説明

液体吐出装置

【課題】吐出口に対向する吐出空間を確実に封止する。
【解決手段】プリンタは、ヘッド1と、キャップ部材41を含むキャップ機構40とを含んでいる。キャップ部材41は、リップ部材42と、ホルダ45とを有する。リップ部材42の長尺部には、フック42dが形成されている。ホルダ45の長尺部と対向する部分には、孔45dが形成されている。リップ部材42とホルダ45とは、フック42dが孔45dに引っ掛けられた状態で連結されており、主走査方向に関してフック42dと孔45dとの間には、隙間48a,48bがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドの周囲に設けられたキャップ部材を搬送ベルトに密着させることによって、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材及び搬送ベルトによってキャッピングするインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置において、キャップ部材は、記録ヘッドを囲む環状の側板と、外周端が側板の上端に、内周端が記録ヘッドの外側面に固着された可撓性シートとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−85959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のインクジェット記録装置において、キャップ部材を構成する側板が、金属や硬質合成樹脂などからなる上端部に、ゴムなどの弾性部材が固定されて構成されている。このように側板の構成材質が、上端部と下端部(弾性部材)とで異なると、線膨張係数も異なる。線膨張係数が樹脂よりも大きいゴムなどの弾性部材は、例えば、周囲温度が高くなると、周方向に沿って上端部よりも大きく伸びる。このとき、上端部と下端部とは固定されているため、下端部が湾曲する。特に、一方向に長尺なキャップ部材の場合は、下端部が波打ち状に変形したり、キャップ部材の中央を下にして、記録ヘッドから離れる方向に凸状に反る。なお、周囲温度が低くなると、上述とは逆に変形する。このような下端部の湾曲は、キャッピング時に、下端部と搬送ベルトとの間に隙間を生じるため、密閉空間が形成されない。つまり、ノズル近傍のインクが乾燥する問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、吐出口に対向する吐出空間を確実に封止することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数の吐出口が形成された吐出面を有する一方向に長尺な液体吐出ヘッドと、弾性材料からなり前記液体吐出ヘッドを取り囲む環状のリップ部材と、弾性材料からなり前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドとの間を繋ぐダイアフラムとを有するキャップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、及び、前記リップ部材が前記対向部材に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材から離隔する離隔位置の間において、前記キャップ部材を移動させるキャップ部材移動機構を含むキャップ手段とを備えている。そして、前記キャップ部材は、前記液体吐出ヘッドを取り囲み、前記リップ部材よりも線膨張係数が小さく剛性が高いホルダを有し、前記リップ部材の前記一方向に延在する長尺部には、第1フック及び前記第1フックを引っ掛ける第1引っ掛け部の一方が前記一方向に沿って複数形成され、前記ホルダの前記長尺部と対向する部分には、前記一方に対となる前記第1フック及び前記第1引っ掛け部の他方が複数形成され、前記リップ部材と前記ホルダとは、前記吐出面と垂直な方向に関して、前記第1フックが前記第1引っ掛け部に引っ掛けられた状態で連結されており、前記一方向に関して前記第1フックと前記第1引っ掛け部との間には、隙間がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出装置によると、リップ部材の長尺部が環境温度の変化によって一方向に沿って伸びても(又縮んでも)、その伸び(又は縮み)を当該隙間により吸収することが可能となる。このため、リップ部材が変形しにくくなり、リップ部材が当接位置にあるときに、対向部材に密着しやすくなる。したがって、吐出空間が外部空間に対して確実に封止された封止状態となり、吐出口近傍の液体が乾燥しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるヘッド及びキャップ機構を示す斜視図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った断面図であり、キャッピング状態を示す図である。
【図4】図1のプリンタに含まれるヘッドのヘッド本体を示す平面図である。
【図5】図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図6】図5に示すVI−VI線に沿った部分断面図である。
【図7】ヘッド及びキャップ機構の一部を示す側面図及び正面図である。
【図8】キャップ機構の一部の分解斜視図である。
【図9】(a)は図7に示すIXa−IXa線に沿った断面図であり、(b)は図7に示すIXb−IXb線に沿った断面図である。
【図10】本発明の液体吐出装置の変形例を示し、ヘッド及びキャップ機構の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部1cから排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)1に対してインクが供給される。
