説明

液体吸収に対して抵抗性である可撓性防弾性複合材料、その製造方法、およびそれから製造された物品

水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有し、複数の不織繊維層を含む、可撓性防弾性複合材料に関する。これらの繊維層は、高強度繊維(アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、および/または剛直棒状繊維)の網目構造から形成される。これらの繊維は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の母材中に埋め込まれている。好ましくは、少なくとも2つの隣接する繊維層が互いにクロスプライ配列で配向される。少なくとも一部が本発明の可撓性複合材料から形成されたボディベストなどの可撓性防護具が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料、その製造方法、およびそれから製造された防護服などの物品に関する。
【背景技術】
【0002】
チョッキなどの防弾製品は当該技術分野において周知である。これらの製品の多くは、伸びきり鎖(extended chain)ポリエチレン繊維やアラミド繊維などの高強度繊維(high tenacity fibers)を主成分としている。耐弾性チョッキなどの防護服は、剛性複合材料および/または可撓性複合材料から形成することができる。
【0003】
剛性防護服は、良好な防弾性が得られるが、非常に堅く比較的かさばる。その結果、一般に、剛性防護衣(たとえば、チョッキ)は、通常、可撓性防護衣よりも着心地が良くない。剛性防護服は、従来技術(たとえば、米国特許第5,690,526号明細書参照)において定義されているように「ハード」防護具とも呼ばれており、これは、大きな応力がかかった場合に構造剛性を維持し、くずれることなく自立することができるように十分な機械的強度を有するヘルメットまたは軍用車両用パネルなどの物品を意味する。このような剛性防護具およびハード防護具とは対照的であるのが、上述のハード防護具に関連する性質を有さない可撓性の「ソフト」防護具である。高強度繊維を主成分とする可撓性防護服は、優れた使用感が得られるが、その水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性は、存在する繊維の種類に依存して、希望するよりも低くなる場合がある。すなわち、このような防護具は、水(またはその他の液体)に接触させたり浸漬したりすると、希望するよりも多くの水(または別の液体)を吸収する傾向にある。
【0004】
米国特許第5,690,526号明細書および国際公開第0029468号パンフレットは、剛性防護服とポリウレタン樹脂を含むその構成要素とに関するが、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有しながら、望ましい防弾性およびその他の性質を維持する可撓性防弾性複合材料を提供することが望まれている。水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を同様に有するそのような材料を主成分とする防護服などの防護具を提供することも望まれている。このような防護具は、着心地が良く、製造に費用がかからないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料が提供される。この複合材料は、複数の不織繊維層を含み、それらの繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維(high tenacity fibers)の網目構造を含み、それらの繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在する、可撓性防弾性複合材料である。
【0007】
また本発明によれば、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料であって、この複合材料は複数の不織繊維層を有し、それらの繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、それらの繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在し、少なくとも2つの隣接する繊維層が、互いにクロスプライ配列(a cross-ply arrangement)で配向している可撓性防弾性複合材料が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、可撓性防弾性防護具であって、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有し、少なくとも1種類の可撓性複合材料を含み、その複合材料が、複数の不織繊維層を含み、それらの繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、それらの繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在する可撓性防弾性防護具が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、可撓性防弾性防護具であって、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有し、少なくとも1種類の可撓性複合材料を含み、その複合材料が複数の不織繊維層を含み、それらの繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、それらの繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在し、少なくとも2つの隣接する繊維層が、互いにクロスプライ配列で配向している可撓性防弾性防護具が提供される。
【0010】
本発明は、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料の製造方法であって、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含む第1の不織繊維層を提供するステップと;第1の繊維層を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングするステップと;アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含む第2の不織繊維層を提供するステップと;第2の繊維層を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングするステップと;第1および第2の繊維層を合体させて複合材料を形成するステップと;を含む方法をさらに提供する。
【0011】
本発明は、複数の不織繊維層を含み、その繊維層が高強度繊維の網目構造を含む可撓性防弾性複合材料の、水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法であって、高強度繊維の網目構造を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングすることで、その樹脂が前記繊維の母材を形成するようにするステップを含み、上記繊維が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される方法も提供する。
