説明

液体吐出装置

【課題】液滴による機内汚れを好適に低減することができる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】吐出ヘッド3と対向する位置において用紙を支持するためのプラテン部11は、導電性の吸収体21a,21bを備えている。そして、吸収体21aは正極性電位(+)、吸収体21bは負極性電位(−)、吐出ヘッド3のノズル面3aはアース電位(GND)となっている。用紙2の縁からはみ出して吐出されたインク滴25a,25bは、吸収体21aと吸収体21bの境界26の上方に形成される電界(湾曲電界)により、その帯電極性に関わらず捕集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、ディスプレー製造装置、電極形成装置、あるいは、バイオチップ製造装置など、液体を吐出して描画等を行う液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出装置として、紙への印刷に適したインクジェットプリンタ等が知られており、一般的には、一定方向に往復動するキャリッジに、液体(インク)を微小なノズルから吐出する吐出ヘッドを搭載した構成である。そして、用紙を一方向に送ると共に、用紙の送り方向に垂直に吐出ヘッドを往復動(走査)させ、用紙上にインク滴を吐出して画像を形成するものである。
【0003】
インクジェットプリンタから吐出されるインク滴は近年その微小化が進んでおり、このような微小化されたインク滴は、空気抵抗の影響を受けて速度を失い、浮遊化した状態(ミスト)になりやすい。そして、発生したミストは、キャリッジの移動によって発生する気流に乗って機内中に広がり、いわゆる機内汚れという問題を引き起こす原因となる。
【0004】
また、近年では、用紙の外縁部に余白を設けずに印刷をするいわゆる縁なし印刷を行うインクジェットプリンタも出現し(例えば、特許文献1)、上述したミストの発生がより顕著になっている。すなわち、縁なし印刷において用紙の外縁にはみ出して吐出されるインク滴は、用紙の裏面側に配設された吸収体(スポンジ等)で受けるようになっているが、吸収体面までの到達距離の長さに起因してミスト化しやすくなっている。
【0005】
このような課題に鑑みて、静電力の作用でミストの発生を抑えるようにしたインクジェットプリンタが提案されている(例えば、特許文献2)。すなわち、このプリンタにおいては、ノズル開口の形成面(ノズル面)と吸収体面との間に電界を発生させることにより、インク滴を帯電させると共に当該インク滴に静電力を作用させ、インク滴の強制的な誘引を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−103586号公報
【特許文献2】特開2004−216887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ノズルから吐出されるインク滴は、その吐出制御方法によっては、飛翔過程において先導部(メイン滴)と後続部(サテライト滴)とに分裂することがある。そして、このような場合において上述のような電界を発生させた場合には、メイン滴とサテライト滴とが逆極性に帯電されるという知見が本願発明者らによって得られている。これにより、メイン滴には吸収体方向へ向かう加速力が働く反面、サテライト滴にはそれとは逆の減速力が作用することになり、結果として、サテライト滴のミスト化を招いてしまうという問題がある。
【0008】
ところで、特許文献2には、ノズル面と吸収体面との間に発生させる電界の向きを周期的に切り替えるようにした変形例についても開示がなされている。この場合、電界の向きを反転させることで、既にミスト化したサテライト滴の誘引効果を期待できなくもない。
【0009】
しかしながら当該変形例は、サテライト滴の回収を効果的に行うための積極的な手段をなんら示すものではない。とりわけ、ミスト化したサテライト滴が、電界の反転を待たずして吐出ヘッドの走査後方に生じる気流(上昇気流)に巻き込まれ、機内中に拡散、付着してしまうのを抑えることはできない。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、液滴による機内汚れを好適に低減することができる液体吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、液体を吐出するノズルを一面に有し、当該一面が電極として機能する吐出ヘッドと、前記一面の対向領域に位置する第1対向電極部および第2対向電極部と、前記一面と前記第1対向電極部および第2対向電極部との間に電圧を与える電圧付与手段と、を備え、前記第1対向電極部と前記第2対向電極部とは、互いに隣接すると共に、その前記一面の電位に対する電位極性が互いに逆とされることを特徴とする。
