説明

液体吐出装置

【課題】加湿液タンク内における不揮発性成分の濃度が高くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】プリンタは、液体を吐出する吐出面40を有するヘッド4と、該吐出面40に対向した封止空間を外部から封止する封止状態と、該封止空間を外部に露出した非封止状態を選択的に採り得るキャップ手段と、外部から補給された不揮発性成分を含む加湿液を貯蔵する加湿液タンク20と、加湿液タンク20に貯蔵された加湿液によって加湿された加湿空気を、封止状態となっている封止空間に供給する加湿空気供給手段を備えている。加湿液タンク20内には、該加湿液タンク20内に貯蔵された加湿液中の不揮発性成分が貯留する際の該不揮発性成分の通過を許す開口部と、該不揮発性成分の通過を遮る非開口部を形成した流動抑制部材3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出対象に向けて吐出する液体吐出装置に関し、具体的にはインクを記録媒体に吐出するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドからインクを記録媒体に向けて吐出する。該インクジェットヘッドのノズル内のインクが増粘するのを防止するために、ノズルの下面である吐出面を気密に封止するキャップ内と、加湿液を貯蔵している加湿液タンクを連通させる技術が以前から提案されている(例えば、特許文献1参照)。加湿液タンク内の加湿液によって加湿された空気は、キャップ内に充填され、これによりノズル内のインクが増粘するのを防いでいる。加湿液タンク内の加湿液が少なくなると、加湿液が該加湿液タンクの外部から補給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―122543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加湿液には、防腐剤等の不揮発性成分を含んだ水が用いられるのが一般的である。この場合、加湿液タンク内の加湿液の蒸発と、該加湿液タンク内への加湿液の補給が繰り返されると、加湿液タンク内における不揮発性成分の濃度が高くなる。これにより、該加湿液タンク内にて加湿液が蒸発しにくくなり、加湿された空気を効率よく生成することができなくなる虞れがある。
本発明の目的は、加湿液タンク内における不揮発性成分の濃度が高くなることによる加湿機能の低下を抑制することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面に対向した封止空間を外部から封止する封止状態と、該封止空間を外部に露出した開放状態を選択的に取り得るキャップ手段と、外部から補給された不揮発性成分を含む加湿液を貯蔵する加湿液タンクと、前記加湿液タンクに貯蔵された加湿液によって加湿された加湿空気を、前記封止状態となっているときの前記封止空間に供給する加湿空気供給手段を備え、前記加湿液タンク内には、鉛直方向の加湿液の流動を抑制する流動抑制部材が設けられており、該流動抑制部材には鉛直方向の加湿液の通過を許容する開口部、及び鉛直方向の加湿液の通過を遮る非開口部が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
加湿液内の不揮発性成分の濃度が高くなると、濃度がより高い加湿液の部分が流動抑制部材に形成された開口部を通って加湿液タンクの鉛直方向下部に貯留される。加湿液タンク内の鉛直方向上部から加湿液が補給されたり、液体吐出装置が揺らされたりすると、加湿液タンクの鉛直方向上部に貯留された不揮発性成分が比較的低濃度の加湿液と、加湿液タンクの鉛直方向下部に貯留された不揮発性成分が比較的高濃度の加湿液とが混合する虞れがあるが、流動抑制部材の非開口部では加湿液が通過できないから、加湿液タンクの鉛直方向下部及び鉛直方向上部に貯留された加湿液とが混合することを抑制することができる。これにより、加湿機能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの内部構造を示す正面図である。
