説明

液体吐出装置

【課題】ノズルの乾燥を防ぐための液体を供給する部分と液体吐出ヘッドが離れていても、液体を液体吐出ヘッドへ効率よく供給すること。
【解決手段】 液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
第1電源と、前記第1電源に電気的に接続される帯電部と、前記帯電部に液体を供給する液体供給部とを備え、前記第1電源により前記帯電部に第1電圧を印加して電界を発生させ、前記帯電部に供給される前記液体を前記電界によって霧状化させて帯電させる液体帯電手段と、
前記液体吐出ヘッドに電気的に接続される第2電源を有し、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに第2電圧を印加させることで、前記液滴帯電手段により帯電された前記液体と逆極性に前記液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、ノズルから用紙等の被吐出媒体にインクを吐出して画像などの印刷を行うプリンタが知られている。一般的なプリンタは、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドを備えており、ノズルから被吐出媒体にインクを吐出して印刷を行う。
【0003】
ところで、インクジェットヘッドのノズルは、例えば、印刷中にインクが吐出されない状態が続いた後でインクを吐出しようとすると、インクが吐出されないことがある。これは、インクが吐出されていない間に、ノズル内のインクが蒸発してインクの粘度が上昇したからである。そこで、ノズルからインクが蒸発するのを抑える為に、特許文献1のプリンタは、ノズル近傍に蒸気を供給する加湿装置を備え、ノズル近傍に蒸気を供給してノズルが乾燥しないように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−307865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のプリンタは、蒸気がノズル近傍に供給されやすいように、加湿装置がインクジェットヘッドに搭載されている。インクジェットヘッドは、加湿装置を搭載した分、従来よりも大型化してしまう。そこで、インクジェットヘッドが大型化するのを避ける為に、加湿装置をインクジェットヘッドに搭載せず、プリンタの本体筐体内に配置することが考えられる。しかし、加湿装置がプリンタの本体筐体内に配置されると、インクジェットヘッドに加湿装置を搭載した場合に比べて、加湿装置とインクジェットヘッドとが離れてしまい、蒸気がインクジェットヘッドに流れる途中で、プリンタ本体の筐体内に拡がってしまう虞がある。その為、蒸気がインクジェットヘッドへ効率よく供給されず、結果として、ノズルの乾燥を防ぐことができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ノズルの乾燥を防ぐ為の液体を供給する部分が液体吐出ヘッドから離れて配置されていても、液体を液体吐出ヘッドへ効率よく供給することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、第1電源と、前記第1電源に電気的に接続される帯電部と、前記帯電部に液体を供給する液体供給部とを備え、前記第1電源により前記帯電部に第1電圧を印加して電界を発生させ、前記帯電部に供給される前記液体を前記電界によって霧状化させて帯電させる液体帯電手段と、前記液体吐出ヘッドに電気的に接続される第2電源を有し、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに第2電圧を印加させることで、前記液滴帯電手段により帯電された前記液体と逆極性に前記液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、液体を帯電させる液体帯電手段と、液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段とを備え、液体帯電手段は、帯電部に液体が供給された状態で、帯電部に第1電圧を印加させることで、帯電部に供給された液体が電界の力によって霧状に変化する。液体は霧状の微粒子になると、液体の表面エネルギーが変化して、液体自身が帯電する。また、ヘッド帯電手段は、液滴帯電手段により帯電される液体と逆極性に液体吐出ヘッドを帯電させる。このように、帯電された液体と、帯電された液体吐出ヘッドとは極性が異なる為、両者の間にはクーロン力が発生する。このクーロン力により、液体帯電手段により帯電される液体は液体吐出ヘッドに引き寄せられる。このとき、帯電された液体は霧状である為、帯電された液体と液体吐出ヘッドとの間に発生するクーロン力により液体吐出ヘッドに引き寄せられ易い。従って、帯電された液体は、液体吐出装置内に拡がるのが抑えられ、さらに液体吐出ヘッドへ向かって移動し易くなる。その為、液体が液体吐出ヘッドへ効率よく供給され、ノズルの乾燥を効率よく防ぐことができる。
