヘッドユニット41Y、マゼンタヘッドユニット41M、及び、シアンヘッドユニット41C、を含む。そして、これらから各色のインクを吐出することによってカラー印刷を行うことができるようになっている。
【0022】
検出器群50は、プリンタ1の各部の情報を検出してコントローラ60に送る様々な検出器をあらわす。
【0023】
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニットである。コントローラ60は、CPU61と、メモリ62と、インタフェース部63とを有する。CPU61は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ62は、CPU61のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU61は、メモリ62に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。インタフェース部63は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。
【0024】
駆動信号生成回路70は、後述するヘッドに含まれるピエゾ素子などの駆動素子に印加してインク滴を吐出させるための駆動信号を生成する。駆動信号生成回路70は、不図示のDACを含む。そして、コントローラ60から送られた駆動信号の波形に関するデジタルデータに基づいて、アナログの電圧信号を生成する。また、駆動信号生成回路70は不図示の増幅回路も含んでおり、生成された電圧信号について電力増幅を行い、駆動信号を生成する。
【0025】
仮硬化ユニット80は、用紙Sに着弾した紫外線硬化型のインクに対して紫外線を照射して着弾したインクを仮硬化(以下、「仮硬化」のことを「ピニング」と呼ぶことがある)させる。すなわち、用紙に着弾したインク表面の粘度を高め、インクの移動を抑制する。このように、着弾したインクの表面の粘度を高めることによって、さらにそのインクの上に別のインクが着弾した場合であっても、インク同士が移動しにくくなり、ブリードを抑制することができる。
仮硬化ユニット80は、各インク色に対応したLED基板アセンブリ81K、81Y、81M、81Yを含む。LED基板アセンブリ81の構成については後述する。
【0026】
本硬化ユニット90は、本硬化用光源ユニット91を含む。本硬化用光源ユニット91は、図に示されるようにドラム11の下部に配置される。そして、用紙Sに紫外線を含む光を照射し、用紙Sに着弾した各色のインクを本硬化させる。本硬化では、後に巻き取りローラ(不図示)において用紙Sが巻き取られる際にインクが巻き取られる用紙Sに付着しない程度にまで硬化させられる。本実施形態における本硬化用光源ユニット91の光源にはメタルハライドランプが使用される。
【0027】
図3Aは、ヘッド412におけるノズルの配置を説明する図である。本図はヘッド412の上面図であるが、ノズル配置の説明の容易のために、本来下部からしか視認できないノズル孔が示されている。ヘッド412は、1列のノズル列を有し、各ノズル列におけるノズルピッチPは360dpiとなっている。このようにすることで、本実施形態では、紙幅方向について360dpiのノズルピッチを実現している。
【0028】
図3Bは、ヘッドアセンブリ411の構成を説明する図である。ここでも、本図はヘッドアセンブリ411の上面図であるが、ヘッド配置の説明の容易のために、本来下部からしか視認できないヘッド412が示されている。ヘッドアセンブリ411は、ヘッド412を6個備える。ヘッド412は図に示されるように2列に並んでおり、ノズル列方向について均一のドットピッチでドットを形成することができるようになっている。
【0029】
図3Cは、ブラックヘッドユニット41Kの構成を説明する図である。ヘッドユニット40は、ブラックヘッドユニット41K(第1の液体を吐出する第1ノズル列を含む)、イエローヘッドユニット41Y(第2の液体を吐出する第2ノズル列を含む)、マゼンタヘッドユニット41M、及び、シアンヘッドユニット41Cを備える。これら各インク色のヘッドユニットは、いずれも同様の構成となっているので、ここではブラックヘッドユニット41Kの構成について説明する。
ブラックヘッドユニット41Kは、ヘッドアセンブリ411を6個備える。個々のヘッドアセンブリ411は、図に示されるように2列に並んでいる。そして、ノズル列方向(紙幅方向)について均一のドットピッチでドットを形成する。このようにすることにより、複数のヘッド412を紙幅方向にわたって複数配置することができるので、幅の広い用紙に対しても全面に印刷を行えるようになる。
【0030】
図4は、ヘッドの構造を説明する図である。図には、ノズルNz、ピエゾ素子PZT、インク供給路402、ノズル連通路404、及び、弾性板406が示されている。
インク供給路402には、不図示のインクタンクからインクが供給される。そして、これらのインク等は、ノズル連通路404に供給される。ピエゾ素子PZTには、後述する駆動信号の駆動パルスが印加される。駆動パルスが印加されると、駆動パルスの信号に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板406を振動させる。そして、駆動パルスの振幅に対応する量のインク滴がノズルNzから吐出されるようになっている。