【0012】
この発明の液体吐出装置によれば、吐出ヘッドの一面(ノズル形成面)が第1および第2対向電極部の境界領域付近に移動してきたときに、当該一面と両対向電極部との間隙空間において、一方の対向電極部から他方の対向電極部に向かう電界が形成される。この電界により、当該間隙空間における液滴はその帯電の極性に関わらず誘引され、その機内拡散が好適に抑制される。
【0013】
また好ましくは、前記液体吐出装置において、前記第1対向電極部と前記第2対向電極部との境界が、吐出対象領域の外縁に臨んで形成されることを特徴とする。
この発明の液体吐出装置によれば、いわゆる縁無し印刷時において、吐出対象物の縁からはみ出して吐出される液滴をタイムリーに誘引して、当該液滴の機内拡散を好適に抑えることができる。
【0014】
また好ましくは、前記第1対向電極部が前記吐出対象領域の内側領域に、前記第2対向電極部が前記吐出対象領域の外側領域に形成される前記液体吐出装置において、前記一面の電位に対する前記第1対向電極部の電位極性が、吐出対象物の帯電極性と同じ極性とされることを特徴とする。
吐出対象物は、搬送過程における摩擦帯電により帯電することがあり、この場合、吐出対象物と吐出ヘッドの一面との間において電界が形成される。この発明の液体吐出装置によれば、当該電界と電圧付与手段により形成される電界とが順方向で重なるようになるため、液滴の誘引効率を高めることができる。
【0015】
また好ましくは、前記液体吐出装置において、前記第1対向電極部および前記第2対向電極部の形成領域が可変となるように構成されていることを特徴とする。
この発明の液体吐出装置によれば、吐出対象物のサイズ等の印刷条件に応じて第1および第2対向電極部の形成領域を変化させることで、液滴を効果的に誘引することができる。
【0016】
また好ましくは、前記一面の対向領域に複数のサブ電極部を備え、一ないし複数の当該サブ電極部で前記第1対向電極部および前記第2対向電極部が構成される前記液体吐出装置において、前記電圧付与手段は、少なくとも一部の前記サブ電極部について、前記一面の電位に対する電位極性の切り替えを行うことを特徴とする。
この発明の液体吐出装置によれば、第1対向電極部および第2対向電極部の形成領域を、簡易な構成で可変させることができる。
【0017】
また好ましくは、予備吐出される液体を受けるための予備吐出受容領域を前記一面の対向領域に備える前記液体吐出装置において、前記第1対向電極部と前記第2対向電極部との境界が、前記予備吐出受容部の外縁に臨んで形成されることを特徴とする。
この発明の液体吐出装置によれば、予備吐出される液体を、その帯電の極性に関わらず共に誘引することができる。
【0018】
また好ましくは、前記液体吐出装置において、前記第1ないし第2対向電極部に近接して、または前記第1ないし第2対向電極部と一体として配設される吸収体を備えることを特徴とする。
この発明の液体吐出装置によれば、誘引した液滴を吸収体内に収容して、これを保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】液体吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】プラテン部の平面構造を示す概略図。
【図3】プラテン部の側断面構造およびプラテン部周辺の電気的構成を示す図。
【図4】(a)、(b)は、吐出動作中におけるプラテン部近傍の電界を示す側断面図。
【図5】変形例1に係るプラテン部の平面構造を示す概略図。
【図6】変形例2に係るプラテン部の断面構造およびプラテン部の電気的構成を示す図。
【図7】(a)〜(c)は、変形例2に係る吸収体の電位構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0021】
まず、図1を参照して液体吐出装置の全体構成について説明する。
図1は、液体吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【0022】
