説明

液体噴出容器

【課題】案内溝と第2縦溝との間にボールを容易に配設する。
【解決手段】シリンダ20の上端部のうち、少なくとも第2縦溝31が位置する部分を含む一部は、着脱可能な分割部72により構成され、この分割部72において第2縦溝31の内面を構成する部分に分離可能にボール71が連結されこれらの分割部72およびボール71が一体に成形されたシリンダ構成部材73を、プランジャ60がその上部を残して下部だけ差し込まれたシリンダ20の上端部に、ボール71がプランジャ60の案内溝70内に位置するように装着した状態で、プランジャ60をさらにシリンダ20内に進入させることで案内溝70の上壁面70cによりボール71を下方に押し込ませ、ボール71をシリンダ構成部材73から分離することによって、ボール71が案内溝70と第2縦溝31との間に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、口部を有する容器本体と、下端の吸込み口が前記口部から容器本体内に挿入されて容器本体に固定されたシリンダと、シリンダに回動可能に取り付けられた回動環と、回動環に取り付けられるとともに上部に吐出弁が設けられ下部開口が前記シリンダ内に位置する吐出管と、シリンダの吸込み口に配設され該シリンダ内への流入を許容しかつ該シリンダ外への流出を阻止する吸込弁と、シリンダ内に配置されるとともに吐出管に液密に外嵌して上下摺動可能に設けられ付勢機構により下方に付勢された筒状のプランジャと、回動環とプランジャとの間に設けられ回動環のシリンダに対する回転動作をプランジャのシリンダに対する上昇動作に変換する変換機構と、吐出弁に連結され下方に押し下げ可能になっていて押し下げ動作により吐出弁を開弁させて噴出ノズルから内容液を噴出可能な噴出ヘッドと、を備える液体噴出容器が知られている。
また、プランジャの外周面には、周方向に間隔をあけて配置された複数の第1縦溝、および上下方向に傾斜する一方向に沿って延在し周方向で隣り合う各第1縦溝の上端と下端とを連結する傾斜溝を有する案内溝が形成されるとともに、シリンダの内周面には、上方に向けて開口する第2縦溝が形成されている。そして、前記変換機構は、案内溝、第2縦溝、およびこれらの案内溝と第2縦溝との間に回転自在に配設されたボールを備えている。
ところで、この種の液体噴出器においては一般に、案内溝と第2縦溝との間にボールを配設するに際し、シリンダ内にプランジャをその上部を残して下部だけ差し込み、かつシリンダおよびプランジャの相対的な周方向位置を、第1縦溝と第2縦溝とが径方向で互いに対向するように合わせた状態で、シリンダの上端部から第1縦溝と第2縦溝との間にボールを滑落させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3595016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の液体噴出容器では、案内溝と第2縦溝との間にボールを配設するに際し、シリンダおよびプランジャそれぞれの周方向位置および上下方向位置を合わせた状態で、シリンダの上端部から第1縦溝と第2縦溝との間にボールを滑落させていたので、ボールがシリンダの外側にこぼれ落ちることもあり、組み立てが煩雑になるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、案内溝と第2縦溝との間にボールを容易に配設することができる液体噴出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の液体噴出容器は、 口部を有する容器本体と、下端の吸込み口が前記口部から容器本体内に挿入されて容器本体に固定されたシリンダと、前記シリンダに回動可能に取り付けられた回動環と、前記回動環に取り付けられるとともに上部に吐出弁が設けられ下部開口が前記シリンダ内に位置する吐出管と、前記シリンダの吸込み口に配設され該シリンダ内への流入を許容しかつ該シリンダ外への流出を阻止する吸込弁と、前記シリンダ内に配置されるとともに前記吐出管に液密に外嵌して上下摺動可能に設けられ付勢機構により下方に付勢された筒状のプランジャと、前記回動環とプランジャとの間に設けられ回動環のシリンダに対する回転動作をプランジャのシリンダに対する上昇動作