【図2】ヘッドと加湿空気供給手段の接続形態を示す側面図である。
【図3】ヘッドと加湿空気供給手段の接続形態を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は加湿液タンクの内部を示す図である。
【図5】流動抑制部材の平面図である。
【図6】コントローラと加湿液タンクの接続形態を示す図である。
【図7】コントローラと加湿液タンクの接続形態を示す図である。
【図8】別の流動抑制部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図を用いて、説明する。以下の記載では、上方及び下方は鉛直方向に沿う向きを指す。
図1に示すように、プリンタ1は直方体状の筐体10を有し、該筐体10の天板上部には、排紙部11が設けられている。筐体10内には、上方から下方に向かって、各々異なる色のインクを用紙Pに吐出する4つの液体吐出ヘッド(以下「ヘッド」と略す)4、用紙Pを水平に搬送した後に排紙部11に送る搬送ユニット5、用紙Pを供給する給紙ユニット6、及び各色のインクを貯蔵するインクカートリッジ7が配置されている。該4つのヘッド4には、印刷待機時にヘッド4内のインクの増粘を防ぐべく、ヘッド4の下面に加湿空気を送り込む加湿空気供給手段2が接続されている。筐体10の内側上部にて、ヘッド4に干渉しない位置には、筐体10内の各機構及び電気回路の動作を司るコントローラ12と、前記加湿空気供給手段2に加湿液を供給する加湿液カートリッジ13が配置されている。
【0009】
コントローラ12は例えばCPUであって、周知の如くキャッシュメモリのような小容量のメモリを備えている。また、コントローラ12は内部の動作クロック周波数を分周してタイマーとして用いることができ、またコントローラ12に制御される各要素が何回作動したかを計測するカウンタ機能を有する。搬送ユニット5は図1中の用紙Pを左から右に搬送する機構である。以下の記載では、印刷領域において用紙Pを搬送する方向を副走査方向、水平面内において該副走査方向と直交する方向を主走査方向と呼ぶ。
【0010】
前記搬送ユニット5は、プラテン50と該プラテン50の両側に配備された搬送ローラ51、51aを有する。搬送方向上流側の搬送ローラ51によって搬送力を付与された用紙Pはプラテン50の上面に支持されつつ搬送される。プラテン50を通過した用紙Pは、搬送方向下流側の搬送ローラ51aによって搬送力を付与されて、該搬送ローラ51aと排紙部11との間に位置するガイド52及び送りローラ53によって排紙部11に送られる。
前記給紙ユニット6は、給紙トレイ60と給紙ローラ61を有し、該給紙ローラ61と前記搬送ユニット5の間には、2つのガイド62及び送りローラ63が配置されている。給紙ローラ61は給紙トレイ60内の最上位の用紙Pを取り出し、該ガイド62及び送りローラ63によって搬送ユニット5の上流側に搬送する。
【0011】
プラテン50の下面には反転ローラ54が取り付けられ、該反転ローラ54には封止板42が前記プラテン50に対向して取り付けられている。反転ローラ54は封止板42及びプラテン50とともに昇降可能である。ヘッド4からインクが吐出する時、即ち印刷時においてはプラテン50をヘッド4の下面に対向させる。
印刷待機時にて、加湿空気供給手段2がヘッド4の下面に加湿空気を送り込む際には、反転ローラ54は一旦下降して垂直面内を180°回転し、封止板42を上向きにする。その後に、反転ローラ54は封止板42と共に上昇して封止板42をヘッド4下面に接近して対向させる。
【0012】
インクカートリッジ7からの各色のインクは、該色に対応したヘッド4にインクチューブ(図示せず)を介して供給される。各ヘッド4は主走査方向に延びた略直方体状のライン型ヘッドであり、該ヘッド4の下面は多数の吐出口を有する吐出面40を形成する(図2参照)。4つのヘッド4は副走査方向に配列され、該吐出面40からブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。
