説明

液体吐出装置

【課題】吐出対象物(例えば、記録用紙)が液体吐出面に接触しないようにしつつ、ライン方式のインクジェットプリンタに適用した場合であっても、メンテナンス性に悪影響を及ぼさないようにする。
【解決手段】ノズル列が形成されたラインヘッド20(ヘッドモジュール30)と、インク吐出面21側にラインヘッド20(ヘッドモジュール30)から独立して配置され、記録用紙11がインク吐出面21に平行な方向に移動する際のガイドとなるガイドパネル40とを備え、ガイドパネル40は、記録用紙11がインク吐出面21に接触しないように、インク吐出面21から記録用紙11を離間させるためのガイドリブ41と、ラインヘッド20(ヘッドモジュール30)のノズル列と対向する部分に形成された開口部42とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の吐出対象となる吐出対象物をガイドする液体吐出装置に係るものである。そして、詳しくは、吐出対象物が液体吐出面に接触しないようにしつつ、液体吐出面のメンテナンス動作に支障がないようにした技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに形成された複数のノズルからインク(液体)を吐出し、記録用紙(吐出対象物)に画像等を形成している。そして、記録用紙として、1枚ずつのカット紙を使用するタイプと、長尺の記録用紙を紙管等に円筒状に巻き付けたロール紙を使用するタイプのものとがある。
【0003】
ここで、近年では、デジタルカメラの普及等により、高画質で印画する際にコスト面で有利なロール紙が広く使用されるようになっている。このロール紙を使用したインクジェットプリンタでは、印画のたびに必要量を引き出して液体吐出ヘッドまで給紙し、印画が終了したものを規定の大きさに切断して排紙する。
【0004】
このように、ロール紙を使用したインクジェットプリンタは、円筒状に巻き付けられた記録用紙を引き出して給紙するものであり、引き出された記録用紙には、カールが生じている。そして、カールの程度は、使用するにつれて(巻き芯側に近づくにつれて)顕著なものとなる。そのため、液体吐出ヘッドと記録用紙とを接触させない状態でインクを吐出し、印画を行うインクジェットプリンタの場合には、カールのある記録用紙が液体吐出ヘッドの下方の印画テーブル上で、液体吐出ヘッドに向けて浮き上がりやすくなる。
【0005】
図8は、このような従来のインクジェットプリンタ110による印画時の状態を示す模式図である。なお、図8(a)は、ロール紙である記録用紙111の先端が上に反っている場合を示し、図8(b)は、ロール紙である記録用紙111の中間部がカールによって浮き上がっている場合を示している。
【0006】
図8に示すように、インクジェットプリンタ110は、記録用紙111(ロール紙)に対して印画を行うものである。そして、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙111を給紙する給紙ローラ112と、給紙された記録用紙111を略水平に支持する印画テーブル113と、印画が行われた記録用紙111をペーパトレイ(図示せず)に排紙する排紙ローラ114とを備えている。
【0007】
また、インクジェットプリンタ110は、印画テーブル113上の記録用紙111に対し、インク吐出面121からインクを吐出して画像を形成するラインヘッド120を備えている。そして、ラインヘッド120は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクを吐出する4つのヘッドモジュール130によって構成されている。
【0008】
ここで、カールによって浮き上がる等した記録用紙111に印画を行うと、画質の低下が生じる。すなわち、インクジェットプリンタ110は、インク吐出面121と記録用紙111とを所定の間隔(ヘッドギャップ)に維持してインクを吐出することにより、正確な位置や大きさで記録用紙111にインクを着弾させ、画像を形成している。
【0009】
ところが、図8(a)に示すように、カールで先端が上に反った記録用紙111であると、その先端を正確に検知することができず、レジずれを引き起こすことがある。また、このような状態のままで印画が実行された場合には、カールした記録用紙111の先端がヘッドモジュール130に引っかかり、記録用紙111のジャムを発生させるおそれがある。すると、記録用紙111が汚損されるだけでなく、ラインヘッド120(ヘッドモジュール130)が破損する可能性も生じる。
【0010】