に変換する変換機構と、前記吐出弁に連結され下方に押し下げ可能になっていて押し下げ動作により吐出弁を開弁させて噴出ノズルから内容液を噴出可能な噴出ヘッドと、を備える液体噴出容器であって、前記プランジャの外周面には、周方向に間隔をあけて配置された複数の第1縦溝、および上下方向に傾斜する一方向に沿って延在し周方向で隣り合う各第1縦溝の上端と下端とを連結する傾斜溝を有する案内溝が形成され、前記シリンダの内周面には、上方に向けて開口する第2縦溝が形成され、前記変換機構は、前記案内溝、第2縦溝、およびこれらの案内溝と第2縦溝との間に回転自在に配設されたボールを備え、前記シリンダの上端部のうち、少なくとも前記第2縦溝が位置する部分を含む一部は、着脱可能な分割部により構成され、この分割部において前記第2縦溝の内面を構成する部分に分離可能に前記ボールが連結されこれらの分割部およびボールが一体に成形されたシリンダ構成部材を、前記プランジャがその上部を残して下部だけ差し込まれた前記シリンダの上端部に、前記ボールがプランジャの案内溝内に位置するように装着した状態で、前記プランジャをさらに前記シリンダ内に進入させることで前記案内溝の上壁面により前記ボールを下方に押し込ませ、該ボールを前記シリンダ構成部材から分離することによって、前記ボールが前記案内溝と第2縦溝との間に配設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、液体噴出容器の製造の過程で、まず前記分割部において第2縦溝の内面を構成する部分に分離可能にボールが連結されこれらの分割部およびボールが一体に成形されたシリンダ構成部材を形成しておき、その後、ボールを案内溝と第2縦溝との間に配設するに際し、シリンダ構成部材を、プランジャがその上部を残して下部だけ差し込まれたシリンダの上端部に、ボールがプランジャの案内溝内に位置するように装着した状態で、プランジャをさらにシリンダ内に進入させることで案内溝の上壁面によりボールを下方に押し込ませ、該ボールをシリンダ構成部材から分離することによって、ボールがシリンダの内周面とプランジャの外周面との間に配設される。
したがって、ボールを案内溝と第2縦溝との間に配設するに際し、ボールがシリンダの外側にこぼれ落ちることなどを抑制することが可能になり、組み立てが煩雑になるのを抑えることができる。
【0008】
ここで、前記プランジャの上下方向に沿った中間部分の外周面には、前記シリンダの内周面に当接して該プランジャのシリンダに対する位置を仮固定可能な摺動抵抗体が設けられてもよい。
【0009】
この場合、ボールを案内溝と第2縦溝との間に配設するに際し、プランジャをシリンダ内に差し込み、前記摺動抵抗体をシリンダの内周面に当接させることで、プランジャを、その下部がシリンダ内に位置しかつ上部がシリンダから上方に突出した状態に保持することが可能になり、プランジャおよびシリンダの相対的な位置を容易かつ高精度に決めることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、案内溝と第2縦溝との間にボールを容易に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した液体噴出容器であって加圧室内が加圧されていない状態を示す半縦断面図である。
【図2】図1に示す液体噴出容器であって加圧室内が加圧され始めた状態を示す半縦断面図である。
【図3】図1および図2に示す液体噴出容器であって加圧室内の加圧が完了した状態を示す半縦断面図である。
【図4】図1から図3に示す液体噴出容器であって液体を噴出している状態を示す半縦断面図である。
【図5】図1から図4に示す液体噴出容器におけるプランジャの案内溝の一部を示す展開図である。
【図6】図1から図4に示す液体噴出容器におけるシリンダの一部およびシリンダ構成部材を示す斜視図である。
