説明

液体吐出装置

【課題】液体流路内の液体における振動を精度良く検出する。
【解決手段】個別電極123及び共通電極124が駆動圧電層121を挟んでいる。駆動信号は、個別電極123及び共通電極124間に供給される。共通電極124は、圧力室16側において、検出電極125との間に検出圧電層122を挟んでいる。駆動電極123と検出圧電層125の間の電位差を検出することにより、圧力室16内のインクの振動を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電層を含むアクチュエータを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の液滴吐出装置は、圧電アクチュエータが振動板を変位させ、キャビティ内のインクに圧力を与えるものである。特許文献1では、この圧電アクチュエータを駆動させる駆動電極間に生じる電位の変化を検出することにより、振動板の残留振動を検出し、インク滴の吐出異常を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1では、駆動電極間の電位の変化、つまり、駆動電極に挟まれた圧電層に発生する振動を検出している。一方、この圧電層とキャビティとの間には金属製の振動板が介在しており、キャビティ内のインクの振動は振動板を通じて圧電層へと伝達される。したがって、駆動電極間に挟まれた圧電層の振動を検出するのでは、キャビティ内のインクの振動を精度良く検出しにくい。
【0005】
本発明の目的は、液体流路内の液体における振動を精度良く検出できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、液体を吐出する吐出口と前記吐出口に液体を供給する液体流路とを有し、前記液体流路の一部が表面に開口した流路ユニットと、電圧を変形の力に変換する駆動圧電層と変形を電圧に変換する検出圧電層とを含み、前記液体流路の開口を跨ぐように前記表面に積層された複数の圧電層と、前記圧電層の積層方向に関して、前記駆動圧電層を挟む第1及び第2の駆動電極並びに前記検出圧電層を前記第1及び第2の駆動電極との間に挟む検出電極とを有し、前記第1及び第2の駆動電極間に供給される駆動信号に基づいて前記液体流路の液体に圧力を印加するアクチュエータと、前記駆動信号を前記アクチュエータに供給する駆動信号供給手段と、前記第1及び第2の駆動電極のいずれかと前記検出電極との電位差を検出する電位差検出手段と、前記駆動信号供給手段に前記アクチュエータへと前記駆動信号を供給させると共に、前記電位差検出手段が検出した電位差に基づいて、前記吐出口の吐出性能を判定する性能判定手段とを備え、前記駆動信号供給手段は、前記吐出口から液体が吐出される程度に前記第1及び第2の駆動電極間の電位差を変化させる吐出駆動信号と、前記吐出口から液体が吐出されない程度に前記第1及び第2の駆動電極間の電位差を変化させる不吐出駆動信号とを選択的に前記アクチュエータに供給し、前記複数の圧電層のうち、前記駆動圧電層が最も前記流路ユニットから離隔して積層され、前記検出圧電層が前記第1及び第2の駆動電極のいずれよりも前記流路ユニットの近くに積層されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、2つの駆動電極とは別途、検出電極を設けており、駆動電極と検出電極との電位差を検出することにより、駆動圧電層よりも液体流路に近い検出圧電層の振動を検出することができる。これにより、駆動圧電層の振動を検出する場合よりも、液体流路内の振動を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドが適用されるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1においてインクカートリッジからヘッドへとインクを供給するインク供給部の構成を示す模式図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドの下部構造である流路ユニットの平面図である。
【図4】図3の二点鎖線IVの範囲の拡大図である。
【図5】図4の流路ユニットにおけるV−V線断面図である。
【図6】図6(a)は図5のアクチュエータユニット付近の拡大図である。図6(b)は個別電極及びランドの平面図である。
【図7】制御系の構成を示すブロック図である。
【図8】図8(a)は、駆動部からドライバICを介してアクチュエータへと駆動信号を供給する制御系の構成及びその状態に対応する模式的回路図である。図8(b)は、駆動信号が供給される際のアクチュエータ、ドライバIC及び検出部の構成及びその状態に対応する模式的回路図である。
【図9】図9(a)は、検出信号が出力される際のアクチュエータ、ドライバIC及び駆動部の構成及びその状態に対応する模式的回路図である。図9(b)は、アクチュエータからドライバICを介して駆動部へと検出信号を出力する制御系の構成及びその状態に対応する模式的回路図である。
【図10】第1〜第3の変形例に係るアクチュエータユニット及び流路ユニットの図6(a)に対応する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッド2が適用されるインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、直方体形状を有する導体の筐体1aを有する。プリンタ1内の部品の一部は、筐体1aと電気的に接続されて基準電位にある。以下、このように基準電位とされることを「接地」と呼ぶ。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。以下の説明上、筐体1aの内部空間を上から順に空間A,B,Cと区分する。空間A及びBは、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成された空間である。空間Aでは、用紙Pの搬送と用紙Pへの画像の記録が行われる。空間Bでは、給紙に係る動作が行われる。空間Cには、インク供給源としてのインクカートリッジ40が収容されている。