【0009】
第2の発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、第1電源と、前記第1電源に電気的に接続される帯電部と、前記帯電部の前記表面に結露により液体を発生させるように前記帯電部を冷却可能な冷却部とを備え、前記第1電源により前記帯電部に第1電圧を印加して電界を発生させ、前記表面の前記液体を前記電界によって霧状化させて帯電させる液体帯電手段と、前記液体吐出ヘッドに電気的に接続される第2電源を有し、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに第2電圧を印加させることで、前記液滴帯電手段により帯電された前記液体と逆極性に前記液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、液体を帯電させる液体帯電手段と、液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段とを備え、液体帯電手段は、帯電部の表面に結露により液体が発生した状態で、帯電部に第1電圧を印加させることで、帯電部の表面に付着する液体が、電界の力により霧状に変化する。液体は霧状の微粒子になると、液体の表面エネルギーが変化して、液体自身が帯電する。また、ヘッド帯電手段は、液滴帯電手段により帯電される液体と逆極性に液体吐出ヘッドを帯電させる。このように、帯電された液体と、帯電された液体吐出ヘッドとは極性が異なる為、両者の間にはクーロン力が発生する。このクーロン力により、液体帯電手段により帯電される液体は液体吐出ヘッドに引き寄せられる。このとき、帯電された液体は霧状である為、帯電された液体と液体吐出ヘッドとの間に発生するクーロン力により液体吐出ヘッドに引き寄せられ易い。従って、帯電された液体は、液体吐出装置内に拡がるのが抑えられ、さらに液体吐出ヘッドへ向かって移動し易くなる。その為、液体が液体吐出ヘッドへ効率よく供給され、ノズルの乾燥を効率よく防ぐことができる。
【0011】
第3の発明の液体吐出装置は、前記第1の発明において、前記液体供給部は、前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部を前記帯電部に接続する接続部とを備え、前記接続部は、多孔質状であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、接続部は多孔質状であり、毛管作用を発生する。その為、液体が接続部に入ると、毛管作用により液体が流動する。従って、液体貯留部から帯電部まで液体を供給するときに、液体を供給するための供給装置が必要ない。
【0013】
第4の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが形成された、金属製のノズルプレートを含んでおり、前記第2電源は、前記ノズルプレートに接続されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ノズルプレートは、第2電源により第2電圧が直接印加される為、帯電し易い。その為、液体帯電手段により帯電された液体は、ノズルプレートに引き寄せられる為、液体がノズルへ供給され易い。
【0015】
第5の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記帯電部は、前記液体吐出ヘッドの前記ノズルに対向するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、帯電部がノズルに対向するように構成されている為、帯電部により帯電された液体が、ノズルに近づき易い。
【0017】
第6の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第5のいずれかの発明において、前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液体を吐出するための吐出圧を付与する圧力付与手段を備え、前記圧力付与手段は、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに供給される電圧よりも大きい駆動電圧が印加されたときに駆動することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、液体吐出ヘッドを帯電させるときに、誤って液体吐出ヘッドが液体を吐出しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液体帯電手段が液体吐出ヘッドから離れていても、帯電された液体と液体吐出ヘッドとの間に発生するクーロン力により、液体が液体吐出ヘッドに引き寄せられる為、帯電された液体は、液体吐出装置内に拡がるのが抑えられ、さらに液体吐出ヘッドへ向かって移動し易くなる。その為、液体が液体吐出ヘッドへ効率よく供給され、ノズルの乾燥を効率よく防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンタ1の概略斜視図である。