【図7】図1から図4および図6に示す液体噴出容器を組み立てる過程において、シリンダの上端部にシリンダ構成部材を装着し、かつシリンダ内にプランジャの下部を差し込んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る液体噴出容器1は、図1から図4に示されるように、口部11を有する容器本体12と、下端の吸込み口21aが口部11から容器本体12内に挿入されて容器本体12に固定されたシリンダ20と、シリンダ20に回動可能に取り付けられた回動環40と、回動環40に取り付けられるとともに、上部に吐出弁51が設けられ下部開口がシリンダ内20に位置する吐出管50と、シリンダ20の吸込み口21aに配設され該シリンダ20内への流入を許容しかつ該シリンダ20外への流出を阻止する吸込弁29と、シリンダ20内に配置されるとともに吐出管50に液密に外嵌して上下摺動可能に設けられスプリング(付勢機構)47により下方に付勢された筒状のプランジャ60と、回動環40とプランジャ60との間に設けられ回動環40のシリンダ20に対する回転動作をプランジャ60のシリンダ20に対する上昇動作に変換する変換機構と、吐出弁51に連結され下方に押し下げ可能になっていて押し下げ動作により吐出弁51を開弁させて噴出ノズル56aから内容液を噴出可能な噴出ヘッド56と、を備えている。
【0013】
ここで、容器本体12、シリンダ20、回動環40、吐出管50、プランジャ60および噴出ヘッド56はそれぞれ、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oといい。この軸線O方向に沿って噴出ヘッド56側を上側、容器本体12の底部側を下側といい、該軸線Oに直交する方向を径方向という。
容器本体12は、内部に内容液が充填される胴部14を備えた有底筒状に形成されるとともに、前記口部11の外周面に雄ねじ部が形成されている。
【0014】
シリンダ20は、第1筒部21と、第1筒部21よりも大径に形成されるとともに該第1筒部21の上端部に連設された第2筒部22と、第2筒部22よりも大径に形成されるとともに該第2筒部22の上端に連設された第3筒部23と、第3筒部23よりも大径に形成されるとともに該第3筒部23の上端に連設された第4筒部24と、第4筒部24の前記軸線O方向の中間部分における外周面から下方に向けて延設されたねじ筒部25と、を備えている。
ねじ筒部25の内周面には雌ねじ部が形成されており、ねじ筒部25が容器本体12の口部11に螺着されることにより、シリンダ20が容器本体12に装着されている。なお、口部11の上端開口縁とシリンダ20との間にはパッキン13が配設されている。
【0015】
第1筒部21と第2筒部22との間には環状の弁座部26が設けられており、第3筒部23の下端には複数の等圧孔27が開口している。
第1筒部21の内側が前記吸込み口21aになっていて、第1筒部21には下端が容器本体12の底部近傍に位置する吸込管28の上端部が嵌着されている。
吸込弁29は弁座部26に当接離反可能に設けられ、吸込弁29が弁座部26に着座して閉弁となり、弁座部26から上方に離反して開弁となる。
なお、第2筒部22の内側には筒状のスリーブ30が固定されており、このスリーブ30は、後述する加圧室93内への内容液の吸引時や噴出時等の別を問わず常に動かず、シリンダ20の一部を構成している。
【0016】
第4筒部24のほぼ上半分の内周面に、断面半円形の第2縦溝31が周方向に間隔をあけて複数形成されている。また、第4筒部24の上端部における外周面には突起24aが径方向の外方に向けて突設されている。第4筒部24の外側には、回動環40が上下方向の移動が規制された状態で前記軸線O回りに回動可能に配設されている。
回動環40は上端にネック筒部41を有しており、ネック筒部41の下部に、吐出弁51とともに吐出管50が固定され、ネック筒部41に前記噴出ヘッド56が外嵌されている。
【0017】
吐出弁51は、吐出管50の上端開口部に配設されている。吐出弁51は、吐出管50の上端開口内に嵌合された入口管52と、上部が噴出ヘッド56内に嵌合されるとともに下部が入口管52内に上下動可能に配設された出口管53と、入口管52内および出口管53内の相互間を連通および遮断させる弾性変形可能な弁体54と、入口管52に対して出口管53を上方に付勢するスプリング55と、を備えている。
噴霧ヘッド56の外周面に形成された噴出ノズル56aは、噴出ヘッド56内に形成された通路を通して出口管53内に連通している。
【0018】
