説明

液体吐出装置

【課題】液体であるインク吐出を行なう液体吐出手段の構成を複雑にすることなく、効率的なメンテナンス動作を実現する液体吐出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐出ユニットが不自然な動作をすることなく、待機位置から吐出位置へ移動する際に吐出前の払拭を行ない、吐出位置から待機位置へ移動する際に吐出後の払拭を実現できるので、液体吐出手段の構成を複雑にすることがなく、常に液体吐出ノズルが清浄であるような効率的なメンテナンス動作を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録媒体に対して液体を吐出することで記録を行なう液体吐出装置に関し、特に複数の液体吐出ノズルヘッドが主走査方向に配設された吐出ユニットを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に対して液体を吐出することで記録を行なう液体吐出装置として、インクジェットプリンタが周知である。
一般的に家庭で使用されているインクジェットプリンタは、単一のインク吐出ヘッド、あるいは色数に相当する数のインク吐出ヘッドを備えたプリントヘッドが副走査方向に搬送される記録媒体に対して主走査方向に往復動しながら必要に応じてインクを吐出して記録を行なうシャトル式インクジェットプリンタと呼ばれるものであり、複雑な機構を必要とせず、比較的少部数の印刷に適している。
一方、機構は複雑になるが、比較的大部数の印刷を行なうためのインクジェットプリンタも存在する。このようなインクジェットプリンタは、高速で印刷を行なうため、単色であっても記録媒体の主走査方向の幅とほぼ同様の吐出幅を得るために複数のインク吐出ヘッドを配設したプリントヘッドが副走査方向に搬送される記録媒体に対して必要に応じてインクを吐出して記録を行なうワンパス式インクジェットプリンタと呼ばれている。
【0003】
このようなインクジェットプリンタでは、インク吐出時の飛び散りによって生じたインクミストの付着、あるいは記録媒体である印刷用紙から生じる紙粉の付着などによってインク吐出ノズルからのインク吐出不良が生じることがあるので、印刷品質を維持するためにインク吐出ヘッドに対して適宜清掃を行なう機構を有している。
シャトル式インクジェットプリンタの場合は、記録のためにプリントヘッドが往復動を行なうに際して、プリンタヘッドの待機位置まで移動させ、待機位置に備えたインク吐出ヘッドの清掃機構により清掃を行なう。ここで行なわれる清掃は、比較的高速に清掃を行なうことができるワイピングであり、清掃機構はワイパーブレードを備えたワイパー機構である。
【0004】
一方、ワンパス式インクジェットプリンタにおいても、インク吐出ヘッドを清掃するワイピングを行なうが、ワンパス式インクジェットプリンタではプリントヘッドが移動することなくインク吐出を行なうためにワイピングを行なう機会は限られている。ワンパス式インクジェットプリンタにおいては、通常は印刷開始前にインク吐出ヘッドに対してワイピングを行なうか、あるいは所定時間ごとにメンテナンス時間を設定してその間にワイピングを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−18406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、主走査方向に整列配設された多数のインクジェットノズルを有するノズルヘッドの主走査方向に往復移動可能なワイパーキャリアを備えており、下方側のメンテナンス位置に位置決めされたノズルヘッドからのインク強制吐出後に、上方側のノズルヘッドワイピング位置へノズルヘッドを位置決め変更してワイパーキャリアを往動させることにより、ワイパーキャリア上部側に取り付けられたノズルヘッドワイパーがノズルヘッドの先端(下端)に接触しかつ相対移動することで、ノズルヘッドに付着したインクを払拭できる発明を開示している。
【0007】
しかし、特許文献1に開示された発明では、ノズルヘッドワイピング位置へ移動した後に、さらに上方のインク受け部材ワイピング位置へ移動した後でノズルヘッドが印刷位置へ戻るという複雑な動作を行なうことから、ノズルヘッド周辺の構成が複雑になってしまう点で問題がある。
たとえば、インクジェットプリンタによる印刷開始前にメンテナンス動作を行なう場合、非印刷位置であるメンテナンス位置で待機していたノズルヘッドがインクを強制吐出した後に上方のノズルヘッドワイピング位置、さらに上方のインク受け部材ワイピング位置へ移動し、ノズルヘッドのワイピングを行なってから印刷位置へ移動するので、ノズルヘッドは、上方へ移動、さらに上方へ移動、最下部まで下降という複雑な動作を行なうことから、効率的な動作を実現しておらず、ノズルヘッド周辺の構造も複数の位置決めを行なうために複雑となってしまう。