【図2】インクジェットヘッド40の概略断面図である。
【図3】静電霧化装置20の概略側面図である。
【図4】プリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】インクジェットヘッド40、静電霧化装置20及びプラテン11の概略側面図である。
【図6】第1変更形態の静電霧化装置120の概略側面図である。
【図7】第2変更形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、液体吐出装置の一例であって、用紙にインクを吐出して所望の画像や文字を印刷するプリンタに、本発明を適用したものである。
【0022】
(プリンタの概略構成)
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す上面図である。なお、本明細書、図面における左右方向、及び、前後方向は、図1の矢印で示す左右方向、前後方向である。また、本明細書、図面における上下方向は、図1の左右方向及び前後方向に直交する方向である。
【0023】
図1に示すように、プリンタ1(本発明の液体吐出装置の一例)は、本体フレーム2と、本体フレーム2に取り付けられた、左右方向に延在するガイド軸3と、このガイド軸3に取り付けられたキャリッジ5と、キャリッジ5に担持されたインクジェットヘッド40(本発明の液体吐出ヘッドの一例)とを備える。
【0024】
本体フレーム2は、駆動モータ95(図4参照)が設置されており、この駆動モータ95の駆動軸には、駆動プーリ(図示省略)が取り付けられている。また、本体フレーム2には、従動プーリも設けられており、駆動プーリと従動プーリは無端ベルト(図示省略)を張架している。この無端ベルトは、キャリッジ5に連結されており、駆動モータ95の駆動により、駆動プーリと従動プーリの回転に追従して駆動走行する。これにより、キャリッジ5が左右方向に移動させられる。
【0025】
また、本体フレーム2には、用紙Pを前後方向に搬送する搬送ローラ10と、インクジェットヘッド40のノズル37(図2参照)が形成される下面と対向するプラテン11とが配置されている。搬送ローラ10は、給紙ローラ(図示省略)とともに前後方向においてインクジェットヘッド40を挟んで配置されている。プラテン11は、搬送される用紙Pの左右方向の幅よりも大きく、前後方向に並ぶ搬送ローラ10と給紙ローラ(図示省略)の間に配置されている。
【0026】
さらに、本体フレーム2には、キャップ7、ワイパ9、及び、ノズル37の乾燥を防ぐための静電霧化装置20が設置されている。キャップ7は、インクジェットヘッド40の下面と接離可能に構成されており、図示しない吸引ポンプと連通している。キャップ7がインクジェットヘッドの下面と接触して、下面との間に空間を画成した状態で、吸引ポンプが空間を減圧することで、ノズル37からインクが排出される(パージ動作)。このパージ動作は、ユーザが、プリンタ1のインターフェースやPCから指示したときや、制御装置75(図4参照)に内蔵されるタイマーにより計測される経過時間が所定時間を超えたときに、実行されるものである。
【0027】
次に、インクジェットヘッド40について図2を参照して説明する。インクジェットヘッド40は、ノズル37が形成された流路ユニット50と、圧電アクチュエータ70(本発明の圧力付与手段の一例)とにより構成されている。流路ユニット50は、ノズル37が形成されたノズルプレート51と、このノズルプレート51に積層されるマニホールドプレート52、ベースプレート53、及び、キャビティプレート54の4枚のプレートにより構成される。これら4枚のプレートのうち、マニホールドプレート52、ベースプレート53、及び、キャビティプレート54は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されており、ノズルプレート51は、絶縁材料(例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料)で形成されている。
【0028】