【0012】
空間Aには、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、用紙センサ32、搬送機構8、キャップ機構(キャップ手段)40、及び、制御装置100等が配置されている。
【0013】
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。ヘッド1は、ヘッドホルダ(不図示)を介して筐体101aに支持されている。ヘッドホルダは、ヘッド1の下面とプラテン5との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。ヘッド1は、インクを吐出する複数の吐出口108a(図6参照)がヘッド1の下面(吐出面1a)に開口している。
【0014】
用紙センサ32は、搬送される用紙Pの先端を検出する。検出信号は、制御装置100に出力される。制御装置100では、検出信号に基づいて、画像形成時の吐出タイミングが設定される。
【0015】
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと、プラテン5とを含んでいる。2つのガイド部9a,9bは、プラテン5を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙部1cとプラテン5とを繋ぐ。そして、ガイド部9aは、画像形成用の用紙Pをプラテン5に向けて搬送する。搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン5と排紙部31とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。
【0016】
空間Bには、給紙部1cが配置されている。給紙部1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納する。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
【0017】
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対23〜25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0018】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、チューブ(不図示)を介してヘッド1と接続され、当該ヘッド1にインクを供給する。
【0019】
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御装置100は、記録指令に基づいて、給紙部1c、ガイド部9a,9b(搬送機構8)を駆動する。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部9aによりガイドされプラテン5上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、吐出面1aからインクが吐出され、用紙P上に所望の画像が形成される。そして、画像が形成された用紙Pは、下流側ガイド部9bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
【0020】
また、制御装置100は、ヘッド1に対するキャッピング動作を制御する。キャッピング動作では、図3に示すように、キャップ機構40のリップ部材42により吐出空間(吐出面1aと対向する空間)S1が外部空間S2から隔離される。これにより、吐出口108内のインクの乾燥が抑制される。なお、キャッピング動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
【0021】
次に、図2〜図6を参照し、ヘッド1の構成について説明する。なお、図5では、アクチュエータユニット21の下側にあって破線で示すべき圧力室110及びアパーチャ112を実線で示している。
【0022】
ヘッド1は、図2〜図6に示すように、流路ユニット9、アクチュエータユニット21、リザーバユニット11、回路基板12及びヘッドカバー13が、下から順に積層された積層体である。
上流側流路形成部材としてのリザーバユニット11には、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)が形成されており、カートリッジ4からインクが供給される。リザーバは、インクを一時的に貯留する。このリザーバユニット11の上方には、図3に示すように、回路基板12を覆うようにしてヘッドカバー13が積層されている。
【0023】
下流側流路形成部材としての流路ユニット9は、図6に示すように、9枚の矩形状金属プレート122〜130が積層された積層体である。流路ユニット9には、下流側インク流路が形成されている。下流側インク流路は、図4に示すように、上面9aの開口105bでリザーバユニット11の上流側インク流路と接続されている。また、下流側インク流路は、図4〜図6に示すように、開口105bを一端とするマニホールド流路105、マニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105a、副マニホールド流路105aに接続した多数の個別インク流路132で構成されている。
【0024】