あるいは、インクジェットプリンタによる印刷終了時にノズルヘッドをワイピングしてからメンテナンス位置へ待機させる場合には、ノズルヘッドが上方へ移動、上方へ移動、下降して待機という複雑な動作を行なうことから、やはり効率的な動作を実現していない。
【0008】
また、インク吐出ノズルを払拭するワイパーはできる限り摩擦によって破損しないことが望ましい。そのためには平滑であるインク吐出ヘッドのみにワイパーが接触し、インク吐出ヘッドを支持する構成部材には接触しないための機構が必要である。
加えて、ワイパーはインク吐出ヘッドの払拭によってインクが蓄積するため、適宜ワイパー自体の清掃を行なう必要もある。
【0009】
そこで、本発明は、液体であるインク吐出を行なう液体吐出手段の構成を複雑にすることなく、効率的なメンテナンス動作を実現する液体吐出装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ワイパーの破損を極力抑えた液体吐出装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、ワイパーの清掃を容易に行なうことができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、請求項1に係わる発明は、記録媒体に対して液体を吐出することで記録を行なう液体吐出手段を備えた液体吐出装置であって、前記液体吐出手段が、複数の液体吐出ノズルが前記記録媒体の搬送方向に直交するように配設され、前記記録媒体に対して垂直方向に待機位置と前記記録媒体に液体を吐出する吐出位置との間を移動する吐出ヘッドと、前記待機位置と吐出位置との間で前記記録媒体の搬送方向に直交するように往復移動し、前記吐出ヘッドのノズルを払拭する払拭手段を備えた払拭ユニットと、を有することを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に係わる発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記液体吐出手段が有する吐出ヘッドは、前記記録媒体の搬送方向に直交するように複数の液体吐出ノズルヘッドを配設していること、を特徴としている。
【0012】
さらに、請求項3に係わる発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記待機位置が前記吐出ヘッドの移動範囲における上部に位置し、前記吐出位置が前記吐出ヘッドの移動範囲における下部に位置すること、を特徴としている。
【0013】
加えて、請求項4に係わる発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記払拭ユニットは、前記払拭手段を上下動させることにより、前記液体吐出ノズルのみ払拭を行なうこと、を特徴としている。
【0014】
また、請求項5に係わる発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記複数の液体吐出ノズルを被覆する被覆手段が前記記録媒体の搬送方向に直交して配設され、前記吐出ヘッドが待機位置に位置している間前記吐出ヘッドのノズルを被覆する被覆位置と前記吐出ヘッドが吐出位置へ移動している間に退避する退避位置との間を移動する被覆ユニットを有すること、を特徴としている。
【0015】
さらに、請求項6に係わる発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記液体吐出手段が前記払拭ユニットを待機させる払拭ユニット待機位置を有し、前記液体吐出装置が備えるメンテナンスドアを開放することで、前記払拭ユニット待機位置が露出すること、を特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の液体吐出装置は、液体吐出手段による液体吐出に際して、待機位置に位置していた吐出ヘッドが吐出位置へ移動を開始する。その途中、払拭ユニットが移動してきた吐出ヘッドの液体吐出ノズルを払拭手段で払拭する。払拭後、吐出ヘッドは移動を再開すると吐出位置へ位置し、液体吐出を行なう。
液体吐出終了後、吐出ヘッドは待機位置への移動を開始し、途中で払拭ユニットの払拭手段が吐出ヘッドの液体吐出ノズルを払拭し、その後吐出ヘッドが待機位置へ帰還する。