マニホールドプレート52は、図示しないインクカートリッジからインクジェットヘッド4に供給されるインクを貯留するマニホールド55と、ノズル37に連通する連通孔56が形成されている。ベースプレート53は、マニホールドプレート52に積層されたときに、マニホールド55と重なる連通孔57と、連通孔56に重なる連通孔58とが形成されている。キャビティプレート54は、ベースプレート53に積層されたときに、連通孔57、58に重なる圧力室59が形成されている。そして、ノズルプレート51、マニホールドプレート52、ベースプレート53、及び、キャビティプレート54が積層させて接合されると、マニホールド55から圧力室59を経由してノズル37に繋がるインク流路60が形成される。
【0029】
圧電アクチュエータ70は、流路ユニット50の圧力室59を覆うようにキャビティプレート54に接合される振動板71と、この振動板71に積層される共通電極72と、共通電極72に積層される圧電層73と、圧電層73に積層される個別電極74と、を備えている。共通電極72は、平面視で、キャビティプレート54に形成される圧力室59よりも大きく、キャビティプレート54に圧力室59が複数形成されている場合には、共通電極72は、平面視で、複数の圧力室59の全てと重なる大きさを有している。それに対し、個別電極74は複数形成されており、これら複数の個別電極74は、平面視で複数の圧力室59にそれぞれ重なって配置されている。圧電層73は、平面視で複数の圧力室59の全てと重なる大きさを有し、共通電極72と個別電極74とに挟まれている。圧電層73は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料により形成されており、共通電極72と個別電極74とが積層する上下方向に分極されている。
【0030】
共通電極72と個別電極74とは、図示しない接続端子をそれぞれ有しており、これらの接続端子には、配線基板(図示省略)が接続されている。そして、共通電極72は、配線基板を経由してグランド電位に接続されており、個別電極74は、配線基板を経由して電源に接続されている。
【0031】
ここで、インクジェットヘッド40のインクの吐出について説明する。インクジェットヘッド40は、配線基板(図示省略)に実装されるドライバIC93(図4参照)により、インクを吐出させるノズル37に対応する個別電極74に対して、プリンタ1の本体電源から電圧を選択的に印加されるように制御されて、ノズル37からインクを吐出する。このドライバIC93は、制御装置75(図4参照)の機能の1つである印刷制御部90(図4参照)からの信号により、上記の制御が実行される。そして、ノズル37からインクを吐出する際には、PC等の入力装置から制御装置75に印刷データが入力され、この印刷データに基づいて、ヘッド制御部90がドライバIC93に信号を供給し、ドライバIC93により個別電極74に電圧を印加させる制御を実行させる。このとき、個別電極74は、所定の電位を有し、共通電極72との間に電位差が生じる。圧電層73は、共通電極72と個別電極74との間に電位差が生じると、上下方向に伸び、左右方向に収縮するように変形する。この圧電層73の変形に伴って、振動板71が上下方向に凸変形する。この振動板71の変形により、圧力室59の体積が変化し、圧力室59内のインクに圧力が付与されて、ノズル37からインクが吐出される。
【0032】
また、インクジェットヘッド40は、プリンタ1の本体電源の1つである第2電源27(本発明の第2電源の一例)と電気的に接続されている。第2電源27は、ノズルプレート51に設けられた接続端子51aに接続されており、制御装置75(図4参照)により、ノズルプレート51に電圧を印加するように制御される。尚、第2電源27の電圧印加に係る制御については、後段にて詳細を説明する。
【0033】
次に、静電霧化装置20について図3を参照して説明する。静電霧化装置20は、帯電した霧状の液滴をプリンタ1内に放出する装置で、図3に示すように、液滴を霧状化するための霧化電極21(本発明の帯電部の一例)と、プリンタ1の本体電源の1つであり、霧化電極21と電気的に接続される第1電源22(本発明の第1電源の一例)と、霧化電極21と連結される冷却部23(本発明の冷却部の一例)とを備えている。
【0034】
霧化電極21は、球状の先端部21aと、円錐台状の基端部21bとを備え、基端部21bは、第1電源22に接続されている。冷却部23は、ペルチェ素子を有する構成であり、第1電源22とは別の冷却電源24に接続されている。ペルチェ素子は、熱電素子の一種で、冷却電源24により電圧が印加されると、素子の一部の温度が急激に低下する。基端部21bは、冷却部23のうちペルチェ素子の温度が低下する部分に直接接続されている。
【0035】
また、静電霧化装置20は、霧化電極21に対向する対向電極25を備えており、この対向電極25は、第1電源22に接続されている。ここで、対向電極25は、第1電源22のプラス、マイナスの出力端子(図示省略)のうちのマイナスの出力端子に接続され、霧化電極21は、プラスの出力端子に接続されている。これにより、霧化電極21は第1電源22によりマイナスの電位が印加され、対向電極25は第1電源22によりプラスの電位が印加される。尚、対向電極25は、筐体26により支持されて配置されている。