【0012】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド2、インクカートリッジ40からのインクをヘッド2へと供給するインク供給部140、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット等が配置されている。空間A内には、これらの機構を含めたプリンタ1各部の動作を制御して、プリンタ1全体の動作を司る制御部100が配置されている。
【0013】
制御部100は、外部から供給された画像データに基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復維持動作等を制御する。
【0014】
制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加えて、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(例えば画像データ)が一時的に記憶される。ASICでは、画像データの書き換え、並び替え等(信号処理や画像処理)が行われる。I/Fは、上位装置とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。後述の図7に示す制御系の構成は、これらのハードウェアやROM等に格納されたソフトウェアが互いに協働することにより構築されている。あるいは、図7に示す機能部の機能に特化した専用回路等が適宜設けられていてもよい。
【0015】
各ヘッド2は、主走査方向(第2方向)に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。4つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム3を介して筐体1aに支持されている。ヘッド2は、流路ユニット12及び4つのアクチュエータユニット120(図3参照)を含む。画像記録に際して、8つのヘッド2の下面(吐出面2a)からはそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。ヘッド2のより具体的な構成については後に詳述する。
【0016】
搬送ユニット21は、図1に示すように、ベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0017】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ19の駆動により、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8の走行に伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、4つのヘッド2に対向配置され、搬送ベルト8のループ上部を内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド2の吐出面2aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0018】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)から搬送ユニット21までの搬送路に沿っている。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21から排紙部31までの搬送路に沿っている。
【0019】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有し、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0020】
空間A及びBには、上述のように、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。制御部100が記録指令に基づいて給紙ローラ25、送りローラ26、28、搬送モータ19等を駆動すると、まず、給紙トレイ23から用紙Pが送り出される。この用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド2の真下を副走査方向に通過する際、各吐出面2aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が記録される。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0021】
なお、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0022】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ40を有する。各カートリッジ40は、インクチューブを介して、対応するヘッド2にインクを供給する。
【0023】
次に、図2〜図6を参照し、ヘッド2及びインク供給部140の構成についてより詳細に説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット120の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0024】