また、図8(b)に示すように、記録用紙111の中間部がカールによって浮き上がった状態で搬送されると、インクの着弾精度が大きく低下してしまい、画像に歪みを生じさせる。さらに、このカールの程度が大きければ、記録用紙111がインク吐出面121に接触し、インク吐出面121に付着しているインクやゴミによって印画面が汚されてしまい、画質の低下を招く。
【0011】
そこで、記録用紙のカールによる不具合を軽減する技術が開示されている。すなわち、ギャップ調整手段により、液体吐出ヘッドが記録用紙の厚み分だけ持ち上げられるようにしてヘッドギャップを一定に保ち、記録用紙の接触を未然に防止する技術である。具体的には、ヘッドユニットをガイド軸と長穴等とによってY方向に摺動自在に支持するとともに、ユニット本体の底面に回転可能に支持されるガイドボールを記録用紙の印刷面に接触させる構成となっている。そのため、記録用紙の厚みに応じてガイドボールが持ち上げられ、ヘッドギャップを所定の距離に保つことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−72055号公報
【0012】
また、ヘッドケースに装着し、ノズルプレートの外縁部を覆うノズルカバーを設けるとともに、このノズルカバーの開口部に、桟を架け渡す技術が知られている。そして、この桟は、ノズル群とノズル群との間のノズル面(インク吐出面)を覆い、ノズル面の露出面積を最小限としている。そのため、角折れやジャム等の記録用紙がノズル面に接触しないように保護され、ノズル面の損傷が防止される(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2004−284255号公報
【0013】
さらにまた、ロール紙の幅方向両縁部を吸引する2つの吸引孔列を配設し、紙送り及び印画に支障を生ずることなく、ロール紙の幅方向の両縁部の浮き上がりを防止する技術が知られている。そして、幅の異なる複数種のロール紙に対しては、吸着に寄与しない吸引孔からのエアーのリークを防止する閉塞板を設けるようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献3】特許第3951661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ユニット本体の底面(インク吐出面)にガイドボールが支持されているため、底面が面一にならず、クリーニング等のメンテナンス性が損なわれるという問題がある。特に、ラインヘッドを備えるライン方式のインクジェットプリンタの場合には、ヘッドを移動させて印画を行うシリアル方式に比べ、底面が広大になる。そのため、ガイドボールを多くしなければ、ヘッドギャップを所定の距離に保つことができない。すると、底面の凹凸もガイドボールの数だけ増え、メンテナンス性が大きく損なわれてしまう。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術では、ノズルカバーの開口部に架け渡される桟により、段差が形成される。そのため、特許文献1の技術と同様に、クリーニング等のメンテナンス性が問題となり、特に、ライン方式のインクジェットプリンタの場合には、メンテナンス性が大きく損なわれる。
【0016】
さらにまた、特許文献3に記載の技術では、記録用紙の浮き上がりを防止するために、吸引ファンが必要になる。しかも、エアーの供給やリークの防止等のために装置が大型化してしまう。特に、ライン方式のインクジェットプリンタの場合には、吸引孔を長く設置する必要が生じ、装置が複雑化する。
【0017】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、吐出対象物(例えば、記録用紙)が液体吐出面に接触しないようにすることである。また、ライン方式のインクジェットプリンタに適用した場合であっても、メンテナンス性に悪影響を及ぼさず、装置の大型化や複雑化を回避できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、液体を吐出するための複数のノズルと、各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの液体吐出面側に前記液体吐出ヘッドから独立して配置され、液体の吐出対象となる吐出対象物が前記液体吐出面に平行な方向に移動する際のガイドとなるガイド部材とを備え、前記ガイド部材は、吐出対象物が前記液体吐出面に接触しないように、前記液体吐出面から吐出対象物を離間させるための突起部と、前記ノズル列と対向する部分に形成された開口部とを有する液体吐出装置である。