このように、請求項1に記載の液体吐出装置は、吐出ユニットが不自然な動作をすることなく、待機位置から吐出位置へ移動する際に吐出前の払拭を行ない、吐出位置から待機位置へ移動する際に吐出後の払拭を実現できるので、液体吐出手段の構成を複雑にすることがなく、常に液体吐出ノズルが清浄であるような効率的なメンテナンス動作を実現することができる。
【0017】
請求項2に記載の液体吐出装置は、記録媒体の搬送方向に直交するように複数の液体吐出ノズルヘッドを配設することにより、比較的高価な長尺のライン式液体吐出ノズルヘッドを使用せず、比較的安価に吐出ヘッドを実現することができる。
【0018】
請求項3に記載の液体吐出装置は、吐出ユニットが上部の待機位置から下部の吐出位置へ移動、あるいは下部の吐出位置から上部の待機位置へ移動するので、吐出ユニットの動作について記録媒体に干渉することがない。
【0019】
請求項4に記載の液体吐出装置は、払拭ユニットが液体吐出ノズルを払拭するに際して、該液体吐出ノズルに接触する時のみ払拭手段が上方へ駆動されることにより、平滑である液体吐出ノズルのみにワイパーが接触し、液体吐出ノズルを支持する構成部材には接触しないので、払拭手段の破損を極力抑えることができる。
【0020】
請求項5に記載の液体吐出装置は、記録媒体の搬送方向に直交して配設された被覆手段によって待機位置に位置していた吐出ヘッドの複数の液体吐出ノズルを被覆し、吐出ヘッドが吐出位置へ移動している間は退避位置に位置する被覆ユニットを備えるので、払拭前あるいは払拭後の吐出ヘッドの清浄性を維持することができる。
【0021】
請求項5に記載の液体吐出装置は、メンテナンスドアを開放することで、液体吐出手段が備える払拭ユニット待機位置が露出するので、払拭手段の清掃を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液体吐出記録システム100を説明するための図である。
【図2】液体吐出部10を説明するための図である。
【図3】液体吐出部10の斜視図である。
【図4】ワイパーユニット103を説明するための図である。
【図5】液体吐出ユニット101の吐出位置d1への移動動作を説明するための図である。
【図6】液体吐出ユニット101の待機位置w1への移動動作を説明するための図である。
【図7】ワイパーユニット103の動作を説明するための図である。
【図8】液体吐出装置1のメンテナンスドアMDを開放した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施形態について、説明を行なう。
【0024】
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明に係わる液体吐出記録システム100を説明するための図である。
液体吐出記録システム100は、液体吐出装置1、記録媒体送り出し装置2、記録媒体巻取り装置3を備えている。
【0025】
液体吐出装置1は、記録媒体送り出し装置2から送り出され、記録媒体巻取り装置3で巻取られるウェブ状の記録媒体Mに対して、液体吐出部10が記録用の液体を吐出することにより連続的に記録を行なう。
記録用の液体としては、例えばインクを使用することができる。また、レジストやタンパク質などの機能性溶液を使用しても良い。
【0026】
なお、ここでは説明のため液体吐出部10が露出しているように図示しているが、実際は、記録媒体Mに対する記録品質を保障するために液体吐出部10は液体吐出装置1の筐体内部に収められるようになっている。
【0027】
記録媒体送り出し装置2は、記録媒体Mがロール状に収納されており、液体吐出装置1による記録を行なうため、記録媒体Mを送り出す。
記録媒体巻取り装置3は、液体吐出装置1で記録が行なわれた記録媒体Mをロール状に収納するための巻き取りを行なう。
記録媒体Mは、所定の幅を有するウェブ状の記録媒体である。液体吐出記録システム100では、紙や軟質樹脂、金属薄膜などを記録媒体Mとして使用することができる。
【0028】
図2は、液体吐出部10の構成を説明するための図である。液体吐出部10は記録媒体Mに対して記録用の液体を吐出するため、図示しない保持機構により、記録媒体Mの略垂直方向に配置されるように液体吐出装置1内部に保持されており、液体吐出ユニット101、キャッピングユニット102、ワイパーユニット103、液体吐出ユニット駆動部104、ワイパーユニット駆動部105を備えている。
【0029】
液体吐出ユニット101は、記録媒体Mの搬送方向に直交する方向(主走査方向)に複数の液体吐出ノズルヘッド101Hが配設されている。複数の液体吐出ノズルヘッド101Hは、その配設長が記録媒体Mの搬送方向の直交幅よりも長くなるように、また記録漏れが生じないように吐出ノズルの一部分ずつがそれぞれ重複するように配設されている。