図2に示すように、各ヘッド4の両側には、封止部材41が昇降可能に設けられており、封止部材41がヘッド4の下面よりも少し下降した状態で封止部材41の下端と封止板42が接する。この状態で、ヘッド4の吐出面40と封止板42との間に、外部から封止された封止空間Sが形成され、該封止空間Sは、加湿空気供給手段2が送り込む加湿空気にて充満される。
即ち、封止部材41と封止板42及びこれらを移動させる機構(反転ローラ54などで)にて、封止空間Sを外部から封止する封止状態と、該封止空間Sを露出した非封止状態を選択的に切り換えるキャップ手段を構成する。
尚、各ヘッド4はインクを一時的に保持するリザーバユニット、略同一サイズの金属プレートを複数枚積層して形成される流路ユニット、圧電層と圧力室及び電極を設けたアクチュエータユニットを備えた公知の構成であり、詳細な説明は省略する。
【0013】
加湿空気供給手段
前記の加湿空気供給手段2は、図2及び図3に示すように、前記加湿液カートリッジ13と連結管14を介して繋がり加湿液カートリッジ13からの加湿液Kを一旦貯蔵する加湿液タンク20と、該加湿液タンク20と封止空間を繋ぐ給気チューブ22及び還流チューブ23と、該還流チューブ23途中に配備された加湿ポンプ24を備える。連結管14の途中には給液バルブ15が設けられて、該給液バルブ15の開閉により加湿液タンク20内への加湿液の補給と補給停止が切り換えられる。給液バルブ15が1回当たり所定時間だけ開くことにより、加湿液タンク20内へ補給される加湿液の量は予め定められており、この加湿液の量と所定時間の関係はコントローラ12に記憶されている。
【0014】
加湿液タンク20内にて加湿液Kの液面より上方には加湿空気にて満たされた加湿空気貯留空間21が形成され、前記給気チューブ22及び還流チューブ23は該加湿空気貯留空間21に繋がる。加湿ポンプ24により封止空間Sから加湿空気が還流チューブ23を通って戻され、加湿空気貯留空間21を満たした加湿空気は給気チューブ22から封止空間に供給される。図3では、1つの加湿液タンク20及び1つの加湿ポンプ24から4つのヘッド4に加湿空気を供給しているが、加湿液タンク20及び加湿ポンプ24は各ヘッド4について1つずつ設けられていてもよい。
【0015】
加湿液タンク20の上面には、加湿液タンク20内の加湿液Kの残量を検出する水残量センサ25が設けられている。水残量センサ25と前記給液バルブ15はコントローラ12に接続されており、該給液バルブ15の開閉はコントローラ12によって制御されている。該コントローラ12は水残量センサ25の検出信号に基づいて、給液バルブ15を開いて加湿液Kを加湿液タンク20に供給するか否かを判断する。なお、水残量センサ25については、公知の光反射型センサなどが該当する。また、フロート式の液面センサであってもよい。
加湿液は水に少量の不揮発性成分を含んだ液体であり、不揮発性成分の詳細な内容は後記する。また、ここで言う下方に貯留とは、非水溶性のものが加湿液タンク20の底に貯まることだけでなく、水溶性のものの溶解濃度が高くなって加湿液タンク20の底に貯まる現象も含む。加湿液K内の不揮発性成分の濃度が高くなると、該不揮発性成分を含む加湿液の比重が大きくなる。この比重が大きな加湿液内の部分を「高濃度部」とする。更に、加湿液内に含まれる不揮発性成分には、適正な濃度範囲が定められており、この適正な濃度範囲内にて加湿機能が担保される。言い換えると、不揮発性成分が適正な濃度範囲を超える加湿液Kが加湿液タンク20の水面付近に貯まると、不揮発性成分により加湿液K中の水分比率が減少しているので、水分が水面から蒸発しにくくなり、加湿空気貯留空間21の加湿空気の湿度が適正湿度より下がることになる。そうすると吐出口内のインクを十分に加湿できないので加湿機能が担保できなくなる。
【0016】