この吐出弁51においては、噴出ヘッド56を押下して出口管53を入口管52に対してスプリング55の上方付勢力に抗して押し下げると、弁体54が下方に撓み変形させられて該弁体54で閉塞されていた出口管53の貫通孔が開放されることにより、この貫通孔を通して入口管52内と出口管53内とが連通する。その結果、吐出管50内と噴出ノズル56aとが連通するようになっている。そして、噴出ヘッド56の押下を解除すると、スプリング55および弁体54が復元変形することで出口管53と入口管52との連通を遮断するようになっている。
【0019】
プランジャ60は、シリンダ20と吐出管50との間に上下動可能に配設されており、駆動筒部61とスカート部62とを備えている。
【0020】
駆動筒部61は、下筒部63と、下筒部63よりも大径の上筒部64と、これらを連結する環板部65aと、環板部65aの内周縁から上下両方向に延びる内筒部65bと、下筒部63の上端の外周面に嵌合されたダンパシート(摺動抵抗体)65cと、を備えている。ダンパシート65cは、プランジャ60やシリンダ20を形成する材質よりも軟い材質で形成されている。また、ダンパシート65cは、プランジャ60における最大外径部分を構成しており、その外径は上筒部64の外径およびシリンダ20の第4筒部24の内径よりも若干大きくなっている。
なお、ダンパシート65cは、例えばニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー若しくはウレタン等の軟材質で形成されている。
スカート部62は、下筒部63内に嵌合された支持筒部66と、支持筒部66の下端縁から下方に向かうに従い漸次拡径された脚筒部67と、これらの両筒部66、67の接続部分から下方に向けて延びる押さえ部材68と、を備えている。
【0021】
支持筒部66の内径は、前記内筒部65bの内径と同等に形成されていて、吐出管50の外径よりも僅かに大きくなっている。支持筒部66の上端縁部と内筒部65bの下端縁部との間には、ゴム材料でリング状に形成された弾性シール部材69が配設されており、弾性シール部材69は、駆動筒部61とスカート部62と吐出管50との間を液密にシールしつつ、吐出管50の外周面に液密状態で摺接するようになっている。
以下、シリンダ20と吸込弁29と吐出管50とプランジャ60のスカート部62とによって囲まれた空間を加圧室93という。
【0022】
脚筒部67の下端部は下方に向かって拡径するテーパー筒部67aとされており、プランジャ60のシリンダ20に対する上下動に伴い、シリンダ20におけるスリーブ30の内周面上を径方向に弾性変形させられつつ摺動するようになっている。
押さえ部材68は、周方向に間隔をあけて複数配設されている。そして、図1に示されるように、プランジャ60がシリンダ20内の最下端位置に位置したときに、押さえ部材68が吸込弁29を上方から押さえて弁座部26との間で挟み込むことで、吸込み弁29を閉弁するようになっている。
【0023】
回動環40とプランジャ60との間には、回動環40のシリンダ20に対する回転動作をプランジャ60のシリンダ20に対する上昇動作に変換する変換機構が設けられている。以下、この変換機構について説明する。
【0024】
プランジャ60の上筒部64の外周面には、図5に示されるように、周方向に間隔をあけて配置された複数の第1縦溝70b、および上下方向に傾斜する一方向に沿って延在し周方向で隣り合う各第1縦溝70bの上端と下端とを連結する傾斜溝70aを備える案内溝70が形成されている。案内溝70は、上筒部64の外周面においてその上下端縁よりも前記軸線O方向の内側に位置し、かつ全周にわたって形成されている。
そして、この案内溝70と前述したシリンダ20の第2縦溝31とによりボール71が回転自在に径方向に挟み込まれている。
【0025】
回動環40の内側には、回動環40およびプランジャ60に連係して、回動環40の前記軸線O回りの回転移動にプランジャ60を追従させる中継部材42が配設されている。
中継部材42は、前記軸線Oと同軸に配設されたリング状の頂板部46と、頂板部46の外周縁に下方に向けて延設された外側下延筒部43と、頂板部46の内周側部分に下方に向けて延設された内側下延筒部44と、頂板部46の上面に立設された上延筒部45と、を備えている。
頂板部46において上延筒部45よりも径方向の外側に位置する部分には、上下方向に貫通する空気孔46aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。