【0031】
図5は、駆動信号生成回路70によって生成される駆動信号COMの例を説明する図である。図に示されるように、駆動信号COMは、繰り返し周期Tごとに繰り返し生成される。
繰り返し周期である期間Tは、用紙Sが搬送方向に1画素分移動する間の期間に対応する。例えば、印刷解像度が360dpiの場合、期間Tは、用紙Sがノズルに対して1/360インチ移動するための期間に相当する。そして、印刷データに含まれる画素データに基づいて、期間Tに含まれる各区間の駆動パルスPS1〜PS4をピエゾ素子PZTに印加することによって、1つの画素内に大きさの異なるインク滴が吐出され、複数階調を表現可能としている。
【0032】
駆動信号COMは、繰り返し周期Tにおける区間T1で生成される駆動パルスPS1と、区間T2で生成される駆動パルスPS2と、区間T3で生成される駆動パルスPS3と、区間T4で生成される駆動パルスPS4とを有する。
図には、駆動パルスPS1の振幅がVhmであることが示されている。また、図には、駆動パルスPS3の振幅がVhlであることが示されており、駆動パルスPS4の振幅がVhsであることが示されている。駆動パルスの振幅が大きいほどピエゾ素子421の変化量が大きいため大きなサイズのインク滴が吐出される。よって、インク滴はそれぞれの駆動パルスの振幅に応じた大きさのものが吐出される。図において、駆動パルスPS3の振幅Vhlが最も大きく、次に、駆動パルスPS1の振幅Vhmが大きい。そして、駆動パルスPS4の振幅Vhsがその次に大きいものとなっている。
【0033】
このため、小ドットの形成時には駆動パルスPS4がピエゾ素子PZTへ印加される。また、中ドットの形成時には、駆動パルスPS1がピエゾ素子PZTへ印加され、大ドットの形成時には、駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加される。駆動パルスPS2は、メニスカスを微振動させるための微振動パルスであり、ドット無しの場合にピエゾ素子PZTへ印加される。このようにすることで、駆動パルスPS4は小ドットのインク滴を吐出するための駆動パルスとなり、駆動パルスPS1は中ドットのインク滴を吐出するための駆動パルスとなり、駆動パルスPS3は大ドットのインク滴を吐出するための駆動パルスとなる。
【0034】
図6は、インクの加熱過程の説明図である。本実施形態では、ヘッドから吐出されるインクとして紫外線硬化型インクが使用される。紫外線硬化型インクは常温において粘度が低く、ヘッドのノズルから安定して吐出することができないことがある。よって、本実施形態では、ヘッドから吐出される紫外線硬化型インクを事前に加熱するためのインク加熱装置31がそれぞれのヘッドユニット41に設けられている。
【0035】
図には、インクタンク42とインク加熱装置31と温度センサ51とが示されている。インクタンク42には対応する色のインクが充填されている。そして、このインクは、インクタンク42下部からのチューブにより、インク加熱装置31へと送られる。インク加熱装置31に送られたインクは、インク加熱装置31を通過すると加熱され、インク加熱装置31下部からのチューブにより、温度センサ51へと送られる。温度センサ51を通過したインクは、対応する色のヘッドユニット(ここでは、ブラックヘッドユニット41K)の各ヘッドへと送られる。
【0036】
インク加熱装置31は、供給される電力量によって発熱量を制御することができる装置であって、発熱可能な抵抗器を含む装置である。そして、コントローラ60からの指令により供給電力量が制御され、温度制御されることが可能となっている。
温度センサ51は、温度センサ51を通過するインクの温度をコントローラ60に送る。コントローラ60は、送られた温度に基づいて、インク加熱装置31に供給する電力量を調整する。このようにすることによって、予め決められた温度でインクをヘッドに供給することができるようになっている。本実施形態では、インクが40℃で吐出されるように加熱される。尚、本実施形態におけるインクの粘度は、40℃で10〜20mPa・sとなる。
【0037】
図7は、仮硬化ユニット80におけるLED基板アセンブリ81の説明図である。仮硬化ユニット80は、ブラックインク用のLED基板アセンブリ81K(第1照射部に相当)、イエローインク用のLED基板アセンブリ81Y(第2照射部に相当)、マゼンタインク用のLED基板アセンブリ81M(第3照射部に相当)、及び、シアンインク用のLED基板アセンブリ81Cを含む。これらの4つのLED基板アセンブリ81は、共通の構成のものが用いられ、製造コストが削減されている。
【0038】
LED基板アセンブリ81は、第1LED基板82Aと第2LED基板82Bと第3LED基板82Cと第4LED基板82Dとで構成される。第1LED基板82Aと第2LED基板82Bは紙幅方向に隣接して並ぶ。同様に、第3LED基板82Cと第4LED基板82Dも紙幅方向に隣接して並ぶ。これにより、印刷される用紙Sの紙幅よりも幅広の照射領域を提供する。