個別インク流路132は、流路抵抗調整用のアパーチャ(絞り)112を含み、副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る。上面9aには、圧力室110が開口しマトリクス状に配置されている。一方、下面である吐出面1aには、吐出口108が圧力室110に対応してマトリクス状に配置されている。
【0025】
アクチュエータユニット21は、リザーバユニット11及び流路ユニット9に挟まれて、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている(図4参照)。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面9aに固定されて、各圧力室110の開口を封止する。また、アクチュエータユニット21は、厚み方向に分極された圧電層(最上層)が振動板に積層した積層体である。振動板は、同じ圧電層であるが、自発的に変形しない。最上層は、表面側の多数の個別電極と内側の共通電極に挟まれている。1つの個別電極及び共通電極で挟まれた部分が歪むと、これに振動板を加えた部分がユニモルフ変形する。ユニモルフ変形する部分(個別電極と圧力室で挟まれた部分)が、個別アクチュエータとして働き、駆動信号で選択的に駆動される。
【0026】
アクチュエータユニット21は、図3及び図6に示すように、FPC14の一端に電気的に接続されている。FPC14は、他端が回路基板12と電気的に接続されている。FPC14には、途中部にドライバIC15が実装されている。制御装置100の制御の下、FPC14は、回路基板12で中継・調整された各種信号(制御信号、画像信号等)をドライバIC15に伝達し、ドライバIC15が生成した駆動信号を対応する個別アクチュエータに伝達する。
【0027】
次に、図2,図3,図7〜図9を参照し、キャップ機構40の構成について説明する。
キャップ機構40は、キャップ部材41、キャップ昇降機構50及びプラテン5を含む。キャップ部材41は、一体的に形成されたリップ部材42、ダイアフラム43及び取付部44と、ホルダ45と、フレーム46とを有する。リップ部材42,ダイアフラム43及び取付部44は、ゴム(例えば、ブチルゴム)などの弾性材料からなる。
【0028】
リップ部材42は、環状に形成されており、流路ユニット9の周囲を取り囲む。また、リップ部材42は、図3に示すように、下方に向かって先細りの断面形状を有している。取付部44も、環状に形成されている。取付部44は、図3に示すように、流路ユニット9の側面上端部に沿って全周に亘って固定されている。
【0029】
ダイアフラム43は、環状に形成されており、リップ部材42と流路ユニット9との間に張り渡されている。より具体的には、ダイアフラム43は、可撓性を有した薄膜部材であって、外周端がリップ部材42の内周面に接続し、内周端が取付部44の下面に接続している。これにより、リップ部材42と流路ユニット9との間が塞がれている。
【0030】
リップ部材42は、プラテン5の上面5aに当接する当接位置(図3に示す位置)にあるとき、取付部44から最も離れる。しかし、ダイアフラム43の外周端と内周端との直線距離は、両端間の長さよりも短い。そのため、ダイアフラム43は、図3に示すように、リップ部材42と流路ユニット9との間に屈曲部43aを持つ。本実施の形態では、流路ユニット9に対するリップ部材42の位置に係わらず、ダイアフラム43には、屈曲部43aが生じている。屈曲部43aは外側に広がろうとするので、リップ部材42には外側への付勢力が常に働いている。このとき、リップ部材42の外側への広がりを規制するだけで、リップ部材42をプラテン5の上面5aに確実に当接でき、簡素なキャップ機構40が実現できる。
【0031】
リップ部材42は、図8に示すように、主走査方向に沿って延在する一対の長尺部42aと、これら長尺部42aの端部同士を接続する一対の短尺部42bとを有している。リップ部材42の外周側面42cには、周方向に沿って、複数のフック(第1フック)42d,42e,42f,42gが形成されている。長尺部42aの主走査方向中央部にはフック42eが配置され、片側4つのフック42dが両側からフック42eを挟んでいる。短尺部42bには、副走査方向中央部に1つのフック42fが配置されている。長尺部42aと短尺部42bとの接続部である各角部には、1つのフック42gがそれぞれ配置されている。
【0032】
フック42d〜42fは、図3及び図8に示すように、側面42cから突出した突出部と、その先端で上方に折れ曲がった折れ曲がり部から構成される。全体として、L字形状の断面である。フック42d、42eは、突出部の基端と折れ曲がり部の基端との距離が、後述のホルダ45の厚みにほぼ等しい。フック42gは、突出部のみで、折れ曲がり部を持たない。フック42gの突出部は、所定の温度範囲で、孔45gに対する引っ掛かりが外れない長さを有している。フック42fは、フック42d、42eよりも突出部が長い。また、リップ部材42の周方向に関して、フック42e,42fは同じ長さを有しており、他のフック42d,42gよりも長い。フック42gは、最も短い。
【0033】
ホルダ45は、リップ部材42よりも剛性が高く、線膨張係数がリップ部材42よりも小さい樹脂(例えば、ABS樹脂、PBT/ABS樹脂)製である。ホルダ45は、図8に示すように、主走査方向に沿って延在する一対の長尺部45aと、これら長尺部45aの端部同士を接続する一対の短尺部45bとを有している。
【0034】