外側下延筒部43の内周面には、シリンダ20における第4筒部24の突起24aにアンダカット嵌合する突起43aが突設されている。
【0026】
頂板部46内には、吐出管50の上部が挿入されている。
内側下延筒部44は、プランジャ60の前記上筒部64内に配置され、プランジャ60の上下動に伴って上筒部64内に対して相対的に進退移動するようになっている。また、内側下延筒部44の外周面には、上下方向の全長にわたって延びる歯部が全周にわたって形成されており、この歯部が、プランジャ60の前記上筒部64の内周面に、上下方向の全長にわたって延在しかつ全周にわたって形成された歯部に噛合うことによって、中継部材42およびプランジャ60の前記軸線O回りの相対的な回転移動を規制している。
【0027】
上延筒部45の外周面には、上下方向の全長にわたって延びる歯部が全周にわたって形成されている。
ここで、回動環40において上下方向の中間に位置する中間部分の内面には、上下方向に延びる噛合筒48が延設されており、この噛合筒48の内周面に、上下方向の全長にわたって延びる歯部が全周にわたって形成されている。
そして、噛合筒48内に上延筒部45が挿入されて、噛合筒48の歯部と上延筒部45の歯部とが互いに噛合うことによって、中継部材42および回動環40の前記軸線O回りの相対的な回転移動を規制している。
以上より、回動環40を前記軸線O回りに回転させると、その力が中継部材42を介してプランジャ60に伝達されることで、プランジャ60も前記軸線O回り回転するようになっている。
【0028】
プランジャ60は、その駆動筒部61の環板部65aと中継部材42との間に介装されたスプリング47によって下方に付勢されている。これにより、ボール71は常に案内溝70の下方を向く上壁面70cによってシリンダ20の第2縦溝31の下端面上に押し付けられている。
【0029】
以上の構成において、ボール71が第1縦溝70bの上端に位置している状態から、回動環40を、傾斜溝70aが第1縦溝70bの上端から延びている方向に向けて前記軸線O回りにシリンダ20に対して回転させると、その回転駆動力が中継部材42を介してプランジャ60に伝達され、このプランジャ60もシリンダ20に対して回転させられることとなる。
この際、ボール71が、第1縦溝70bの上端からこの第1縦溝70bに周方向で隣り合う他の第1縦溝70bの下端に向けて傾斜溝70aに沿って移動することで、プランジャ60が、中継部材42との間でスプリング47を上下方向に圧縮変形させながらシリンダ20に対して上昇させられる。
以上より、前記変換機構は、中継部材42、案内溝70、第2縦溝31およびボール71を備えている。なお、本実施形態では、プランジャ60をシリンダ20に対して上昇させるために回動環40を前記軸線O回りに回転させる方向が、容器本体12の口部11における雄ねじ部とシリンダ20のねじ筒部25における雌ねじ部とを締め込む方向と一致している。
【0030】
シリンダ20の第2筒部22の上端には等圧弁80が固定具89を介して固定されている。等圧弁80は、軟質樹脂等の弾性部材で形成されており、シリンダ20およびプランジャ60それぞれに対して各別に当接離反するようになっている。
シリンダ20とプランジャ60との間には、等圧弁80を間に挟んで下側に液圧逃がし通路91が形成され、上側に空気流入通路92が形成されている。
【0031】
液圧逃がし通路91は、図1に示されるような、プランジャ60がシリンダ20内の最下端位置に位置しているときに、加圧室93内に連通し、図2および図3に示されるような、プランジャ60がシリンダ20内の最下端位置から上昇しているときに、加圧室93との連通が遮断されるようになっている。
空気流入通路92は、プランジャ60の駆動筒部61とシリンダ20の第4筒部24との間の隙間、案内溝70、シリンダ20の第2縦溝31、中継部材42の空気孔46a等を通して容器外に連通し、大気を導入できるようになっている。
【0032】
次に、以上のように構成された液体噴出容器1の作用について説明する。
【0033】
まず、図1に示されるように、加圧室93内に内容液が吸引されず内容液が加圧されていないときには、吸込弁29および吐出弁51は閉弁されており、プランジャ60はシリンダ20内の最下端位置に位置し、押さえ部材68が吸込弁29を上から押圧している。
