説明

液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置

【課題】液体の吐出能力が高い液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッド100は、第1電極14と、第1電極14の上方に形成された圧電体16と、圧電体16の上方に形成された第2電極18と、を有する圧電アクチュエーター10と、第2電極18と、第2電極18に対して空間24を介して対向配置された第3電極22と、を有する静電アクチュエーター20と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドは、液体噴射装置の構成として、例えば、インクジェットプリンター等に用いられる。この場合、液体噴射ヘッドは、インク液滴を吐出して飛翔させるために用いられ、これによりインクジェットプリンターは、インクを紙等の媒体に付着させて印刷を行うことができる。
【0003】
液体噴射ヘッドは、一般に、ノズル孔から液体を吐出するために液体に圧力を加えるアクチュエーターを有している。このようなアクチュエーターとしては、例えば、圧電素子を備えたものがある。アクチュエーターが備える圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、2つの電極によって電圧が印加されることによって変形することができる。液体噴射ヘッドは、この変形を利用して、圧力室内を加圧して、インク液滴を吐出することができる(特許文献1参照)。
【0004】
インクジェットプリンター等に用いられる液体噴射装置では、液体の吐出能力が高い液体噴射ヘッドが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−159735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、液体の吐出能力が高い液体噴射ヘッドを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記液体噴射ヘッドを含む液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、
第1電極と、前記第1電極の上方に形成された圧電体と、前記圧電体の上方に形成された第2電極と、を有する圧電アクチュエーターと、
前記第2電極と、前記第2電極に対して空間を介して対向配置された第3電極と、を有する静電アクチュエーターと、
を含む。
【0008】
このような液体噴射ヘッドによれば、液体の吐出能力を高めることができる。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。同様に、「下方」という文言は、A下に直接Bを形成するような場合と、A下に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとする。
【0010】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記圧電アクチュエーターの下方に形成された第1基板と、
前記圧電アクチュエーターの上方に形成された第2基板と、
をさらに含み、
前記第1基板には、ノズル孔と連通する流路が形成され、
前記第2基板の前記圧電アクチュエーター側には、凹部が形成され、
前記第3電極は、前記凹部の底面に形成されていることができる。
【0011】
このような液体噴射ヘッドによれば、第3電極が第2基板の凹部の底面に形成されることができる。これにより、静電アクチュエーターを有する液体噴射ヘッドを容易に得ることができる。
【0012】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1電極および前記第2電極との間、および前記第2電極と前記第3電極との間に電圧を印加するための駆動ICをさらに含むことができる。
【0013】
このような液体噴射ヘッドによれば、液体の吐出能力を高めることができる。
【0014】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記駆動ICは、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して前記流路内を加圧する第1制御と、
前記第2電極と前記第3電極との間に電圧を印加して前記流路内を減圧する第2制御と、
を行うことができる。
【0015】
このような液体噴射ヘッドによれば、圧電アクチュエーターによって液体を吐出し、静電アクチュエーターによって流路に液体を供給することができる。したがって、液体の吐出能力を高めることができる。
【0016】
本発明に係る液体噴射吐出装置は、
本発明に係る液体噴射ヘッドと含む。
【0017】
このような液体噴射装置によれば、本発明に係る液体噴射ヘッドを有するため、液体の吐出能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図2】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す平面図。
【図4(A)】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの動作を説明するための図。
【図4(B)】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの動作を説明するための図。
【図4(C)】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの動作を説明するための図。
【図5】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
1. 液体噴射ヘッド
1.1. 液体噴射ヘッドの構成
まず、本実施形態に係る液体噴射ヘッドの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る液体噴射ヘッド100を模式的に示す分解斜視図である。図2は、液体噴射ヘッド100を模式的に示す断面図である。図3は、液体噴射ヘッド100を模式的に示す平面図である。なお、図2は、図3のII−II線断面図である。図3では、便宜上、第2基板40、駆動IC60の図示を省略している。
【0021】