ホルダ45は、リップ部材42の外側から流路ユニット9を囲む環状部材であって、図9(a)に示すように、水平部45x、第1垂直部45y1、第2垂直部45y2及び第3垂直部45y3から構成される。枠状の水平部45xは、中央の開口にヘッド1が挿通される。第1垂直部45y1は、水平部45xの外側端部から下方に立設されている。第2垂直部45y2は、水平部45xの中央から上方に立設されている。第3垂直部45y3は、水平部45xの内側端部から上方に立設されている。このうち、水平部45xは、下面がリップ部材42の上端に当接し、リップ部材42の上方への変形を規制する。第1垂直部45y1は、リップ部材42の外側面に当接し、リップ部材42の外側への広がりを規制する。また、2つの垂直部45y2、45y3は、同じ高さを有し、ホルダ45の高剛性化に寄与する。
【0035】
長尺部45aには、図9(b)に示すように、第1垂直部45y1を貫通する9個の孔(第1引っ掛け部)45dが形成されている。孔45dは、副走査方向に関して、リップ部材42のフック42d、42eと対向する。正面視で、孔45dの開口は、主走査方向に長い長方形状を有し、上辺がちょうど水平部45xの底面に対応する。
【0036】
短尺部45bには、図7(b)及び図8に示すように、フック42fと対向する孔45fが形成されている。また、長尺部45aと短尺部45bとを接続する角部には、フック42gと対向する孔45gが形成されている。リップ部材42は、フック42d〜42gを内側から孔45d,45f,45gに引っ掛けることで、ホルダ45に連結される。このとき、フック42d〜42gと孔45d,45f,45gが鉛直方向(吐出面1aに垂直な方向)に係止される。また、フック42d〜42fの折れ曲がり部は、高さが孔45d、45fと作る鉛直方向の隙間の間口より大きい。リップ部材42は、水平方向(主走査方向及び鉛直方向と直交する方向)にも係止されることになる。フック42d〜42fは、弾性変形するので、孔45d、45fへの挿通は容易である。折れ曲がり部には、温度が下がって間口が広がっても、水平方向の引っかかりが保たれる高さがある。
【0037】
これら孔45d,45f,45gは、図7に示すように、フック42d〜42gの突出部よりも一回り大きい。孔45d、45f、45gは、ホルダ45の周方向に関してほぼ長さが等しく、フック42eと対応の孔45dの中央同士を揃えたとき(リップ部材42がホルダ45に連結されたとき)、主走査方向に関してフック42dの両側に隙間48ができる。基準温度(例えば、20℃)において、長尺部45aの中央に対して外側の隙間48aは、内側の隙間48bより大きい。鉛直方向に関しても、突出部の下面が孔45d、45f、45gに接した状態で、突出部の上面が孔45d、45f、45gとの間に隙間48cを作る。本実施の形態では、隙間48cは、隙間48bとほぼ同じ大きさである。
【0038】
基準温度から温度が低下すると、リップ部材42とホルダ45との線膨張係数の違いから、リップ部材42がホルダ45に対して相対的に縮む。フック42dが孔45dに近づいて、隙間48bの主走査方向に間口が小さくなる。このとき、保管に関する想定温度範囲内での温度低下であれば、フック42dと孔45dとは接触することが無く、リップ部材42の波打ち変形は生じない。基準温度から温度が増加すると、リップ部材42がホルダ45に対して相対的に伸びる。隙間48aの主走査方向の間口が小さくなる。このとき、想定温度範囲内での温度増加であれば、フック42dと孔45dとは接触することが無く、リップ部材42の波打ち変形は生じない。
【0039】
ここで、隙間48aが隙間48bより大きな間口を持つのは、温度の減少方向よりも増加方向に、温度の基準温度に対して大きな変化幅を許容するためである。広い温度範囲で、リップ部材42の伸縮に高い自由度が得られる。
【0040】
本実施の形態では、短尺部42b同士の外周面間距離の方が短尺部45b同士の内周面間距離より若干小さく、フック42fの突出部がフック42d、42eの突出部より突出長が大きく、ホルダ45の角部はリップ部材42の角部の曲率半径より小さい。さらに、リップ部材42の角部にあるフック42gは、上述のように、突出部のみで構成されている。第1の特徴は、リップ部材42をホルダ45に組み付けると、短尺部42bと短尺部45bとの間に若干の隙間が生じる。この隙間は、リップ部材42の伸びを許容し、温度増加時の波打ち変形を防止する。第2の特徴は、温度変化時に、リップ部材42の滑らかな伸縮を許容する。第3の特徴は、両者を組み付けると、両者の角部間に隙間が生じる。温度が増加すると、リップ部材42の角部がホルダ45の角部に倣うように変形して、長尺部42a及び短尺部42bの各長手方向の自由な伸びを許容する。第4の特徴は、広い範囲の温度変化に対して、角部間の隙間の増減を妨げない。
【0041】
ホルダ45の長尺部45aには、図7(a)及び図8に示すように、複数のフック(第2フック)45hが形成されている。これらフック45hは、主走査方向に沿って互いに離隔して配置されている。フック45hは、2つ1組で近接配置されている。各フック45hは、図9(b)に示すように、突出部が水平部45xの中央から立設され、その先端で外側に折れ曲がる折れ曲がり部を有する。フック45hは、第2及び第3垂直部45y2、45y3に比べて若干高い。
【0042】
フレーム46は、ホルダ45よりも剛性が高く、線膨張係数がホルダ45よりも小さい金属(例えば、ステンレス)から構成されている。フレーム46は、図8に示すように、主走査方向に沿って延在し、互いに別体の2つの平行部46aからなる。また、フレーム46は、ホルダ45の長尺部45aの外側において、流路ユニット9を挟んでいる。つまり、ホルダ45は、図9に示すように、フレーム46と流路ユニット9とに挟まれている。
【0043】