吐出弁51については、噴出ヘッド56を押し下げない限り、閉弁状態に維持される。
ボール71は、プランジャ60の第1縦溝70bの上端に位置している。
【0034】
次に、回動環40をシリンダ20に対してプランジャ60の傾斜溝70aが第1縦溝70bの上端から延びている方向に向けて前記軸線O回りに回転させると、図2に示されるように、プランジャ60がスプリング47を圧縮しながらシリンダ20に対して上昇する。
この際、押さえ部材68が吸込弁29から上方に離反することで吸込弁29が開弁可能となる。また、プランジャ60がシリンダ20内の最下端位置から上昇して、プランジャ60のテーパー筒部67aがスリーブ30の内周面に液密状態で摺接すると、加圧室93が負圧となり、この負圧によって吸込弁29が弁座部26から上方に離反して開弁し、その結果、容器本体12内の内容液が吸込管28を通り吸込み口21aから加圧室93内に流入する。
【0035】
なお、テーパー筒部67aは、プランジャ60がシリンダ20内の最上限位置に至るまで、つまりボール71が、第1縦溝70bの上端から傾斜溝70aに沿ってこの第1縦溝70bに周方向で隣り合う他の第1縦溝70bの下端に向けて移動するまで、スリーブ30の内周面を液密状態で摺接し続ける。
また、液圧逃がし通路91と空気流入通路92とは等圧弁80によって遮断された状態に保持される。
さらに、内容液の容器本体12内から加圧室93内への流入に伴い、容器本体12内は減圧されて負圧になり、この負圧によって等圧弁80がスリーブ30の外周面およびプランジャ60の外周面から離反して開弁し、空気流入通路92および液圧逃がし通路91を介して外気が等圧孔27から容器本体12内に導入される。
【0036】
そして、回動環40をシリンダ20に対して回動させて、ボール71を前述した他の第1縦溝70bの下端に到達させると、回動環40の回動は停止させられ、図3に示されるように、プランジャ60がシリンダ20内の最上限位置に位置する。
これにより、内容液の加圧室93内への吸引は終了し、吸込弁29が弁座部26に着座して吸込弁29は閉弁する。なお、吐出弁51が閉弁されている限り加圧室93は密閉空間となるので、スプリング47の弾性復元力がプランジャ60に作用していても、内容液が加圧されることによりこのままではプランジャ60が下降することはない。
【0037】
次に、図4に示されるように噴出ヘッド56を押し下げると、吐出弁51が開弁し、加圧室93が噴出ノズル56aを通して外部に連通する。これにより、スプリング47の弾性復元力によりプランジャ60が下降されつつ、加圧室93内の内容液が噴出ノズル56aから噴霧される。なお、プランジャ60の下降時、ボール71は第1縦溝70b内を相対的に上昇する。
【0038】
そして、本実施形態では、シリンダ20における第4筒部24の上端部のうち、少なくとも第2縦溝31が位置する部分を含む一部は、着脱可能な分割部72により構成されている。
分割部72は、図6および図7に示されるように、第4筒部24の上端部において突起24aよりも上方に位置する上端縁部24bにおける内半径および外半径と同等の曲率半径を有し、かつ周方向に間隔をあけて配設された2つの主部72aと、周方向に沿って延在し2つの主部72a同士を連結する連結部72bと、を備えている。主部72aの両周端部にはそれぞれ、径方向の外側に向かうに従い漸次、周方向に沿った主部72aの外側に向けて突出する第1突出部72cおよび第2突出部72dが各別に設けられている。これらの突出部72c、72dのうち、周方向に沿った分割部72の内側に位置する第1突出部72cに連結部72bが接続され、周方向に沿った分割部72の外側に位置する第2突出部72dにおいて分割部72の周端面を構成する表面は第2縦溝31の内面の一部を構成している。
【0039】
ここで、第4筒部24の上端縁部24bの外周面において、分割部72の連結部72bに上方から連なる部分には、径方向の外側に向けて係合突起72eが突設されており、この係合突起72eと突起24aとによって連結部72bが上下方向に挟まれることで、分割部72が固定されている。また、第4筒部24の上端縁部24bにおいて、係合突起72eが配設された部分と第2縦溝31が形成された部分との間に位置する部分は切欠かれて径方向に開口する開口部20aとなっており、この開口部20aが主部72aにより塞がれた構成となっている。