液体吐出ユニット101は、液体吐出部10両端に備えられた液体吐出ユニット駆動部104によって、液体吐出部10に対して移動可能に支持されている。液体吐出ユニット駆動部104によって、液体吐出ユニット101は液体吐出部10上部の待機位置w1と、液体吐出部10下部の吐出位置d1との間を移動する(詳細は後述する)。
【0030】
キャッピングユニット102は、液体吐出ユニット101が待機位置w1に位置している間、各液体吐出ノズルヘッド101Hからの液体もれを防止する、あるいは各液体吐出ノズルヘッド101Hの汚染を防止するため、液体吐出ユニット101の保護を行なう。
【0031】
そのために、キャッピングユニット102は、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hに対向するように、複数のノズルキャップ(図示せず)を備えている。液体吐出ユニット101が待機位置w1に位置しているとき、図2に示している位置にキャッピングユニット102が位置することで、各ノズルキャップが各液体吐出ノズルヘッド101Hを被覆する。
各ノズルキャップは、各液体吐出ノズルヘッド101Hからの液だれを受けるための吸収材(図示せず)を備えている。また、各ノズルキャップは図示しない吸引孔を備えており、図示しない吸引ポンプによる吸引で、各液体吐出ノズルヘッド101Hからたれた液体や、清浄吐出を行なった際の液体は該吸引孔を経て各ノズルキャップの外部へ排出される。
【0032】
キャッピングユニット102は、図2では図示しないキャッピングユニット駆動部によって、液体吐出部10に対して移動可能に支持されており、液体吐出部10に備えられた図2では図示しない退避位置と、液体吐出ユニット101の各液体吐出ノズルヘッド101Hを各ノズルキャップが被覆するキャッピング位置との間を移動する。
【0033】
ワイパーユニット103は、液体吐出ユニット101が待機位置w1から吐出位置d1へ移動する途中で、該液体吐出ユニット101の各液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭する。
ワイパーユニット103は、液体吐出ユニット101に配設された複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの列数に合わせた枚数のワイパーブレード103Bを備えている。ワイパーブレード103Bは、液体吐出ノズルヘッド101Hのノズル面に付着した液体や、記録媒体Mから生じた粉塵を掻き取る構成を有しており、ゴム、合成樹脂などの材質で実現される。
【0034】
ワイパーユニット103は、ワイパーユニット駆動部105によって、液体吐出部10に対して移動可能に支持されており、液体吐出部10に備えられたワイパーユニット待機位置105wからワイパーユニット帰還位置105rの間を往復移動する。
この時、ワイパーブレード103Bは、ワイパーユニット103が備える上下機構によって上下に移動することにより、液体吐出ノズルヘッド101Hのみを払拭する(詳細は後述する)。
【0035】
液体吐出ユニット駆動部104は、液体吐出部10の両端に備えられ、液体吐出ユニット101を支持するとともに、液体吐出記録システム100の図示しない制御部による制御信号に基づいて、液体吐出部10において移動可能に支持された液体吐出ユニット101を所定の位置へ移動させるための駆動を行なう。
【0036】
液体吐出ユニット駆動部104は、リニアガイドとボールネジ、ボールネジを駆動するステッピングモータから成り立っている。液体吐出ユニット101は、液体吐出ユニット104が備えるリニアガイドに沿って、ステッピングモータによって駆動されるボールネジの回転によって、待機位置w1と吐出位置d1との間を移動する。
なお、液体吐出ユニット駆動部104の構成は、上記に限られたものではなく、ラック&ピニオン方式や、リニアモータ方式、エアシリンダ方式やコグドベルト方式など、所望の方式を採用して、液体吐出ユニット101を待機位置w1および吐出位置d1間の移動を実現することができる。
【0037】
ワイパーユニット駆動部105は、液体吐出部10上部の待機位置w1と下部の吐出位置d1との間、特に吐出位置d1の近辺に備えられ、液体吐出記録システム100の図示しない制御部による制御信号に基づいて、液体吐出部10において移動可能に支持されたワイパーユニット103を、ワイパーユニット待機位置105wとワイパーユニット帰還位置105rとの間を往復移動させる。
【0038】