平行部46aは、図9(a)に示すように、水平部46xと、垂直部46yと、複数のフック(第3フック)46fとを有している。平板状の水平部46xは、ホルダ45の第2垂直部45y2及び第3垂直部45y3の上に配置される。垂直部46yは、水平部46xの外側端部から下方に立設されている。フック46fは、水平部46xの内側端部から上方に立設されている。水平部46x及び垂直部46yは、図8に示すように、主走査方向に沿って延在している。複数のフック46fは、主走査方向に沿って互いに離隔して配置され、先端には外側に折れ曲がる折れ曲がり部を有する。
【0044】
水平部46xと垂直部46yとがなす角部には、図8に示すように、複数の孔(第2引っ掛け部)46dが形成されている。これら孔46dは、主走査方向に沿って配列されている。孔46dは、図7(a)に示すように、組となった2つのフック45hと対向し且つこれら2つのフック45hに跨る長さを有している。ホルダ45は、フック45hの折れ曲がり部を内側から孔46dに引っ掛けることで、フレーム46に連結される。このとき、フック45hと孔46dが鉛直方向に係止される。フック45hは、2つの垂直部45y2、45y3より高いので、フレーム46が組み付けられると、先端が水平部46xと水平方向に重なる。フック45hと孔46dとは、水平方向にも係止される。このとき、フック45hの周囲には、その全周に亘って隙間が生じる。この隙間は、想定温度範囲内の温度変化に対して、ホルダ45のフレーム46に対する3次元的変位を可能にする。
【0045】
キャップ昇降機構50は、2つのリフト部材51と、これらリフト部材51をヘッド1に対して昇降させる昇降装置(不図示)とを有している。本実施形態における昇降装置は、ソレノイドからなり、制御装置100によって制御される。なお、昇降装置は、リフト部材51を昇降させることが可能であればどのような構成であってもよい。
【0046】
2つのリフト部材51は、主走査方向に沿って配置され、ホルダ45の中央に関して対象の位置にある。リフト部材51は、ホルダ45と同じ樹脂製の一体成型部材で、4本のアーム52と接続部53から構成される。接続部53は、図8に示すように、平面視で四角形の平板部材で、その四隅から鉛直方向下方にアーム52が延びている。4本のアーム52は、2本ずつが主走査方向に並んで組となり、副走査方向にヘッド1を挟む。図9に示すように主走査方向に見たとき、リフト部材51はU字形状である。
【0047】
アーム52の先端部には、孔(第3引っ掛け部)52aが形成さている。孔52aは、図9(a)に示すように、フック46fの折れ曲がり部と対向する位置において、副走査方向に貫通している。孔52aは、この折れ曲がり部よりも一回り大きく形成されている。フレーム46は、折れ曲がり部を内側から孔52aに引っ掛けることで、リフト部材51に連結される。このとき、フック46fと孔52aが鉛直方向に係止される。フック46fの周囲には隙間がある。
【0048】
また、ヘッド1を挟むアーム組は、先端が基端よりもやや内側になるように配置されている。このため、フック46fは、アーム52によってヘッド1側に付勢されている。温度が上昇したとき、接続部53が副走査方向に延びるが、アーム52はフック46fから外れない。ここで、図8に示すように、平行部46aは、主走査方向両端部が副走査方向に張り出している。この張り出し部は、短尺部45bの垂直部45y2、45y3上に載置され、アーム52からの付勢力を支える。温度が下がったとき、付勢力が増しても、平行部46aは倒れない。
【0049】
この構成において、制御装置100の制御により、昇降装置が駆動されると、2つのリフト部材51が昇降する。このリフト部材51の昇降によって、キャップ部材41(リップ部材42)が昇降し、当接位置(図3に示す位置)と離隔位置(図1及び図9に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、図3に示すように、吐出空間S1が、吐出面1aとプラテン5の上面5aとに挟まれて、外部空間S2から隔離された封止状態となっている。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された非封止状態となっている。
【0050】
ここで、当接位置では、アーム52の孔52aは、鉛直方向上方の内周面がフック46fの折れ曲がり部に当接している。さらに、フレーム46の水平部46xがホルダ45の2つの垂直部45y2、45y3の上端に当接し、ホルダ45の水平部45xの下面がリップ部材42の上端に当接している。本実施の形態では、各当接部が鉛直方向に沿って配置されている。これにより、昇降装置からアーム52に加えられた押圧が、フレーム46、ホルダ45及びリップ部材42を介して真っ直ぐプラテン5に及び、良好な封止状態が得られる。
封止状態で温度変化が生じた場合、各当接部では、少なくとも部材間の水平方向の相対変位は自由である。そのため、各当接部には、封止不良を誘発するようなひずみが生じない。非封止状態にあっては、部材間の相対変位の自由度は増し、ひずみは全く生じない。このように、本実施の形態では、広い温度範囲で当接位置における確実な封止状態を実現できる。
【0051】
次に、制御装置100が実行するキャッピング動作の制御内容について説明する。
【0052】
制御装置100は、先ず、キャッピング指令の受信の有無を判断する。キャッピング指令の受信前、リップ部材42は離隔位置にある。制御装置100は、キャッピング指令を受信すると、各キャップ機構40のキャップ昇降機構50の昇降装置を駆動し、リップ部材42の先端をプラテン5の上面5aに所定の押圧力で当接させる。これにより、吐出空間S1が外部空間S2から隔離された封止状態となる。
【0053】