【0012】
本発明は、少なくとも1種類の複合材料を含み、その複合材料が複数の不織繊維層を含み、それらの繊維層が、高強度繊維の網目構造を含む可撓性防弾性防護物品の、水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法であって、高強度繊維の網目構造を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングすることで、その樹脂が繊維の母材を形成するようにするステップと、少なくとも一部が少なくとも1種類の複合材料で形成された可撓性防護具を形成するステップとを含み、上記繊維が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される方法をさらに提供する。
【0013】
本発明の可撓性複合材料は、各繊維層の片面または両面上に可撓性フィルムを含むこともでき、複合材料の隣接層は、隣接層中の繊維の方向が、互いに約90°またはその他の所望の方向に回転しているように配列することができる。
【0014】
本発明は、可撓性であり、液体吸収に対して改善された抵抗性を有しながら、望ましい防弾特性を維持する複合材料を提供する。同様に、本発明は、液体吸収に対して改善された抵抗性を有しながら、望ましい防弾特性および快適さも維持する、防護服などの可撓性防護具を提供する。本発明の複合材料およびそれから製造される防護具は、費用対効果の高い方法で既存の装置によって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、防弾であり、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する、柔軟で可撓性の複合材料を含む。このようなその他の液体としては、ガソリンおよび他の石油製品、油、ならびに潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの複合材料は、防護服、ブランケットなどの防弾可撓性防護物品に特に有用である。
【0016】
前述したように、本発明の可撓性防護具は、剛性防護具およびハード防護具とは対照的である。本発明の可撓性材料および防護具は、大きな応力がかかった場合にその形状を維持せず、くずれずに自立することはできない。
【0017】
本複合材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂母材中に存在する高強度繊維(high tenacity fibers)を含む。この複合材料は、高強度繊維の少なくとも2つの層から形成される。本発明の目的の場合、繊維は、その長さ寸法が横方向の幅および厚さの寸法よりもはるかに長い、細長い物体である。したがって、繊維という用語は、モノフィラメント、マルチフィラメント、リボン、ストリップ、ステープル、ならびに規則的または不規則な断面を有する他の形態の裁断された繊維、切断された繊維、または不連続な繊維などを含んでいる。用語「繊維」は、上述のいずれかの複数、またはそれらの組み合わせを含んでいる。ヤーンは、多くの繊維またはフィラメントで構成される連続したストランドである。
【0018】
本発明において有用な繊維の断面は、多種多様となりうる。これらは、円形、平坦、または細長い(長楕円形の)断面であってよい。これらは、フィラメントの直線軸または長手方向軸から突出した規則的または不規則な1つ以上の葉(ローブ;lobes)を有する不規則または規則的な多葉断面(multi-lobal cross-section)を有することもできる。ほぼ円形、平坦、または細長い断面の繊維が特に好ましく、ほぼ円形の断面の繊維が最も好ましい。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「高強度繊維(high tenacity fibers)」は、約7g/d以上の強度(tenacity;テナシティあるいは引張り強度)を有する繊維を意味する。これらの繊維は、ASTM D2256によって測定した場合に、好ましくは、少なくとも約150g/dの初期引張弾性率、および少なくとも約8J/gの破断エネルギーを有する。好ましい繊維は、約10g/d以上の強度、約200g/d以上の引張弾性率、および約20J/g以上の破断エネルギーを有する繊維である。特に好ましい繊維は、約16g/d以上の強度、約400g/d以上の引張弾性率、および約27J/g以上の破断エネルギーを有する繊維である。これらの特に好ましい実施形態のなかで、最も好ましいものは、繊維の強度が約22g/d以上であり、引張弾性率が約500g/d以上であり、破断エネルギーが約27J/g以上である実施形態である。本明細書において使用される場合、用語「初期引張弾性率」、「引張弾性率」、および「弾性率」は、ヤーンの場合にはASTM 2256によって測定され、母材材料の場合にはASTM D638によって測定される弾性率を意味する。
【0020】
本発明の複合材料中に使用される繊維の網目構造は、高強度繊維から形成される不織布の形態である。繊維の特に好ましい構成の1つは、共通の繊維方向に沿って互いにほぼ平行になるように繊維が一方向に配列している網目構造である。好ましくは、不織布中の繊維の少なくとも約50重量%が高強度繊維であり、より好ましくは、この布中の繊維の少なくとも約75重量%が高強度繊維である。
【0021】
本発明のヤーンおよび布は、1種類以上の異なる高強度繊維で構成されることができる。ヤーンはほぼ平行に配置することができ、あるいはヤーンは撚り合わせたり、重ね合わせたり、絡み合わせたりすることもできる。
【0022】
本発明のヤーンおよび布において有用な高強度繊維は、高配向高分子量高弾性ポリエチレン繊維(伸びきり鎖ポリエチレン(extended chain polyethylene)とも呼ばれる)、アラミド繊維、および剛直棒状ポリマーである。2種類以上の異なる繊維のブレンドを使用することもできる。アラミド繊維が最も好ましい。
【0023】
これらの繊維は、たとえば、約50〜約3000デニール、より好ましくは約200〜約3000デニール、さらにより好ましくは約650〜約1500デニール、最も好ましくは約800〜約1300デニールなどの任意の好適なデニール数を有することができる。
【0024】
米国特許第4,457,985号明細書には、このような高分子量ポリエチレン繊維が概略的に記載されており、この特許の開示は、本明細書と矛盾しない範囲内で本明細書に援用される。ポリエチレンの場合、好適な繊維は、重量平均分子量が少なくとも約150,000、好ましくは少なくとも約1,000,000、より好ましくは約2,000,000〜約5,000,000の間である繊維である。このような高分子量ポリエチレン繊維は溶液中で紡糸することができ(米国特許第4,137,394号明細書および米国特許第4,356,138号明細書参照)、または溶液からフィラメント紡糸してゲル構造を形成することもでき(米国特許第4,413,110号明細書、独国特許第3,004,699号明細書、および英国特許第2051667号明細書)、あるいはポリエチレン繊維は圧延と延伸との方法によって製造することもできる(米国特許第5,702,657号明細書参照)。
【0025】