インク供給部140は、図2に示すように、インクカートリッジ40とヘッド2とを接続する。インク供給部140は、ヘッド2ごとに設けられ、インクチューブ141と、その途中に設けられたポンプ142(排出手段)とを含む。ポンプ142は、インクカートリッジ40からインクを強制的にヘッド2へと流入させ、ヘッド2内のインクを加圧する。これにより、ヘッド2のインク流路内に気泡などの異物がある場合に、その異物をインクと共にヘッド2から排出することが可能である。印刷処理時や待機時など、通常の状況においては、ポンプ142が停止されている。このとき、ポンプ142は流路の一部を構成し、ヘッド2でインクが消費されれば、インクカートリッジ40のインクがインクチューブ141を通じて自然にヘッド2へと供給される。このとき、ポンプ142は、インクの流通可能な状態で停止されている。
【0025】
ヘッド2は、図2及び図3に示すように、リザーバユニット11、流路ユニット12、及び、アクチュエータユニット120を有している。リザーバユニット11の内部にはインク流路33が形成されており、インク流路33とインクカートリッジ40とはインク供給部140を介して連通している。インク流路33は、下方に向かって複数の流出流路33aに分岐している。流出流路33aは、リザーバユニット11の下面に開口している。
【0026】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図5参照)を互いに接着した積層体である。図3に示すように、流路ユニット12の上面12xには、開口12yが形成されている。開口12yは、流出流路33aの開口と接続し、インク流路33と連通している。流路ユニット12の内部には、開口12yから吐出口14aに繋がるインク流路が形成されている。当該インク流路は、図3〜図5に示すように、開口12yを一端とするマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。
【0027】
個別インク流路14は、吐出口14aごとに形成されており、図5に示すように、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15、及び、上面12xに開口した圧力室16を含む。圧力室16の開口は、図4〜図6に示すように、ほぼ菱形形状である。圧力室16は、上面12xにおいてマトリクス状に多数配置され、計8つの圧力室群を構成している。各圧力室群は、平面視でほぼ台形状の領域を占める。吐出口14aも、圧力室16と同様に配置され、計8つの吐出口群を構成している。
【0028】
アクチュエータユニット120は、図3に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット120は、図4に示すように、圧力室群(吐出口群)の占める台形領域上に配置されている。サイズは、圧力室群や吐出口群の閉める領域より若干大きい。
【0029】
アクチュエータユニット120には、制御部100からの制御指令に基づいて、ドライバIC132(駆動信号供給手段)から駆動信号が供給される。制御部100、ドライバIC132及びアクチュエータユニット120は、FPC131によって互いに接続されている。FPC131は、アクチュエータユニット120ごとに設けられた平型柔軟基板であり、ドライバIC132が実装されている。FPC131には、後述のアクチュエータ120aへの駆動信号や、アクチュエータ120aからの検出信号等を伝送する各種の配線が形成されている。FPC131の一端は、接続端子が設けられており、アクチュエータユニット120と接続されている。
【0030】
次に、図6及び図7を参照し、アクチュエータユニット120の構成についてより詳細に説明する。
【0031】
アクチュエータユニット120は、図6(a)に示すように、上から順に、個別電極123、駆動圧電層121、共通電極124、検出圧電層122及び検出電極125が流路ユニット12の上面12xに積層された積層体である。なお、個別電極123及び共通電極124が、本発明における第1及び第2の駆動電極と順不同に対応する。各アクチュエータユニット120は、1つの圧力室群に含まれる全ての圧力室16に対向しつつこれらに跨って配置されている。
【0032】
駆動圧電層121及び検出圧電層122は、平面視で、互いに同一の大きさ及び台形形状を有しており、アクチュエータユニット120の平面形状を画定している。駆動圧電層121及び検出圧電層122は共に、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックスからなるシート状部材である。駆動圧電層121及び検出圧電層122は、いずれも、積層体の積層方向と同じ方向に分極されている。本実施形態において、駆動圧電層121及び検出圧電層122は、互いにほぼ同じ厚み(15μm)を有している。
【0033】
共通電極124は検出圧電層122の上面全体に亘って形成され、検出電極125は検出圧電層122の下面全体に亘って形成されている。個別電極123、共通電極124及び検出電極125は、いずれもAu(金)からなり、ほぼ1μmの厚みを有する。共通電極124は、図6に示されていない領域において、スイッチ回路133に接続されている(図8参照)。スイッチ回路133は、共通電極124が筐体1aと接続されて接地された接地状態と、筐体1aとの接続から開放され、筐体1a及びその他の導体から電気的に絶縁された開放状態とを選択的に取る。スイッチ回路133の状態の切り替えは、ドライバIC132によってなされる。つまり、ドライバIC132は、本発明におけるスイッチ制御手段として機能する。
【0034】
検出電極125は常時、接地されている(図8参照)。検出電極125は、流路ユニット12の上面12xに接着されており、圧力室16を封止している。検出電極125は、図6に示されていない領域において、FPC131の配線と接続されている。この配線は、ドライバIC132を介して、後述の検出部103と接続されている。
【0035】