ヘッド1の周囲温度(環境温度)が所定温度よりも高くなると、リップ部材42が膨張する。長尺部42aはフック42eを中心に主走査方向外側に伸び、短尺部42bはフック42fを中心に副走査方向外側に伸びる。これら両方向からの伸びは、リップ部材42の角部に集中する。このとき、各角部は、ホルダ45の角部に向かって変形して、その曲率半径を小さくする。角部の変形によって、各伸びが吸収される。
【0054】
また、周囲温度が所定温度よりも低くなると、リップ部材42が縮む。このときは、長尺部42aが主走査方向中央に向かって縮む。この場合、リップ部材42の縮みを隙間48bが吸収する。さらに、周囲温度が低下した場合には、フック42dが孔45dにより規制されながら、リップ部材42がほぼ均一に縮む。このため、リップ部材42は波打ち変形がしにくく、封止状態を確保できる。
【0055】
こうして、キャッピング動作が終了する。この後、外部装置から記録指令などの信号を受信すると、制御装置100は、キャップ機構40の昇降装置を駆動し、リップ部材42の先端をプラテン5から離隔させる。これにより、吐出空間S1が、外部空間S2に開放された非封止状態となる。そして、上述したように記録動作が制御装置100の制御によって行われる。
【0056】
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ101によると、ホルダ45の孔45dとリップ部材42のフック42dとの間に隙間48a,48bが形成されているので、環境温度の変化によってリップ部材42が変形しにくくなる。このため、キャッピング時に、吐出空間S1の封止状態における気密性が確保され、吐出口108近傍のインクが乾燥しにくくなる。
【0057】
また、隙間48aは、フック42dの上の隙間48cよりも大きい。このため、長尺部42aの伸びを効果的に吸収することが可能となる。変形例として、フック42dの内側にある隙間48bが、隙間48cよりも大きくてもよい。この場合、長尺部42aの縮みを効果的に吸収することが可能となる。
【0058】
さらに、垂直な方向に関してフック42dと孔45dとの間にも隙間48cがあるため、プラテン5が若干傾いていても、この隙間48cでプラテン5の傾きを吸収することが可能となる。このため、リップ部材42がプラテン5に確実に密着する。加えて、リップ部材42の垂直方向に関する伸びも当該隙間48cで吸収することが可能となり、リップ部材42がより変形しにくくなる。また、ホルダ45、フレーム46、リフト部材51が組み付けられた状態において、フック45h,46fの周囲には隙間がある。このため、ホルダ45、フレーム46、アーム52などが膨張しても、当該隙間が吸収する。この結果、キャップ部材41が内外に変形しなくなる。
【0059】
フック42dの両側に隙間48a,48bがあるため、長尺部42aの主走査方向の伸縮を当該隙間48a,48bにより吸収することが可能となる。このため、リップ部材がより一層変形しにくくなる。
【0060】
ホルダ45が、ヘッド1との間にリップ部材42の長尺部42aを挟んでいる。これにより、リップ部材42がホルダ45の内側に配置される。このため、膨張、又は、ダイアフラム43の外側への押圧力によって、リップ部材42が外側に広がっても、フック42d,42eと孔45dとが外れにくくなる。
【0061】
リップ部材42にフック42d〜42gが形成され、ホルダ45に孔45d,45f,45gが形成されているため、リップ部材42の剛性を維持することが可能となる。
【0062】
ホルダ45にフック45hが形成され、フレーム46(平行部46a)に孔46dが形成され、これらフック45h及び孔46dによってホルダ45とフレーム46が連結されている。これにより、フック45hと孔46dとの間にも隙間が存在し、ホルダ45が伸びても、その伸びが吸収される。このため、ホルダ45がフレーム46に対して変形しにくくなる。この結果、リップ部材42がプラテン5に確実に密着させることができる。加えて、ホルダ45の剛性を維持することが可能となる。
【0063】
また、平行部46aが、ヘッド1との間にホルダ45の長尺部45aを挟んでいる。これにより、ホルダ45が平行部46aの内側に配置される。このため、膨張、又は、ダイアフラム43の外側への押圧力によって、リップ部材42とともにホルダ45が外側に広がっても、フック45hが孔46dから外れにくくなる。
【0064】
平行部46aにフック46fが形成され、アーム52に孔52aが形成され、これらフック46f及び孔52aによってフレーム46とアーム52が連結されている。これにより、フック46fと孔52aとの間にも隙間が存在し、アーム52が伸びても、その伸びが吸収される。このため、鉛直方向に関して、フレーム46の平行部46aの傾きを抑制することが可能となる。
【0065】
リフト部材51は、主走査方向から見たときに、U字形状を有する。このようなリフト部材51を射出成形で製造すると、アーム52の先端が副走査方向に関して内側にやや倒れた状態になりやすい。このリフト部材51によって、フック46fがアーム52によって内側へ付勢される。このため、環境温度の上昇によってアーム52が外側に広がろうとしても、フック46fが孔52aから外れることがない。
【0066】
変形例として、図10に示すように、平行部46aのフック46f´が、水平部46xの外側端部から上方に立設されていてもよい。フック46f´は、フック46fと同様に、突出部と折れ曲がり部から構成される。この場合、折れ曲がり部は、突出部の上端から内側に向かって延び、アーム52の孔52aに引っ掛けられていてもよい。このようにフック46f´が、副走査方向に関して、ヘッド1との間にアーム52を挟んだ状態で、フレーム46の平行部46aとアーム52とが連結されている。フック46f´は、折れ曲がり部が孔52aを内側から引っ掛ける場合と違って、アーム52から付勢力を受けない。その分、フレーム46を介してホルダ45及びリップ部材42が変形しにくくなる。この結果、リップ部材42がプラテン5に確実に密着する。さらに、フレーム46とリフト部材51との線膨張係数の違いから、外側にアーム52が広がっても、フック46f´と孔52aとが外れにくくなる。