【0036】
次に、静電霧化装置20の動作について説明する。まず、冷却部23は、冷却電源24から電圧が印加されると、ペルチェ素子が冷却するように作動する。ペルチェ素子の温度が低下すると、ペルチェ素子の温度が低下する部分に接続される霧化電極21も温度が低下する。そして、冷却部23に冷却電源24から電圧が印加され続けると、ペルチェ素子は温度が下がり続け、霧化電極21も温度が下がり続ける。そして、霧化電極21が、周囲の空気の露点温度以下に温度が下がると、霧化電極21の表面に結露により水滴Dが発生する。尚、露点温度とは、水蒸気を含む空気を冷却したときに凝結が始まる温度を指し、周囲の空気の温度と湿度に基づくものである。例えば、周囲の気温が25℃、湿度が60%の状況下では、露点温度は16.7℃である。
【0037】
そして、霧化電極21の先端部21aの表面に水滴Dが発生した状態で、第1電源22が霧化電極21に第1電圧(本発明の第1電圧の一例)を印加する。第1電源22から霧化電極21に、約+6kVの第1電圧が印加されると、先端部21aの表面の水滴は、微細粒子に分裂して霧状になりマイナスに帯電する。この水滴の分裂は、レイリー分裂と呼ばれる現象で、水滴がナノオーダーまで微細化される。水滴は微細化して分裂されると、表面エネルギーが変化する。このとき、水滴は表面エネルギーを失った分を補うように、霧化電極21の電子を吸着してマイナスに帯電する。これにより、先端部21aの表面には、マイナスに帯電した霧状の水滴が発生する。
【0038】
同時に、対向電極25は、第1電源22によりマイナスの電圧が印加されている為、プラスに帯電する。先端部21aの表面の帯電した水滴はプラスの電位を有しており、且つ、霧状である為、対向電極25との間に発生するクーロン力により対向電極25に引き寄せられる。このとき、水滴は対向電極25に引き寄せられて対向電極25に付着するが、水滴の中には対向電極25との間の引力を振り切って、対向電極25の上方へ放出されるものもある。これにより、帯電した水滴が、対向電極25を経由し、破線の矢印Hで示すように飛翔してプリンタ1内に放出される。
【0039】
ここで、プリンタ1の電気的な構成について図4を参照して説明する。プリンタ1は、制御装置75を備えている。制御装置75は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御をソフトウェア的に行うものであってもよい。あるいは、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェアで実現するものであってもよい。
【0040】
制御装置75は、印刷制御部90、第1制御部91、及び、第2制御部92を備えている。印刷制御部90は、PC等の入力装置(図示省略)から制御装置75に印刷データが入力されたときに、この入力された印刷データに基づいて、駆動モータ95を制御してキャリッジ5を左右方向に往復移動させるとともに、ドライバIC93を制御してノズル37からインクを吐出させる。
【0041】
第1制御部91は、静電霧化装置20の第1電源22と冷却電源24を制御するものであり、PC等の入力装置(図示省略)、又は、制御装置75から静電霧化装置20を駆動させる指令信号が入力されると、上述のように、第1電源22と冷却電源24を駆動させる制御を行なう。尚、静電霧化装置20を駆動させる指令信号は、ユーザが入力装置を操作することで出力されたり、制御装置75に内蔵されるタイマーが検出した経過時間が所定時間以上の場合に制御装置75により出力されたりする他、プリンタ1の電源がONされたときに制御装置75から出力されるものである。
【0042】
第2制御部92は、プリンタ1に内蔵される第2電源27を制御するものである。第2電源27は、上述のようにノズルプレート51に接続されており、第2制御部92の制御により、ノズルプレート51に約2kHzで−3kVの電圧(本発明の第2電圧の一例)を印加する。ノズルプレート51は、プラスの電圧が印加されると、電子がノズルプレート51に加わって、プラスに帯電する。
【0043】
また、第2制御部92がノズルプレート51に電圧を印加した際に、圧電アクチュエータ70の共通電極72と個別電極74の間に2〜3kVの電位差が生じることがある。しかし、圧電アクチュエータ70は、ノズル37からインクを吐出するときに、+20〜30kVの電圧を印加して圧電層73を変形させている為、2〜3kVの電位差ではノズル37からインクが吐出されるように圧電層73が変形しない。従って、ノズルプレート51が帯電されるときに、ノズル37からインクが誤って吐出されることがない。
【0044】
尚、本実施形態の静電霧化装置20は、本発明の「液体帯電手段」の一例であり、第2制御部92と第2電源27は、本発明の「ヘッド帯電手段」の一例である。