個別電極123は、圧力室16と同様に、マトリクス状に配置されている。各個別電極123は、図6(b)に示すように、主部123a及び延出部123bから構成されている。主部123aは、平面視において圧力室16と相似な菱形形状を有しており、圧力室16内に、これより一回り小さく形成されている。延出部123bは、主部123aの一方の鋭角部から延出されている。延出部123bの先端は圧力室16の外側に配置されている。
【0036】
延出部123bの先端には、ランド126が形成されている。ランド126は、Ag−Pd(銀パラジウム)、Au(金)、Ag(銀)等の導電性材料からなり、本実施形態ではAg−Pdからなる。ランド126は、直径がほぼ130μmの円柱状であり、その上端面は駆動圧電層121の上面からほぼ10μm高い位置にある。ランド126は、上面に形成されたバンプ(図示せず)を介して、FPC131の接続端子と接続されている。ドライバIC132からの駆動信号は、FPC131を介してランド126から個別電極123へと供給される。
【0037】
アクチュエータユニット120は、ドライバIC132から駆動信号が供給されると、圧力室16内のインクに圧力を印加する。このとき機能する圧電層が駆動圧電層121である。本実施形態では、駆動電極である個別電極123及び共通電極124が、駆動圧電層121のみを挟んでいる。検出圧電層122は、駆動用には使用されない。駆動圧電層121は、電圧がかかると変形する。つまり、電圧を変形力(インクに対する加圧力)に変換する。駆動圧電層121において分極方向と電界の方向が同じならば、個別電極123と対向する部分が、厚み方向(積層方向)に伸びると共に面方向に縮む。一方、検出電極125を共通電極124と等電位に保つ場合、検出圧電層122は、自発的には変形しない。したがって、個別電極123と対向する領域において、駆動圧電層121と検出圧電層122との間には、歪み差が発生する。この際、個別電極123と圧力室16とで挟まれた領域が、圧力室16に向かって凸状に変形(ユニモルフ変形)する。このような変形は、個別電極123ごとに、つまり圧力室16ごとに実行可能である。
【0038】
このように、アクチュエータユニット120は、圧力室16ごとに駆動可能な個別のアクチュエータ120aを有している。このアクチュエータ120aをそれぞれ駆動することにより、圧力室16の容積が変化する。このときインクに印加されたエネルギーが所定の大きさ以上になると、その圧力室16に対応する吐出口14aからインクが吐出される。
【0039】
本実施形態のアクチュエータ120aは、上記の機能と共に、個別インク流路14内のインクに生じた振動を検出する機能も有している。インクに生じた振動は、検出電極125を介して検出圧電層122に伝わる。このとき、検出圧電層122は、インクの振動に応じて変形し、分極方向に電圧を誘起する。つまり、変形を電圧に変換する。このとき、駆動圧電層121も、検出圧電層122と共に変形し、同様に電圧を誘起する。これにより、個別電極123と検出電極125との間には、電位差が発生する。この電位差は、両圧電層121、122で生じた電圧の和に相当する。この電位差の変化を取得することにより、アクチュエータ120aの振動、つまりは個別インク流路14内のインクの振動を検出することができる。検出された電位差を示す検出信号は、FPC132を介してドライバIC132へと出力される。この出力信号は、さらに後述の検出部103へと出力される。このように、ドライバIC132は、個別電極123及び検出電極125間の電位差を検出する電位差検出手段でもある。
【0040】
以下、インクの振動検出に係わる制御系の構成及び制御内容について、図7〜図9を参照しつつ説明する。本制御系は、制御部100の一部を構成し、図7に示すように、駆動部101、振動情報記憶部102、検出部103(性能判定手段)及びヘッド加圧制御104等から構成される。
【0041】
駆動部101は、印刷指令、検出駆動指令及び性能回復指令に基づいて、アクチュエータ指示信号と駆動信号とを生成する。アクチュエータ指示信号は、ドライバIC132を駆動する信号であって、駆動信号が供給されるべきアクチュエータ120aが選択される。駆動信号は、アクチュエータユニット120を駆動する信号であって、ドライバIC132で選択されたアクチュエータ120aに供給される。駆動信号には、吐出駆動信号と不吐出駆動信号とがある。吐出駆動信号は、駆動電極123、124間に印加されると、吐出口14aからインクが吐出される。不吐出駆動信号は、駆動電極123、124間に印加されても、吐出口14aのメニスカスが振動するだけで、インクの吐出はない。本実施形態では、印刷指令及び性能回復指令に対して吐出駆動信号が使用され、検出駆動指令に対して不吐出駆動信号が使用される。
【0042】
振動情報記憶部102は、個別インク流路14におけるインクの振動に関する情報が格納されている。振動情報は、残留振動を特徴づける複数の指標(周期、振幅、振幅の減衰率等の値情報)から構成され、吐出特性が正常な場合の残留振動に関する情報である。この振動情報は、不吐出駆動信号をアクチュエータ120aに供給し、対応する個別インク流路14で生じた残留振動を予め測定し、その結果から求められた正常値(所定値)の情報である。
【0043】
検出部103は、インクの振動に対して、その発生、検出と評価及び評価に基づく回復処理を制御する。振動の発生に際して、検出部103は、検出駆動指令を駆動部101に出力する。検出と評価に際して、検出部103は、ドライバIC132にアクチュエータ指示信号(第2指示信号)を直接出力して、検出対象を特定する。このアクチュエータ指示信号は、ドライバIC132に対して、駆動部101からのアクチュエータ指示信号とほぼ逆のスイッチ切替動作を指示する。さらに、検出部103は、検出信号が示す残留振動の各指標と振動情報記憶部102に記憶された振動情報とを比較し、検出された残留振動を特定する。評価に基づく回復処理に際して、検出部103は、性能回復指令を駆動部101に出力する。回復処理は、駆動部101や後述のヘッド加圧制御104と協働して行われる。