【0039】
また、第1LED基板82Aと第3LED基板82Cは用紙の搬送方向に隣接して並ぶ。また、第2LED基板82Bと第4LED基板82Dも用紙の搬送方向に隣接して並ぶ。
【0040】
個々のLED基板82は、複数のLEDアセンブリ83を含む。本実施形態では、紙幅方向に16個のLEDアセンブリ83が並び、搬送方向に6つのLEDアセンブリ83が並んでいる(計96個のLEDアセンブリ83で構成される)が、これとは異なる数のLEDアセンブリ83を含むこととしてもよい。
【0041】
1つのLEDアセンブリ83には、4つのLED831が含まれている。本実施形態におけるLED831は395〜405nmにピーク波長を有するものが採用されている。
【0042】
LED基板82は、基板単位でLEDの発光が制御される。つまり、例えば、1つのLED基板82において、あるLEDアセンブリ83は発光しているが、他のLEDアセンブリ83は発光していないという制御は行われず、1つのLED基板82におけるLEDの全てが発光しているか、LED基板82におけるLEDの全てが発光していないかの状態のいずれかとなる。尚、1つのLED基板82の全てのLEDが発光しているときにおいて、LEDに供給される電流量が調整され、照射エネルギーは可変とすることができるようになっている。本実施形態では、ピニングエネルギー(仮硬化エネルギー)が、2〜20mJ/cmになるように、電流が調整されている。
【0043】
尚、ここでは4つのLED基板82でLED基板アセンブリ81を構成することとしたが、より多くのLED基板82でLED基板アセンブリ81を構成することとしてもよい。
【0044】
図8は、本硬化用光源ユニット91の側面図である。本硬化用光源ユニット91は、光源部を構成するメタルハライドランプ911、保護ガラス912、反射鏡913、及び、光源側ケース914と、排熱部を構成するヒートシンク(放熱フィン)915、排熱側ケース916、空気取り入れ口917、排熱ファン918、及び、排熱ダクト919とを備える。
【0045】
メタルハライドランプ911は、用紙Sに着弾したインクを本硬化させるための光を照射する。本実施形態において使用されるメタルハライドランプ911が照射する光は、紫外線成分を多く含み、紫外線硬化型インクを硬化させる。反射鏡913は、メタルハライドランプ911から照射される光を用紙S側に反射させるためのものであり、これによりメタルハライドランプ911からの光を効率的に用紙Sに照射する。保護ガラス912は、メタルハライドランプ911からの光を用紙Sに対して透過させつつ、用紙Sの通路からのゴミの侵入を防ぐ。光源側ケース914は、メタルハライドランプ911、保護ガラス、及び、反射鏡913を取り付けるためのケースである。このような本硬化用光源ユニット91を用いることにより、用紙S上において仮硬化されたインクが本硬化されることになる。
【0046】
図9は、本実施形態における印刷処理を説明するフローチャートである。本フローチャートを用いて、本実施形態によるプリンタ1を用いた印刷について説明する。本実施形態におけるプリンタは、カラー印刷モード(第1モード)と、省エネモノクロ印刷モード(第2モード)と、高画質モノクロ印刷モード(第3モード)とを有している。カラー印刷モードは、ブラックインクのみならず、他の色のインクも吐出して印刷を行う印刷モードである。省エネモノクロ印刷モードでは、ブラックインクのみを吐出させるが、着弾したブラックインクを仮硬化させるために、ブラックインク用のLED基板アセンブリ81Kのみが使用され紫外線が照射される。高画質モノクロ印刷モードは、後述するように、ブラックインクのみを吐出させるが、着弾したブラックインクを仮硬化させるために複数のLED基板アセンブリ81が使用され紫外線が照射される。
【0047】
印刷が開始されると、印刷モードがモノクロ印刷モードであるか否かについて判定される(S102)。モノクロ印刷モードによって印刷を行うか、カラー印刷モードで印刷を行うかについては、予めユーザによってプリンタドライバ等を介して設定されているものとする。
【0048】
そしてモノクロ印刷モードではないと判定された場合には、ブラックヘッドユニット41Kのみならず、カラーインクのヘッドユニット(イエローヘッドユニット41Y〜シアンヘッドユニット41C)からインクを吐出して印刷を行う。このとき、使用されるヘッドユニットに対応するLED基板アセンブリのLEDが点灯される。すなわち、イエローヘッドユニット41Y〜シアンヘッドユニット41Cからインクが吐出される場合には、イエローヘッドユニット41Yに対応するLED基板アセンブリ81Yからシアンヘッドユニット41Cに対応するLED基板アセンブリ81CまでのLEDが点灯され、着弾したカラーインクが仮硬化される。
【0049】
一方、モノクロ印刷モードであると判定された場合には、高画質モノクロ印刷モードであるか省エネモノクロ印刷モードであるかが判定される(S106)。モノクロモードのうち、高画質モノクロ印刷モードであるか省エネモノクロ印刷モードであるかは、予めユーザによってプリンタドライバ等を介して設定されているものとする。