【0040】
次に、シリンダ20の第2縦溝31と、プランジャ60の上筒部64の外周面に形成された案内溝70と、の間にボール71を配設する方法について説明する。
【0041】
まず、分割部72において、第2縦溝31の内面を構成する第2突出部72dの前記表面に分離可能にボール71が連結され、これらの分割部72およびボール71が一体に成形されたシリンダ構成部材73を形成しておく。
一方、シリンダ20およびプランジャ60の相対的な周方向位置を、第1縦溝70bの下部と第2縦溝31の上部とが径方向で互いに対向するように合わせた状態で、シリンダ20内にプランジャ60をその上部を残して下部だけ差し込む。この際、プランジャ60は、ダンパシート65cがシリンダ20の第4筒部24の内周面に当接することで、シリンダ20に対する位置が仮固定される。
【0042】
次に、シリンダ構成部材73をシリンダ20の上端部に装着する。
この際、シリンダ構成部材73における分割部72の連結部72bが、シリンダ20の第4筒部24における係合突起72eと突起24aとによって上下方向に挟み込まれる。また、シリンダ20の第4筒部24における開口部20aが、シリンダ構成部材73における分割部72の主部72aにより閉塞される。さらに、分割部72の第2突出部72dの前記表面が、第2縦溝31の上端部における内面を構成することにより、第2突出部72dの前記表面に連結されたボール71が、第2縦溝31内に位置させられるとともに、プランジャ60の第1縦溝70b内に進入させられる。
【0043】
その後、プランジャ60をさらに下方に移動させてシリンダ20内に進入させることで、第1縦溝70bの上壁面70cによりボール71を下方に押し込ませ、該ボール71をシリンダ構成部材73から分離する。これにより、ボール71が、シリンダ20の第2縦溝31と、プランジャ60の上筒部64の外周面に形成された案内溝70と、の間に配設される。なお、前述のようにプランジャ60をさらに下方に移動させる際、ダンパシート65cは、シリンダ20の第4筒部24の内周面上を摺動する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態による液体噴出容器1によれば、シリンダ構成部材73を前述のようにシリンダ20の上端部に装着した状態で、プランジャ60をシリンダ20内に進入させることで、ボール71が案内溝70と第2縦溝31との間に配設されるので、この配設時に、ボール71がシリンダ20の外側にこぼれ落ちることなどを抑制することが可能になり、組み立てが煩雑になるのを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態では、プランジャ60の駆動筒部61における下筒部63の外周面に、プランジャ60における最大外径部分を構成するダンパシート65cが設けられているので、ボール71を案内溝70と第2縦溝31との間に配設するに際し、プランジャ60をシリンダ20内に差し込み、ダンパシート65cをシリンダ20の内周面に当接させることで、プランジャ60を、その下部がシリンダ20内に位置しかつ上部がシリンダ20から上方に突出した状態に保持することが可能になり、プランジャ60およびシリンダ20の相対的な位置を容易かつ高精度に決めることができる。
【0046】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態では、プランジャ60にダンパシート65cを設けたが、このダンパシート65cは設けなくてもよい。
また、ボール71、傾斜溝70a、第2縦溝70bおよび第1縦溝31の個数は適宜変更してもよい。
さらに、ボール71を案内溝70と第2縦溝31との間に配設する際に、プランジャ60における傾斜溝70aの上壁面70cによりシリンダ構成部材73のボール71を下方に押し込ませることで、該ボール71をシリンダ構成部材73から分離してもよい。
また、前記実施形態では、ねじ筒部25がシリンダ20と一体に形成された構成を示したが、ねじ筒部25をシリンダ20とは別体に形成してもよい。この場合、シリンダ20の外周面にフランジ部を突設し、このフランジ部を、ねじ筒部25と容器本体12の口部11の開口端縁との間で挟み込んでもよい。