【0067】
また、ヘッド1(例えば、リザーバユニット11)の両側面には、複数の突出部1bが形成されていてもよい。この突出部1bは、副走査方向に関して、アーム52と対向する位置に形成されている。また、突出部1bは、鉛直方向に沿って延在し、その先端面がアーム52の内面と接触している。つまり、リフト部材51の昇降に伴って、アーム52の内面と突出部1bの先端面とが摺動する。この構成により、アーム52が、ヘッド1と所定の位置関係を保って移動することになり、常に所定方向の押圧力がリップ部材42に加えられる。また、フック46fの折れ曲がり部が孔52aを内側から引っ掛ける構成では、アーム52がフック46fに及ぼす付勢力が規制されるので、過度の付勢力によるリップ部材42の波打ち変形が防止される。一方、フック46f´の折れ曲がり部が孔52aを外側から引っ掛ける構成では、アーム52のヘッド側への変位が規制されるので、フック46f´と孔52aとが外れにくくなる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、リップ部材42に引っ掛け部となる孔が形成され、この孔に対となるフックがホルダ45に形成されていてもよい。これにおいても、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、フック42d,42eと孔45dとの間にある2つの隙間48a,48bが、いずれか1つだけでもよい。つまり、フック42d,42eの主走査方向に関する内側側面と孔45dとが密着していてもよい。また、隙間48bが、隙間48aよりも大きくてもよい。特にこの構成は、リップ部材42に孔が形成され、ホルダ45にフックが形成されるときに有効である。2つの構成間には、線膨張係数の大小関係から共通点があり、共にリップ部材42がホルダ45に対して相対的に伸縮する。このとき、他の部分を上述の実施例と同じ形態とすれば、これと同じ効果が得られる。また、リップ部材42の長尺部42aが、ヘッド1との間にホルダ45を挟んでもよい。
【0069】
ホルダ45とフレーム46とがネジ又は接着剤などで固定されていてもよい。さらに、アーム52とフレーム46もネジ又は接着剤などで固定されていてもよい。また、フック45hと孔46dとの間に隙間がなくてもよい。フック46fと孔52aとの間にも隙間がなくてもよい。
【0070】
ホルダ45の長尺部45aが、ヘッド1との間に平行部46aを挟んでもよい。ホルダ45に引っ掛け部となる孔が形成され、この孔に対となるフックがフレーム46の平行部46aに形成されていてもよい。平行部46aに引っ掛け部となる孔が形成され、この孔に対となるフックがアーム52に形成されていてもよい。
【0071】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ヘッド(液体吐出ヘッド)
1a 吐出面
1b 突出部
5 プラテン(対向部材)
40 キャップ機構(キャップ手段)
41 キャップ部材
42 リップ部材
42a 長尺部
42b 短尺部
42d〜42g フック(第1フック)
43 ダイアフラム
45 ホルダ
45d,45f,45g 孔(第1引っ掛け部)
45h フック(第2フック)
46 フレーム
46a 平行部
46d 孔(第2引っ掛け部)
46f フック(第3フック)
48a〜48d 隙間
50 キャップ昇降機構(キャップ部材移動機構)
51 リフト部材
52 アーム
52a 孔(第3引っ掛け部)
53 接続部
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
108 吐出口
S1 吐出空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口が形成された吐出面を有する一方向に長尺な液体吐出ヘッドと、
弾性材料からなり前記液体吐出ヘッドを取り囲む環状のリップ部材と、弾性材料からなり前記リップ部材と前記液体吐出ヘッドとの間を繋ぐダイアフラムとを有するキャップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、及び、前記リップ部材が前記対向部材に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材から離隔する離隔位置の間において、前記キャップ部材を移動させるキャップ部材移動機構を含むキャップ手段とを備えており、
前記キャップ部材は、前記液体吐出ヘッドを取り囲み、前記リップ部材よりも線膨張係数が小さく剛性が高いホルダを有し、
前記リップ部材の前記一方向に延在する長尺部には、第1フック及び前記第1フックを引っ掛ける第1引っ掛け部の一方が前記一方向に沿って複数形成され、
前記ホルダの前記長尺部と対向する部分には、前記一方に対となる前記第1フック及び前記第1引っ掛け部の他方が複数形成され、
前記リップ部材と前記ホルダとは、前記吐出面と垂直な方向に関して、前記第1フックが前記第1引っ掛け部に引っ掛けられた状態で連結されており、