ワイパーユニット駆動部105は、液体吐出ユニット101の液体吐出ノズルヘッド101Hと平行になるように備えられ、コグドベルト、およびコグドベルトを駆動するステッピングモータから成り立っている。ワイパーユニット103は、ワイパーユニット駆動部105が備えるステッピングモータによって駆動されるコグドベルトの駆動によって、ワイパーユニット待機位置105wとワイパーユニット帰還位置105rとの間を往復移動する。
なお、ワイパーユニット駆動部105の構成は上記に限られたものではなく、ラック&ピニオン方式や、リニアモータ方式、ボールネジ方式など、所望の方式を採用して、ワイパーユニット103をワイパーユニット待機位置105wとワイパーユニット帰還位置105rとの間で往復移動させることができる。
【0039】
図3は、図2に示した液体吐出部10の斜視図である。なお、図3では説明の都合上、キャッピングユニット102に関わる構成については図示していない。さらに、各構成についての説明を阻害する構造材については、図示していない。
図示しているように、液体吐出ユニット駆動部104が液体吐出部10の両端に備えられており、ステッピングモータで駆動するボールネジ機構によって、液体吐出ユニット101が図2で示した待機位置w1と吐出位置d1との間を移動する。
また、図示しているように、ワイパーユニット駆動部105が液体吐出部10において液体吐出ユニット101の液体吐出ノズルヘッド101Hと平行になるように備えられており、ステッピングモータで駆動するコグドベルトによってワイパーユニット103が図2で示したワイパーユニット待機位置105wとワイパーユニット帰還位置105rとの間を往復移動する。
【0040】
図3においては、さらに液体吐出ユニット101が備える複数の液体吐出ノズルヘッド101Hが図示されている。液体吐出ノズルヘッド101Hは、記録媒体Mに対して記録を行なうための液体が図示しない液体供給機構より供給され、所定の記録信号に基づいて液体を吐出することにより記録を行なう。液体吐出ノズルヘッド101Hは、ピエゾ式、サーマル式など、所望の吐出方式を採用することが可能である。また、液体吐出ノズルヘッド101Hが吐出する液体は、インク、レジスト、あるいは有機的機能溶液など、所望の種類の液体を使用することができる。
【0041】
液体吐出ユニット101における複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの配設は、所望する列数で実現することができる。図3では、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの配設列数を「4」としている。なお、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの配設列数はこれに限定されない。
【0042】
図3においては、ワイパーユニット103が、4枚のワイパーブレード103Bを備えていることが図示されている。すなわち、液体吐出ユニット101における複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの配設列数が「4」であることから、複数の液体吐出ノズルヘッド101H各列を払拭するワイパーブレード103Bの数も「4」とする。
【0043】
図4は、ワイパーユニット103の構成を説明するための図である。
ワイパーユニット103は、前述のとおり複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭するためのワイパーブレード103Bを備えており、ワイパーブレード103Bの上下機構として、駆動モータ103m、駆動モータ103mによって駆動されるカムシャフト103cを備えている。
駆動モータ103mはステッピングモータであり、液体吐出記録システム100の図示しない制御部による制御信号に基づいて駆動することにより、カムシャフト103cを回転させ、ワイパーブレード103Bを押し上げる。制御信号は、ワイパーブレード103Bが液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭できる位置に来たときに発信されるので、ワイパーブレード103Bは液体吐出ノズルヘッド101Hのみを払拭するように押し上げられることになる。押し上げられたワイパーブレード103Bは、液体吐出ノズルヘッド101Hのノズル面に付着した液体や、記録媒体Mの粉塵を払拭する。払拭後、ワイパーブレード103Bは下に降りるので、液体吐出ノズルヘッド101Hのノズル面以外を払拭することはない。
【0044】
図5は、液体吐出ユニット101の吐出位置d1への移動動作を説明するための図である。