【0044】
ヘッド加圧制御104は、主にポンプ142の駆動を制御する。ポンプ142が駆動されると、インクカートリッジ40からヘッド2へと、インクが強制的に流入することになる。
【0045】
ドライバIC132は、図8及び図9に示すように、3つのスイッチ回路132a、132b及び133を含む。スイッチ回路132aは、駆動対象のアクチュエータ120aを選択する。スイッチ回路132bは、検出対象のアクチュエータ120aを選択する。スイッチ回路133は、共通電極124の筐体1aに対する電気的接続状態を切り替える。
【0046】
制御系の制御内容を説明する。例えば、画像データに基づいて画像形成を行う場合、ヘッド制御系(ヘッド2を制御する制御系)が機能する。ヘッド制御系には、駆動部101に加えて、ドライバIC132が含まれる。画像形成に際して、外部から印刷指令が入力されると、駆動部101は、駆動信号及びアクチュエータ指示信号(第1指示信号)を生成する。両信号は、画像データに基づいて生成される。このとき、駆動信号は、吐出駆動信号であって、選択されたアクチュエータ120aに供給される。信号の供給は、印字周期毎に行われ、用紙Pの搬送に同期している。
【0047】
ここで、ドライバIC132は、アクチュエータ指示信号に従って、アクチュエータ120aを選択する。この選択動作には、アクチュエータ120aについて、検出系回路(検出部103)の切り離しと駆動系回路(駆動部101)の選択的接続が含まれる。ドライバIC132は、図8(b)に示すように、検出対象選択用のスイッチ回路132bを全て開放する。また、図8(a)に示すように、スイッチ回路133を接地状態に切り替えると共に、指示されたスイッチ回路132aのみをオン(接続状態)に切り替える。これにより、吐出駆動信号は、選択されたアクチュエータ120aのみに供給可能となる。このアクチュエータ120aに対応する吐出口14aからインク滴が吐出され、用紙P上に画像を構成する画素(ドット)が形成されることになる。
【0048】
振動検出に係わる制御内容を説明する。このとき、ヘッド制御系に加え、振動情報記憶部102、検出部103(性能判定手段)及びヘッド加圧制御104等が協働して動作する。振動検出動作は、インクの振動、その検出、及び検出結果に基づく回復処理の順に進む。
【0049】
まず、インクの振動に際しては、検出部103が、駆動部101を通してドライバIC132を制御する。検出部103は、駆動部101に検出駆動指令を出力する。この検出駆動指令は、検出対象となるアクチュエータ120aにメニスカス振動用の駆動信号を供給するように指示するものである。これを受けて、駆動部101は、ドライバIC132へと駆動信号及びアクチュエータ指示信号を出力する。この場合、駆動信号は、不吐出駆動信号である。その結果、検出対象となるアクチュエータ120aが、インクを吐出させない程度に駆動される。このとき、各スイッチ回路132a、132b、133の動作は、上述の画像形成時と同様である。これにより、そのアクチュエータ120aに対応する個別インク流路14内のインクに圧力が印加され、インクに振動が発生する。
【0050】
その直後、振動検出動作は、振動動作を停止し、振動の検出に移る。検出部103は、アクチュエータ指示信号(第2指示信号)を出力して、検出対象のアクチュエータ120aを指示する。この信号の出力先は、ドライバIC132である。ドライバIC132は、図9(a)に示すように、スイッチ回路133を開放状態にすると共に、スイッチ回路132aを全てオフにする。一方、ドライバIC132は、図9(b)に示すように、アクチュエータ指示信号が指示するスイッチ回路132bのみをオンにする。このとき、アクチュエータ120aは、駆動系回路から切り離されて駆動が停止するとともに、検出系回路と選択的に接続される。共通電極124は、電気的に浮いた状態となり、他の導体から絶縁される。これにより、そのスイッチ回路132bを通じて、個別電極123及び検出電極125間に発生した電圧が、検出信号として検出部103へと出力される。アクチュエータ120aの駆動停止後でも、インクの振動は減衰しながらも続く。この検出信号は、インク内の残留振動を反映した信号であって、残留振動の時間変化を示している。
【0051】
検出部103は、検出信号が示す振動の周期や振幅と、振動情報記憶部102に記憶された正常値とを比較し、インクの残留振動に異常があるか否かを判定する。このように、検出部103は、周期や振幅に関して検出値を所定値と比較する比較手段として機能する。インクの残留振動に異常が生じる原因には、例えば、個別インク流路14内に気泡が生じている場合や、吐出口14a付近のインクの粘度が増加している場合がある。前者の場合には正常値と比べて、振動の周期が小さくなると共に、振幅が小さくなる。後者の場合には正常値と比べて、残留振動の周期が大きくなると共に、振幅が小さくなる。これに基づき、検出部103は、検出値が正常値から変化している場合に、インクの残留振動に異常がある、つまり、吐出口14aからのインクの吐出性能に異常があると判定する。
【0052】
検出部103は、吐出性能に異常があると判定した場合、異常を解消するための性能回復処理を実行する。例えば、残留振動の周期が正常値より小さい場合、検出部103は、性能回復指令をヘッド加圧制御部104に出力する。この性能回復指令には、吐出性能に異常があるヘッド2を示す情報が含まれている。ヘッド加圧制御部104は、性能回復指令が入力されると、ポンプ142を制御する。これにより、インクカートリッジ40からヘッド2に対して、インクが強制的に送り込まれる。ヘッド2からは、インクと共に気泡が排出され、吐出性能が回復する。
【0053】