【0019】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、吐出対象物が液体吐出面に平行な方向に移動する際のガイドとなるガイド部材を備えている。そして、ガイド部材は、吐出対象物が液体吐出面に接触しないように、液体吐出面から吐出対象物を離間させるための突起部を有している。そのため、吐出対象物がカールの付いたロール紙であっても、液体吐出面に接触することはない。
【0020】
また、ガイド部材は、ノズル列と対向する部分に開口部が形成されているので、ガイド部材が液体の吐出の支障になることはない。さらにまた、ガイド部材は、液体吐出ヘッドから独立して配置されているので、ガイド部材が液体吐出面の平面性に悪影響を及ぼすことがない。
【発明の効果】
【0021】
上記の発明によれば、ガイド部材により、吐出対象物がカールの付いたロール紙であっても、液体吐出面に接触することが防止される。そのため、装置の大型化や複雑化を回避しつつ、画質の低下、レジずれ、ジャム等の発生を防止できる。また、ガイド部材が液体吐出面の平面性に悪影響を及ぼさないので、ライン方式のインクジェットプリンタに適用した場合であっても、メンテナンス性が損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、本発明の液体吐出装置として、吐出する液体がインクであるインクジェットプリンタ10を例に挙げて説明する。そして、このインクジェットプリンタ10は、印画幅分(例えば、A4サイズ)のラインヘッド20(本発明における液体吐出ヘッドに相当するもの)を備えるライン方式のものであり、フルカラー対応となっている。また、記録用紙11(本発明における吐出対象物に相当するもの)として、ロール紙が使用されるものとする。
【0023】
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の全体構成を示す模式図であり、印画時の状態を示すものである。
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、ロール紙である記録用紙11に対して印画を行うものである。そして、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11を給紙する給紙ローラ12と、給紙された記録用紙11を略水平に支持する印画テーブル13と、印画が行われた記録用紙11を送り出す排紙ローラ14とを備えている。なお、排紙ローラ14によって送り出された記録用紙11(ロール紙)は、所定のサイズにカットされた後、ペーパトレイ(図示せず)に排紙される。
【0024】
また、インクジェットプリンタ10は、印画テーブル13上の記録用紙11に対し、インク吐出面21(本発明における液体吐出面に相当するもの)からインクを吐出して画像を形成するラインヘッド20を備えている。そして、ラインヘッド20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクを吐出する4つのヘッドモジュール30によって構成されている。
【0025】
ここで、印画テーブル13と対向するように、ガイドパネル40(本発明におけるガイド部材に相当するもの)が設けられている。このガイドパネル40は、記録用紙11がインク吐出面21に平行な方向に移動する際のガイドとなるものである。そのため、記録用紙11は、ガイドパネル40によってガイドされながら印画テーブル13上を移動することとなる。
【0026】
さらにまた、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のインク吐出面21を保護するためのヘッドキャップユニット50を備えている。このヘッドキャップユニット50は、インク吐出面21を全体的に覆い、インク吐出面21の乾燥や目詰まりを防ぐように保護するものである。そして、キャップベース51と、4つのバネ52と、4つのヘッドモジュール30に対応する4つのヘッドキャップ53(本発明におけるキャップ部材に相当するもの)とを有している。すなわち、各ヘッドキャップ53は、各バネ52により、それぞれ独立してキャップベース51に弾性的に支持されるようになっている。
【0027】
さらに、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20を図1に示す垂直方向の矢印のように昇降させる昇降手段と、ヘッドキャップユニット50を図1に示す水平方向の矢印のように移動させる移動手段とを有している。この昇降手段及び移動手段は、例えば、駆動回転されるギヤ、ベルト、カム、ピストン、又はこれらの組合せ等によって構成される。
【0028】