液体噴射ヘッド100は、図1〜図3に示すように、圧電アクチュエーター10と、静電アクチュエーター20と、を含む。液体噴射ヘッド100は、さらに、第1基板30と、第2基板40と、ノズル板50と、駆動IC60と、を含むことができる。
【0022】
圧電アクチュエーター10は、振動板12a,12bと、圧電素子13と、を有する。圧電素子13は、第1電極14と、圧電体16と、第2電極18と、を有する。圧電アクチュエーター10は、図1および図3に示すように、複数の圧力室32に1対1に対応して複数配置されている。
【0023】
振動板12a,12bは、第1基板30上に形成されている。振動板12a,12bは、可撓性を有し、圧電体16の動作によって変形(屈曲)することができる。これにより、圧力室32の容積を変化させることができる。図示の例では、振動板12a,12bは、2層であるが、その層数は特に限定されない。振動板12a,12bの材質としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン、酸化シリコンなどの無機酸化物、ステンレス鋼などの合金を例示することができる。
【0024】
なお、図示はしないが、振動板12a,12bを設けずに、第1電極14が振動板であってもよい。すなわち、第1電極14は、圧電体16に電圧を印加するための一方の電極としての機能と、圧電体16の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
【0025】
第1電極14は、振動板12b上に形成されている。第1電極14と振動板12bとの間には、例えば、両者の密着性を付与する層や、強度や導電性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、チタン、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属からなる層や、それらの酸化物からなる層を例示することができる。
【0026】
第1電極14の形状は、例えば、層状または薄膜状の形状である。第1電極14の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第1電極14の平面的な形状についても、第2電極18が対向して配置されたときに両者の間に圧電体16を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
【0027】
第1電極14の材質は、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第1電極14は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0028】
第1電極14の機能の一つとしては、第2電極18と一対になって、圧電体16に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体16の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1電極14は、図示の例では、複数のアクチュエーター10の共通電極である。第1電極14は、配線(図示せず)を介して、駆動IC60と電気的に接続されている。
【0029】
圧電体16は、第1電極14上に形成されている。圧電体16は、例えば、第1電極14の上面および側方、並びに振動板12bの上方に形成されている。圧電体16の厚さは、例えば、300nm以上3000nm以下とすることができる。
【0030】
圧電体16は、圧電材料によって形成される。そのため圧電体16は、第1電極14および第2電極18によって電圧が印加されることで変形することができる。この変形により振動板12a,12bは、変形(屈曲)することができる。
【0031】
圧電体16の材質としては、一般式ABOで示されるペロブスカイト型酸化物(たとえば、Aは、Pbを含み、Bは、ZrおよびTiを含む。)が好適である。このような材料の具体例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)などが挙げられる。
【0032】
第2電極18は、圧電体16上に形成されている。第2電極18は、第1電極14と対向して配置されている。第2電極18の形状は、例えば、層状または薄膜状の形状である。第2電極18の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。第2電極18の平面的な形状は、第1電極14に対向して配置されたときに両者の間に圧電体16を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
【0033】
第2電極18の材質は、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第2電極18は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0034】
第2電極18の機能の一つとしては、圧電体16に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体16の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2電極18は、配線19を介して、駆動IC60と電気的に接続されている。
【0035】
静電アクチュエーター20は、第2電極18と、第3電極22と、を有する。静電アクチュエーター20は、図1および図3に示すように、複数の圧電アクチュエーター10に1対1に対応して複数配置されている。
【0036】
第3電極22は、図1および図2に示すように、第2基板40に形成された凹部41の底面42に形成されている。第3電極22は、第2電極18に対して空間24を介して対向配置されている。第3電極22は、第2電極18に1対1に対応して、複数形成されている。なお、図示はしないが、第3電極22は、複数の第2電極18に対して1つ形成されてもよい。すなわち、第3電極22は、複数の静電アクチュエーター20の共通電極であってもよい。第3電極22は、例えば、配線(図示しない)を介して、駆動IC60と電気的に接続されている。静電アクチュエーター20では、第2電極18と第3電極22とを帯電させることにより、第2電極18と第3電極22との間に静電気力を発生させて、第2電極18を第3電極22側に吸引することができる。