本明細書において使用される場合、ポリエチレンという用語は、少量の分岐鎖、または主鎖炭素原子100個当たり修飾単位が5を超えないコモノマーを含むことができる、ほぼ線状のポリエチレン材料を意味する。このほぼ線状のポリエチレン材料に、約50重量%以下の、アルケン−1−ポリマー、特に低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレン、モノオレフィンを主モノマーとして含むコポリマー、酸化ポリオレフィン、グラフトポリオレフィンコポリマー、およびポリオキシメチレンなどの1種類以上のポリマー添加剤、あるいは酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤、および一般的に含まれる同様のものなどの低分子量添加剤を混合して含有することもできる。
【0026】
本発明において有用な高強度ポリエチレン繊維(high tenacity polyethylene fibers)は、米国ニュージャージー州モリスタウン(Morristown,New Jersey,USA)のハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International Inc.)より商標スペクトラ(SPECTRA)(登録商標)として販売されている。
【0027】
形成技術、延伸比および温度、ならびにその他の条件に依存するが、これらの繊維に多種多様な性質を付与することができる。本発明の繊維の強度(引張り強度)は、少なくとも約7g/d、好ましくは少なくとも約15g/d、より好ましくは少なくとも約20g/d、さらにより好ましくは少なくとも約25g/d、最も好ましくは少なくとも約30g/dである。同様に、インストロン(Instron)引張試験機によって測定されるこの繊維の初期引張弾性率は、好ましくは少なくとも約300g/d、より好ましくは少なくとも約500g/d、さらにより好ましくは少なくとも約1,000g/d、最も好ましくは少なくとも約1,200g/dである。初期引張弾性率および強度(引張り強度)のこれらの最高値は、一般に、溶液成長法またはゲル紡糸法を使用することによってのみ得ることができる。多くのフィラメントは、それらが形成されるポリマーの融点よりも高い融点を有する。たとえば、約150,000、約1,000,000、および約2,000,000の分子量の高分子量ポリエチレンは、一般に、塊状体で138℃の融点を有する。これらの材料から製造された高配向ポリエチレンフィラメントは、約7℃〜約13℃高い融点を有する。したがって、融点のわずかな上昇は、塊状ポリマーと比較した場合の、結晶完全性およびフィラメントのより高い結晶配向を反映している。
【0028】
アラミド繊維の場合、芳香族ポリアミドから形成された好適な繊維が米国特許第3,671,542号明細書に記載されており、この文献は本明細書と矛盾しない範囲内で本明細書に援用される。好ましいアラミド繊維は、強度(引張り強度)が少なくとも約20g/dであり、初期引張弾性率が少なくとも約400g/dであり、破断エネルギーが少なくとも約8J/gであり、特に好ましいアラミド繊維は、強度(引張り強度)が少なくとも約20g/dであり、破断エネルギーが少なくとも約20J/gである。最も好ましいアラミド繊維は、強度(引張り強度)が少なくとも約23g/dであり、弾性率が少なくとも約500g/dであり、破断エネルギーが少なくとも約30J/gである。たとえば、中程度に高い弾性率および強度(引張り強度)の値を有するポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントが防弾複合材料の形成に特に有用である。例としては、デニール数が1000であるテイジン(Teijin)のトワロン(Twaron)(登録商標)T2000が挙げられる。別の例は、初期引張弾性率値および強力値がそれぞれ500g/dおよび22g/dであるケブラー(Kevlar)(登録商標)29、および初期引張弾性率値および強度(引張り強度)値がそれぞれ1000g/dおよび22g/dであるケブラー(Kevlar)(登録商標)49であり、どちらもデュポン(du Pont)より入手可能である。コ−ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド 3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)などのポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のコポリマーを使用することもできる。デュポン(du Pont)より商品名ノーメックス(Nomex)(登録商標)として市販されるポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維も本発明の実施に有用である。
【0029】
剛直棒状繊維は、たとえば米国特許第5,674,969号明細書、同第5,939,553号明細書、同第5,945,537号明細書、および同第6,040,478号明細書に開示されており、これらの開示は本明細書と矛盾しない範囲内で本明細書に援用される。このような繊維は、マゼラン・システムズ・インターナショナル(Magellan Systems International)よりM5(登録商標)繊維の名称で入手可能である。
【0030】
高強度布は、一方向に配向した繊維の複数のプライ(plies)、または不規則な配向でフェルトに形成され好適な樹脂母材中に埋め込まれた繊維などの、不織布の形態である。一方向に配向した繊維から形成された布は、通常、ある方向に延在する繊維の第1の層と、第1の層の繊維に対して90°の方向に延在する繊維の第2の層とを有する。個々のプライが一方向に配向した繊維である場合、連続する複数のプライは、好ましくは、たとえば0°/90°または0°/45°/90°/45°/0°の角度、あるいはその他の角度で互いに対して回転している。
【0031】
本発明の複合材料の配置を、繊維の配置によって特徴付けると好都合である。このような好適な配列の1つは、共通の繊維方向に沿って互いに平行に繊維が位置合わせされた繊維層(「一方向に位置合わせされた繊維網目構造」と呼ぶ)である。このような一方向に位置合わせされた繊維の連続する複数の層は、前の層に対して回転させることができる。好ましくは、複合材料の繊維層はクロスプライ積層され(cross-plied)、すなわち、各網目構造層の一方向の繊維方向が、隣接層の一方向の繊維の繊維方向に対して回転している。一例は、第1の層に対して、第2、第3、第4、および第5の層が、+45°、−45°、90°、および0°回転している5層物品である。好ましい例としては、0°/90°で積層された2層が挙げられる。このように回転した一方向配列は、たとえば米国特許第4,457,985号明細書、同第4,748,064号明細書、同第4,916,000号明細書、同第4,403,012号明細書、同第4,623,574号明細書、および同第4,737,402号明細書に記載されている。
【0032】
一般に、本発明の繊維層は、好ましくは、最初に繊維網目構造を構成した後、その網目構造を母材組成物でコーティングすることによって形成される。本明細書において使用される場合、用語「コーティング」は、個々の繊維が、繊維を取り囲む母材組成物の連続層を有するか、繊維の表面上に母材組成物の不連続層を有するかのいずれかである繊維網目構造を表すために広い意味で使用されている。前者の場合、母材組成物中に繊維が完全に埋め込まれているということができる。本明細書において、コーティングという用語と含浸という用語とは同義的に使用される。繊維網目構造は、種々の方法によって構成することができる。一方向に配列した繊維網目構造の好ましい場合では、高強度フィラメントのヤーンの束がクリールから供給され、ガイドおよび1つ以上のスプレッダーバーに通されて、平行コーム(collimating comb)まで送られた後、母材材料でコーティングされる。平行コリメーティングコームによって、同一平面上でほぼ一方向にフィラメントが配列される。