図4(a)、(b)に示すように、加湿液タンク20内の加湿液K内には、流動抑制部材3が昇降可能に浮遊しており、該流動抑制部材3の比重は、外部から補給される新規な加湿液Kの比重よりも大きく、且つ不揮発性成分の適正な範囲濃度内の最大濃度における加湿液Kの比重よりも小さい。流動抑制部材3は図5に示すように、例えば板材から開口部32を打ち抜き加工して形成され、前記高濃度部Hは水等よりも比重が大きいから開口部32を通過して流動抑制部材3の下方に貯留する。換言すれば、高濃度部Hは流動抑制部材3の非開口部31は通過することができず、高濃度部Hは開口部32のみにて上方に位置する加湿液Kの適正な濃度部分と混合する。加湿液タンク20の下端部には、排出バルブ26が設けられており、該排出バルブ26を開いて高濃度部Hを加湿液タンク20の外部に排出すると、流動抑制部材3は自重で下降する。排出バルブ26はコントローラ12によって開閉動作を制御され、排出バルブ26を1回当たり所定時間だけ開いて排出される高濃度部Hの量はコントローラ12に記憶されている。
【0017】
図4(b)に示すように、加湿液カートリッジ13から加湿液Kが加湿液タンク20に補給されると、該加湿液K内の高濃度部Hが開口部32を通って流動抑制部材3の下方に貯留する。不揮発性成分が適正な濃度に保たれた加湿液Kの部分は、流動抑制部材3の上方に溜まる。流動抑制部材3の下方に貯留する高濃度部Hの量が増えるから、流動抑制部材3は高濃度部Hに押し上げられて上昇する。
即ち、高濃度部Hは開口部32のみにて加湿液Kの適正な濃度部分と混合するので、流動抑制部材3を設けない場合に比して、高濃度部Hが加湿液Kの適正な濃度部分と混合することを抑制することができる。これにより、高濃度部Hが加湿液Kの適正な濃度部分と混合することによる加湿機能が低下することを抑制することができる。また、流動抑制部材3を能動的に昇降させる機構が不要であり、実施することが容易である。
装置が外部から振動を受けて、流動抑制部材3の上方に位置する加湿液K内の不揮発性成分が、高濃度部Hと混合する虞がある場合も同様に、高濃度部Hが加湿液Kの適正な濃度部分と混合することによる加湿機能の低下を抑制することができる。
【0018】
給気チューブ22及び還流チューブ23が加湿空気貯留空間21に繋がっている理由を以下に示す。仮に、還流チューブ23が加湿液タンク20の加湿液Kの液面より下の部分に繋がっていると、還流チューブ23から加湿液タンク20に入った加湿空気は加湿液Kを泡立たせ、加湿液K全体が攪拌され、高濃度部Hが流動抑制部材3の開口部32を大量に通過してしまう。これでは、流動抑制部材3の効果が薄れる。従って、還流チューブ23を加湿空気貯留空間21に繋げ、加湿液Kが攪拌されることを抑制している。
【0019】
図4(a)、(b)に示す連結管14の下端は加湿液Kの流入口16を形成し、該流入口16から加湿液Kが加湿液タンク20内に供給される。該流入口16と前記流動抑制部材3の開口部32は、加湿液Kの液面に平行な面内にて、互いにずれて位置している。
仮に、該流入口16と流動抑制部材3の開口部32とが、加湿液Kの液面に平行な面内にて同じ位置に位置していると、流入口16から流入した加湿液Kが、下降してそのまま開口部32を通って流動抑制部材3の下方にて貯留した高濃度部Hと混合する可能性がある。これでは、流動抑制部材3の効果が薄れる。従って、該流入口16と流動抑制部材3の開口部32とを、加湿液Kの液面に平行な面内にて、互いにずらしている。
【0020】
(第2の実施形態)
前記では水残量センサ25と連結管14上の給液バルブ15がコントローラ12に接続されており、該給液バルブ15の開閉がコントローラ12に制御されているとした。本実施形態では、これに加えて、図6に示すように、流動抑制部材3上に該流動抑制部材3の上下位置を検出する上下位置検出センサ33を設ける。排出バルブ26と、該上下位置検出センサ33はコントローラ12に接続されている。コントローラ12には流動抑制部材3の上昇位置の限界値である閾値が記憶されている。
加湿液カートリッジ13から連結管14を介して加湿液Kが加湿液タンク20に補給され、高濃度部Hが流動抑制部材3の下方に貯留すると、該流動抑制部材3が押し上げられる。コントローラ12は上下位置検出センサ33の検出信号から、流動抑制部材3の上昇量がコントローラ12に記憶された閾値以上となることを検知すると、排出バルブ26を開いて高濃度部Hを加湿液タンク20から排出する。これにより、流動抑制部材3の上方に位置する加湿液Kの適正な濃度部分が少なくなることを防止し、加湿機能の低下を抑制している。また、不揮発性成分の中には高濃度になると加湿液タンク20を腐食させるものもあり、高濃度部Hを加湿液タンク20から排出することにより、加湿液タンク20の腐食を防止することができる。