したがって、ラインヘッド20は、昇降手段により、インク吐出面21が印画テーブル13の直上まで下降して記録用紙11に画像を形成する印画位置(図1に示す位置)と、上昇させてインク吐出面21をヘッドキャップユニット50で保護できるようにする上昇位置との間を昇降する。なお、印画位置では、インク吐出面21がガイドパネル40に挿入された状態となるので、ガイドパネル40がインクを吐出する際の支障になることはない。
【0029】
また、ヘッドキャップユニット50は、ラインヘッド20が上昇位置にあるときに、移動手段によって移動する。すなわち、インク吐出面21から離間することによって各ヘッドモジュール30を開放する退避位置(図1に示す位置)と、インク吐出面21の直下のキャッピング位置との間を変位する。そのため、印画が行われない待機中は、ヘッドキャップユニット50がインク吐出面21の直下に移動し、各ヘッドキャップ53がインク吐出面21に当接することにより、各ヘッドモジュール30を閉鎖する。一方、印画の際には、退避位置に移動して各ヘッドモジュール30を開放し、インク吐出面21を露出させる。なお、ガイドパネル40は、ラインヘッド20から独立して配置されているので、ヘッドキャップユニット50のキャッピング位置では、上昇位置にあるラインヘッド20とガイドパネル40との間にヘッドキャップユニット50が位置することとなる。
【0030】
図2は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の主要部分を示す斜視図であり、インク吐出面21側から見た図である。
また、図3は、図2に示すインクジェットプリンタ10のヘッドモジュール30とガイドパネル40とを拡大して示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、ラインヘッド20は、複数の直線状のヘッドモジュール30から構成されている。そして、このヘッドモジュール30の長手方向で、印画可能な最大サイズの記録用紙の用紙幅(例えば、A4の横幅)の長さをカバーして1色を印画するようになっている。
【0031】
また、ヘッドモジュール30は、長手方向(用紙幅方向)と平行に4ライン設けられている。すなわち、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクを吐出する4ラインのヘッドモジュール30が整列して配置されている。そして、この4ラインによってフルカラー画像を形成する。
【0032】
さらにまた、各ヘッドモジュール30は、それぞれ複数のヘッドチップ31を備えている。すなわち、各ヘッドモジュール30には、ヘッドチップ31が千鳥状に、4個×2列で合計8個配置されている。そして、各ヘッドチップ31には、インクを吐出するノズル32(図3参照)が一方向に配列され、ノズル列32a(図3参照)を構成している。そのため、ノズル列32aは、各ヘッドモジュール30について千鳥状の2列に並列しているだけでなく、ラインヘッド20の全体として、8列に並列した配置となっている。なお、ノズル32の相互の間隔は、千鳥状に隣接する部分を含めて、すべて等間隔となっている。
【0033】
このような各ヘッドモジュール30は、印画時において、ガイドパネル40に挿入された状態となる。すなわち、図3に示すように、ヘッドモジュール30は、島状に突出する吐出ブロック33を有しており、ノズル列32aが形成されたヘッドチップ31は、この吐出ブロック33の先端面に設けられている。そして、この先端面がインク吐出面21となっている。
【0034】
一方、ガイドパネル40は、傾斜面41aが形成されたガイドリブ41と、開口部42とを有する枠体である。そして、ノズル列32aのある吐出ブロック33と開口部42とが対応している。すなわち、開口部42は、ノズル列32aと対向する部分に形成され、吐出ブロック33を挿通可能なものであり、吐出ブロック33に合わせるようにして、千鳥状に配置されている。
【0035】
ここで、ラインヘッド20が印画位置(図1に示す位置)にあるときは、ヘッドモジュール30の吐出ブロック33がガイドパネル40の開口部42に挿入され、ノズル列32aが開口部42内に位置する。そのため、ノズル列32aが形成されたヘッドチップ31は、図2に示すように、ガイドパネル40から島状に露出する状態となる。このヘッドチップ31の露出状態は、開口部42(図3参照)との相互関係によるものだが、島状に露出させることにより、インク吐出面21に付着したインクミストやインク溜まりが隣接するヘッドチップ31のノズル列32a(図3参照)に浸入し、混色が生じることを防止できる。
【0036】