【0037】
第3電極22の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)、酸化インジウムスズ(ITO)などを例示することができる。第2電極18は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0038】
第1基板30は、圧電アクチュエーター10の下方に形成されている。第1基板30の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを例示することができる。第1基板30には、図1に示すように、リザーバー(液体貯留部)34と、リザーバー34と連通する供給口36と、供給口36と連通する圧力室32が形成されている。第1基板30がノズル板50と振動板12aとの間の空間を区画することにより、リザーバー34、供給口36、圧力室32が設けられる。図示の例では、リザーバー34と、供給口36と、圧力室32と、を区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また、例えば、供給口36は、図示の例では、流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計に従って任意に形成することができる。圧力室32、リザーバー34、および供給口36は、ノズル板50と第1基板30と振動板12bとによって区画されている。リザーバー34は、外部(例えばインクカートリッジ)から第2基板40および振動板12a,12bに設けられた貫通孔38を通じて供給されるインクを、一時貯留することができる。リザーバー34内のインクは、供給口36を介して、圧力室32に供給されることができる。圧力室32は、振動板12a,12bの変形により容積が変化する。圧力室32はノズル孔52と連通しており、圧力室32の容積が変化することによって、ノズル孔52からインク等の液体が吐出される。
【0039】
ノズル板50は、ノズル孔52を有する。ノズル孔52からは、インクが吐出される。ノズル板50には、例えば、複数のノズル孔52が一列に設けられている。ノズル板50の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを例示することができる。
【0040】
第2基板40は、圧電アクチュエーター10の上方に形成されている。第2基板40には、圧電素子13を収容するための凹部41が形成されている。これにより、第2基板40は、圧電素子13(圧電アクチュエーター10の一部)を封止するための封止板として機能することができる。凹部41は、第2基板40の圧電アクチュエーター10側に形成されている。第2基板40は、例えば、圧電体16を外部雰囲気から保護することができる。第2基板40の凹部41の底面42には、第3電極22が形成されている。第2基板40の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)、ガラスなどを挙げることができる。
【0041】
駆動IC60は、第2基板40上に形成されている。駆動IC60は、圧電アクチュエーター10および静電アクチュエーター20を駆動させることができる。具体的には、駆動IC60は、第1電極14および第2電極18との間に電圧を印加して(駆動信号を与えて)、圧電アクチュエーター10を駆動させることができる(第1制御)。これにより、圧力室32内を加圧することができる。さらに、駆動IC60は、第2電極18と第3電極22との間に電圧を印加して、静電アクチュエーター20を駆動させることができる(第2制御)。これにより、圧力室32内を減圧することができる。
【0042】
1.2. 液体噴射ヘッドの動作
次に、液体噴射ヘッド100の動作について、図面を参照しながら説明する。図4(A)〜図4(C)は、液体噴射ヘッド100の動作について説明するための図である。なお、図4(A)〜図4(C)は、図3のIV−IV線断面図である。
【0043】
図4(A)は、液体噴射ヘッド100の初期状態(電極14,18,22に電圧が印加されていない状態)である。
【0044】
まず、図4(B)に示すように、静電アクチュエーター20によって、振動板12a,12bを上方に変位させる。具体的には、駆動IC60により第2電極18と第3電極22との間に電圧を印加して(駆動信号を与えて)第2電極18を第3電極22側に吸引することにより、振動板12a,12bを上方に変位させる。この振動板12a,12bの変位によって圧力室32の容積が拡大して圧力室32内が減圧され、圧力室32に液体2が供給される。
【0045】
次に、図4(C)に示すように、圧電アクチュエーター10によって、振動板12b,12cを下方に変位させる。具体的には、駆動IC60により第1電極14と第2電極18との間に電圧を印加して(駆動信号を与えて)圧電体16を変形させることにより、振動板12a,12bを下方に変位させる。この振動板12a,12bの変位によって圧力室32の容積が縮小して圧力室32内が加圧され、液体2がノズル孔52から吐出される。
【0046】
以上の動作を繰り返すことにより、液体噴射記録ヘッド100より液体2が断続的に噴射される。
【0047】
1.3. 作用効果等
液体噴射ヘッド100によれば、圧電アクチュエーター10と、静電アクチュエーター20と、を含むことができる。これにより、圧電アクチュエーターのみを有する液体噴射ヘッドと比べて、振動板12a,12bの変位量を大きくすることができる。すなわち、圧力室(流路)32の容積の変化量を大きくできるため、液体の吐出能力を高めることができる。したがって、例えば、圧電体16として歪量の小さい圧電材料(例えば、非鉛系の圧電材料)を用いても、液体の吐出能力の高い液体噴射ヘッドを得ることができる。
【0048】
具体的には、圧電アクチュエーターのみを有する液体噴射ヘッドでは、圧電アクチュエーターによって振動板を下方に変位させて液体を吐出する工程(図4(C))を行い、圧電アクチュエーターに電圧を印加せずに振動板を元の状態に戻すことによって圧力室に液体を供給する工程(図4(A))を行う。これに対して、液体噴射ヘッド100では、図4(A)〜図4(C)に示すように、静電アクチュエーター20によって振動板12a,12bを上方に変位させて圧力室32に液体2を供給する工程(図4(B))を行い、圧電アクチュエーター10によって振動板12a,12bを下方に変位させて液体2を吐出する工程(図4(C))を行うことができる。このように、液体噴射ヘッド100は、静電アクチュエーター20によって振動板12a,12bを上方に変位させることができるため、圧電アクチュエーターのみを有する液体噴射ヘッドと比べて、振動板12a,12bの変位量を大きくすることができる。