一方、残留振動の周期が正常値より大きい場合、検出部103は、別の性能回復指令を駆動部101に出力する。この性能回復指令には、増粘が生じた吐出口14aや対応するアクチュエータ120aを示す情報が含まれている。性能回復指令が入力されると、駆動部101は、アクチュエータ指示信号及び駆動信号を生成する。アクチュエータ指示信号は、ドライバIC132に出力される。駆動信号は、吐出駆動信号であって、ドライバIC132を介して選択されたアクチュエータ120aに出力される。ここで、吐出駆動信号は、吐出口14a付近の増粘インクを排出するための信号であって、画像形成時の吐出駆動信号とは異なる。これにより、吐出口14a付近の増粘したインクが吐出されるため、吐出性能が回復する。
【0054】
なお、このように周期の大小で吐出性能の異常の原因を切り分けるのではなく、振幅の変化の仕方により切り分けてもよい。例えば、振幅の減衰率の正常値と比べて早く又は遅く振幅が変化することに基づいて切り分けてもよい。また、周期の大小と振幅の変化の仕方との両方を評価することにより切り分けてもよい。
【0055】
以上説明した本実施形態によると、個別電極123及び検出電極125間の電位差を検出することにより、インクの吐出性能を適切に判定し、各種の回復処理を実行することができる。一方、このような装置による自動処理ではなく、例えば、印刷画像の異常に基づいてプリンタ1のユーザに対処を求めるなどの場合、ユーザの負担が大きい。本実施形態では、装置側で吐出性能の判定のみならず、回復処理までなされるため、ユーザの負担を大幅に低減できる。
【0056】
また、検出電極125が、個別電極123及び共通電極124とは別途、設けられているので、個別電極123と検出電極125との電位差を検出することにより、駆動圧電層121よりも個別インク流路14に近い検出圧電層122の振動を検出することができる。本実施形態では、検出圧電層122と圧力室16とを隔てるのが検出電極125のみであるため、検出圧電層122が個別インク流路14に特に近い。これにより、インクの残留振動を精度良く検出することができる。
【0057】
また、検出電極125が、圧力室16の開口16aを覆い、圧電層とインクとを隔てていることにより、インクが圧電層へと浸透してこれを腐食するのを防止できる。さらに、検出電極125がなく圧電層が露出している場合と比べて検出電極125により圧電層が保護されているため、アクチュエータユニット120を流路ユニット12に貼り合わせる際、異物をかみ込んで圧電層にクラックが発生するのが抑制される。
【0058】
また、本実施形態においては、吐出性能を判定する際にまず、アクチュエータ120aに不吐出駆動信号を供給する。したがって、性能を判定する際にインクを吐出しないため、インクの消費が抑制される。
【0059】
また、インクの残留振動を検出する際は、個別電極123と検出電極125の間に配置された共通電極124を、スイッチ回路133が、接地された状態から開放された状態に切り替える。一方、共通電極124が常時接地された状態であったり、何らかの定電位に保持されたりしていると、検出圧電層122において発生した電圧が個別電極123と検出電極125の間の電位差に反映されず、インクの残留振動を適切に検出できないおそれがある。これに対して、本実施形態では、共通電極124が接地から開放されることにより、検出圧電層122の電圧を検出電圧に適切に反映させることができ、インクの残留振動を適切に検出できる。
【0060】
また、本実施形態では、アクチュエータ120aごとにインクの残留振動を検出できるので、上記の通り、異常が発生したヘッド2や個別インク流路14ごとに回復処理を実行できる。したがって、正常なヘッド2や個別インク流路14に対してインク排出やインク吐出などの不要な回復処理を実行する必要がなく、無駄に電力を消費したりインクを消費したりするのが回避される。
【0061】
以下、上述の実施形態に係る各種変形例について説明する。第1〜第3の変形例は、アクチュエータユニット120に係るものである。第1の変形例に係るアクチュエータユニット220は、図10(a)に示すように、上述のアクチュエータユニット120において、共通電極124と検出圧電層122の間に、追加の圧電層223が介在したものである。このような場合も、個別電極123と検出電極125の間の電位差を検出することにより、検出圧電層122に発生する、インクの残留振動に由来する電圧を検出することができる。なお、圧電層223は分極されていてもいなくてもよい。つまり、インク振動の検出に係る圧電層であってもなくてもよい。
【0062】
第2の変形例に係るアクチュエータユニット320は、図10(b)に示すように、上述のアクチュエータユニット120において、検出圧電層122と流路ユニット12の上面12xの間に、追加の圧電層323が介在したものである。このような場合も、個別電極123と検出電極125の間の電位差を検出することにより、検出圧電層122に発生する、インクの残留振動に由来する電圧を検出することができる。また、駆動圧電層121より流路ユニット12に近い検出圧電層122に発生する電圧を検出するため、駆動圧電層121の電圧を検出する場合より、インクの残留振動を精度良く検出できる。なお、圧電層323は分極されていてもいなくてもよいし、圧電層の代わりに金属製の振動板であってもよい。
【0063】