また、ガイドリブ41は、各ヘッドチップ31の周囲に配置された状態となる。そして、ヘッドチップ31の表面であるインク吐出面21は、各ヘッドモジュール30がガイドパネル40に挿入された印画位置(図1に示す位置)であっても、ガイドリブ41よりも引っ込んでいる。そのため、各ヘッドチップ31の周囲では、ガイドリブ41が規則的に突出することとなる。
【0037】
図4及び図5は、本実施形態のインクジェットプリンタ10による印画時の状態を示す模式図である。なお、図4は、ロール紙である記録用紙11の先端が上に反っている場合を示し、図5は、ロール紙である記録用紙11の中間部がカールによって浮き上がっている場合を示している。
【0038】
図4及び図5に示すように、ガイドパネル40は、印画テーブル13と対向するように配置されている。すなわち、ガイドパネル40のガイドリブ41と印画テーブル13との間に記録用紙11の搬送経路が形成されるように、ガイドパネル40が固定的に配置されており、印画テーブル13に向かってガイドリブ41が突出している。
【0039】
また、ガイドパネル40は、ラインヘッド20のインク吐出面21側にラインヘッド20から独立して配置されている。そして、ラインヘッド20が下降し、記録用紙11に画像を形成する印画位置(図4及び図5に示す位置)では、開口部42にヘッドモジュール30が挿入された状態となり、インク吐出面21が印画テーブル13側に露出する。なお、インク吐出面21は、ガイドリブ41よりも突出せず、記録用紙11の直上となるように位置決めされる。
【0040】
ここで、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11は、給紙ローラ12によって印画テーブル13上に給紙され、略水平に支持される。また、ラインヘッド20の直下では、記録用紙11が停止することなく定速で搬送され、その搬送速度に同調するように各ヘッドモジュール30からインクを連続的に吐出し、印画を実行する。
【0041】
このような記録用紙11の印画時において、ガイドパネル40は、記録用紙11がインク吐出面21に平行な方向に移動する際のガイドとなる。そして、ガイドリブ41は、記録用紙11の搬送経路における記録用紙11とインク吐出面21との隙間を所定の範囲内に規制する。また、ガイドリブ41は、記録用紙11がインク吐出面21に接触しないように、インク吐出面21から記録用紙11を離間させるが、記録用紙11の移動につれてインク吐出面21からの離間間隔が大きくなるように記録用紙11をガイドするための傾斜面41aを有している。
【0042】
したがって、図4に示すように、カールで先端が上に反った記録用紙11が印画テーブル13に向けて給紙された場合には、上に反った先端が傾斜面41aに接触するようになる。そして、記録用紙11の移動につれて先端が傾斜面41aを滑り、ガイドリブ41と印画テーブル13との間の狭い搬送経路に導かれる。そのため、先端が上に反った記録用紙11が給紙されたとしても、インク吐出面21の直下では、インクの吐出に適正なヘッドギャップが維持され、記録用紙11に正確な位置や大きさでインクを着弾させることができる。
【0043】
また、すべてのガイドリブ41において、記録用紙11の搬送方向の手前側に緩やかな傾斜面41aが形成されているので、各ヘッドモジュール30に対する記録用紙11の先端の引っかかりが防止される。その結果、記録用紙11のジャムや汚損、インク吐出面21の損傷等を防止することが可能となる。なお、万一ジャムが生じたとしても、ガイドリブ41によってインク吐出面21が保護されるので、インク吐出面21の損傷が防止される。
【0044】
一方、図5に示すように、記録用紙11の中間部がカールによって浮き上がった状態で給紙された場合であっても、ガイドリブ41によって浮き上がり量を所定の範囲内に規制できる。そのため、記録用紙11の浮き上がりが低減され、記録用紙11が略平面の状態になって搬送される。その結果、少なくともガイドリブ41の頂部(平坦部)からインク吐出面21までの最低限のヘッドギャップが維持されるので、記録用紙11に正確な位置や大きさでインクを着弾させることができる。
【0045】
また、すべてのガイドリブ41において、記録用紙11の搬送方向の手前側に緩やかな傾斜面41aが形成されているので、記録用紙11の浮き上がりが円滑に低減される。そのため、記録用紙11の定速での搬送が維持され、記録用紙11の汚損等のトラブルも防止できる。なお、カールのない理想的な記録用紙11であれば、それが浮き上がることもないので、ガイドパネル40が機能することはない(機能させる必要もない)。
【0046】
図6は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の全体構成を示す模式図であり、キャッピング時の状態を示すものである。