【0033】
本発明の方法は、最初に、繊維網目構造層、好ましくは前述のような一方向の網目構造を形成するステップと、繊維網目構造層上に母材組成物の溶液、分散体、またはエマルジョンを適用するステップと、続いて、母材がコーティングされた繊維網目構造層を乾燥させるステップとを含む。この溶液、分散体、またはエマルジョンは、好ましくは、フィラメント上に吹き付け可能なポリウレタン樹脂の水溶液である。あるいは、浸漬によって、またはロールコーターなどによって、フィラメント構造を水溶液、分散体、またはエマルジョンでコーティングすることができる。コーティング後、コーティングされた繊維層は、次に乾燥用オーブンに通すことができ、それによってコーティングされた繊維網目構造層(ユニテープ(unitape))は、母材組成物中の水を蒸発させるのに十分な熱に曝露される。次に、コーティングされた繊維網目構造は、紙またはフィルム基材であってよいキャリアウェブの上に置くことができ、あるいは繊維をキャリアウェブ上に置いた後に母材樹脂をコーティングすることもできる。これらの基材および合体したユニテープは、次に、周知の方法で連続ロールとして巻き取ることができる。
【0034】
合体したユニテープは、別々のシートに切断して、最終用途の複合材料を形成するためのスタックとして積層することができる。前述したように、最も好ましい複合材料は、各層の繊維網目構造が、一方向に位置合わせされており、連続する複数の層の繊維方向が0°/90°の方向となるように配向している複合材料である。
【0035】
隣接する各層中の繊維は、同じものであっても異なっていてもよいが、複合材料の2つの隣接する層中のそれぞれの繊維が同じものであることが好ましい。
【0036】
繊維層中の繊維のための樹脂母材は熱可塑性ポリウレタン樹脂である。このポリウレタン樹脂はホモポリマーでもコポリマーでもよく、1種類以上のこれらの樹脂のブレンドを本発明において使用することもできる。このような樹脂は当該技術分野において周知であり、市販されている。好ましくは、このような樹脂は、使用しやすいように水性系で提供される。通常これらの樹脂は、固体成分が約20〜約80重量パーセント、より好ましくは約40〜約60重量パーセントの範囲となることができ、残りの重量が水である水溶液、分散体、またはエマルジョンとして入手可能である。充填材などの従来の添加剤が、この樹脂組成物中に含まれていてもよい。
【0037】
樹脂母材材料と、複合材料層中の繊維との比率は、最終用途によって広範囲で変動しうる。固形分を基準とすると、ポリウレタン樹脂は、各複合材料の、好ましくは約1〜約40重量パーセント、より好ましくは約10〜約30重量パーセント、最も好ましくは約15〜約28重量パーセントを構成する。
【0038】
本発明の複合材料は、熱および圧力下、たとえば、約75〜約260°F(24〜127℃)の範囲の温度、約1〜約250psi(6.9〜1725kPa)の圧力、および約1〜約30分の時間などで、合体させることによって個別の薄層から形成することができる。
【0039】
複合材料中の層の数は、特定の最終用途に依存する。最も好ましくは、各複合材料は、互いに対して90°に配向した2つの繊維層から形成され、合体することによって単一構造となっている。別の一実施形態においては、複合材料は、2組のこのような単一構造から形成することができ、そのため合計で4つの繊維層が使用され、この場合、2つのこの2層の合体構造が互いに連結している。
【0040】
複合材料から形成される物品中に使用される複合材料層の数は、その物品の最終用途によって異なる。好ましくは、本発明の複合材料は、チョッキなどの防護服の外側に面する層を形成するが、内部層を形成することもできる。たとえば、軍事用途の防護チョッキでは、望ましい1.0ポンド/平方フィートの面密度(4.9kg/m)を実現するために、代表的な構造の1つでは22層が存在することができる。これらのすべてが本発明の複合材料から形成される必要はない。たとえば、チョッキは、90°の配向で互いに合体させた2層構造の11層から形成することができ、これらの11層は互いに接合させる必要はない。このような一実施形態においては、チョッキ材料の底部層を形成するために追加の11層が存在することができ;これらの層は、織布、編地、または不織布であってよく、好ましくは、これらも高強度繊維から形成され、より好ましくは、不織層中のものと同じグループの繊維から形成される。
【0041】
別の一実施形態においては、最終用途が法執行機関(警察)ののための防護チョッキは、国立司法研究所(National Institute of Justice)(NIJ)脅威レベル(Threat Level)に基づいた数の層を有することができる。たとえば、NIJ脅威レベルIIIA(NIJ Threat Level IIIA)チョッキの場合、合計で22層が存在することもできる。前述したように、すべての層が本発明の複合材料から形成される必要はない。このような実施形態においては、上部の11層は本発明の複合材料から形成することができ、底部の11層は織布、編地、または不織布から形成することができ、好ましくは、これらも高強度繊維から形成され、より好ましくは、不織層中のものと同じグループの繊維から形成される。より低いNIJ脅威レベル(NIJ Threat Level)の場合、種々の材料のより少ない数の層を使用することができる。
【0042】
本発明の一実施形態においては、防護チョッキは、アラミド繊維から形成された不織複合材料の複数の層と、熱可塑性ポリウレタン樹脂以外の母材材料でコーティングされたアラミド織布から形成された複合材料の複数の層とを組み合わせたものから形成される。
【0043】
前述したように、各層の高強度繊維は、母材組成物でコーティングされ、次に母材組成物/繊維の組み合わせが合体される。「合体(consolidating)」は、母材材料と繊維層とが結合して1つの一体化層となることを意味する。合体(consolidation)は、乾燥、冷却、加熱、加圧、またはそれらの組み合わせによって起こりうる。
【0044】
体型に合った形状になりやすいようにするためと、着用しやすいようにするために、異なる複合材料層が互いに滑り合うことが可能となるように、複合材料中に1つ以上のプラスチックフィルムを含めることができる。通常これらのプラスチックフィルムは、各複合材料の一方または両方の表面に接着することができる。ポリオレフィンでできたフィルムなどのあらゆる好適なプラスチックフィルムを使用することができる。このようなフィルムの例は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどである。これらのフィルムは、任意の望ましい厚さであってよい。典型的な厚さは、約0.1〜約1.2ミル(2.5〜30μm)、より好ましくは約0.2〜約1ミル(5〜25μm)、最も好ましくは約0.3〜約0.5ミル(7.5〜12.5μm)の範囲である。LLDPEのフィルムが最も好ましい。
【0045】