図1において、液体吐出装置としてのプリンタ1は、吐出対象物としての用紙2に液体としてのインクを吐出して画像等の描画(印刷)を行う装置である。このプリンタ1は、スチール板等で形成されたフレーム基体6と、インク滴を吐出する吐出ヘッド3と、吐出ヘッド3を搭載するキャリッジ4と、キャリッジ4を一定の方向に往復動(走査)させるための走査機構5と、用紙2を搬送するための搬送ローラ14と、吐出ヘッド3のメンテナンスを行うメンテナンスユニット16と、を備えている。ここで、フレーム基体6は、その剛性と重量によって装置全体の土台をなすと共に、電気的なアースとしての機能も果たしている。
【0023】
吐出ヘッド3から吐出するインクには、例えば、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のものが用いられ、それぞれキャリッジ4上に搭載されたインクカートリッジ7a〜7d内に収容されている。このインクカートリッジ7a〜7dの底部にはインクを導出する導出部(図示せず)が設けられており、吐出ヘッド3に設けられたインク導入部(図示せず)と結合して、吐出ヘッド3にインクを供給するようになっている。
【0024】
走査機構5は、駆動力を発生するモータ(図示せず)と、キャリッジ4に当該駆動力を伝達する駆動ベルト8と、キャリッジ4を支持すると共にその移動方向を規定するガイドロッド10とを備えている。かくして、キャリッジ4に搭載された吐出ヘッド3は、ガイドロッド10の伸長方向(X軸方向)に沿って用紙2上を往復動(走査)する。
【0025】
用紙2は、フレーム基体6の裏側に設けられている図示しない用紙トレーにストックされており、図示しない給紙機構によって1枚ずつ搬送ローラ14の方へ移送(給紙)される。搬送ローラ14は、搬送モータ15の駆動によって回転し、走査方向に直交する方向(Y軸方向)に用紙2を搬送する。
【0026】
吐出ヘッド3のノズル面3aと対向する位置には、用紙2を裏面2b側から支持するためのプラテン部11が設けられている。プラテン部11の構造については後で詳しく説明する。
【0027】
吐出ヘッド3は、所定の配列でノズルが形成された一面であるノズル面3aを用紙2の表面2aに対向させるように、キャリッジ4に搭載されている。吐出ヘッド3は、キャリッジ4の走査と同期したノズル毎の吐出制御により、ノズルからインク(インク滴)を吐出する。尚、吐出ヘッド3のノズル面3aは、SUS等の導電性部材により形成されており、電界発生(詳細については後述する)のための電極としての機能も果たすようにもなっている。
【0028】
メンテナンスユニット16は、ノズル面3aの一定領域を囲んで封止可能なキャップ部材17を備えている。キャップ部材17は、ノズル面3aを覆うことでノズルを粉塵や乾燥などから保護する役割を果たすほか、ノズル面3aを覆ったまま底面の連通口と接続された吸引ポンプを作動させて、ノズルからインクを吸引する(吸引動作)際にも用いられる。
【0029】
メンテナンスユニット16はまた、ゴム等で形成された板状部材であるワイパブレード18を有している。ワイパブレード18は、吸引動作後において、ノズル面3aに付着したインク等を払拭するのに用いられる。
【0030】
次に、図2、図3を参照して、プラテン部の周辺構成について説明する。
図2は、プラテン部の平面構造を示す概略図である。図3は、プラテン部の側断面構造およびプラテン部周辺の電気的構成を示す図である。
【0031】
図2、図3に示すように、プラテン部11は、ノズル面3aと対向する側に開口を有する箱型のケース20と、ケース20に形成された複数の凹部内にそれぞれ収容された吸収体21a,21b,21c(便宜上、網掛けで図示)とを備えている。また、吸収体21aの露出面上には、用紙2に当接してこれを支持するための支持部材22が設けられている。
【0032】
吸収体21a〜21cには、ポリエチレンやポリウレタンにカーボン等の導電性材料を混入させて発泡形成し、導電性を付与したものが用いられている。これにより、吸収体21a〜21cは、それぞれインクを吸収する機能を有すると共に、ノズル面3aに対向する電極としての機能も有するようになっている。
【0033】
吸収体21a〜21cを収容するケース20は、絶縁性を有する材料、例えば樹脂等で形成されており、各吸収体21a〜21c間をそれぞれ空間的に仕切ると共に、電気的に絶縁するようになっている。これにより、吸収体21a〜21cの露出面にインクが付着した場合において、各吸収体21a〜21c間で電気的な短絡が起きないようになっている。
【0034】
いわゆる縁なし印刷は、図示するように、吐出対象領域23を用紙2の外側に拡張させた状態で行われる。用紙2の縁からはみ出して吐出されたインク滴は、用紙2の裏面側に位置する吸収体21a,21b内に収容されるようになっているため、用紙2の支持面を汚すことがない。
【0035】