【0021】
(第3の実施形態)
本実施形態では、図7に示すように、加湿液K内の高濃度部Hの量に応じて、流動抑制部材3を能動的に昇降させる流動抑制部材駆動機構8を備えている。流動抑制部材3は上面から支柱81を上向きに突出し、該支柱81の上端部はラック82を形成している。
前記流動抑制部材駆動機構8は、該ラック82に噛合するピニオン80と、該ピニオン80と同軸に設けられてピニオン80を回転駆動するモータMを備える。該モータMはコントローラ12によって回転を制御される。即ち、コントローラ12がモータMを回転させると、流動抑制部材3が昇降する。加湿液タンク20内にて加湿液Kの液面上には、加湿液Kの液面近傍に含まれる不揮発性成分の濃度を検出する濃度センサ83が設けられ、該濃度センサ83はコントローラ12に接続される。コントローラ12は濃度センサ83の出力結果に基づいてモータMを駆動する。
【0022】
具体的には、加湿液カートリッジ13から加湿液Kが加湿液タンク20に補給されると、加湿液Kの液面近傍に含まれる不揮発性成分の濃度は一時的に低下する。この場合、コントローラ12は濃度センサ83の検出信号に基づいて、モータMを駆動して、流動抑制部材3を上昇させ、加湿液タンク20内にて流動抑制部材3の下方に高濃度部Hが貯留することを可能にする。
逆に、貯留した高濃度部Hが排出バルブ26から排出され、高濃度部Hの量が減少したときは、コントローラ12は、モータMを駆動して、流動抑制部材3を下降させる。このようにして、加湿液K内の不揮発性成分の量に応じて流動抑制部材3を正確に昇降させ、高濃度部Hが加湿液Kの適正な濃度部分に攪拌することを効果的に抑制することができる。
【0023】
尚、濃度センサ83を加湿液タンク20の底部に設け、該濃度センサ83にて加湿液タンク20の底部に貯留した高濃度部Hの濃度を検知して、モータMを駆動してもよい。また、検知した高濃度部Hの濃度がコントローラ12が記憶している一定値以上の場合は、排出バルブ26を開いて、高濃度部Hを加湿液タンク20から排出してもよい。
また、加湿液タンク20の底部に貯留した高濃度部Hの濃度は、加湿液の液面上に設けた濃度センサ83によっても算出することができる。即ち、加湿液K内の不揮発性成分の濃度は加湿液の深さに比例することが知られており、この比例関係を演算する数式は経験則から求められる。従って、加湿液Kの液面近傍の不揮発性成分の濃度が検知できれば、加湿液タンク20の底部に貯留した高濃度部Hの濃度を算出することができる。
加湿液タンク20の底部に貯留した高濃度部Hの濃度を濃度センサ83にて検知し、これから加湿液Kの液面近傍の不揮発性成分の濃度を算出することもできる。
【0024】
(第4の実施形態)
更に、加湿液タンク20の外部から補給される加湿液Kの量、及び排出バルブ26から排出される高濃度部Hの量から、加湿液タンク20の底部に貯留した高濃度部H、又は加湿液Kの液面近傍の不揮発性成分の濃度を算出することもできる。この場合、濃度センサ83を加湿液Kの液面近傍又は加湿液タンク20の底部に設ける必要はない。
即ち、補給する加湿液K内の不揮発性成分の平均的な濃度は予め判っている。また、加湿液カートリッジ13から加湿液タンク20に補給される1回当たりの加湿液Kの量、及び排出バルブ26から排出される1回当たりの高濃度部Hの量も前記の如く、予めコントローラ12に記憶されている。コントローラ12は、前記の如く、コントローラ12に接続された給液バルブ15と排出バルブ26が何回作動したかを計測するカウンタ機能を有するから、加湿液カートリッジ13から加湿液タンク20へ補給した回数及び排出バルブ26から高濃度部Hが排出された回数も、コントローラ12に記憶される。
加湿液カートリッジ13から加湿液タンク20への補給回数を、前記の1回当たりの加湿液Kの量に乗じれば、これまで補給された加湿液Kの量が判る。排出バルブ26から排出した回数を、排出バルブ26から排出される1回当たりの高濃度部Hの量に乗じれば、これまで排出された高濃度部Hの量が判る。
【0025】