耐衝撃性および防弾性物品中に使用される繊維補強複合材料は、種々の構造が周知となっている。これらの複合材料は、銃弾、榴散弾弾子、および破片などの発射体による高速衝撃による貫入に対して様々な程度の抵抗性を示す。たとえば米国特許第6,268,301B1号明細書、同第6,248,676B1号明細書、同第6,219,842B1号明細書、同第5,677,029号明細書、同第5,587,230号明細書、同第5,552,208号明細書、同第5,471,906号明細書、同第5,330,820号明細書、同第5,196,252号明細書、同第5,190,802号明細書、同第5,187,023号明細書、同第5,185,195号明細書、同第5,175,040号明細書、同第5,167,876号明細書、同第5,165,989号明細書、同第5,124,195号明細書、同第5,112,667号明細書、同第5,061,545号明細書、同第5,006,390号明細書、同第4,953,234号明細書、同第4,916,000号明細書、同第4,883,700号明細書、同第4,820,568号明細書、同第4,748,064号明細書、同第4,737,402号明細書、同第4,737,401号明細書、同第4,681,792号明細書、同第4,650,710号明細書、同第4,623,574号明細書、同第4,613,535号明細書、同第4,584,347号明細書、同第4,563,392号明細書、同第4,543,286号明細書、同第4,501,856号明細書、同第4,457,985号明細書、および同第4,403,012号明細書;PCT公開、国際公開第91/12136号パンフレット;ならびに「T−963 3300dtexデュポン・ケブラー29ファイバーを使用した軽量複合ハード防護具非衣服システム」(Lightweight Composite Hard Armor Non Apparel Systems with T−963 3300 dtex DuPont Kevlar 29 Fibre)と題されたE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・インターナショナルS.A.(E.I.DuPont De Nemours International S.A.)の1984年の刊行物、これらすべてに、高分子量のポリエチレンおよびアラミドからできた高強度繊維を含む防弾複合材料が記載されている。
【0046】
本発明の一実施形態においては、チョッキまたはその他の防護服またはその他の物品は、複合材料の複数の層から従来の方法で形成される。これらの層は、好ましくは互いに積層されないが、個々のプライが互いにずれるのを防止するために互いに縫い合わせることができる。たとえば、層の各コーナー(隅の部分)でタック縫いを行うことができる。あるいは、これらの層は、ポケットまたはその他の覆いの中に全体を入れることもできる。
【0047】
前述したように、本発明の複合材料は、水の吸収に対して改善された抵抗性を有する。またこれは、ガソリン、石油、油、および潤滑剤などの別の液体の吸収に対しても改善された抵抗性を有する。
【0048】
本発明の可撓性防弾性防護具は、好ましくは、70°F±5°F(21℃±2.8℃)の海水に防護具を24時間浸漬した後、16グレインの発射体を衝突させた場合に、少なくとも約1920fps(585.6mps)のV50を有することを特徴とする。本発明の可撓性防弾性防護具は、好ましくは、70°F±5°F(21℃±2.8℃)の水道水に20時間浸漬した後で、17グレイン破片模擬弾を衝突させた場合に、そのV50性能の少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%を維持することも特徴とし;これらの条件下では、本発明の可撓性防弾性防護具はまた、その乾燥重量から、好ましくは約50%以下、より好ましくは約40%以下の重量増加を示す。
【0049】
さらに、本発明の可撓性防弾性防護具は、好ましくは、70°F±5°F(21℃±2.8℃)のガソリン中に4時間浸漬した後、16グレインの発射体を衝突させた場合に、そのV50性能の少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%を維持することも特徴とする。
【0050】
以下の非限定的な実施例は、本発明の理解をより十分にするために提供している。本発明の原理を説明するために記載されている具体的な技術、条件、材料、比率、および報告データは例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。特に明記しない限り、すべてのパーセント値は重量を基準としている。
【実施例】
【0051】
実施例1
アラミド繊維(テイジン(Teijin)のトワロン(Twaron)(登録商標)T2000、1000のデニール数および26g/dの強度(引張り強度)を有する)の層から、4層の不織複合材料を作製した。繊維をクリールからコーミングステーションに通して一方向の網目構造を形成することによって、アラミド繊維のユニテープを作製した。次にこの繊維網目構造をキャリアウェブの上に置き、その上に母材樹脂をコーティングした。この母材樹脂は、熱可塑性ポリウレタン樹脂分散体(製造元の説明によると、水中のポリウレタン樹脂のコポリマー混合物(40〜60%樹脂)であり、23℃において1.05g/ccの相対密度および23℃において40cpsの粘度を有する)であった。コーティングされた繊維網目構造を、次にオーブンに通して組成物中の水を蒸発させ、キャリアウェブを剥離しながらローラー上に巻き取ることで、複合材料の形成の準備を行った。得られた構造は16重量パーセントのポリウレタン樹脂を有した。一方向の繊維のプリプレグの2本の連続ロールをこの方法で作製した。2つのこのようなユニテープを90°でクロスプライ積層し(cross-plied)、熱および圧力下で合体させて、2つの同一のアラミド繊維薄層を有する積層体を形成した。2つのこのような2層の合体構造を、次に、再び90°でクロスプライ積層し、熱および圧力下で合体させた。得られた構造は、4層のアラミド複合材料となった。この材料の18×18インチ(45.7×45.7cm)の試料を以下の試験に使用した。特に明記しない限り、以下の複数の実施例におけるすべての試験試料は、実施例1の試料と同じ大きさとした。
【0052】
この4層複合構造の吸水抵抗性を以下のようにして求めた。複合材料を、室温(70°F、21℃)の水道水が入った容器中に記載の時間浸漬した後、15分間複合材料を垂直につり下げてドリップドライした。濡れた複合材料の重量を、乾燥した複合材料の重量と比較して、重量増加を求めた。結果を図1に示す(実施例1と表示された曲線)。
【0053】
重量増加は、約4時間後に約52%まで増加し、その後の24時間試験期間の間は安定したことが分かる。
【0054】
実施例2
0.35ミル(8.89μm)の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを一方の表面上に有する2層のアラミド複合材料を、それぞれ最初に形成したことを除いて、実施例1を繰り返した。2つのこれらの複合材料を、アラミド層が互いに向かい合うようにして、プレス中で合体させた。この結果、各外面上にポリエチレンフィルムを有する4層のアラミド構造が得られた。
【0055】
この4層複合材料の耐水性について実施例1のように試験を行い、これらの結果も図1に示している(実施例2と表示された曲線)。
この構造の重量増加はごくわずかであり、24時間後で約10%であったことが分かる。さらに、重量増加の安定化は約12時間後である。
【0056】
実施例3