【0045】
以上の構成によれば、ユーザが入力装置を操作したり、プリンタ1に内蔵されるタイマーが検出した経過時間が所定時間以上の場合であったり、プリンタ1の電源がONされたりしたときに、制御装置75は、第1制御部91に、第1電源22と冷却電源24を駆動させる制御を実行させる。第1制御部91が第1電源22と冷却電源24を駆動させてから所定時間が経過すると、霧化電極21の先端部21aの表面に水滴が発生し、この水滴が第1電源22から印加される電圧によりレイリー分裂を起こす。レイリー分裂を起こした水滴はマイナスに帯電される。また、水滴が帯電されると同時に、制御装置75は、第2制御部92に、第2電源27からノズルプレート51に電圧を印加させる制御を実行させる。このとき、ノズルプレート51は第2電源27に対して負の電位を有する為、ノズルプレート51の電子が第2電源24側に移動し、ノズルプレート51はプラスに帯電する。
【0046】
その結果、霧化電極21の先端部21aの表面の水滴は、帯電されたノズルプレート51と逆極性を有する為、帯電された水滴と、帯電されたノズルプレート51との間にはクーロン力が発生する。このとき、帯電された水滴は霧状である為、上記のクーロン力によりノズルプレート51に引き寄せられ易い。従って、霧化電極21の表面の水滴は、プリンタ1内の様々な箇所に拡がるのが抑えられ、ノズルプレート51へ向かって移動し易くなる為、水滴をノズルプレート51へ効率よく供給することができる。これにより、ノズル37が乾燥するのを抑えることができる。
【0047】
また、制御装置75は、第1制御部91と第2制御部92とを制御するのと同時に、図5に示すように、キャリッジ5を移動させてインクジェットヘッド4が静電霧化装置20に対向するように位置付ける。これにより、霧化電極21とノズルプレート51が対向するように位置付けられる為、インクジェットヘッド4がプラテン11に対向する領域に位置する場合に比べて、霧化電極21とノズルプレート51が近づく。その為、帯電された水滴は、ノズルプレート51に近づき易く、ノズル37へ水滴を供給し易い。
【0048】
(変更形態)
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0049】
(第1変更形態)
本実施形態の静電霧化装置20は、霧化電極21を冷却して、結露により先端部21aの表面に水滴を得る構成であるが、霧化電極21に液体を供給するように構成されていてもよい。図6に示すように、静電霧化装置120は、霧化電極121と、霧化電極121の下方に位置する液体貯留部123と、を備えている。この霧化電極121の基端部121bは、液体貯留部123に貯留される液体Wに浸されるように配置されている。また、霧化電極121は、多孔質のセラミックス等で形成されており、毛管現象により、液体貯留部123の液体を、基端部121bから吸い上げ、基端部121bから先端部121aに移動させる。
【0050】
これにより、静電霧化装置120は、静電霧化装置20のようなペルチェ素子や冷却電源24が必要なく、簡単な構成にすることができる。また、霧化電極121に液体を供給するときに、液体を供給するための供給装置が必要ない。
【0051】
尚、基端部121bは、本発明の「接続部」の一例であり、液体貯留部123と基端部121bとにより、「液体供給部」を構成する。
【0052】
(第2変更形態)
本実施形態では、静電霧化装置20は、図5に示すようにプラテン11の左側に配置されていたが、これに限られない。例えば、図7に示すように、プラテン211は、ベース212と、ベース212に立設する、互いに間隔を空けて配置される複数のリブ213と、ベース212の内部に形成される空洞部214と、複数のリブ213の間に開口し、空洞部214と連通する開口部215とを備える。そして、静電霧化装置220は、開口部215と対向して空洞部214内に配置される。
【0053】
この構成によれば、図7に示すように、キャリッジ5が複数のリブ213に対向する位置にインクジェットヘッド40を位置付けると、ノズルプレート51と静電霧化装置220とが対向する位置関係となる。その為、静電霧化装置220から帯電された霧状の液体が放出されると、この霧状の液体が、開口部215からリブ213を通って、ノズルプレート51に供給される。従って、静電霧化装置220から放出された液体は、ノズル37に供給されやすい。
【0054】
尚、図7に示す空洞部214内には、静電霧化装置220が1個配置されているが、複数の開口部215のそれぞれに対応するように複数の静電霧化装置220を配置してもよい。また、空洞部214内に静電霧化装置220が1個配置されている場合において、空洞部214内に送風機を設けてもよい。これによれば、空洞部214内で送風機が風を発生させ、この風により、帯電された液体が空洞部214内に送られて、複数の開口部215から帯電された液体を放出することができる。