図6に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、待機中にラインヘッド20を上昇位置に移動させ、ヘッドキャップユニット50によってインク吐出面21をキャッピングできるようになっている。
【0047】
このヘッドキャップユニット50は、通常はラインヘッド20から離れた退避位置(図1参照)にあり、ラインヘッド20の昇降移動と排他的な関係を有して水平移動するようになっている。また、ラインヘッド20は、ガイドパネル40と独立しており、ラインヘッド20だけが昇降する。そのため、ラインヘッド20が上昇し、ノズル列32a(図3参照)が開口部42外に変位すると、ガイドパネル40の上方に空間が生じる。すると、それまで退避位置(図1参照)にあったヘッドキャップユニット50がラインヘッド20とガイドパネル40との間の空間に移動する。そして、各ヘッドモジュール30と各ヘッドキャップ53とが対向するようになる。
【0048】
各ヘッドキャップ53は、軟質のゴム材から形成されており、特に、先端の外周縁部は、薄いリップ状に形成されている。そして、各ヘッドモジュール30の吐出ブロック33(図3参照)に合わせて千鳥状に配置されている。また、各ヘッドモジュール30のインク吐出面21は、ガイドパネル40と離れ、平面となって露出する。そのため、ヘッドキャップ53がインク吐出面21に当接することにより、シール性が確保された状態で、ノズル列32a(図3参照)の周囲を閉鎖できる。すなわち、ラインヘッド20が上昇してガイドパネル40から離れると、ノズル列32a(図3参照)のあるインク吐出面21が開口部42外に変位するので、キャッピングの際に、ガイドリブ41が障害となることなく、シール性を保つことができる。
【0049】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ヘッドキャップ53をインク吐出面21に当接させることによってキャッピングするが、ガイドパネル40がキャッピングの際の支障になることはない。また、ガイドパネル40は、インク吐出面21のクリーニングに際しても、悪影響を及ぼさない。
【0050】
図7は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の全体構成を示す模式図であり、クリーニング時の状態を示すものである。
図7に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、待機中にラインヘッド20を上昇位置に移動させ、クリーニングユニット60によってインク吐出面21をクリーニングできるようになっている。
【0051】
このクリーニングユニット60は、通常はラインヘッド20から離れた退避位置にあり、ラインヘッド20の昇降移動と排他的な関係を有して水平移動する。そのため、ラインヘッド20が上昇し、ノズル列32a(図3参照)が開口部42外に変位すると、それまで退避位置にあったクリーニングユニット60がラインヘッド20とガイドパネル40との間の空間に入る。
【0052】
ここで、クリーニングユニット60は、軟質のゴム材から形成されたブレード61(本発明におけるクリーニング部材に相当するもの)を備えている。そのため、クリーニングユニット60がラインヘッド20の下方の空間に入るように水平移動すると、ブレード61がインク吐出面21に当接しながら移動することとなる。そして、インク吐出面21は、ガイドパネル40と離れ、平面となって露出しているので、ガイドリブ41が障害となることなく、インク吐出面21をクリーニングできる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ10によれば、ガイドパネル40により、記録用紙11がロール紙であることと等によってカールが発生していても、その浮き上がりを低減し、適切なヘッドギャップを維持しながら記録用紙11をガイドすることが可能となる。そのため、記録用紙11がインク吐出面21に接触することに起因する記録用紙11のジャムや汚損、インク吐出面21の損傷等を防止することが可能となる。
【0054】
また、給紙された記録用紙11に対し、正確な位置や大きさでインクを着弾させることができるので、高画質の印画結果が得られる。さらにまた、キャッピングやクリーニング等のメンテナンス動作に応じて、ラインヘッド20(ヘッドモジュール30)がガイドパネル40から離れるので、ガイドパネル40がメンテナンス動作の障害となることがない。すなわち、記録用紙11のガイド機能と、インク吐出面21のメンテナンス機能とを両立させることが可能となっている。