アラミド繊維の2層のユニテープのみを使用して、実施例1を繰り返した。この2層の複合材料の耐水性について実施例1のように試験を行い、これらの結果も図1に示している(実施例3と表示された曲線)。
この構造の重量増加はごくわずかであり、24時間後で約20%であったことが分かる。
【0057】
実施例4(比較例)
樹脂母材が、エラストマー(クレイトンポリマーLLC(Kraton Polymer LLC)より入手可能なクレイトン(Kraton)(登録商標)D1107イソプレン−スチレン−イソプレンブロックコポリマー)であったことを除いて、実施例1を繰り返した。複合材料中の樹脂量は16重量%であった。それぞれの2層のアラミド積層体を0.35ミル(8.9μm)のLLDPEフィルムとともに合体させた。ポリエチレンフィルムが外面上にくるようにして2つの2層の積層体(アラミド同士が向かい合う)を合体させることによって、4層の積層体を形成した。この構造の耐水性について実施例1のように試験を行い、これらの結果も図1に示している(実施例4と表示された曲線)。
この複合材料は、約2時間後に80%の重量増加を示し、24時間の試験全体でほぼ同等の重量増加を維持したことが分かる。実施例1と比較すると、明らかに重量増加が大きい。
【0058】
実施例5(比較例)
樹脂母材が実施例4と同じであったことを除いて、実施例3を繰り返した。さらに、2層のアラミド布層の両面にLLDPEフィルムを取り付けた。この2層の構造の耐水性について実施例1のように試験を行い、これらの結果も図1に示している(実施例5と表示された曲線)。
わずか約1時間後に重量増加が60%まで増加し、24時間の試験期間全体でほぼ同等を維持したことが分かる。実施例3と比較すると、明らかに重量増加が大きい。
【0059】
実施例6
この実施例では、実施例1の4層複合材料の11層を一体となるように形成し(各コーナーでタック縫いを行った)、この11層全体について同じ時間のドリップドライを行って実施例1のように重量増加の試験を行った。結果を図2に示している(実施例6と表示された曲線)。
重量増加は24時間後に約62%であり、最初の1時間の後はほぼ同程度に維持されたことがわかる。
【0060】
実施例7
実施例2の4層複合材料を11層使用したことを除いて、実施例6を繰り返した。この構造の重量増加について実施例6のように試験を行い、結果を図2に示している(実施例7と表示された曲線)。
この構造の重量増加は24時間試験終了時でわずか約19%であることが分かる。
【0061】
実施例8
実施例3の2層の複合材料を11層使用したことを除いて、実施例6を繰り返した。この構造の重量増加について実施例6のように試験を行い、結果を図2に示している(実施例8と表示された曲線)。
この構造の重量増加は試験開始から終了までで約40%であることが分かる。
【0062】
実施例9(比較例)
比較例である実施例4の4層複合材料を11層使用したことを除いて、実施例6を繰り返した。この構造の重量増加について実施例6のように試験を行い、結果を図2に示している(実施例9と表示された曲線)。
実施例6の重量増加が約62%であるのと比較して、この複合材料の重量増加は24時間後に約72%であることが分かる。また、実施例6の重量増加曲線がほぼ平坦であるのに対し、比較例9では上昇している。
【0063】
実施例10(比較例)
比較例である実施例5の2層の複合材料を11層使用したことを除いて、実施例6を繰り返した。この構造の重量増加について実施例6のように試験を行い、結果を図2に示している(実施例10と表示された曲線)。
実施例8の2層の複合材料の重量増加がわずか約40%であるのと比較して、この複合材料の重量増加は24時間後で約72%であることが分かる。また、実施例8の重量増加曲線がほぼ平坦であるのに対し、比較例10では上昇している。
【0064】
実施例11および12
実施例1の4層複合材料の複数層(シュートパック(shoot pack))の防弾特性を、70°F(21℃)の水道水に浸漬する前および20時間浸漬した後で測定した。破片は、MIL−P−46593A(ORD)によって指定される、口径=0.22、17グレイン破片模擬弾(Fragment Simulating Projectile;FSP)であった。試験方法はMIL−STD−662Fの基準に従った。それぞれ18×18インチ(45.7×45.7cm)であり、層を互いに維持するためにコーナーでのみ縫い合わせた、実施例1の4層積層体の23層のシュートパック上に、数個の17グレインFSPを発射した。このシュートパックは上部のみを固定し、シュートパックの下部は、縁端部上に固定した幅1.5インチ(3.8cm)の鋼製アングルによって部分的に束縛した。
【0065】
V50の計算は、シュートパック上に停止した破片およびシュートパックを貫通した破片の6組の平均に基づいて行った。V50速度は、発射体が50%の確率で貫通する速度である。許容される最大速度広がりは125fps(38.1mps)である。
結果を以下の表1に示す。本発明の複合材料を有するシュートパックを20時間浸漬した後でさえも、この試験による防弾性能特性を85%維持したことが分かる。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例13および14
実施例3の2層の複合材料の48層の防弾特性について、実施例11および12と同じ方法で、水道水に浸漬する前および24時間浸漬した後で測定した。
結果を以下の表2に示す。本発明の複合材料を有するシュートパックを24時間浸漬した後でさえも、この試験による防弾性能特性を92%維持したことが分かる。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例15および16
実施例1の4層複合材料の24層の防弾特性について、室温(70°F、21℃)のガソリンに浸漬する前および4時間浸漬した後で測定した。米陸軍によって使用されるような16グレインの直円柱(right circular cylinder;RCC)試験試料破片を使用したことを除いて、防弾性試験は実施例11および12のように行った。
結果を以下の表3に示している。表3に示されるように、本発明の複合材料は、ガソリン中に4時間浸漬した後の重量増加がわずか13%であり、これは液体の吸収が最小限であることを示している。また、ガソリン中に4時間浸漬した後でさえも、本発明の複合材料を有するシュートパックが、この試験による防弾性能特性を89%維持したことが分かる。
【0070】
【表3】

【0071】
このように、本発明によって、水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料が提供されることが分かる。本発明の複合材料から製造したチョッキなどの防護具は可撓性であり、同様に水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する。この防護具は依然としてその望ましい防弾特性を維持する。
【0072】
このように、本発明は、可撓性防弾性複合材料の水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法を提供し、これらの複合材料は複数の不織繊維層を含む。これらの繊維層は、高強度繊維の網目構造を含む。この高強度繊維の網目構造は熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングされることで、樹脂が繊維の母材を形成する。上記繊維は、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、またはそれらのブレンドである。