さらに、前記実施形態では、プランジャ60の駆動筒部61における下筒部63の外周面にダンパシート65cを設けたが、これに代えて例えば、プランジャ60の外周面に一体に形成された複数の突起を採用してもよく、シリンダ20の内周面に当接してプランジャ60のシリンダ20に対する位置を仮固定可能な構成であれば、その形態は特に限られるものではない。
【0048】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
案内溝と第2縦溝との間にボールを容易に配設することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 液体噴出容器
11 口部
12 容器本体
20 シリンダ
21a 吸込み口
29 吸込弁
31 第2縦溝(変換機構)
40 回動環(変換機構)
42 中継部材
47 スプリング(付勢機構)
50 吐出管
51 吐出弁
56a 噴出ノズル
56 噴出ヘッド
60 プランジャ
65c ダンパシート(摺動抵抗体)
70 案内溝(変換機構)
70a 傾斜溝(変換機構)
70b 第1縦溝(変換機構)
70c 上壁面
71 ボール(変換機構)
72 分割部
73 シリンダ構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する容器本体と、
下端の吸込み口が前記口部から容器本体内に挿入されて容器本体に固定されたシリンダと、
前記シリンダに回動可能に取り付けられた回動環と、
前記回動環に取り付けられるとともに上部に吐出弁が設けられ下部開口が前記シリンダ内に位置する吐出管と、
前記シリンダの吸込み口に配設され該シリンダ内への流入を許容しかつ該シリンダ外への流出を阻止する吸込弁と、
前記シリンダ内に配置されるとともに前記吐出管に液密に外嵌して上下摺動可能に設けられ付勢機構により下方に付勢された筒状のプランジャと、
前記回動環とプランジャとの間に設けられ回動環のシリンダに対する回転動作をプランジャのシリンダに対する上昇動作に変換する変換機構と、
前記吐出弁に連結され下方に押し下げ可能になっていて押し下げ動作により吐出弁を開弁させて噴出ノズルから内容液を噴出可能な噴出ヘッドと、を備える液体噴出容器であって、
前記プランジャの外周面には、周方向に間隔をあけて配置された複数の第1縦溝、および上下方向に傾斜する一方向に沿って延在し周方向で隣り合う各第1縦溝の上端と下端とを連結する傾斜溝を有する案内溝が形成され、
前記シリンダの内周面には、上方に向けて開口する第2縦溝が形成され、
前記変換機構は、前記案内溝、第2縦溝、およびこれらの案内溝と第2縦溝との間に回転自在に配設されたボールを備え、
前記シリンダの上端部のうち、少なくとも前記第2縦溝が位置する部分を含む一部は、着脱可能な分割部により構成され、
この分割部において前記第2縦溝の内面を構成する部分に分離可能に前記ボールが連結されこれらの分割部およびボールが一体に成形されたシリンダ構成部材を、前記プランジャがその上部を残して下部だけ差し込まれた前記シリンダの上端部に、前記ボールがプランジャの案内溝内に位置するように装着した状態で、前記プランジャをさらに前記シリンダ内に進入させることで前記案内溝の上壁面により前記ボールを下方に押し込ませ、該ボールを前記シリンダ構成部材から分離することによって、前記ボールが前記案内溝と第2縦溝との間に配設されていることを特徴とする液体噴出容器。
【請求項2】
請求項1記載の液体噴出容器であって、
前記プランジャの上下方向に沿った中間部分の外周面には、前記シリンダの内周面に当接して該プランジャのシリンダに対する位置を仮固定可能な摺動抵抗体が設けられていることを特徴とする液体噴出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173725(P2010−173725A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20821(P2009−20821)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】