図5(a)は、液体吐出記録システム100が待機状態にあるときの、液体吐出部10の状態を示している。液体吐出記録システム100が待機状態の場合、液体吐出ユニット101は液体吐出部10の上部の待機位置w1に位置している。また、キャッピングユニット102はキャップ位置に位置することで、液体吐出ユニット101の複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを被覆している。そして、ワイパーユニット103はワイパーユニット待機位置105wに位置している。
【0045】
図5(b)は、液体吐出記録システム100の動作が開始した状態を示している。液体吐出記録システム100が動作を開始すると、所定の制御信号に基づいて図示しないキャッピングユニット駆動部がキャッピングユニット102を駆動して複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの被覆を解き、キャッピングユニット102は図示しない退避位置へ移動する。
また、所定の制御信号に基づいて、液体吐出ユニット駆動部104aが液体吐出ユニット101を駆動することで、液体吐出ユニット101が待機位置w1から吐出位置d1へ移動する。
図5(c)では、所定の制御信号に基づいて液体吐出ユニット101が移動を一時停止し、ワイパーユニット駆動部105によって駆動されたワイパーユニット103が往動することで、降下してきた液体吐出ユニット101の複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭する。払拭動作によりワイパーユニット帰還位置105rまで移動したワイパーユニット103はワイパーユニット駆動部105によって復動して、ワイパーユニット待機位置105wへ戻る。
【0046】
図5(d)は、液体吐出記録システム100が記録を開始した状態を示している。液体吐出ユニット駆動部104によるさらなる駆動の結果、液体吐出ユニット101は吐出位置d1まで下降する。吐出位置d1に位置した液体吐出ユニット101は、所定の記録信号に基づいて液体を吐出し、搬送される記録媒体Mに対する記録を実行する。
【0047】
図6は、液体吐出ユニット101の待機位置w1への移動動作を説明するための図である。
【0048】
図6(a)は、液体吐出記録システム100の動作の終了が開始した状態を示している。液体吐出記録システム100が記録を終了すると、液体吐出ユニット101を吐出位置d1から待機位置w1へ移動させるため、液体吐出ユニット駆動部104が、所定の制御信号に基づいて液体吐出ユニット101を駆動する。
図6(b)では、所定の制御信号に基づいて液体吐出ユニット101が移動を一時停止し、ワイパーユニット駆動部105によって駆動されたワイパーユニット103が往動することで、上昇してきた液体吐出ユニット101の複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭する。払拭動作によりワイパーユニット帰還位置105rまで移動したワイパーユニット103はワイパーユニット駆動部105によって復動して、ワイパーユニット待機位置105wへ戻る。
払拭終了後、図6(c)に示すように、液体吐出ユニット101は上昇を再開する。
【0049】
図6(d)は、液体吐出記録システム100の動作が終了した状態を示している。液体吐出ユニット駆動部104による駆動の結果、液体吐出ユニット101は待機位置w1まで上昇する。待機位置w1に位置した液体吐出ユニット101に対して、所定の制御信号に基づいて図示しないキャッピングユニット駆動部がキャッピングユニット102を駆動することにより、キャッピングユニット102は図示しない退避位置からキャップ位置へ移動する。キャップ位置へ位置したキャッピングユニット102は、液体吐出ユニット101の複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを被覆する。
【0050】
このように、液体吐出ユニット101は、液体吐出記録システム100の動作開始に伴って液体吐出部10の上部の待機位置w1から下部の吐出位置d1へ移動し、液体吐出記録システム100の動作終了に伴って液体吐出部10の下部の吐出位置d1から上部の待機位置w1へ移動するに際して、下降時、上昇時それぞれにおいてワイパーユニット103が複数の液体吐出ノズルヘッド101Hを払拭する。