【0055】
(第3変更形態)
また、本実施形態の静電霧化装置20は、クーロン力を利用して、帯電された水滴をプリンタ1内に放出していたが、これに限らない。例えば、インクジェットヘッド4とは別の液体を吐出する吐出部と、このノズルに対向し且つノズルから吐出される液体が飛翔する領域に電界を発生させる第1電極と第2電極とを備えていてもよい。この構成によれば、ノズル37からインクジェットヘッド4に向けて帯電された液体を吐出することができるので、液体がより確実にインクジェットヘッド4へ供給させることができる。
【0056】
(第4変更形態)
本実施形態では、ノズルプレート51がポリイミド等の樹脂により形成されていたが、樹脂よりも電気抵抗が低い金属、例えば、銅等で形成されていてもよい。これによれば、ノズルプレート51は電気抵抗が低い為、第2電源27により電流が流れ易く、大きな電圧を印加させ易い。
【0057】
(第5変更形態)
また、本実施形態では、左右方向において移動して印刷用紙Pに印刷を行うシリアル型のインクジェットヘッドについて説明したが、印刷用紙Pの幅方向に渡って延在するライン型のインクジェットヘッドにも本発明を適用することができる。
【0058】
(第6変更形態)
さらに、本実施形態では、印刷用紙Pにインクを吐出して印刷を行うプリンタであるが、配線パターンの材料となる導電材料の液体を基板上に吐出して配線基板の配線パターンを印刷する産業用プリンタにおいても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
10 搬送ローラ
20 静電霧化装置
21 霧化電極
23 冷却部
22 第1電源
27 第2電源
37 ノズル
40 インクジェットヘッド
50 流路ユニット
70 圧電アクチュエータ
75 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
第1電源と、前記第1電源に電気的に接続される帯電部と、前記帯電部に液体を供給する液体供給部とを備え、前記第1電源により前記帯電部に第1電圧を印加して電界を発生させ、前記帯電部に供給される前記液体を前記電界によって霧状化させて帯電させる液体帯電手段と、
前記液体吐出ヘッドに電気的に接続される第2電源を有し、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに第2電圧を印加させることで、前記液滴帯電手段により帯電された前記液体と逆極性に前記液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段と、を備える液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
第1電源と、前記第1電源に電気的に接続される帯電部と、前記帯電部の前記表面に結露により液体を発生させるように前記帯電部を冷却可能な冷却部とを備え、前記第1電源により前記帯電部に第1電圧を印加して電界を発生させ、前記表面の前記液体を前記電界によって霧状化させて帯電させる液体帯電手段と、
前記液体吐出ヘッドに電気的に接続される第2電源を有し、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに第2電圧を印加させることで、前記液滴帯電手段により帯電された前記液体と逆極性に前記液体吐出ヘッドを帯電させるヘッド帯電手段と、を備える液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体供給部は、
前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部を前記帯電部に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、多孔質状であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが形成された、金属製のノズルプレートを含んでおり、
前記第2電源は、前記ノズルプレートに接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記帯電部は、前記液体吐出ヘッドの前記ノズルに対向するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液体を吐出するための吐出圧を付与する圧力付与手段を備え、
前記圧力付与手段は、前記第2電源により前記液体吐出ヘッドに供給される電圧よりも大きい駆動電圧が印加されたときに駆動することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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