【0055】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。すなわち、
(1)本実施形態は、ラインヘッド20を備えるライン方式のインクジェットプリンタ10としているが、これに限らず、ヘッドを記録用紙の幅方向に移動させて印画を行うシリアル方式のプリンタにも適用できる。また、プリンタの他、複写機、ファクシミリ等にも適用できる。なお、シリアル方式のプリンタの場合には、ガイド部材もヘッドと一緒に移動させる。
【0056】
(2)本実施形態では、インク吐出面21のメンテナンスとして、キャッピング動作又はクリーニング動作を行なっているが、インクの吸引等による吐出回復動作を行なうこともできる。そして、インクの吸引等に際しても、ガイドパネル40が障害となることはない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタの全体構成を示す模式図であり、印画時の状態を示すものである。
【図2】本実施形態のインクジェットプリンタの主要部分を示す斜視図であり、インク吐出面側から見た図である。
【図3】図2に示すインクジェットプリンタのヘッドモジュールとガイドパネルとを拡大して示す斜視図である。
【図4】本実施形態のインクジェットプリンタによる印画時の状態を示す模式図であり、記録用紙の先端が上に反っている場合を示している。
【図5】本実施形態のインクジェットプリンタによる印画時の状態を示す模式図であり、記録用紙の中間部がカールによって浮き上がっている場合を示している。
【図6】本実施形態のインクジェットプリンタの全体構成を示す模式図であり、キャッピング時の状態を示すものである。
【図7】本実施形態のインクジェットプリンタの全体構成を示す模式図であり、クリーニング時の状態を示すものである。
【図8】従来のインクジェットプリンタによる印画時の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
10 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
11 記録用紙(吐出対象物)
20 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
21 インク吐出面(液体吐出面)
32 ノズル
32a ノズル列
40 ガイドパネル(ガイド部材)
41 ガイドリブ(突起部)
41a 傾斜面
42 開口部
53 ヘッドキャップ(キャップ部材)
61 ブレード(クリーニング部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルと、
各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの液体吐出面側に前記液体吐出ヘッドから独立して配置され、液体の吐出対象となる吐出対象物が前記液体吐出面に平行な方向に移動する際のガイドとなるガイド部材と
を備え、
前記ガイド部材は、
吐出対象物が前記液体吐出面に接触しないように、前記液体吐出面から吐出対象物を離間させるための突起部と、
前記ノズル列と対向する部分に形成された開口部と
を有する液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記突起部は、吐出対象物の移動につれて前記液体吐出面からの離間間隔が大きくなるように吐出対象物をガイドするための傾斜面を有する
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル列が前記開口部内にある位置と前記開口部外にある位置との間で変位可能であり、
前記ノズル列が前記開口部外にあるときに、前記液体吐出面に当接することによって前記ノズル列の周囲を閉鎖可能であり、前記液体吐出面から離間することによって前記ノズル列を開放可能なキャップ部材を備える
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル列が前記開口部内にある位置と前記開口部外にある位置との間で変位可能であり、
前記ノズル列が前記開口部外にあるときに、前記液体吐出面に当接しながら移動することによって前記液体吐出面をクリーニング可能なクリーニング部材を備える
液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−285981(P2009−285981A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140766(P2008−140766)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】