【0073】
本発明は、少なくとも1種類の複合材料でできている防護服などの可撓性防弾性防護具の水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法も提供する。この複合材料は複数の不織繊維層を含み、それらの繊維層は高強度繊維の網目構造を含む。この高強度繊維の網目構造は熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングされることで、樹脂が繊維の母材を形成する。本発明の可撓性防護服は、少なくとも一部が複合材料から形成され、上記繊維は、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、またはそれらのブレンドである。
【0074】
このように幾分詳細に本発明を説明してきたが、このような詳細に厳格に準拠する必要はなく、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内となるそれらのさらなる変更および修正が当業者によって提案することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の複合材料を含む単一の複合材料の水浸漬時間に対する重量増加のグラフである。
【図2】本発明の複合材料を含む11層の複合材料の水浸漬時間に対する重量増加のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料であって、複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、前記繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在する、前記可撓性防弾性複合材料。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、前記複合材料の全重量の約1〜約40重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、前記複合材料の全重量の約10〜約30重量パーセントの量で存在する、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
隣接する繊維層が互いにクロスプライ積層されている(cross-plied)、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
隣接する繊維層が互いに約90°でクロスプライ積層されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
すべての前記繊維層中の前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維が伸びきり鎖ポリエチレン繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維が剛直棒状繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
前記繊維層の少なくとも1つと接触する少なくとも1つのプラスチックフィルムをさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記プラスチックフィルムが線状低密度ポリエチレンフィルムを含む、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
互いにクロスプライ積層された2つの不織繊維層を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
前記繊維層が、互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
互いにクロスプライ積層された4つの不織繊維層を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項15】
前記繊維層が、互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記不織繊維層中の前記繊維が、各層中で一方向に配列されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記繊維が約200〜約3000のデニール数を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項18】
前記繊維が約650〜約1500のデニール数を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項19】
請求項1に記載の複合材料から形成された物品。
【請求項20】
少なくとも一部が請求項1に記載の複合材料から形成された可撓性防護物品。
【請求項21】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料であって、前記複合材料が複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、前記繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在し、少なくとも2つの隣接する繊維層が互いにクロスプライ配列(a cross-ply arrangement)で配向している可撓性防弾性複合材料。
【請求項22】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維がアラミド繊維を含み、前記繊維層が互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項21に記載の複合材料。
【請求項23】
少なくとも一部が請求項22に記載の複合材料から形成された、可撓性防護物品。
【請求項24】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性防護具であって、少なくとも1種類の可撓性複合材料を含み、前記複合材料が複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、前記繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在する可撓性防弾性防護具。
【請求項25】
防護服である、請求項24に記載の可撓性防弾性防護具。
【請求項26】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)の海水に24時間浸漬した後で、16グレイン発射体を衝突させた場合に、少なくとも約1920fps(585.6mps)のV50を有する、請求項24に記載の可撓性防弾性防護具。
【請求項27】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)の水道水に20時間浸漬した後で、17グレイン破片模擬弾を衝突させた場合に、少なくとも約85%のV50性能を維持する、請求項24に記載の可撓性防護服。
【請求項28】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)の水道水に20時間浸漬した後で、その乾燥重量から約50%以下の重量増加を示す、請求項27に記載の可撓性防護服。