第3の変形例に係るアクチュエータユニット420は、図10(c)に示すように、個別電極423が駆動圧電層121と検出圧電層122の間に配置され、共通電極424が駆動圧電層121の上面に形成されたものである。共通電極424は、駆動圧電層121の上面に配置されたランド126の周囲を避けるような形状に形成されている。個別電極423は、個別電極123と同様の平面形状を有しており、圧力室16に対しても同様に配置されている。一方、延出部123bに対応する延出部423aの先端とランド126とは、駆動圧電層121を貫通する配線426によって電気的に接続されている。この変形例では、個別電極423と検出電極125の間の電位差に対して、駆動圧電層121において発生する電圧が寄与しない。このため、駆動圧電層121自身に残留した振動が検出結果にノイズとして表れることが抑制され、インクの残留振動を精度良く検出できる。なお、この変形例では、共通電極424が個別電極423と検出電極125に挟まれていないため、共通電極424が常時接地されていてもよい。
【0064】
以上の第1〜第3の変形例に示すように、本発明は様々な構成のアクチュエータユニットに適用可能である。ただし、検出圧電層125は、駆動電極となる個別電極及び共通電極のいずれよりも流路ユニット12側に配置されている必要がある。
【0065】
第4の変形例は、アクチュエータ120aに吐出駆動信号を供給した直後に吐出性能を判定するものである。上述の実施形態は、不吐出駆動信号を供給した直後に判定するものであるが、例えば、画像データに基づいて用紙P上に画像を形成する印刷処理期間内に、吐出性能を判定してもよい。印刷処理期間内には、ある吐出口14aから画像を形成するためにインクを吐出した後、所定の期間、その吐出口14aからインクを吐出しない場合がある。このような不吐出期間、つまり、あるアクチュエータ120aに関して、吐出駆動信号を供給してから次に吐出駆動信号を供給するまでの不吐出期間が所定の長さ以上となる場合に、検出部103が、当該不吐出期間内にそのアクチュエータ120aから出力される検出信号に基づいて吐出性能を判定してもよい。検出部103は、画像データに基づいて不吐出期間を取得し、以上の処理を実行する。なお、「所定の長さ」は、複数の連続する印字周期に跨る期間であってもよいし、1つの印字周期に相当する期間であってもよい。ここで、印字周期とは、副走査方向に関して1ドットに相当する距離だけ用紙Pが搬送されるのに要する時間に相当する。
【0066】
本実施の形態では、画像データに基づくインク吐出に、複数のパルスで構成された吐出信号が用いられる。次の吐出動作に影響を及ぼさないように、吐出信号の最後はインクの振動を抑制するキャンセルパルスで構成される。ここで、第4の変形例において、検出の感度を向上する観点から、振動検出に関与する吐出駆動信号にはキャンセルパルスを含めないことがよい。また、残留振動にノイズを含めないという観点から、振動検出に関与する吐出駆動信号として、1つの吐出パルスのみで構成された信号が選択されるとよい。
【0067】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0068】
例えば、上述の実施形態では、吐出性能の回復処理の1つとして、ヘッド2内のインクを加圧するポンプ142が使用されている。しかし、吐出口14a側からインクを吸引する手段が用いられてもよい。例えば、吐出面2aを被覆するキャッピング手段を設けると共に、キャッピング手段と被覆された吐出面2aとの間の空気を吸引するポンプを設けてもよい。また、上述の実施形態では、回復処理の1つとしてアクチュエータ120aに吐出駆動信号を供給するが、不吐出駆動信号を供給してもよい。これにより、吐出口14a付近のインクが振動し、粘度が低くなる。
【0069】
また、上述の実施形態では、吐出性能を判定した結果に基づいてその回復処理を実行している。しかし、例えば、プリンタ1の前面パネルに設けられたディスプレイに判定結果を表示することにより、ユーザに対して吐出性能の異常に対処するよう促してもよい。
【0070】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等の液体吐出装置に適用可能である。また、液体吐出装置に適用される液体吐出ヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。さらに、本発明に係る液体吐出ヘッドは、インク以外の液体を吐出してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェット式プリンタ(プリンタ)
2 インクジェットヘッド(ヘッド)
12 流路ユニット
14 個別インク流路
14a 吐出口
16 圧力室
16a 圧力室の開口
100 制御部
101 駆動部
103 検出部
104 ヘッド加圧制御部
120 アクチュエータユニット
120a アクチュエータ
121 駆動圧電層
122 検出圧電層
123 個別電極
124 共通電極
125 検出電極
132 ドライバIC
133 スイッチ回路
142 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と前記吐出口に液体を供給する液体流路とを有し、前記液体流路の一部が表面に開口した流路ユニットと、
電圧を変形の力に変換する駆動圧電層と変形を電圧に変換する検出圧電層とを含み、前記液体流路の開口を跨ぐように前記表面に積層された複数の圧電層と、前記圧電層の積層方向に関して、前記駆動圧電層を挟む第1及び第2の駆動電極並びに前記検出圧電層を前記第1及び第2の駆動電極との間に挟む検出電極とを有し、前記第1及び第2の駆動電極間に供給される駆動信号に基づいて前記液体流路の液体に圧力を印加するアクチュエータと、
前記駆動信号を前記アクチュエータに供給する駆動信号供給手段と、
前記第1及び第2の駆動電極のいずれかと前記検出電極との電位差を検出する電位差検出手段と、
前記駆動信号供給手段に前記アクチュエータへと前記駆動信号を供給させると共に、前記電位差検出手段が検出した電位差に基づいて、前記吐出口の吐出性能を判定する性能判定手段とを備え、
前記駆動信号供給手段は、前記吐出口から液体が吐出される程度に前記第1及び第2の駆動電極間の電位差を変化させる吐出駆動信号と、前記吐出口から液体が吐出されない程度に前記第1及び第2の駆動電極間の電位差を変化させる不吐出駆動信号とを選択的に前記アクチュエータに供給し、