そして、高画質モノクロ印刷モードではないと判定された場合(省エネモノクロ印刷モードであると判定された場合)、ブラックヘッドユニット41Kのみからインクを吐出させ、さらにブラックインク用のLED基板アセンブリ81KのLEDのみを点灯させ、着弾したブラックインクが仮硬化される。
このように、省エネモノクロ印刷モードである場合において、ブラックインク用のLED基板アセンブリ81KのLEDのみを点灯させるので、後述する高画質モノクロ印刷モードよりもLEDに使用される電力を少なくすることができる。
【0050】
一方、ステップS106において、高画質モノクロ印刷モードが設定されていると判定された場合には、ブラックヘッドユニット41Kのみからインクを吐出させ、他のヘッドユニットからはインクを吐出させない(S110)。また、ブラックヘッドユニット41Kに対応するLED基板アセンブリ81KのLED、及び、イエローヘッドユニット41Yに対応するLED基板アセンブリ81YのLEDが点灯され、着弾したブラックインクが仮硬化される。
このように、ブラックヘッドユニット41Kのみからインクが吐出されているのにもかかわらず、イエローヘッドユニット41Yに対応するLED基板アセンブリ81YのLEDをも点灯させるのは、仮硬化段階でより多くの紫外線を照射して、より粘度を高めておき、ブラックインクが着弾してから本硬化させられるまでの時間におけるブラックインクによるブリードを抑制するためである。
【0051】
以上のように説明した構成のプリンタ1を用いることによって、高画質モノクロ印刷モードのときにおいて、複数のLED基板アセンブリ81から紫外線を照射させることができるので、紫外線硬化型インクのうちブラックインクのような硬化性の悪いインクを用いる場合であっても適切に仮硬化させることができる。
【0052】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、ステップS106において、高画質モノクロ印刷モードで印刷を行うか否かに基づいて、ステップS108の処理を行うかステップS110の処理を行うかを判定していたが、モノクロ印刷モードにおけるブラックインクの吐出量に基づいて、ステップS108の処理を行うかステップS110の処理を行うかを判定することとしてもよい。
この場合、ブラックインクの吐出量が所定量以下の場合にステップS108を行い、ブラックインクの吐出量が所定量よりも大きい場合に、ステップS110を行う。
【0053】
尚、吐出量については、例えば以下のようにして、ジョブを単位としてブラックインクの吐出量を求めることとしてもよい。本実施形態におけるプリンタ1において、小ドットを形成する場合に2plのインクを吐出し、中ドットを形成する場合に4plのインクを吐出し、大ドットを形成する場合に6plのインクを吐出するものとする。このとき、1つのジョブにおいて媒体に吐出されるブラックインクの吐出量を求め、求められた吐出量と閾値としての所定量とを比較することにより、ステップS108の処理を行うかステップS110の処理を行うかを判定することができるようになる。
【0054】
また、ステップS110において、ブラック用のLED基板アセンブリ81Kとイエロー用のLED基板アセンブリ81Yのみを点灯させることとしていたが、さらに、マゼンタ用のLED基板アセンブリ81Mも点灯させることとしてもよい。また、このとき、ブラックインクの吐出量に基づいて、マゼンタ用のLED基板アセンブリ81Mを点灯させるか否かを判定することとしてもよい。尚、ブラック用のLED基板アセンブリ81K以外のLED基板アセンブリを点灯させる場合には、ブラックヘッドユニット41Kにより近いイエロー用のLED基板アセンブリ81Yが優先的に点灯される。
このようにすることで、紫外線硬化型インクにおけるブラックインクのような硬化性の悪い液体を適切に硬化させることができるようになる。
【0055】
上述の実施形態では、液体吐出装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0056】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0057】
<クリアインクについて>
上述の実施形態におけるプリンタ1において、さらに、透明なインクであるクリアインクを吐出するヘッドユニット、及び、クリアインクを硬化させるLED基板アセンブリを設けることとしてもよい。そして、各インクが用紙S上に着弾した後に、クリアインクをその上に吐出して、画像をコーティングすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ、
10 用紙搬送ユニット、11 ドラム、
12 第1ローラ、13 第2ローラ、14 第3ローラ、
30 インク加熱ユニット、31 加熱装置、
40 ヘッドユニット、41K ブラックヘッドユニット、
41Y イエローヘッドユニット、41M マゼンタヘッドユニット、
41C シアンヘッドユニット、
411 ヘッドアセンブリ、412 ヘッド、
50 検出器群、