この時、ワイパーユニット103による払拭は、液体吐出ユニット101の待機位置w1から吐出位置d1への移動、および吐出位置d1から待機位置w1への移動の途中で行なわれることから、払拭のためだけに液体吐出ユニット101が不自然な上下動をすることはないので、液体吐出部10の構成を複雑にすることがない。また、液体吐出ユニット101の吐出前、吐出後に確実にワイパーユニット103による払拭が行なわれるので、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの吐出ノズルが常に清浄であるような効率的なメンテナンス動作を実現することができる。
【0051】
図7は、ワイパーユニット103の払拭動作を説明するための図である。
なお、ここでは説明のため、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの配設列数が「1」の場合におけるワイパーユニット103の払拭動作を図示している。
【0052】
図7(a)は、待機位置w1から下降、あるいは吐出位置d1から上昇してきた液体吐出ユニット101に対して、ワイパーユニット103が払拭を開始する状態を示した図である。ワイパーユニット駆動部105によって移動するワイパーユニット103の上側に、液体吐出ユニット101が位置すると、所定の制御信号に基づいて、液体吐出ユニット101の駆動が一時的に停止され、ワイパーユニット待機位置105wに位置していたワイパーユニット103が動作を開始する。
【0053】
図示しているように、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hは、液体吐出ユニット101からわずかに突出した状態で配設されている。これは、液体吐出ユニット101における各液体吐出ノズルヘッド101Hの位置決めのため、および記録媒体Mに対する液体吐出時の飛散をできるだけ避けるためである。
液体吐出ユニット101がこのような構造を有しているため、ワイパーブレード103Bが液体吐出ユニット101の底面を払拭した場合、液体吐出ユニット101の構造材による摩擦のためワイパーブレード103Bの寿命は著しく低下する。
【0054】
そこで、図7(b)に示すように、ワイパーユニット103が液体吐出ユニット101における各液体吐出ノズルヘッド101Hの配設方向に移動し、液体吐出ノズルヘッド101Hの下部に位置したとき、所定の制御信号により、駆動モータ103mがカムシャフト103cを回転させることでワイパーブレード103Bを押し上げる。押し上げられたワイパーブレード103Bは、ワイパーユニット103の移動も伴って、液体吐出ノズルヘッド101Hを一つ払拭する。
【0055】
さらにワイパーユニット103が移動を続けると、図7(c)に示すように、駆動モータ103mによるカムシャフト103cの回転が終了し、押し上げられていたワイパーブレード103Bが下りることで、ワイパーブレード103Bが液体吐出ユニット101の底面払拭を防ぐことができる。
【0056】
ワイパーユニット103が液体吐出ユニット101における各液体吐出ノズルヘッド101Hの配設方向に移動により、再び液体吐出ノズルヘッド101Hの下部に位置したとき、図7(d)に示すように、ワイパーブレード103Bが押し上げられ、液体吐出ノズルヘッド101Hを一つ払拭する。
以降、全ての液体吐出ノズルヘッド101Hの払拭を行なうまで、ワイパーユニット103は移動を続け、図7(b)〜(d)に示した動作を繰り返す。
【0057】
このように、ワイパーユニット103の主走査方向への移動に際して、液体吐出ノズルヘッド101Hに接触する時のみワイパーブレード103Bが上方へ駆動されるので、各液体吐出ノズルヘッド101Hを支持する部材には接触しないことになり、ワイパーブレード103Bの破損を極力抑えることができる。
なお、図7の説明では、ワイパーユニット103の往動によって、液体吐出ユニット101の払拭が行なわれているが、ワイパーユニット103の復動時に、液体吐出ノズルヘッド101Hの払拭を行なうようにしても良い。
【0058】
図8は、液体吐出装置1が備えるメンテナンスドアMDを開放した状態を示すための図である。液体吐出装置1は、内装する機材を整備するためのメンテナンスドアMDを備えており、該メンテナンスドアMDを開放した状態で液体吐出部10を液体吐出装置1から引き出すことにより、液体吐出部10の整備を行なうことができる。
【0059】
さらに、図示しているように、メンテナンスドアMDを開放した状態で、ワイパーユニット103のワイパーユニット待機位置105wは、液体吐出部10を引き出さなくとも露出されるので、ワイパーブレード103Bの清掃作業、あるいはワイパーブレード103Bの交換作業を容易に行なうことができる。
〈変形例〉
【0060】
これまでの説明では、液体吐出記録システム100における記録媒体Mがウェブ状の記録媒体であるものとして説明を行なってきたが、液体吐出装置1が液体吐出記録の対象とする記録媒体Mは枚葉状の記録媒体であっても良い。