前記複数の圧電層のうち、前記駆動圧電層が最も前記流路ユニットから離隔して積層され、前記検出圧電層が前記第1及び第2の駆動電極のいずれよりも前記流路ユニットの近くに積層されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記検出電極が、前記表面と接していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記検出電極が、前記開口を覆っていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記性能判定手段が、前記吐出口の吐出性能を判定する際に、前記駆動信号供給手段に前記アクチュエータへと前記不吐出駆動信号を供給させた後、前記電位差検出手段が検出する電位差に基づいて判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記性能判定手段が、前記吐出口の吐出性能を判定する際に、前記駆動信号供給手段に前記アクチュエータへと前記吐出駆動信号を供給させた後、前記電位差検出手段が検出する電位差に基づいて判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記性能判定手段が、画像データに基づいて画像を形成する期間内において前記吐出口の吐出性能を判定する際に、画像データに対応して前記アクチュエータへと前記吐出駆動信号が供給された直後から次に画像データに対応して前記アクチュエータへと前記吐出駆動信号が供給されるまでの不吐出期間が所定の長さ以上となる場合に、前記電位差検出手段が前記不吐出期間において検出する電位差に基づいて判定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記性能判定手段が、
前記電位差検出手段が検出した電位差が変化する周期及び振幅の少なくともいずれかと、これに対応した所定値とのいずれが大きいかを判定する比較手段を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記電位差検出手段が検出した電位差が変化する周期が前記所定値より大きいと前記比較手段が判定した場合に、前記駆動信号供給手段が前記吐出駆動信号を前記アクチュエータに供給することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出口から前記液体流路内の液体を強制的に排出する排出手段をさらに備えており、
前記電位差検出手段が検出した電位差が変化する周期が前記所定値より小さいと前記比較手段が判定した場合に、前記排出手段が、前記液体流路内の液体を前記駆動信号に基づくことなく排出することを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記排出手段は、前記アクチュエータを駆動することなく、前記液体流路内の液体を加圧して前記吐出口から液体を強制的に排出することを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記検出電極が接地されており、
前記検出電極と前記第1の駆動電極との間には、前記第2の駆動電極が配置されており、
前記第2の駆動電極を接地する接地状態と前記第2の駆動電極を前記接地状態から開放して電気的に絶縁する開放状態とを選択的に取るスイッチと、
前記スイッチの状態を切り替えるスイッチ制御手段と、をさらに備え、
前記性能判定手段が前記吐出口の性能を判定する際に、
前記駆動信号供給手段は、前記第1の駆動電極と前記接地状態の前記スイッチが接続した前記第2の駆動電極との間に前記不吐出駆動信号を供給し、前記電位差検出手段は、前記駆動信号供給手段による前記不吐出駆動信号の供給に続いて、前記第1の駆動電極と前記検出電極との間の電位差を検出すると共に、
前記スイッチ制御手段は、前記駆動信号供給手段が前記不吐出駆動信号を供給する際には前記スイッチを前記接地状態とし、前記電位差検出手段が電位差を検出する際には前記スイッチを前記開放状態とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
画像データに基づいて画像を形成する際は、
前記スイッチ制御手段は、前記スイッチを前記接地状態とし、
前記駆動信号供給手段は、前記第1の駆動電極と前記接地状態の前記スイッチが接続した前記第2の駆動電極との間に前記画像データに対応した前記吐出駆動信号を供給することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
複数の前記吐出口と、前記複数の吐出口に対応する複数の前記アクチュエータとが設けられており、
前記性能判定手段が前記吐出口ごとに吐出性能を判定した結果に基づき、前記駆動信号供給手段は、吐出性能が劣化した前記吐出口ごとに、当該吐出口に対応する前記アクチュエータに前記吐出駆動信号を供給することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
複数の前記吐出口と、前記複数の吐出口に対応する複数の前記アクチュエータとが設けられており、
前記第1の駆動電極が、前記吐出口ごとに個別に設けられており、
前記第2の駆動電極及び検出電極が、前記複数のアクチュエータに跨って共通に設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245715(P2012−245715A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119914(P2011−119914)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】