60 コントローラ、61 CPU、62 メモリ、63 インタフェース部、
70 駆動信号生成回路、
80 仮硬化ユニット、81 LED基板アセンブリ、
82A 第1LED基板、82B 第2LED基板、
82C 第3LED基板、82D 第4LED基板、
83 LEDアセンブリ、831 LED、
90 本硬化ユニット、91 本硬化用光源ユニット、
911 メタルハライドランプ、912 保護ガラス、913 反射鏡、
914 光源側ケース、915 ヒートシンク、916 排熱側ケース、
917 空気取り入れ口、918 排熱ファン、919 排熱ダクト、
110 コンピュータ、
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、
前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、
前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、
前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部を制御する制御部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1の液体及び前記第2の液体は紫外線硬化型のインクであり、
前記LEDは紫外線を照射する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1の液体はブラックインクであり、
前記第2の液体はカラーインクであり、
前記第1の液体と前記第2の液体とが吐出されると共に、前記第1照射部のLEDと前記第2照射部のLEDとが点灯される第1モードと、
前記第1の液体が吐出される一方、前記第2の液体が吐出されず、前記第1照射部のLEDが点灯され、前記第2照射部のLEDが点灯されない第2モードと、
前記第1の液体が吐出される一方、前記第2の液体が吐出されず、前記第1照射部のLEDと前記第2照射部のLEDが点灯される第3モードと、
を有するように制御される、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2ノズル列における液体の吐出量を求め、該吐出量に基づいて前記第2照射部における前記LEDの点灯を制御する、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記搬送方向において前記第2照射部の下流側に配置され、前記媒体における液体を仮硬化させるためのLEDを有する第3照射部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に、前記第2照射部におけるLEDを前記第3照射部におけるLEDよりも優先的に点灯させるように前記第1照射部と前記第2照射部と前記第3照射部とを制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第3照射部よりも搬送方向の下流側に、前記第1の液体と前記第2の液体を本硬化させるための第4照射部を備える、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第4照射部は、メタルハライドランプを含む、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第1の液体を吐出する第1ノズル列と、
前記搬送方向において前記第1ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第1の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第1照射部と、
前記搬送方向において前記第1照射部の下流側に配置される第2ノズル列であって、前記交差方向に複数のノズルが並び前記媒体に第2の液体を吐出する第2ノズル列と、
前記搬送方向において前記第2ノズル列の下流側に配置され、前記媒体における前記第2の液体を仮硬化させるためのLEDを有する第2照射部と、
を備える液体吐出装置において、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出する一方、前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出するか否かを判定することと、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出し前記第2ノズル列から前記第2の液体を吐出しない場合において、前記第1照射部におけるLEDを点灯させると共に前記第2照射部におけるLEDを点灯させることと、
を含む液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121280(P2011−121280A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280765(P2009−280765)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】