また、これまでの説明では、ワイパーユニット103がワイパーブレード103Bを備えるものとして説明を行なってきたが、ワイパーユニット103がワイパーブレード103Bではなくクリーニングローラを備えるようにしても良い。クリーニングローラの場合であっても、駆動モータ103mがカムシャフト103cを回転させクリーニングローラを押し上げるようにすることで、同様に各液体吐出ノズルヘッド101Hのみを払拭することができる。
【0061】
さらに、これまでの説明では、液体吐出ユニット101の待機位置w1が液体吐出部10の上部であり、吐出位置d1が液体吐出部10の下部にあるように説明を行なってきたが、液体吐出ユニット101の待機位置w1が液体吐出部10の下部にあり、吐出位置d1が液体吐出部10の上部にあり、液体吐出ユニット10がせり上がってくる途中でワイパーユニット103が液体吐出ユニット101の払拭を行なうようにしてもよい。
この場合であっても、払拭のためだけに液体吐出ユニット101が不自然な上下動をすることはないので、液体吐出部10の構成を複雑にすることがない。また、液体吐出ユニット101の吐出前、吐出後に確実にワイパーユニット103による払拭が行なわれるので、複数の液体吐出ノズルヘッド101Hの吐出ノズル面が常に清浄であるような効率的なメンテナンス動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 液体吐出装置
2 記録媒体送り出し装置
3 記録媒体巻取り装置
10 液体吐出部
100 液体吐出記録システム
101 液体吐出ユニット
101H 液体吐出ノズルヘッド
103 ワイパーユニット
103B ワイパーブレード
103c カムシャフト
103m 駆動モータ
104 液体吐出ユニット駆動部
105 ワイパーユニット駆動部
105w ワイパーユニット103の待機位置
105r ワイパーユニット103の帰還位置
w1 液体吐出ユニット101の待機位置
d1 液体吐出ユニット101の吐出位置
M 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出することで記録を行なう液体吐出手段を備えた液体吐出装置であって、
前記液体吐出手段が、
複数の液体吐出ノズルが前記記録媒体の搬送方向に直交するように配設され、前記記録媒体に対して垂直方向に待機位置と前記記録媒体に液体を吐出する吐出位置との間を移動する吐出ヘッドと、
前記待機位置と吐出位置との間で前記記録媒体の搬送方向に直交するように往復移動し、前記吐出ヘッドのノズルを払拭する払拭手段を備えた払拭ユニットと、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記液体吐出手段が有する吐出ヘッドは、前記記録媒体の搬送方向に直交するように複数の液体吐出ノズルヘッドを配設していること、
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記待機位置が前記吐出ヘッドの移動範囲における上部に位置し、前記吐出位置が前記吐出ヘッドの移動範囲における下部に位置すること、
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記払拭ユニットは、前記払拭手段を上下動させることにより、前記液体吐出ノズルのみ払拭を行なうこと、
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記複数の液体吐出ノズルを被覆する被覆手段が前記記録媒体の搬送方向に直交して配設され、前記吐出ヘッドが待機位置に位置している間前記吐出ヘッドのノズルを被覆する被覆位置と前記吐出ヘッドが吐出位置へ移動している間に退避する退避位置との間を移動する被覆ユニットを有すること、
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記液体吐出手段が前記払拭ユニットを待機させる払拭ユニット待機位置を有し、
前記液体吐出装置が備えるメンテナンスドアを開放することで、前記払拭ユニット待機位置が露出すること、
を特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157988(P2012−157988A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17490(P2011−17490)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】