【請求項29】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)の水道水に20時間浸漬した後で、17グレイン破片模擬弾を衝突させた場合に、少なくとも約90%のV50性能を維持する、請求項24に記載の可撓性防護服。
【請求項30】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)の水道水に20時間浸漬した後で、その乾燥重量から約40%以下の重量増加を示す、請求項29に記載の可撓性防護服。
【請求項31】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)のガソリンに4時間浸漬した後で、16グレイン発射体を衝突させた場合に、少なくとも約85%のV50性能を維持する、請求項24に記載の可撓性防弾性防護服。
【請求項32】
70°F±5°F(21℃±2.8℃)のガソリンに4時間浸漬した後で、16グレイン発射体を衝突させた場合に、少なくとも約90%のV50性能を維持する、請求項24に記載の可撓性防弾性防護服。
【請求項33】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性防護具であって、少なくとも1種類の可撓性複合材料を含み、前記複合材料が複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含み、前記繊維が、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む母材中に存在し、少なくとも2つの隣接する繊維層が互いにクロスプライ配列で配向している可撓性防弾性防護具。
【請求項34】
前記繊維層中の前記繊維が、各層中で一方向に配列されており、隣接する繊維層が互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項35】
前記可撓性複合材料が、互いに90°でクロスプライ積層された2つの不織繊維層を含む、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項36】
前記可撓性複合材料が、互いに90°でクロスプライ積層された4つの不織繊維層を含む、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項37】
前記不織繊維層中の前記繊維が、各層中で一方向に配列されている、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項38】
前記繊維層の少なくとも1つと接触する少なくとも1つのプラスチックフィルムをさらに含む、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項39】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項38に記載の可撓性防護具。
【請求項40】
前記防護具が防護服を含む、請求項33に記載の可撓性防護具。
【請求項41】
前記防護服がチョッキを含む、請求項40に記載の可撓性防護具。
【請求項42】
前記チョッキが、前記可撓性複合材料の複数の層から形成され、前記可撓性複合材料の前記繊維がアラミド繊維を含む可撓性防護服であって、アラミド織布から形成された第2の複合材料の複数の層をさらに含む、請求項41に記載の可撓性防護服。
【請求項43】
前記第2の複合材料が、熱可塑性ポリウレタン樹脂以外の第2の母材材料でコーティングされる、請求項42に記載の可撓性防護服。
【請求項44】
水およびその他の液体の吸収に対して改善された抵抗性を有する可撓性防弾性複合材料の製造方法であって、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含む第1の不織繊維層を提供するステップと;前記第1の繊維層を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングするステップと;アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される高強度繊維の網目構造を含む第2の不織繊維層を提供するステップと;前記第2の繊維層を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングするステップと;前記第1および第2の繊維層を合体させて複合材料を形成するステップ;とを含む、前記方法。
【請求項45】
前記第1および第2の繊維層中の前記繊維が各層中で一方向に配列されており、前記の合体するステップの前に、隣接する繊維層が互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記繊維層の少なくとも1つの層の中の前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が高強度繊維の網目構造を含む、可撓性防弾性複合材料の、水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法であって、前記高強度繊維の網目構造を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングすることで、前記樹脂が前記繊維の母材を形成するようにするステップを含み、前記繊維が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される、前記方法。
【請求項48】
前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記繊維層中の前記繊維が、各層中で一方向に配列されており、隣接する繊維層が互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1種類の複合材料を含み、前記複合材料が複数の不織繊維層を含み、前記繊維層が高強度繊維の網目構造を含む、可撓性防弾性防護物品の、水およびその他の液体の吸収に対する抵抗性を改善する方法であって、前記高強度繊維の網目構造を熱可塑性ポリウレタン樹脂でコーティングすることで、前記樹脂が前記繊維の母材を形成するようにするステップと、少なくとも一部が前記少なくとも1種類の複合材料から形成された、前記可撓性防護物品を形成するステップとを含み、前記繊維が、アラミド繊維、伸びきり鎖ポリエチレン繊維、剛直棒状繊維、およびそれらのブレンドからなる群から選択される、前記方法。
【請求項51】
前記防護物品が防護服の形態である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記繊維がアラミド繊維を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記繊維層中の前記繊維が、各層中で一方向に配列されており、隣接する繊維層が互いに90°でクロスプライ積層されている、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−505865(P2009−505865A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528160(P2008−528160)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033151
【国際公開番号】WO2007/097780
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】