プラテン部11における吐出対象領域23の脇には、予備吐出に係るインク滴を受けるための予備吐出受容領域24が設けられている。予備吐出とは、ノズル内において乾燥したインクを排出する目的で用紙2以外の領域に対して行われる吐出のことであり、例えば、印刷動作中に定期的に行われる。予備吐出されたインク滴は、吸収体21b,21c内に収容されるようになっている。
【0036】
プリンタ1は、接地電位(GND)を基準として、正極性電位(+)を出力する高電圧生成回路30と、負極性電位(−)を出力する電位反転回路31とを備えている。そして、ノズル面3aが接地電位(GND)、吸収体21a,21cが正極性電位(+)、吸収体21bが負極性電位(−)とされている。
【0037】
このように、高電圧生成回路30および電位反転回路31は、本発明における電圧付与手段を構成している。また、吸収体21a,21cは、本発明における第1対向電極部を、吸収体21bは、本発明における第2対向電極部を構成している。
【0038】
図示するように、第1対向電極部を構成する吸収体21aおよび21cは、それぞれ、吐出対象領域23の内側領域、予備吐出受容領域24の内側領域に位置するように配設されている。そして、第2対向電極部を構成する吸収体21bは、吐出対象領域23および予備吐出受容領域24の外周を囲うように、吸収体21a,21cと隣接して配設されている。
【0039】
上述の構成により、ノズル面3aとプラテン部11との間の空間には、吐出ヘッド3の走査位置に応じて電界が形成される。そしてこの電界により、ノズルから吐出されるインク滴には、静電力が作用するようになっている。
【0040】
次に、図4を参照して、インク滴に作用する静電力について説明する。
図4は、吐出動作中におけるプラテン部近傍の電界を示す側断面図である。尚、図中の矢印は電気力線を示し、+、−の符号は、吸収体の電位極性およびインク滴の帯電極性を示している。
【0041】
図4(a)に示すように、吐出ヘッド3が吸収体21aの上方に位置する場合、吸収体21aとノズル面3aとの間には、用紙面に垂直な平行電界が形成される。また、吸収体21aと吸収体21bとの境界26には、この境界26を横断する強い平行電界が常に形成される。
【0042】
このような電界の下では、ノズル3bから吐出されるインク滴の先導部であるメイン滴25aは負極(−)に帯電し、インク滴の後続部であるサテライト滴25bは、正極(+)に帯電する。この結果、メイン滴25aには加速方向の静電力が働く。一方、サテライト滴25bには減速方向の静電力が作用するが、着弾までの距離が短いためミスト化(浮遊化)することはあまりない。
【0043】
図4(b)に示すように、吐出ヘッド3が境界26の上方に位置する場合、吸収体21aと吸収体21bとの間には、境界26を横断する平行電界に加え、湾曲した電気力線で表される電界(湾曲電界)が境界26の上方に形成される。これにより、メイン滴25aおよびサテライト滴25bは、当該湾曲電界により誘引され、その帯電極性に関わらず吸収体21aまたは吸収体21b内に収容されることになる。
【0044】
とりわけ、本実施形態にあっては、吸収体21aと吸収体21bの境界26は、吐出対象領域23(図2参照)の外縁に臨んで形成されるようになっている。このため、用紙2の縁からはみ出して吐出されたメイン滴25aおよびサテライト滴25bに対してタイムリーに上述のような静電力を作用させることができ、いわゆる縁無し印刷時のミストの発生を好適に抑制することができる。
【0045】
ところで、用紙2は、その搬送過程における摩擦帯電によって通常正極(+)に帯電される性質を持っており、このため、図示はしていないが、用紙2の帯電に依存して用紙2からノズル面3aに向かう電界が実際には形成されている。吸収体21aを正極性電位(+)に、吸収体21bを負極性電位(−)としたのは、このような用紙2の帯電に依存した電界との重なりを考慮したものであり、電界が順方向に重なるようにすることで、インク滴の誘引効率を高めるようにしたものである。
【0046】
図4(b)に示すような電界は、予備吐出の際に、吸収体21cと吸収体21bとの間においても形成される。これにより、予備吐出に係るインク滴のミスト化も好適に低減されるようになっている。尚、従来技術では、予備吐出に伴って発生したミストの巻き上げを抑えるために予備吐出後にウェイトを設け、ミストの沈静化を待ってから吐出ヘッドの走査を再開するようにしていたが、この実施形態においては、このようなウェイトを削減して動作の高速化を図ることも可能である。
【0047】
(変形例1)
