説明

液体吸引装置

【課題】容器内の試薬液量を正確に測定することが可能な液体吸引装置を提供する。
【解決手段】一端が開口している流路2と、前記流路2上に設けられた液センサ3と、前記流路2内に流体を吸引する吸引機構4と、前記流路2の開口端を上下に移動する駆動機構6と、所定の容器C内から所定量の流体を前記流路2内に吸引した後、当該所定量の流体の前記流路2内における末端部が前記液センサ3内の検出位置Dに位置するような量の気体を前記流路2内に吸引するように制御する制御部5と、を備えているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試薬の有無を液センサで検出することができる液体吸引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬容器内の液量を検知するには、試薬を吸引したサンプリングノズルに光を照射し、透過した光の光学的な変化により、試薬の有無を検知する方法や、試薬を吸引したサンプリングノズル内に通電し、その抵抗値の変化により、試薬の有無を検知する方法や、試薬を吸引したサンプリングノズル内の温度変化や圧力変化等により、試薬の有無を検知する方法等が用いられている。
【0003】
そして、特許文献1には、これらの方法を用いて、試薬容器内の液体を吸引する際に、流路内の定点を通過する液体の先端から終端までの通過時間を、予め求めておいた予測時間と比較することにより、前記試薬容器内の液量を測定する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、液体の種類によって粘度や密度等が異なると、液体の通過時間が変化し正確な試薬の液量が測定できないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−333439
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分析に使用する試薬の液量は分析結果に大きく影響する。そのため分析に供する試薬液量の確認及び試薬切れの検知をすることは分析精度保障の上からも重要である。
【0006】
そこで本発明は、容器内の試薬液量を正確に測定することが可能な液体吸引装置を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る液体吸引装置は、一端が開口している流路と、前記流路上に設けられた液センサと、前記流路内に流体を吸引する吸引機構と、前記流路の開口端を上下に移動する駆動機構と、所定の容器内から所定量の流体を前記流路内に吸引した後、当該所定量の流体の前記流路内における末端部が前記液センサ内の検出位置に位置するような量の気体を前記流路内に吸引するように制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、前記容器内から試薬を所定量吸引した後、前記流路内に吸引した試薬の末端部が液センサ内の検出位置に位置するような量の空気を吸引することにより、前記容器内の試薬の有無や目的量の試薬をサンプリングできたかどうかの判定を行なうことができる。このため、本発明によれば、液体の粘度や密度等に影響されずに正確な試薬液量の確認及び試薬切れの検知を行なうことができる。
【0009】
前記流路内に吸引した試薬の末端部が液センサ内の検出位置に位置するような空気量の吸引は、1回で行なってもよいが、複数回に分割して行なってもよい。このように複数回に分割して吸引すれば、1回吸引するごとに流路内の検出位置における試薬の有無を検知するように液センサを作動させることにより、試薬中への気泡の混入を検出したり、吸引した試薬量を算出したりすることも可能となる。
【0010】
更に、一端が開口している流路と、前記流路上に設けられた液センサと、前記流路内に流体を吸引する吸引機構と、前記流路の開口端を上下に移動する駆動機構と、を備えている液体吸引装置を用いて、容器内の液体量を検知する方法であって、所定の容器内から所定量の流体を前記流路内に吸引した後、当該所定量の流体の前記流路内における末端部が前記液センサ内の検出位置に位置するような量の気体を前記流路内に吸引する液体検知方法もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、試薬液量の測定や試薬切れの検知を高い精度で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係る液体吸引装置1は、図1及び図2に示すように、一端が開口していて、その開口端にはノズル21が設けてある流路2と、流路2上に設けられた液センサ3と、流路3内に測定対象である試薬を吸引するための吸引機構4と、ノズル21を保持するためのアーム6と、吸引機構4等を制御する情報処理装置5と、を備えている。
【0014】
以下に各部を説明する。流路2は、光を透過する材質からなる管状体から構成され、その開口端にはノズル21が設けてあるものであり、ノズル21の先端開口部から流路2内に試薬Rを導入する。
【0015】
液センサ3は、図示しない光源と光検出器とを備えていて、検出位置Dにおいて、流路2に対して発光し、流路2を透過する光量を検出して、発光量と透過光量との差から流路2内の液体の有無を検出するものである。
【0016】
吸引機構4は、流路3内に測定対象である試薬Rを吸引するためのものであり、例えば、シリンジ等からなるものである。
【0017】
アーム6は、パルスモータ等の駆動源を備えていて、上下に移動可能にノズル21を保持するものであり、試薬吸引時には、図1に示すように、ノゾル21を下降させて容器C内に挿入し、空気吸引時には、図2に示すように、ノズル21を上昇させて容器Cから引き上げるものである。
【0018】
情報処理装置5は、CPUの他に、メモリ、キーボード等の入力手段、ディスプレイ等の出力手段等を備えた汎用乃至専用のものであり、メモリに所定のプログラムを格納し、当該プログラムに従ってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、吸引制御部51、液センサ制御部52、アーム制御部53、結果表示部54等としての機能を発揮するように構成してある。
【0019】