【0049】
また、液体噴射ヘッド100では、第3電極22が第2基板40の凹部41の底面42に形成されることができる。第2基板40は、圧電素子13(圧電アクチュエーター10の一部)を封止するための部材である。したがって、新たに第3電極22を形成するための部材を設けることなく、第2電極18に対して対向配置された第3電極22を形成することができる。すなわち、液体噴射ヘッド100によれば、静電アクチュエーター20を有する液体噴射ヘッドを容易に得ることができる。
【0050】
なお、ここでは、液体噴射ヘッド100がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0051】
2. 液体噴射ヘッドの製造方法
次に、液体噴射ヘッド100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図5〜図6は、液体噴射ヘッド100の製造工程を模式的に示す断面図であり、図2に示す断面図に対応している。
【0052】
図5に示すように、第1基板30上に振動板12a,12bを形成する。振動板12a,12bは、例えば、シリコンからなる第1基板30を熱酸化して酸化シリコン層12aを形成後、スパッタ法によりジルコニウム(Zr)層を形成し、該ジルコニウム層を熱酸化して酸化ジルコニウム層12bを形成することにより得られる。
【0053】
次に、振動板12b上に圧電素子13を形成する。まず、振動板12b上に第1電極14を形成する。第1電極14は、例えば、スパッタ法などにより形成される。次に、第1電極14上に圧電体16を形成する。圧電体16は、例えば、CVD法、MOD(Metal Organic Deposition)法、スパッタ法などにより形成される。次に、圧電体16上に第2電極18を形成する。第2電極18は、例えば、スパッタ法などにより形成される。第1電極14、圧電体16、および第2電極18は、各層の形成ごとにパターニングされることもできるし、複数層の形成ごとに一括してパターニングされることもできる。このようにして、圧電素子13を形成する。次に、第2電極18上、圧電体16の側方、および振動板12b上に配線19を形成する。配線19は、スパッタ法などにより形成される。
【0054】
図6に示すように、凹部41の底面42に第3電極22が形成された第2基板40を、圧電素子13の上方に接合する。当該接合は、例えば、陽極接合や、接着剤等を用いて行われる。
【0055】
次に、第1基板30に開口部32aを形成する。例えば、第1基板30の一部をエッチングすることにより、開口部32aを形成することができる。第1基板30のエッチングは、例えば、水酸化カリウム水溶液などを用いて行うことができる。なお、第1基板30をエッチングする前に、第1基板30の裏面(振動板12a,12b側とは反対側の面)を研磨することにより、第1基板30の膜厚を減少させてもよい。
【0056】
図2に示すように、ノズル孔52を有するノズル板50を第1基板30の下面の所定の位置に接合する。当該接合は、例えば、陽極接合や、接着剤等を用いて行われる。これにより、圧力室32を形成することができる。同時に、リザーバー34および供給口36を形成することができる。次に、第2基板40の上面に、接着剤等を用いて駆動IC60を貼り付ける。次に、例えば、ワイヤーボンディング等を行って、電極14,22および配線19の各々と駆動IC60とを電気的に接続する。
【0057】
以上の工程により、液体噴射ヘッド100を製造することができる。なお、液体噴射ヘッド100の製造方法は、上述の製造方法に限定されない。
【0058】
3. 液体噴射装置
次に、本実施形態に係る液体噴射装置について説明する。本実施形態に係る液体噴射装置は、本発明に係る液滴噴射ヘッド100を有する。ここでは、本実施形態に係る液体噴射装置1000がインクジェットプリンターである場合について説明する。図7は、本実施形態に係る液体噴射装置1000を模式的に示す斜視図である。
【0059】
液体噴射装置1000は、ヘッドユニット1030と、駆動部1010と、制御部1060と、を含む。また、液体噴射装置1000は、装置本体1020と、給紙部1050と、記録用紙Pを設置するトレイ1021と、記録用紙Pを排出する排出口1022と、装置本体1020の上面に配置された操作パネル1070と、を含むことができる。
【0060】
ヘッドユニット1030は、例えば、上述した液滴噴射ヘッド100から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット1030は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ1031と、ヘッドおよびインクカートリッジ1031を搭載した運搬部(キャリッジ)1032と、を備える。
【0061】
駆動部1010は、ヘッドユニット1030を往復動させることができる。駆動部1010は、ヘッドユニット1030の駆動源となるキャリッジモーター1041と、キャリッジモーター1041の回転を受けて、ヘッドユニット1030を往復動させる往復動機構1042と、を有する。
【0062】
往復動機構1042は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸1044と、キャリッジガイド軸1044と平行に延在するタイミングベルト1043と、を備える。キャリッジガイド軸1044は、キャリッジ1032が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ1032を支持している。さらに、キャリッジ1032は、タイミングベルト1043の一部に固定されている。キャリッジモーター1041の作動により、タイミングベルト1043を走行させると、キャリッジガイド軸1044に導かれて、ヘッドユニット1030が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0063】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド100および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド100および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0064】