次に、図5を参照して、本発明の変形例1について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。図5は、変形例1に係るプラテン部の平面構造を示す概略図である。
【0048】
図5に示すように、この変形例1におけるプラテン部11は、非導電性の吸収体27の露出面上に、所定のパターンで配置された導線28a,28b,28cを備えている。ここで、導線28a〜28cは、線状の導体(金属等)に短絡(ショート)および腐蝕を防止するための絶縁被膜を形成したものである。そして、導線28a,28cは高電圧生成回路30(図3参照)の出力端子と、導線28bは電位反転回路31の出力端子(図3参照)と接続されている。
【0049】
かくして、導線28a,28cが第1対向電極部としての、導線28bが第2対向電極部としての役割を果たすようになっており、導線28aと導線28bとの境界域、および導線28bと導線28cとの境界域において、インク滴の誘引効果を発揮することができる。この変形例のように、本発明の第1対向電極部および第2対向電極部は、吸収体とは別の導体で部分的に形成することもできる。
【0050】
(変形例2)
次に、図6、図7を参照して、本発明の変形例2について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。図6は、変形例2に係るプラテン部の断面構造およびプラテン部の電気的構成を示す図である。図7は、変形例2に係る吸収体の電位構成の例を示す図である。
【0051】
図6に示すように、この変形例2におけるプラテン部11は、走査方向(X軸方向)に並べて配設された、導電性の吸収体29a,29b,29c,29d,29e,29f,29g,29hを備えている。そして、吸収体29aは高電圧生成回路30の出力端子と、吸収体29bは電位反転回路31の出力端子とそれぞれ接続されている。また、吸収体29c〜29hは、それぞれ、電圧付与手段を構成するスイッチ回路32の出力端子と接続されている。
【0052】
スイッチ回路32は、その入力端子が高電圧生成回路30および電位反転回路31の出力端子と接続されており、正極性電位(+)および負極性電位(−)の一方を選択して吸収体29c〜29hに与えるようになっている。この電位選択の制御は、電圧付与手段を構成する電位選択制御部33によって、対応する各吸収体29c〜29h毎に行われる。
【0053】
かくして、吸収体29a〜29hはサブ電極部としての機能を果たし、付与される電位極性の切り替えによって、本発明の第1対向電極部ないし第2対向電極部を領域可変に構成することになる。尚、吸収体29aおよび吸収体29bの電位極性は、本実施形態では固定されるようになっている。
【0054】
図7(a)〜(c)は、吸収体29a〜29fの電位構成の例を示しており、この例では、用紙2のサイズに応じて、その電位極性の選択が行われるようになっている。
【0055】
図7(a)のケースでは、吸収体29a,29c,29d,29eは正極性電位(+)、吸収体29b,29fは負極性電位(−)とされる。このとき、用紙2の縁からはみ出して吐出されたインク滴は、吸収体29aと吸収体29bとの境界域、および、吸収体29eと吸収体29fとの境界域に発生する湾曲電界によってそれぞれ捕集される。
【0056】
図7(b)のケースでは、吸収体29a,29c,29eは正極性電位(+)、吸収体29b,29d,29fは負極性電位(−)とされる。このとき、用紙2の縁からはみ出して吐出されたインク滴は、吸収体29aと吸収体29bとの境界域、および、吸収体29cと吸収体29dとの境界域に発生する湾曲電界によってそれぞれ捕集される。
【0057】
図7(c)のケースでは、吸収体29a,29d,29fは正極性電位(+)、吸収体29b,29c,29eは負極性電位(−)とされる。このとき、用紙2の縁からはみ出して吐出されたインク滴は、吸収体29aと吸収体29bとの境界域、および、吸収体29aと吸収体29cとの境界域に発生する湾曲電界によってそれぞれ捕集される。
【0058】
また、図7(b)や図7(c)のケースでは、吐出対象領域から離れた領域に位置する吸収体29dと吸収体29eとの境界域や、吸収体29eと吸収体29fとの境界域にも湾曲電界が形成される。このため、吐出対象領域においてインク滴を捕集しきれずにその一部がミスト化してしまった場合に、機内に浮遊するミストを吐出対象領域から離れた領域において効率的に捕集することが可能である。
【0059】