吸引制御部51は、容器C内から所定量の試薬Rを吸引した後、当該試薬Rの流路2内における末端部が液センサ3内の検出位置Dに位置するような量の空気を吸引するように、吸引機構4を制御するものである。
【0020】
液センサ制御部52は、吸引制御部51と協動して、空気吸引後に、液センサ3内の検出位置Dにおける試薬Rの有無を検知するよう、液センサ3を制御するものである。
【0021】
アーム制御部53は、吸引制御部51と協動して、試薬吸引時には、図1に示すように、ノゾル21を下降させて容器C内に挿入し、空気吸引時には、図2に示すように、ノズル21を上昇させて容器Cから引き上げるように、アーム6を制御するものである。
【0022】
結果表示部54は、液センサ3で検出された検出位置Dにおける試薬Rの有無の結果を、文字、画像、音声等として出力するものである。
【0023】
次に、液体吸引装置1を用いて容器C内から試薬Rを吸引してその有無を検知する手順を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
まず、アーム制御部53が制御信号を送信し、当該制御信号を受信したアーム6が、ノズル21を下降させて、試薬Rが収容されている容器C内に挿入する(ステップS1)。
【0025】
次いで、吸引制御部51が制御信号を送信し、当該制御信号を受信した吸引機構4がノズル21から流路2内に所定量の試薬Rを吸引する(ステップS2)。
【0026】
続いて、アーム制御部53が制御信号を送信し、当該制御信号を受信したアーム6が、ノズル21を上昇させて、容器C内から引き上げる(ステップS3)。
【0027】
次に、吸引制御部51が制御信号を送信し、当該制御信号を受信した吸引機構4がノズル21から流路2内に所定量の空気を吸引する(ステップS4)。
【0028】
そして、液センサ制御部52が制御信号を送信し、当該制御信号を受信した液センサ3が、光源から流路2に光を発し、流路2を透過する光量を検出して、発光量と透過光量との差から、検出位置Dにおける流路2内の試薬Rの有無を検出する(ステップS5)。
【0029】
このとき、容器C内に所定量以上の試薬Rがあれば、図4(a)に示すように、流路2内に吸引した試薬Rの末端部が液センサ3内の検出位置Dに位置し、所定量の試薬Rが吸引されたことが検知される。一方、容器C内に所定量未満の試薬Rしかないと、試薬Rが足りなかった分だけ空気Aが吸引されるので、図4(b)に示すように、液センサ3内の検出位置Dには空気Aが存在して、試薬Rが所定量未満しかなかったことが検知される。
【0030】
最後に、結果表示部54が液センサ3から検出結果を取得して、文字、画像、音声等として出力する(ステップS6)。
【0031】
したがって、このように構成した液体吸引装置1によれば、容器C内から流路2内に所定量の試薬Rを吸引した後、引き続いて吸引する空気の量を、先に流路2内に吸引した所定量の試薬Rの末端部が液センサ3内の検出位置Dに位置するように設定してあるので、容器C内の試薬Rの有無や目的量の試薬Rをサンプリングできたかどうかの判定を、試薬Rの粘度や密度等に影響されずに正確に行なうことができる。
【0032】
なお、吸引試薬量の変化には、流路2内における検出位置Dの位置(液センサ3設置位置)や、吸引機構4のストローク量を調節する等して吸引空気量の設定を変えることにより、対応することができる。
【0033】
また、複数種類の試薬からなるキットに関しては、最初に消費される試薬の有無を液体吸引装置1で検知することにより、キットの交換時期を知ることができる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0035】
例えば、液センサ制御部52の設定を変えて、試薬吸引後に空気を吸引するときの吸引機構4の1ストロークをN回に分割し、1回ごとに流路2内の検出位置Dにおける試薬Rの有無を検知するように液センサ3を作動させれば、気泡の混入を検出したり、吸引した試薬量を算出したりすることも可能となる。
【0036】
液センサ3は、光学的センサに限定されず、流路2内の液体の有無を識別できれば電磁式センサや超音波センサ等であってもよく、この場合、液センサ3は流路2に固定されなくてもよく、流路2を構成する管状体の材質も光透過性のものに限定されない。
【0037】
本発明は、その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてもよく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吸引装置の機器構成図。
【図2】同実施形態に係る液体吸引装置の機器構成図。
【図3】同実施形態における検知方法を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における液センサ近傍の拡大図。
【符号の説明】
【0039】
1・・・液体吸引装置
2・・・流路
3・・・液センサ
4・・・吸引機構
51・・・吸引制御部
52・・・液センサ制御部
53・・・アーム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口している流路と、
前記流路上に設けられた液センサと、
前記流路内に流体を吸引する吸引機構と、
前記流路の開口端を上下に移動する駆動機構と、
所定の容器内から所定量の流体を前記流路内に吸引した後、当該所定量の流体の前記流路内における末端部が前記液センサ内の検出位置に位置するような量の気体を前記流路内に吸引するように制御する制御部と、を備えている液体吸引装置。
【請求項2】
前記所定量の気体の吸引を複数回に分割して行なう請求項1記載の液体吸引装置。
【請求項3】
一端が開口している流路と、前記流路上に設けられた液センサと、前記流路内に流体を吸引する吸引機構と、前記流路の開口端を上下に移動する駆動機構と、
を備えている液体吸引装置を用いて、容器内の液体量を検知する方法であって、
所定の容器内から所定量の流体を前記流路内に吸引した後、当該所定量の流体の前記流路内における末端部が前記液センサ内の検出位置に位置するような量の気体を前記流路内に吸引する液体検知方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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