前記一方向に関して前記第1フックと前記第1引っ掛け部との間には、隙間があることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記隙間は、前記垂直な方向に関して前記第1フックと前記第1引っ掛け部との間にある隙間よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記一方向に関して、前記第1フックの両側には、前記隙間があることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記一方向において、前記吐出面の中央部に対して、対となる前記第1フックと前記第1引っ掛け部とが作る外側の前記隙間が、内側の前記隙間よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ホルダは、前記一方向及び前記垂直な方向と直交する直交方向に関して、前記液体吐出ヘッドとの間に前記リップ部材の前記長尺部を挟んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記リップ部材は、一対の前記長尺部と、前記長尺部の端部同士を繋ぐ前記長尺部より短い一対の短尺部とから構成され、
前記リップ部材の前記短尺部と前記長尺部とが繋がる角部には、前記第1フック及び前記第1引っ掛け部の一方が形成され、
前記ホルダの前記角部と対向する部分には、前記一方に対となる前記第1フック及び前記第1引っ掛け部の他方が形成されており、
前記リップ部材の周方向に関して、当該第1フックの両側には、隙間が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記リップ部材の角部と前記ホルダの角部との間には、別の隙間があることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記リップ部材の角部の外周面は、前記ホルダの角部の内周面に比べて大きな曲率半径を有していることを特徴とする請求項6又は7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記リップ部材に前記第1フックが形成され、前記ホルダに前記第1引っ掛け部となる孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記キャップ部材は、前記一方向に延在する一対の平行部を含む、前記ホルダよりも線膨張係数が小さく剛性の高いフレームを有し、
前記ホルダの前記平行部と対向する部分には、第2フック及び前記第2フックを引っ掛ける第2引っ掛け部の一方が前記一方向に沿って複数形成され、
前記平行部の前記ホルダと対向する部分には、前記一方に対となる前記第2フック及び前記第2引っ掛け部の他方が複数形成され、
前記ホルダと前記フレームとは、前記垂直な方向に関して、前記第2フックが前記第2引っ掛け部に引っ掛けられた状態で連結されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記平行部は、前記一方向及び前記垂直な方向と直交する直交方向に関して、前記液体吐出ヘッドとの間に前記ホルダを挟んでいることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記ホルダに前記第2フックが形成され、前記平行部に前記第2引っ掛け部となる孔が形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記キャップ部材移動機構は、線膨張係数が前記平行部よりも大きく前記リップ部材よりも小さい樹脂からなり、前記垂直な方向に沿って延在する複数のアームが前記一方向に沿って並設されたリフト部材を含み、
前記アームの先端部には、第3フック及び前記第3フックを引っ掛ける第3引っ掛け部の一方が形成され、
前記平行部の前記アームの先端部と対向する部分には、前記一方に対となる前記第3フック及び前記第3引っ掛け部の他方が形成され、
前記アームと前記フレームとは、前記垂直な方向に関して、前記第3フックが前記第3引っ掛け部に引っ掛けられた状態で連結されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記複数のアームは、前記一方向及び前記垂直な方向と直交する直交方向に関して、前記液体吐出ヘッドを挟んでおり、
前記リフト部材は、前記複数のアームの基端部を一体的に接続する接続部を有していることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記平行部に前記第3フックが形成され、
前記第3フックは、前記一方向及び前記垂直な方向と直交する直交方向に関して、前記液体吐出ヘッドとの間に前記アームを挟んでおり、
前記アームには、前記第3引っ掛け部となる孔が形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記液体吐出ヘッドの側面及び前記アームの前記側面と対向する面のいずれか一方には、他方に向かって突出した突出部が形成されており、
前記突出部の先端が前記垂直な方向に沿って延在し且つ前記他方と摺動することを特徴とする請求項15に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記平行部に前記第3フックが形成され、
前記アームは、前記一方向及び前記垂直な方向と直交する直交方向に関して、前記液体吐出ヘッドとの間に前記第3フックを挟むと共に、前記液体吐出ヘッドに向かって前記第3フックを付勢しており、
前記アームには、前記第3引っ掛け部となる孔が形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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