従って、コントローラ12は、封止状態となっているときの封止空間Sへの加湿ポンプ24による加湿回数、加湿液タンク20に補給された加湿液Kの量、排出バルブ26から排出される高濃度部Hの量に基づいて、加湿液タンク20内の加湿液Kに含まれる不揮発性成分の量を知ることができる。前記の如く、加湿液K内の不揮発性成分の濃度は加湿液Kの深さに比例することが知られているから、これにより加湿液K内の不揮発性成分の濃度分布を算出することができる。前記の如く、コントローラ12はタイマー機能を有しているから、加湿時間を考慮して加湿液K内の不揮発性成分の濃度分布を算出してもよい。
本実施形態に係る液体吐出装置では、濃度センサ83を設けずに不揮発性成分の濃度を算出するから、装置の簡素化に繋がる。
【0026】
加湿液の主成分は水であり、イオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。また、適宜、水溶性有機溶媒が含まれてもよい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール等の水溶性グリコール類や、その他の低級アルコール類や、エチレングリコール系及びプロピレングリコール系のアルキルエーテルに代表されるグリコールエーテル等が挙げられる。さらには、防黴剤:防錆剤等を必要に応じて添加することができる。これらが加湿液内に含まれる不揮発性成分に該当する。また、加湿液内に含まれる不揮発性成分とは、揮発しにくい物質を含む意味であり、完全に不揮発な物質のみならず、水よりも揮発しにくい物質を含む。
流動抑制部材3は開口部32を設けた板材としたが、これに代えて、例えばメッシュ状の板材でもよく、更にフィルタ状であってもよい。流動抑制部材3は、図5に示したように平面視が円形状でなく、例えば矩形であってもよい。また、図5に示すように、流動抑制部材3の周縁に切欠き34を設け、該切欠き34を加湿液タンク20内にて上下に延びたガイドレール35に嵌めてもよい。該ガイドレール35によって流動抑制部材3は昇降を案内されるから、該流動抑制部材3は加湿液タンク20内で傾いて引掛かることが防止される。また、図7に示す流動抑制部材3の支柱81は、流動抑制部材3の中心部に設けられても、周縁部に設けられてもよい。
【0027】
更に、図8に示すように、流動抑制部材3は上から下に向けて迂回路36を形成した構造であってもよい。この場合、開口部32は流動抑制部材3を上下に貫通せず、流動抑制部材3上面の開口部32と、流動抑制部材3の下面の開口部32は、加湿液Kの液面に平行な面内にて互いにずれている。迂回路36の流動抵抗を利用して一旦流動抑制部材3の下方に貯留した高濃度部Hが上昇しないようにしている。
また、加湿液タンク20内に、複数の流動抑制部材3を互いに上下間隔を空けて設けてもよい。複数の流動抑制部材3を加湿液タンク20内に設けることにより、加湿液タンク20内に貯留した高濃度部Hが加湿液Kの適正な濃度部分と更に混合しにくくなる。
また、加湿液K内の不揮発性成分の濃度に拘わらず、加湿液タンク20内にて流動抑制部材3の上方の加湿液Kの量が一定となるように流動抑制部材3を昇降させることもできる。この場合、該流動抑制部材3の上方の加湿液Kが不用意に外力を受けて流動しても、該上方の加湿液K内にて流動が吸収され、流動抑制部材3の下方には流動されにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、加湿された空気をヘッドの吐出面近傍に供給して液体の増粘を防ぐインクジェットプリンタのような液体吐出装置において有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 プリンタ
2 加湿空気供給手段
3 流動抑制部材
4 ヘッド
5 搬送ユニット
6 給紙ユニット
7 インクカートリッジ
8 流動抑制部材駆動機構
20 加湿液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面に対向した封止空間を外部から封止する封止状態と、該封止空間を外部に露出した開放状態を選択的に取り得るキャップ手段と、
外部から補給された不揮発性成分を含む加湿液を貯蔵する加湿液タンクと、