制御部1060は、ヘッドユニット1030、駆動部1010および給紙部1050を制御することができる。
【0065】
給紙部1050は、記録用紙Pをトレイ1021からヘッドユニット1030側へ送り込むことができる。給紙部1050は、その駆動源となる給紙モーター1051と、給紙モーター1051の作動により回転する給紙ローラー1052と、を備える。給紙ローラー1052は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー1052aおよび駆動ローラー1052bを備える。駆動ローラー1052bは、給紙モーター1051に連結されている。制御部1060によって供紙部1050が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット1030の下方を通過するように送られる。
【0066】
ヘッドユニット1030、駆動部1010、制御部1060および給紙部1050は、装置本体1020の内部に設けられている。
【0067】
液体噴射装置1000では、本発明に係る液滴噴射ヘッド100を有することができる。したがって、液体噴射装置1000の液体の吐出能力は高いものとなっている。
【0068】
なお、上記例示した液体噴射装置1000は、1つの液体噴射ヘッド100を有し、この液体噴射ヘッド100によって、記録媒体に印刷を行うことができるものであるが、複数の液体噴射ヘッドを有してもよい。液体噴射装置が複数の液体噴射ヘッドを有する場合には、複数の液体噴射ヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数の液体噴射ヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズル孔が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
【0069】
以上、本発明にかかる液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンターとしての液体噴射装置1000を説明したが、本発明にかかる液体噴射装置は、工業的にも利用することができる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したものなどを用いることができる。本発明の液体噴射装置は、例示したプリンター等の画像記録装置以外にも、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)、電気泳動ディスプレイ等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられることができる。
【0070】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0071】
10 圧電アクチュエーター、12a,12b 振動板、14 第1電極、
16 圧電体、18 第2電極、19 配線、20 静電アクチュエーター、
22 第3電極、24 空間、30 第1基板、32 圧力室、34 リザーバー、
36 供給口、38 貫通孔、40 第2基板、41 凹部、42 下面、
50 ノズル板、52 ノズル孔、60 駆動IC、100 液体噴射ヘッド
1000 液体噴射装置、1010 駆動部、1020 装置本体、1021 トレイ、1022 排出口、1030 ヘッドユニット、1031 インクカートリッジ、
1032 キャリッジ、1041 キャリッジモーター、1042 往復動機構、
1043 タイミングベルト、1044 キャリッジガイド軸、1050 給紙部、
1051 給紙モーター、1052 給紙ローラー、1060 制御部、
1070 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極の上方に形成された圧電体と、前記圧電体の上方に形成された第2電極と、を有する圧電アクチュエーターと、
前記第2電極と、前記第2電極に対して空間を介して対向配置された第3電極と、を有する静電アクチュエーターと、
を含む、液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電アクチュエーターの下方に形成された第1基板と、
前記圧電アクチュエーターの上方に形成された第2基板と、
をさらに含み、
前記第1基板には、ノズル孔と連通する流路が形成され、
前記第2基板の前記圧電アクチュエーター側には、凹部が形成され、
前記第3電極は、前記凹部の底面に形成されている、液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1電極および前記第2電極との間、および前記第2電極と前記第3電極との間に電圧を印加するための駆動ICをさらに含む、液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3において、
前記駆動ICは、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して前記流路内を加圧する第1制御と、
前記第2電極と前記第3電極との間に電圧を印加して前記流路内を減圧する第2制御と、
を行う、液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと含む、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図4(C)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255604(P2011−255604A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132699(P2010−132699)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】