この変形例ように、第1対向電極部および第2対向電極部の形成領域が可変となるように構成された態様においては、吐出対象領域(用紙サイズの)の変化に応じて湾曲電界の発生領域を最適化することが可能であり、ミストによる機内汚れを効果的に低減することができるようになっている。
【0060】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、第1対向電極部を構成する吸収体21a,21cを負極性電位(−)に、第2対向電極部を構成する吸収体21bを正極性電位(+)にした態様であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…液体吐出装置としてのプリンタ、2…吐出対象物としての用紙、3…吐出ヘッド、3a…吐出ヘッドの一面としてのノズル面、3b…ノズル、4…キャリッジ、5…走査機構、6…フレーム基体、11…プラテン部、20…ケース、21a,21c…第1対向電極部を構成する吸収体、21b…第2対向電極部を構成する吸収体、22…支持部材、23…吐出対象領域、24…予備吐出受容領域、25a…液滴としてのメイン滴、25b…液滴としてのサテライト滴、26…境界、27…吸収体、28a,28c…第1対向電極部を構成する導線、28b…第2対向電極部を構成する導線、29a〜29h…サブ電極部としての吸収体、30…電圧付与手段を構成する高電圧生成回路、31…電圧付与手段を構成する電位反転回路、32…電圧付与手段を構成するスイッチ回路、33…電圧付与手段を構成する電位選択制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを一面に有し、当該一面が電極として機能する吐出ヘッドと、
前記一面の対向領域に位置する第1対向電極部および第2対向電極部と、
前記一面と前記第1対向電極部および第2対向電極部との間に電圧を与える電圧付与手段と、を備え、
前記第1対向電極部と前記第2対向電極部とは、互いに隣接すると共に、その前記一面の電位に対する電位極性が互いに逆とされることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1対向電極部と前記第2対向電極部との境界が、吐出対象領域の外縁に臨んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1対向電極部が前記吐出対象領域の内側領域に、前記第2対向電極部が前記吐出対象領域の外側領域に形成される請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記一面の電位に対する前記第1対向電極部の電位極性が、吐出対象物の帯電極性と同じ極性とされることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1対向電極部および前記第2対向電極部の形成領域が可変となるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記一面の対向領域に複数のサブ電極部を備え、一ないし複数の当該サブ電極部で前記第1対向電極部および前記第2対向電極部が構成される請求項4に記載の液体吐出装置であって、
前記電圧付与手段は、少なくとも一部の前記サブ電極部について、前記一面の電位に対する電位極性の切り替えを行うことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
予備吐出される液体を受けるための予備吐出受容領域を前記一面の対向領域に備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1対向電極部と前記第2対向電極部との境界が、前記予備吐出受容部の外縁に臨んで形成されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1ないし第2対向電極部に近接して、または前記第1ないし第2対向電極部と一体として配設される吸収体を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161923(P2011−161923A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63902(P2011−63902)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【分割の表示】特願2005−318026(P2005−318026)の分割
【原出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】