前記加湿液タンクに貯蔵された加湿液によって加湿された加湿空気を、前記封止状態となっているときの前記封止空間に供給する加湿空気供給手段を備え、
前記加湿液タンク内には、鉛直方向の加湿液の流動を抑制する流動抑制部材が設けられており、該流動抑制部材には鉛直方向の加湿液の通過を許容する開口部、及び鉛直方向の加湿液の通過を遮る非開口部が形成されている、液体吐出装置。
【請求項2】
前記加湿液タンクには、前記封止状態となっているときの前記封止空間を通った加湿空気を該加湿液タンクに戻すための還流流路が取り付けられ、
該還流流路は、前記加湿液タンク内にて、加湿液の液面より鉛直方向上方に位置して加湿空気にて満たされた加湿空気貯留空間に繋がる、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記流動抑制部材は、加湿液内を鉛直方向に移動可能に構成されている、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記流動抑制部材は、前記加湿液タンクに貯留された加湿液における前記不揮発性成分の濃度に対応して移動する、請求項3に記載の液体吐出装置
【請求項5】
更に、加湿液の液面近傍に含まれる不揮発性成分の濃度を算出する第1濃度算出手段と、前記流動抑制部材を加湿液内で移動させる流動抑制部材移動機構と、該第1濃度算出手段の算出結果に基づいて、該流動抑制部材移動機構の動作を制御する流動抑制部材動作制御手段を備える、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記加湿液タンクの鉛直方向下部に設けられて不揮発性成分を加湿液タンクの外部に排出する排出手段を備える、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
更に、前記加湿液タンクの鉛直方向下部に貯留された加湿液における不揮発性成分の濃度を算出する第2濃度算出手段と、該第2濃度算出手段の算出結果に基づいて、該排出手段の排出動作を制御する排出動作制御手段を備え、該排出動作制御手段は第2濃度算出手段にて算出された不揮発性成分の濃度が一定値以上の場合は、前記排出手段から加湿液を排出させる、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
更に、第2濃度算出手段は、前記封止状態となっているときの前記封止空間への前記加湿空気供給手段による加湿回数、加湿時間、前記加湿液タンクの外部から補給される加湿液の量、前記排出手段から排出される加湿液の量に基づいて、加湿液タンクに貯留された加湿液における前記不揮発性成分の濃度を算出する、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
更に、前記流動抑制部材の鉛直方向位置を検出する位置検出手段を備え、
前記排出動作制御手段は該位置検出手段から流動抑制部材の鉛直方向の位置情報を取得し、該位置検出手段が検出した前記流動抑制部材の鉛直方向位置が一定高さ以上である場合は前記排出手段から加湿液を排出させる、請求項5又は6に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記加湿液タンクの鉛直方向上部には、該加湿液タンクの外部から加湿液を補給するための流入口が形成され、該流入口と前記流動抑制部材の前記開口部は、加湿液の液面に平行な面内にて、互いに異なる位置に位置している、請求項1乃至9の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記流動抑制部材の比重は、外部から補給される加湿液の比重よりも大きく、且つ不揮発性成分の比重よりも小さく、該流動抑制部材は自重で加湿液内を鉛直方向に移動する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記流動抑制部材は、前記加湿液内にて複数設けられ、鉛直方向に互いに間隔を空けて配置される、請求項1乃至11の何れか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate